IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

<>
  • 特許-圃場作業車両 図1
  • 特許-圃場作業車両 図2
  • 特許-圃場作業車両 図3
  • 特許-圃場作業車両 図4
  • 特許-圃場作業車両 図5
  • 特許-圃場作業車両 図6
  • 特許-圃場作業車両 図7
  • 特許-圃場作業車両 図8
  • 特許-圃場作業車両 図9
  • 特許-圃場作業車両 図10
  • 特許-圃場作業車両 図11
  • 特許-圃場作業車両 図12
  • 特許-圃場作業車両 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-03
(45)【発行日】2025-07-11
(54)【発明の名称】圃場作業車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20250704BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20250704BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20250704BHJP
   B62D 103/00 20060101ALN20250704BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20250704BHJP
【FI】
B62D6/00
A01B69/00 303A
B60W30/10
B62D103:00
B62D113:00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022066507
(22)【出願日】2022-04-13
(65)【公開番号】P2023156877
(43)【公開日】2023-10-25
【審査請求日】2024-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】反甫 透
(72)【発明者】
【氏名】久保田 祐樹
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-99225(JP,A)
【文献】特開2014-180894(JP,A)
【文献】特開2006-131110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
B60W 10/00,30/00-60/00
B62D 6/00
B62D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標経路に沿って自動操舵を可能な圃場作業車両であって、
操舵輪と、
人為操作を受け付ける操舵具を有し、前記操舵輪を操向操作するステアリング機構と、
前記自動操舵を行わない非制御状態と前記自動操舵を行う自動制御状態とに状態変更可能に構成され、前記自動制御状態のときに前記目標経路に沿って走行するための目標操舵パラメータを出力する自動操舵制御装置と、
前記自動操舵制御装置が前記自動制御状態のとき、前記目標操舵パラメータに基づいて前記ステアリング機構を駆動制御する操舵駆動装置と、が備えられ、
前記操舵具は、前記操舵駆動装置による前記駆動制御と連動して操舵量が変化するように構成され、
前記自動操舵制御装置は、前記非制御状態から前記自動制御状態へ状態変更した際に、前記目標操舵パラメータを抑制する抑制処理を実行するように構成されている圃場作業車両。
【請求項2】
前記操舵駆動装置は電動モータであって、
前記目標操舵パラメータに、前記電動モータに対する電流値が含まれ、
前記自動操舵制御装置は、前記抑制処理を実行する際に前記電流値を抑制するように構成されている請求項1に記載の圃場作業車両。
【請求項3】
前記操舵輪の操舵角を算出する操舵角算出部が備えられ、
前記目標操舵パラメータに、単位時間当たりの前記操舵角の目標変化量である第一角速度が含まれ、
前記自動操舵制御装置は、前記抑制処理を実行する際に、前記第一角速度を抑制するように構成されている請求項1または2に記載の圃場作業車両。
【請求項4】
前記操舵駆動装置の駆動量と、前記操舵具の操舵量と、の少なくとも一方を検出可能な第一検出部が備えられ、
前記操舵角算出部は、前記第一検出部の検出値に基づいて前記操舵角を算出するように構成されている請求項3に記載の圃場作業車両。
【請求項5】
車体の向きを検出する第二検出部が備えられ、
前記目標操舵パラメータに、単位時間当たりの前記車体の向きの目標変化量である第二角速度が含まれ、
前記自動操舵制御装置は、前記抑制処理を実行する際に、前記第二角速度を抑制するように構成されている請求項1または2に記載の圃場作業車両。
【請求項6】
前記自動操舵制御装置は、前記非制御状態から前記自動制御状態へ状態変更した際に、単位時間当たりの前記操舵具の操舵量の変化量が予め設定された閾値を下回るように、前記目標操舵パラメータを出力するように構成されている請求項1または2に記載の圃場作業車両。
【請求項7】
前記自動操舵制御装置は、前記抑制処理の実行を開始する開始タイミングと、前記開始タイミングから予め設定された時間が経過したタイミングにおける終了タイミングと、に亘って前記抑制処理を実行するように構成され、
前記自動操舵制御装置は、前記開始タイミングにおいて前記目標操舵パラメータを第一パラメータに設定し、前記終了タイミングにおいて、前記目標操舵パラメータを前記第一パラメータよりも大きな第二パラメータに設定するように構成されている請求項1または2に記載の圃場作業車両。
【請求項8】
前記自動操舵制御装置は、前記開始タイミングから前記終了タイミングまでの間の少なくとも前記開始タイミングからの予め設定された時間に亘って、前記目標操舵パラメータを前記第一パラメータに保持するように構成されている請求項7に記載の圃場作業車両。
【請求項9】
前記自動操舵制御装置は、前記開始タイミングから前記終了タイミングまでの間の少なくとも前記終了タイミング到達までの予め設定された時間に亘って、時間が経過するほど、前記第二パラメータに近付くように前記目標操舵パラメータを設定変更するように構成されている請求項7に記載の圃場作業車両。
【請求項10】
前記自動操舵制御装置は、前記非制御状態のとき、前記操舵具の人為操作に基づいて予め設定された距離または時間に亘って同じ方向への走行が行われると、前記自動制御状態へ状態変更可能なように構成されている請求項1または2に記載の圃場作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示された圃場作業車両(文献では「トラクタ」)においては、自動操舵装置(文献では「制御装置」)が備えられている。この自動操舵装置は、自動操舵(文献では「自動操向制御」)を行わない非制御状態(文献では「手動操向モード」)と自動操舵を行う自動制御状態(文献では「自動操向モード」)とに状態変更可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-099225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで自動操舵制御装置による自動操舵が開始される際に、ステアリング機構が自動的に駆動する。また、人為操作を受け付ける操舵具も、ステアリング機構と連動動作する場合が多い。このとき、操舵輪の切れ角次第では、自動操舵の開始時にステアリング機構が高速で駆動し、操舵具が急峻に動作する可能性が考えられる。このため、オペレータに違和感を与えないように、操舵具の動作に関して改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、操舵具を操作するオペレータに配慮した圃場作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、目標経路に沿って自動操舵を可能な圃場作業車両であって、操舵輪と、人為操作を受け付ける操舵具を有し、前記操舵輪を操向操作するステアリング機構と、前記自動操舵を行わない非制御状態と前記自動操舵を行う自動制御状態とに状態変更可能に構成され、前記自動制御状態のときに前記目標経路に沿って走行するための目標操舵パラメータを出力する自動操舵制御装置と、前記自動操舵制御装置が前記自動制御状態のとき、前記目標操舵パラメータに基づいて前記ステアリング機構を駆動制御する操舵駆動装置と、が備えられ、前記操舵具は、前記操舵駆動装置による前記駆動制御と連動して操舵量が変化するように構成され、前記自動操舵制御装置は、前記非制御状態から前記自動制御状態へ状態変更した際に、前記目標操舵パラメータを抑制する抑制処理を実行するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、自動操舵制御装置は、非制御状態から自動制御状態へ状態変更した際に、抑制処理を実行する。このため、自動制御の開始時において、操舵駆動装置に対する目標操舵パラメータが抑制されたものとなり、ステアリング機構に対する駆動制御も抑制的なものとなる。また、操舵具は、操舵駆動装置による駆動制御と連動して操舵量が変化する。このため、操舵具における操舵量の変化も抑制的なものとなる。これにより、自動制御の開始時における操舵具の動きが緩やかなものとなり、オペレータは自然な感覚で操舵具の動きを監視できる。本発明によって、操舵具を操作するオペレータに配慮した圃場作業車両が実現される。
【0008】
本発明の圃場作業車両において、前記操舵駆動装置は電動モータであって、前記目標操舵パラメータに、前記電動モータに対する電流値が含まれ、前記自動操舵制御装置は、前記抑制処理を実行する際に前記電流値を抑制するように構成されていると好適である。
【0009】
本構成であれば、自動制御の開始時において電動モータがゆっくりと駆動し始める。このため、自動制御の開始時における操舵具の動きが緩やかなものとなる。
【0010】
本発明の圃場作業車両において、前記操舵輪の操舵角を算出する操舵角算出部が備えられ、前記目標操舵パラメータに、単位時間当たりの前記操舵角の目標変化量である第一角速度が含まれ、前記自動操舵制御装置は、前記抑制処理を実行する際に、前記第一角速度を抑制するように構成されていると好適である。
【0011】
本構成であれば、自動制御の開始時において単位時間当たりの操舵角の目標変化量が抑制される。このため、自動制御の開始時において操舵輪の操舵角が大きく変化せず、操舵具の動きが緩やかなものとなる。
【0012】
本発明の圃場作業車両において、前記操舵駆動装置の駆動量と、前記操舵具の操舵量と、の少なくとも一方を検出可能な第一検出部が備えられ、前記操舵角算出部は、前記第一検出部の検出値に基づいて前記操舵角を算出するように構成されていると好適である。
【0013】
本構成によって、操舵角算出部は、操舵駆動装置の駆動量と、操舵具の操舵量と、の少なくとも一方に基づいて操舵角を算出可能となる。
【0014】
本発明の圃場作業車両において、車体の向きを検出する第二検出部が備えられ、前記目標操舵パラメータに、単位時間当たりの前記車体の向きの目標変化量である第二角速度が含まれ、前記自動操舵制御装置は、前記抑制処理を実行する際に、前記第二角速度を抑制するように構成されていると好適である。
【0015】
本構成であれば、自動制御の開始時において単位時間当たりの車体の向きの目標変化量が抑制される。このため、自動制御の開始時において車体の向きが大きく変化せず、操舵輪の操舵角も大きく変化しなくなる。これにより、操舵具の動きが緩やかなものとなる。
【0016】
本発明の圃場作業車両において、前記自動操舵制御装置は、前記非制御状態から前記自動制御状態へ状態変更した際に、単位時間当たりの前記操舵具の操舵量の変化量が予め設定された閾値を下回るように、前記目標操舵パラメータを出力するように構成されていると好適である。
【0017】
本構成によって、自動制御の開始時において、操舵具の動きが緩やかなものとなる。
【0018】
本発明の圃場作業車両において、前記自動操舵制御装置は、前記抑制処理の実行を開始する開始タイミングと、前記開始タイミングから予め設定された時間が経過したタイミングにおける終了タイミングと、に亘って前記抑制処理を実行するように構成され、前記自動操舵制御装置は、前記開始タイミングにおいて前記目標操舵パラメータを第一パラメータに設定し、前記終了タイミングにおいて、前記目標操舵パラメータを前記第一パラメータよりも大きな第二パラメータに設定するように構成されていると好適である。
【0019】
本構成によると、自動制御の開始時において、目標操舵パラメータが第一パラメータに設定され、自動制御の開始から予め設定された時間が経過した時点において目標操舵パラメータが、第一パラメータよりも大きな第二パラメータに設定される。このため、自動制御の開始時に操舵具の動きが緩やかなものとなり、時間が経過すると操舵具の動きが開始時よりも速い動きとなる。これにより、オペレータは自然な感覚で操舵具の動きを監視できるとともに、自動操舵制御装置が自動操舵を行う際に目標経路に沿って操舵制御を行い易くなる。
【0020】
本発明の圃場作業車両において、前記自動操舵制御装置は、前記開始タイミングから前記終了タイミングまでの間の少なくとも前記開始タイミングからの予め設定された時間に亘って、前記目標操舵パラメータを前記第一パラメータに保持するように構成されていると好適である。
【0021】
本構成であれば、開始タイミングからの予め設定された時間に亘って目標操舵パラメータが第一パラメータに保持される。このため、自動操舵の開始時において操舵具の動きの緩やかな時間が、一定時間に亘って確保される。
【0022】
本発明の圃場作業車両において、前記自動操舵制御装置は、前記開始タイミングから前記終了タイミングまでの間の少なくとも前記終了タイミング到達までの予め設定された時間に亘って、時間が経過するほど、前記第二パラメータに近付くように前記目標操舵パラメータを設定変更するように構成されていると好適である。
【0023】
本構成であれば、目標操舵パラメータが、最初に第一パラメータに設定され、時間の経過とともに第二パラメータ側に後進されるため、操舵具の動きの速さは無段階で速く変化する。これにより、オペレータは、操舵具の動きに不自然さを感じることなく、操舵具の動きを監視できる。
【0024】
本発明の圃場作業車両において、前記自動操舵制御装置は、前記非制御状態のとき、前記操舵具の人為操作に基づいて予め設定された距離または時間に亘って同じ方向への走行が行われると、前記自動制御状態へ状態変更可能なように構成されていると好適である。
【0025】
本構成であれば、圃場作業車両が同じ方向へ走行すると、そのまま自動操舵が開示される。これにより、自動操舵の開始時において操舵具の動きが緩やかであっても、圃場作業車両が目標経路からずれることなく、自動操舵制御装置は自動操舵を円滑に行える。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】操舵制御装置及び報知制御装置を示すブロック図である。
図2】操舵制御装置における制御モードの遷移を示す図である。
図3】手動操舵モードから自動操舵モードへ移行する図である。
図4】操舵制御装置における自動操舵制御を示すブロック図である。
図5】自動操舵開始時における指示電流値の抑制処理を示すグラフ図である。
図6】自動操舵開始時における指示電流値の抑制処理を示すグラフ図である。
図7】自動操舵開始時における指示電流値の抑制処理を示すグラフ図である。
図8】報知制御装置の出力処理を示すロジックグラフ図である。
図9】報知制御装置の出力処理を示すロジックグラフ図である。
図10】報知制御装置の出力処理を示すロジックグラフ図である。
図11】別実施形態として自動操舵開始時における指示電流値の抑制処理を示すグラフ図である。
図12】別実施形態として操舵制御装置における自動操舵制御を示すブロック図である。
図13】別実施形態として操舵制御装置における自動操舵制御を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔操舵制御装置、及び、報知制御装置の基本構成〕
図1に基づいて、圃場作業車両に搭載される操舵制御装置1及び報知制御装置2に関して説明する。操舵制御装置1及び報知制御装置2は、マイクロコンピュータ等の物理的な装置であっても良いし、装置とソフトウェアとの組み合わせであっても良い。図示はしないが、操舵制御装置1と報知制御装置2との夫々は記憶装置を備える。これらの記憶装置は、例えば、不揮発性のメモリ(例えばフラッシュメモリ)やEEPROM等のROMである。当該記憶装置は、操舵制御装置1と報知制御装置2との夫々における各機能部が生成するデータを一次的または恒常的に記憶する。操舵制御装置1は、本発明の『自動操舵制御装置』に相当する。
【0028】
操舵制御装置1に、電流センサ32からの検出値と、操舵角算出部34からの算出値と、航法測位装置35からの測位信号と、慣性計測装置36からの検出値と、が入力される。また、操舵制御装置1から電動モータ31へ指示電流値が出力される。加えて、操舵制御装置1から報知制御装置2へ報知信号が出力される。操舵制御装置1から報知制御装置2に対する報知信号は、例えば割り込み制御の信号であっても良いし、操舵制御装置1の制御モードを伝達するステータス信号であっても良い。電動モータ31は、本発明の『操舵駆動装置』に相当する。
【0029】
報知制御装置2は、操舵制御装置1からの報知信号に基づいて、ブザー41とスピーカ42と表示装置43との夫々を制御してオペレータ等に自動操舵に関する情報を報知可能に構成されている。ブザー41は吹鳴音を出力する。スピーカ42は音声ガイダンスを出力する。音声ガイダンスとは、自然言語の音声を意味する。表示装置43は、例えば、携帯情報端末や車載装置が備えるタッチパネルディスプレイ(液晶表示装置やOLED表示装置)であって、報知情報を表示可能なように構成されている。当該携帯情報端末や当該車載装置が、ブザー41とスピーカ42と表示装置43とを兼ねる構成であっても良い。加えて、ブザー41とスピーカ42と表示装置43とが一体物(例えば音を発する機能を有する表示パネル)であっても良い。
【0030】
電動モータ31はステアリング機構3と連動連結され、電動モータ31が駆動すると、ステアリング機構3が駆動される。また、ステアリング機構3にステアリングホイール3Aが備えられ、ステアリングホイール3Aはオペレータの操舵操作を受け付ける。ステアリングホイール3Aは、本発明の『操舵具』に相当する。
【0031】
電流センサ32は、電動モータ31における実際の電流値を検出する。モータエンコーダ33は、電動モータ31の回転角度を検出する。モータエンコーダ33は、例えば電動モータ31の回転角度を-10800度~+10800度の範囲で検出可能に構成されている。モータエンコーダ33は、例えばレゾルバ式エンコーダであっても良いし、光学式エンコーダであっても良い。モータエンコーダ33は、本発明の『第一検出部』に相当する。
【0032】
操舵角算出部34は、モータエンコーダ33の検出値に基づいて、圃場作業車両における操舵輪(車輪、クローラ等)の操舵角速度を算出するように構成されている。加えて、操舵角算出部34は、モータエンコーダ33の検出値の単位時間当たりの変化量に基づいて、圃場作業車両における操舵輪の操舵角速度を算出するように構成されている。操舵輪の操舵角速度とは、操舵輪の向き(操舵輪の切れ角)が変化する速さを意味する。操舵角速度が大きくなるほど、操舵輪の切れ角は急峻に変化する。
【0033】
航法測位装置35は、GNSS(グローバル・サテライト・ナビゲーション・システム、例えばGPS、GLONASS、Galileo、QZSS、BeiDou、等)で用いられる人工衛星(不図示)からの測位信号を受信する。
【0034】
慣性計測装置36は、例えばジャイロ加速度センサや磁気方位センサであって、圃場作業車両のヨー角度の角速度、及び、互いに直交する3軸方向の加速度を経時的に検知する。慣性計測装置36は、角速度を積分することによって圃場作業車両の方位変化角を算出できる。このことから、慣性計測装置36によって計測される計測データに、圃場作業車両の方位(向き)を示すデータが含まれている。詳述はしないが、慣性計測装置36は、圃場作業車両の旋回角度の角速度の他、圃場作業車両の左右傾斜角度、及び、圃場作業車両の前後傾斜角度の角速度等も計測可能である。このように、慣性計測装置36は、圃場作業車の車体の向きを検出する。慣性計測装置36は、本発明の『第二検出部』に相当する。
【0035】
操舵制御装置1は、航法測位装置35によって出力された測位データに基づいて、圃場作業車両の位置座標を経時的に算出する。これにより、操舵制御装置1は、圃場作業車両の位置座標を取得する。更に操舵制御装置1は、圃場作業車両の位置座標と、慣性計測装置36による検出値と、に基づいて圃場作業車両の姿勢方位を算出する。なお、圃場作業車両の姿勢方位とは、圃場作業車両が直進しながら前進または後退する方位である。
【0036】
図3に基づいて説明すると、まず、圃場作業車両の一例であるトラクタ5の走行中に、現在のトラクタ5の位置座標、及び、直前に走行していた地点におけるトラクタ5の位置座標に基づいて、操舵制御装置1は、初期姿勢方位を算出する。次に、初期姿勢方位が算出されてからトラクタ5が一定時間走行すると、操舵制御装置1は、その一定時間の走行の間に慣性計測装置36によって検知された角速度を積分処理することによって、方位の変化量を算出する。
【0037】
そして、このように算出された方位の変化量を初期姿勢方位に足し合わせることによって、操舵制御装置1は、方位の算出結果を更新する。その後、一定時間毎に、姿勢方位の変化量が同様に算出されるとともに、順次、姿勢方位の算出結果が更新されていく。以上の構成によって、操舵制御装置1は、トラクタ5の方位を算出する。
【0038】
図1に示すステアリング機構3は、図3に示す形態においては、トラクタ5の前輪を操舵するための機構である。操舵制御装置1は、ステアリング機構3を制御して、トラクタ5を、自動操舵目標ラインGLに沿って自動的に走行させる自動操舵を実行可能なように構成されている。
【0039】
〔自動操舵制御について〕
図2に示すように、操舵制御装置1は、ステアリング機構3を制御するための複数の制御モードを有する。この制御モードは、自動操舵が実行されないモードである手動操舵モードと、自動操舵を実行可能なモードである自動操舵モードと、を含む複数のモードの間で切り替え可能である。図1に示す切替操作具37は、操舵制御装置1の制御モードを切り替えるための手動操作(人為操作)を受け付ける。
【0040】
操舵制御装置1の制御モードが手動操舵モードであるとき、操舵制御装置1は電動モータ31へ指示電流値を出力しない。このとき、圃場作業車両の車輪やクローラは、ステアリング機構3におけるステアリングホイール3Aの手動操作に応じて操舵される。このため、操舵制御装置1の制御モードが手動操舵モードであるとき、操舵制御装置1の状態は、自動操舵を行わない非制御状態である。この場合、操舵制御装置1は、電流センサ32からの検出値と、操舵角算出部34からの算出値と、航法測位装置35からの測位信号と、慣性計測装置36からの検出値と、に基づいて、種々の報知信号を報知制御装置2へ出力する。
【0041】
操舵制御装置1の制御モードが自動操舵モードであるとき、操舵制御装置1は、航法測位装置35によって出力された測位データと、慣性計測装置36による検出値と、に基づいて、圃場作業車両が自動操舵目標ラインGL(図3参照)に沿って自動操舵走行を行うように、圃場作業車両を操舵制御可能に構成されている。自動操舵目標ラインGLは、本発明の『目標経路』に相当する。
【0042】
操舵制御装置1は、切替操作具37からの操作信号と、圃場作業車両の状態と、に基づいて、制御モードを切替可能なように構成されている。上述したように、切替操作具37は、操舵制御装置1の制御モードを自動操舵モードへ切り替えるための手動操作を受け付ける。切替操作具37に対する操作を、図2において『操作#01』と示す。操作#01が行われると、操舵制御装置1は、制御モードを手動操舵モードから準備モードへ切り替える。
【0043】
操舵制御装置1は、制御モードを手動操舵モードから準備モードへ切り替える際に、報知制御装置2へ報知信号を出力する。そして、報知制御装置2は、操舵制御装置1からの報知信号に基づいて、自動操舵モードへの移行準備の開始をオペレータへ報知する。即ち、報知制御装置2は、操舵制御装置1からの報知信号に基づいて、ブザー41に吹鳴音を出力させ、スピーカ42に音声ガイダンスを出力させ、表示装置43に報知情報を表示させる。
【0044】
準備モードとは、自動操舵を開始するための準備を整える制御モードであって、この準備モードにおいてオペレータによる手動操舵は継続する。このため、操舵制御装置1の制御モードが準備モードであるとき、操舵制御装置1の状態は、自動操舵を行わない非制御状態である。なお、操舵制御装置1の制御モードが準備モードである状態で操作#01が行われると、操舵制御装置1は、操舵制御装置1の制御モードを準備モードから手動操舵モードへ切り替える。
【0045】
準備モードであるとき、操舵制御装置1は、自動操舵モードへ移行するための条件#01が満たされているか否かを判定する。このとき、オペレータは、自動操舵モードへ移行するための条件を整えるため、圃場作業車両を手動で操作する。つまり、準備モードに基づいて、オペレータが圃場作業車両の姿勢方位を予め設定された基準方位に合わせるように手動操舵を行う。予め設定された基準方位とは、例えばティーチング走行における始点と終点の二点に基づいて設定された方位である。
【0046】
図3は、地点P1で操作#01が行われ、操舵制御装置1の制御モードが手動操舵モードから準備モードへ切り替わり、トラクタ5が手動操舵に基づいて地点P1と地点P2とに亘って走行している状態を示している。
【0047】
準備モードから自動操舵モードへ移行するための条件#01は、例えば、オペレータが操作する主変速レバー(不図示)が前進位置に設定されていること、圃場作業車両の作業装置(不図示)への動力伝達のためのクラッチ(不図示、例えばPTOクラッチ)が動力伝達状態になっていること、圃場作業車両の姿勢方位と予め設定された基準方位との差が予め設定された角度(例えば3度)以内であること、等である。
【0048】
準備モードであるとき、操舵制御装置1は報知制御装置2へ報知信号を出力する。そして、報知制御装置2は、操舵制御装置1からの報知信号に基づいて、条件#01を満たすためのガイダンス情報をオペレータへ報知する。即ち、報知制御装置2は、操舵制御装置1からの報知信号に基づいて、ブザー41に吹鳴音を出力させ、条件#01を満たすために必要な操作内容をスピーカ42に出力させ、条件#01を満たすために必要な操作内容を表示装置43に表示させる。
【0049】
制御モードが準備モードである状態、かつ、条件#01として必要な項目が満たされている状態であると、自動操舵モードへの切り替えが可能となる。この状態のまま、図3に示すように、圃場作業車両が所定距離D1を走行すると、操舵制御装置1が自動操舵目標ラインGLを生成するとともに、制御モードが準備モードから自動操舵モードへ移行する。自動操舵目標ラインGLは、予め設定された基準方位に沿って延びる。
【0050】
図3は、地点P2で条件#01が満たされ、トラクタ5が地点P2と地点P3とに亘って所定距離D1を走行する状態を示している。所定距離D1は、特に限定されないが、例えば1メートルであっても良い。
【0051】
圃場作業車両が所定距離D1を走行する間に、操舵制御装置1は報知制御装置2へ報知信号を出力する。そして、報知制御装置2は、自動操舵の開始をオペレータに報知する。このとき、報知制御装置2は、操舵制御装置1からの報知信号に基づいて、ブザー41に吹鳴音を出力させ、スピーカ42に『間もなく自動操舵を開始します』という音声ガイダンスを出力させ、表示装置43に報知情報を表示させる。この構成によって、オペレータは、手をステアリングホイール3Aから離すタイミングを把握できる。
【0052】
このように、操舵制御装置1は、非制御状態のとき、ステアリングホイール3Aの人為操作に基づいて予め設定された所定距離D1に亘って同じ方向への走行が行われると、自動制御状態へ状態変更可能なように構成されている。なお、操舵制御装置1は、非制御状態のとき、ステアリングホイール3Aの人為操作に基づいて予め設定された時間(例えば3~5秒)に亘って同じ方向への走行が行われると、自動制御状態へ状態変更可能なように構成されても良い。
【0053】
操舵制御装置1の制御モードが自動操舵モードであるとき、操舵制御装置1の状態は、自動操舵を行う自動制御状態である。このため、操舵制御装置1は、自動制御状態のときに、圃場作業車両が自動操舵目標ラインGLに沿って走行するための指示電流値を電動モータ31へ出力する。
【0054】
自動操舵モードの解除方法について説明する。操舵制御装置1は、自動操舵の実行中に、図2に示す『条件#02』が検知された場合、自動操舵を終了する。『条件#02』は、作業の停止に関する条件である。条件#02は、例えば、オペレータが操作する主変速レバー前進位置以外の操作位置に操作されること、圃場作業車両の作業装置への動力伝達のためのクラッチが動力非伝達状態になること、予め設定された操作量以上にステアリングホイール3Aが左右方向に手動操作されること、等である。
【0055】
条件#02として列挙される項目に一つでも該当すると自動操舵が解除され、操舵制御装置1の制御モードが自動操舵モードから準備モードへ移行する。このとき、操舵制御装置1は報知制御装置2へ報知信号を出力する。そして、報知制御装置2は、操舵制御装置1からの報知信号に基づいて、ブザー41に吹鳴音を出力させ、スピーカ42に音声ガイダンスを出力させ、表示装置43に報知情報を表示させることによって、自動操舵の終了をオペレータへ報知する。
【0056】
なお、条件#02として列挙される項目に一つでも該当して自動操舵が終了した場合であっても、操舵制御装置1の制御モードは準備モードに移行し、手動操舵モードに戻らない。このため、上述の条件#01が満たされることによって、自動操舵の再開は可能である。このことから、例えばオペレータが、圃場の畦際で条件#02に該当する操作を行った後、圃場作業車両を90度または180度だけ旋回させ、予め設定された基準方位に沿って走行させると、上述の条件#01を満たすことが可能となる。これにより、そのまま自動操舵が再開される。
【0057】
このように、操舵制御装置1は、自動操舵を行わない非制御状態と自動操舵を行う自動制御状態とに状態変更可能に構成されている。
【0058】
なお、操舵制御装置1の制御モードが自動操舵モードであって、自動操舵中に、オペレータが切替操作具37を押すと(操作#01)、操舵制御装置1は、操舵制御装置1の制御モードを自動操舵モードから手動操舵モードへ切り替えて、操舵制御装置1の自動操舵は終了する。自動操舵が解除されると、操舵制御装置1から電動モータ31へ出力される指示電流値はゼロとなる。
【0059】
図4に基づいて、本実施形態における自動操舵制御に関して説明する。操舵制御装置1は、複数のモジュールを有する。操舵制御装置1に、機体位置PI制御モジュール11と、方位角PI制御モジュール12と、方位角速度PI制御モジュール13と、操舵角速度PI制御モジュール14と、電流PI制御モジュール15と、電流値抑制処理モジュール16と、が備えられている。
【0060】
機体位置PI制御モジュール11は、自動操舵目標ラインGLに沿って進むべき圃場作業車両の目標位置と、航法測位装置35からの測位信号に基づく圃場作業車両の実際の位置座標と、の差分である位置ズレ量を算出する。当該位置ズレ量は、自動操舵目標ラインGLに対して進行方向右側または左側への位置ずれ量を意味する。そして機体位置PI制御モジュール11は、当該位置ズレ量に基づいて、圃場作業車両が自動操舵目標ラインGLに沿って進むための目標方位を算出する。
【0061】
方位角PI制御モジュール12は、機体位置PI制御モジュール11によって算出された目標方位と、慣性計測装置36によって計測された圃場作業車両の実際の方位と、の差分である方位ズレ量を算出する。そして方位角PI制御モジュール12は、当該方位ズレ量に基づいて、圃場作業車両の方位を目標方位に合わせるための目標方位角速度を算出する。圃場作業車両の方位を目標方位に合わせるための目標方位角速度は、圃場作業車両の車体の向きの単位時間当たりの目標変化量である。
【0062】
方位角速度PI制御モジュール13は、方位角PI制御モジュール12によって算出された目標方位角速度と、慣性計測装置36によって計測された実際の方位角速度と、の差分である方位角速度ズレ量を算出する。そして方位角速度PI制御モジュール13は、当該方位角速度ズレ量に基づいて、圃場作業車両を目標方位角速度に沿って旋回させるための、操舵輪の目標操舵角速度を算出する。操舵輪の目標操舵角速度は、操舵輪の操舵角の単位時間当たりの目標変化量である。
【0063】
操舵角速度PI制御モジュール14は、方位角速度PI制御モジュール13によって算出された目標操舵角速度と、操舵角算出部34によって算出された操舵輪の実際の操舵角速度と、の差分である操舵角速度ズレ量を算出する。そして操舵角速度PI制御モジュール14は、当該操舵角速度ズレ量に基づいて電動モータ31に対する目標電流値を算出する。
【0064】
電流PI制御モジュール15は、操舵角速度PI制御モジュール14によって算出された目標電流値と、電流センサ32によって検出された電動モータ31の実際の電流値と、の差分である電流値ズレ量を算出する。そして電流PI制御モジュール15は、当該電流値ズレ量に基づいて、上述の目標電流値を調整して、電動モータ31に対して、より適切な指示電流値を出力する。この構成によって、電動モータ31は、操舵制御装置1が自動制御状態のとき、指示電流値に基づいてステアリング機構3を駆動制御する。圃場作業車両が図3に示すトラクタ5である場合、ステアリング機構3の駆動によってトラクタ5の前輪が操舵される。そして、操舵輪の操舵角が調整され、圃場作業車両は自動操舵目標ラインGLに沿って進む。指示電流値は、本発明の『目標操舵パラメータ』に相当する。換言すると、本発明の目標操舵パラメータに、電動モータ31に対する指示電流値が含まれる。
【0065】
本実施形態における操舵制御装置1は、自動操舵制御の開始タイミングにおいて、電流PI制御モジュール15によって算出された指示電流値をそのまま出力せずに、電流値抑制処理モジュール16で指示電流値を弱く設定して電動モータ31へ出力する。以下、自動操舵開始時における指示電流値の抑制処理に関して説明する。
【0066】
〔自動操舵開始時における指示電流値の抑制処理〕
操舵制御装置1の制御モードが手動操舵モードから準備モードを介して自動操舵モードに切り替わると、操舵制御装置1は圃場作業車両の自動操舵制御を開始する。操舵制御装置1が圃場作業車両の自動操舵制御を開始するとき、操舵輪の切れ角次第では、操舵制御装置1から指示電流値が大きく出力され、ステアリング機構3が高速で駆動する可能性が考えられる。
【0067】
ステアリングホイール3Aは、ステアリング機構3の駆動に応じて回転する。換言すると、ステアリングホイール3Aは、電動モータ31によるステアリング機構3の駆動制御と連動して操舵量が変化するように構成されている。このため、ステアリング機構3が高速で駆動すると、ステアリングホイール3Aが高速で回転する。こうなると、自動操舵制御の開始タイミングにおいて、ステアリングホイール3Aが突然急峻に回転し、オペレータが驚いたり不快に感じたりする可能性が考えられる。
【0068】
このような不都合を回避するため、本実施形態においては、電流値抑制処理モジュール16は、自動操舵制御の開始タイミングにおいて、ステアリングホイール3Aの急峻な動作を抑制するための処理を実行する。換言すると、操舵制御装置1は、非制御状態から自動制御状態へ状態変更した際に、電動モータ31に対する指示電流値を抑制する抑制処理を実行するように構成されている。更に換言すると、操舵制御装置1は、非制御状態から自動制御状態へ状態変更した際に、単位時間当たりのステアリングホイール3Aの操舵量の変化量が予め設定された閾値を下回るように、電動モータ31に対する指示電流値を出力するように構成されている。
【0069】
図5図7に、電動モータ31に対する指示電流値を抑制する抑制処理の例を示す。本実施形態においては、指示電流値に対する倍率Kが用意されている。電流値抑制処理モジュール16は、倍率Kを第一パラメータから第二パラメータの範囲で設定し、電流PI制御モジュール15によって算出された指示電流値に対して倍率Kを掛け合わせる。図5図7に示す例では、倍率Kの第一パラメータとして0.5が示され、倍率Kの第二パラメータとして1.0が示されている。倍率Kは、本発明の『目標操舵パラメータ』に相当する。換言すると、本発明の目標操舵パラメータに、倍率Kが含まれる。
【0070】
倍率Kが1.0であるとき、電流値抑制処理モジュール16は、電流PI制御モジュール15によって算出された指示電流値を、そのまま電動モータ31へ出力する。倍率Kが0.5であるとき、電流値抑制処理モジュール16は、電流PI制御モジュール15によって算出された指示電流値を、半分の電流値に抑制して電動モータ31へ出力する。
【0071】
図5に示す例において、電流値抑制処理モジュール16は、自動操舵制御の開始タイミングから予め設定された設定時間T1が経過するまで、倍率Kを0.5(第一パラメータ)に設定する。設定時間T1は、例えば5秒に設定されている。図5に示す設定時間T1のタイミングは、抑制処理の終了タイミングである。つまり、操舵制御装置1は、抑制処理の実行を開始する開始タイミングと、開始タイミングから予め設定された設定時間T1が経過したタイミングにおける終了タイミングと、に亘って抑制処理を実行するように構成されている。
【0072】
自動操舵制御の開始タイミングから予め設定された設定時間T1が経過するまでの間、電流値抑制処理モジュール16は、電流PI制御モジュール15によって算出された指示電流値を、半分の電流値に抑制して電動モータ31へ出力する。つまり、操舵制御装置1の電流値抑制処理モジュール16は、開始タイミングから設定時間T1までの間の時間に亘って、倍率Kを0.5(第一パラメータ)に保持するように構成されている。そして、電流値抑制処理モジュール16は、設定時間T1が経過したタイミングにおいて、倍率Kを0.5(第一パラメータ)から1.0(第二パラメータ)へステップ状に変更する。また、その後において電流値抑制処理モジュール16は、電流PI制御モジュール15によって算出された指示電流値を、そのまま電動モータ31へ出力する。
【0073】
図6に示す例において、電流値抑制処理モジュール16は、自動操舵制御の開始タイミングにおいて、倍率Kを0.5(第一パラメータ)に設定する。図6に示す設定時間T5のタイミングは、抑制処理の終了タイミングである。電流値抑制処理モジュール16は、自動操舵制御の開始タイミングから予め設定された設定時間T5が経過するまで、倍率Kを0.5(第一パラメータ)から1.0(第二パラメータ)までの範囲で複数のステップ状に変更する。図6に示す例において、倍率Kは5段階で変化する。なお、図6に示す例においては、倍率Kは5段階に限定されず、2段階以上の任意の段数に適宜変更可能である。
【0074】
図6に示す例において、自動操舵制御の開始タイミングから予め設定された設定時間T1が経過するまでの間、電流値抑制処理モジュール16は、倍率Kを0.5(第一パラメータ)に設定する。これにより、電流PI制御モジュール15によって算出された指示電流値が、半分の電流値に抑制される。そして、電流値抑制処理モジュール16は、設定時間T1,T2,T3,T4,T5の夫々のタイミングにおいて、倍率Kを、例えば0.1ずつ増加させる。そして、設定時間T5のタイミングにおいて、倍率Kは1.0(第二パラメータ)に到達する。つまり、操舵制御装置1の電流値抑制処理モジュール16は、自動操舵制御の開始タイミングから設定時間T5までの間の時間に亘って、1.0(第二パラメータ)に近付くように倍率Kを段階状に設定変更するように構成されている。そして、電流値抑制処理モジュール16は、設定時間T5が経過した後において、電流PI制御モジュール15によって算出された指示電流値を、そのまま電動モータ31へ出力する。
【0075】
図7に示す例において、電流値抑制処理モジュール16は、自動操舵制御の開始タイミングにおいて、倍率Kを0.5(第一パラメータ)に設定する。電流値抑制処理モジュール16は、自動操舵制御の開始タイミングから予め設定された設定時間T1が経過するまで、倍率Kを0.5(第一パラメータ)から1.0(第二パラメータ)までの範囲で比例変化させる。設定時間T1は、例えば5秒に設定されている。図7に示す設定時間T1のタイミングは、抑制処理の終了タイミングである。つまり、操舵制御装置1の電流値抑制処理モジュール16は、自動操舵制御の開始タイミングから設定時間T1までの間の時間に亘って、時間が経過するほど、1.0(第二パラメータ)に近付くように倍率Kを設定変更するように構成されている。そして、電流値抑制処理モジュール16は、設定時間T1が経過した後において、電流PI制御モジュール15によって算出された指示電流値を、そのまま電動モータ31へ出力する。
【0076】
このように、操舵制御装置1は、自動操舵制御の開始タイミングにおいて倍率Kを第一パラメータに設定し、設定時間T1(図6においては設定時間T5)が経過した終了タイミングにおいて倍率Kを第一パラメータよりも大きな第二パラメータに設定するように構成されている。この構成によって、自動操舵制御の開始タイミングにおいて、ステアリングホイール3Aの単位時間当たりの操舵変化量が、抑制処理が実行されない構成と比較して小さくなり、ステアリングホイール3Aはゆっくりと回転し始める。この結果、操舵制御装置1は、非制御状態から自動制御状態へ状態変更した際に、単位時間当たりのステアリングホイール3Aの操舵量の変化量が予め設定された閾値を下回るように、電動モータ31に対する指示電流値を出力する構成となる。
【0077】
〔報知制御装置による報知〕
図1に示す報知制御装置2、ブザー41、スピーカ42、及び、表示装置43は、操舵制御装置1の制御モードに応じて、自動操舵に関する種々の情報をオペレータへ報知可能に構成されている。自動操舵に関する種々の情報とは、例えば、オペレータに注意を促す情報や、オペレータに操作方法を伝えるガイダンス情報や、圃場作業車両における機器の状態をオペレータに伝える情報等である。報知制御装置2は、例えば音声合成LSIであって、ブザー41、スピーカ42、及び、表示装置43とは別体で配置されている。ブザー41、スピーカ42、及び、表示装置43が、圃場作業車におけるコックピットの適切な位置に配置され、報知制御装置2と配線接続される。
【0078】
報知制御装置2は、ブザー41とスピーカ42と表示装置43との夫々に対する制御を可能に構成されている。オペレータは、ブザー41とスピーカ42と表示装置43との夫々から出力される音及び表示物に基づいて、自動操舵に関する種々の情報を認識できる。
【0079】
オペレータは、圃場作業車両を手動で操作しているとき、圃場における周囲の状況や作物の位置などを目視で確認しながら、圃場作業車両の位置や速度を微調整している場合が多い。このことから、オペレータは、圃場作業車両に自動操舵を開始させようとするとき、圃場における周囲の状況や作物の位置などを目視で確認しながら、表示装置43を目視で確認できない場合も考えられる。特に、オペレータが、操舵制御装置1の制御モードを自動操舵モードへ切り替えることに関して不慣れである場合、圃場における周囲の状況や作物の位置などを目視で確認しながら、圃場作業車両に自動操舵を開始させるために何を行えば良いかを把握することは、オペレータにとって難しいことが考えられる。こうなると、圃場作業車両における自動操舵機能が、オペレータにとって扱い難いものとなる。
【0080】
本実施形態であれば、自動操舵に関する種々の情報が、スピーカ42から自然言語の音声で出力される。このため、オペレータは、圃場における周囲の状況や作物の位置などを目視で確認しながら、圃場作業車両に自動操舵を開始させるために何を行えば良いかを、適切なタイミングで把握できる。換言すると、オペレータは、表示装置43を見なくても、圃場における周囲の状況や作物の位置などを目視で確認しながら、スピーカ42から出力される音声ガイダンスに従って、圃場作業車両に自動操舵を開始させるための操作を行える。これにより、オペレータは、圃場における周囲の状況や作物の位置などの確認に集中できる。
【0081】
また、オペレータが、操舵制御装置1の制御モードを自動操舵モードへ切り替えることに関して不慣れな場合であっても、スピーカ42から出力される音声ガイダンスに従って、圃場作業車両に自動操舵を開始させることが容易となる。これにより、圃場作業車両における自動操舵機能が、オペレータにとって扱い易いものとなる。
【0082】
スピーカ42から出力される音声ガイダンスに、『自動操舵モードにしてください』、『ウォームアップ中です』、『始点(または終点)を登録してください』、『シートに座ってください』、『機体を左(または右)に向けてください』、『故障を検知しました』、『測位レベルが低下しました』、『間もなく自動操舵を開始します』、及び、『お疲れ様でした』等のメッセージが含まれる。
【0083】
上述したように、報知制御装置2は、操舵制御装置1からの報知信号に基づいて、ブザー41とスピーカ42と表示装置43との夫々を制御してオペレータ等に自動操舵に関する情報を報知可能に構成されている。
【0084】
図8に、報知信号の一例として第一報知信号を示している。図8に示すように、報知制御装置2が、操舵制御装置1から報知信号を受けると、ブザー41とスピーカ42との夫々に対する制御を実行する。その際に、報知制御装置2は、最初にブザー41に吹鳴音を出力させる第一制御を実行し、ブザー41が吹鳴音を出力し終えてからスピーカ42に音声ガイダンスを出力させる第二制御を実行するように構成されている。
【0085】
つまり、ブザー41からの吹鳴音とスピーカ42からの音声ガイダンスとが重複せず、ブザー41からの吹鳴音が止んでから、スピーカ42から音声ガイダンスが出力される。これにより、オペレータは、スピーカ42から音声ガイダンスを聞き取りやすくなる。
【0086】
また、表示装置43による報知情報の表示は、ブザー41からの吹鳴音の出力と、スピーカ42からの音声ガイダンスの出力と、の夫々と連動する。報知制御装置2は、最初にブザー41に吹鳴音を出力させる第一制御を実行する際に、ブザー41に吹鳴音を出力させると同時に表示装置43に報知情報を表示させるように構成されている。つまり、表示装置43は、ブザー41からの吹鳴音の出力の開始と同時に、報知情報の表示を開始する。
【0087】
そして表示装置43は、報知情報を表示すると、スピーカ42が音声ガイダンスを出力し終えるまで、報知情報の表示を継続するように構成されている。報知制御装置2は、スピーカ42からの音声ガイダンスの内容と同様の表示内容を、表示装置43に表示させる。つまり、表示装置43に表示される報知情報の内容は、スピーカ42からの音声ガイダンスの内容と連動する。スピーカ42による音声ガイダンスの終了タイミングにおいて、表示装置43は、自動操舵に関する報知情報の表示を終了し、別画面に切り替わる。つまり、表示装置43は、スピーカ42からの音声ガイダンスの出力の終了と同時に、報知情報の表示を終了する。
【0088】
操舵制御装置1から出力される報知信号として、複数種類の報知信号が存在する。報知信号の種類は、優先順位に応じて分けられる。つまり、操舵制御装置1が出力可能な報知信号に、優先順位に応じた複数の報知信号が含まれる。
【0089】
図9に示す例においては、複数の報知信号として、第一報知信号と第二報知信号とが示されている。第二報知信号は、第一報知信号よりも高い優先順位を有する。つまり、本実施形態においては、複数の報知信号に、第一報知信号と、第一報知信号よりも高い優先順位を有する第二報知信号と、が含まれている。
【0090】
図9に示す例においては、第一報知信号が出力された後、報知制御装置2は、第一報知信号に基づいて、最初にブザー41に吹鳴音を出力させる第一制御を実行する。そして、報知制御装置2は、ブザー41が吹鳴音を出力し終えてから、第一報知信号に基づいて、スピーカ42に音声ガイダンスを出力させる第二制御を実行する。しかし、図9に示す例においては、報知制御装置2が第一報知信号に基づく第二制御の実行を完了する前に、第一報知信号よりも高い優先順位を有する第二報知信号が出力されている。この場合、報知制御装置2は、第一報知信号に基づく第一制御及び第二制御の実行を中止するように構成されている。そして報知制御装置2は、第二報知信号に基づいて、第一制御及び第二制御を実行するように構成されている。
【0091】
図9に示す例においては、第二報知信号が出力されたタイミングにおいて、報知制御装置2は第一報知信号に基づく第一制御を完了し、ブザー41の吹鳴は完了している。しかし、例えば、報知制御装置2が第一報知信号に基づく第一制御の実行を完了する前に、第二報知信号が出力された場合、報知制御装置2は、第一報知信号に基づく第一制御の実行を即座に中止する。そして、第一報知信号に基づくブザー41の吹鳴は途中で止まる。つまり、ブザー41は、第二報知信号が出力されたとき、第一報知信号に基づく吹鳴音の出力の完了を待たずに第二報知信号に基づく吹鳴音の出力を行うように構成されている。
【0092】
図9に示す例においては、第二報知信号が出力される直前において、報知制御装置2は、第一報知信号に基づく第二制御を実行している途中であって、スピーカ42は、音声ガイダンスを出力している途中である。第二報知信号が出力されたタイミングにおいて、報知制御装置2は、第一報知信号に基づく第二制御の実行を即座に中止する。そして、第二報知信号に基づくスピーカ42の音声ガイダンスは途中で止まる。つまり、スピーカ42は、第二報知信号が出力されたとき、第一報知信号に基づく音声ガイダンスの出力を即座に中止して、ブザー41が第二報知信号に基づく吹鳴音を出力し終えてから、第二報知信号に基づく音声ガイダンスの出力を行うように構成されている。
【0093】
図9に示す例においては、第二報知信号が出力される直前において、報知制御装置2は、第一報知情報に基づいて、表示装置43に報知情報を表示させる制御を実行し、表示装置43は、第一報知情報に基づく報知情報を表示している。第二報知信号が出力されたタイミングにおいて、報知制御装置2は、第一報知信号に基づく表示装置43の制御を即座に中止し、第二報知信号に基づく表示装置43の制御を実行する。そして、表示装置43の表示は、第一報知信号に基づく表示から、第二報知信号に基づく表示に切り替わる。加えて、表示装置43は、スピーカ42からの第二報知信号に基づく音声ガイダンスの出力の終了と同時に、第二報知信号に基づく報知情報の表示を終了する。
【0094】
図10に示す例においては、複数の報知信号として、第一報知信号と第三報知信号とが示されている。第三報知信号は、第一報知信号と同じ優先順位、または、第一報知信号よりも低い優先順位を有する。つまり、本実施形態においては、複数の報知信号に、第一報知信号と、第一報知信号と同じまたは第一報知信号よりも低い優先順位を有する第三報知信号と、が含まれている。
【0095】
図10に示す例においては、第一報知信号が出力された後、報知制御装置2は、第一報知信号に基づいて、最初にブザー41に吹鳴音を出力させる第一制御を実行する。そして、報知制御装置2は、ブザー41が吹鳴音を出力し終えてから、第一報知信号に基づいて、スピーカ42に音声ガイダンスを出力させる第二制御を実行する。図10に示す例においては、報知制御装置2が第一報知信号に基づく第二制御の実行を完了する前に、第三報知信号が出力されている。この場合、報知制御装置2は、第一報知信号に基づく第一制御及び第二制御の実行を、そのまま続行するように構成されている。そして報知制御装置2は、第一報知信号に基づく第一制御及び第二制御の実行を完了してから、第三報知信号に基づいて、第一制御及び第二制御を実行するように構成されている。
【0096】
図10に示す例においては、第三報知信号が出力されたタイミングにおいて、報知制御装置2は第一報知信号に基づく第一制御を完了し、ブザー41の吹鳴は完了している。例えば、報知制御装置2が第一報知信号に基づく第一制御の実行を完了する前に、第三報知信号が出力された場合であっても、報知制御装置2は、第一報知信号に基づく第一制御の実行を、そのまま継続する。つまり、ブザー41は、第三報知信号が出力されたとき、第一報知信号に基づく吹鳴音を出力し終え、かつ、スピーカ42が第一報知信号に基づく音声ガイダンスを出力し終えてから、第三報知信号に基づく吹鳴音の出力を行うように構成されている。
【0097】
図10に示す例においては、第三報知信号が出力される直前において、報知制御装置2は、第一報知信号に基づく第二制御を実行している途中であって、スピーカ42は、音声ガイダンスを出力している途中である。第三報知信号が出力されたタイミングにおいて、報知制御装置2は、第一報知信号に基づく第二制御の実行を、そのまま継続する。つまり、スピーカ42は、第三報知信号が出力されたとき、第一報知信号に基づく音声ガイダンスの出力を完了してから、更に、ブザー41が第三報知信号に基づく吹鳴音を出力し終えてから、第三報知信号に基づく音声ガイダンスの出力を行うように構成されている。
【0098】
図10に示す例においては、第三報知信号が出力される直前において、報知制御装置2は、第一報知情報に基づいて、表示装置43に報知情報を表示させる制御を実行し、表示装置43は、第一報知情報に基づく報知情報を表示している。第三報知信号が出力されたタイミングにおいて、報知制御装置2は、第一報知信号に基づく表示装置43の制御を、そのまま継続し、第一報知信号に基づくスピーカ42の音声ガイダンスが完了してから、第三報知信号に基づく表示装置43の制御を実行する。つまり、表示装置43の表示は、第一報知信号に基づくスピーカ42の音声ガイダンスの完了タイミングにおいて、第一報知信号に基づく表示から、第三報知信号に基づく表示に切り替わる。加えて、表示装置43は、スピーカ42からの第三報知信号に基づく音声ガイダンスの出力の終了と同時に、第三報知信号に基づく報知情報の表示を終了する。
【0099】
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0100】
(1)上述の実施形態において、電流値抑制処理モジュール16は、図5及び図7に示す倍率Kを第一パラメータから第二パラメータの範囲で設定し、電流PI制御モジュール15によって算出された指示電流値に対して倍率Kを掛け合わせる。この実施形態に限定されず、例えば電流値抑制処理モジュール16は、電流PI制御モジュール15によって算出された指示電流値を予め設定された閾値以下に抑制する構成であっても良い。
【0101】
(2)図5に基づいて上述したように、操舵制御装置1の電流値抑制処理モジュール16は、開始タイミングから設定時間T1までの間の時間に亘って、倍率Kを0.5(第一パラメータ)に保持するように構成されている。また、図7に基づいて上述したように、操舵制御装置1の電流値抑制処理モジュール16は、自動操舵制御の開始タイミングから設定時間T1までの間の時間に亘って、時間が経過するほど、1.0(第二パラメータ)に近付くように倍率Kを設定変更するように構成されている。これらの実施形態に限定されず、例えば図11に示すように、操舵制御装置1の電流値抑制処理モジュール16は、自動操舵制御の開始タイミングから設定時間T1(終了タイミングではない)までの間の時間に亘って、倍率Kを0.5(第一パラメータ)に保持する構成であっても良い。そして操舵制御装置1の電流値抑制処理モジュール16は、設定時間T1(開始タイミングではない)から設定時間T2(終了タイミング)までの時間に亘って、時間が経過するほど、1.0(第二パラメータ)に近付くように倍率Kを設定変更する構成であっても良い。つまり、操舵制御装置1の電流値抑制処理モジュール16は、開始タイミングから終了タイミングまでの間の少なくとも開始タイミングからの予め設定された時間(設定時間T1までの時間)に亘って、倍率K(目標操舵パラメータ)を第一パラメータに保持するように構成されても良い。また、操舵制御装置1の電流値抑制処理モジュール16は、開始タイミングから終了タイミングまでの間の少なくとも終了タイミング到達までの予め設定された時間(設定時間T1から設定時間T2までの時間)に亘って、時間が経過するほど、第二パラメータに近付くように倍率K(目標操舵パラメータ)を設定変更するように構成されても良い。
【0102】
(3)図4に基づいて上述した実施形態において、方位角速度PI制御モジュール13は、方位角PI制御モジュール12によって算出された目標方位角速度と、慣性計測装置36によって計測された実際の方位角速度と、の方位角速度ズレを算出する。そして方位角速度PI制御モジュール13は、当該方位角速度ズレに基づいて、圃場作業車両を目標方位角速度に沿って旋回させるための、操舵輪の目標操舵角速度を算出する。操舵輪の目標操舵角速度は、操舵輪の操舵角の単位時間当たりの目標変化量である。操舵輪の操舵角の単位時間当たりの目標変化量は、本発明の『第一角速度』に相当する。図12に示すように、操舵制御装置1は、抑制処理を実行する際に、第一角速度を抑制するように構成されても良い。図12に示す形態では、電流値抑制処理モジュール16の代わりに目標操舵角速度規制処理モジュール17が備えられている。目標操舵角速度規制処理モジュール17は、自動操舵制御の開始タイミングにおいて、ステアリングホイール3Aの急峻な動作を抑制するための処理を実行する。例えば目標操舵角速度規制処理モジュール17は、図5及び図7に示す倍率Kを第一パラメータから第二パラメータの範囲で設定し、方位角速度PI制御モジュール13によって算出された目標操舵角速度に対して倍率Kを掛け合わせる構成であっても良い。また、例えば目標操舵角速度規制処理モジュール17は、方位角速度PI制御モジュール13によって算出された目標操舵角速度を予め設定された閾値以下に抑制する構成であっても良い。これにより、操舵制御装置1は、非制御状態から自動制御状態へ状態変更した際に、単位時間当たりの操舵具(例えばステアリングホイール3A)の操舵量の変化量が予め設定された閾値を下回るように、目標操舵パラメータとしての第一角速度を出力する構成となる。この場合、本発明の目標操舵パラメータは、第一角速度であっても良い。図12に示す形態に、電流値抑制処理モジュール16と目標操舵角速度規制処理モジュール17との両方が備えられる構成であっても良い。この場合、本発明の目標操舵パラメータに、電動モータ31への指示電流値と、第一角速度と、が含まれても良い。
【0103】
(4)図4に基づいて上述した実施形態において、方位角PI制御モジュール12は、機体位置PI制御モジュール11によって算出された目標方位と、慣性計測装置36によって計測された圃場作業車両の実際の方位と、の方位ズレ量を算出する。そして方位角PI制御モジュール12は、当該方位ズレ量に基づいて、圃場作業車両の方位を目標方位に合わせるための目標方位角速度を算出する。圃場作業車両の方位を目標方位に合わせるための目標方位角速度は、本発明の『第二角速度』に相当する。図13に示すように、操舵制御装置1は、抑制処理を実行する際に、第二角速度を抑制するように構成されても良い。図13に示す形態では、電流値抑制処理モジュール16の代わりに目標方位角速度規制処理モジュール18が備えられている。目標方位角速度規制処理モジュール18は、自動操舵制御の開始タイミングにおいて、ステアリングホイール3Aの急峻な動作を抑制するための処理を実行する。例えば目標方位角速度規制処理モジュール18は、図5及び図7に示す倍率Kを第一パラメータから第二パラメータの範囲で設定し、方位角PI制御モジュール12によって算出された目標方位角速度に対して倍率Kを掛け合わせる構成であっても良い。また、例えば目標方位角速度規制処理モジュール18は、方位角PI制御モジュール12によって算出された目標方位角速度を予め設定された閾値以下に抑制する構成であっても良い。この場合、本発明の目標操舵パラメータは、第二角速度であっても良い。また、図13に示す形態に、電流値抑制処理モジュール16と目標方位角速度規制処理モジュール18との両方が備えられる構成であっても良い。この場合、本発明の目標操舵パラメータに、電動モータ31への指示電流値と、第二角速度と、が含まれても良い。
【0104】
(5)本発明の『第一検出部』として、モータエンコーダ33が示されている。第一検出部は、例えばステアリングホイール3Aの操舵量を検出するエンコーダであっても良い。要するに、第一検出部は、操舵駆動装置(例えば電動モータ31)の駆動量と、操舵具(例えばステアリングホイール3A)の操舵量と、の少なくとも一方を検出可能なように構成されている。そして操舵角算出部34は、第一検出部の検出値に基づいて操舵輪の角速度を算出するように構成されていれば良い。
【0105】
(6)本発明の第一検出部は、例えばステアリングホイール3Aの操舵量を検出する構成であっても良い。また、本発明の『操舵具』として、ステアリングホイール3Aが示されている。操舵具は、例えばステアリングレバーであっても良い。操舵具がステアリングレバーである場合、本発明の第一検出部は、ステアリングレバーの操舵量を検出する構成であっても良い。
【0106】
(7)本発明の『操舵駆動装置』として、電動モータ31が示されている。操舵駆動装置は、例えば油圧モータであっても良い。操舵駆動装置が油圧モータである場合、本発明の目標操舵パラメータに、例えば油圧モータに対する油圧バルブの開度が含まれても良い。
【0107】
(8)図2及び図3に基づいて上述した実施形態において、操舵制御装置1は、準備モードにおいて自動操舵モードへ移行するための条件#01が満たされているか否かを判定する。このとき、オペレータは、圃場作業車両の姿勢方位を予め設定された基準方位に合わせるように手動操舵を行う。予め設定された基準方位は、例えばティーチング走行における始点と終点の二点に基づいて設定された基準方位である。この実施形態に限定されず、自動操舵の目標方位が、予め設定された基準方位でなくても良い。例えば、オペレータが予め設定された所定距離D1、または、予め設定された時間(例えば3~5秒)に亘って、同じ方向に向いて走行していると、その方向に目標方位が設定される構成であっても良い。そして、当該方向に沿う目標方位が設定されると、操舵制御装置1の制御モードが、手動操舵モードから自動操舵モードに切り替わる構成であっても良い。
【0108】
(9)図1に基づいて上述した慣性計測装置36は備えられない構成であってもよい。この場合、本発明の第二検出部は、例えば航法測位装置35であっても良い。つまり、航法測位装置35によって出力された測位データの単位時間当たりの差分に基づいて、車体の向きの目標変化量が算出されても良い。
【0109】
(10)図5図7及び図11に示す倍率Kは、第一パラメータとして0.5に設定され、第二パラメータとして1.0に設定されている。この実施形態に限定されず、第一パラメータ及び第二パラメータの値は適宜設定変更可能である。
【0110】
なお、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、作業車両用の報知装置、及び、報知装置が搭載された圃場作業車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 :操舵制御装置(自動操舵制御装置)
3 :ステアリング機構
3A :ステアリングホイール(操舵具)
31 :電動モータ(操舵駆動装置)
33 :モータエンコーダ(第一検出部)
34 :操舵角算出部
36 :慣性計測装置(第二検出部)
GL :自動操舵目標ライン(目標経路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13