(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-03
(45)【発行日】2025-07-11
(54)【発明の名称】可視光殺菌システム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61L 2/08 20060101AFI20250704BHJP
B64D 11/02 20060101ALI20250704BHJP
A47K 17/00 20060101ALI20250704BHJP
E03D 9/00 20060101ALI20250704BHJP
E03D 11/00 20060101ALI20250704BHJP
【FI】
A61L2/08 104
B64D11/02
A47K17/00
E03D9/00 Z
E03D11/00 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021095838
(22)【出願日】2021-06-08
【審査請求日】2024-04-26
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(74)【代理人】
【識別番号】100217467
【氏名又は名称】鶴崎 一磨
(72)【発明者】
【氏名】ジョン シー. ベックマン
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0246169(US,A1)
【文献】特表2018-533400(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0375161(US,A1)
【文献】特開2018-027291(JP,A)
【文献】特表2022-514933(JP,A)
【文献】特開2010-207278(JP,A)
【文献】特開2020-036589(JP,A)
【文献】特表2017-528258(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0331611(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0030195(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の領域の内部における少なくとも1つの表面を消毒するよう構成された殺菌システムであって、
前記少なくとも1つの表面に不活化可視光を照射するよう構成された照射アセンブリを備え、前記不活化可視光は、前記少なくとも1つの表面に存在する微生物を中和するよう構成されて
おり、
前記照射アセンブリと通信状態にある照射制御ユニットをさらに備え、前記照射制御ユニットは、前記航空機の飛行状態に応じて、第1設定又は当該第1設定とは異なる第2設定にて前記不活化可視光を照射するように前記照射アセンブリを動作させるように構成されている、殺菌システム。
【請求項2】
前記不活化可視光の波長は、400nm~410nmである、請求項1に記載の殺菌システム。
【請求項3】
前記不活化可視光の波長は、405nmである、請求項1又は2に記載の殺菌システム。
【請求項4】
前記照射アセンブリは、前記不活化可視光を連続的に照射するよう構成されている、請求項1~3のいずれかに記載の殺菌システム。
【請求項5】
前記領域は、
前記航空機の内部における閉鎖空間である、請求項1~4のいずれかに記載の殺菌システム。
【請求項6】
前記
航空機はロック機構を有するドアをさらに備え、前記照射制御ユニットは、前記
ロック機構と通信接続されており、前記ドアがロックされているか、それともロック解除されているかに応じて、前記照射アセンブリを異なる動作モード間で切り替えるよう構成されている、請求項1~5のいずれかに記載の殺菌システム。
【請求項7】
前記照射制御ユニットは、前記照射アセンブリを第1モード及び第2モードで動作させるよう構成されており、前記第1モードでは、前記不活化可視光は第1強度で照射され、前記第2モードでは、前記不活化可視光は、前記第1強度とは異なる第2強度で照射される、請求項
1~6のいずれかに記載の殺菌システム。
【請求項8】
前記照射制御ユニットは、さらに、前記照射アセンブリを第3モードで動作させるよう構成されており、前記第3モードでは、前記不活化可視光は、前記第1強度及び前記第2強度とは異なる第3強度で照射される、請求項7に記載の殺菌システム。
【請求項9】
前記照射制御ユニットと通信状態にある1つ又は複数の人感センサをさらに備え、前記1つ又は複数の人感センサは、前記領域の内部における人の存在を検知するとともに、前記照射制御ユニットに存在信号を出力するよう構成されており、前記照射制御ユニットは、前記人感センサから受信した前記存在信号に基づいて、前記照射アセンブリを互いに異なる複数のモード間で選択的に切り替える、請求項
1~8のいずれかに記載の殺菌システム。
【請求項10】
前記航空機における便器の水が流されたときを特定するよう構成されたセンサをさらに備え、前記センサは、前記照射制御ユニットと通信状態にあり、前記照射制御ユニットは、前記便器の水が流されたことに応じて、前記照射アセンブリを互いに異なる複数のモード間で選択的に切り替える、請求項
1~9のいずれかに記載の殺菌システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概して、殺菌システム(sanitizing system)に関し、例えば、民間航空機などのビークルの内部における構造体及び領域の殺菌に用いられる殺菌システムに関する。
【背景技術】
【0002】
民間航空機などのビークルは、様々な場所から場所へ乗客を輸送するために用いられる。現在、航空機の内部における表面を消毒又は殺菌するためのシステムが開発されており、例えば紫外(UV)光を利用するものがある。
【0003】
既知のUV光殺菌方法に、構造体の表面を殺菌するために広域スペクトルUVC光を構造体に照射するものがある。しかしながら、種々の微生物をUVC光で死滅させるには、相当の時間(例えば、3分)を要する。また、UVC光に対して必ずしも脆弱でない種類の微生物もある。つまり、そのような微生物は、UVC光を照射しても殺菌できない可能性がある。
【0004】
また、微生物の種類によっては、UVC光に対して耐性化する可能性がある。例えば、特定の種類の微生物は、最初はUVC光で死滅させることができていても、UVC光の照射を長期に亘って継続的に行うと、これらの微生物がUVC光に対して耐性化し、UVC光のばく露を受けても死滅しないようになる可能性がある。
【0005】
加えて、UV光の中には、人体に直接照射すると有害となる可能性のある種類の光も含まれる。例えば、既知のUVシステムの中には、人体に対して有害な可能性のある254nmの波長のUV光を照射するものがある。したがって、既知のUV光殺菌システム及び方法には、人がいない状況においてのみ使用されるものもある。例えば、化粧室用のUV光殺菌システムは、化粧室に人がいない場合に駆動され、化粧室に人がいる場合には、駆動を停止される。
【0006】
また、継続的にUV照射することによって劣化が進む材質もある。このような劣化により、特定の繊維製品、柔軟な部材、内装材、特にプラスチック類の交換が必要になって、費用がかさむ可能性がある。
【発明の概要】
【0007】
人がいる状況においても安全に使用できるとともに、素材の劣化を生じさせることなく構造体及び部材の表面を消毒するためのシステム及び方法が必要とされている。さらに、細菌や病原菌などの微生物を効率的且つ効果的に中和する(neutralizing)ためのシステム及び方法が必要とされている。
【0008】
これらの必要性を念頭におき、本開示のいくつかの実施形態は、領域の内部における少なくとも1つの表面を消毒するよう構成された殺菌システムを提供する。前記殺菌システムは、前記少なくとも1つの表面に不活化可視光を照射するよう構成された照射アセンブリを備える。前記不活化可視光は、前記少なくとも1つの表面に存在する微生物を中和するよう構成されている。少なくとも1つの実施形態において、前記不活化可視光の波長は、400nm~410nmである。例えば、前記不活化可視光の波長は、405nmである。少なくとも1つの実施形態において、前記照射アセンブリは、前記不活化可視光を連続的に照射するよう構成されている。少なくとも1つの実施形態において、前記領域は、例えば、航空機、鉄道車両、船及び潜水艦、宇宙船などのビークルの内部における閉鎖空間である。
【0009】
少なくとも1つの実施形態において、照射制御ユニットは、前記照射アセンブリと接続状態にある。前記照射制御ユニットは、前記不活化可視光を照射するように前記照射アセンブリを動作させるよう構成されている。
【0010】
例えば、前記照射制御ユニットは、前記照射アセンブリを第1モード及び第2モードで動作させるよう構成されている。前記第1モードでは、前記不活化可視光は第1強度で照射される。前記第2モードでは、前記不活化可視光は、前記第1強度とは異なる第2強度で照射される。さらに別の例では、前記照射制御ユニットは、前記照射アセンブリを第3モードで動作させるよう構成されている。前記第3モードでは、前記不活化可視光は第3強度で照射される。前記第3強度は、前記第1強度及び前記第2強度とは異なる。
【0011】
少なくとも1つの実施形態において、1つ又は複数の人感センサは、前記照射制御ユニットと通信状態にある。前記1つ又は複数の人感センサは、前記領域の内部における人の存在を検知するとともに、前記照射制御ユニットに存在信号を出力するよう構成されている。前記照射制御ユニットは、前記人感センサから受信した前記存在信号に基づいて、前記照射アセンブリを互いに異なる複数のモード間で選択的に切り替える。
【0012】
少なくとも1つの実施形態において、便器の水が流されたときを特定するよう構成されたセンサが含まれる。前記センサは、前記照射制御ユニットと通信状態にある。前記照射制御ユニットは、前記便器の水が流されたことに応じて、前記照射アセンブリを互いに異なる複数のモード間で選択的に切り替える。
【0013】
少なくとも1つの実施形態において、ドアにはロック機構が設けられている。前記照射制御ユニットは、前記ロック機構(例えば、前記ロック機構のスイッチ)と通信状態にある。前記照射制御ユニットは、前記ドアの施錠又は開錠に応じて、前記照射アセンブリを互いに異なる複数のモード間で選択的に切り替える。
【0014】
一例として、前記照射アセンブリは、可視光発光素子の第1の組を含む。前記可視光発光素子の第1の組は、白色光(当該光には、不活化作用を有するスペクトル成分が含まれる)を照射するよう構成されている。前記照射アセンブリは、さらに、可視光発光素子の第2の組を含む。前記可視光発光素子の第2の組は、前記不活化可視光(当該光には、不活化作用のあるスペクトル範囲外のスペクトル成分は、少ししか含まれない)を照射するよう構成されている。
【0015】
本開示の特定の実施形態は、領域の内部における少なくとも1つの表面を消毒するよう構成された殺菌方法を提供する。前記殺菌方法は、照射アセンブリによって、前記少なくとも1つの表面に不活化可視光を照射することを含み、前記不活化可視光は、前記少なくとも1つの表面に存在する微生物を中和する(例えば、無力化する、或いは破壊する)よう構成されている。少なくとも1つの実施形態において、前記照射は、前記不活化可視光を連続的に照射することを含む。
【0016】
少なくとも1つの実施形態において、前記殺菌方法は、さらに、照射制御ユニットを前記照射アセンブリに通信可能に接続することと、前記照射制御ユニットによって前記照射アセンブリを動作させることと、を含む。例えば、前記動作させることは、前記照射アセンブリを第1モード及び第2モードで動作させることを含み、前記第1モードでは、前記不活化可視光は第1強度で照射され、前記第2モードでは、前記不活化可視光は、前記第1強度とは異なる第2強度で照射される。さらに別の例では、前記動作させることは、前記照射アセンブリを第3モードで動作させることをさらに含み、前記第3モードでは、前記不活化可視光は、前記第1強度及び前記第2モードとは異なる第3強度で照射される。
【0017】
少なくとも1つの実施形態において、前記殺菌方法は、1つ又は複数の人感センサを前記照射制御ユニットに通信可能に接続することと、前記1つ又は複数の人感センサによって、前記領域の内部における人の存在を検知することと、前記1つ又は複数の人感センサによって、前記照射制御ユニットに存在信号を出力することと、前記人感センサから受信した前記存在信号に応じて、前記照射制御ユニットによって、前記照射アセンブリを互いに異なる複数のモード間で選択的に切り替えることと、をさらに含む。
【0018】
少なくとも1つの例において、前記殺菌方法は、便器の水が流されたことに応じて、前記照射制御ユニットによって、前記照射アセンブリを互いに異なる複数のモード間で選択的に切り替えることを含む。
【0019】
少なくとも1つの例において、前記殺菌方法は、ドアの施錠又は開錠に応じて、前記照射制御ユニットによって、前記照射アセンブリを互いに異なる複数のモード間で選択的に切り替えることを含む。
【0020】
本開示の特定の実施形態は、少なくとも1つの領域を画成する内部キャビンと、前記少なくとも1つの領域の内部の少なくとも1つの表面を消毒するよう構成された殺菌システムと、を含むビークルを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】本開示の実施形態による、閉鎖空間用の可視光殺菌システムを示す概略図である。
【
図1B】本開示の実施形態による、領域用の可視光殺菌システムを示す概略図である。
【
図3】本開示の実施形態による、閉鎖空間用の可視光殺菌方法を示すフローチャートである。
【
図4】本開示の実施形態による、照射アセンブリの底面斜視図である。
【
図5】不活化可視光を連続照射した場合の細菌レベルの時間変化を示すグラフである。
【
図6】本開示の実施形態による、標準照射モードにおける分光放射照度を示すグラフである。
【
図7】本開示の実施形態による、高殺菌モードにおける分光放射照度を示すグラフである。
【
図8】本開示の実施形態による、常夜灯モードにおける分光放射照度を示すグラフである。
【
図9】本開示の実施形態による航空機の正面斜視図である。
【
図10A】本開示の実施形態による航空機の内部キャビンの平面図である。
【
図10B】本開示の実施形態による航空機の内部キャビンの平面図である。
【
図11】本開示の実施形態による航空機の内部キャビンの内部斜視図である。
【
図12】航空機の内部キャビンにおける化粧室の内部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上述した概要、及び、後述するいくつかの実施形態の詳細な説明は、添付図面を参照することで、より明確に理解されよう。本明細書において、単数形で記載されている要素又はステップは、必ずしも複数の要素又はステップを排除するものではない。さらに、「一実施形態」に言及することは、その実施形態に記載した特徴を取り入れた他の実施形態の存在を排除することを意図するものではない。また、特に明記されていない限り、特定の条件に該当する1つの要素又は複数の要素を「備える/含む(comprising)」又は「有する(having)」実施形態は、その条件に該当しない他の要素をさらに含みうる。
【0023】
本開示のいくつかの実施形態は、照射アセンブリ(light assembly)を備える殺菌システムを提供するものであり、当該照射アセンブリは、人間に照射しても安全でありながら、細菌(bacteria)、病原菌(germs)、及びウイルスなどの微生物を効果的に不活化できる不活化可視光を出射する。前記不活化可視光は、人間の目で見える光スペクトル領域に含まれる波長を有する。少なくとも1つの実施形態において、前記不活化可視光の波長は、400nm~425nmである。例えば、波長405nmの不活化可視光は、特定の細菌、病原菌、及びウイルスなどの様々な微生物を不活化するのに効果的であることが分かっている。ここに記載したように、本開示の実施形態は、可視光を照射して構造体及び部材の表面を殺菌するシステム及び方法を提供する。
【0024】
本開示の実施形態は、ビークルの内部キャビンなどにおいて、不活化可視光を連続して(つまり、間断なく)照射可能な可視光殺菌システム及び方法を提供する。少なくとも1つの実施形態において、前記システム及び方法は紫外光を照射しないので、人がいる環境においても、より安全に使用できる。可視光による消毒は、人感センサ(presence sensor)と組み合わせることで、互いに異なる複数のモードに基づいて照射アセンブリを動作させるようにし、閉鎖空間(enclosed space)に人がいないときは、より高い線量で不活化可視光を照射させることができる。不活化可視光は、照射アセンブリから連続的に照射することができ、これにより、特定の細菌、病原菌、及びウイルスなどの様々な微生物全般の発生を防止し、滅菌し、又は殺菌することができる。
【0025】
少なくとも1つの実施形態において、照射アセンブリは、移動行程(例えば、飛行フェーズ)に基づいて、選択的に動作させることができる。例えば、ギャレー、化粧室、貨物室、フライトデッキ、及び/又は乗務員の休憩スペースなどの閉鎖空間において、照射アセンブリは、照射方法を切り替えながら、不活化可視光を連続して照射することができる。照射アセンブリは、例えば、ビークルの内部キャビン全体に複数設置することができる。不活化可視光の発光装置(例えば、発光ダイオード、電球、又はランプなど)を追加すれば、照射アセンブリは、様々な照射モードを選択的に切り替えることができ、いずれのモードにおいても、不活化可視光を連続して照射するような構成が可能である。
【0026】
少なくとも1つの実施形態において、不活化可視光は、人がいる場合には低強度モードで照射され、人がいない場合には高強度モードで照射される。例えば、高強度モードは、人がいる環境で使用しても安全ではあるが、照射される光が、例えば視覚的に快適でなかったり、及び/又は、読書に適していなかったりする。照射制御ユニットは、予め定められた基準に基づいて、照射アセンブリを自動で制御することができる。付加的又は選択的に、照射アセンブリは、手動で制御することができる。例えば、照射制御ユニットは、閉鎖空間における人の存在を検知する1つ又は複数の人感センサと通信状態に配置可能である。照射制御ユニットは、閉鎖空間における人の在不在に基づいて、照射アセンブリを、異なる複数のモード間で選択的に切り替えることができる。
【0027】
少なくとも1つの実施形態において、照射アセンブリは、化粧室の内部で使用することができる。照射制御ユニットは、照射アセンブリと、便器の水が流されたことを検知するセンサと、ドアの開閉を検知するセンサと、通信状態にある。照射制御ユニットは、これらセンサを監視し、水が流されたこと、及び/又はドアが開放されたこと(これは、利用者が化粧室から退出し、不在であることを示す)を検知すると、不活化可視光の強度を高めて、化粧室内の表面を効率的に消毒する。これに対し、化粧室に利用者がいることをセンサが示すと、照射制御ユニットは、不活化光の強度を下げるとともに、場合によっては、化粧室の照明を視覚的により望ましい状態にすべく、暖色系又は寒色系の白色光の強度を高めてもよい。
【0028】
記載の通り、本開示の実施形態は、ビークルの内部キャビンなどの閉鎖空間における表面を殺菌するシステム及び方法を提供する。照射アセンブリは、不活化可視光を、(例えば、紫外線を利用するシステム及び方法のように)間欠的に照射するのではなく、連続的に照射する。このように、本開示の実施形態は、閉鎖空間における表面を連続的且つ自動的に殺菌するシステム及び方法に関する。
【0029】
記載のとおり、殺菌システムは、閉鎖空間における少なくとも1つの表面を消毒するよう構成されている。前記殺菌システムは、前記少なくとも1つの表面に、(UV光ではなく)不活化可視光を照射するよう構成された照射アセンブリを備える。前記不活化可視光は、前記少なくとも1つの表面に存在する微生物を中和(例えば、不活化、殺菌、滅菌、又は減菌)するよう構成されている。
【0030】
図1Aは、本開示の実施形態による、閉鎖空間102などの領域で用いるための可視光殺菌システム100を示す概略図である。可視光殺菌システム100は、閉鎖空間、半閉鎖空間、開放空間など、さまざまな領域において用いることができる。少なくとも1つの実施形態において、閉鎖空間は、直射日光を受けない空間である。
【0031】
閉鎖空間102は、床104、天井106、及び、これら床104と天井106との間に延在する壁108によって画成されている。複数ある壁108のうちの1つには、ドア110が可動に取り付けられている。ドア110は、当該ドア110を施錠位置に固定するよう構成されたロック機構(lock)112を含む。ロック機構112が施錠位置にある場合、ドア110を開けることはできない。ロック機構112が解錠位置にある場合、ドア110を開けることができる。閉鎖空間102は、民間航空機の機内における狭い空間であってもよい。例えば、閉鎖空間102は、航空機内の化粧室である。他の例では、閉鎖空間102は、航空機内のギャレーである。さらに他の例では、閉鎖空間102は、航空機内の客室である。閉鎖空間102は、ドア110を含む場合も、含まない場合もある。閉鎖空間102は、様々な他のビークル及び/又は構造体の内部における閉鎖空間でもよい。例えば、閉鎖空間102は、商業ビル、庁舎ビル、又は居住用のビルの一室でもよいし、列車、バス、又は船などの客室でもよい。
【0032】
閉鎖空間102は、使用後に殺菌(例えば、消毒、除菌、又は、清浄化)することが望ましい少なくとも1つの構造体114を含む。例えば、構造体114は、航空機に設けられた化粧室の便器、洗面台、床、カウンター、及び/又はキャビネットなどである。
【0033】
可視光殺菌システム100は、ハウジング117及び可視光発光装置118を含む照射アセンブリ116を備える。照射アセンブリ116は、閉鎖空間102の一部に、例えばハウジング117を介して取り付けられる。例えば、照射アセンブリ116は、天井106に取り付けられる。他の例では、照射アセンブリ116は、壁108又は床104に取り付けられる。少なくとも1つの実施形態において、閉鎖空間102には、複数の照射アセンブリ116が配置されている。
【0034】
少なくとも1つの実施形態において、可視光発光装置118は、1つ又は複数の可視光発光素子(visible light element)120を含み、例えば、ランプ、発光ダイオード(LED)、マイクロフィラメント、光ファイバ素子、及び/又は電球などを含む。可視光発光装置118は、不活化可視光124を含む可視光122を出射する。
【0035】
少なくとも1つの実施形態において、不活化可視光124は、400nm~425nmの波長を有する。より具体的な例では、不活化可視光124の波長は、400nm~410nmである。少なくとも1つの実施形態において、不活化可視光124の波長は、405nmである。波長405nmの不活化可視光124は、特定の細菌、病原菌、及びウイルスなどの様々な微生物を効果的に中和することが確認されている。例えば、波長405nmの可視光は、ある種の微生物の細胞に含まれるポルフィリンを励起させる。波長405nmの可視光を連続照射することで、ポルフィリンが過剰に励起して細胞に損傷を与え、これにより、細胞内に酸化反応が生じて、細胞が無力化する。特に、細胞壁に酸化的損傷が発生し、よって、細胞が機能しなくなる。照射アセンブリ116は、不活化可視光124を連続的に照射することにより、不活化可視光124を照射した閉鎖空間における表面に存在する微生物を不活化することができる。したがって、照射アセンブリ116は、閉鎖空間102における表面を効果的且つ効率的に殺菌することができる。
【0036】
図2は、光スペクトル126を示す図である。光スペクトル126は、紫外光128、可視光130、及び赤外光132を含む。可視光130には、405nmの青紫色(indigo)光などの不活化可視光124が含まれている。不活化可視光は、例えば、波長254nm又は265nmなどの典型的なUVC殺菌光134とは対照的な光である。例えば、405nmの青紫色光などの不活化可視光124は、人に安全である。つまり、波長405nmの青紫色光は人体にばく露しても安全である。したがって、不活化可視光124の照射は、閉鎖空間102に人がいる場合でも、照射アセンブリ116(
図1Aを参照)から連続的に照射することができる。これに対し、紫外線による殺菌システムは、典型的にはUVC殺菌光134を間欠的に照射するものであり、例えば、閉鎖空間102に人がいない場合に用いられる。ただし、連続照射される不活化可視光124とは異なり、UVC殺菌光134の間欠照射では、UVC殺菌光134が照射されていない間は、微生物の活性化及び/又は増殖が許容されることになる。
【0037】
再び
図1Aを参照すると、照射制御ユニット136は、1つ又は複数の有線又は無線接続を介して照射アセンブリ116と通信状態にある。照射制御ユニット136は、閉鎖空間102の内部に配置又は接続されているか、或いは、当該空間とは遠隔に配置されている。少なくとも1つの実施形態において、照射制御ユニット136は、照射アセンブリ116の内部に収容されている。照射制御ユニット136は、照射アセンブリ116の動作を制御するよう構成されており、例えば、互いに異なる複数の照射モードを選択的に切り替えるなどする。なお、これらのモードは、すべて不活化可視光124が照射されるモードでもよい。少なくとも1つの実施形態において、照射制御ユニット136は、例えば無線アップロードによって読み込まれる様々なプロファイルを含むファームウェアプロファイルを使用することができる。
【0038】
少なくとも1つの実施形態において、照射制御ユニット136は、照射アセンブリ116を第1モード及び第2モードで動作させるよう構成されている。不活化可視光124は、第1モードでは第1強度で照射される。また、不活化可視光124は、第2モードでは、第1強度とは異なる第2強度で照射される。例えば、第2強度は、第1強度よりも高い強度である。少なくとも1つの実施形態において、第2強度は、第1強度の少なくとも4倍である。さらに、照射制御ユニット136は、照射アセンブリ116を第3モードで動作させるよう構成されている。不活化可視光124は、第3モードでは第3強度で照射される。第3強度は、第1強度及び第2強度とは異なる。例えば、第3強度は、第1強度より高いが、第2強度より低い強度である。
【0039】
ユーザインターフェース138は、例えば、コンピュータ・ステーション、可搬型コンピュータ、及び/又は手持ち型デバイス(例えば、スマートフォン又はスマートタブレット)などであり、1つ又は複数の有線又は無線接続を介して照射制御ユニット136と通信状態にある。ユーザインターフェース138は、照射アセンブリ116を人が選択的に制御することを可能にする。例えば、ユーザインターフェース138は、照射アセンブリ116をオンオフしたり、及び/又は異なるモードを選択したりするなどの操作を人が手動で行うことを可能にする。必須ではないが、可視光殺菌システム100は、ユーザインターフェース138を含んでいなくてもよい。
【0040】
少なくとも1つの実施形態において、可視光殺菌システム100の運用アーキテクチャ(operational architecture)は、例えば航空機などの運用アーキテクチャと連動又は同期した構成などでもよい。例えば、航空機が巡航高度に到達すると、例えば、車輪格納コマンドに連動して制御ユニットから照射制御ユニット136に信号を送り、照射アセンブリ116を自動的に第1設定で動作させる。他の例では、航空機の降下中に照射制御ユニット136に信号を送り、照射アセンブリ116を自動的に高殺菌モードなどの第2設定で動作させ(例えば、降下中は、化粧室は使用されない)、航空機がゲートに到着すると、第1設定に戻して動作させる。
【0041】
閉鎖空間102には、1つ又は複数の人感センサ140を取り付けることができる。人感センサ140は、超音波センサ、赤外線センサ、及び/又は熱センサなどであり、閉鎖空間における人の存在を検知するよう構成されている。少なくとも1つの実施形態において、少なくとも1つの人感センサ140(例えば、床104に接続されている)は、閉鎖空間102における質量又は重量を認識、検出することで、人の存在を検知するデジタル重量計である。人感センサ140は、1つ又は複数の有線又は無線接続を介して照射制御ユニット136と通信状態にある。照射制御ユニット136は、人感センサ140から受信した存在信号(presence signal)に基づいて、閉鎖空間102における人の在否を判定する。少なくとも1つの実施形態において、照射制御ユニット136は、閉鎖空間102における人の在否に基づいて、異なるモードで可視光122を照射させるように照射アセンブリ116を動作させる。
【0042】
例えば、人感センサ140から受信した存在信号に基づいて、閉鎖空間102に人がいると照射制御ユニット136が判定すれば、照射制御ユニット136は、照射アセンブリ116を第1モード(例えば、標準照射モード)で動作させる。このモードでは、可視光発光装置118は、可視光122として、不活化可視光124(例えば、波長405nm)を含む白色光を照射する。不活化可視光124を含む白色光を照射することで、閉鎖空間102を一般的な白色光照明で照らすことができ、閉鎖空間102にいる人間に不活化可視光124は認識されない。このように不活化可視光124を連続的に照射することで、閉鎖空間102における表面を殺菌しつつ、視覚的に望ましく、馴染のある白色光で閉鎖空間102を照らすことができる。
【0043】
人感センサ140からの存在信号が、閉鎖空間102に人が不在であることを示す場合、照射制御ユニット136は、照射アセンブリ116を、第1モードとは異なる第2モードで動作させることができる。例えば、第2モードは、高清浄(deep clean)モードであって、強度又は出力を上げて不活化可視光124を照射する。例えば、高清浄モードでは、照射アセンブリ116は、波長405nmの不活化可視光124を、第1モードの4倍の強度で照射する。第2モードでは、照射アセンブリ116は、白色光を照射しても、しなくてもよい。したがって、照射アセンブリ116に供給される電力について、可視光発光装置118のうち、不活化可視光以外の波長を照射する1つ又は複数の部分に供給される電力を分岐させて、不活化可視光124を照射する1つ又は複数の部分に供給されるようにすることが可能である。このようにして、照射アセンブリ116の消費電力は、電力の再分配によって調整されるのであって、消費電力は増加しない。
【0044】
第2モードでは、より強度の高い不活化可視光124が照射されるが、不活化可視光124は人間にばく露しても安全である。ただし、不活化可視光124は、視覚的に好ましくないと人が感じる可能性もあるので、閉鎖空間102に人がいる場合には照射しないとしてもよい。
【0045】
照射アセンブリ116は、照射制御ユニット136の制御下で、例えば、白色光プラス高殺菌モードなどの第3モードで動作することも可能である。このモードは、例えば、閉鎖空間102に人がいないときに使用される。このモードでは、白色光(不活化可視光124の少なくとも一部を含む)と、強度を高めることなどによって殺菌作用を高めた不活化可視光124と、を使用する。例えば、発光素子のうちのいくつかは、不活化可視光専用の発光素子であってもよい。これにより、高強度の不活化可視光124を、白色光と組み合わせて照射することができる。不活化可視光124を追加すると全体としての照度が下がる可能性があるので、これを利用することで、殺菌作用を高めつつ、読書用の照明を提供することができる。例えば、第3モードは、内部キャビンにおいて就寝中の乗客もいるような夜間の時間帯に使用することができる。
【0046】
本明細書において、第1、第2、第3などの用語は、単に標識として用いられているに過ぎない。例えば、第1モードは、任意に第2モード又は第3モードであってもよいし、第2モードは、任意に第1モード又は第3モードであってもよいし、第3モードは、任意に第1モード又は第2モードであってもよい。
【0047】
ユーザインターフェース138は、照射アセンブリ116を互いに異なる複数のモード間で選択的に切り替えるために使用される。他の例では、照射アセンブリのモードは、照射制御ユニット136によって自動で切り替えられ、この切り替えは、例えば、閉鎖空間102(例えば、ビークルの内部キャビン)における人の在否、時間帯、航程(例えば、民間航空機における離陸、巡航、及び着陸など)に基づいて行われる。
【0048】
他の例では、構造体114は、センサ140を含む。例えば、構造体114は、便器であり、センサ140は、便器の水が流されると、これを検知するよう構成されている。例えば、センサ140は、音感センサ、流体流量センサ、及び/又は圧力センサなどである。照射制御ユニット136は、この水洗センサと通信状態にあり、便器の水が流されたことに基づいて、モードを選択的に切り替える構成でもよい。例えば、照射制御ユニット136は、便器の水が流されてから、及び/又は、閉鎖空間102から利用者が退出して不在であることを人感センサ140が検知してから、例えば1分などの所定時間が経過すると、照射アセンブリ116を高清浄モードに切り替える構成でもよい。
【0049】
他の例では、照射制御ユニット136は、閉鎖空間が空き状態であることを、ロック機構112との通信により判定する構成でもよい。例えば、照射制御ユニット136は、ドア110が施錠されているときは、閉鎖空間102が空き状態であると判定してもよい。ドア110が施錠されているときは、照射制御ユニット136は、例えば、記載したような標準照射モードにおいてのみ照射アセンブリ116を動作させる。他の例では、照射制御ユニット136は、第2モード(例えば、高清浄モード)への切り替えを、一連のイベントに基づいて行うことができ、例えば、構造体114が使用されたことに始まり、次いで、ドア110が開錠され、その後ドア110が閉状態になる一連のイベントに基づいて、切り替えを行ってもよい。
【0050】
図1Bは、本開示の実施形態による、領域用の可視光殺菌システムを示す概略図である。この実施形態では、照射アセンブリ116は、例えば、スタンド119に支持された可視光発光装置118を含む。スタンド119は、1つ又は複数の可動部を含んでもよい。例えば、照射アセンブリ116は、デスク、キャビネット、又は床などの表面に支承されるように構成されたランプである。他の例では、照射アセンブリ116は、手持ち式のシステムの一部である。例えば、照射アセンブリ116は、ワンド(wand)に組み込まれていてもよい。
【0051】
図3は、本開示の実施形態による、閉鎖空間用の可視光殺菌方法を示すフローチャートである。
図1A、
図1B、及び
図3を参照すると、200において、照射制御ユニット136は、照射アセンブリ116を第1モードで動作させる。当該モードでは、不活化可視光124を含む白色光が照射される。202において、照射制御ユニット136は、本明細書に記載したように、例えば、1つ又は複数の人感センサ140を介して、及び/又は、ロック機構112を介して、閉鎖空間における人の在否を判定する。人がいる場合には、本方法は200に戻る。一方、人がいない場合には、本方法は、202から204に進み、照射制御ユニット136は、照射アセンブリ116を第2モードで動作させる。当該モードでは、不活化可視光124は、より高い強度(例えば、第1モードの4倍の強度)で照射される。第2モードでは、白色光は照射されても、されなくてもよい。次いで、本方法は、202に戻る。この可視光殺菌方法は、さらに第3モードを含んでもよい。当該モードでは、白色光(不活化可視光の少なくとも一部を含む)に、さらに不活化可視光を追加して照射される。
【0052】
少なくとも1つの他の実施形態において、本方法は、202において人の在否を検知する代わりのステップとして(或いは、必須ではないが追加のステップとして)、タイマー、プログラム、又は様々な他の種類のセンサやマイクなどに基づいて動作することを含んでもよい。例えば、照射アセンブリは、所定時間の経過後に、モードを切り替えてもよい。他の例では、照射アセンブリは、マイクからの音声などによる音声コマンドに基づいてモードの切り替えを行ってもよい。
【0053】
本明細書において、「制御ユニット」、「中央処理装置」、「CPU」、「コンピュータ」、又はこれらに類する用語は、プロセッサ又はマイクロプロセッサをベースとする任意のシステムを含み、そのようなシステムとしては、マイクロコントローラ、縮小命令セットコンピュータ(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、論理回路、及び、本明細書に記載の機能を実行可能なハードウェア、ソフトウェア、又はこれらの組み合わせを有する他の任意の回路やプロセッサを使用するシステムが挙げられる。ただし、これらは、あくまでも例示であって、当該用語の定義及び/又は意味を何ら限定するものではない。例えば、照射制御ユニット136は、照射アセンブリ116の動作を上述したように制御するよう構成された1つ又は複数のプロセッサを含みうる。
【0054】
照射制御ユニット136は、1つ又は複数のデータ記憶装置又は素子(例えば、1つ又は複数のメモリ)に保存された一組の命令を実行することでデータを処理するよう構成されている。例えば、照射制御ユニット136は、1つ又は複数のメモリを含むか、或いは、1つ又は複数のメモリに接続されている。データ記憶装置は、所望又は必要に応じて、データ又は他の情報も記憶することができる。データ記憶装置は、プロセッサ装置に含まれる情報源の一形態であってもよいし、物理的なメモリ素子であってもよい。
【0055】
前記一組の命令には、プロセッサ装置としての照射制御ユニット136に対して、本明細書に記載の要旨についての様々な実施形態による方法及び処理などの特定の動作を実行するように指示する様々なコマンドが含まれうる。前記一組の命令は、ソフトウェアプログラムの形式であってもよい。また、このようなソフトウェアプログラムとしては、システムソフトウェア又はアプリケーションソフトウェアなど、様々な形態のものが可能である。さらに、このようなソフトウェアは、複数の個別のプログラムの集合体であっても、より大きなプログラムに含まれる部分プログラムであっても、プログラムの一部であってもよい。また、このようなソフトウェアは、オブジェクト指向プログラミングによるプログラムモジュールを含みうる。プロセッサ装置は、入力データの処理をユーザコマンドに応じて実行してもよいし、先に行った処理結果に応じて実行してもよいし、他の処理マシンからの要求を受けて実行してもよい。
【0056】
本明細書における実施形態の図面には、照射制御ユニット136などの制御ユニット又は処理ユニットが1つ又は複数示されている。なお、処理ユニット又は制御ユニットは、回路(circuit, circuitry)、又はそれらの一部を表しており、これらは、本明細書に記載の動作を実行するための命令(例えば、コンピュータハードドライブ、ROM、又はRAMなどの、有形の非一時的コンピュータ可読記憶媒体に格納されたソフトウェア)に関連付けられたハードウェアとして実現することができる。このようなハードウェアには、本明細書に記載の機能を実行するように物理的に配線された状態機械回路が含まれる。このようなハードウェアは、必須ではないが、マイクロプロセッサ、プロセッサ、又はコントローラなどの1つ又は複数の論理デバイスを含むか、及び/又は、これに接続された電子回路であってもよい。必須ではないが、照射制御ユニット136は、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、及び/又はマイクロプロセッサなどのうちの1つ又は複数で構成される処理回路であってもよい。様々な実施形態における回路は、本明細書で説明する機能を実行するための1つ又は複数のアルゴリズムを実行するよう構成することができる。前記1つ又は複数のアルゴリズムは、フローチャートや方法に明示されているか否かに関わらず、本開示の実施形態の側面を含みうる。
【0057】
本明細書において、「ソフトウェア」及び「ファームウェア」なる用語は、同義に用いられており、データ記憶装置(例えば、1つ又は複数のメモリ)に格納され、コンピュータにより実行される任意のコンピュータプログラムを含む。このようなメモリとしては、RAMメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、及び不揮発性RAM(NVRAM)メモリが挙げられる。上述のデータ記憶装置の種類は、あくまでも例示であって、コンピュータプログラムの格納に使用可能なメモリの種類を限定するものではない。
【0058】
図4は、本開示の実施形態による、照射アセンブリ116の底面斜視図である。少なくとも1つの実施形態において、可視光発光装置118は、可視光発光素子300(例えば、発光ダイオード(LED))の第1の組と、可視光発光素子302(例えば、LED)の第2の組を含む。可視光発光素子300は、第1の波長域の光を出射するよう構成されており、可視光発光素子302は、第1の波長域とは異なる第2の波長域の光を出射するよう構成されている。例えば、第1の波長域は、白色光域である。よって、可視光発光素子300は、白色光を出射するよう構成されている。第2の波長域は、例えば、400nm~410nmなどの不活化可視光域である。よって、可視光発光素子302は、不活化可視光のみを出射する専用の素子として構成されている。これに対し、可視光発光素子300は、より広い波長域の光であって、不活化可視光も含む光を出射するように構成されている。
【0059】
図示のとおり、可視光発光素子300及び302は、行又は列を構成するように配置されている。他の選択肢として、可視光発光素子300は、互いに近接して第1の集合として配置し、可視光発光素子302は、互いに近接して第2の集合として配置してもよい。他の例として、可視光発光素子300は、可視光発光素子302の間に点在するように配置しても、間隔をおいて(例えば、交互に)配置してもよい。
【0060】
図5は、不活化可視光を連続照射した場合の細菌レベルの時間変化を示すグラフである。連続照射曲線400は、不活化可視光を連続照射することによって、細菌レベルが、時間の経過とともに効果的且つ効率的に安定して低下することを示している。これに対し、UV光を間欠的に照射すると、パターン402で示す様に、UV光によって細菌が迅速に減少するものの、照射が間欠的(つまり、散発的)であることにより、時間t1、t2、及びt3における照射までの間に、細菌が再び増殖する。
【0061】
図6は、本開示の実施形態による、標準照射モード(例えば、第1モード)における分光放射照度を示すグラフである。標準照射モードは、人がいる環境で用いるために構成されたモードである。
図1A、
図1B、及び
図6を参照すると、照射制御ユニット136は、閉鎖空間102に人がいると判定したときは、照射制御ユニット136は、照射アセンブリ116を標準照射モードで動作させる。図示の通り、標準照射モードの間は、白色光500が照射される。白色光500は、第1強度502の不活化可視光124を含む。標準照射モードでは、例えば、6500Kの白色LEDと、405nmのLEDと、2800Kの白色LEDと、を駆動させることで、グラフに示す可視光を出射させる。
【0062】
図7は、本開示の実施形態による、高殺菌モード(例えば、第2モード)における分光放射照度を示すグラフである。高殺菌モードは、人がいない環境で用いるために構成されたモードである。
図1A、
図1B、及び
図7を参照すると、高殺菌モードでは、白色光は照射されない。代わりに、不活化可視光124のみが照射される。不活化可視光124は、第1強度502(
図6を参照)よりも高い第2強度602で照射することができる。例えば、第2強度602は、第1強度の4倍~5倍である。高殺菌モードでは、405nmのLEDだけを駆動させることで、グラフに示す可視光を出射させる。
【0063】
図8は、本開示の実施形態による、常夜灯(night light)モード(例えば第3モード)における分光放射照度を示すグラフである。
図1A、
図1B、及び
図8を参照すると、常夜灯モードにおける白色光700は、
図6に示す白色光500に比べて、出力が再分配されている。さらに、不活化可視光124は、(
図6に示す第1強度502に比べて)より高い第3強度702での照射が可能である。例えば、第3強度702は、第1強度502の2倍である。常夜灯モードでは、例えば、405nmのLEDと、6500K又は2800Kの白色LEDと、を駆動させることで、グラフに示す光を出射させる。
【0064】
少なくとも1つの実施形態において、222nmのUVCを出射するLEDを用いるモードを追加で設けてもよい。空き状態の化粧室においてこのLEDを駆動することで、迅速(例えば、60秒以下)で不活化が可能な線量の殺菌光を照射することができる。このモードは、ラッチ又はロック機構が開放された(空き状態を示す)後、迅速に(例えば、5秒以内)に開始してもよい。このような不活化モードは、空き状態が常であるような領域、例えば貨物室又はその他の領域に適している。
【0065】
図1~
図8を参照すると、可視光殺菌システム及び方法は、例えば、ビークルの内部キャビンなど、人が頻繁に滞在し、移動するような領域における使用に特に適しており、有用である。不活化可視光124は、(大人が照射源を裸眼で見る状況では、2.8時間までの連続ばく露、子供が照射源を裸眼で見る状況では、0.5時間までの連続ばく露であれば)人間の肌や目に照射しても安全であり、人がいない環境で、連続照射して微生物を減少させることができる。照射制御ユニット136は、記載したように、自動で照射アセンブリ116を動作させることができる。照射アセンブリ116は、可視光を出射するので、例えばUV光と比較して、より低コストであり、メンテナンスもほとんど必要ない。
【0066】
図9は、本開示の実施形態による航空機810の正面斜視図である。航空機810は、例えば、エンジン814などの推進系812を含む。必須ではないが、推進系812は、図示よりも多くのエンジン814を含むことができる。エンジン814は、航空機810の翼816に装着されている。他の実施形態では、エンジン814は、胴体818及び/又は尾部820に装着されていてもよい。尾部820は、水平安定板822及び垂直安定板824も支持している。
【0067】
航空機810の胴体818には、内部キャビン830が画成されており、これには、フライトデッキ又はコックピット、1つ又は複数の作業セクション(例えば、ギャレー、機内持ち込み手荷物領域など)、1つ又は複数の客室セクション(例えば、ファーストクラス、ビジネスクラス、及びエコノミークラス)、及び/又は1つ又は複数の化粧室などを含む。内部キャビン830は、例えば、
図1Aに示す閉鎖空間102などの閉鎖空間であるか、或いは、そのような空間を含む。
【0068】
本開示の実施形態は、航空機の代わりに、自動車、バス、機関車や鉄道車両、船舶などの他の様々なビークルで用いることができる。さらに、本開示の実施形態は、商業ビルや居住用ビルなどの固定構造体で用いることもできる。
【0069】
図10Aは、本開示の実施形態による航空機の内部キャビン830の平面図である。内部キャビン830は、航空機の胴体832に設けられており、例えば
図9に示す胴体818などに設けられている。内部キャビン830は、例えば、1つ又は複数の胴体壁によって画成される。内部キャビン830は、前方セクション833、ファーストクラスセクション834、ビジネスクラスセクション836、前方ギャレーステーション838、上級エコノミーセクション840、標準エコノミーセクション842、及び後方セクション844を含む複数のセクションを含んでおり、また複数の化粧室及びギャレーステーションも含まれうる。なお、内部キャビン830は、図示よりも多くの、或いは少ないセクションを含んでもよい。例えば、内部キャビン830は、ファーストクラスセクションを含まない場合や、図示よりも多くの、或いは、少ないギャレーステーションを含む場合もある。各セクションは、例えば、クラスごとに通路848を隔てる仕切りアセンブリなどを含む客室境界エリア846で分離されている。
【0070】
図10Aに示すように、内部キャビン830は、後方セクション844に至る2つの通路850及び852を含む。必須ではないが、内部キャビン830の通路は、図示よりも多くても、或いは、少なくてもよい。例えば、内部キャビン830は、後方セクション844まで延びる通路を内部キャビン830の中央に1本だけ含む構成でもよい。
【0071】
通路848、850、及び852は、脱出経路又はドア通路860まで延びている。脱出経路860の両端には、出口ドア862が設置されている。脱出経路860は、通路848、850、及び852に対して、例えば直角に延びている。内部キャビン830には、図示したよりも多くの脱出経路860が図示とは異なる位置に設けられていてもよい。内部キャビン830には、
図1Aに示したような照射アセンブリ116が1つ又は複数設けられている。照射アセンブリ116は、内部キャビン830における様々な構造体を(不活化可視光を用いて)殺菌するために使用され、例えば、乗客用の座席、モニュメント構造(monument)、収納棚アセンブリ(stowage bin assembly)、化粧室に設けられた部材、及び/又はギャレーの設備や部材の殺菌に使用される。
【0072】
図10Bは、本開示の実施形態による航空機の内部キャビン880の平面図である。内部キャビン880は、
図9に示す内部キャビン830の一例である。内部キャビン880は、航空機の胴体881に設けられている。内部キャビン880は、例えば、1つ又は複数の胴体壁によって画成される。内部キャビン880には、乗客用の座席883が配置されたメインキャビン882、及びメインキャビン882の後方の後方セクション885を含む複数のセクションが設けられている。なお、内部キャビン880は、図示よりも多くのセクション、又は少ないセクションを含みうることは理解されよう。
【0073】
内部キャビン880は、後方セクション885まで延びる1本の通路884を含む。この1本の通路884は、例えば、内部キャビン880の中央を通って後方セクション885まで延びている。例えば、当該1本の通路884は、内部キャビン880の中央の縦平面と同軸に配置されている。
【0074】
通路884は、脱出経路又はドア通路890まで延びている。脱出経路890の両端には、出口ドア892が設置されている。脱出経路890は、通路884に対して、例えば直角に延びている。内部キャビン880には、図示したよりも多くの脱出経路が設けられていてもよい。内部キャビン880には、
図1Aに示したような照射アセンブリ116が1つ又は複数設けられている。照射アセンブリ116は、内部キャビン880における様々な構造体を(不活化可視光を用いて)殺菌するために使用され、例えば、乗客用の座席、モニュメント構造、乗客が使用した座席付近の側壁、収納棚アセンブリ、搭乗通路、乗務員用の休憩及び仮眠用のスペース(crew spaces and berths)、貨物室、化粧室に設けられた部材、及び/又はギャレーの設備や部材の殺菌に使用される。
【0075】
図11は、本開示の実施形態による航空機の内部キャビン900の内部斜視図である。内部キャビン900は、天井904に繋がる外側寄りの壁(outboard wall)902を含む。外側寄りの壁902には、例えば、窓306が設けられている。床908は、座席910の列を支持している。
図11に示す様に、1つの列912には、例えば、通路913の両側にそれぞれ2つの座席910が含まれる。ただし、列912に含まれる座席910の数は、図示よりも多くても、少なくてもよい。加えて、内部キャビン900には、図示よりも多くの通路が設けられていてもよい。
【0076】
乗客サービスユニット(passenger service unit:PSU)914は、通路913両側の外側寄りの壁902と天井904との間に固定されている。PSU914は、内部キャビン900の前端から後端までの間に複数設けられている。例えば、PSU914は、列912に含まれる各座席910の上方に1つずつ配置される。各PSU914は、ハウジング916を有し、当該ハウジングには、通常、列912の各座席910(又は複数の座席)の上方に設けられた通気口、読書灯、酸素ボンベ落下パネル、乗務員リクエストボタン、及びその他のコントローラが収容されている。
【0077】
頭上収納棚アセンブリ918は、通路913の両側において、PSU914より上方且つ内側寄りに位置する天井904及び/又は外側寄りの壁902に固定されている。頭上収納棚アセンブリ918は、座席910の上方に固定されている。頭上収納棚アセンブリ918は、内部キャビン900の前端から後端までの間に複数設けられている。各収納棚アセンブリ918は、ストロングバック(
図11では隠れていて見えない)に枢動可能に固定された枢動式のボックス又は容器920を含む。頭上収納棚アセンブリ918は、例えば、PSU914の下面よりも上方且つ内側寄りに配置されている。頭上収納棚アセンブリ918は、枢動式に開くように構成されており、乗客の手荷物や身の回り品を入れることができる。
【0078】
本明細書において用いられる「外側寄り(outboard)」なる用語は、他の部品と比較して、内部キャビン900の中央の縦平面922から遠い側を意味する。また、「内側寄り(inboard)」なる用語は、他の部品と比較して、内部キャビン900の中央の縦平面922に近い側を意味する。例えば、PSU914の下面は、収納棚アセンブリ918に比べて外側寄りに位置する。
【0079】
内部キャビン900には、
図1Aに示したような照射アセンブリ116が1つ又は複数設けられている。照射アセンブリ116は、内部キャビン900における様々な構造体を(不活化可視光を用いて)殺菌するために使用され、例えば、乗客用の座席、モニュメント構造、収納棚アセンブリ、化粧室に設けられた部材、及び/又はギャレーの設備や部材の殺菌に使用される。
【0080】
図12は、本明細書に記載の内部キャビンなど、ビークルの内部キャビンの化粧室930の内部斜視図である。化粧室930は、例えばビークルの内部キャビンなどにおける閉鎖空間、モニュメント構造、又は、区画領域(chamber)の例である。化粧室930は、上述したように、例えば航空機に設けられている。必須ではないが、化粧室930は、他の様々なビークルに設けられていてもよい。他の実施形態では、化粧室930は、例えば、商業ビルや居住用ビルなどの固定の構造体内に設けられているものでもよい。化粧室930は、便器932、キャビネット934、及び洗面台936又は洗面ボウルを支持する床面931を含む。化粧室930の配置構成は、図示とは異なっていてもよい。また、化粧室930は、図示よりも多くの部材を含んでいても、より少ない部材を含んでいてもよい。化粧室930には、
図1Aに示したような照射アセンブリ116が1つ又は複数設けられている。照射アセンブリ116を用いることによって、化粧室930の様々な構造体、例えば、床面931、便器932、キャビネット934、及び洗面台936などを、(不活化可視光で)殺菌することができる。
【0081】
本明細書に記載したように、本開示の実施形態は、構造体や部材の表面を効率的に殺菌するために、人がいる環境においても安全に実行可能なシステム及び方法を提供する。さらに、本開示の実施形態は、例えば細菌及び病原菌のような様々な微生物を、安全、効率的、且つ、効果的に中和するシステム及び方法を提供する。
【0082】
さらに、本開示は、以下の付記による実施例を含む。
【0083】
付記1. 領域の内部における少なくとも1つの表面を消毒するよう構成された殺菌システム(100)であって、
前記少なくとも1つの表面に不活化可視光(130)を照射するよう構成された照射アセンブリ(116)を備え、前記不活化可視光(130)は、前記少なくとも1つの表面に存在する微生物を中和するよう構成されている、殺菌システム(100)。
【0084】
付記2. 前記不活化可視光(130)の波長は、400nm~410nmである、付記1に記載の殺菌システム(100)。
【0085】
付記3. 前記不活化可視光(130)の波長は、405nmである、付記1又は2に記載の殺菌システム(100)。
【0086】
付記4. 前記照射アセンブリ(116)は、前記不活化可視光(130)を連続的に照射するよう構成されている、付記1~3のいずれかに記載の殺菌システム(100)。
【0087】
付記5. 前記領域は、ビークル内部における閉鎖空間である、付記1~4のいずれかに記載の殺菌システム(100)。
【0088】
付記6. 前記照射アセンブリ(116)と通信状態にある照射制御ユニット(136)をさらに備え、前記照射制御ユニット(136)は、前記不活化可視光(130)を連続的に照射するように前記照射アセンブリ(116)を動作させるよう構成されている、付記1~5のいずれかに記載の殺菌システム(100)。
【0089】
付記7. 前記照射制御ユニット(136)は、前記照射アセンブリ(116)を第1モード及び第2モードで動作させるよう構成されており、前記第1モードでは、前記不活化可視光(130)は第1強度で照射され、前記第2モードでは、前記不活化可視光(130)は、前記第1強度とは異なる第2強度で照射される、付記6に記載の殺菌システム(100)。
【0090】
付記8. 前記照射制御ユニット(136)は、さらに、前記照射アセンブリ(116)を第3モードで動作させるよう構成されており、前記第3モードでは、前記不活化可視光(130)は、前記第1強度及び前記第2強度とは異なる第3強度で照射される、付記7に記載の殺菌システム(100)。
【0091】
付記9. 前記照射制御ユニット(136)と通信状態にある1つ又は複数の人感センサをさらに備え、前記1つ又は複数の人感センサは、前記領域の内部における人の存在を検知するとともに、前記照射制御ユニット(136)に存在信号を出力するよう構成されており、前記照射制御ユニット(136)は、前記人感センサから受信した前記存在信号に基づいて、前記照射アセンブリ(116)を互いに異なる複数のモード間で選択的に切り替える、付記6~8のいずれかに記載の殺菌システム(100)。
【0092】
付記10. 便器の水が流されたときを特定するよう構成されたセンサをさらに備え、前記センサは、前記照射制御ユニット(136)と通信状態にあり、前記照射制御ユニット(136)は、前記便器の水が流されたことに応じて、前記照射アセンブリ(116)を互いに異なる複数のモード間で選択的に切り替える、付記6~9のいずれかに記載の殺菌システム(100)。
【0093】
付記11. ロック機構(112)を有するドア(110)をさらに備え、前記照射制御ユニット(136)は、前記ロック機構(112)と通信状態にあり、前記照射制御ユニット(136)は、前記ドア(110)の施錠又は開錠に応じて、前記照射アセンブリ(116)を互いに異なる複数のモード間で選択的に切り替える、付記6~10のいずれかに記載の殺菌システム(100)。
【0094】
付記12. 前記照射アセンブリ(116)は、
可視光(130)発光素子(300)の第1の組であって、白色光(700)を出射するよう構成された可視光(130)発光素子(300)の第1の組と、
可視光(130)発光素子(300)の第2の組であって、前記不活化可視光(130)を出射するよう構成された可視光(130)発光素子(300)の第2の組と、を含む、付記1~11のいずれかに記載の殺菌システム(100)。
【0095】
付記13. 領域の内部における少なくとも1つの表面を消毒するよう構成された殺菌方法であって、
照射アセンブリ(116)によって、前記少なくとも1つの表面に不活化可視光(130)を照射することを含み、前記不活化可視光(130)は、前記少なくとも1つの表面に存在する微生物を中和するよう構成されているものとする、殺菌方法。
【0096】
付記14. 前記不活化可視光(130)の波長は、405nmである、付記13に記載の殺菌方法。
【0097】
付記15. 照射制御ユニット(136)を前記照射アセンブリ(116)に通信可能に接続することと、
前記照射制御ユニット(136)によって、前記照射アセンブリ(116)を動作させることと、をさらに含み、前記動作させることは、前記照射アセンブリ(116)を第1モード及び第2モードで動作させることを含み、前記第1モードでは、前記不活化可視光(130)は第1強度で照射され、前記第2モードでは、前記不活化可視光(130)は、前記第1強度とは異なる第2強度で照射される、付記13又は14に記載の殺菌方法。
【0098】
付記16. 前記動作させることは、前記照射アセンブリ(116)を第3モードで動作させることをさらに含み、前記第3モードでは、前記不活化可視光(130)は、前記第1強度及び前記第2モードとは異なる第3強度で照射される、付記15に記載の殺菌方法。
【0099】
付記17. 1つ又は複数の人感センサを前記照射制御ユニット(136)に通信可能に接続することと、
前記1つ又は複数の人感センサによって、前記領域の内部における人の存在を検知することと、
前記1つ又は複数の人感センサによって、前記照射制御ユニット(136)に存在信号を出力することと、
前記人感センサから受信した前記存在信号に応じて、前記照射制御ユニット(136)によって、前記照射アセンブリ(116)を互いに異なる複数のモード間で選択的に切り替えることと、をさらに含む、付記15又は16に記載の殺菌方法。
【0100】
付記18. 便器の水が流されたことに応じて、前記照射制御ユニット(136)によって、前記照射アセンブリ(116)を互いに異なる複数のモード間で選択的に切り替えることをさらに含む、付記15~17のいずれかに記載の殺菌方法。
【0101】
付記19. 前記ドア(110)の施錠又は開錠に応じて、前記照射制御ユニット(136)によって、前記照射アセンブリ(116)を互いに異なる複数のモード間で選択的に切り替えることをさらに含む、付記15~18のいずれかに記載の殺菌方法。
【0102】
付記20. 少なくとも1つの領域を画成する内部キャビンと、
前記領域の内部における少なくとも1つの表面を消毒するよう構成された殺菌システム(100)と、を備えるビークルであって、
前記殺菌システム(100)は、前記少なくとも1つの表面に不活化可視光(130)を照射するよう構成された照射アセンブリ(116)を含み、前記不活化可視光(130)は、前記少なくとも1つの表面に存在する微生物を中和するよう構成されており、前記不活化可視光(130)の波長は、400nm~410nmであり、
前記殺菌システムは、前記照射アセンブリ(116)と通信状態にある照射制御ユニット(136)をさらに含み、前記照射制御ユニット(136)は、前記不活化可視光(130)を連続的に照射するように前記照射アセンブリ(116)を動作させるよう構成されており、
前記照射制御ユニット(136)は、前記照射アセンブリ(116)を第1モード及び第2モードで動作させるよう構成されており、前記第1モードでは、前記不活化可視光(130)は第1強度で照射され、前記第2モードでは、前記不活化可視光(130)は、前記第1強度とは異なる第2強度で照射されるものである、ビークル。
【0103】
本開示の実施形態の説明において、上、下、下方、中央、側方、水平、垂直、前など、空間及び方角に関する様々な用語を用いている場合があるが、これらの用語は図面に示した向きについて用いたに過ぎない。これらの向きは、反転、回転、又は他の方法で変更することで、上側が下側に、又はその逆になったり、或いは、水平方向が垂直方向に、又はその逆になったりする。
【0104】
本明細書において、ある処理や動作を実行する「よう構成された」構造、限定事項、又は要素は、当該処理や動作に対応するように具体的に構造的に形成され、構成され、又は適合化されたものである。明瞭化のため、また疑義を避けるために付言すると、当該処理や動作を実行するように単に改変することができるに過ぎないものは、ここでいう、処理や動作を実行するように「構成された」ものには該当しない。
【0105】
なお、上述した説明は、あくまでも例示であって、限定を意図するものではない。例えば、上述の実施形態(及び/又はその側面)は、互いに組み合わせて用いることができる。加えて、様々な実施形態の範囲を逸脱することなく、これらの教示に特定の状況や材料を適合させる多くの変形が可能である。本明細書で説明した材料の寸法や種類は、本開示の様々な実施形態におけるパラメータを明確にするためのものであり、これらの実施形態は、なんら限定を課すものではなく、あくまでも例示的な実施形態に過ぎない。上述の説明を検討すれば、当業者には他の多くの実施形態が明らかであろう。したがって、本開示の様々な実施形態の範囲は、添付の請求の範囲、及び、これら請求の範囲に認められる均等範囲を併せて参照することで決定されるべきである。また、添付の請求の範囲及び本明細書の詳細な説明において用いられる「含む/有する(including)」及び「であって(in which)」なる用語は、それぞれ、「備える/含む(comprising)」及び「において(wherein)」と意味を同じくする平易な英語表現として用いられている。また、「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、単に区別するための標識として用いられており、これらにより言及される対象について数的な要件を課すものではない。
【0106】
本明細書の記載は、例を用いてベストモードを含む様々な実施形態を開示するとともに、本開示の様々な実施形態を当業者が実施することを可能にするものであり、例えば、任意の装置又はシステムの作製及び使用、並びに、組み入れられた方法を実施することを可能にするものである。本開示の様々な実施形態について特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって規定されるものであり、当業者にとって想到可能な他の例を含みうる。そのような他の例が特許請求の範囲の文言と相違のない構成要素を含む場合、又は、特許請求の範囲の文言に対して非本質的な相違を有するだけの均等の構成要素を含む場合は、そのような例は、本開示の特許請求の範囲に包含されると考えられるべきである。