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特許7706446臨床規模および工業規模の無傷の組織の配列決定
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-03
(45)【発行日】2025-07-11
(54)【発明の名称】臨床規模および工業規模の無傷の組織の配列決定
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20250704BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20250704BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20250704BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20250704BHJP
   C12Q 1/6874 20180101ALI20250704BHJP
   G01N 1/42 20060101ALI20250704BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20250704BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20250704BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6813 Z
C12Q1/6844 Z
C12M1/00 A
C12Q1/6874 Z
G01N1/42
G01N1/28 J
G01N1/28 G
G01N33/50 P
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022523042
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-14
(86)【国際出願番号】 US2020055800
(87)【国際公開番号】W WO2021076770
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】62/923,026
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515158308
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】リッチマン,イーサン ビー.
(72)【発明者】
【氏名】アレン,ウィリアム イー.
(72)【発明者】
【氏名】ダイセロス,カール エー.
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/199579(WO,A2)
【文献】特表2005-511058(JP,A)
【文献】特表2009-518009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q、C12M、G01N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定化および透過化された無傷の組織における細胞における標的核酸のインサイチュ遺伝子配列決定のための方法であって、
(a)特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件下で、固定化および透過化された無傷の組織試料を少なくとも一対のオリゴヌクレオチドと接触させることであって、
前記一対のオリゴヌクレオチドが、第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドを含み、
前記第2のオリゴヌクレオチドが、バーコード配列を含む、接触させることと、
(b)リガーゼを添加して、前記第2のオリゴヌクレオチドの5’および3’末端をライゲーションし、閉鎖核酸環を生成することと、
(c)DNAポリメラーゼを含む緩衝液とともに前記固定化および透過化された無傷の組織試料をインキュベーションすることと、
(d)1つ以上のアンプリコンを生成するように、前記固定化および透過化された無傷の組織試料をデオキシヌクレオチド三リン酸と接触させることによってローリングサークル増幅を実施することであって、前記ライゲーションされた第2のオリゴヌクレオチドが鋳型として機能し、前記第1のオリゴヌクレオチドが前記DNAポリメラーゼのプライマーとして機能する、実施することと、
(e)ステップ(a)~(d)のうちのいずれか1つの前または後に、前記固定化および透過化された無傷の組織試料をヒドロゲル中に包埋することと、
(f)前記1つ以上のアンプリコンを前記ヒドロゲルに架橋することと、
(g)前記ヒドロゲルを浄化することと、
(h)前記バーコード配列を有する1つ以上のヒドロゲル包埋アンプリコンを、リードプライマーおよび蛍光標識プローブと接触させることであって、前記蛍光標識プローブが、第1のチオール基と第2のチオール基との間のジスルフィド結合によって前記第2のチオール基を含むフルオロフォアに共有結合した前記第1のチオール基を含むオリゴヌクレオチドを含む、接触させることと、
(i)前記リードプライマーおよび前記蛍光標識プローブをライゲーションすることと、
(j)前記ヒドロゲルを、抗酸化剤を含む抗退色緩衝液と接触させることと、
(k)前記1つ以上のヒドロゲル包埋アンプリコンを画像化することと、
(l)前記ヒドロゲルを還元剤と接触させることと、
(m)前記ヒドロゲルから前記フルオロフォアを除去することと、
(n)ステップ(h)~(m)を繰り返し行うことと
を含む、方法。
【請求項2】
前記抗酸化剤が、没食子酸N-プロピルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固定化および透過化された無傷の組織試料に対して内因性のRNAが、ステップ(a)の前に、最初に前記ヒドロゲルに結合される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒドロゲルの浄化が、ステップ(a)~(d)のうちのいずれか1つの前または後に実施される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記固定化および透過化された無傷の組織の接触が、異なる標的核酸に対する特異性を有する複数のオリゴヌクレオチドプライマーをハイブリダイゼーションすることを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記デオキシヌクレオチド三リン酸が、アミン修飾デオキシヌクレオチド三リン酸を含み、任意選択で、前記アミン修飾デオキシヌクレオチド三リン酸が、アクリル酸N-ヒドロキシスクシンイミド部分修飾を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記無傷の組織が、5~20μmまたは50~200μmのの厚さを有する、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記固定化および透過化された無傷の組織を切片化し、前記固定化および透過化された無傷の組織の切片を表面上に平坦に配置することをさらに含み、任意選択で、金属リングが、前記切片上に押し下げられ、前記切片を前記表面上に平坦に移すために使用される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記還元剤が、TCEPである、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ヒドロゲルが、ステップ(l)にて前記還元剤と30分間接触される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(l)の前に、前記リードプライマーおよび前記蛍光標識プローブを、80%のホルムアミドを含む剥離緩衝液に曝すことをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のオリゴヌクレオチドおよび前記第2のオリゴヌクレオチドの各々が、第1の相補性領域、第2の相補性領域、および第3の相補性領域を含み、前記第2のオリゴヌクレオチドが、バーコード配列をさらに含み、前記第1のオリゴヌクレオチドの前記第1の相補性領域が、前記標的核酸の第1の部分に相補的であり、前記第1のオリゴヌクレオチドの前記第2の相補性領域が、前記第2のオリゴヌクレオチドの前記第1の相補性領域に相補的であり、前記第1のオリゴヌクレオチドの前記第3の相補性領域が、前記第2のオリゴヌクレオチドの前記第3の相補性領域に相補的であり、前記第2のオリゴヌクレオチドの前記第2の相補性領域が、前記標的核酸の第2の部分に相補的であり、前記第1のオリゴヌクレオチドの前記第1の相補性領域が、前記第2のオリゴヌクレオチドの前記第2の相補性領域に隣接している、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(c)におけるインキュベーションすることが、ローリングサークル増幅を実施する前に、前記固定化および透過化された無傷の組織試料全体へのDNAポリメラーゼの均一な拡散を可能にするために十分な時間だけ実行される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(i)におけるライゲーションが、前記リードプライマーおよび前記蛍光標識プローブの両方が同一のアンプリコンの隣接配列に相補的である場合にのみ生じる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
流体システムであって、
(a)非加圧の試料チャンバを備え、任意選択でマルチウェルプレートまたはスライドチャンバのウェルであるデバイスと、
(b)蓋であって、前記蓋が、前記試料チャンバの上部を覆う、蓋と、
(c)インターフェースチューブであって、前記インターフェースチューブの第1の端部が、前記蓋によって保持されており、前記インターフェースチューブの第2の端部が、液体が前記試料チャンバ中に残っている限り、前記試料チャンバ内の前記液体が前記インターフェースチューブの底部と接触したままであるように、前記試料チャンバの底部縁部に十分に近接して、前記試料チャンバ中の固定化および透過化された無傷の組織試料の上に位置決めされており、任意選択で、前記インターフェースチューブが前記固定化および透過化された無傷の組織試料平面に対して極角で配置される、インターフェースチューブと、
(d)流体ラインであって、流体が前記流体ラインを通って前記インターフェースチューブに流れ込み、前記インターフェースチューブの前記第2の端部から前記試料チャンバ中の前記固定化および透過化された無傷の組織試料上に流れ出るように、前記インターフェースチューブの前記第1の端部に結合された、流体ラインと、
(e)ポンプであって、任意選択で、前記ポンプがシリンジポンプである、ポンプと、
(f)画像化システムと、
(g)請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されたプロセッサユニットと
を備える、流体システム。
【請求項16】
前記試料チャンバを極低温で維持するクリオスタット、前記ポンプとインターフェース接続された多方向セレクタバルブ、または、無傷の組織における細胞における標的核酸のインサイチュ遺伝子配列決定を実施するための試薬を含む1つ以上の容器またはウェルを備える試薬トレイをさらに備え、前記試薬が、前記多方向セレクタバルブまたはそれらの組み合わせに流体的に接続される、請求項15に記載の流体システム。
【請求項17】
前記試薬トレイを支持する調節可能なステージ、冷却器、および前記試薬トレイからの試薬の選択を可能にするための前記調節可能なステージの移動を可能にする位置センサをさらに備える、請求項16に記載の流体システム。
【請求項18】
前記流体システムを取り囲む容器をさらに備え、前記容器が、周囲光を遮断し、任意選択で、前記流体システムを取り囲む前記容器が音響減衰容器である、請求項1517のいずれか一項に記載の流体システム。
【請求項19】
組織試料を凍結切片化するための手段をさらに備える、請求項1518のいずれか一項に記載の流体システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
生物学的試料は、個々の細胞の長さの尺度から組織全体の長さの尺度にわたる複雑で不均一な遺伝情報を含有する。細胞内の核酸の空間パターンは、細胞機能の特性および異常を明らかにする可能性があり、RNA発現の累積分布は、細胞の型または機能を定義する可能性があり、組織内の細胞型の位置の体系的バリエーションは、組織機能を定義する可能性がある。核酸にコードされる解剖学的接続性情報と組織全体の細胞型分布との組み合わせは、組織の多くのセクションにわたる可能性がある。
【0002】
したがって、インサイチュ核酸配列決定のための技法は、個々の分子と同じくらい小さい分解能と脳全体と同じくらい大きな分解能とを橋渡しすることができなければならない。長さの桁違いの差にわたってこの情報を効率的に収集および記録するには、インサイチュ配列決定技法の堅牢性、迅速性、自動化、およびハイスループットの性質を増強させるための新しい発明が必要である。
【発明の概要】
【0003】
無傷の組織における細胞における標的核酸のインサイチュ遺伝子配列決定のためのデバイス、方法、およびシステムが提供される。候補薬剤をスクリーニングして、候補薬剤が無傷の組織における細胞における核酸の遺伝子発現を調節するか否かを決定する方法も本明細書で提供される。
【0004】
一態様では、無傷の組織における細胞における標的核酸のインサイチュ遺伝子配列決定のための方法が提供され、本方法は、(a)特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件下で、固定化および透過化された無傷の組織試料を少なくとも一対のオリゴヌクレオチドと接触させることであって、一対のオリゴヌクレオチドが、第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドを含み、第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドの各々が、第1の相補性領域、第2の相補性領域、および第3の相補性領域を含み、第2のオリゴヌクレオチドが、バーコード配列をさらに含み、第1のオリゴヌクレオチドの第1の相補性領域が、標的核酸の第1の部分に相補的であり、第1のオリゴヌクレオチドの第2の相補性領域が、第2のオリゴヌクレオチドの第1の相補性領域に相補的であり、第1のオリゴヌクレオチドの第3の相補性領域が、第2のオリゴヌクレオチドの第3の相補性領域に相補的であり、第2のオリゴヌクレオチドの第2の相補性領域が、標的核酸の第2の部分に相補的であり、第1のオリゴヌクレオチドの第1の相補性領域が、第2のオリゴヌクレオチドの第2の相補性領域に隣接している、接触させることと、(b)リガーゼを添加して、第2のオリゴヌクレオチドの5’および3’末端をライゲーションし、閉鎖核酸環を生成することと、(c)ローリングサークル増幅を実施する前に、組織試料全体へのDNAポリメラーゼの均一な拡散を可能にするために十分な時間、組織試料をDNAポリメラーゼとともにプレインキュベーションすることと、(d)1つ以上のアンプリコンが生成されるように、組織試料をデオキシリボヌクレオチド三リン酸と接触させることによってローリングサークル増幅を実施することであって、ライゲーションされた第2のオリゴヌクレオチドが鋳型として機能し、第1のオリゴヌクレオチドがDNAポリメラーゼのプライマーとして機能する、実施することと、(e)ステップ(a)~(d)のうちのいずれか1つの前または後に、組織試料をヒドロゲル中に包埋することと、(f)1つ以上のアンプリコンをヒドロゲルに架橋することと、(g)ヒドロゲルの透明性を増強するためにヒドロゲルを浄化することと、(h)バーコード配列を有する1つ以上のヒドロゲル包埋アンプリコンを、リードプライマーおよび蛍光標識プローブと接触させることであって、プローブが、第1のチオール基と第2のチオール基との間のジスルフィド結合によって第2のチオール基を含むフルオロフォアに共有結合した第1のチオ
ール基を含むオリゴヌクレオチドを含む、接触させることと、(i)リードプライマーおよび蛍光標識プローブをライゲーションすることであって、ライゲーションが、リードプライマーおよび蛍光標識プローブの両方が同一のアンプリコンの隣接配列に相補的である場合にのみ生じる、ライゲーションすることと、(j)ヒドロゲルを、抗酸化剤を含む抗退色緩衝液と接触させることと、(k)インサイチュ遺伝子配列決定を受けている無傷の組織における細胞における標的核酸の位置決めを決定するために1つ以上のヒドロゲル包埋アンプリコンを画像化することであって、画像化が、抗退色緩衝液の存在下で実施される、画像化することと、(l)ヒドロゲルを還元剤と接触させて、ジスルフィド結合の還元およびプローブからのフルオロフォアの切断をもたらすことと、(m)ヒドロゲルからフルオロフォアを除去することと、(n)ステップ(h)~(m)を繰り返し行うことと、を含む。
【0005】
ある特定の実施形態では、本方法は、無傷の組織を切片化し、無傷の組織の切片を表面上に平坦に配置することをさらに含む。例えば、金属リングを、切片上に押し下げ、切片を表面上に平坦に移すために使用することができる。いくつかの実施形態では、凍結切片化は、組織上で実施される。
【0006】
別の態様では、継続的な作動を可能にする、本明細書に記載の方法の自動化のための流体システムが提供される。いくつかの実施形態では、本システムは、流体デバイスと、本明細書に記載の方法を実施するように構成されたプロセッサとを備える。
【0007】
ある特定の実施形態では、a)非加圧試料チャンバを備えるデバイスと、b)蓋であって、蓋が、試料チャンバの上部を覆う、蓋と、c)インターフェースチューブであって、インターフェースチューブの第1の端部が、蓋によって保持されており、インターフェースチューブの第2の端部が、液体が試料チャンバ中に残っている限り、試料チャンバ内の液体がインターフェースチューブの底部と接触したままであるように、試料チャンバの底部縁部に十分に近接して、試料チャンバ中の組織試料の上に位置決めされている、インターフェースチューブと、d)流体が流体ラインを通ってインターフェースチューブに流れ込み、インターフェースチューブの第2の端部から試料チャンバ中の組織試料上に流れ出るように、インターフェースチューブの第1の端部に結合された流体ラインと、e)ポンプと、f)画像化システムと、g)本明細書に記載の方法を実施するように構成されたプロセッサユニットとを備える、流体システムが提供される。いくつかの実施形態では、試料チャンバは、マルチウェルプレートまたはスライドチャンバのウェルである。いくつかの実施形態では、インターフェースチューブが、組織試料平面に対して極角で配置される。いくつかの実施形態では、流体システムは、試料チャンバを極低温で維持するクリオスタットをさらに備える。いくつかの実施形態では、流体システムは、ポンプとインターフェース接続された多方向セレクタバルブをさらに備える。いくつかの実施形態では、流体システムは、本明細書に記載の方法を実施するための試薬を含む1つ以上の容器またはウェルを備える試薬トレイをさらに備え、試薬は、多方向セレクタバルブに流体的に接続される。いくつかの実施形態では、流体システムは、本明細書に記載の方法を実施するための緩衝液を含む1つ以上の容器またはウェルを備える緩衝液トレイをさらに備え、緩衝液は、多方向セレクタバルブに流体的に接続される。いくつかの実施形態では、試薬トレイおよび/または緩衝液トレイは、使い捨てである。いくつかの実施形態では、流体システムは、試薬トレイを支持する調節可能なステージ、冷却器、および試薬トレイからの試薬の選択を可能にするための調節可能なステージの移動を可能にする位置センサをさらに備える。いくつかの実施形態では、流体システムは、多方向セレクタバルブに流体的に接続された廃棄物容器をさらに備える。いくつかの実施形態では、画像化システムは、共焦点顕微鏡法、回転ディスク共焦点顕微鏡法、光シート顕微鏡法、格子光シート顕微鏡法、または光視野顕微鏡法を実施する顕微鏡を備える。いくつかの実施形態では、流体システムは、流体システムを取り囲む容器をさらに備え、容器は周囲光を遮断する。いくつかの実
施形態では、流体システムを取り囲む容器は、1つ以上のドアまたは引き出しを備える。いくつかの実施形態では、流体システムを取り囲む容器は、音響減衰容器である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1-1】解剖学的データおよびゲノムデータを統合した無傷の組織の配列決定を示す。
図1-2】解剖学的データおよびゲノムデータを統合した無傷の組織の配列決定を示す。
図2】無傷の組織の配列決定における課題を示す。
図3】CISITS方法の利点を示す。
図4】没食子酸プロピルまたは他の抗酸化物質を用いた抗退色が光退色を低減することを示す。
図5A】連続的配列決定のためのチオール媒介性読み出しフルオロプローブを用いたラウンドからラウンドへの堅牢性を示す。
図5B】連続的配列決定のためのチオール媒介性読み出しフルオロプローブを用いたラウンドからラウンドへの堅牢性を示す。
図5C】連続的配列決定のためのチオール媒介性読み出しフルオロプローブを用いたラウンドからラウンドへの堅牢性を示す。
図6】厚い組織における組み合わせ配列決定を示す。
図7-1】CISITS配列決定装置の図を示す。
図7-2】CISITS配列決定装置の図を示す。
図8】CISITSソフトウェアインターフェースを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
無傷の組織における細胞における標的核酸のインサイチュ遺伝子配列決定のためのデバイス、方法、およびシステムが本明細書で提供される。候補薬剤をスクリーニングして、候補薬剤が無傷の組織における細胞における核酸の遺伝子発現を調節するか否か決定する方法も本明細書で提供される。
【0010】
本デバイス、方法、およびシステムを説明する前に、本発明は、記載された特定の方法または組成物に限定されるものではなく、それ自体が勿論、変化し得ることを理解されたい。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される専門用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものであることも理解されたい。
【0011】
値の範囲が提供される場合、文脈上別段の指示がない限り、その範囲の上限と下限との間の各介在値も、下限の単位の10分の1まで具体的に開示されていることを理解されたい。任意の記載値または記載された範囲内の間に介在する値と、任意の他の記載値またはその記載された範囲内の間に介在する値との間の、それぞれより小さい範囲が、本発明に包含される。これらの小さい範囲の上限および下限は、独立して範囲に含まれていても、除外されていてもよく、いずれか、どちらでもない、または両方の限定が小さい範囲に含まれている各範囲も、記載されている範囲の中で任意の具体的に除外されている限定に従うことを条件として、本発明に包含される。記載された範囲が限定の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限定のいずれかまたは両方を除外する範囲も、同様に本発明に含まれる。
【0012】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等の任意の方法および材料は、本発明の実施または試験に使用することができるが、ここでは、いくつかの潜在的かつ好ましい方法および材料を説
明する。本明細書で言及されるすべての刊行物は、刊行物が引用されることに関連して方法および/または材料を開示および説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合、本開示は、組み込まれた刊行物の任意の開示に優先されることを理解されたい。
【0013】
本開示を読むと当業者には明らかであるように、本明細書に記載および例証される別個の実施形態の各々は、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、他の様々な実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得るか、またはこれらと組み合わされ得る別個の構成要素および特徴を有する。任意の列挙された方法は、列挙された事象の順序、または論理的に可能な任意の他の順序で実行され得る。
【0014】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「a cell(細胞)」への言及は、複数のかかる細胞を含み、「the peptide(ペプチド)」への言及は、当業者に既知の1つ以上のペプチドおよびその等価物、例えばオリゴペプチドまたはポリペプチドなどへの言及を含む。
【0015】
本明細書で論じられる刊行物は、本出願の出願日より前のそれらの開示についてのみ提供される。本明細書におけるいかなる内容も、本発明が先行発明を理由に、そのような刊行物に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。さらに、提供される刊行物の日付は、独立して確認する必要があり得る実際の刊行日とは異なる場合がある。
【0016】
定義
「約」という用語は、特に所与の量に関して、プラスまたはマイナス5パーセントの偏差を包含することを意味する。
【0017】
「ペプチド」、「オリゴペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書では互換的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語はまた、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学的模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび非天然に存在するアミノ酸ポリマーにも適用される。全長タンパク質およびその断片の両方が、定義に包含される。この用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、リン酸化、グリコシル化、アセチル化、ヒドロキシル化、酸化など、ならびに修飾ペプチド骨格を有する化学的または生化学的に修飾されたまたは誘導体化されたアミノ酸およびポリペプチドを含む。この用語はまた、異種のアミノ酸配列を有する融合タンパク質、N末端メチオニン残基を有する、または有さない異種および相同のリーダー配列を有する融合、免疫学的にタグ付けされたタンパク質などを含むが、これらに限定されない、融合タンパク質も含む。この用語は、脂肪酸部分、脂質部分、糖部分、および炭水化物部分のうちの1つ以上を含むポリペプチドを含む。
【0018】
本明細書で使用される場合、「標的核酸」という用語は、単一の細胞中に存在する任意のポリヌクレオチド核酸分子(例えば、DNA分子、RNA分子、修飾核酸など)である。いくつかの実施形態では、標的核酸は、コードRNA(例えば、mRNA)である。いくつかの実施形態では、標的核酸は、非コードRNA(例えば、tRNA、rRNA、マイクロRNA(miRNA)、成熟miRNA、未成熟miRNAなど)である。いくつかの実施形態では、標的核酸は、細胞の状況におけるRNA分子(例えば、mRNA、プレmRNAなど)のスプライスバリアントである。したがって、好適な標的核酸は、スプライシングされていないRNA(例えば、プレmRNA、mRNA)、部分的スプライシ
ングRNA、または完全スプライシングRNAなどであり得る。目的の標的核酸は、細胞集団内で可変的に発現されてもよく、すなわち、異なる存在量を有してもよく、本発明の方法は、個々の細胞におけるRNA転写産物を含むがこれに限定されない核酸の発現レベルのプロファイリングおよび比較を可能にする。標的核酸はまた、DNA分子、例えば、変性ゲノム、ウイルス、プラスミドなどであってもよい。例えば、本方法を使用して、例えば、標的核酸が集団における細胞のゲノムにおいて異なる存在量で存在するがん細胞集団、ウイルス負荷および動態を決定するためのウイルス感染細胞において、コピー数バリアントを検出し得る。
【0019】
本明細書では互換的に使用される「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド」、および「核酸分子」という用語は、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかの任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。したがって、この用語には、単鎖、二本鎖、もしくは多鎖DNAもしくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、またはプリンおよびピリミジン塩基、もしくは他の天然、化学的もしくは生化学的に修飾された、非天然、もしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むポリマーが含まれるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチドの骨格は、糖およびリン酸基(典型的には、RNAまたはDNAに見出され得る)、または修飾もしくは置換された糖もしくはリン酸基を含み得る。代替的に、ポリヌクレオチドの骨格は、ホスホラミダイト、および/またはホスホロチオエートなどの合成サブユニットのポリマーを含み得、したがって、オリゴデオキシヌクレオシドホスホラミデートまたは混合ホスホラミデート-ホスホジエステルオリゴマーであり得る。Peyrottes et al.(1996)Nucl.Acids Res.24:1841-1848、Chaturvedi et al.(1996)Nucl.Acids Res.24:2318-2323を参照されたい。ポリヌクレオチドは、1つ以上のLヌクレオシドを含み得る。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体などの修飾ヌクレオチド、ウラシル、他の糖、ならびにフルオロリボースおよびチオエートなどの連結基、およびヌクレオチド分岐を含み得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断されてもよい。ポリヌクレオチドは、N3’-P5’(NP)ホスホラミデート、モルホリノホスホロシアミデート(MF)、ロックド核酸(LNA)、2’-O-メトキシエチル(MOE)、または2’-フルオロアラビノ核酸(FANA)を含むように修飾されてもよく、これらはヌクレアーゼ分解に対するポリヌクレオチドの耐性を増強することができる(例えば、Faria et al.(2001)Nature Biotechnol.19:40-44、Toulme(2001)Nature Biotechnol.19:17-18を参照されたい)。ポリヌクレオチドは、例えば、標識化成分とのコンジュゲーションなどによって、重合後にさらに修飾されてもよい。この定義に含まれる他の種類の修飾は、キャップ、天然に存在するヌクレオチドのうちの1つ以上の類似体での置換、およびポリヌクレオチドをタンパク質、金属イオン、標識化成分、他のポリヌクレオチド、または固体支持体に結合させるための手段の導入である。免疫調節核酸分子は、本明細書でより詳細に記載するように、様々な製剤において、例えば、リポソーム、マイクロカプセル化などと関連して提供され得る。増幅に使用されるポリヌクレオチドは、増幅における最大効率のために概して一本鎖であるが、代替的に二本鎖であってもよい。二本鎖である場合、ポリヌクレオチドをまず処理して、その鎖を分離した後、伸長産物を調製するために使用することができる。この変性ステップは、典型的には熱の影響を受けるが、代替的には、アルカリを使用して実行し、続いて中和してもよい。
【0020】
「単離された」とは、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを指す場合、示される分子が、その分子が天然に見られる生物全体から分離され、離れているか、または同じ種類の他の生物学的マクロ分子の実質的な非存在下で存在することを意味する。ポリヌクレオチドに関して「単離された」という用語は、天然において通常それと会合する配列の全体もしくは一部を欠く核酸分子、または天然に存在するが、それと関連する異種配列を
有する配列、または染色体から解離した分子である。
【0021】
「対象」、「個体」または「患者」という用語は、本明細書において互換的に使用され、脊椎動物、好ましくは哺乳動物を指す。「脊椎動物」とは、ヒトならびに、チンパンジーおよび他の類人猿およびサル種などの非ヒト霊長類を含む他の霊長類、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびウマなどの家畜、イヌおよびネコなどの飼育哺乳動物、マウス、ラット、およびモルモットなどのげっ歯類を含む実験動物、ニワトリ、シチメンチョウおよび他の家禽鳥、アヒル、ガチョウなどの飼育鳥、野鳥および狩猟鳥類を含む鳥類を含むがこれらに限定されない、脊索動物亜門の任意のメンバーを意味する。用語は、特定の年齢を示すものではない。したがって、成人個体および新生児個体の両方が当てはまることが意図される。
【0022】
方法
本明細書で開示される方法は、配列決定化学および配列決定の自動実行の両方を改善する、「臨床規模および工業規模の無傷の組織の配列決定」(CISITS)と称される修正された空間分解型転写アンプリコン読み出しマッピング(STARmap)技法の使用を含む。元のSTARmap技法の説明については、例えば、国際特許出願公開第2019/199579A1号およびWang et al.(2018)Science 361(6400):eaat5691を参照されたく、これらは参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。STARmapと同様に、CISITSは、ライゲーションによる配列決定プロセス、特異的シグナル増幅、生体組織を透明な配列決定チップに変換するヒドロゲル組織化学、および亜細胞および細胞レベルで高度に多重化された遺伝子検出を空間的に分解する関連するデータ分析パイプラインを使用した画像ベースのインサイチュ核酸(DNAおよび/またはRNA)配列決定技術を利用する。CISITSは、標識分子のシグナル対ノイズ比(SNR)を増加させ、ラウンドにわたるキャリーオーバーシグナルを排除し、厚い組織における組み合わせ配列決定を可能にする改良を追加している。また、本明細書では、試料にわたる並列化を可能にするCISITS方法の自動化のための流体システムも開示される。流体システムは、もはや加圧されていない試料チャンバを含み、顕微鏡ハードウェアとのCISITSの統合も含む。追加的に、自動流体システムを制御するためのCISITSソフトウェアが提供される。
【0023】
上記に要約されるように、本明細書で開示される方法は、無傷の組織における細胞における標的核酸のインサイチュ遺伝子配列決定のための方法を含む。本方法は典型的には、(a)特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件下で、固定化および透過化された無傷の組織試料を少なくとも一対のオリゴヌクレオチドと接触させることであって、一対のオリゴヌクレオチドが、第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドを含み、第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドの各々が、第1の相補性領域、第2の相補性領域、および第3の相補性領域を含み、第2のオリゴヌクレオチドが、バーコード配列をさらに含み、第1のオリゴヌクレオチドの第1の相補性領域が、標的核酸の第1の部分に相補的であり、第1のオリゴヌクレオチドの第2の相補性領域が、第2のオリゴヌクレオチドの第1の相補性領域に相補的であり、第1のオリゴヌクレオチドの第3の相補性領域が、第2のオリゴヌクレオチドの第3の相補性領域に相補的であり、第2のオリゴヌクレオチドの第2の相補性領域が、標的核酸の第2の部分に相補的であり、第1のオリゴヌクレオチドの第1の相補性領域が、第2のオリゴヌクレオチドの第2の相補性領域に隣接している、接触させることと、(b)リガーゼを添加して、第2のオリゴヌクレオチドの5’および3’末端をライゲーションし、閉鎖核酸環を生成することと、(c)ローリングサークル増幅を実施する前に、組織試料全体へのDNAポリメラーゼの均一な拡散を可能にするために十分な時間、組織試料をDNAポリメラーゼとともにプレインキュベーションすることと、(d)1つ以上のアンプリコンが生成されるように、組織試料をデオキシリボヌクレオチド三リン酸と接触させることによってローリングサ
ークル増幅を実施することであって、ライゲーションされた第2のオリゴヌクレオチドが鋳型として機能し、第1のオリゴヌクレオチドがDNAポリメラーゼのプライマーとして機能する、実施することと、(e)ステップ(a)~(d)のうちのいずれか1つの前または後に、組織試料をヒドロゲル中に包埋することと、(f)1つ以上のアンプリコンをヒドロゲルに架橋することと、(g)ヒドロゲルの透明性を増強するためにヒドロゲルを浄化することと、(h)バーコード配列を有する1つ以上のヒドロゲル包埋アンプリコンを、リードプライマーおよび蛍光標識プローブと接触させることであって、プローブが、第1のチオール基と第2のチオール基との間のジスルフィド結合によって第2のチオール基を含むフルオロフォアに共有結合した第1のチオール基を含むオリゴヌクレオチドを含む、接触させることと、(i)リードプライマーおよび蛍光標識プローブをライゲーションすることであって、ライゲーションが、リードプライマーおよび蛍光標識プローブの両方が同一のアンプリコンの隣接配列に相補的である場合にのみ生じる、ライゲーションすることと、(j)ヒドロゲルを、抗酸化剤を含む抗退色緩衝液と接触させることと、(k)インサイチュ遺伝子配列決定を受けている無傷の組織における細胞における標的核酸の位置決めを決定するために1つ以上のヒドロゲル包埋アンプリコンを画像化することであって、画像化が、抗退色緩衝液の存在下で実施される、画像化することと、(l)ヒドロゲルを還元剤と接触させて、ジスルフィド結合の還元およびプローブからのフルオロフォアの切断をもたらすことと、(m)ヒドロゲルからフルオロフォアを除去することと、(n)ステップ(h)~(m)を繰り返し行うこととを含む。
【0024】
本明細書で開示される方法はまた、候補薬剤をスクリーニングして、候補薬剤が無傷の組織における細胞における核酸の遺伝子発現を調節するか否かを決定する方法も提供し、本方法は、(a)特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件下で、固定化および透過化された無傷の組織試料を少なくとも一対のオリゴヌクレオチドプライマーと接触させることであって、一対のプライマーが、第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドを含み、第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドの各々が、第1の相補性領域、第2の相補性領域、および第3の相補性領域を含み、第2のオリゴヌクレオチドが、バーコード配列をさらに含み、第1のオリゴヌクレオチドの第1の相補性領域が、標的核酸の第1の部分に相補的であり、第1のオリゴヌクレオチドの第2の相補性領域が、第2のオリゴヌクレオチドの第1の相補性領域に相補的であり、第1のオリゴヌクレオチドの第3の相補性領域が、第2のオリゴヌクレオチドの第3の相補性領域に相補的であり、第2のオリゴヌクレオチドの第2の相補性領域が、標的核酸の第2の部分に相補的であり、第1のオリゴヌクレオチドの第1の相補性領域が、第2のオリゴヌクレオチドの第2の相補性領域に隣接している、接触させることと、(b)リガーゼを添加して、第2のオリゴヌクレオチドをライゲーションし、閉鎖核酸環を生成することと、(c)核酸分子の存在下でローリングサークル増幅を実施することであって、第2のオリゴヌクレオチドを鋳型として、第1のオリゴヌクレオチドをポリメラーゼのプライマーとして使用して、1つ以上のアンプリコンを形成することを含む、実施することと、(d)ヒドロゲルサブユニットの存在下で1つ以上のアンプリコンを包埋して、1つ以上のヒドロゲル包埋アンプリコンを形成することと、(e)ライゲーションを可能にする条件下で、バーコード配列を有する1つ以上のヒドロゲル包埋アンプリコンを一対のプライマーと接触させることであって、一対のプライマーが、第3のオリゴヌクレオチドおよび第4のオリゴヌクレオチドを含み、ライゲーションが、第3のオリゴヌクレオチドおよび第4のオリゴヌクレオチドの両方が、同じアンプリコンにライゲーションする場合にのみ生じる、接触させることと、(f)ステップ(e)を繰り返すことと、(g)1つ以上のヒドロゲル包埋アンプリコンを画像化して、無傷の組織における細胞における標的核酸のインサイチュ遺伝子配列決定を決定することと、(h)標的核酸の遺伝子発現レベルを検出することであって、少なくとも1つの候補薬剤の非存在下における標的核酸の発現レベルに対して、少なくとも1つの候補薬剤の存在下における標的核酸の発現レベルの変化が、少なくとも1つの候補薬剤が、無傷の組織における細胞における核酸の遺伝子発現を調節すること
を示す、検出することとを含む。
【0025】
ある特定の態様では、本明細書で開示される方法は、既存の遺伝子発現分析ツールと比較して、より速い処理時間、より高い多重性(最大1000個の遺伝子)、より高い効率、より高い感度、より低い誤差率、およびより空間的に分解される細胞型を提供する。かかる態様では、改良されたヒドロゲル組織化学法は、生体組織を、誤差が低減された伴うインサイチュ配列決定のための改良されたライゲーションによる配列決定プロセス(SEDAL)であるインサイチュ配列決定と適合性があるヒドロゲルでインプリントされた核酸に形質転換する。いくつかの他の態様では、本明細書で開示される方法は、単一細胞および/または単一分子感受性を有する生物医学研究および臨床診断(例えば、がん、細菌感染、ウイルス感染など)のための空間的配列決定(例えば、試薬、チップ、またはサービス)を含む。
【0026】
分子内ライゲーションを介した核酸の特異的増幅(SNAIL)
いくつかの実施形態では、CISITSの1つの構成要素は、SNAILと称され得る分子内ライゲーションを介した核酸の特異的増幅のためのインサイチュでの細胞RNAからcDNAライブラリを生成するための効率的なアプローチを含む。ある特定の実施形態では、主題の方法は、特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件下で、固定化および透過化された無傷の組織を少なくとも一対のオリゴヌクレオチドプライマーと接触させることを含み、一対のプライマーは、第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドを含む。
【0027】
より概して、組織における目的の細胞において存在する核酸は、本明細書において第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドと称される一対のプライマーを含む複合体の会合の足場として機能する。いくつかの実施形態では、固定化および透過化された無傷の組織を接触させることは、一対のプライマーを同じ標的核酸にハイブリダイゼーションすることを含む。いくつかの実施形態では、標的核酸は、RNAである。かかる実施形態では、標的核酸は、mRNAであり得る。他の実施形態では、標的核酸は、DNAである。
【0028】
本明細書で使用される場合、「ハイブリダイゼーションする」および「ハイブリダイゼーション」という用語は、ワトソン-クリック塩基対合を介して複合体を形成するために十分に相補的であるヌクレオチド配列間の複合体の形成を指す。プライマーが標的(鋳型)と「ハイブリダイゼーションする」場合、かかる複合体(またはハイブリッド)は、DNA合成を開始するために、例えば、DNAポリメラーゼによって必要とされるプライミング機能を果たすために十分に安定している。ハイブリダイゼーションする配列は、安定したハイブリッドを提供するために完全な相補性を有する必要はないことが理解される。多くの場合では、4つ以上のヌクレオチドのループは無視して、塩基の約10%未満が不一致で、安定したハイブリッドが形成される。したがって、本明細書で使用される場合、「相補的」という用語は、概して約90%以上の相同性が存在するアッセイ条件下で、その「相補体」と安定な二本鎖を形成するオリゴヌクレオチドを指す。
【0029】
SNAILオリゴヌクレオチドプライマー
本発明の方法において、SNAILオリゴヌクレオチドプライマーは、少なくとも第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドを含み、第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドの各々は、第1の相補性領域、第2の相補性領域、および第3の相補性領域を含み、第2のオリゴヌクレオチドはバーコード配列をさらに含み、第1のオリゴヌクレオチドの第1の相補性領域は、標的核酸の第1の部分に相補的であり、第1のオリゴヌクレオチドの第2の相補性領域は、第2のオリゴヌクレオチドの第1の相補性領域に相補的であり、第1のオリゴヌクレオチドの第3の相補性領域は、第2の
オリゴヌクレオチドの第3の相補性領域に相補的であり、第2のオリゴヌクレオチドの第2の相補性領域は、標的核酸の第2の部分に相補的であり、第1のオリゴヌクレオチドの第1の相補性領域は、第2のオリゴヌクレオチドの第2の相補性領域に隣接している。代替的な実施形態では、第2のオリゴヌクレオチドは、閉鎖環状分子であり、ライゲーションステップは省略される。
【0030】
本開示は、固定化および透過化された組織の接触が、異なる標的核酸に対する特異性を有する複数のオリゴヌクレオチドプライマーをハイブリダイゼーションすることを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、これらに限定されないが、標的ヌクレオチド配列にハイブリダイゼーションする、5個以上の第1のオリゴヌクレオチド、例えば、8個以上、10個以上、12個以上、15個以上、18個以上、20個以上、25個以上、30個以上、35個以上を含む、複数の第1のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、これらに限定されないが、15個以上、例えば、20個以上、30個以上、40個以上、50個以上、60個以上、70個以上、および最大80個の異なる標的ヌクレオチド配列にハイブリダイゼーションする、15個以上の第1のオリゴヌクレオチド、例えば、20個以上、30個以上、40個以上、50個以上、60個以上、70個以上、および最大80個の異なる第1のオリゴヌクレオチドを含む、複数の第1のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、これらに限定されないが、5個以上の第2のオリゴヌクレオチド、例えば、8個以上、10個以上、12個以上、15個以上、18個以上、20個以上、25個以上、30個以上、35個以上を含む、複数の第2のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、これらに限定されないが、15個以上、例えば、20個以上、30個以上、40個以上、50個以上、60個以上、70個以上、および最大80個の異なる標的ヌクレオチド配列にハイブリダイゼーションする、15個以上の第2のオリゴヌクレオチド、例えば、20個以上、30個以上、40個以上、50個以上、60個以上、70個以上、および最大80個の異なる第1のオリゴヌクレオチドを含む、複数の第2のオリゴヌクレオチドを含む。複数のオリゴヌクレオチド対を反応に使用することができ、1つ以上の対が各標的核酸に特異的に結合する。例えば、感受性を改善し、可変性を低減するために、2つのプライマー対を1つの標的核酸に対して使用することができる。また、細胞内の複数の異なる標的核酸を検出すること、例えば、最大2個、最大3個、最大4個、最大5個、最大6個、最大7個、最大8個、最大9個、最大10個、最大12個、最大15個、最大18個、最大20個、最大25個、最大30個、最大40個またはそれ以上の異なる標的核酸を検出することも目的である。プライマーは、典型的には、使用前に、典型的には、少なくとも約50℃、少なくとも約60℃、少なくとも約70℃、少なくとも約80℃、および最大約99℃、最大約95℃、最大約90℃の温度まで加熱することによって変性される。
【0031】
いくつかの実施形態では、プライマーは、試料と接触する前に加熱によって変性される。ある特定の態様では、オリゴヌクレオチドの融解温度(T)は、溶液中のライゲーションを最小限に抑えるように選択される。核酸の「融解温度」または「T」は、加熱、または、例えば、酸もしくはアルカリ処理などによる塩基対間の水素結合の他の解離に起因して、核酸の螺旋構造の半分が失われる温度として定義される。核酸分子のTは、その長さおよび塩基組成に依存する。GC塩基対に富む核酸分子は、AT塩基対が豊富なものよりも高いTを有する。分離された核酸の相補鎖は、温度がT未満に低下した場合に、自発的に再会合またはアニールして二本鎖核酸を形成する。核酸ハイブリダイゼーションの最高速度は、Tよりもおよそ25℃下で起こる。Tは、以下の関係を使用して推定し得る。T=69.3+0.41(GC)%(Marmur et al.(1962)J.Mol.Biol.5:109-118)。
【0032】
ある特定の実施形態では、複数の第2のオリゴヌクレオチドは、錠型プローブを含む。
いくつかの実施形態では、プローブは、測定および定量化することができる検出可能な標識を含む。「標識」および「検出可能な標識」という用語は、放射性同位体、蛍光体、化学発光体、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素阻害剤、発色団、色素、金属イオン、金属ゾル、リガンド(例えば、ビオチンまたはハプテン)などを含むがこれらに限定されない検出可能な分子を指す。「蛍光剤」という用語は、検出可能な範囲内で蛍光を示すことができる物質またはその一部を指す。本発明とともに使用され得る標識の特定の例には、フィコエリトリン、アレクサ色素、フルオレセイン、YPet、CyPet、カスケードブルー、アロフィコシアニン、Cy3、Cy5、Cy7、ローダミン、ダンシル、ウンベリフェロン、テキサスレッド、ルミノール、アクリジニウムエステル、ビオチン、緑色蛍光タンパク質(GFP)、増強緑色蛍光タンパク質(EGFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、増強黄色蛍光タンパク質(EYFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、ホタルルシフェラーゼ、レニラルルシフェラーゼ、NADPH、ベータガラクトシダーゼ、ホースラジッシュペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、クロラムフェニコルアセチルトランスフェラーゼ、およびウラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
いくつかの実施形態では、1つ以上の第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドは、標的核酸または標的部位の異なる領域に結合する。一対において、各標的部位は異なり、標的部位は、標的核酸上の隣接部位であり、例えば、通常、他の部位から15ヌクレオチド以下の距離にあり、例えば、10、8、6、4、または2ヌクレオチド以下の距離であり、連続部位であり得る。標的部位は、典型的には、同じ方向で標的核酸の同じ鎖上に存在する。標的部位もまた、細胞内に存在する他の核酸に対して独自の結合部位を提供するように選択される。各標的部位は、概して、約19~約25ヌクレオチド長、例えば約19~23ヌクレオチド、約19~21ヌクレオチド、または約19~20ヌクレオチドである。第1および第2のオリゴヌクレオチドの対は、対において各オリゴヌクレオチドが、その同族の標的部位に結合するための同様の融解温度を有するように選択され、例えば、Tは、約50℃から、約52℃から、約55℃から、約58℃から、約62℃から、約65℃から、約70℃から、または約72℃からであり得る。標的部位のGC含有量は、概して、約20%以下、約30%以下、約40%以下、約50%以下、約60%以下、約70%以下であるように選択され得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、第1のオリゴヌクレオチドは、第1、第2、および第3の相補性領域を含む。第1のオリゴヌクレオチドの標的部位は、第1の相補性領域を指し得る。上記で要約したように、第1のオリゴヌクレオチドの第1の相補性領域は、19~25ヌクレオチドの長さを有し得る。ある特定の態様では、第1のオリゴヌクレオチドの第2の相補性領域は、例えば、4~8ヌクレオチドまたは4~7ヌクレオチドを含む3~10ヌクレオチドの長さを有する。いくつかの態様では、第1のオリゴヌクレオチドの第2の相補性領域は、6ヌクレオチドの長さを有する。いくつかの実施形態では、第1のオリゴヌクレオチドの第3の相補性領域は、同様に、6ヌクレオチドの長さを有する。かかる実施形態では、第1のオリゴヌクレオチドの第3の相補性領域は、例えば、4~8ヌクレオチドまたは4~7ヌクレオチドを含む3~10ヌクレオチドの長さを有する。
【0035】
いくつかの実施形態では、第2のオリゴヌクレオチドは、第1、第2および第3の相補性領域を含む。第2のオリゴヌクレオチドの標的部位は、第2の相補性領域を指し得る。上記で要約したように、第2のオリゴヌクレオチドの第2の相補性領域は、19~25ヌクレオチドの長さを有し得る。ある特定の態様では、第1のオリゴヌクレオチドの第1の相補性領域は、例えば、4~8ヌクレオチドまたは4~7ヌクレオチドを含む3~10ヌクレオチドの長さを有する。いくつかの態様では、第1のオリゴヌクレオチドの第1の相補性領域は、6ヌクレオチドの長さを有する。いくつかの態様では、第2のオリゴヌクレオチドの第1の相補性領域は、第2のオリゴヌクレオチドの5’末端を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、第2のオリゴヌクレオチドの第3の相補性領域は、同様に、6ヌクレオチドの長さを有する。かかる実施形態では、第2のオリゴヌクレオチドの第3の相補性領域は、例えば、4~8ヌクレオチドまたは4~7ヌクレオチドを含む3~10ヌクレオチドの長さを有する。さらなる実施形態では、第2のオリゴヌクレオチドの第3の相補性領域は、第2のオリゴヌクレオチドの3’末端を含む。いくつかの実施形態では、第2のオリゴヌクレオチドの第1の相補性領域は、第2のオリゴヌクレオチドの第3の相補性領域に隣接する。
【0037】
いくつかの態様では、第2のオリゴヌクレオチドは、バーコード配列を含み、第2のオリゴヌクレオチドのバーコード配列は、標的核酸の同定のためのバーコード化情報を提供する。「バーコード」という用語は、単一の細胞または細胞の亜集団を同定するために使用される核酸配列を指す。バーコード配列は、増幅中に目的の標的核酸に連結させることができ、標的核酸が由来する細胞までアンプリコンをトレースするために使用することができる。バーコード配列は、バーコード配列を含む領域およびバーコード配列が最終的に増幅された標的核酸産物(すなわち、アンプリコン)に組み込まれるように標的核酸に相補的な領域を含有するオリゴヌクレオチドで増幅を行うことによって、増幅中に目的の標的核酸に付加され得る。
【0038】
組織
本明細書に記載される場合、開示される方法は、特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件下で固定化および透過化された無傷の組織を少なくとも一対のオリゴヌクレオチドプライマーと少なくとも接触させることによるインサイチュ配列決定技術を含む。本明細書に記載の方法とともに使用するために好適な組織標本には、概して、例えば、上皮、筋肉、結合組織、および神経組織が含まれるが、これらに限定されないそれらの生検標本および検死標本などの生体または死体の対象から収集された任意の種類の組織標本が含まれる。組織標本は、本明細書に記載の方法を使用して収集および処理されてもよく、処理の直後に顕微鏡分析に供されてもよく、または保存され、将来的に、例えば長期間の保管後に顕微鏡分析に供されてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して、将来の分析のために、安定し、アクセス可能で、完全に無傷の形態で組織標本を保存し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して、以前に保存または保管された組織標本を分析してもよい。いくつかの実施形態では、無傷の組織は、視覚野スライスなどの脳組織を含む。いくつかの実施形態では、無傷の組織は、例えば、5~18μm、5~15μm、または5~10μmを含むがこれらに限定されない、5~20μmの厚さを有する薄いスライスである。他の実施形態では、無傷の組織は、例えば、50~150μm、50~100μm、または50~80μmを含むがこれらに限定されない、50~200μmの厚さを有する厚いスライスである。
【0039】
本発明の態様は、無傷の組織を固定化することを含む。本明細書で使用される「固定化する」または「固定化」という用語は、腐敗および/または分解から生体材料(例えば、組織、細胞、オルガネラ、分子など)を保存するプロセスである。固定化は、任意の好都合なプロトコルを使用して達成され得る。固定化は、試料を固定化試薬(すなわち、少なくとも1つの固定化剤を含有する試薬)と接触させることを含み得る。試料を、温度、試料の性質、および固定化剤に依存し得る広い範囲の時間、固定化試薬に接触させ得る。例えば、試料を、24時間以下、18時間以下、12時間以下、8時間以下、6時間以下、4時間以下、2時間以下、60分以下、45分以下、30分以下、25分以下、20分以下、15分以下、10分以下、5分以下、または2分以下で固定化試薬に接触させ得る。
【0040】
試料を、5分~24時間、例えば、10分~20時間、10分~18時間、10分~12時間、10分~8時間、10分~6時間、10分~4時間、10分~2時間、15分~
20時間、15分~18時間、15分~12時間、15分~8時間、15分~6時間、15分~4時間、15分~2時間、15分~1.5時間、15分~1時間、10分~30分、15分~30分、30分~2時間、45分~1.5時間、または55分~70分の範囲の期間、固定化試薬に接触させ得る。
【0041】
試料を、プロトコルおよび使用する試薬に応じて、様々な温度で固定化試薬に接触させ得る。例えば、いくつかの例では、試料を、-22℃~55℃の範囲の温度で固定化試薬に接触させることができ、目的の特定の範囲には、50~54℃、40~44℃、35~39℃、28~32℃、20~26℃、0~6℃、および-18~-22℃が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの場合において、試料を、-20℃、4℃、室温(22~25℃)、30℃、37℃、42℃、または52℃の温度で固定化試薬に接触させ得る。
【0042】
任意の好都合な固定化試薬を使用することができる。一般的な固定化試薬としては、架橋固定化剤、沈殿固定化剤、酸化固定化剤、水銀などが挙げられる。架橋固定化剤は、共有結合によって2つ以上の分子を化学的に結合し、幅広い架橋試薬が使用され得る。好適な架橋固定化剤の例としては、アルデヒド(例えば、一般に「パラホルムアルデヒド」および「ホルマリン」とも呼ばれるホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドなど)、イミドエステル、NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)エステルなどが挙げられるが、これらに限定されない。好適な沈殿固定化剤の例としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノールなど)、アセトン、酢酸などが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、固定化剤は、ホルムアルデヒド(すなわち、パラホルムアルデヒドまたはホルマリン)である。固定化試薬中のホルムアルデヒドの好適な最終濃度は、10分間で、約1.6%を含む0.1~10%、1~8%、1~4%、1~2%、3~5%、または3.5~4.5%である。いくつかの実施形態では、試料は、4%のホルムアルデヒドの最終濃度で固定される(より濃縮されたストック溶液、例えば、38%、37%、36%、20%、18%、16%、14%、10%、8%、6%などから希釈される)。いくつかの実施形態では、試料は、10%のホルムアルデヒドの最終濃度で固定化される。いくつかの実施形態では、試料は、1%のホルムアルデヒドの最終濃度で固定化される。いくつかの実施形態では、固定剤は、グルタルアルデヒドである。固定化試薬中のグルタルアルデヒドの好適な濃度は、0.1~1%である。固定化試薬は、任意の組み合わせで2つ以上の固定化剤を含有し得る。例えば、いくつかの実施形態では、試料を、ホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒドの両方を含有する固定化試薬と接触させる。
【0043】
本明細書で使用される「透過化」または「透過化する」という用語は、試料の細胞(細胞膜など)を核酸プローブ、抗体、化学基質などの実験試薬に対して透過可能にするプロセスを指す。透過化のための任意の好都合な方法および/または試薬を使用することができる。好適な透過化試薬としては、洗剤(例えば、サポニン、トリトンX-100、Tween-20など)、有機固定化剤(例えば、アセトン、メタノール、エタノールなど)、酵素などが挙げられる。洗剤は幅広い濃度で使用され得る。例えば、0.001%~1%の洗剤、0.05%~0.5%の洗剤、または0.1%~0.3%の洗剤を、透過化処理に用いることができる(例えば、0.1%のサポニン、0.2%のtween-20、0.1~0.3%のトリトンX-100など)。いくつかの実施形態では、氷上のメタノールを少なくとも10分間使用して、透過させる。
【0044】
いくつかの実施形態では、固定化試薬および透過化試薬として同じ溶液を使用し得る。例えば、いくつかの実施形態では、固定化試薬は、0.1%~10%のホルムアルデヒドおよび0.001%~1%のサポニンを含有する。いくつかの実施形態では、固定化試薬は、1%のホルムアルデヒドおよび0.3%のサポニンを含有する。
【0045】
試料を、温度、試料の性質、および透過化試薬に依存し得る広い範囲の時間、透過化試薬に接触させ得る。例えば、試料を、24時間以上、24時間以下、18時間以下、12時間以下、8時間以下、6時間以下、4時間以下、2時間以下、60分以下、45分以下、30分以下、25分以下、20分以下、15分以下、10分以下、5分以下、または2分以下で透過化試薬に接触させ得る。試料を、プロトコルおよび使用する試薬に応じて、様々な温度で透過化試薬に接触させ得る。例えば、いくつかの例では、試料を、-82℃~55℃の範囲の温度で透過化試薬に接触させることができ、目的の特定の範囲には、50~54℃、40~44℃、35~39℃、28~32℃、20~26℃、0~6℃、-18~-22℃、および-78~-82℃が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの例では、試料を、-80℃、-20℃、4℃、室温(22~25℃)、30℃、37℃、42℃、または52℃の温度で、透過化試薬に接触させ得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、試料を酵素透過化試薬と接触させる。アッセイ試薬による試料の透過化を妨げる細胞外マトリックスまたは表面タンパク質を部分的に分解することによって、酵素透過化試薬は試料を透過させる。酵素透過化試薬との接触は、固定後および標的検出前の任意の時点で行うことができる。いくつかの例では、酵素透過化試薬は、市販の酵素であるプロテイナーゼKである。かかる場合には、固定化後の試薬と接触させる前に試料をプロテイナーゼKと接触させる。プロテイナーゼK処理(すなわち、プロテイナーゼKによる接触、一般に「プロテイナーゼK消化」とも称される)は、調査の下で各細胞型または組織型について経験的に決定される酵素濃度の範囲にわたって、ある範囲の温度で、ある範囲の時間にわたって実施することができる。例えば、試料を、30分以下、25分以下、20分以下、15分以下、10分以下、5分以下、または2分以下でプロテイナーゼKに接触させ得る。試料を、1μg/ml以下、2μg/m以下、4μg/ml以下、8μg/ml以下、10μg/ml以下、20μg/ml以下、30μg/ml以下、50μg/ml以下、または100μg/ml以下のプロテイナーゼKに接触させ得る。試料を、2℃~55℃の範囲の温度でプロテイナーゼKに接触させ得、目的の特定の範囲は、50~54℃、40~44℃、35~39℃、28~32℃、20~26℃、および0~6℃を含むが、これらに限定されない。いくつかの例では、試料を、4℃、室温(22~25℃)、30℃、37℃、42℃、または52℃の温度でプロテアーゼKに接触させ得る。いくつかの実施形態では、試料を、酵素透過化試薬と接触させない。いくつかの実施形態では、試料を、プロテイナーゼKと接触させない。無傷の組織と少なくとも固定化試薬および透過化試薬との接触は、固定化および透過化された組織の産生をもたらす。
【0047】
リガーゼ
いくつかの実施形態では、開示される方法は、第2のオリゴヌクレオチドをライゲーションし、閉鎖核酸環を生成するためにリガーゼを添加することを含む。いくつかの実施形態では、リガーゼの添加は、DNAリガーゼの添加を含む。代替的な実施形態では、第2のオリゴヌクレオチドは、閉鎖核酸環として提供され、リガーゼを添加するステップは省略される。ある特定の実施形態では、リガーゼは、標的核酸分子の配列決定を促進する酵素である。
【0048】
本明細書で使用される場合、「リガーゼ」という用語は、ポリヌクレオチドを一緒に接合するか、または単一のポリヌクレオチドの末端を接合するために一般的に使用される酵素を指す。リガーゼには、ATP依存性二本鎖ポリヌクレオチドリガーゼ、NAD依存性二本鎖DNAまたはRNAリガーゼ、および一本鎖ポリヌクレオチドリガーゼ、例えば、EC6.5.1.1(ATP依存性リガーゼ)、EC6.5.1.2(NAD+依存性リガーゼ)、EC6.5.1.3(RNAリガーゼ)に記載されるリガーゼのうちのいずれかが含まれる。リガーゼの具体例としては、E.coli DNAリガーゼおよびTaqDNAリガーゼなどの細菌リガーゼ、Ampligase(登録商標)熱安定性DNAリ
ガーゼ(Epicentre(登録商標)Technologies Corp.、lllumina(登録商標)の一部、Madison,Wis.)、およびT3DNAリガーゼ、T4DNAリガーゼおよびT7DNAリガーゼなどのファージリガーゼならびにこれらの変異体が挙げられる。
【0049】
ローリングサークル増幅
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、核酸分子の存在下でローリングサークル増幅を実施するステップを含み、この実施は、第2のオリゴヌクレオチドを鋳型として、第1のオリゴヌクレオチドをポリメラーゼが1つ以上のアンプリコンを形成するためのプライマーとして使用することを含む。かかる実施形態では、一本鎖環状ポリヌクレオチド鋳型は、第2のヌクレオチドのライゲーションによって形成され、環状ポリヌクレオチドは、第1のオリゴヌクレオチドに相補的な領域を含む。適切なdNTP前駆体および他の補助因子の存在下でDNAポリメラーゼを添加すると、第1のオリゴヌクレオチドは、鋳型の複数のコピーの複製によって伸長される。この増幅産物は、検出プローブに結合することによって容易に検出され得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドが同じ標的核酸分子にハイブリダイゼーションする場合にのみ、第2のオリゴヌクレオチドを環化し、ローリングサークル増幅して、cDNAの複数のコピーを含有するcDNAナノボール(すなわち、アンプリコン)を生成し得る。「アンプリコン」という用語は、PCR反応または他の核酸増幅プロセスの増幅された核酸産物を指す。いくつかの実施形態では、アミン修飾ヌクレオチドは、ローリングサークル増幅反応にスパイクされる。
【0051】
ローリングサークル増幅のための技法は、当技術分野で既知である(例えば、Baner et al,Nucleic Acids Research,26:5073-5078,1998、Lizardi et al,Nature Genetics 19:226,1998、Schweitzer et al.Proc.Natl Acad.Sci.USA 97:101 13-1 19,2000、Faruqi et
al,BMC Genomics 2:4,2000、Nallur et al,Nucl.Acids Res.29:el 18,2001、Dean et al.Genome Res.1 1:1095-1099,2001、Schweitzer et al,Nature Biotech.20:359-365,2002、米国特許第6,054,274号、同第6,291,187号、同第6,323,009、同第6,344,329号、および同第6,368,801号を参照されたい)。
【0052】
いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、phi29DNAポリメラーゼである。ある特定の態様では、核酸分子は、アミン修飾ヌクレオチドを含む。かかる実施形態では、アミン修飾ヌクレオチドは、アクリル酸N-ヒドロキシスクシンイミド部分修飾を含む。他のアミン修飾ヌクレオチドの例としては、5-アミノアリル-dUTP部分修飾、5-プロパルギルアミノ-dCTP部分修飾、N6-6-アミノヘキシル-dATP部分修飾、または7-デアザ-7-プロパルギルアミノ-dATP部分修飾が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
組織ヒドロゲル中のアンプリコン包埋の設定
いくつかの実施形態では、開示される方法は、ヒドロゲルサブユニットの存在下で1つ以上のアンプリコンを包埋し、1つ以上のヒドロゲル包埋アンプリコンを形成することを含む。記載されるヒドロゲル-組織化学は、組織浄化、酵素拡散、および配列決定の複数サイクルのために、核酸をインサイチュ合成ヒドロゲルに共有結合させることを含む。いくつかの実施形態では、組織-ヒドロゲルにおけるアンプリコン包埋の設定を可能にするために、アミン修飾ヌクレオチドをローリングサークル増幅反応にスパイクし、アクリル
酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを使用してアクリルアミド部分と官能化し、アクリルアミドモノマーと共重合してヒドロゲルを形成する。
【0054】
本明細書で使用される場合、「ヒドロゲル」または「ヒドロゲルネットワーク」という用語は、水が分散媒体であるコロイドゲルとして時々見出される、水不溶性のポリマー鎖のネットワークを意味する。言い換えれば、ヒドロゲルは、溶解することなく大量の水を吸収することができる高分子材料の部類である。ヒドロゲルは、99%を超える水を含有することができ、天然ポリマーまたは合成ポリマー、またはそれらの組み合わせを含み得る。ヒドロゲルはまた、それらの顕著な水含有量により、天然組織と非常に類似したある程度の柔軟性を有する。好適なヒドロゲルの詳細な説明は、米国特許出願第2010/0055733号に見出され得、これは参照により本明細書に具体的に組み込まれる。本明細書で使用される場合、「ヒドロゲルサブユニット」または「ヒドロゲル前駆体」という用語は、架橋または「重合」されて三次元(3D)ヒドロゲルネットワークを形成することができる親水性モノマー、プレポリマー、またはポリマーを意味する。いかなる科学的理論にも拘束されないが、ヒドロゲルサブユニットの存在下での生体試料のこの固定は、標本の成分をヒドロゲルサブユニットに架橋し、それによって分子成分を所定の位置に固定し、組織構造および細胞形態を保存すると考えられている。
【0055】
いくつかの実施形態では、包埋は、1つ以上のアンプリコンをアクリルアミドと共重合することを含む。本明細書で使用される場合、「コポリマー」という用語は、2つ以上の種類のサブユニットを含有するポリマーを説明する。この用語は、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの種類のサブユニットを含むポリマーを包含する。
【0056】
ある特定の態様では、包埋は、1つ以上のヒドロゲル包埋アンプリコンを浄化することを含み、標的核酸は、1つ以上のヒドロゲル包埋アンプリコン内に実質的に保持される。かかる実施形態では、浄化は、1つ以上のヒドロゲル包埋アンプリコンから複数の細胞成分を実質的に除去することを含む。いくつかの他の実施形態では、浄化は、1つ以上のヒドロゲル包埋アンプリコンから脂質を実質的に除去することを含む。本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、浄化する前に試料中に存在する元の量が、およそ70%以上、75%以上など、80%以上など、85%以上など、90%以上など、95%以上など、99%以上など、100%など低減していることを意味する。
【0057】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲル包埋アンプリコンの浄化は、標本を電気泳動することを含む。いくつかの実施形態では、アンプリコンは、イオン性界面活性剤を含む緩衝溶液を使用して電気泳動される。いくつかの実施形態では、イオン界面活性剤はドデシル硫酸ナトリウム(SDS)である。いくつかの実施形態では、標本は、約10~約60ボルトの範囲の電圧を使用して電気泳動される。いくつかの実施形態では、標本は、約15分~最大で約10日の範囲の期間にわたって電気泳動される。いくつかの実施形態では、本方法は、浄化された標本を、浄化された組織の屈折率と一致する屈折率を有する封入媒体中でインキュベーションすることをさらに含む。いくつかの実施形態では、封入媒体は、標本の光学的透明度を増加させる。いくつかの実施形態では、封入媒体はグリセロールを含む。
【0058】
動的アニーリングおよびライゲーションによる誤差訂正を伴う配列決定(SEDAL)
本明細書で開示される方法は、ライゲーションを可能にする条件下で、バーコード配列を有する1つ以上のヒドロゲル包埋アンプリコンを一対のプライマーと接触させるステップを含み、プライマーの対は、第3のオリゴヌクレオチドおよび第4のオリゴヌクレオチドを含み、ライゲーションは、第3のオリゴヌクレオチドおよび第4のオリゴヌクレオチドの両方が同じアンプリコンにライゲーションするときにのみ生じる。いくつかの実施形態では、ライゲーションによる配列決定法は、組織形態の保存のために室温で実施され、
低いバックグラウンドノイズおよび誤差低減を有する。いくつかの実施形態では、1つ以上のヒドロゲル包埋アンプリコンの接触は、配列決定が進むにつれて誤差の蓄積を排除することを含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、1つ以上のヒドロゲル包埋アンプリコンの接触は、例えば3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、または7倍以上を含むがこれらに限定されない、2回以上生じる。ある特定の実施形態では、1つ以上のヒドロゲル包埋アンプリコンの接触は、薄い組織標本については4回以上生じる。他の実施形態では、1つ以上のヒドロゲル包埋アンプリコンの接触は、厚い組織標本については6回以上生じる。いくつかの実施形態では、1つ以上のアンプリコンを、24時間以上、24時間以下、18時間以下、12時間以下、8時間以下、6時間以下、4時間以下、2時間以下、60分以下、45分以下、30分以下、25分以下、20分以下、15分以下、10分以下、5分以下、または2分以下で一対のプライマーに接触させ得る。
【0060】
主題の方法を使用して調製された標本は、いくつかの異なる種類の顕微鏡法、例えば、光学顕微鏡法(例えば、明視野、斜め照明、暗視野、位相コントラスト、微分干渉コントラスト、干渉反射、落射蛍光、共焦点顕微鏡法、回転ディスク共焦点顕微鏡法)、光シート顕微鏡法、格子光シート顕微鏡法、または光視野顕微鏡法、レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、および走査型プローブ顕微鏡法のうちのいずれかによって分析され得る。いくつかの態様では、非一時的コンピュータ可読媒体は、まず、複数ラウンドのインサイチュ配列決定の顕微鏡法を介して取得された生画像を、デコードされた遺伝子同一性および空間位置に変換し、次いで、遺伝子発現の細胞当たり組成を分析する。
【0061】
SEDALオリゴヌクレオチドプライマー
いくつかの実施形態では、開示される方法は、第3のオリゴヌクレオチドおよび第4のオリゴヌクレオチドを含む。ある特定の態様では、第3のオリゴヌクレオチドは塩基をデコードするように構成され、第4のオリゴヌクレオチドはデコードされた塩基をシグナルに変換するように構成される。いくつかの態様では、シグナルは、蛍光信号である。例示的な態様では、ライゲーションを可能にする条件下で、バーコード配列を有する1つ以上のヒドロゲル包埋アンプリコンを一対のプライマーと接触させることは、完璧な一致が生じた場合にのみ、画像化のための安定した産物を形成するように第3のオリゴヌクレオチドおよび第4のオリゴヌクレオチドの各々のライゲーションを含む。ある特定の態様では、リガーゼ酵素の不一致感受性を使用して、標的核酸分子の基礎となる配列を決定する。
【0062】
「完全に一致した」という用語は、二本鎖に関して使用される場合、二本鎖を構成するポリヌクレオチド鎖および/またはオリゴヌクレオチド鎖が、各鎖におけるすべてのヌクレオチドが、他方の鎖におけるヌクレオチドとワトソン-クリック塩基対合を受けるように、互いに二本鎖構造を形成することを意味する。「二本鎖」という用語には、これらに限定されないが、デオキシイノシンなどのヌクレオシド類似体、2-アミノプリン塩基を有するヌクレオシド、ペプチド核酸(PNA)などの対合が含まれ、それらが用いられ得る。2つのオリゴヌクレオチド間の二本鎖における「不一致」は、二本鎖における一対のヌクレオチドがワトソン-クリック結合を受けることができないことを意味する。
【0063】
いくつかの実施形態では、本方法は、これらに限定されないが、標的ヌクレオチド配列にハイブリダイゼーションする、5個以上の第3のオリゴヌクレオチド、例えば、8個以上、10個以上、12個以上、15個以上、18個以上、20個以上、25個以上、30個以上、35個以上を含む、複数の第3のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、これらに限定されないが、15個以上、例えば、20個以上、30個以上、40個以上、50個以上、60個以上、70個以上、および最大80個の異なる標的ヌクレオチド配列にハイブリダイゼーションする、15個以上の第3のオリゴヌ
クレオチド、例えば、20個以上、30個以上、40個以上、50個以上、60個以上、70個以上、および最大80個の異なる第1のオリゴヌクレオチドを含む、複数の第3のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、これらに限定されないが、5個以上の第4のオリゴヌクレオチド、例えば、8個以上、10個以上、12個以上、15個以上、18個以上、20個以上、25個以上、30個以上、35個以上を含む、複数の第4のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、これらに限定されないが、15個以上、例えば、20個以上、30個以上、40個以上、50個以上、60個以上、70個以上、および最大80個の異なる標的ヌクレオチド配列にハイブリダイゼーションする、15個以上の第4のオリゴヌクレオチド、例えば、20個以上、30個以上、40個以上、50個以上、60個以上、70個以上、および最大80個の異なる第1のオリゴヌクレオチドを含む、複数の第4のオリゴヌクレオチドを含む。複数のオリゴヌクレオチド対を反応に使用することができ、1つ以上の対が各標的核酸に特異的に結合する。例えば、感受性を改善し、可変性を低減するために、2つのプライマー対を1つの標的核酸に対して使用することができる。また、細胞内の複数の異なる標的核酸を検出すること、例えば、最大2個、最大3個、最大4個、最大5個、最大6個、最大7個、最大8個、最大9個、最大10個、最大12個、最大15個、最大18個、最大20個、最大25個、最大30個、最大40個またはそれ以上の異なる標的核酸を検出することも目的である。
【0064】
ある特定の実施形態では、SEDALは、塩基不一致、第3のオリゴヌクレオチド、および第4のオリゴヌクレオチドによって妨げられる活性を有するリガーゼを含む。この文脈における「妨げられる」という用語は、約20%以上、25%以上など、50%以上など、75%以上など、90%以上など、95%以上など、99%以上など、100%など低減されるリガーゼの活性を指す。いくつかの実施形態では、第3のオリゴヌクレオチドは、5~13ヌクレオチド、5~10ヌクレオチド、または5~8ヌクレオチドを含むがこれらに限定されない、5~15ヌクレオチドの長さを有する。いくつかの実施形態では、第3のオリゴヌクレオチドのTは、室温(22~25℃)である。いくつかの実施形態では、第3のオリゴヌクレオチドは変性しているか、または部分的に変性している。いくつかの実施形態では、第4のオリゴヌクレオチドは、5~13ヌクレオチド、5~10ヌクレオチド、または5~8ヌクレオチドを含むがこれらに限定されない、5~15ヌクレオチドの長さを有する。いくつかの実施形態では、第4のオリゴヌクレオチドのTは、室温(22~25℃)である。塩基読み出しに対応するSEDALの各サイクル後、第4のオリゴヌクレオチドを剥離してもよく、これにより、配列決定が進むにつれて誤差蓄積が排除される。かかる実施形態では、第4のオリゴヌクレオチドは、ホルムアミドによって剥離される。
【0065】
いくつかの実施形態では、SEDALは、非結合オリゴヌクレオチドを排除するための第3のオリゴヌクレオチドおよび第4のオリゴヌクレオチドの洗浄を伴い、その後、画像化のための蛍光産物を明らかにする。ある特定の例示的な実施形態では、検出可能な標識を使用して、1つ以上のヌクレオチドおよび/または本明細書に記載のオリゴヌクレオチドを検出し得る。ある特定の実施形態では、検出可能な標識を使用して、1つ以上のアンプリコンを検出し得る。検出可能なマーカーの例としては、様々な放射性部分、酵素、補綴基、蛍光マーカー、発光マーカー、生物発光マーカー、金属粒子、タンパク質-タンパク質結合対、タンパク質-抗体結合対などが挙げられる。蛍光タンパク質の例としては、黄色蛍光タンパク質(YFP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、シアン色蛍光タンパク質(CFP)、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、フィコエリトリンなどが挙げられるが、これらに限定されない。生物発光マーカーの例としては、ルシフェラーゼ(例えば、細菌、ホタル、コメツキムシなど)、ルシフェリン、エクオリンなどが挙げられるが、これらに限定されない。視覚的に検出可能なシグナルを有する酵素
系の例としては、ガラクトシダーゼ、グルクロニダーゼ、ホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、コリンエステラーゼなどが挙げられるが、これらに限定されない。同定可能なマーカーには、125I、35S、14C、またはHなどの放射性化合物も含まれる。同定可能なマーカーは、様々な供給源から市販されている。
【0066】
蛍光標識およびそれらのヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチドへの結合は、Haugland,Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals,Ninth Edition(Molecular Probes,Inc.、Eugene,2002)、Keller and Manak,DNA Probes,2nd Edition(Stockton
Press,New York,1993)、Eckstein,editor,Oligonucleotides and Analogues:A Practical
Approach(IRL Press,Oxford,1991)およびWetmur,Critical Reviews in Biochemistry and Molecular Biology,26:227-259(1991)を含む多くのレビューに記載されている。本発明に適用可能な特定の方法論は、米国特許第4,757,141号、同第5,151,507号、および同第5,091,519号の参照例において開示される。一態様では、1つ以上の蛍光色素が、例えば、米国特許第5,188,934号(4,7-ジクロロフルオレセイン色素)、米国特許第5,366,860号(スペクトル的に分解可能なローダミン色素)、米国特許第5,847,162号(4,7-ジクロロローダミン色素)、米国特許第4,318,846号(エーテル置換フルオレセイン色素)、米国特許第5,800,996号(エネルギー移動色素)、およびリーら、米国特許第5,066,580号(キサンチン色素)、米国特許第5,688,648号(エネルギー移動色素)などによって開示されるように、標識化標的配列の標識として使用される。標識化は、米国特許第.6,322,901号、同第6,576,291号、同第6,423,551号、同第6,251,303号、同第6,319,426号、同第6,426,513号、同第6,444,143号、同第5,990,479号、同第6,207,392号、同第2002/0045045号および同第2003/0017264号の特許および特許公開において開示されるように、量子ドットを用いて実行することもできる。本明細書で使用される場合、「蛍光標識」という用語は、1つ以上の分子の蛍光吸収および/または発光特性を介して情報を伝達するシグナル伝達部分を含む。このような蛍光特性には、蛍光強度、蛍光寿命、発光スペクトル特徴、エネルギー伝達などが含まれる。
【0067】
ヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチド配列に容易に組み込まれる市販の蛍光ヌクレオチド類似体としては、Cy3-dCTP、Cy3-dUTP、Cy5-dCTP、Cy5-dUTP(Amersham Biosciences、Piscataway,N.J.)、フルオレセイン-12-dUTP、テトラメチルローダミン-6-dUTP、TEXAS RED(商標)-5-dUTP、CASCADE BLUE(商標)-7-dUTP、BODIPY TMFL-14-dUTP、BODIPY TMR-14-dUTP、BODIPY TMTR-14-dUTP、RHODAMINE GREEN(商標)-5-dUTP、OREGON GREENR(商標)488-5-dUTP、TEXAS RED(商標)-12-dUTP、BODIPY(商標)630/650-14-dUTP、BODIPY(商標)650/665-14-dUTP、ALEXA FLUOR(商標)488-5-dUTP、ALEXA FLUOR(商標)532-5-dUTP、ALEXA FLUOR(商標)568-5-dUTP、ALEXA FLUOR(商標)594-5-dUTP、ALEXA FLUOR(商標)546-14-dUTP、フルオレセイン-12-UTP、テトラメチルローダミン-6-UTP、TEXAS RED(商標)-5-UTP、mCherry、CASCADE BLUE(商標)-7-UTP、BODIPY(商標)FL-14-UTP、BODIPY TM
R-14-UTP、BODIPY(商標)TR-14-UTP、RHODAMINE GREEN(商標)-5-UTP、ALEXA FLUOR(商標)488-5-UTP、LEXA FLUOR(商標)546-14-UTP(Molecular Probes、Inc.Eugene,Oreg.)などが含まれるがこれらに限定されない。他のフルオロフォアを有するヌクレオチドをカスタム合成のためのプロトコルが当技術分野で既知である(Henegariu et al.(2000)Nature Biotechnol.18:345を参照されたい)。
【0068】
合成後の結合に利用可能な他のフルオロフォアとしては、ALEXA FLUOR(商標)350、ALEXA FLUOR(商標)532、ALEXA FLUOR(商標)546、ALEXA FLUOR(商標)568、ALEXA FLUOR(商標)594、ALEXA FLUOR(商標)647、BODIPY493/503、BODIPY FL、BODIPY R6G、BODIPY530/550、BODIPY TMR、BODIPY558/568、BODIPY558/568、BODIPY564/570、BODIPY576/589、BODIPY581/591、BODIPY630/650、BODIPY650/665、Cascade Blue、カスケードイエロー、ダンシル、リサミンローダミンB、マリナブルー、Oregon Green488、Oregon Green514、パシックブルー、ローダミン6G、ローダミングリーン、ローダミンレッド、テトラメチルローダミン、テキサスレッド(Molecular Probes,Inc.、Eugene,Oreg.から入手可能)、Cy2、Cy3.5、Cy5.5、Cy7(Amersham Biosciences、Piscataway,N.J.)などが含まれるがこれらに限定されない。FRET直列フルオロフォアも使用することができ、PerCP-Cy5.5、PE-Cy5、PE-Cy5.5、PE-Cy7、PE-テキサスレッド、APC-Cy7、PE-アレクサ色素(610、647、680)、APC-アレクサ色素などが含まれるがこれらに限定されない。
【0069】
金属銀または金粒子を使用して、蛍光標識されたヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチド配列からのシグナルを増強し得る(Lakowicz et al.(2003)Bio Techniques 34:62)。
【0070】
ビオチンまたはその誘導体は、ヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチド配列上の標識として使用され得、その後、検出可能に標識されたアビジン/ストレプトアビジン誘導体(例えば、フィコエリトリンコンジュゲートストレプトアビジン)、または検出可能に標識された抗ビオチン抗体によって結合され得る。ジゴキシゲニンは、標識として組み込まれ得、その後、検出可能に標識された抗ジゴキシゲニン抗体(例えば、フルオレセイン化抗ジゴキシゲニン)によって結合され得る。アミノアリル-dUTP残基は、オリゴヌクレオチド配列に組み込まれ得、続いてN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)誘導体化蛍光色素に結合し得る。概して、検出可能に標識されたコンジュゲートパートナーが検出を可能にするように結合され得ることを条件に、コンジュゲート対の任意のメンバーを検出オリゴヌクレオチドに組み込め得る。本明細書で使用される場合、抗体という用語は、任意の部類の抗体分子、またはFabなどのその任意のサブ断片を指す。
【0071】
オリゴヌクレオチド配列の他の好適な標識は、フルオレセイン(FAM)、ジゴキシゲニン、ジニトロフェノール(DNP)、ダンシル、ビオチン、ブロモデオキシウリジン(BrdU)、ヘキサヒスチジン(6×His)、リン光体アミノ酸(例えば、P-tyr、P-ser、P-thr)などを含み得る。一実施形態では、以下のハプテン/抗体対を検出に使用し、抗体の各々は、検出可能な標識、ビオチン/α-ビオチン、ジゴキシゲニン/α-ジゴキシゲニン、ジニトロフェノール(DNP)/α-DNP、5-カルボキシフルオレセイン(FAM)/α-FAMで誘導体化される。
【0072】
ある特定の例示的な実施形態では、ヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチド配列は、例えば、米国特許第5,344,757号、同第5,702,888号、同第5,354,657号、同第5,198,537号および同第4,849,336号、PCT公開第91/17160号などにおいて開示されるように、特に次いで捕捉剤によって結合されるハプテンで間接的に標識され得る。多くの異なるハプテン捕捉剤対が使用可能である。例示的なハプテンには、ビオチン、デスビオチンおよび他の誘導体、ジニトロフェノール、ダンシル、フルオレセイン、CY5、ジゴキシゲニンなどが挙げられるが、これらに限定されない。ビオチンの場合、捕捉剤は、アビジン、ストレプトアビジン、または抗体であり得る。抗体は、他のハプテンに対する捕捉剤として使用することができる(多くの色素-抗体対は、市販されている、例えば、Molecular Probes、Eugene,Oreg.)。
【0073】
細胞
本明細書で開示される方法は、無傷の組織における細胞における標的核酸のインサイチュ遺伝子配列決定のための方法を含む。ある特定の実施形態では、細胞は、細胞の集団に存在する。ある特定の他の実施形態では、細胞の集団は、興奮性ニューロン、抑制性ニューロン、および非ニューロン細胞を含むがこれらに限定されない、複数の細胞型を含む。本発明のアッセイにおいて使用される細胞は、生物、生物由来の単一細胞型、または細胞型の混合物であり得る。天然に存在する細胞および細胞集団、遺伝子操作された細胞株、トランスジェニック動物に由来する細胞などが含まれる。事実上、あらゆる細胞の型およびサイズに対応し得る。好適な細胞としては、細菌、真菌、植物、および動物の細胞が含まれる。本発明の一実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞、例えば、天然に存在する組織、例えば、血液、肝臓、膵臓、神経組織、骨髄、皮膚などの複雑な細胞集団である。いくつかの組織は、単分散懸濁液中に破壊され得る。代替的に、細胞は、培養された集団、例えば、複雑な集団に由来する培養物、細胞が複数の系統に分化した、または細胞が刺激に差次的に応答している単一細胞型に由来する培養物などであり得る。
【0074】
主題の発明において使用を見出し得る細胞型としては、幹細胞および前駆細胞、例えば、胚性幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、神経堤細胞など、内皮細胞、筋細胞、心筋、平滑筋および骨格筋細胞、間葉系細胞、上皮細胞、Th1T細胞、Th2T細胞、ThOT細胞、細胞傷害性T細胞などのT細胞を含むリンパ球などの造血細胞、B細胞、前B細胞など、単球、樹状細胞、好中球、およびマクロファージ、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞など、脂肪細胞、胸腺、内分泌腺、膵臓、ニューロン、グリア、星状細胞、樹状細胞などの脳などの特定の器官に関与する細胞、ならびにそれらの遺伝子組換え細胞などが含まれる。造血細胞は、炎症性プロセス、自己免疫疾患などに関連している可能性があり、内皮細胞、平滑筋細胞、心筋細胞などが心血管疾患と関連している可能性がある。ほとんどの任意の型の細胞は、肉腫、がんおよびリンパ腫などの腫瘍、肝細胞を伴う肝疾患、腎細胞を伴う腎疾患などと関連している可能性がある。
【0075】
細胞はまた、異なる型の形質転換細胞または腫瘍細胞、例えば、異なる細胞起源のがん腫、異なる細胞型のリンパ腫などであってもよい。American Type Culture Collection(Manassas,VA)は、150を超える異なる種から4,000種以上の細胞株、700のヒトがん細胞株を含む950を超えるがん細胞株を収集し、利用可能にしている。National Cancer Instituteは、ヒト腫瘍細胞株の大規模なパネルから臨床的、生化学的、および分子データをまとめており、これらは、ATCCまたはNCIから入手可能である(Phelps et
al.(1996)Journal of Cellular Biochemistry Supplement 24:32-91)。自発的に由来するか、または個々の細胞株から所望の成長もしくは応答特性のために選択された異なる細胞株が含まれ、類似の腫瘍型に由来するが、異なる患者または部位に由来する複数の細胞株が含まれ得る。
【0076】
細胞は、非接着性であってもよく、例えば、単球、T細胞、B細胞を含む血液細胞、腫瘍細胞など、または接着性細胞、例えば、上皮細胞、内皮細胞、神経細胞などであってもよい。接着細胞をプロファイルするために、プローブ分子を認識し、結合する能力を維持する方法で、それらが接着される基質から、および他の細胞から解離されてもよい。
【0077】
かかる細胞は、例えば、当技術分野で既知の様々な技法によって、様々な組織、例えば、血液、骨髄、固形組織(例えば、固形腫瘍)、腹水から、引き抜き、洗浄(lavage)、洗浄(wash)、外科的解剖などを使用して、個体から取得することができる。細胞は、固定化されたか、または固定化されていない、新鮮または凍結された、全体または分解された試料から得ることができる。組織の分解は、既知の技法を使用して機械的または酵素的のいずれかで生じ得る。
【0078】
画像化
開示される方法は、いくつかの異なる種類の顕微鏡法、例えば、共焦点顕微鏡法、二光子顕微鏡法、光視野顕微鏡法、無傷の組織拡張顕微鏡法、および/またはCLARITY(商標)最適化光シート顕微鏡法(COLM)のうちのいずれかを使用して、1つ以上のヒドロゲル包埋アンプリコンを画像化することを含む。
【0079】
明視野顕微鏡法は、すべての光学顕微鏡技法の中で最も単純である。試料照明は、透過した白色光を介して、すなわち、下から照らされ、上から観察される。制限には、ほとんどの生体試料のコントラストが低く、焦点の外れた材料のぼやけに起因する見かけの解像度が低いことが含まれる。技法の単純さおよび必要最小限の試料調製は、重要な利点である。
【0080】
斜め照明顕微鏡では、標本は側面から照射される。これにより画像に三次元の外観が与えられ、それ以外では見えない特徴を強調することができる。この方法に基づくより最近の技法は、細胞培養に使用される倒立顕微鏡に見られるシステムであるホフマン変調コントラストである。斜め照明は、明視野顕微鏡と同じ制限(多くの生体試料の低いコントラスト、焦点の外れた対象による見かけの解像度の低さ)を受けるが、それ以外の場合は見えない構造を強調することができる。
【0081】
暗視野顕微鏡法は、染色されていない透明な標本のコントラストを改善するための技法である。暗視野照明は、慎重に整列された光源を使用して、画像平面に入る直接透過(非散乱)光の量を最小限に抑え、試料によって散乱された光のみを収集する。暗視野は、機器のセットアップおよび試料の準備をほとんど必要とせずに、画像のコントラスト(特に透明なオブジェクト)を劇的に改善することができる。しかしながら、この技法は、多くの生体試料の最終画像における光強度が低いことに苦しみ、見かけの解像度の低さの影響を受け続けている。
【0082】
位相コントラストは、透明な標本を通過する光の位相シフトを画像の明るさの変化に変換する光学顕微鏡照明技法である。すなわち、位相コントラストは、屈折率の差異をコントラストの差異として示す。位相シフト自体は人間の目には見えないが、明るさが変化するにつれて示されるようになる。
【0083】
微分干渉コントラスト(DIC)顕微鏡では、光学密度の差がレリーフの差として示される。システムは、コンデンサ内の特殊なプリズム(ノマルスキープリズム、ウォラストンプリズム)で構成されており、普通のビームと並外れたビームの光を分割する。2つのビーム間の空間的な差異は最小である(対物レンズの最大解像度未満)。標本を通過した後、ビームは対物レンズ内の同様のプリズムによって再結合される。均質な標本では、2
つのビームの間に差異はなく、コントラストは生成されない。しかしながら、屈折境界(例えば、細胞質内の核)の近くでは、通常のビームと並外れたビームとの間の差は、画像に緩和を生じさせる。微分干渉コントラストは、機能するには偏光源を必要とし、2つの偏光フィルタを光路に取り付ける必要があり、1つはコンデンサの下(偏光子)、もう1つは対物レンズの上(アナライザ)である。
【0084】
干渉を使用する別の顕微鏡技法は、干渉反射顕微鏡法(反射干渉コントラスト、またはRICとしても知られる)である。これは、異なる屈折率を有する2つの物質間の界面がある場合は常に反射される狭い範囲の波長の偏光を使用して、ガラス表面への細胞の接着を調べるために使用される。細胞がガラス表面に結合すると、ガラスからの反射光と結合した細胞からの反射光が干渉する。ガラスに細胞が結合していない場合、干渉はない。
【0085】
蛍光顕微鏡は、反射および吸収の代わりに、またはそれに加えて、蛍光およびリン光を使用して有機物または無機物の特性を研究する光学顕微鏡である。蛍光顕微鏡法では、試料は、試料中の蛍光を励起する波長の光で照射される。通常は照明よりも長い波長にある蛍光光は、次いで顕微鏡対物レンズを介して画像化される。この技法では、2つのフィルタを使用することができる。照明が単色に近く、正しい波長であることを保証する照明(または励起)フィルタ、および励起光源のいずれも検出器に到達しないことを保証する第2の発光(またはバリア)フィルタである。代替的に、これらの機能は両方とも、単一の二色性フィルタによって達成され得る。「蛍光顕微鏡」は、蛍光顕微鏡のようなより単純なセットアップであるか、または蛍光画像のより良い解像度を得るために光学切片を使用する共焦点顕微鏡のようなより複雑な設計であるかにかかわらず、蛍光を使用して画像を生成する任意の顕微鏡を指す。
【0086】
いくつかの実施形態では、抗酸化剤化合物は、蛍光画像化中の光退色を低減するために、洗浄および画像化緩衝液(すなわち、「抗退色緩衝液」)中に含まれる。例示的な抗酸化剤としては、没食子酸プロピル、ターシャリーブチルヒドロキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、グルタチオン、アスコルビン酸、およびトコフェロールが挙げられるがこれらに限定されない。かかる抗酸化剤は、フルオロフォアに対する抗退色効果を有する。すなわち、抗酸化剤は、タイリング中の光退色を低減し、感受性フルオロフォアのSNRを大幅に増強し、より厚い試料のより高いSNR画像化を可能にする。抗酸化剤を含む固定された曝露時間の場合は、光への曝露中に退色されていない蛍光体の濃度を増加させることにより、SNRを増加させる。抗酸化剤を含むことにより、より長い露光時間(光退色前に限られた蛍光寿命によって引き起こされる)のリターンの減少も除去され、露光時間の増加を可能にすることによってSNRの増加が提供される。
【0087】
加えて、プローブからのフルオロフォア切断(プローブ剥離とは対照的に)は、ラウンドからラウンドへのシグナルを排除するためにCISITS方法で使用される。フルオロフォアとオリゴヌクレオチドプローブとの間にジスルフィド結合を含むことにより、還元環境下でのオリゴヌクレオチドプローブからのフルオロフォアの切断が可能になる。配列決定ラウンドの蛍光画像化後、還元剤を添加して、フルオロフォアをオリゴヌクレオチドに接続するジスルフィド結合を還元し、後続の洗浄ステップにより、別のラウンドを実施する前に拡散性蛍光シグナルが除去される。CISITSにおけるチオールベースの化学切断を伴うSEDAL配列決定を使用することにより、SEDAL配列決定の特異性およびSNRの利点と、蛍光体切断からのラウンドからラウンドへのサイクルの堅牢性および迅速性とを組み合わせる。
【0088】
共焦点顕微鏡は、点照明および検出器の前方の光学的に共役な面のピンホールを使用して、焦点が外れた信号を排除する。焦点面に非常に近い蛍光によって産生された光しか検
出できないため、画像の光学分解能、特に試料深度方向では、広視野顕微鏡のものよりもはるかに優れている。しかしながら、試料蛍光からの光の多くがピンホールで遮断されるため、この増加した解像度は信号強度の低下を犠牲にし、そのため多くの場合長時間の露光が必要とされる。一度に照射されるのは試料における1つの点のみであるため、2D画像化または3D画像化は、標本における規則的なラスター(すなわち、平行走査線の矩形パターン)に対して走査する必要がある。焦点面の達成可能な厚さは、主に使用される光の波長を対物レンズの数値開口部で割ったものによって定義されるが、標本の光学特性によっても定義される。薄い光学切片化により、これらの型の顕微鏡は、試料の3D画像化および表面プロファイリングに特に優れている可能性がある。COLMは、大規模な明瞭化試料の高速3D画像化のための代替顕微鏡を提供する。COLMは、免疫アッセイされた大きな組織を調べ、収集速度の増加を可能にし、生成されたデータのより高い品質をもたらす。
【0089】
光シート顕微鏡法としても知られる単一平面照明顕微鏡法(SPIM)では、検出対物レンズの焦点面におけるフルオロフォアのみが照射される。ライトシートは、一方向に平行化され、他方向に収束されたビームである。検出器の焦点面の外側でフルオロフォアが励起されないため、方法はまた、固有の光学切片も提供する。さらに、従来の顕微鏡法と比較すると、光シート法は、光退色の低減および光毒性の低下を示し、多くの場合標本ごとにはるかに多くの走査を可能にする。標本を回転させることによって、技法は、異なる角度から得られた複数の図を有する仮想的に任意の平面を画像化することができる。しかしながら、すべての角度について、標本の比較的浅い切片のみが高解像度で画像化され、一方で深い領域はますますぼやけて見える。
【0090】
超解像度顕微鏡法は、光学顕微鏡法の一形態である。光の回折により、従来の光顕微鏡法の分解能は、1873年にErnst Abbeによって述べられたように、制限されている。達成可能な解像度の良好な近似は、点拡散関数のFWHM(半値全幅)であり、高い開口部および可視光を備えた精密な広視野顕微鏡は、通常、約250nmの解像度に達する。超解像度技法により、回折限界よりも高い解像度で画像を捕捉することができる。これらは、エバネッセント波に含まれる情報を捕捉する「真の」超解像度技法、ならびに超解像画像を再構成するために実験的な技法および画像化される物質の既知の制限を使用する「機能的な」超解像技法の2つに大きなカテゴリに分けられる。
【0091】
レーザー顕微鏡は、様々な形態の顕微鏡においてレーザー照明源を使用する。例えば、生物学的用途に焦点を当てたレーザー顕微鏡法は、非線形顕微鏡法、飽和顕微鏡法、および2光子励起顕微鏡法(生体組織の画像化を非常に高い深度、例えば1ミリメートルまで可能にする蛍光画像化法)などの多光子蛍光顕微鏡法を含むいくつかの技法において、超短パルスレーザー、またはフェムト秒レーザーを使用する。
【0092】
電子顕微鏡(EM)では、電子のビームを使用して標本を照射し、拡大画像を産生する。電子顕微鏡は、可視光(光子)よりも約100,000倍短い波長を有するため、光電力光学顕微鏡よりも高い分解能を有する。それらは、50pmより優れた解像度、および、最大約10,000,000倍の倍率を達成することができるが、一方、通常の非焦点光顕微鏡は、回折によって、約200nmの解像度および2000倍未満の有用な倍率に制限される。電子顕微鏡は静電および電磁「レンズ」を使用して電子ビームを制御し、それに焦点を合わせて画像を形成する。これらのレンズは、標本上または標本を介して光を集束することによって拡大画像を形成する光学顕微鏡のガラスレンズと類似するが、異なる。電子顕微鏡は、微生物、細胞、大きな分子、生検試料、金属、および結晶を含む幅広い生物学的および無機標本を観察するために使用される。工業的には、電子顕微鏡は、多くの場合、品質管理および故障解析に使用される。電子顕微鏡法の例としては、透過型電子顕微鏡法(TEM)、走査型電子顕微鏡法(SEM)、反射型電子顕微鏡法(REM)
、走査型透過型電子顕微鏡法(STEM)および低電圧電子顕微鏡法(LVEM)が挙げられる。
【0093】
走査型プローブ顕微鏡(SPM)は、標本を走査する物理プローブを使用して表面の画像を形成する顕微鏡の一分岐である。表面の画像は、標本のラスター走査でプローブを一線ずつ機械的に動かし、位置の関数としてプローブと表面との相互作用を記録することによって得られる。SPMの例としては、原子間力顕微鏡(ATM)、弾道電子放出顕微鏡(BEEM)、化学力顕微鏡(CFM)、導電性原子間力顕微鏡(C-AFM)、電気化学走査型トンネル顕微鏡(ECSTM)、静電力顕微鏡(EFM)、流体力顕微鏡(FluidFM)、力変調顕微鏡(FMM)、機能指向走査型プローブ顕微鏡(FOSPM)、ケルビンプローブ力顕微鏡(KPFM)、磁力顕微鏡(MFM)、磁気共鳴力顕微鏡(MRFM)、近接場走査型光学顕微鏡(NSOM)(またはSNOM、走査型近接場光学顕微鏡、SNOM、ピエゾ応答力顕微鏡(PFM)、PSTM、光子走査型トンネル顕微鏡(PSTM)、PTMS、光熱顕微鏡分光法/顕微鏡(PTMS)、SCM、走査型容量顕微鏡(SCM)、SECM、走査型電気化学顕微鏡(SECM)、SGM、走査型ゲート顕微鏡(SGM)、SHPM、走査型ホールプローブ顕微鏡(SHPM)、SICM、走査型イオンコンダクタンス顕微鏡(SICM)、SPSMスピン分極走査型トンネル顕微鏡(SPSM)、SSRM、走査型拡散抵抗顕微鏡(SSRM)、SThM、走査型熱顕微鏡(SThM)、STM、走査型トンネル顕微鏡(STM)、STP、走査型トンネル電位差測定法(STP)、SVM、走査型電圧顕微鏡(SVM)、およびシンクロトロンX線走査型トンネル顕微鏡(SXSTM)が挙げられる。
【0094】
無傷の組織拡張顕微鏡(exM)は、約70nmの横方向解像度で厚い保存標本の画像化を可能にする。ExMを使用すると、光学回折限界は、画像化前に生体標本を物理的に拡張することによって回避され、従来の回折限界の顕微鏡によって視認可能なサイズ範囲にサブ回折限界構造をもたらす。ExMは、回折限界の顕微鏡のボクセル率で生体標本を画像化することができるが、超解像度顕微鏡のボクセルサイズで画像化することができる。拡張された試料は透明であり、拡張された材料は>99%水であるため、水と指数が一致する。拡張顕微鏡法の技法は、例えば、Gao et al.,Q&A:Expansion Microscopy,BMC Biol.2017;15:50において開示されているように当技術分野で既知である。
【0095】
スクリーニング方法
本明細書で開示される方法はまた、候補薬剤をスクリーニングして、候補薬剤が無傷の組織における細胞における核酸の遺伝子発現を調節するか否かを決定する方法も提供し、本方法は、(a)特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件下で、固定化および透過化された無傷の組織試料を少なくとも一対のオリゴヌクレオチドプライマーと接触させることであって、一対のプライマーが、第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドを含み、第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドの各々が、第1の相補性領域、第2の相補性領域、および第3の相補性領域を含み、第2のオリゴヌクレオチドが、バーコード配列をさらに含み、第1のオリゴヌクレオチドの第1の相補性領域が、標的核酸の第1の部分に相補的であり、第1のオリゴヌクレオチドの第2の相補性領域が、第2のオリゴヌクレオチドの第1の相補性領域に相補的であり、第1のオリゴヌクレオチドの第3の相補性領域が、第2のオリゴヌクレオチドの第3の相補性領域に相補的であり、第2のオリゴヌクレオチドの第2の相補性領域が、標的核酸の第2の部分に相補的であり、第1のオリゴヌクレオチドの第1の相補性領域が、第2のオリゴヌクレオチドの第2の相補性領域に隣接している、接触させることと、(b)リガーゼを添加して、第2のオリゴヌクレオチドをライゲーションし、閉鎖核酸環を生成することと、(c)核酸分子の存在下でローリングサークル増幅を実施することであって、第2のオリゴヌクレオチドを鋳型として、第1のオリゴヌクレオチドをポリメラーゼのプライマーとして
使用して、1つ以上のアンプリコンを形成することを含む、実施することと、(d)ヒドロゲルサブユニットの存在下で1つ以上のアンプリコンを包埋して、1つ以上のヒドロゲル包埋アンプリコンを形成することと、(e)ライゲーションを可能にする条件下で、バーコード配列を有する1つ以上のヒドロゲル包埋アンプリコンを一対のプライマーと接触させることであって、一対のプライマーが、第3のオリゴヌクレオチドおよび第4のオリゴヌクレオチドを含み、ライゲーションが、第3のオリゴヌクレオチドおよび第4のオリゴヌクレオチドの両方が、同じアンプリコンにライゲーションする場合にのみ生じる、接触させることと、(f)ステップ(e)を繰り返すことと、(g)1つ以上のヒドロゲル包埋アンプリコンを画像化して、無傷の組織における細胞における標的核酸のインサイチュ遺伝子配列決定を決定することと、(h)標的核酸の遺伝子発現レベルを検出することであって、少なくとも1つの候補薬剤の非存在下における標的核酸の発現レベルに対して、少なくとも1つの候補薬剤の存在下における標的核酸の発現レベルの変化が、少なくとも1つの候補薬剤が、無傷の組織における細胞における核酸の遺伝子発現を調節することを示す、検出することとを含む。かかるスクリーニング方法は、本明細書で提供されるCISITSのステップを含む。
【0096】
いくつかの態様では、検出は、フローサイトメトリー、配列決定、プローブ結合および電気化学的検出、pH変化、DNAタグに結合した酵素によって誘導される触媒作用、量子もつれ、ラマン分光法、テラヘルツ波技術、ならびに/または走査型電子顕微鏡法を実施することを含む。ある特定の態様では、フローサイトメトリーは、質量サイトメトリーまたは蛍光活性化フローサイトメトリーである。いくつかの他の態様では、検出は、顕微鏡法、走査型質量分析、または本明細書に記載の他の画像化技法を実施することを含む。かかる態様では、検出は、シグナル、例えば、蛍光シグナルを決定することを含む。
【0097】
本明細書において互換的に使用される、本明細書における「試験薬剤」、「候補薬剤」、および文法的等価物は、主題のアッセイにおける活性について試験される任意の分子(例えば、タンパク質(本明細書においてタンパク質、ポリペプチド、およびペプチドを含む)、低分子(すなわち、サイズが5~1000Da、100~750Da、200~500Da、または500Da未満)、または有機もしくは無機分子、多糖、ポリヌクレオチドなど)を意味する。
【0098】
様々な異なる候補薬剤を上記方法によってスクリーニングし得る。候補薬剤は、多数の化学部類、例えば、50ダルトンを超える(例えば、少なくとも約50Da、少なくとも約100Da、少なくとも約150Da、少なくとも約200Da、少なくとも約250Da、または少なくとも約500Da)、および約20,000ダルトン未満、約10,000ダルトン未満、約5,000ダルトン未満、または約2,500ダルトン未満の分子量を有する小さな有機化合物を包含する。例えば、いくつかの実施形態では、好適な候補薬剤は、約500Da~約20,000Da、例えば、約500Da~約1000Da、約1000Da~約2000Da、約2000Da~約2500Da、約2500Da~約5000Da、約5000Da~約10,000Da、または約10,000Da~約20,000Daの範囲の分子量を有する有機化合物である。
【0099】
候補薬剤は、タンパク質との構造的相互作用、例えば水素結合に必要な官能基を含み得、少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシル、もしくはカルボキシル基、または官能性化学基のうちの少なくとも2つを含み得る。候補薬剤は、上記官能基のうちの1つ以上で置換された環状炭素もしくは複素環式構造、および/または芳香族もしくは多芳香族構造を含み得る。候補薬剤はまた、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造類似体、またはそれらの組み合わせを含む生体分子中に見出される。
【0100】
候補薬剤は、合成化合物または天然化合物のライブラリを含む多種多様な供給源から得
られる。例えば、無作為化オリゴヌクレオチドおよびオリゴペプチドの発現を含む、多種多様な有機化合物および生体分子の無作為で指向性の合成のために、多数の手段が利用可能である。代替的に、細菌、真菌、植物および動物抽出物の形態の天然化合物のライブラリが利用可能であるか、または容易に生成される。追加的に、天然または合成で生成されたライブラリおよび化合物は、従来の化学的、物理的および生化学的手段を通じて容易に修飾され、組み合わせライブラリを生成するために使用され得る。既知の薬理学的薬剤は、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などの直接的またはランダムな化学修飾を受けて、構造的類似体を生成し得る。さらに、スクリーニングは、既知の薬理学的活性化合物およびその化学的類似体、または合理的な薬物設計を介して作製されるものなどの未知の特性を有する新規の薬剤を対象とし得る。
【0101】
一実施形態では、候補調節物質は合成化合物である。無作為化オリゴヌクレオチドおよびオリゴペプチドの発現を含む、多種多様な有機化合物および生体分子の無作為で指向性の合成のために、任意の数の手段が利用可能である。例えば、参照により本明細書に明示的に組み込まれ、ランダム化学法および酵素法を含む新規化合物の生成方法を論じるWO94/24314を参照されたい。
【0102】
別の実施形態では、候補薬剤は、利用可能であるかまたは容易に産生される細菌、真菌、植物および動物の抽出物の形態の天然化合物のライブラリとして提供される。追加的に、天然または合成で生成されたライブラリおよび化合物は、従来の化学的、物理的および生化学的手段を通じて容易に修正され得る。既知の薬理学的薬剤は、構造類似体を産生するために、酵素的修飾を含む、方向付けられた、または無作為化された化学修飾に供され得る。
【0103】
一実施形態では、候補薬剤は、タンパク質(抗体、抗体断片(すなわち、抗原結合領域を含有する断片、一本鎖抗体など)、核酸、および化学部分を含む。一実施形態では、候補薬剤は、天然に存在するタンパク質または天然に存在するタンパク質の断片である。したがって、例えば、タンパク質を含有する細胞抽出物、またはタンパク質性細胞抽出物の無作為化または指向性の消化物を試験してもよい。このようにして、原核生物のタンパク質および真核生物のタンパク質のライブラリをスクリーニングのために作製してもよい。他の実施形態は、細菌、真菌、ウイルス、および哺乳動物のタンパク質(例えば、ヒトタンパク質)のライブラリを含む。
【0104】
一実施形態では、候補薬剤は有機部分である。この実施形態では、概して、WO94/24314に記載されているように、候補薬剤は、化学修飾され得る一連の基質から合成される。本明細書における「化学修飾」は、従来の化学反応および酵素反応を含む。これらの基質には、概して、アルキル基(アルカン、アルケン、アルキン、およびヘテロアルキルを含む)、アリール基(アレーン、およびヘテロアリールを含む)、アルコール、エーテル、アミン、アルデヒド、ケトン、酸、エステル、アミド、環状化合物、複素環式化合物(プリン、ピリミジン、ベンゾジアゼピン、ベータラクタム、テトラシリン、セファロスポリン、および炭水化物を含む)、ステロイド(エストロゲン、アンドロゲン、コルチゾン、エコダイソンなどを含む)、アルカロイド(エルゴット、ビンカ、キュラレ、ピロリズジン、およびマイトマイシンを含む)、有機金属化合物、ヘテロ原子担持化合物、アミノ酸、ならびにヌクレオシドが含まれるが、これらに限定されない。化学(酵素を含む)反応は、新たな基質または候補薬剤を形成するために部分上で行われ得、次いで、本発明を使用して試験され得る。
【0105】
デバイスおよびシステム
CISITS方法の態様を実施するためのデバイスも含まれる。主題のデバイスは、例えば、試料チャンバ、画像化チャンバ、電気泳動装置、フローチャンバ、顕微鏡、針、チ
ューブ、およびポンプを含み得る。
【0106】
本開示はまた、主題の方法を実施するためのシステムを提供する。システムは、本明細書に記載のモジュールのうちの1つ以上、例えば、電源、冷凍ユニット、廃棄物、加熱ユニット、ポンプなどを含み得る。システムはまた、本明細書に記載の試薬、例えば、画像化緩衝液、洗浄緩衝液、剥離緩衝液、NisslおよびDAPI溶液のうちのいずれかを含み得る。特定の実施形態によるシステムはまた、顕微鏡および/または関連する画像化装置、例えば、カメラ構成要素、デジタル画像化構成要素および/または画像捕捉装置、1つ以上のユーザ入力に従って画像を収集するように構成されたコンピュータプロセッサなども含み得る。
【0107】
本明細書に記載のCISITS方法を実施するための例示的な流体システムを図7に示す。本明細書に記載のシステムは、インターフェースチューブを有する蓋を備える非加圧試料チャンバを有する流体デバイスを含み、インターフェースチューブの第1の端部は、蓋によって保持され、インターフェースチューブの第2の端部は、試料チャンバ中の組織試料の上に位置決めされる。いくつかの実施形態では、試料チャンバは、マルチウェルプレート(例えば、6、12、または24ウェルプレート)またはスライドチャンバのウェルである。インターフェースチューブは、好ましくは、液体が試料チャンバ中に残っている限り、試料チャンバ内の液体がインターフェースチューブの底部と接触したままであるように、試料チャンバの底部縁部に十分に近接して位置決めされる。試料インターフェースチューブの底部と試料チャンバとの間に十分なスペースを残し、試料に添加された液体はインターフェースチューブを加圧せずに、代わりに試料を広げて浸す必要がある。いくつかの実施形態では、インターフェースチューブが、組織試料平面に対して極角で配置される。流体ラインは、流体が流体ラインを通ってインターフェースチューブに流れ込み、インターフェースチューブの第2の端部から試料チャンバ中の組織試料上に流れ出るように、インターフェースチューブの第1の端部に接続される。試料チャンバを極低温に維持するために、流体システムにクリオスタットが含まれ得る。流体システムはまた、本明細書に記載のCISITSの方法を実施するように構成された画像化システム、ポンプ、およびプロセッサユニットを含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、本システムは、本明細書に記載のプロセスである、CISITSの自動化を可能にし、これはゲルに包埋されたDNAとのプローブのハイブリダイゼーションの反復ラウンド、蛍光標識オリゴヌクレオチドのこれらのプローブ上へのライゲーション、過剰なプローブの洗い流し、画像化、および次のラウンドの配列決定を行う前のプローブからのフルオロフォアの切断を含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、本システムは、継続的な作動を可能にし得る。いくつかの実施形態では、本システムは、試料に対するインサイチュDNA配列決定に関与する配列決定化学物質を流すための画像化チャンバを含む。いくつかの実施形態では、流体およびポンプのシステムは、試料への配列決定化学物質の送達を制御する。
【0109】
緩衝液は、1つ以上のポート、および任意選択で、チューブ、ポンプ、バルブ、または任意の他の好適な流体処理および/または流体操作装置、例えば、デバイスの1つ以上の構成要素に取り外し可能に取り付けられているか、または永久に取り付けられているチューブの使用によって添加/除去/再循環/交換され得る。例えば、第1および第2の端部を有する第1のチューブは、第1のポートに取り付けられ得、第1および第2の端部を有する第2のチューブは、第2のポートに取り付けられ得、第1のチューブの第1の端部は、第1のポートに取り付けられ、第1のチューブの第2の端部は、容器、例えば、冷却ユニット、加熱ユニット、濾過ユニット、廃棄物容器などに作動可能に連結され、第2のチューブの第1の端部は、第2のポートに取り付けられ、第2のチューブの第2の端部は、容器、例えば、冷却ユニット、氷上ビーカー、濾過ユニット、廃棄物容器などに作動可能
に連結される。
【0110】
いくつかの実施形態では、多方向セレクタバルブは、ポンプとインターフェース接続される。多方向セレクタバルブを使用して、現在開いている流体ラインを切り替えて、様々な作動モードを可能にする。ポンプを使用して、ある容量の流体を引き込んだり押し出したりすることができる。例えば、シリンジポンプを使用して、一連のセレクタバルブを介して所望の量の試薬をポンプに引き込むことができる。いくつかの実施形態では、複数ポートセレクタバルブは、ポンプが選択された試薬または緩衝液をシステムに引き込むことを可能にするように、試薬または緩衝液のトレイに結合される。流体システムは、試薬トレイを支持する調節可能なステージ、および多方向セレクタバルブに流体的に接続されている試薬トレイからの所望の試薬の選択を可能にするために調節可能なステージの位置決めを可能にする位置センサをさらに備え得る。試薬の所望の温度を維持するために、冷却器を流体システムに含んでもよい。ポンプはまた、インターフェースチューブを介して試料ウェルから試薬を引き出すために使用され得る。加えて、ポンプは、インターフェースチューブを介して、例えば、試料ウェルに、または廃棄物容器に、体積を押し出すために使用され得る。代替的に、ポンプは、(浄化目的で使用され得る)試薬バンクに逆に体積を押し戻し得る。
【0111】
CISITS方法を実施する際、特にSEDAL配列決定、ローリングサークル増幅、およびライゲーションのために、新鮮な試薬を使用することが好ましい。いくつかの実施形態では、CISITS方法を実施するための試薬を含む使い捨て試薬トレイを流体システムにおいて使用して、ユーザにとって好都合な新鮮な試薬の使用を可能にする。
【0112】
いくつかの実施形態では、システムは、組織試料を凍結切片化し、試料チャンバ内の表面上に組織切片を平坦に配置するための手段をさらに含む。例えば、試料チャンバ(例えば、マルチウェルプレートまたはスライドチャンバのウェル)は、薄壁金属リングとともに、クリオスタット内で低温に保つことができる。切片が収集された後、金属リングは、リングの縁部が切片を囲む凍結切断媒体と均等に接触するように切片上に押し下げられる。リングおよび平坦な切片を試料チャンバに移され得る。金属リングは、試料チャンバ内の表面上に切片を平坦に配置することを容易にし、指からの暖かさを使用して、切片をリングから分離し、それを試料チャンバ表面に接着させることができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、本システムは、周囲光を遮断する容器に取り囲まれている。容器は、システムの様々な内部構成要素にアクセスするためのいくつかのドアおよび引き出しを含むことができる。例えば、システムは、試料をシステムに入れたり、それを除去するための引き出し、および試薬をシステムに入れたり、それを除去するための引き出しを含んでもよい。囲いの他の構成要素は、サービス専門職がシステムの内部部品を変更、アップグレード、または修理するためのアクセスを提供し得る。囲いはまた、音響減衰であり得る。
【0114】
いくつかの実施形態では、システムは、プロセッサユニットによって実行される場合、プロセッサユニットに化学物質の送達を制御させ、このプロセスを顕微鏡と同期させる命令を有する非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含む。いくつかの実施形態では、非一時的コンピュータ可読記憶媒体は、プロセッサユニットによって実行される場合、プロセッサユニットに光信号を測定させる命令を含む。
【0115】
有用性
本明細書におけるデバイス、方法、およびシステムは、生物医学研究および/または臨床診断などの当技術分野におけるいくつかの使用を見出す。例えば、生物医学的研究において、用途には、基本的な生物学または薬物スクリーニングのための空間的に分解された
遺伝子発現分析が含まれるが、これらに限定されない。臨床診断において、用途には、患者試料の疾患、免疫応答、細菌またはウイルスDNA/RNAなどの遺伝子マーカーの検出が含まれるが、これらに限定されない。本明細書に記載の方法の利点の例としては、効率性が挙げられ、生試料から最終データを取得するためにわずか3日または4日かかり、既存のマイクロアレイまたは配列決定技術よりもはるかに速い速度を提供し、高度に多重化され(最大1000個の遺伝子)、単一細胞および単一分子の感度、保存された組織形態、ならびに/または低誤差率での高い信号対ノイズ比が挙げられる。
【0116】
ある特定の態様では、CISITSは、マウスの視覚野における分子定義された細胞型および活性調節された遺伝子発現の研究に適用され得、より大きな3D組織ブロックに拡張可能であり、以前にアクセス可能でなかった体積尺度での皮質ニューロンの短距離および長距離空間編成を可視化し得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示される方法は、高度に多重化されたタンパク質検出のためのDNAコンジュゲート抗体を画像化するように適合され得る。
【0117】
本発明のデバイス、方法、およびシステムは、多様な組織におけるいくつかの不均一な細胞集団を研究するように一般化され得る。いかなる科学的理論にも拘束されることなく、脳はCISITS分析に非常に適した特別な課題を提起する。例えば、異なる細胞型にわたって観察される多型活性調節遺伝子(ARG)発現は、固有の細胞生物学的特性(例えば、シグナル伝達経路成分発現)、および外部の感覚情報を異なる細胞に送る神経回路解剖学などの外部特性(ここでは、視覚野)の両方に依存する可能性が高い。そのような場合、CISITSによって例示されるインサイチュトランスクリプトミクスは、画像化ベースの分子情報を解剖学的および活性情報と効果的に連結し、したがって脳機能および機能障害を解明することができる。
【0118】
本明細書で開示されるデバイス、方法、およびシステムは、試料が組織の超構造を物理的に支持するヒドロゲルに架橋されるため、細胞および組織の三次元アーキテクチャを維持しながら、通常は構造的支持を提供するが、細胞内タンパク質および分子の視覚化を妨げる細胞成分、例えば、脂質を除去することを可能にする。この除去は、生体標本の内部を光および/または巨大分子に対して実質的に透過性にし、標本、例えば細胞および亜細胞構造の内部を、組織の時間がかかり、破壊的切片化をすることなく顕微鏡的に可視化することを可能にする。典型的には、別個のステップで実施される浄化および透過化が、細胞成分を除去する単一のステップで組み合わせることができるため、この手順はまた、当技術分野で一般的に使用される手順よりも迅速である。追加的に、標本は、包括的な分析のために、繰り返し染色され、染色されず、および他の試薬で再染色され得る。重合性アクリルアミド部位でのさらなる官能化により、アンプリコンが複数の部位でポリアクリルアミドネットワーク内に共有結合的に固定されることが可能になる。
【0119】
一例において、主題のデバイス、方法、およびシステムは、疾患を評価、診断、または監視するために用いられ得る。本明細書で使用される場合、「診断」は、概して、疾患または障害に対する対象の感受性の予測、対象が現在疾患または障害に影響を受けているか否かの決定、疾患または障害に影響を受けている対象の予測(例えば、がん状態、がんの病期、患者ががんによって死亡する可能性の同定)、疾患または障害の治療に対する対象の応答性の予測(例えば、陽性応答、陰性応答、例えば、同種造血幹細胞移植、化学療法、放射線療法、抗体療法、小分子化合物療法に対してまったく応答がない)、および治療法の使用(例えば、対象の状態を監視して、療法の効果または有効性に関する情報を提供する)を含む。例えば、生検は、がん組織から調製され、顕微鏡分析されて、がんの型、がんが発生した程度、がんが治療介入に応答するか否かなどを決定し得る。
【0120】
主題のデバイス、方法、およびシステムはまた、組織または疾患に対するそれらの効果
について候補の治療薬をスクリーニングするための有用な技法を提供する。例えば、対象、例えば、マウス、ラット、イヌ、霊長類、ヒトなどは、候補薬剤と接触され得、その器官または生検を主題の方法によって調製し得、調製された標本を1つ以上の細胞または組織パラメータについて顕微鏡で分析し得る。パラメータは、細胞または組織の定量化可能な構成要素であり、特に、望ましくはハイスループットなシステムで正確に測定することができる構成要素である。パラメータは、細胞表面決定基、受容体、タンパク質またはその立体構造もしくは翻訳後修飾、脂質、炭水化物、有機分子または無機分子、核酸、例えばmRNA、DNA等、またはそのような細胞成分に由来する部分あるいはそれらの組み合わせを含む任意の細胞成分または細胞産物であり得る。ほとんどのパラメータは定量的読み出しを提供するが、場合によっては、半定量的または定性的結果が許容される。読み出しは、単一の決定値を含んでもよく、または平均、中央値もしくは分散などを含んでもよい。特徴的に、パラメータの読み出し値の範囲は、同じアッセイの多重性から各パラメータについて取得される。変動性が予期され、試験パラメータの各セットの値の範囲は、単一の値を提供するために使用される一般的な統計学的方法を用いた標準統計学的方法を使用して取得される。したがって、例えば、1つのかかる方法は、細胞生存率、組織血管形成、免疫細胞浸潤の存在、疾患の進行を変化させる効果などを検出することを含み得る。いくつかの実施形態では、スクリーンは、分析されたパラメータを、対照、または参照試料、例えば、候補薬剤と接触していない対象から同様に調製された試料由来のものと比較することを含む。スクリーニングのための目的の候補薬剤には、有機金属分子、無機分子、遺伝子配列などを含み得る、多数の化学分類、主に有機分子を包含する既知および未知の化合物が含まれる。スクリーニングのための目的の候補薬剤には、核酸、例えば、siRNA、shRNA、アンチセンス分子、もしくはmiRNAをコードする核酸、またはポリペプチドをコードする核酸も含まれる。本発明の重要な態様は、毒性試験などを含む候補薬物を評価することである。主題の方法を使用した組織試料の評価は、例えば、遺伝的、転写産物的、ゲノム、プロテオミクス、および/またはメタボロミクスの分析を含み得る。
【0121】
主題のデバイス、方法、およびシステムはまた、亜細胞分解能で全組織における遺伝子コードされたマーカー、例えば、染色体異常(反転、重複、転座など)、遺伝的ヘテロ接合性の喪失、疾患または良好な健康に対する素因を示す遺伝子対立遺伝子の存在、療法への応答性の可能性、祖先などの分布を可視化するために使用され得る。かかる検出は、例えば、上記のような疾患の診断および監視、個別化された医学、および父性の研究において使用することができる。
【0122】
分析情報のデータベースが蓄積され得る。これらのデータベースは、既知の細胞型から得られた結果、特定の条件下で処理された細胞の分析からの参照などを含み得る。データマトリックスが生成されてよく、データマトリックスの各点は細胞からの読み出しに対応し、各細胞についてのデータは複数のラベルからの読み出しを含んでよい。読み出しは、平均値、中央値、もしくは分散値、または測定値に関連付けられた他の統計的もしくは数学的に導出された値であり得る。出力読み出し情報は、対応する参照読み出しと直接比較することによって、さらに精査され得る。同一の条件下で各出力について得られた絶対値は、生体系に固有の可変性を示し、個々の細胞の可変性および個体間に固有の可変性も反映する。
【0123】
本開示の非限定的な態様の例
上述の本主題の態様(実施形態を含む)は、単独で、または1つ以上の他の態様または実施形態と組み合わせて有益であり得る。先の説明を限定することなく、番号1~47の本開示の特定の非限定的な態様を以下に提供する。本開示を読むと当業者には明らかであるように、個々に番号付けされた態様の各々は、前述の態様のいずれかまたは個々に番号付けされた態様に続く態様のいずれかと使用または組み合わせられ得る。これは、態様の
すべてのかかる組み合わせのサポートを提供することを意図しており、以下に明示的に提供される態様の組み合わせに限定されない。
【0124】
1.無傷の組織における細胞における標的核酸のインサイチュ遺伝子配列決定のための方法であって、方法が、
(a)特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件下で、固定化および透過化された無傷の組織試料を少なくとも一対のオリゴヌクレオチドと接触させることであって、
一対のオリゴヌクレオチドが、第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドを含み、
第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドの各々が、第1の相補性領域、第2の相補性領域、および第3の相補性領域を含み、第2のオリゴヌクレオチドが、バーコード配列をさらに含み、
第1のオリゴヌクレオチドの第1の相補性領域が、標的核酸の第1の部分に相補的であり、第1のオリゴヌクレオチドの第2の相補性領域が、第2のオリゴヌクレオチドの第1の相補性領域に相補的であり、第1のオリゴヌクレオチドの第3の相補性領域が、第2のオリゴヌクレオチドの第3の相補性領域に相補的であり、第2のオリゴヌクレオチドの第2の相補性領域が、標的核酸の第2の部分に相補的であり、第1のオリゴヌクレオチドの第1の相補性領域が、第2のオリゴヌクレオチドの第2の相補性領域に隣接している、接触させることと、
(b)リガーゼを添加して、第2のオリゴヌクレオチドの5’および3’末端をライゲーションし、閉鎖核酸環を生成することと、
(c)ローリングサークル増幅を実施する前に、組織試料全体へのDNAポリメラーゼの均一な拡散を可能にするために十分な時間、組織試料をDNAポリメラーゼとともにプレインキュベーションすることと、
(d)1つ以上のアンプリコンが生成されるように、組織試料をデオキシリボヌクレオチド三リン酸と接触させることによってローリングサークル増幅を実施することであって、ライゲーションされた第2のオリゴヌクレオチドが鋳型として機能し、第1のオリゴヌクレオチドがDNAポリメラーゼのプライマーとして機能する、実施することと、
(e)ステップ(a)~(d)のうちのいずれか1つの前または後に、組織試料をヒドロゲル中に包埋することと、
(f)1つ以上のアンプリコンをヒドロゲルに架橋することと、
(g)ヒドロゲルの透明性を増強するためにヒドロゲルを浄化することと、
(h)バーコード配列を有する1つ以上のヒドロゲル包埋アンプリコンを、リードプライマーおよび蛍光標識プローブと接触させることであって、プローブが、第1のチオール基と第2のチオール基との間のジスルフィド結合によって第2のチオール基を含むフルオロフォアに共有結合した第1のチオール基を含むオリゴヌクレオチドを含む、接触させることと、
(i)リードプライマーおよび蛍光標識プローブをライゲーションすることであって、ライゲーションが、リードプライマーおよび蛍光標識プローブの両方が同一のアンプリコンの隣接配列に相補的である場合にのみ生じる、ライゲーションすることと、
(j)ヒドロゲルを、抗酸化剤を含む抗退色緩衝液と接触させることと、
(k)インサイチュ遺伝子配列決定を受けている無傷の組織における細胞における標的核酸の位置決めを決定するために1つ以上のヒドロゲル包埋アンプリコンを画像化することであって、画像化が、抗退色緩衝液の存在下で実施される、画像化することと、
(l)ヒドロゲルを還元剤と接触させて、ジスルフィド結合の還元およびプローブからのフルオロフォアの切断をもたらすことと、
(m)ヒドロゲルからフルオロフォアを除去することと、
(n)ステップ(h)~(m)を繰り返し行うことと
を含む、方法。
【0125】
2.抗酸化剤が、没食子酸N-プロピルである、態様0に記載の方法。
3.組織試料に対して内因性のRNAが、ステップ(a)の前に、最初にヒドロゲルに結合される、態様1または2に記載の方法。
4.ヒドロゲルの当該浄化が、ステップ(a)~(d)のうちのいずれか1つの前または後に実施される、態様1~3のいずれか1つに記載の方法。
5.細胞が、細胞の集団に存在する、態様0~4のいずれか1つに記載の方法。
【0126】
6.細胞の集団が、複数の細胞型を含む、態様5に記載の方法。
7.標的核酸が、RNAまたはDNAである、態様0~6のいずれか1つに記載の方法。
8.RNAが、mRNAである、態様7に記載の方法。
9.第2のオリゴヌクレオチドが、錠型プローブを含む、態様0~8のいずれか1つに記載の方法。
10.第1のオリゴヌクレオチドの第1の相補性領域が、19~25ヌクレオチドの長さを有する、態様0~9のいずれか1つに記載の方法。
【0127】
11.第1のオリゴヌクレオチドの第2の相補性領域が、6ヌクレオチドの長さを有する、態様0~10のいずれか1つに記載の方法。
12.第1のオリゴヌクレオチドの第3の相補性領域が、6ヌクレオチドの長さを有する、態様0~0のいずれか1つに記載の方法。
13.第2のオリゴヌクレオチドの第1の相補性領域が、6ヌクレオチドの長さを有する、態様0~0のいずれか1つに記載の方法。
14.第2のオリゴヌクレオチドの第2の相補性領域が、19~25ヌクレオチドの長さを有する、態様0~0のいずれか1つに記載の方法。
15.第2のオリゴヌクレオチドの第3の相補性領域が、6ヌクレオチドの長さを有する、態様0~0のいずれか1つに記載の方法。
【0128】
16.第2のオリゴヌクレオチドの第1の相補性領域は第2のオリゴヌクレオチドの5’末端を含む、態様0~0のいずれか1つに記載の方法。
17.第2のオリゴヌクレオチドの第3の相補性領域が、第2のオリゴヌクレオチドの3’末端を含む、態様0~0のいずれか1つに記載の方法。
18.第2のオリゴヌクレオチドの第1の相補性領域が、第2のオリゴヌクレオチドの第3の相補性領域に隣接している、態様0~0のいずれか1つに記載の方法。
19.第2のオリゴヌクレオチドのバーコード配列が、標的核酸の同定のためのバーコード化情報を提供する、態様1~0のいずれか1つに記載の方法。
20.固定化および透過化された無傷の組織の接触が、異なる標的核酸に対する特異性を有する複数のオリゴヌクレオチドプライマーをハイブリダイゼーションすることを含む、態様1~0のいずれか1つに記載の方法。
【0129】
21.第2のオリゴヌクレオチドが、閉鎖核酸環として提供され、リガーゼを添加するステップが、省略される、態様0に記載の方法。
22.デオキシヌクレオチド三リン酸が、アミン修飾デオキシヌクレオチド三リン酸を含む、態様0~21のいずれか1つに記載の方法。
23.アミン修飾デオキシヌクレオチド三リン酸が、アクリル酸N-ヒドロキシスクシンイミド部分修飾を含む、態様22に記載の方法。
24.包埋が、1つ以上のアンプリコンをアクリルアミドと共重合させることを含む、態様0~23のいずれか1つに記載の方法。
25.標的核酸が、浄化後にヒドロゲル中に実質的に保持される、態様0~24のいずれか1つに記載の方法。
【0130】
26.浄化が、ヒドロゲル包埋組織試料から複数の細胞成分を実質的に除去することを含む、態様1~25のいずれか1つに記載の方法。
27.浄化が、ヒドロゲル包埋組織試料から脂質およびタンパク質を実質的に除去することを含む、態様25または26に記載の方法。
28.画像化が、共焦点顕微鏡法、二光子顕微鏡法、光視野顕微鏡法、無傷の組織拡張顕微鏡法、および/またはCLARITY(商標)最適化光シート顕微鏡法(COLM)を使用して、1つ以上のヒドロゲル包埋アンプリコンを画像化することを含む、態様0~27のいずれか1つに記載の方法。
29.無傷の組織が、5~20μmの厚さを有する、態様1~28のいずれか1つに記載の方法。
30.無傷の組織が、50~200μmの厚さを有する、態様1~28のいずれか1つに記載の方法。
【0131】
31.無傷の組織を切片化し、無傷の組織の切片を表面上に平坦に配置することをさらに含む、態様1~30のいずれか1つに記載の方法。
32.金属リングが、切片上に押し下げられ、切片を表面上に平坦に移すために使用される、態様31に記載の方法。
【0132】
33.流体システムであって、
a)非加圧試料チャンバを備えるデバイスと、
b)蓋であって、蓋が、試料チャンバの上部を覆う、蓋と、
c)インターフェースチューブであって、インターフェースチューブの第1の端部が、蓋によって保持されており、インターフェースチューブの第2の端部が、液体が試料チャンバ中に残っている限り、試料チャンバ内の液体がインターフェースチューブの底部と接触したままであるように、試料チャンバの底部縁部に十分に近接して、試料チャンバ中の組織試料の上に位置決めされている、インターフェースチューブと、
d)流体ラインであって、流体が流体ラインを通ってインターフェースチューブに流れ込み、インターフェースチューブの第2の端部から試料チャンバ中の組織試料上に流れ出るように、インターフェースチューブの第1の端部に結合された、流体ラインと、
e)ポンプと、
f)画像化システムと、
g)態様0~32のうちのいずれか1つに記載の方法を実施するように構成されたプロセッサユニットと
を備える、流体システム。
【0133】
34.試料チャンバが、マルチウェルプレートまたはスライドチャンバのウェルである、態様33に記載の流体システム。
35.インターフェースチューブが、組織試料平面に対して極角で配置される、態様33または34に記載の流体システム。
36.試料チャンバを極低温で維持するクリオスタットをさらに備える、態様33~35のいずれか1つに記載の流体システム。
37.ポンプとインターフェース接続された多方向セレクタバルブをさらに備える、態様33~36のいずれか1つに記載の流体システム。
38.無傷の組織における細胞における標的核酸のインサイチュ遺伝子配列決定を実施するための試薬を含む1つ以上の容器またはウェルを備える試薬トレイをさらに備え、当該試薬が、多方向セレクタバルブに流体的に接続される、態様37に記載の流体システム。
【0134】
39.試薬トレイを支持する調節可能なステージ、冷却器、および試薬トレイからの試薬の選択を可能にするための調節可能なステージの移動を可能にする位置センサをさらに
備える、態様38に記載の流体システム。
40.緩衝液を含む1つ以上の容器またはウェルを備える緩衝液トレイをさらに備え、緩衝液が多方向セレクタバルブに流体的に接続される、態様37~39のいずれか1つに記載の流体システム。
41.試薬トレイおよび/または緩衝液トレイが、使い捨てである、態様38~40のいずれか1つに記載の流体システム。
42.多方向セレクタバルブに流体的に接続された廃棄物容器をさらに備える、態様37~41のいずれか1つに記載の流体システム。
43.ポンプが、シリンジポンプである、態様33~42のいずれか1つに記載の流体システム。
【0135】
44.画像化システムが、共焦点顕微鏡法、回転ディスク共焦点顕微鏡法、光シート顕微鏡法、格子光シート顕微鏡法、または光視野顕微鏡法を実施する顕微鏡を備える、態様33~43のいずれか1つに記載の流体システム。
45.流体システムを取り囲む容器をさらに備え、容器が周囲光を遮断する、態様33~44のいずれか1つに記載の流体システム。
46.流体システムを取り囲む容器が、1つ以上のドアまたは引き出しを備える、態様45に記載の流体システム。
47.流体システムを取り囲む容器が、音響減衰容器である、態様45または46に記載の流体システム。
48.組織試料を凍結切片化するための手段をさらに備える、態様33~47のいずれか1つに記載の流体システム。
【実施例
【0136】
以下の実施例は、当業者に、本発明の作製および使用方法の完全な開示および説明を提供するために提示されるものであり、発明者が発明とみなす範囲を限定することを意図せず、また、以下の実験が行われるすべてまたは唯一の実験であることを表すことを意図するものではない。使用される数字(例えば、量、温度など)に対する正確性を確保する努力がなされているが、ある程度の実験誤差および偏差は考慮されるべきである。別様に示されない限り、部とは重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧またはほぼ大気圧である。
【0137】
本明細書で引用されたすべての刊行物および特許出願は、各々の個々の刊行物または特許出願が、参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0138】
本発明は、本発明の実施のための好ましいモードを含むように、本発明者によって見出されるか、または提供される特定の実施形態に関して説明されている。当業者は、本開示に照らして、本発明の意図される範囲から逸脱することなく、例示される特定の実施形態で多数の修正および変更を行うことができることを理解されたい。例えば、コドン冗長性によって、タンパク質配列に影響を与えることなく、基礎となるDNA配列の変更を行うことができる。生物学的機能的等価性を考慮することによって、種類または量において生物学的作用に影響を与えることなく、タンパク質構造の変更を行うことができる。かかる修正はすべて、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。
【0139】
実施例1
無傷の組織配列決定化学およびプロセスのための新たな方法
序論
STARmapは、標的核酸がバーコードで選択的に標識される配列決定プロセスであり、バーコードは、ライゲーションによってその後の複数のラウンド読み出しの前に増幅
され、ヒドロゲルに結合される。STARmapの最初の出版物は、0.0034立方ミリメートルの大きさの試料サイズにおける組み合わせ配列決定の使用、および0.238立方ミリメートルの大きさの試料サイズにおける連続的配列決定の使用を実証した。これらのデータを収集するためには、かなりの人的労力が必要であり、配列決定の読み出し段階だけでも、単一の試料に対して数日間の連続した労力が必要であった。成体マウスの脳全体は、約400立方ミリメートル、すなわち、以前に実証された組み合わせ配列決定試料の体積の110,000倍を超える。無傷の組織配列決定が、容量およびスループットを増加させるための規模に近づくにつれて、それらの堅牢性を最大化し(誤差の複合蓄積を防止するために)、並列性およびスループットを増強することが非常に重要である。特に、これらの技法が研究室から臨床および産業ワークフローに移行する場合に当てはまる。
【0140】
本明細書に記載する新しい方法は、配列決定化学および配列決定の自動実行の両方を含む、以前のSTARmap技法のいくつかの異なる堅牢性およびスループットの側面を標的とする。この新しい方法を「臨床規模および産業規模の無傷の組織の配列決定(CISITS)」と呼ぶ。新しい方法の化学的側面は、標識された分子のシグナル対ノイズ比(SNR)を増加させ、ラウンドにわたるキャリーオーバーシグナルを排除し、プロトコルにわたって信頼できる効率と化学的成功を達成し、厚い組織での組み合わせ配列決定を可能にすることに焦点を当てる。新しい自動化方法は、試料チャンバがもはや加圧されていない流体システム、高いシステム堅牢性のためのシステム統合方法、および試料にわたって並列化するための方法の組み合わせを含む。CISITSソフトウェア制御方法は、自動化された流体システムを管理し、失敗の事象において配列決定ワークフローを保持しながら、堅牢な流体交換プロセスを調整する。顕微鏡ハードウェアとのCISITSの統合は、ユーザ相互作用を簡素化し、加速し、スループットを増強させるための大規模な視野取得を可能にするシステム統合を提供する。
【0141】
CISITS
(1)高度な配列決定のSNRのための新たな方法
STARmapの元のバージョンでは、洗浄後にそれらが室温で結合したままになるように蛍光標識されたオリゴを適切なアンプリコンに結合することによって、配列決定中にアンプリコンを標識する。ライゲーション後の洗浄および画像化の両方で、「洗浄および画像化」緩衝液を使用し、それは2×SSC、10%のホルムアミド、および水で配合された。この緩衝液中の画像化は、より長い曝露時間を伴うフルオロフォアからの光退色およびシグナルの損失に苦しんだ。これは、広い視野の画像タイリングによる配列決定の初期ラウンド(シグナルが最も高い場合)の両方で問題であり、これは、視野の端部に送達される総光量を増加させ、個々のアンプリコンのSNRおよび検出可能性を低下させる。これは、SEDAL配列決定化学の性質によるSNRの特徴的な低下を受ける、後期ラウンドの配列決定において特に問題である。後期ラウンドでは、特に長い波長のフルオロフォアの場合、配列決定を成功させるためには完全なバーコード読み取りが必要であるため、乏しいSNRは、分子から高品質の読み取りを抽出する能力を損ない始め、配列決定された分子の全体的な収率を低下させる。
【0142】
洗浄および画像化緩衝液製剤を変更して、硝酸N-プロピルなどの抗酸化剤化合物を含むようにした。例えば、洗浄および画像化緩衝液の新しい組成は、2×SSC、水、およびホルムアミド中に溶解した20%のN-プロピルガラートが10%であり、最終濃度は10%のホルムアミドおよび2%のN-プロピルガラートである。洗浄および画像化緩衝液中に抗酸化剤化合物を含めることは、フルオロフォアの抗退色剤として機能する。これにより、タイリング中の光退色を低減し、感受性フルオロフォアのSNRを大幅に増強し、より厚い試料のより高いSNR画像化を可能にする。抗酸化剤化合物を含む固定された曝露時間の場合は、曝露にわたって1ドット当たりの退色されていない蛍光体の濃度を増
加させることにより、SNRを増加させる。抗酸化剤を含むことにより、より長い露光時間(漂白前の蛍光体寿命が限られることによって引き起こされる)のリターン効果の低減も除去され、必要に応じて露光時間を長くすることにより、SNRの線形増加を可能にする。
【0143】
(2)ラウンドからラウンドへのシグナル分離の改善
STARmap配列決定に対する連続的読み出しアプローチでは、個々の遺伝子からのバーコード化アンプリコンは、所与のカラーチャネルが、ラウンドごとに目的が異なる遺伝子に関する情報を厳密に伝達するように、単一のラウンドでのみプローブされる。この連続的読み出しアプローチは、アンプリコンのサイズを制御し、ラウンドにわたってアンプリコンの分離を維持することがより困難である、より厚い組織切片で使用され、または、読み出す必要がある遺伝子の数がより少なく、体積スループットに重点が置かれている試料で使用され、これは、より低い大きさの対物レンズおよびカメラビニング、例えば、画像当たりのピクセルの4×4ビニングを使用することによって得られる。この連続的アプローチの成功は、所与のカラーチャネルからの信号がラウンドからラウンドへ完全に排除されることを必要とする。そうでない場合、例えば、1ラウンドでの高発現遺伝子からの残りのシグナルは、次のラウンドでの低発現遺伝子からのシグナルと誤認される可能性がある。
【0144】
ホルムアミドの濃度を60%から80%に増加させ、ホルムアミドの剥離サイクルの長さと回数とをすべてのラウンドで増やすことで解決した。しかし、これは、すべての遺伝子についてシグナル除去の効率が向上し、シグナルを完全に除去した。その効率は、室温の変化を受け、試料当たりにかなりの追加時間を追加する可能性がある。追加のホルムアミド曝露は、時間および配列決定のラウンドにわたって試料の品質を損なう可能性がある。
【0145】
より完全にラウンドからラウンドへのシグナルを排除するために、CISITSの別の態様は、(プローブ剥離とは対照的に)フルオロフォア切断と組み合わされたSEDALベースの配列決定読み出しを含む。フルオロフォアとオリゴの残りとの間のチオール結合を含むことは、TCEP溶液などの還元環境(これは、他のインサイチュ配列決定アプローチで使用されている)におけるフルオロフォアの切断を可能にする。しかしながら、STARmapのSEDAL配列決定では、ライゲーション反応中にアンプリコンの高SNR標識が生じ、ライゲーション緩衝液は、還元剤であるDTTを含有し、これは、チオール含有蛍光オリゴからのシグナルを劇的に低減させることを見出した。
【0146】
CISITSは、SEDAL配列決定/ライゲーション緩衝液を再調製してDTT成分を除去する。非チオール含有蛍光オリゴ由来の特異性またはSNRの差がほとんどなく、標的アンプリコンに、チオール含有蛍光フォア標識オリゴを結合させることができることを見出した。DTTの除去により、追加的に、チオール含有フルオロフォアプローブは、ライゲーション混合物中で4℃で少なくとも24時間安定したままであり、後続の標識有効性の損失は最小限であり、自動化を容易にする。配列決定ラウンドの画像化後、還元剤TCEPを含有する緩衝液を30分間添加すると、点状蛍光シグナルが完全に除去され、その後の短時間のPBSTw洗浄は、拡散性の蛍光シグナルを除去する。
【0147】
新しい方法のこの態様は、堅牢なシグナル除去、シグナル除去/洗浄時間の低減による迅速なラウンド時間の利点を有し、特に一定の組織堅牢性を伝達し、試料の完全性を損なうことなく総ラウンド数をより多くすることが可能である。CISITSにおけるチオールベースの化学切断を伴うSEDAL配列決定を使用することにより、SEDAL配列決定の特異性およびSNRの利点と、蛍光体切断からのラウンドからラウンドへのサイクルの堅牢性および迅速性とを組み合わせる。
【0148】
(3)配列決定前および配列決定中のCISITSプロトコルにおける堅牢性のための新たな方法
組織切片収集
無傷の組織の組み合わせ配列決定では、凍結切片化し、切片を新鮮な結合シランコーティングウェルまたはスライド上に配置することによって新鮮な凍結組織切片を収集する。試料のハイスループット、並列処理を容易にするために、24ウェルプレートなどのマルチウェルプレート中に試料を収集することが好ましい。しかしながら、組織破壊、折り畳み、または引き裂くことなく、凍結切片をシランコーティングされたプレートの底に移すことは困難であり、その後のデータ収集および分析を妨げる可能性がある。さらに、配列読み出し前の組織収集および調製は、試料にわたって高度に並列化する必要があり、最適な試料収集が不可欠である。STARmap法は、堅牢な試料収集のプロセスを詳細に説明しておらず、標準的なアプローチは、切片ごとに非常に失敗率が高く、多くの切片を失い、プレート上のスペースの非効率的な使用をもたらす。
【0149】
下流処理で使用する表面に凍結断面を確実に平坦に配置するために、CISITSの一部として、試料収集ウェルをクリオスタット中に、直径8または10mmの小さな薄壁金属リングとともに低温で保つ新たな方法を考案した。切片が収集された後、金属リングは、リングの縁部が切片を囲む凍結切断媒体と均等に接触するように切片上に押し下げられる。次いで、リングと平らな切片を鉗子を使用して拾い上げ、適切な表面に移すことができ、これは、指で下側は直前に暖められる。金属リングは、切片をシラン表面に正確に平らに配置することを容易にし、指からの暖かさは、切片をリングから分離し、ウェルに付着させる。この新しい方法は、切片の完全性とスループットとを大幅に保証する。
【0150】
アクリル酸NHSエステル緩衝液のCISITS製剤
AA NHSエステル緩衝液のSTARmap方法における以前の製剤は、pH緩衝されなかった。AA NHSエステル緩衝液中の20mMのMOPS pH7.7を含む新しいCISITS方法では、pHは、AA NHSエステルに対してより最適なpHで緩衝液を安定化し、その後のNHSエステル反応を信頼性が高く効率的にする。
【0151】
反応堅牢性のためのCISITSプロトコル
配列決定化学のいくつかの態様が、複数の試料および配列決定の数日間にわたる堅牢なハイスループット使用のために新鮮な試薬を必要とすることが見出されており、これは、拡張可能で自動化された配列決定に特に重要である。
【0152】
新しいCISITS方法では、重合II、RCA、およびライゲーション混合物は、配列決定の前に、CISITSプロセスで使用するために新鮮に作製されなければならない。
【0153】
SEDAL配列決定ラウンドのためのライゲーション混合物を予め混合し、4℃で少なくとも24時間保管することができる。シグナルは、4℃で保管することを条件として、SEDALライゲーションラウンド混合物を24時間の配列決定ごとに新鮮に作製する場合に最適である。自動配列決定の間、ラウンド>4のための追加のSEDAL試薬を、数ラウンドの作動が完了した後に配列決定デバイスに新鮮に添加してもよい。
【0154】
TCEP緩衝液は、各配列決定実行の前に新鮮に作製される場合に最適に使用されるが、配列決定サイクルにわたって効率を維持する。
【0155】
(4)より厚い組織における核酸の組み合わせ標識のための新しい方法
STARmap法のスループットに対する主な制限は、より厚い組織に対して組み合わ
せ配列決定を実施することができないことである。この制限はいくつかの原因に由来する。第一に、SNAILプローブをライゲーションし、ローリングサークル増幅(RCA)を使用してライゲーションしたプローブを増幅するためには酵素反応が必要であるため、試料中への酵素の浸透およびその後の効率は非常に制限される可能性がある。追加の制限は、RCAアンプリコンのサイズの制御における均一性である。より厚い組織の拡散特性が困難であるため、従来のSTARmap方法のもとでは、複数のラウンドに好適なサイズの均一なアンプリコンを得ることはできない。さらに、(ライゲーションおよび増幅の前に)ヒドロゲルに直接組み込むために好適に修飾されたプローブを得るコストは、多数の遺伝子の場合は高額になる可能性がある。
【0156】
新しい方法では、組織の大規模な配列決定を可能にするために、これらの制限を突破するためのいくつかのアプローチを考案した。これらの新しい方法は、厚い切片の組み合わせおよびハイスループット配列決定を得るためのいくつかの異なる手段を提供する。
【0157】
この新しいCITSIT方法の最初の例では、STARmap方法のように、アクリダイトなどの適切な末端修飾を含有するプローブをハイブリダイゼーションに使用する。それらは、個別に購入されてもよく、研究室で修飾されてもよく、またはオリゴのプールとして入手されてもよい。ハイブリダイゼーション後、消化、ライゲーションおよびRCAの前にヒドロゲルを形成する。消化およびライゲーション後、新たな方法を使用して増幅を実施し、試料にわたって十分に均一なライゲーションおよび増幅効率を達成する。まず、RCA混合物を、酵素および緩衝液を含むが、dNTPを除外するように配合し、それによって、いかなる増幅も進行しない。この混合物をライゲーションした試料に添加し、例えば2日間の経過にわたって均一になるまで試料に拡散させる。dNTPを除去することにより、遅い酵素拡散プロセスは平衡に進むことができる。dNTPを含まないRCA混合物を添加し、その平衡化した後、過剰濃度のdNTPを有するRCA混合物を試料に添加する。dNTPは低分子であり、試料の外側に高濃度の勾配を有するため、室温で急速に試料内に平衡化する。例えば、室温でのdNTPを含有するRCA混合物との30分間の平衡化の後、温度を増幅のために最適な温度まで上げ、増幅を数時間進め、その後の複数ラウンドの組み合わせ配列決定のための均一かつ適切なサイズのアンプリコンを産生する。
【0158】
新たな方法の第2の例では、内因性RNAは、ハイブリダイゼーションの前に、まずヒドロゲルに結合される。これは、標識Xなどの結合化学を介して、または5’メチルRNAmRNAキャップへの結合によって、またはポリAテールへの非常に安定したハイブリダイゼーションによって、またはその後の標的ハイブリダイゼーションによって個々に置換され得るが、集合的に十分な長期安定性を有して内因性RNAをヒドロゲル中も保持するために役立つ短い縮合プローブによってのいずれかで共有結合的に、内因性RNAとの相互作用を媒介してヒドロゲル中に重合することができる化合物によって達成される。RNAが包埋されたヒドロゲルの形成後、ほとんどが内因性RNAを含有する透明ヒドロゲルが得られるように試料を積極的に消化し、透過化してもよい。得られたこのヒドロゲルは、非消化組織と比較して優れた拡散特性を有する。次いで、プローブハイブリダイゼーション、ライゲーション、およびRCAを、適度なインキュベーション時間で進めることができるが、第1の例に記載される均一なRCA増幅のための方法は、下流の組み合わせ配列決定との適合性が確保される。RCAに続いて、アンプリコンは、組み合わせた複数ラウンド配列決定に進む前に、長期的な安定性のための薄い切片STARmap方法で前述のアプローチに従ってヒドロゲルに連結される。
【0159】
薄い切片の方法と比較してこれらの試料の厚さが桁違いに増加しているため、Zにおける試料の大きな深さが画像化される場合、洗浄および画像化緩衝液中に没食子酸N-プロピルまたは他の抗酸化化合物を組み込むことは、退色を防止するために不可欠である。
【0160】
CISITSのための新しい自動流体システムハードウェア方法
STARmap配列決定のための従来の自動化方法は、配列決定試薬が、加圧された、空気がないフローセル中の試料にわたって押し出され、引き込む流体システムからなっていた。このフローセルベースのシステムの正確かつ堅牢な機能には、流体ラインから気泡を除去し、試薬が配列決定の各ステップで完全に交換されるようにフローセル中の試薬の流れを適切に管理し、各試薬の正しい量が充填されるようにシステムを適切にプライミングし、流体に接続する場合にフローセルを適切にシールする必要がある。複数日の配列決定の任意の時点でこれらの要件のうちのいずれかに失敗すると、配列決定の失敗につながる可能性がある。これらの要件を満たすことは、フローセル上の試料の異種の形状およびサイズによって複雑である。追加的に、配列決定前の試料調製のためのSTARmap方法と、フローセルにおける自動STARmap配列決定のための前述の方法との間に基本的な非交換性が存在する。すなわち、既存のSTARmap方法は、マルチウェルプレートの個々のウェルに接着された多くの試料の並列調製を可能にするが、ハイブリダイゼーションされ、ライゲーションされ、増幅され、ゲル化された試料をフローセルに移すための任意の方法を指定せず、これは、試料の試料調製プレート底部への接着性質のために困難である。STARmap試料調製方法を最初からフローセル上で実施するための方法は説明されておらず、これは個別の試料にわたる並列化の容易さの喪失に加えて、蒸発および液体管理の問題に苦しむ。最後に、以前のSTARmap自動化方法は、一度に単一の試料(またはフローセル)のみの配列決定が記載され、方法のスループットが厳しく制限された。以前の方法のこれらの堅牢性およびスループットの問題の多くを解決するための新しい方法を開発した。
【0161】
CISITS流体システム
試料インターフェース接続の新しい方法
CISITS流体システムは、配列決定試薬を試料から添加および除去するが、以前の方法とは異なり、この新しい方法は、試料の上部に対して空気を収容することができる非加圧試料チャンバを使用する。試料を試薬中に単純に浸すことを選んで試料に対する試薬の流れの要件を緩和することで、システムの堅牢性および単純性が大幅に改善すると同時に、異なる試料チャンバにわたる自動配列決定の並列化を大幅に促進する。
【0162】
このシステムでは、1つ以上の試料が試料チャンバ中に位置し、それは、マルチウェルプレートのガラス底ウェルであり(配列決定前のCISITS方法との最適な互換性のため)、またはチャンバ中の空気が室内空気と交換することが可能な任意のガラス底チャンバであり、流量圧力を緩和することができる。一例では、試料は、6、12、または24ウェルマルチウェルガラス底プレートのウェル中でCISITS方法を使用して調製される。流体システムは、カスタムウェルプレート蓋を介して試料に結合され、カスタムウェルプレート蓋は、試料ウェル(インターフェースチューブ)の底部縁部近くの試料のすぐ上部に剛性流体チューブ(金属チューブなど)を保持する。流体ラインは、流体が流体ラインを通って、インターフェースチューブ内に、そしてウェル中の試料上にそれを浸すように、このチューブと結合する。試料から流体を除去するために、流体はインターフェースチューブを介して試料ウェルから吸い出される。CISITS流体システムのための異なるカスタム蓋は、様々な異なる形式のマルチウェルプレートまたはスライドチャンバの複数の配置を含む、異なる試料チャンバの形式を満たすように設計される。マルチウェルプレートの場合、システムは、複数の異なる試料ウェルと同時に結合し得、異なる試料ウェルへのアクセスを提供し(連続して配列決定される)、または代替的にウェルにわたって並列配列決定能力を提供し得る(後述)。
【0163】
流体システムを試料に結合するカスタムCISITS蓋は、任意の時点で容易に上に置かれるか、または取り外され、空気交換を可能にするように、試料チャンバまたはプレー
ト上に密封されていない。しかしながら、流体インターフェースチューブは、液体がチャンバ中に残っている限り、試料チャンバ内の液体がチューブの底部と(凝集および接着を介して)接触したままであるように蓋の中に正確に位置決めされている。これにより、すべてまたはほぼすべての試薬が、各試薬除去ステップで試料ウェルから除去され、堅牢な自動化プロセスが得られることが保証される。試料インターフェースチューブの底部と試料チャンバとの間に十分なスペースが残されており、試料に添加された液体はインターフェースチューブを加圧せず、代わりに全体に広がり試料を浸す。試料インターフェースチューブは、多くのチューブが多くの異なる試料チャンバを有する容器に適合し得、各チャンバがインターフェースチューブを有するように、試料の平面に対して極角に配置され得る。代替的に、カスタムCISITS蓋は、チューブが堅牢な流体交換をもたらす正確な位置に確実に誘導されるように、ユーザが単一または複数のインターフェースチューブをいくつかの所望の試料チャンバに配置することを可能にし得る。これらのカスタム蓋は、仕様に合わせて機械加工または3D印刷されてもよく、消耗品であっても再利用されてもよい。
【0164】
試薬の選択、試料、および廃棄を介した連続流体フローのための新しい方法
CISITSのための流体システムは、シリンジポンプを中心としており、一連のセレクタバルブを介して所望の量の試薬をポンプに引き込む。単一試料作動の場合、この新しい方法におけるポンプはいくつかの作動モードを有する。試薬の貯蔵所に結合された複数ポートセレクタバルブから試薬を引き込むことができ、またはインターフェースチューブを介して試料ウェルから試薬を引き込むことができる。ポンプがいくらかの容量を引き込むと、インターフェースチューブを介して容量を試料ウェルに押し出すことができるか、容量を廃棄物容器に押し出すことができるか、または容量を逆に試薬貯蔵所に押し出すことができる(クリーニング目的で使用し得る)かのいずれかである。これらの異なる作動モードは、どの流体ラインが現在開いているかを切り替える、ポンプとインターフェース接続された多方向セレクタバルブ(例えば、3方向)によって媒介される。したがって、連続配列決定の作動の通常のモードの例は、ポンプセレクタのみを試薬セレクタラインに開き、目的の試薬の所望の複数ポートセレクタラインを開き、選択された試薬を試薬貯蔵所から複数ポートセレクタを通ってポンプに引き込み、異なる液体特性による様々な流れの時間を制御するために平衡が発生することを可能にし、ポンプセレクタを試料ウェルに向かってのみ開き、シリンジポンプを上げて、試薬を試料流体ラインおよびインターフェースチューブを通して押し出して、試料を浸し、試薬の代わりに少量の空気をポンプに引き込んで試料に押し出し、任意の残りの試薬の試料流体ラインを洗い流し、所望の試薬量を試料に完全に送達するこのプロセスを繰り返し、CISITS配列決定プロセスの一部として任意のインキュベーション時間を待ち、ポンプを引き下げ、インターフェースチューブを介して試料から液体をポンプに吸い戻し、平衡化を可能にし、ポンプセレクタポートのみを廃棄物に対して開き、ポンプを上げて中身を廃棄物に押し出し、この液体除去プロセスを十分な時間繰り返して、試料から所望の量を完全に除去する。これは、CISITS方法の通常の作動における試薬添加、インキュベーション、および除去サイクルとみなすことができる。サイクルは、試料がCISITS配列決定プロセスを進行するときに、同じ試薬または異なる試薬のいずれかについて繰り返される。流体システムのこのサイクルプロセスは、フローセルプロセスとは異なり、液体なしで試料を短時間放置する。しかしながら、CISITS方法はヒドロゲルに包埋された組織を使用するため、試料はこの時間尺度では乾燥しないので、常に浸漬する必要はない。さらに、試料がチャンバの底部に付着しており、倒立顕微鏡で画像化されるため、ウェルの底部と試料との間に空気が移動することができないため、この方法では気泡は問題とならない。
【0165】
流体システムのためのこの非加圧試料チャンバ方法は、試薬添加後のシステムを介した前述の空気の移動などの様々な堅牢性の方法を可能にして、試料への試薬の完全な添加を保証する。追加的に、ポンプによって引き出されることが可能であるよりも大きな体積の
試薬を可能にし、ポンプに追加の空気体積をもたらすが、任意の制限量の試薬が試薬容器から完全に引き出されることを保証する。この方法の流体システムは、液体をポンプに引き込み、廃棄物容器に直接押し出すことによって試料をバイパスすることができ、洗浄プロセスを促進し、水、希釈漂白剤、または他の洗浄液をポンプに引き込み、それを浄化し、直接押し出して廃棄する。代替的に、必要に応じて、例えば試薬流体ラインを洗浄するために、水または他の洗浄液を試薬容器に押し込むことができる。
【0166】
平行流体流の新しい方法
試料チャンバが加圧されていないこの新しいCISITS方法は、複数の異なる試料チャンバにわたる流体送達の並列化を大幅に促進する。この新しい方法では、追加のセレクタバルブがポンプから試料への流体ラインを媒介する。これらのセレクタバルブは、単独で開いてもよく(異なる試料ウェルへのアドレス指定可能なアクセスを可能にする)、または複数を同時に開いてもよく、流体がポンプによって複数の試料に並列に送達されることを可能にする。この試料セレクタバルブからの出力流体ラインを各異なる試料インターフェースチューブおよび試料に結合することにより、CISITSを用いた並列配列決定を実現し、複数の試料の配列決定における実質的なスループットを提供することができる。例えば、各約48時間を要する一度に1つの試料を配列決定する一連の配列決定プロセスの代わりに、多くの試料を同時にまたは交互に配列決定することができ、これにより、画像取得システムが配列決定サイクルまたはインキュベーション時間の代わりに制限プロセスとなるようにすることができる。例えば、単一の配列決定ラウンド(7つ以上のうち)の場合、試薬添加、インキュベーション、および除去は、ラウンド完了時間の80%を合計で消費し得るが、画像化は20%を消費する。5つの試料を超える試料にわたって並行して作動すると、4倍のスループットスピードアップ(各ラウンドの5つの試料すべてを画像化するために1倍の時間がかかる)が得られ、代替的に、相互または交互に作動すると、第1のラウンドに続いて画像取得がほぼ常に実行されるため、ほぼ5倍のスピードアップ(交互の1ラウンド時間未満)が得られる。したがって、この新しい方法は、画像取得システムが制限されるようになる試料の数までの並列配列決定された試料の数を伴う、無傷の組織の配列決定のスループットのほぼ直線的な増加をもたらす。
【0167】
試薬管理システムのための新しい方法
以前のSTARmap自動配列決定法では、試薬は、冷却ブロック内または室温でのチューブ内で異なる試料チューブを介して冷却されたままであった。各試薬は、流体システムに直接結合され、使用者は、実行の間で試薬の直接の結合および流体システムからの結合の解除によって、試薬を切り替える必要があった。
【0168】
新しい方法では、試薬管理システムは、ユーザのためにこのプロセスを抽象化し、例えば、単純に流体デバイス内に簡単に配置され得る使い捨て試薬トレイを簡単に提供する。デバイスは、この試薬トレイの適切な部分を内部冷却ブロック上に配置し、流体ラインを試薬に自動的に結合する。試薬トレイ内の試薬容器またはウェルは、冷却器ユニットとの結合を可能にするために十分な熱伝達特性を有する。CISITS実行/自動流体作動の完了後、トレイを廃棄し、新しいトレイを新しい実行に使用することができる。ユーザは、適切な試薬を試薬トレイのラベルの付いた区域に充填してから、液体システム内に配置する。試薬トレイは、システムのスループット、および試料が並列または連続してCISITS方法によって配列決定されているか否かに応じて、異なる試薬の容量を変化させることができる。
【0169】
配列決定試薬の鮮度を保証するために、次の数ラウンドの新鮮な混合SEDAL試薬を配置するために、任意選択で、トレイを配列決定の実行中に部分的に除去してもよい。
【0170】
試薬管理のためのこの新しい方法は、CISITS実行の初期化を簡素化および迅速化
し、ユーザがシステム流体の正常な作動を中断することを防ぐ堅牢なプロセスを提供する。
【0171】
CISITS配列決定システムの囲いのための新しい方法
配列決定システム全体は、システムの様々な内部構成要素にアクセスするための適切なドアおよび引き出しを提供しながら光を遮断する容器によって取り囲まれている。いくつかの引き出しは、試料をシステムに入れたり、それを除去するための引き出し、および試薬をシステムに入れたり、それを除去するための引き出しなど、システムの通常の使用を意図している。囲いの他の構成要素は、サービス専門職がシステムの内部部品を変更、アップグレード、または修理するためのより容易なアクセスを提供する。囲いは、音響減衰を含み得る。
【0172】
流体システムの堅牢な作動のための新しい方法
CISITS自動配列決定システムには、自動作動の堅牢性および低い失敗率を保証するための複数の方法が含まれる。これらの方法は、例えば、流体送達を保証するための試料流体ラインを通る流体流の検出器、その活動は、壊滅的な損傷を防止するために配列決定を停止させることができる、試料容器からの試薬の流出を検出するための画像化対物レンズおよび電極を取り囲む吸収性材料、冷却器が試薬を充填する前に適切な温度に達していることの確認、CISITS試薬/トレイのシステムへの適切な充填を検出するための確認、塩または他の物質の蓄積による流体ラインの詰まりを防ぐために、各配列決定の実行の終わりに自動的に実施される定期的なシステム洗浄、およびシステムが最近使用されていない場合に実行前にシステムで実施される断続的な洗浄を含む。配列決定終了時に自動的に実施される洗浄では、希釈漂白剤または他の洗浄液をポンプ内に移動させ、次いで、廃棄し、続いて水で複数ラウンド洗浄して漂白剤または洗浄液を完全に除去する。自動化された手順が完了した後、システムは、ユーザに、配列決定された試料を損傷することなくそれらを洗浄するために、漂白剤または洗浄液および水が試料流体ラインおよびチューブを通過することができるように、またはこの洗浄を、ユーザの同意を得て自動的に試料容器上で行うことができるように、以前にユーザが使用した形式と一致する洗浄試料容器を配置するように要求する。最後に、空気がシステムを通過して、流体ラインに残っている液体を除去する。中間洗浄は、洗浄試薬トレイが洗浄緩衝液および/または希釈漂白剤、および水とともにデバイス内に配置されていることを条件に、配列決定の実行の間に洗浄試料プレートを使用して使用者によって開始することができる。これらの洗浄サイクルは、洗浄液をポンプ、試料流体ライン、および試薬流体ラインの両方に押し込み、洗浄液を取り除いて廃棄し、水で複数サイクルの洗浄を実施し、次にシステムを空気で洗い流す。
【0173】
CISITSを可能にする流体力学および顕微鏡法のシステム統合のための新しい方法
新しいCISITS方法は、組み合わせ配列決定中の適切なドット分離のために、試料の深さにわたって、サブミクロンほどの解像度で試料の画像を迅速に取得することができる画像取得システムまたは顕微鏡を必要とする。複数の異なる顕微鏡および顕微鏡のスタイルは、CISITSとの組み合わせ配列決定(個々のアンプリコンが分解されるような分解能に対するより大きな要件)またはCISITSとの連続的配列決定(分解能に対するより少ない要件)が実施されているか否かに応じて、共焦点顕微鏡法、回転ディスク共焦点顕微鏡法、光シート顕微鏡法、格子ライトシート顕微鏡法、および光視野顕微鏡法を含む、CISITS流体システムと互換性があり得る。
【0174】
一例では、回転ディスク共焦点顕微鏡は、自動化されたCISITS流体システムと結合される。CISITS流体システムは、ソフトウェアを介して顕微鏡システムと通信し、画像の収集を流体プロセスと同期または交互にする。この通信は、REST APIを介して、TTLトリガを介して、または他のソフトウェア方法によって連続であり得る。
【0175】
一例では、顕微鏡は、消費者製品であり、CISITS配列決定の管理を備えるソフトウェアによって通信し、顕微鏡ステージ上に試料容器をユーザが配置するだけで自動流体システムに機械的に結合される。ユーザは、顕微鏡画像取得インターフェースを用いて、画像化パラメータおよび取得詳細を制御し、これらは、その後、適切な時点で自動配列決定によって引き起こされる。
【0176】
一例では、顕微鏡は消費者製品であり、得られる囲いがCISITSシステムによって指定されたインターフェースを有する単一の統合システムとして機能するように、流体システムとともに囲まれる。
【0177】
一例では、顕微鏡は、顕微鏡構成要素が自動流体システムとより直接的に統合され、システム全体が統合された形で出荷され、通常は消費者製品の一部である不要な機械的部品を除去することを可能にするOEM形式である。OEM顕微鏡形式は、自動化システムのよりコンパクトな囲いを可能にする。直接統合は、顕微鏡の画像化構成要素と直接インターフェース接続するCISITS自動化のための専用ハードウェアの使用を容易にする。これらには、例えば、試薬漏れの修復および対物または対物タレットでの検出が含まれる。特に、対物ガラスと試料チャンバガラスとの間の液体浸漬インターフェースの自動管理など、CISITSのための大区域または複数の区域取得のための新しい方法が挙げられる。浸漬インターフェース、例えば、水の自動管理は、浸漬および適切な屈折率一致を失うことなく、ステージの大きな移動距離を可能にし、切片全体の収集のための能力を提供し、そして重要なことに、対物レンズヘッドが、水(または他の)浸漬インターフェースを失うことなく、複数の異なるウェルに変換することを可能にする。
【0178】
自動配列決定プロセスを調節するための新しいソフトウェアおよび新しい方法
自動STARmap配列決定のための以前の方法は、個々の流体構成要素を制御するファームウェアコードを説明し、このファームウェアコードがコントローラコンピュータ上の後続のカスタムソフトウェアによって調整されることを示唆した。
【0179】
新しいCISITS方法は、このプロセスを、並列作動のための互換性を備えたシステム構成要素制御ソフトウェアを介した抽象化のマルチレベル、階層モデルに拡張し、配列決定プロトコルを、配列決定の関連する詳細(組み合わせから連続的配列決定およびそれらのプロトコルのバリエーションまで)を指定するパラメータファイルを受け入れる単一の一連のモジュラーコマンドに統合し、配列決定実行を指定、開始、一時停止、および停止、ならびに洗浄実行を開始するためのユーザインターフェースを提供し、配列決定の進捗、および品質確認を含む基準を表示するネットワークを介してアクセス可能なシステムダッシュボードを提供し、スペースの制約により、配列決定が進行することを遮断する大規模なデータセットを収容するためのデータ管理システムのための方法を提供する。これらの新しい方法は、CISITSデータの迅速、自動化、および継続的な取得のための手段を提供する。
【0180】
階層的抽象化およびシステム制御のためのソフトウェア方法
最低レベルのファームウェアコードは、流体システム内の各デバイス、例えば、冷却器ブロック、ポンプ、またはセレクタバルブの個々のコントローラである。アルデュイノまたはマイクロコントローラには、個々のハードウェア構成要素の一般的な作動を指定するファームウェアコードが含まれており、入力パラメータに従ってこれらのハードウェア構成要素を作動する一連のマクロを提供する。このマイクロコントローラコードは、画像取得が可能なコンピュータとの連続接続によってインターフェース接続されている。コンピュータ上で実行されるCISITSソフトウェア自体が階層的であり、様々なハードウェア構成要素の制御に関する複数の抽象化を提供する。一例では、このソフトウェアはPy
thonプログラミング言語で実装されている。低レベルモジュールは、ハードウェアマイクロコントローラ/アルデュイノとのプログラマティックインターフェース接続のためのオブジェクト指向モデルを提供する。このオブジェクト(「ロボ」)の初期化は、マイクロコントローラとの連続接続を開き、連続インターフェース接続を介して後続の通信のためのハンドルを提供し、マイクロコントローラデバイスをリセットする。追加的に、初期化は、最大ポンプ移動速度、最大体積、ならびに流体の平衡化のための様々な時間定数など、異なる配列決定プロトコルに対して不変であるデバイスの作動のための基本パラメータを設定する。このオブジェクでの最小レベルの抽象化を提供する方法は、送信コマンド方法であり、適切に形式化された連続コマンド文字列をマイクロコントローラに通信し、適切な制御マクロを引き起こす。冷却器の温度を取得および設定し、冷却器が目標温度に達するまで待ち、ポンプの内容物を廃棄物に移動させ、指定された体積の入力された試薬を指定された試料に充填し、指定された体積の指定された試料ウェルを廃棄物に排出し、試薬容器間で試薬を移動させることを含む、流体システムの個別の動作を実行するマイクロコントローラへのコマンドを、オブジェクトのより高いレベルの方法で調整する。オブジェクトの最終的な鍵となる方法は、マイクロコントローラへの連続接続を閉じることである。ロボオブジェクトとのこの連続接続を確立して保持することにより、ソフトウェアはマイクロコントローラへの他のプログラマティックスレッドのアクセスを遮断し、単一のスレッドが一度に流体ハードウェアを調整できることを保証する。
【0181】
この制御オブジェクトは初期化され、その方法は配列決定プロトコルの仕様のためのより高いレベルのフレームワークを提供する配列決定モジュールによって呼び出される。CISITSソフトウェア方法の一例では、配列決定コマンドは、個々の作動が連続的に実行され、配列決定手順は、プログラムが各コマンドを完了するまで待つ「実行遮断」パラダイムで編成される。これは、特にインキュベーション時間中に、競合するコマンドがシステムに同時に作用することを防ぐための好都合で堅牢な方法を提供し、これは、割り当てられた時間だけプログラムの実行を遮断することができる。このパラダイムでは、試薬の添加および除去、ならびにインキュベーション時間を含むCISITSプロトコルを通じての進行は、スクリプトのようなプログラムの実行後に厳密に順次に行われる。試薬の複数の洗浄または添加は、すべてのループのためのプログラム内で発生し、これらは、配列決定ラウンドにわたってプログラム内のループに要約される。
【0182】
CISITSソフトウェア方法の別の例では、並列試料の配列決定制御は、マルチスレッド用途として実行され、個々の処理スレッドは、配列決定ハードウェア上のロックを取得し、試料ウェル当たり1スレッドで必要な配列決定ステップを非同期的に実行する。この作動モードでは、画像化および流体の動きが同時に起こり得る。別の例では、スレッドは非同期的に作動するが、配列決定動作のタイミングを最適化し、化学における厳密なインキュベーション時間の制約を満たすように通信する。
【0183】
CISITSソフトウェア方法の別の例では、配列決定は、状態に依存する事象ループパラダイムで行われ、配列決定モジュールは、一連の状態を通る進行を記述し、いくつかの状態は並行して発生してもよく、事象ループは、システムの状態、状態フローにおけるプログラムの位置、およびシステム構成要素の可用性状態に従って、この進行を実行する。このパラダイムは、すべての試料が配列決定の段階で絶対的に同期されていない、複数の試料にわたる配列決定装置の相互的または並列作動に特に適している。例えば、試料インキュベーションコマンドは、タイマーが設定され、所与の試料について確認されるように実行してもよく、タイマーが完了すると、プログラムはその試料とともに継続してもよい。しかしながら、その間、ポンプまたはバルブの状態は、第1の試料がインキュベーションしている間、他の試料上で作動するために利用可能であり、命令されてもよい。
【0184】
配列決定モジュールは、流体の適切な移動または偶発的な流出など、配列決定装置ハー
ドウェアによって伝達される配列決定装置の名目上作動に関する確認を含み、必要に応じて配列決定プロトコルのさらなる実行を遮断する。また、配列決定モジュールは、タイムスタンプとともにその動作をログファイルに記録し、ダッシュボードがプロセス情報をシステム状況および進捗に解析することができる形式で情報を提供する。配列決定ループまたは事象ループはまた、配列決定スレッドに通信するインターフェースファイルについての確認を含み、配列決定は一時停止または停止される必要がある。一時停止の場合、配列決定モジュールは、数秒ごとに一時停止ファイルの継続的な存在を確認し、もはや見つからない場合は配列決定を進める。停止インターフェースファイルの場合、配列決定モジュールは停止が検出されたことをログに報告し、デバイスをリセットし、終了する。概して、配列決定装置が作動を開始すると、実行中であることを示すファイルを書き込み、作動を完了するか存在すると、そのファイルを削除する。
【0185】
最後に、配列決定モジュールおよびCISITSを実行するためのそのコマンドは、高レベルのグラフィカルユーザインターフェースによってラップされる。配列決定装置が既に使用されていない場合、ユーザインターフェースは、独立したプログラムスレッドとして配列決定(または洗浄)モジュールを実行することができる。配列決定プログレスダッシュボードスレッドおよびデータ管理スレッドを含む追加のスレッドがまだ実行されていない場合は、このインターフェースによって自動的に起動できる。
【0186】
CISITS配列決定装置動作のパラメータを指定するためのソフトウェア方法
CISITS制御ソフトウェアの配列決定モジュールは、組み合わせまたは連続的配列決定などの所与の配列決定プロトコルに特有の設定によってパラメータ化される。本方法は、異なる配列決定方法のための仕様ファイルが、配列決定装置モジュールのコマンドを完全にパラメータ化するように設計される。既定設定は、配列決定装置の自動実行に十分な堅牢性を提供するが、ユーザインターフェースは、これらの設定を変更および保存することができる高度なモードを提供する。主な配列決定法からパラメータを分離したこのモデルは、パラメータの記録、再現性および再利用を可能にし、ソフトウェアを共通の配列決定モジュールに簡素化する。
【0187】
配列決定のグラフィカルユーザインターフェース制御のためのソフトウェア方法
グラフィカルユーザインターフェース(GUI)は、ユーザとCISITS配列決定装置との間の主要インターフェースである。実行時に配列決定装置の状況を表示し、配列決定装置の作動を一時停止または停止するためのボタンを提供する。配列決定モジュールは、別個のスレッド上で実行されている間、配列決定が一時停止されるべきか、または完全に停止されるべきかを示すそのディレクトリ内のファイルを繰り返し確認し、配列決定が開始されると別様に独立しているユーザインターフェーススレッドと配列決定スレッドとの間の通信を可能にする。配列決定または洗浄が進行していない場合、GUIは、新しい配列決定実行を開始するためのボタンおよび新しい洗浄実行を開始するためのボタンを提供する。これはまた、最後のCISITS配列決定の実行が実施されてからの経過時間に基づいて、洗浄を実施する必要があるか否かを示す。洗浄が開始される(洗浄ボタンが押される)と、GUIは、洗浄試薬トレイを配置し、試料容器を配列決定装置内に洗浄するためのメッセージをユーザに表示する。ユーザがこれらが所定の位置にあることを確認するボタンを押すと、洗浄サイクルが進み、ユーザに任意の誤差のGUI上で通知される。配列決定が開始される(配列決定ボタンが押される)と、ユーザには、実験名のテキスト入力ボックス、組み合わせ配列決定または連続的配列決定のいずれかを選択するためのドロップダウンリスト、および実施するラウンド数を示すドロップダウンリストが提供される。ユーザは、ボタンをクリックして、組み合わせまたは連続的配列決定の既定配列決定パラメータを示すテキスト入力ボックスを含む詳細オプションを表示することもでき、保存されたパラメータファイルからパラメータを読み込むことができ、異なる値とファイル名とを入力して、新しいカスタム配列決定パラメータのセットを保存することができる。
ユーザは、クラウドストレージへの自動転送を設定するオプションを含む、データを転送するディレクトリまたは場所を設定できる。GUIに関連情報を入力した後、続行ボタンを押して配列決定を開始するか、キャンセルボタンを押してホーム画面に戻る。スタートボタンを押すと、GUIは流体システムへのインターフェースオブジェクトを短時間開き、冷却器が既に十分に冷たいか否かを確認し、冷却器がまだ冷たくない場合は、流体システムへの接続を解除する前に冷却を開始する。次に、GUIは、画像化パラメータの設定および試薬の機械への充填を含む、配列決定設定手順の残りを通じて、次の画面にユーザを指示する。最後に、開始ボタンを押して配列決定動作を開始することができ、配列決定モジュールは、入力されたまたは選択されたパラメータを有するスレッドとして呼び出され、その時点で、GUIは、ローカルサーバスレッドがネットワークアクセス可能配列決定装置状況ダッシュボードを提供するために実行されていること、およびデータ転送スレッドが実行されていることを保証する。主要な配列決定動作および予備洗浄を完了した後、GUIは、試料容器を洗浄試料容器と交換するメッセージをユーザに伝達し、続行ボタンをクリックすると、配列決定装置の最終洗浄サイクルが実施される。
【0188】
システム状況ダッシュボードの新しいソフトウェア方法
CISITSソフトウェアによる配列決定の初期化は、ローカルネットワークを介してアクセス可能な配列決定装置コンピュータのダッシュボードとして機能するウェブサーバスレッドも起動する。このダッシュボードは、任意の誤差、所与の試料上またはいくつかの試料上での配列決定装置の進行状況を含む配列決定装置の状況を表示する。これには、どのラウンドのCISITSが実施されているか、経過時間、完了までの推定時間、ラウンドからラウンドまでの完了時間に関するデータ、画像取得時間に関するデータ、および品質管理基準が含まれる。これは、例えば、組み合わせ配列決定、区域当たりの視野当たりの第1のラウンドで検出されたドット数の分布、ドットサイズの中央値、カラーチャネルにわたるドットの分布、およびラウンド間の登録距離、例えば、配列決定、例えば、ラウンド内のチャネルにわたるシグナルの相関、またはカラーチャネル内のシグナルのラウンド間の相関に依存する。このダッシュボードへの不審なネットワークアクセスを防ぐために、ダッシュボードではユーザがログインして表示する必要があり、サーバはIPアドレス遮断から受信できるネットワーク要求の数を制限して、取得コンピュータへのサービス拒否攻撃を低減し、ダッシュボードは配列決定装置に対する任意の制御を提供しない。ダッシュボードからのデータは、配列決定装置モジュールによって提供され、配列決定装置モジュールは、例えばログファイル、および外部処理パイプラインを介して保存されたファイルを介して動作および時間を記録し、それらが利用可能になると、配列決定データ上のコンピュータの品質管理データを記録し、品質管理データが取得可能なネットワーク位置をダッシュボードに提供する。
【0189】
CISITSデータの取得および管理のための新しいソフトウェア方法
大区域CISITS配列決定ラウンド、多数の配列決定ラウンド、および複数試料または複数チャンバ並列配列決定はすべて、大型ハードドライブの大部分を満たすことができる、試料当たり配列決定1ラウンド当たりのデータを産生する。例えば、CISITS試料の関心領域の単一のタイル顕微鏡取得は、数百ギガバイト~数テラバイトの範囲であり得る。したがって、ソフトウェア方法は、データを取得ハードドライブから積極的に、非常に大きなローカルストレージドライブプール上に、または大規模な緩衝液ドライブ上に、続いて後続の下流処理のために大規模なネットワークストレージドライブまたはクラウドストレージ上に移動させることが不可欠である。これらのソフトウェア方法は、利用可能なデータを確認し、取得ドライブからそれらを移動してストレージ先に移動する独立したスレッドとして実行することがでる。データを適切に管理できないと、取得ドライブ上のスペースが急速に失われ、配列決定が停止する可能性があるため、これらの方法は、大規模かつハイスループットの配列決定に不可欠である。
【0190】
顕微鏡プラットフォームとの統合のための新しいソフトウェア方法
CISITSソフトウェア方法は、流体システム作動を顕微鏡プラットフォームの作動と統合する。いくつかの例では、顕微鏡プラットフォームは、独立した画像取得GUIを提供し、これは、所望の画像化パラメータ、視野、タイル、および位置を設定するために使用され得、配列決定ソフトウェアモジュールからの連続、TTL、REST、または他のAPIコマンドによって引き起こされるか、または開始される。この場合、配列決定モジュールは、画像取得ソフトウェアと自動的に通信して、配列決定化学プロトコル内の正しい時間にユーザが指定した画像プロトコルを開始し、後続の画像取得または手順を開始する前に、その試料の取得が完了することを待つ。代替的に、並列試料ウェル作動の場合と同様に、ソフトウェアは、新しいキューに入れられた取得を開始する前に、進行中の取得の完了状況について定期的に画像取得ソフトウェアを照会しながら、画像取得を開始し、他の試料上の他の流体操作を進め得る。他の例では、特に、顕微鏡プラットフォームが流体システムにより直接的に統合される場合、CISITSソフトウェア自体は、配列決定が開始される前に、ユーザが所望の画像取得パラメータを設定するために十分な顕微鏡機能をGUI内に統合する。この場合、顕微鏡機能は、外部顕微鏡制御およびインターフェースライブラリ、例えばマイクロマネージャをラップすることによって、または顕微鏡システムの取得ソフトウェアと直接統合することによって、CISITSソフトウェアによって直接実装される。顕微鏡プラットフォームとの最小限のCISITSソフトウェア統合には、取得ファイル名のプレ修正の設定、顕微鏡システムでの保存された画像化プロトコルの実行、取得の完了状況の取得、複数の試料ウェルにわたる配列決定装置の並列操作、ステージ位置の取得と設定が含まれる。複数の試料領域にわたる配列決定を制御するCISITSソフトウェアにより、ユーザは、画像化される各異なる領域の開始位置を指定し、それらの領域を並列ウェル配列決定または単一のチャンバ内で連続的に画像化される複数の位置に結び付けることができる。これは、ソフトウェアが顕微鏡システムにステージ位置を照会し、所与の試料の取得開始位置のリスト、または外部リストが異なる平行順序の試料チャンバである取得開始位置のリストとしてステージ位置を保存する画像化設定中に達成される。
【0191】
用途
実験室規模から臨床規模および工業規模へのインサイチュ核酸配列決定技法を本明細書に記載する。これらの技法の試料型には、培養された細胞の層、培養されたオルガノイド、または培養されたオルガノイドの切片、ならびに動物生検試料または死後の動物組織が含まれ得る。これは、これらの試料中の標的遺伝子の空間的位置、発現された遺伝子のパターンまたはマーカー遺伝子の存在に基づく細胞の遺伝的「同一性」または「型」、細胞または組織内の解剖学的または機能的マーカーなどの外因性遺伝子の位置、実験条件にわたるRNA発現の変化を記録するために使用することができ、遺伝子スクリーニングまたは工学スクリーニングで使用されることを含む、他の直交マーカーを発現する細胞中の遺伝子の空間的発現を同定することができる。
【0192】
既存の方法、デバイス、または材料に対する利点および改善点
CISITSは、前述のSTARmap法と比較して、SNRおよびプロセスの堅牢性に対する化学的改善、ならびにスループットおよび堅牢性に対する自動化(ハードウェアおよびソフトウェア)の改善を組み合わせて、改善された堅牢性およびハイスループットな無傷の組織の配列決定を可能にする。
【0193】
連邦政府による資金提供を受けた研究または開発の記載
本発明は、Defense Advanced Research Projects
Agencyによって授与された契約W911NF-14-2-0013ならびにNational Institutes of Healthによって授与された契約DA042012およびMH075957の下で政府の支援を受けて作製された。米国政府は
本発明に特定の権利を有する。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7-1】
図7-2】
図8