(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-03
(45)【発行日】2025-07-11
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/17 20160101AFI20250704BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20250704BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20250704BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20250704BHJP
F02D 9/02 20060101ALI20250704BHJP
F02D 41/06 20060101ALI20250704BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20250704BHJP
【FI】
B60W20/17 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60K6/46
F02D9/02 305A
F02D41/06
F02D45/00 364D
(21)【出願番号】P 2023010411
(22)【出願日】2023-01-26
【審査請求日】2024-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木山 栄嗣
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-054200(JP,A)
【文献】特開2010-223056(JP,A)
【文献】特開2000-120455(JP,A)
【文献】特開2022-064742(JP,A)
【文献】特開2016-117451(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0153377(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 ー 20/50
B60K 6/20 - 6/547
F02D 9/02
F02D 41/06
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン、前記エンジンの出力が伝達される発電モータ、前記エンジンの吸気圧を取得する検出器を搭載したハイブリッド車両に用いられる制御装置であって、
モータリング運転からファイアリング運転に切り替える場合、前記吸気圧が目標に対応する吸気圧を示す第1閾値以下の場合、前記吸気圧が前記第1閾値を上回る、または、第1所定時間を経過するまで、スロットルバルブに対して第1所定量の開度を開くように制御を行う制御部と、
を備え
、
前記制御部は、前記吸気圧が前記第1閾値よりも高い第2閾値以下の場合、前記吸気圧が前記第2閾値を上回る、または、前記第1所定時間よりも長い第2所定時間を経過後に、前記エンジンに対して燃料を噴射するように制御を行う、
ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記モータリング運転は、余剰消費モータリング運転であり、
前記スロットルバルブの開度は、前記第1所定量よりも低い第2所定量である、
請求項
1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、シリーズ方式のハイブリッドシステムには、エンジンと、エンジンの動力で発電する発電モータと、走行のための駆動力を発生する駆動モータと、駆動モータに供給される電力を蓄える電池とが含まれる。
【0003】
そのハイブリッドシステムを搭載した車両では、駆動モータに要求される出力が電池の出力可能電力より小さいときには、電池からの電力で駆動モータが駆動されて、駆動モータから駆動輪に駆動力が伝達される(EVモード)。一方、駆動モータに要求される出力が電池の出力可能電力を上回るときには、発電モータでエンジンの動力が電力に変換され、発電モータからの電力で駆動モータが駆動されて、駆動モータから駆動輪に駆動力が伝達される(HEVモード)。
【0004】
エンジンの始動時には、電池からの電力が発電モータに供給されて、発電モータが力行運転され、エンジンが発電モータによりモータリングされる。モータリングによりエンジンのクランクシャフトが回転し(クランキング)、その回転数が始動に必要な回転数まで上昇すると、エンジンの点火プラグがスパークされて、エンジンが始動される。
【0005】
エンジンのクランクシャフトにエンジン出力ギヤが設けられ、発電モータの回転軸に発電モータギヤが設けられて、エンジン出力ギヤと発電モータギヤとが噛合することにより、エンジンと発電モータとの間で動力が伝達されるようになっている。そのため、エンジンの始動時に、エンジン出力ギヤの歯と発電モータギヤの歯とが強く衝突し、いわゆる歯打ち音が発生する場合がある。このエンジン始動時の歯打ち音の発生を抑制する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
また、シリーズ方式のハイブリッドシステムでは、例えば、モータリング運転からファイアリング運転に移行する際、吸気圧の状態によらず、即時燃料噴射、点火を行う制御において、吸気圧が低い状態で燃焼を行う場合があり、その場合はエンジン内の燃焼が緩慢になり、エンジン出力ギヤの歯と発電モータギヤの歯打ちに至る場合がある。
【0008】
本発明の目的は、モータリング運転からファイアリング運転に移行する際、エンジンと発電モータを繋ぐギヤ間での歯打ちによる歯打ち音の発生を抑制することができる、ハイブリッド車両の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、エンジン、前記エンジンの出力が伝達される発電モータ、前記エンジンの吸気圧を取得する検出器を搭載したハイブリッド車両に用いられる制御装置であって、モータリング運転からファイアリング運転に切り替える場合、前記吸気圧が目標に対応する吸気圧を示す第1閾値以下の場合、前記吸気圧が前記第1閾値を上回る、または、第1所定時間を経過するまで、スロットルバルブに対して第1所定量の開度を開くように制御を行う制御部と、を備える。前記制御部は、前記吸気圧が前記第1閾値よりも高い第2閾値以下の場合、前記吸気圧が前記第2閾値を上回る、または、前記第1所定時間よりも長い第2所定時間を経過後に、前記エンジンに対して燃料を噴射するように制御を行う。
【0010】
この構成によれば、ハイブリッド車両の制御装置は、吸気圧が目標に対応する吸気圧になるまで、スロットルバルブを第1所定量の開度まで開くため、吸気圧が回復してから燃焼を開始することができる。そのため、エンジン内の燃焼が十分となり、エンジンの回転数が上昇するため、歯打ちを抑制することができる。これにより、ハイブリッド車両の制御装置は、歯打ちによる歯打ち音の発生を抑制することができる。
【0012】
これにより、例えば、モータリング運転からファイアリング運転に切り替える場合、ハイブリッド車両の制御装置は、十分に吸気圧を確保した状態で、エンジンに対して燃料を噴射する。そのため、エンジン内の燃焼が十分となり、エンジンの回転数が上昇するため、歯打ちを抑制することができる。したがって、ハイブリッド車両の制御装置は、歯打ちによる歯打ち音の発生を抑制することができる。
【0013】
さらに、例えば、前記モータリング運転は、余剰消費モータリング運転であり、前記スロットルバルブの開度は、前記第1所定量よりも低い第2所定量であっても良い。そのため、余剰消費モータリングにおいて、吸気圧を確保し、エンジンに対して噴射を開始することで、歯打ちを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、モータリング運転からファイアリング運転に移行する際、エンジンと発電モータを繋ぐギヤ間での歯打ちによる歯打ち音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る制御装置が適用されるハイブリッド車両の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る制御装置における制御動作の流れの一例を示すタイムチャートである。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る制御装置における制御処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
<ハイブリッド車両>
図1は、ハイブリッド車両1の構成を示すブロック図である。
【0018】
ハイブリッド車両1は、シリーズ方式のハイブリッドシステム2を搭載している。ハイブリッドシステム2には、エンジン11、発電モータ(MG1)12、駆動モータ(MG2)13、バッテリ14及びPCU(Power Control Unit:パワーコントロールユニット)15が含まれる。
【0019】
エンジン11は、例えば、ガソリンエンジンである。エンジン11は、スロットルボディや燃料を吸入空気に噴射する燃料インジェクタ等を備えている。スロットルボディは、燃料や空気を取り込み、エンジン11の燃料室に送る部品であり、エンジン11の燃焼室への吸入空気量を調整するための電子スロットルバルブ(以下、単にスロットルバルブともいう)、電子スロットルバルブの開度を検知するスロットルポジションセンサ、停車などのアイドリング時の吸気量を調整するためのコントロールバルブ等を備えている。
【0020】
発電モータ12は、例えば、永久磁石同期モータからなる。発電モータ12の回転軸は、エンジン11のクランクシャフトとギヤ(図示せず)を介して機械的に連結されている。例えば、エンジン11のクランクシャフトにエンジン出力ギヤが相対回転不能に支持され、発電モータ12の回転軸にモータギヤが相対回転不能に支持されて、エンジン出力ギヤとモータギヤとが噛合している。発電モータ12は、エンジン11の出力が伝達される。
【0021】
駆動モータ13は、例えば、発電モータ12よりも大型の永久磁石同期モータからなる。駆動モータ13の回転軸は、ハイブリッド車両1の駆動系16に連結されている。駆動系16には、デファレンシャルギヤが含まれており、駆動モータ13の動力は、デファレンシャルギヤに伝達され、デファレンシャルギヤから左右の前輪または後輪からなる駆動輪17に分配されて伝達される。これにより、左右の駆動輪17が回転し、ハイブリッド車両1が前進または後進する。
【0022】
バッテリ14は、複数の二次電池を組み合わせた組電池である。二次電池は、例えば、リチウムイオン電池である。バッテリ14は、例えば、約200~350V(ボルト)の直流電力を出力する。
【0023】
PCU15は、発電モータ12及び駆動モータ13の駆動を制御するためのユニットであり、第1インバータ21、第2インバータ22及びコンバータ23を備えている。
【0024】
エンジン11の始動時には、バッテリ14から出力される直流電力がコンバータ23により昇圧されて、昇圧された直流電力が第1インバータ21で交流電力に変換され、交流電力が発電モータ12に供給される。これにより、発電モータ12が力行運転されて、エンジン11が発電モータ12によりモータリング(クランキング)される(モータリング運転)。モータリングによりエンジン11のクランクシャフトの回転数が始動に必要な回転数まで上昇した状態で、エンジン11の点火プラグがスパークされると、エンジン11が始動する。
【0025】
ハイブリッド車両1の走行時には、駆動モータ13が力行運転されて、駆動モータ13が動力を発生する。
【0026】
駆動モータ13に要求される出力がバッテリ14の出力より小さいときには、ハイブリッド車両1がEV走行する。すなわち、エンジン11が停止されて、発電モータ12による発電が行われず、バッテリ14から駆動モータ13に電力が供給されて、その電力で駆動モータ13が駆動される。
【0027】
一方、駆動モータ13に要求される出力がバッテリ14の出力を上回るときには、ハイブリッド車両1がHEV走行する。すなわち、エンジン11が稼動状態にされて、発電モータ12が発電運転(回生運転)されることにより、エンジン11の動力が発電モータ12で交流電力に変換される。そして、発電モータ12からの交流電力が第1インバータ21で直流電力に変換され、第1インバータ21から出力される直流電力が第2インバータ22で交流電力に変換されて、その交流電力が駆動モータ13に供給されることにより、駆動モータ13が駆動される。
【0028】
また、バッテリ14の残容量が所定以下に低下すると、駆動モータ13の駆動/停止にかかわらず、エンジン11に燃料を噴射し、エンジン11が稼動している状態で、発電モータ12が発電運転される(ファイアリング運転)。このとき、発電モータ12からの交流電力が第1インバータ21で直流電力に変換され、第1インバータ21から出力される直流電力がコンバータ23で降圧されて、降圧後の直流電力がバッテリ14に供給されることにより、バッテリ14が充電される。
【0029】
ハイブリッド車両1の減速時には、駆動モータ13が回生運転されて、駆動輪17から駆動モータ13に伝達される動力が交流電力に変換される。このとき、駆動モータ13が走行駆動系の抵抗となり、その抵抗がハイブリッド車両1を制動する制動力(回生制動力)として作用する。このとき、PCU15では、駆動モータ13から第2インバータ22に供給される交流電力が第2インバータ22で直流電力に変換され、第2インバータ22から出力される直流電力がコンバータ23で降圧される。そして、その降圧後の直流電力がバッテリ14に供給されることにより、バッテリ14が充電される。
【0030】
ハイブリッド車両1には、複数のECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)が搭載されている。各ECUは、マイコン(マイクロコントローラユニット)を備えており、マイコンには、例えば、CPU、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリ及びDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリが内蔵されている。
【0031】
複数のECUは、CAN(Controller Area Network)通信プロトコルによる双方向通信が可能に接続されている。各ECUには、制御に必要な各種センサが接続されており、その接続されたセンサの検出信号が入力される。また、各ECUには、各種センサから入力される検出信号以外に制御に必要な情報が他のECUから入力される。
【0032】
図1には、複数のECUのうち、ハイブリッドシステム2を制御するECU31及びECU32が示されている。ECU31及びECU32を含むECU30は、ハイブリッド車両1の制御装置の一例である。
【0033】
ECU31には、アクセルセンサ33及び車速センサ34が接続されている。アクセルセンサ33は、ドライバ(運転者)により足踏み操作されるアクセルペダルの操作量に応じた検出信号を出力する。車速センサ34は、ハイブリッド車両1の走行に伴って回転する回転体の回転に同期したパルス信号を検出信号として出力する。
【0034】
また、ECU32には、吸気圧センサ35が接続されている。吸気圧センサ35は、エンジン11の吸気圧を検出し、検出された吸気圧を示す検出信号を出力する。吸気圧センサ35は、検出器の一例である。なお、吸気圧は、ECU32がスロットルボディの開度(スロットル開度)から演算しても良い。
【0035】
ECU31では、アクセルセンサ33の検出信号から、アクセルペダルの最大操作量に対する現在の操作量の割合であるアクセル開度が求められる。また、ECU31では、車速センサ34の検出信号から、その検出信号(パルス信号)の周波数が求められて、その周波数が車速に換算される。
【0036】
ECU32は、取得部、判定部、計時部及び制御部を備える。取得部は、吸気圧センサ35からエンジン11の吸気圧を取得する。判定部は、取得部が取得した吸気圧が目標に対応する吸気圧を示す第1閾値以下かを判定する。また、判定部は、取得部が取得した吸気圧が第1閾値よりも高い第2閾値以下かを判定する。さらに、判定部は、計時部が計時した時間が第1所定時間を経過したかを判定する。また、判定部は、計時部が計時した時間が第2所定時間を経過したかを判定する。
【0037】
計時部は、吸気圧を取得した時刻から予め定められた所定時間を計時する。制御部は、スロットルバルブに対して第1所定量の開度を開くように制御を行う。また、制御部は、スロットルバルブに対して閉じるように制御を行う。さらに、制御部は、燃料インジェクタ(エンジン)に対して、燃料を噴射するように制御を行う。なお、ECU32が備える機能はこれに限定されない。
【0038】
ここで、
図2を用いて、ECU32における制御動作の流れについて説明する。
図2は、制御装置における制御動作の流れの一例を示すタイムチャートである。
図2に示すタイミングチャートは、ハイブリッドシステム2において、モータリング運転からファイアリング運転に切り替える場合のタイミングチャートである。
【0039】
ハイブリッドシステム2において、モータリング運転からファイアリング運転に切り替える場合は、例えば、ユーザの操作により、ハイブリッド車両1の空調が暖房要求された場合である。なお、モータリング運転からファイアリング運転への切り替え動作について、これに限定されない。
【0040】
図2に示すタイミングチャートは、横軸を時間Tとし、縦軸は、運転状態、吸気圧力、スロットル開度、燃料噴射状態についてそれぞれ示している。
図2において、燃料噴射状態は、例えば、燃料を噴射していない(フューエルカット)状態及び燃料を噴射している状態を示す。
【0041】
まず、ハイブリッドシステム2において、モータリング運転からファイアリング運転に切り替える場合、ECU32の取得部は、吸気圧センサ35からエンジン11の吸気圧を取得する。そして、ECU32の制御部は、取得部が取得した吸気圧が目標に対応する吸気圧を示す第1閾値Th1以下の場合、吸気圧が第1閾値Th1を上回る、または、第1所定時間T1を経過するまで、スロットルバルブに対して第1所定量P1の開度を開くように制御を行う。
【0042】
また、ECU32の制御部は、吸気圧が第1閾値Th1よりも高い第2閾値Th2以下の場合、吸気圧が第2閾値Th2を上回る、または、第1所定時間T1とは異なる第2所定時間T2を経過後に、燃料インジェクタ(エンジン)に対して、燃料を噴射するように制御を行う。第2所定時間T2は、例えば、第1所定時間T1よりも長い時間である。
【0043】
また、
図2におけるモータリング運転は、余剰消費モータリング運転である。余剰消費モータリング運転とは、バッテリ14の容量が既に満充電状態であり、回生制動により得られる電力を敢えて発電モータ12に供給し、発電モータ12を電動機として作動させてエンジン11を回転駆動するモータリングを行うことで、余剰の電力を消費する運転である。また、余剰消費モータリング運転時におけるスロットルバルブの開度は、第1所定量P1よりも低い第2所定量P2である。
【0044】
次に、
図3を用いて、ECU32における制御処理の流れについて説明する。
図3は、制御装置における制御処理の一例を示すフローチャートである。なお、
図3に示すフローチャートは、ハイブリッドシステム2において、モータリング運転からファイアリング運転に切り替える場合のフローチャートである。
【0045】
ECU32の取得部は、吸気圧センサ35からエンジン11の吸気圧を取得する(ステップS31)。また、ECU32の計時部は、吸気圧を取得した時刻を基準として、計時を開始する。続いて、ECU32の判定部は、取得部が取得した吸気圧が目標に対応する吸気圧を示す第1閾値Th1以下かを判定する(ステップS32)。ここで、ECU32の判定部が取得した吸気圧が第1閾値Th1を上回ると判定する場合(ステップS32:No)、ステップS38へ進む。他方で、ECU32の判定部が取得した吸気圧が第1閾値Th1を以下であると判定する場合(ステップS32:Yes)、ステップS33へ進む。
【0046】
ステップS33において、ECU32の制御部は、スロットルバルブに対して第1所定量P1の開度を開くように制御を行う(ステップS33)。続いて、ECU32の取得部は、吸気圧センサ35からエンジン11の吸気圧を取得する(ステップS34)。続いて、ECU32の判定部は、取得部が取得した吸気圧が目標に対応する吸気圧を示す第1閾値Th1以下かを判定する(ステップS35)。
【0047】
ここで、ECU32の判定部が取得した吸気圧が第1閾値Th1を上回ると判定する場合(ステップS35:No)、ステップS38へ進む。他方で、ECU32の判定部が取得した吸気圧が第1閾値Th1を以下であると判定する場合(ステップS35:Yes)、ステップS36へ進む。
【0048】
ステップS36において、ECU32の判定部は、計時部により計時された時間が第1所定時間T1を経過したかを判定する(ステップS36)。ここで、ECU32の判定部が計時部により計時された時間が第1所定時間T1を経過していないと判定する(ステップS36:No)と、ステップS34へ戻る。他方で、ECU32の判定部は、計時部により計時された時間が第1所定時間T1を経過したと判定する(ステップS36:Yes)と、ステップS37へ進む。ステップS37において、ECU32の制御部は、スロットルバルブに対して閉じるように制御を行う(ステップS37)。
【0049】
続いて、ECU32の判定部は、取得部が取得した吸気圧が第1閾値Th1よりも高い第2閾値Th2以下かを判定する(ステップS38)。ここで、ECU32の判定部が取得した吸気圧が第2閾値Th2を上回ると判定する場合(ステップS38:No)、ステップS41へ進む。他方で、ECU32の判定部が取得した吸気圧が第2閾値Th2を以下であると判定する場合(ステップS38:Yes)、ステップS39へ進む。
【0050】
ステップS39において、ECU32の判定部は、計時部により計時された時間が第1所定時間T1とは異なる第2所定時間T2を経過したかを判定する(ステップS39)。ここで、ECU32の判定部が計時部により計時された時間が第2所定時間T2を経過していないと判定する(ステップS39:No)と、ステップS40へ進む。他方で、ECU32の判定部は、計時部により計時された時間が第2所定時間T2を経過したと判定する(ステップS39:Yes)と、ステップS41へ進む。
【0051】
ステップS40において、ECU32の取得部は、吸気圧センサ35からエンジン11の吸気圧を取得する(ステップS40)。ステップS41において、ECU32の制御部は、エンジン11に対して燃料を噴射するように制御を行う(ステップS41)。ステップS41が終了すると、本処理は終了する。
【0052】
<本実施形態の作用効果>
以上説明したように、本実施形態に係るハイブリッド車両1の制御装置は、モータリング運転からファイアリング運転に切り替える場合、吸気圧が目標に対応する吸気圧を示す第1閾値Th1以下の場合、吸気圧が第1閾値Th1を上回る、または、第1所定時間T1を経過するまで、スロットルバルブに対して第1所定量P1の開度を開くように制御を行う。
【0053】
そのため、本発明によれば、ハイブリッド車両1の制御装置は、目標に対応する吸気圧になるまで、スロットルバルブを第1所定量P1の開度まで開くため、吸気圧が回復してから燃焼を開始することができる。これにより、エンジン内の燃焼が十分となり、エンジン11の回転数が上昇するため、歯打ちを抑制することができる。したがって、ハイブリッド車両1の制御装置は、歯打ちによる歯打ち音の発生を抑制することができる。
【0054】
また、エンジン11に対し、燃料を噴射開始前に予めスロットルバルブを開くことで、燃料噴射に至るまでの時間遅れも低減でき、システム要求に対する遅れを削減し、例えば、発電遅れによる加速影響を抑制することができる。
【0055】
さらに、吸気圧が第1閾値Th1よりも高い第2閾値Th2以下の場合、吸気圧が第2閾値Th2を上回る、または、第1所定時間T1とは異なる第2所定時間T2を経過後に、エンジン11に対して燃料を噴射するように制御を行う。
【0056】
そのため、本発明によれば、ハイブリッド車両1の制御装置は、十分に吸気圧を確保した状態で、エンジン11に対して燃料を噴射する。これにより、エンジン内の燃焼が十分となり、エンジン11の回転数が上昇するため、歯打ちを抑制することができる。したがって、ハイブリッド車両1の制御装置は、歯打ちによる歯打ち音の発生を抑制することができる。
【0057】
また、モータリング運転は、余剰消費モータリング運転であり、スロットルバルブの開度は、第1所定量P1よりも低い第2所定量P2である。そのため、本発明によれば、余剰消費モータリングにおいて、吸気圧を確保し、エンジン11に対して噴射を開始することで、歯打ちを抑制することができる。
【0058】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0059】
例えば、上述の実施形態では、ファイアリング運転状態において、吸気圧を高めるために、スロットルバルブに対して第1所定量P1の開度を開くように制御を行う形態について説明した。変形例では、モータリング運転状態においても、吸気圧を高めるために、スロットルバルブに対して第1所定量P1の開度を開くように制御を行っても良い。モータリング運転時から吸気圧を高めることで、ファイアリング運転時におけるエンジン内の燃焼が十分となり、エンジン11の回転数が上昇するため、歯打ちを抑制することができる。
【0060】
なお、本実施形態はシリーズ方式のハイブリッドシステム2で適用する制御装置について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、車両に動力分割機構を設け、エンジンとモータの両方を動力源とするシリーズ・パラレル方式のハイブリッドシステムや、エンジンの補助モータ(例えば、ISG(Integrated Starter Generator))として利用するマイルド方式のハイブリッドシステム及びパラレル方式のハイブリッドシステム等に適用することができる。
【0061】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上述した実施の形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、この実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1 :ハイブリッド車両
11 :エンジン
12 :発電モータ
13 :駆動モータ
14 :バッテリ(電池)
15 :PCU
32 :ECU(制御装置、取得部、判定部、計時部)