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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-03
(45)【発行日】2025-07-11
(54)【発明の名称】車椅子用補助具及び車椅子装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/10 20060101AFI20250704BHJP
   A61G 5/00 20060101ALI20250704BHJP
【FI】
A61G5/10 715
A61G5/00 701
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2024200708
(22)【出願日】2024-11-18
【審査請求日】2024-12-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】392001140
【氏名又は名称】中村 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100130029
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道雄
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩一
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-284744(JP,A)
【文献】特開2004-141498(JP,A)
【文献】特開2019-154508(JP,A)
【文献】登録実用新案第3228874(JP,U)
【文献】特開2022-145388(JP,A)
【文献】特開2006-175131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/10
A61G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪が取り付けられたフレームと、前記前輪より後方に配置されて前記フレームに設けた支持軸と、前記支持軸によって回転可能に支持された後輪と、を有する車椅子における前記支持軸より後方の箇所へ取り付け及び取り外しが可能な車椅子用補助具であって、
前記支持軸より後方の箇所で前記フレームへ取り付け及び取り外しされる取り付け部と、
前記取り付け部に接続され、かつ、前記取り付け部が前記フレームへ取り付けられた状態で補助者が足で踏むことができる足踏み部と、
前記取り付け部へ連結部によって接続され、かつ、前記取り付け部が前記フレームへ取り付けられた状態で前記連結部から鉛直方向に突出される突出部と、
を有し、
前記取り付け部は、
前記突出部が前記連結部から鉛直方向で上に突出される第1の取り付け状態と、
前記突出部が前記連結部から鉛直方向で下に突出される第2の取り付け状態と、
を補助者が変更可能な構成であり、
前記フレームは、前記車椅子の正面視で鉛直方向の仮想線を隔てて配置される第1フレーム及び第2フレームを有し、
前記取り付け部は、
前記第1フレームまたは前記第2フレームへ取り付け及び取り外しされる第1取り付け部と、
前記第1フレームまたは前記第2フレームへ取り付け及び取り外しされる第2取り付け部と、
を有し、
前記突出部は、
前記第1取り付け部に接続された第1突出部と、
前記第2取り付け部に接続された第2突出部と、
を有し、
前記足踏み部は、前記第1取り付け部及び前記第2取り付け部へ接続されている、車椅子用補助具。
【請求項2】
前輪が取り付けられたフレームと、前記前輪より後方に配置されて前記フレームに設けた支持軸と、前記支持軸によって回転可能に支持された後輪と、を有する車椅子と、
前記支持軸より後方の箇所で前記車椅子へ取り付け及び取り外しが可能な車椅子用補助具と、
を備えた車椅子装置であって、
前記車椅子用補助具は、
前記支持軸より後方の箇所で前記フレームへ取り付け及び取り外しされる取り付け部と、
前記取り付け部に接続され、かつ、前記取り付け部が前記フレームへ取り付けられた状態で補助者が足で踏むことができる足踏み部と、
前記取り付け部へ連結部によって接続され、かつ、前記取り付け部が前記フレームへ取り付けられた状態で前記連結部から鉛直方向に突出される突出部と、
を有し、
前記取り付け部は、
前記突出部が前記連結部から鉛直方向で上に突出される第1の取り付け状態と、
前記突出部が前記連結部から鉛直方向で下に突出される第2の取り付け状態と、
を補助者が変更可能な構成であり、
前記フレームは、前記車椅子の正面視で鉛直方向の仮想線を隔てて配置される第1フレーム及び第2フレームを有し、
前記取り付け部は、
前記第1フレームまたは前記第2フレームへ取り付け及び取り外しされる第1取り付け部と、
前記第1フレームまたは前記第2フレームへ取り付け及び取り外しされる第2取り付け部と、
を有し、
前記突出部は、
前記第1取り付け部に接続された第1突出部と、
前記第2取り付け部に接続された第2突出部と、
を有し、
前記足踏み部は、前記第1取り付け部及び前記第2取り付け部へ接続されている、車椅子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車椅子に設けられる車椅子用補助具及び車椅子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車椅子に設けられる車椅子用補助具の一例が、特許文献1、特許文献2、非特許文献1及び非特許文献2に記載されている。特許文献1に記載されている車椅子補助ステップ(補助具)は、軽い力で車椅子の前輪を持ち上げる操作をするため、ステップに補助ステップを付属させたものである。補助ステップは、左右両側のステップからそれぞれ後方へ延長させたステップ凸と、各ステップ凸を接続するステップ凹と、を有する。介護人が車椅子操作中、補助ステップを足で踏むことで、前輪を持ち上げて段差を乗り越える等の操作を容易にしたものである。
【0003】
特許文献2に記載されている車椅子の後方転倒防止装置(補助具)は、電動車椅子の後部左右に設けた後輪を、後輪の内側面に取付けたパワーユニット内のモーターで駆動するものである。また、左右のパワーユニットの後側に断面逆凹字形のブラケットを突設し、後端に転倒防止輪を軸着したスイングアームの前端をブラケットに回動可能に取り付けたものである。さらに、ブラケットの後上部に取付けたストッパーにスイングアームの上面が当るように、スイングアームをスプリングで付勢する構成である。
【0004】
非特許文献1には、車椅子のティッピングレバーに、車椅子が後方に転倒することを防ぐ転倒防止装置を設けた図が記載されている。
【0005】
非特許文献2には、車いすのティッピングレバーに、車いすが後方に転倒することを防ぐ転倒防止バーを設けた図が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-71174号公報
【文献】特開2001-170114号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】シーティング研究所、シーティング講座、シーティングの基礎、1.車椅子の基本構造と名称、[令和6年11月8日検索]、インターネット<https://seating.jp/seating-lecture/seatingbasic/01basic/>
【文献】Wheel Chair Miki、車椅子製品、車いすの各部名称とその機能、[令和6年11月8日検索]、インターネット<https://www.kurumaisu-miki.co.jp/wheelchair/column/detail.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明者は、特許文献1、特許文献2、非特許文献1及び非特許文献2に記載された車椅子用の補助具では、車椅子の前輪を持ち上げて段差を乗り越える機能、及び車椅子が後方へ傾くことを抑制する機能、の両方を兼ねる車椅子用補助具について認識されておらず、その点で改善の余地がある、という課題を認識した。
【0009】
本開示の目的は、車椅子の前輪を持ち上げる機能、及び車椅子が後方へ傾くことを抑制する機能、の両方を備えた車椅子用補助具及び車椅子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の車椅子用補助具は、前輪が取り付けられたフレームと、前記前輪より後方に配置されて前記フレームに設けた支持軸と、前記支持軸によって回転可能に支持された後輪と、を有する車椅子における前記支持軸より後方の箇所へ取り付け及び取り外しが可能な車椅子用補助具であって、前記支持軸より後方の箇所で前記フレームへ取り付け及び取り外しされる取り付け部と、前記取り付け部に接続され、かつ、前記取り付け部が前記フレームへ取り付けられた状態で補助者が足で踏むことができる足踏み部と、前記取り付け部に接続され、かつ、前記取り付け部が前記フレームへ取り付けられた状態で鉛直方向に突出された突出部と、を有し、前記取り付け部は、前記突出部が鉛直方向で上に向く第1の取り付け状態と、前記突出部が鉛直方向で下に向く第2の取り付け状態と、を補助者が変更可能な構成である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、車椅子の前輪を持ち上げる機能、及び車椅子が後方へ傾くことを抑制する機能、の両方を備えた車椅子用補助具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】車椅子装置の全体を示し、車椅子用補助具が第1の取り付け状態にある側面図である。
図2】車椅子装置の全体を示す正面図である。
図3】車椅子装置の全体を示す平面図である。
図4】車椅子に車椅子用補助具を取り付け及び取り外しする例を示す部分的な平面図である。
図5】(A),(B)は、車椅子用補助具の取り付け状態を示す部分的な背面図である。
図6】車椅子装置の全体を示す側面図である。
図7】車椅子装置の全体を示し、車椅子用補助具が第2の取り付け状態にある側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態の概要)
本実施形態の車椅子装置は、車椅子及び車椅子用補助具を有する。車椅子用補助具は、車椅子へ取り付け及び取り外しできる構成を有する。車椅子用補助具は、車椅子へ取り付けられるにあたり、第1の取り付け状態と第2の取り付け状態とに変更することができる。車椅子用補助具が、車椅子へ第1の取り付け状態で取り付けられていると、補助者が車椅子用補助具を足で踏むことで、車椅子の前輪を持ち上げることができる。また、車椅子用補助具が、車椅子へ第2の取り付け状態で取り付けられていると、車椅子用補助具が使用場所へ接触することで、車椅子が後方へ傾くことを抑制できる。車椅子装置は、車椅子及び車椅子用補助具により構成される。車椅子装置、車椅子及び車椅子用補助具の具体例を、図面を参照して説明する。
【0014】
(車椅子装置及び車椅子の具体例)
図1図2図3に示された車椅子装置80は、車椅子10及び車椅子用補助具40により構成されている。車椅子10は、使用場所11へ置かれ、対象者12が座った姿勢で利用する。対象者12は、肢体不自由者、要介護者、等を含む。補助者13は、車椅子10の後方から、車椅子10の使用、例えば、車椅子10の停止、車椅子10の移動、車椅子10の方向変換、を補助する。補助者13は、介護者、医療関係者、等を含む。車椅子10は、第1アームサポートフレーム14、第2アームサポートフレーム15、第1フットサポートフレーム16、第2フットサポートフレーム17、第1ティッピングレバー18、第2ティッピングレバー19、第1手押しハンドル20、第2手押しハンドル21等を有する。
【0015】
また、車椅子10は、第1アームサポート22、第2アームサポート23、第1サイドガード24、第2サイドガード25、座シート27、第1後輪28、第2後輪29、第1前輪30、第2前輪31、第1フットサポート32、第2フットサポート33、折り畳みフレーム34,58等を有する。車椅子10の使用状態で、第1前輪30、第2前輪31、第1後輪28、第2後輪29は、使用場所11へ接触(接地)される。
【0016】
第1アームサポートフレーム14、第1フットサポートフレーム16、第1ティッピングレバー18、第1手押しハンドル20により、第1フレーム90が構成されている。また、第2アームサポートフレーム15、第2フットサポートフレーム17、第2ティッピングレバー19、第2手押しハンドル21により、第2フレーム91が構成されている。第1フレーム90、第2フレーム91、第1後輪28、第2後輪29、第1前輪30、第2前輪31は、車椅子10に座った対象者12の体重を支持する役割を果たす要素である。また、第1フレーム90及び第2フレーム91は、車椅子10の形態を維持する役割を果たす要素である。
【0017】
第1アームサポートフレーム14、第2アームサポートフレーム15、第1フットサポートフレーム16、第2フットサポートフレーム17、第1ティッピングレバー18、第2ティッピングレバー19、第1手押しハンドル20、第2手押しハンドル21、第1アームサポート22、第2アームサポート23、折り畳みフレーム34,58等の構成要素の材質は、金属、例えば、アルミニウム、鋼、チタン、ステンレス、等である。
【0018】
車椅子10は、前後方向A1に沿って移動可能である。具体的に説明すると、車椅子10は、前進、後退及び方向変換が可能である。車椅子10は、折り畳みフレーム34,58の作動によって折り畳まれた状態と、展開された使用状態とに切り替えが可能である。車椅子10が折り畳まれた状態は、第1フレーム90と第2フレーム91とが接近された状態である。車椅子10の使用状態は、第1フレーム90と第2フレーム91とが離間された状態である。
【0019】
車椅子10の使用状態において、図2のように、車椅子10を正面視すると、第1フレーム90と第2フレーム91とが、鉛直方向に沿った仮想線C1を隔てての両側に配置される。鉛直方向は、重力の作用方向である。仮想線C1は、車椅子10の左右方向B1において、車椅子10の中心に位置する、つまり、中心を通る直線である。このように、車椅子10は、仮想線C1を境として左右対称の形状及び構造を有する。また、図3のように、車椅子10を平面視すると、車椅子10は、前後方向A1に沿った仮想線C2を境として左右対称の形状及び構造を有する。仮想線C2は、車椅子10の左右方向B1において、車椅子10の中心を通る直線である。
【0020】
車椅子10の使用状態において、車椅子10を構成する要素の配置位置を具体的に説明すると、第1アームサポートフレーム14と第2アームサポートフレーム15とが、前後方向A1に対して交差する左右方向B1に間隔をおいて配置されている。第1フットサポートフレーム16と第2フットサポートフレーム17とが、左右方向B1に間隔をおいて配置されている。第1ティッピングレバー18と第2ティッピングレバー19とが、左右方向B1に間隔をおいて配置されている。第1手押しハンドル20と第2手押しハンドル21とが、左右方向B1に間隔をおいて配置されている。
【0021】
第1アームサポート22と第2アームサポート23とが、左右方向B1に間隔をおいて配置されている。第1サイドガード24と第2サイドガード25とが、左右方向B1に間隔をおいて配置されている。第1後輪28と第2後輪29とが、左右方向B1に間隔をおいて配置されている。第1前輪30と第2前輪31とが、左右方向B1に間隔をおいて配置されている。第1フットサポート32と第2フットサポート33とが、左右方向B1に間隔をおいて配置されている。
【0022】
第1アームサポートフレーム14は、鉛直方向に延ばされた部位と、前後方向A1に延ばされた部位と、を有する。第1前輪30は、第1アームサポートフレーム14の下端に、キャスタ35を介して回転可能に取り付けられている。第2アームサポートフレーム15は、鉛直方向に延ばされた部位と、前後方向A1に延ばされた部位と、を有する。第2前輪31は、第2アームサポートフレーム15の下端に、キャスタ36を介して回転可能に取り付けられている。第1前輪30の外径と、第2前輪31の外径とは、同じである。第1ティッピングレバー18は、棒状のパイプ部材であり、かつ、前後方向A1に沿って配置、つまり、延ばされている。第1フットサポートフレーム16は、前後方向A1に沿って延ばされた部位と、前後方向A1に沿って延ばされた部位の前端から下方へ向けて延ばされた部位と、を有する。
【0023】
前後方向A1で第1ティッピングレバー18の前端は、第1フットサポートフレーム16のうち、下方へ延ばされた部位へ固定されている。第2ティッピングレバー19は、棒状のパイプ部材であり、かつ、前後方向A1に沿って配置、つまり、延ばされている。第2フットサポートフレーム17は、前後方向A1に沿って延ばされた部位と、前後方向A1に沿って延ばされた部位の前端から下方へ向けて延ばされた部位と、を有する。前後方向A1で第2ティッピングレバー19の前端は、第2フットサポートフレーム17のうち、下方へ延ばされた部位へ固定されている。
【0024】
第1手押しハンドル20は、鉛直方向に延ばされた部位を有し、第1手押しハンドル20の下端は、第1ティッピングレバー18へ固定されている。第1手押しハンドル20の上端は、前後方向A1で後方へ向けて屈曲されており、第1手押しハンドル20の後端にグリップ53が取り付けられている。第2手押しハンドル21は、鉛直方向に延ばされた部位を有し、第2手押しハンドル21の下端は、第2ティッピングレバー19へ固定されている。第2手押しハンドル21の上端は、前後方向A1で後方へ向けて屈曲されており、第2手押しハンドル21の後端にグリップ54が取り付けられている。グリップ53,54は、補助者13が手55で握る部位である。
【0025】
第1アームサポートフレーム14の後端は、第1手押しハンドル20へ固定され、第1アームサポートフレーム14と第1フットサポートフレーム16とが接続されている。第1アームサポートフレーム14のうち、前後方向A1に沿って延ばされた部位に、第1アームサポート22が取り付けられている。第2アームサポートフレーム15の後端は、第2手押しハンドル21へ固定され、第2アームサポートフレーム15と第2フットサポートフレーム17とが接続されている。
【0026】
第2アームサポートフレーム15のうち、前後方向A1に沿って延ばされた部位に、第2アームサポート23が取り付けられている。第1アームサポートフレーム14及び第2アームサポートフレーム15は、共にクッション材を、被覆材、例えば、皮革、合成皮革、レザー、等で覆って構成されている。第1フットサポートフレーム16の後端は、第1手押しハンドル20へ固定されている。第2フットサポートフレーム17の後端は、第2手押しハンドル21へ固定されている。
【0027】
第1後輪28は、第1支持軸82によって回転可能に支持されている。第1支持軸82は、第1手押しハンドル20と第1ティッピングレバー18との接続箇所へ取り付けられている。第2後輪29は、第2支持軸83によって回転可能に支持されている。第2支持軸83は、第2手押しハンドル21と第2ティッピングレバー19との接続箇所へ取り付けられている。第1支持軸82及び第2支持軸83は、同軸状に配置されている。車椅子10の前後方向A1において、第1支持軸82及び第2支持軸83は、第1前輪30及び第2前輪31より後方に配置されている。第1後輪28の外径と、第2後輪29の外径とは、同じである。第1後輪28及び第2後輪29の外径は、第1前輪30の外径及び第2前輪31の外径より大きい。
【0028】
第1フットサポート32は、第1フットサポートフレーム16の下端へ、展開及び折り畳みできるように取り付けられている。第2フットサポート33は、第2フットサポートフレーム17の下端へ、展開及び折り畳みできるように取り付けられている。第1フットサポート32及び第2フットサポート33は、対象者12の足を支持する役割を果たす。第1フットサポート32及び第2フットサポート33の材質は、例えば、合成樹脂、金属である。
【0029】
レッグサポート37が、第1フットサポートフレーム16から第2フットサポートフレーム17に亘って取り付けられている。レッグサポート37は、対象者12の足のふくらはぎを支持する役割を果たす。レッグサポート37は、折り畳み及び展開が可能な材質、例えば、合成樹脂、合成皮革、レザー、等で構成されている。
【0030】
第1サイドガード24は、第1アームサポート22の下方において、第1アームサポートフレーム14から第1手押しハンドル20に亘って張り付けられている。第2サイドガード25は、第2アームサポート23の下方において、第2アームサポートフレーム15から第2手押しハンドル21に亘って張り付けられている。第1サイドガード24及び第2サイドガード25は、対象者12の胴体が左右方向に移動する範囲を制限する役割を果たす。第1サイドガード24及び第2サイドガード25の材質は、例えば、合成樹脂、合成皮革、レザー等である。
【0031】
座シート27が、第1フットサポートフレーム16から第2フットサポートフレーム17に亘って張り付けられている。座シート27は、対象者12が座る箇所であり、対象者12の体重を支持する役割を果たす。座シート27は、折り畳み及び展開が可能な基材及びクッションにより構成されている。クッションは基材の上へ重ねられている。基材の材質は、例えば、合成樹脂、合成皮革、レザー、等であり、クッションは、例えば、スポンジである。座シート27は、折り畳み及び展開が可能に構成されている。
【0032】
背シート38が、第1手押しハンドル20から第2手押しハンドル21に亘って張り付けられている。背シート38は、対象者12の背中を支持する背もたれの役割りを果たす。背シート38は、折り畳み及び展開が可能な材質、例えば、合成樹脂、合成皮革、レザー、等で構成されている。
【0033】
車椅子10が展開された使用状態において、車椅子10を図3のように平面視すると、第1ティッピングレバー18と第2ティッピングレバー19とが平行に配置され、かつ、第1後輪28と第2後輪29とが平行に配置される。また、車椅子10を図3のように平面視すると、左右方向B1において、第1フレーム90及び第2フレーム91は、第1後輪28と第2後輪29との間に位置する。
【0034】
折り畳みフレーム34,58は、交差された状態で配置され、かつ、交差された箇所が作動可能に連結されている。折り畳みフレーム34の下端は、第1ティッピングレバー18へ接続され、折り畳みフレーム34の上端は、第2アームサポートフレーム15へ接続されている。折り畳みフレーム58の下端は、第2ティッピングレバー19へ接続され、折り畳みフレーム58の上端は、第1アームサポートフレーム14へ接続されている。折り畳みフレーム34,58が交差された箇所を中心として作動されると、車椅子10が折り畳まれた状態と、車椅子10が展開された使用状態とに切り替えられる。
【0035】
(車椅子用補助具の具体例)
車椅子用補助具の具体例が、図3図4図5(A),(B)に示されている。車椅子用補助具40は、第1ティッピングレバー18及び第2ティッピングレバー19へ取り付け及び取り外しされる構成を有する。補助者13は、第1ティッピングレバー18及び第2ティッピングレバー19へ取り付けられている車椅子用補助具40を足56で踏むことができる。車椅子用補助具40が足56で踏まれると、車椅子10の第1前輪30及び第2前輪31を持ち上げる力が生じる。また、車椅子用補助具40が、第1ティッピングレバー18及び第2ティッピングレバー19に取り付けられている状態で、車椅子10が後方へ傾くことを抑制できる。
【0036】
図4に示す車椅子10の前後方向A1で、第1ティッピングレバー18の後端41、及び第2ティッピングレバー19の後端42は、仮想線C2より後方に位置する。また、図4に示す車椅子10の前後方向A1で、第1ティッピングレバー18の後端41、及び第2ティッピングレバー19の後端42は、第1後輪28の後端43、及び第2後輪29の後端44より前方に位置する。さらに、図4に示す車椅子10の前後方向A1で、第1ティッピングレバー18の後端41、及び第2ティッピングレバー19の後端42は、同じ位置にある。
【0037】
車椅子用補助具40は、取り付け部45,46、突出部47,48、足踏み部49,50、連結部51,52を有する。取り付け部45,46、突出部47,48、足踏み部49,50、連結部51,52は、例えば、パイプ材で構成されている。また、取り付け部45,46、突出部47,48、足踏み部49,50、連結部51,52のそれぞれの材質は、例えば、金属、または、硬質合成樹脂である。金属は、アルミニウム、鋼、チタン、ステンレス、等のうちの何れかを選択できる。硬質合成樹脂は、四フッ化エチレン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、等のうち、何れかを選択できる。
【0038】
取り付け部45,46は、形状、構造及び寸法が同じである。パイプ形状の取り付け部45,46の内径は、第1ティッピングレバー18の後端41の外径、及び第2ティッピングレバー19の後端42の外径より大きい。突出部47,48は、形状、構造及び寸法が同じである。足踏み部49,50は、形状、構造及び寸法が同じである。連結部51,52は、左右対称の形状及び構造を有する。取り付け部45、突出部47、足踏み部49,50は、連結部51によって互いに接続(連結)されている。取り付け部46、突出部48、足踏み部49,50は、連結部52によって互いに接続(連結)されている。
【0039】
補助者13は、図4のように、車椅子用補助具40を車椅子10に対し接近及び離間せることにより、車椅子用補助具40を車椅子10へ取り付けること、車椅子用補助具40を車椅子10から取り外すこと、ができる。車椅子用補助具40を車椅子10へ取り付ける状態は、第1の取り付け状態及び第2の取り付け状態を含む。
【0040】
車椅子用補助具40の第1の取り付け状態は、図4のように、第1ティッピングレバー18の後端41を取り付け部45へ挿入し、かつ、第2ティッピングレバー19の後端42を取り付け部46へ挿入して、車椅子用補助具40を車椅子10へ取り付ける状態である。車椅子用補助具40が第1の取り付け状態であると、図5(A)のように、突出部47,48が、連結部51,52から鉛直方向で上に向けて突出される。
【0041】
補助者13が、第1の取り付け状態で取り付けられている車椅子用補助具40を、車椅子10に対し後方へ移動させると、図4のように、車椅子用補助具40が、第1ティッピングレバー18及び第2ティッピングレバー19から取り外される。
【0042】
車椅子用補助具40の第2の取り付け状態は、第1ティッピングレバー18の後端41を取り付け部46へ挿入し、かつ、第2ティッピングレバー19の後端42を取り付け部45へ挿入して、車椅子用補助具40を車椅子10へ取り付ける状態である。車椅子用補助具40が第2の取り付け状態であると、図5(B)のように、突出部47,48が、連結部51,52から鉛直方向で下に向けて突出される。車椅子用補助具40が第2の取り付け状態であると、突出部47,48は、車椅子10の前後方向A1において第1支持軸82及び第2支持軸83より後方に位置する。
【0043】
補助者13が、第2の取り付け状態で取り付けられている車椅子用補助具40を、車椅子10に対し後方へ移動させると、車椅子用補助具40が、第1ティッピングレバー18及び第2ティッピングレバー19から取り外される。
【0044】
パイプ材で構成される取り付け部45,46の内面には、図4のように抜け止め57がそれぞれ設けられていてもよい。抜け止め57は、取り付け部45,46が第1ティッピングレバー18、または、第2ティッピングレバー19から不用意に外れることを阻止するために設けられている。抜け止め57は、例えば、取り付け部45,46の内面にそれぞれ接合された合成ゴム、または、取り付け部45,46の内面にそれぞれ設けられた凸部、により構成される。
【0045】
また、図5(A),(B)に示す突出部47,48の先端にストッパ84がそれぞれ取り付けられていてもよい。このストッパ84は、突出部47,48の長手方向に移動及び停止可能に構成されている。例えば、ストッパ84が、突出部47,48に対してねじ機構により連結されており、ストッパ84を第1方向または第2方向へ回転させると、ストッパ84が、突出部47,48の長手方向の何れかに移動される。
【0046】
(車椅子装置の使用例)
車椅子装置80の使用例は、次の通りである。車椅子10を使用状態とし、図1及び図2のように、第1前輪30、第2前輪31、第1後輪28、第2後輪29を使用場所11へ接地させる。また、対象者12は、座シート27へ座り、背中を背シート38へ接触させる。さらに、対象者12は、足を第1フットサポート32及び第2フットサポート33へ載せる。補助者13は、車椅子10の後方で使用場所11へ立つ。車椅子用補助具40は、第1の取り付け状態で車椅子10へ取り付けられている。
【0047】
補助者13が手55でグリップ53を握り、かつ、使用場所11で車椅子10を前進させる方向へ歩くと、第1前輪30、第2前輪31、第1後輪28、第2後輪29が回転され、車椅子10が前進する。また、補助者13が手55でグリップ53を握り、かつ、使用場所11で車椅子10を後退させる方向へ歩くと、第1前輪30、第2前輪31、第1後輪28、第2後輪29が回転され、車椅子10が後退する。さらに、補助者13は、車椅子10を方向変換させることもできる。
【0048】
車椅子10の前方に段差81がある場合、補助者13は、図4のよに、片方の足56を足踏み部49,50へ載せ、かつ、足56に踏力を加える。すると、第1フレーム90及び第2フレーム91に対し、第1支持軸82及び第2支持軸83を中心として図6で時計回りのモーメントF1が加わる。その結果、第1前輪30及び第2前輪31は、使用場所11から持ち上げられる。
【0049】
そして、補助者13は、車椅子10を前進させ、第1前輪30及び第2前輪31を使用場所11の上段11Aへ載せる。さらに、補助者13は、足56を足踏み部49,50から離す。さらに、補助者13は車椅子10を前進させ、第1後輪28及び第2後輪29が段差81の直前へ到達させる。そして、補助者13がグリップ53,54を持ち上げると、車椅子10は、第1前輪30及び第2前輪31を支点として、前方へ持ち上がり、第1後輪28及び第2後輪29が使用場所11から離間する。
【0050】
さらに、補助者13は、第1前輪30及び第2前輪31が上段11Aに接地した状態で車椅子10を前進させる。そして、第1後輪28及び第2後輪29が上段11Aの上へ到達すると、補助者13はグリップ53,54を支持する力を低下させ、第1後輪28及び第2後輪29を上段11Aへ接地させる。このようにして、車椅子10は段差81を乗り越えることができる。
【0051】
一方、補助者13は、車椅子10を使用場所11で停止させ、かつ、車椅子用補助具40の取り付け状態を第1取り付け状態から第2取り付け状態に変更することができる。車椅子用補助具40が第2の取り付け状態であると、突出部47,48の先端、つまり、下端は、後端41,42より下方に位置する。具体的に説明すると、突出部47,48の下端は、使用場所11へ接地する直前の状態になる。
【0052】
ここで、対象者12が背シート38へ強くもたれ掛かると、図3に示す第1支持軸82及び第2支持軸83を中心とするモーメントが車椅子10へ加わる。具体的に説明すると、図7に示す車椅子10において、第1支持軸82及び第2支持軸83を中心とする時計回りのモーメント71が生じる。すると、図5(B)に示す突出部47,48の下端は、図7の使用場所11へ位置P1で即座に接地する。そして、位置P1は、第1後輪28及び第2後輪29が使用場所11へ接地する接地点P2よりも後方である。接地点P2は、鉛直方向で第1支持軸82及び第2支持軸83の真下に位置する。このため、車椅子10が後方へ傾くこと、または、車椅子10が後方へ転倒すること、を阻止できる。
【0053】
(実施形態の効果)
車椅子用補助具40は、車椅子10に取り付ける状態を第1の取り付け状態と第2の取り付け状態とに変更することで、第1前輪30及び第2前輪31を持ち上げる機能、及び車椅子10が後方へ傾くことを抑制する機能、の両方を実現できる。したがって、車椅子10の部品点数の増加を抑制できる。また、車椅子用補助具40は、元々設けられている第1ティッピングレバー18及び第2ティッピングレバー19へ取り付け及び取り外しできる。したがって、車椅子用補助具40を取り付ける対象となる車椅子10の形状及び構造が限定されず、利便性が向上する。
【0054】
また、車椅子用補助具40は、車椅子10に対し取り付け及び取り外しできる。そして、車椅子用補助具40が車椅子10から取り外されていると、補助者13は、車椅子10の状態を、折り畳み状態と使用状態とで相互に変更できる。
【0055】
さらに、車椅子用補助具40は、第1ティッピングレバー18及び第2ティッピングレバー19へ取り付けられる。このため、足踏み部49,50が足56で踏まれた場合に、第1フレーム90及び第2フレーム91へ同時に、かつ、同じ程度のモーメントが加わる。したがって、第1フレーム90及び第2フレーム91が、第1支持軸82及び第2支持軸83を中心として円滑に動作する。
【0056】
さらに、抜け止め57が設けられていると、車椅子用補助具40が、第1ティッピングレバー18及び第2ティッピングレバー19へ取り付けられた状態において、抜け止め57が後端41,42へ押し付けられる。そして、車椅子用補助具40が第1ティッピングレバー18及び第2ティッピングレバー19から不用意に外れるような力が生じた場合、抜け止め57と後端41,42との接触部の摩擦抵抗により、取り付け部45,46が、第1ティッピングレバー18、または、第2ティッピングレバー19から外れることを阻止できる。なお、補助者13が、車椅子用補助具40を第1ティッピングレバー18及び第2ティッピングレバー19から意図して取り外す場合、抜け止め57と後端41,42との接触部の摩擦抵抗を超える力を、車椅子用補助具40へ加えればよい。
【0057】
さらに、ストッパ84が設けられていると、車椅子10へ図7で時計方向のモーメントが加わった場合に、ストッパ84が使用場所11へ接触して、車椅子10の傾きが阻止される。ストッパ84が突出部47,48から突出する量を調整すると、図7車椅子10が時計方向のモーメントで傾く量を調整できる。
【0058】
(補足説明)
本実施形態で説明した事項の技術的意味の一例は、次の通りである。車椅子装置80は、車椅子装置の一例である。車椅子10は、車椅子の一例である。車椅子用補助具40は、車椅子用補助具の一例である。第1フレーム90及び第2フレーム91は、フレームの一例である。取り付け部45,46は、取り付け部の一例である。取り付け部45は、第1取り付け部の一例である。取り付け部46は、第2取り付け部の一例である。足踏み部49,50は、足踏み部の一例である。突出部47,48は、突出部の一例である。突出部47は、第1突出部の一例である。突出部48は、第2突出部の一例である。第1後輪28及び第2後輪29は、後輪の一例である。第1前輪30及び第2前輪31は、前輪の一例である。第1支持軸82及び第2支持軸83は、支持軸の一例である。仮想線C1は、仮想線の一例である。
【0059】
本実施形態は、図面を用いて開示されたものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、パイプ形状の第1ティッピングレバー18の後端41の内径、及び第2ティッピングレバー19の後端42の内径が、取り付け部45,46の外径より大きく設定されていてもよい。この場合、第1ティッピングレバー18の後端41、または、第2ティッピングレバー19の後端42が、取り付け部45,46内へ挿入されて、車椅子用補助具40が車椅子10へ取り付けられる。また、抜け止めは、取り付け部45,46の外面へ設けられる。さらに、車椅子用補助具40の足踏み部49,50は、何れか一方が設けられていてもよい。
【0060】
さらに、取り付け部45、突出部47、足踏み部49,50の材質が金属であると、連結部51を設けることなく、溶接、または、はんだ付けにより相互に接合されていてもよいも。取り付け部46、突出部48、足踏み部49,50の材質が金属であると、連結部52を設けることなく、溶接、または、はんだ付けにより相互に接合されていてもよいも。さらに、取り付け部45,46、突出部47,48、足踏み部49,50の材質が硬質合成樹脂であると、連結部51,52を設けることなく、相互に接合されて一体化されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本実施形態は、車椅子へ取り付け及び取り外しできる車椅子用補助具、及び車椅子装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
10…車椅子、28…第1後輪、29…第2後輪、30…第1前輪、31…第2前輪、40…車椅子用補助具、45,46…取り付け部、47,48…突出部、49,50…足踏み部、80…車椅子装置、82…第1支持軸、83…第2支持軸、90…第1フレーム、91…第2フレーム、C1…仮想線
【要約】
【課題】車椅子の前輪を持ち上げる機能、及び車椅子が後方へ傾くことを抑制する機能、の両方を備えた車椅子用補助具を提供する。
【解決手段】第1前輪30及び支持軸を設けたフレーム90と、支持軸によって回転可能に支持された第1後輪28と、を有する車椅子10へ取り付け及び取り外しが可能な車椅子用補助具40であって、支持軸より後方の箇所でフレームへ取り付け及び取り外しされる取り付け部と、取り付け部に接続され、かつ、補助者が足で踏むことができる足踏み部と、取付け部に接続され、かつ、鉛直方向に突出された突出部47と、を有し、取り付け部は、突出部47が鉛直方向で上に向く第1の取り付け状態と、突出部47が鉛直方向で下に向く第2の取り付け状態と、を変更可能な構成の車椅子用補助具10を設けた。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7