(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-03
(45)【発行日】2025-07-11
(54)【発明の名称】熱交換器、この熱交換器の製造方法およびこの熱交換器を備えた冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F28D 1/053 20060101AFI20250704BHJP
F28F 1/02 20060101ALI20250704BHJP
F28F 9/02 20060101ALI20250704BHJP
【FI】
F28D1/053 A
F28F1/02 B
F28F9/02 301Z
(21)【出願番号】P 2024517469
(86)(22)【出願日】2023-05-22
(86)【国際出願番号】 JP2023018916
(87)【国際公開番号】W WO2024241417
(87)【国際公開日】2024-11-28
【審査請求日】2024-03-19
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾中 洋次
(72)【発明者】
【氏名】足立 理人
(72)【発明者】
【氏名】岸田 七海
(72)【発明者】
【氏名】中島 崇志
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-060130(JP,A)
【文献】特開2007-093144(JP,A)
【文献】特開2005-037113(JP,A)
【文献】特開平11-044498(JP,A)
【文献】特開2005-090806(JP,A)
【文献】特開平02-230091(JP,A)
【文献】特表2005-524820(JP,A)
【文献】特開2010-065989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/053
F28F 1/02
F28F 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延伸し外形形状が扁平状に形成され、貫通孔で形成された複数の冷媒流路を有する複数の扁平管と、前記複数の扁平管の前記上下方向の両端部に接続され、上方から見てL字状のL曲げ部を有する一対のヘッダと、を備え、屋外または屋内の装置に搭載される熱交換器であって、
前記複数の扁平管のそれぞれは、管軸方向に垂直な垂直断面において長軸と短軸とを有する形状であり、
前記複数の扁平管のうち、少なくとも前記L曲げ部に接続された1または2以上の扁平管のそれぞれは、
前記垂直断面における前記長軸に沿う長軸方向の両端部ほど肉厚が大きく、前記長軸方向の中心部ほど肉厚が小さ
く、
前記垂直断面において、
前記長軸方向の中心を通る線を中心線、
前記複数の冷媒流路の前記短軸に沿う短軸方向の両端のそれぞれを通る一対の線を一対の短軸流路端仮想線、
前記一対の短軸流路端仮想線よりも内側であって、前記複数の冷媒流路同士の間の部分を内柱というとき、
前記1または2以上の扁平管のそれぞれは、
前記内柱を複数有し、
前記複数の内柱のうち、前記中心線に最も近い前記内柱の前記長軸方向の肉厚δ
1
と、前記複数の内柱のうち、前記中心線から最も遠い前記内柱の前記長軸方向の肉厚δ
2
とが、δ
2
>δ
1
の関係を有し、
前記1または2以上の扁平管のそれぞれは、
前記複数の内柱において、隣接する前記内柱の前記長軸方向の中心同士の幅が前記長軸方向の中心部から外側に向かうに連れて短い熱交換器。
【請求項2】
前記1または2以上の扁平管は、
前記垂直断面において、
前記長軸方向の前記両端部ほど前記肉厚が大きく、前記長軸方向の中心部に向かうに連れて次第に前記肉厚が小さくなっている請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
前記垂直断面において、
前記複数の冷媒流路の前記長軸方向の両端のそれぞれを通る一対の線を一対の長軸流路端仮想線、
前記一対の短軸流路端仮想線よりも内側であって、前記一対の長軸流路端仮想線よりも外側の部分を第1外柱というとき、
前記1または2以上の扁平管のそれぞれは、
前記肉厚δ
1と、前記肉厚δ
2と、前記第1外柱の前記長軸方向の肉厚t
xとが、t
x≧δ
2>δ
1の関係を有する請求項
1または請求項2記載の熱交換器。
【請求項4】
前記垂直断面において、
前記一対の短軸流路端仮想線よりも外側の部分を第2外柱というとき、
前記1または2以上の扁平管のそれぞれは、
前記肉厚δ
1と、前記肉厚δ
2と、前記第2外柱の前記短軸方向の肉厚t
yとが、δ
2>δ
1>t
yの関係を有する請求項
1または請求項2記載の熱交換器。
【請求項5】
前記垂直断面において、
前記長軸方向の中心を通る線を中心線、前記長軸方向の両端をそれぞれ通過し、前記中心線に平行な一対の線を一対の外端仮想線、前記中心線と前記一対の外端仮想線のそれぞれとの中心を通る一対の線を一対の中心仮想線、前記複数の冷媒流路の前記短軸に沿う短軸方向の両端のそれぞれを通る一対の線を一対の流路端仮想線といい、
前記垂直断面を、
前記一対の中心仮想線より内側の中心領域と、
前記一対の中心仮想線より外側の外端領域と、の2つの領域に分けたとき、
前記1または2以上の扁平管のそれぞれは、
前記外端領域において前記一対の流路端仮想線よりも内側の部分の肉厚面積Aoが、
前記中心領域において前記一対の流路端仮想線よりも内側の部分の肉厚面積Acよりも大きい請求項1または請求項2記載の熱交換器。
【請求項6】
前記垂直断面を、
前記中心線と、前記一対の中心仮想線と、で4つの領域に分けたとき、
前記1または2以上の扁平管のそれぞれは、
前記4つの領域のうち、前記長軸方向の両端の2つの領域の肉厚面積が互いに同じである請求項
5記載の熱交換器。
【請求項7】
前記1または2以上の扁平管のそれぞれは、
前記複数の冷媒流路のうち、前記外端領域に位置する複数の冷媒流路の流路断面積の総和が、前記複数の冷媒流路のうち、前記中心領域に位置する複数の冷媒流路の流路断面積の総和よりも小さい請求項
5記載の熱交換器。
【請求項8】
前記1または2以上の扁平管のそれぞれは、
前記複数の冷媒流路のうち、前記長軸方向の両端の端部冷媒流路が4つの角部にRを設けて湾曲した矩形状を有し、前記端部冷媒流路の周囲がその他の前記冷媒流路の周囲よりも厚肉である請求項1または請求項2記載の熱交換器。
【請求項9】
前記1または2以上の扁平管のそれぞれは、
前記複数の冷媒流路のうち、前記長軸方向の両端の端部冷媒流路がD型形状を有し、前記端部冷媒流路の周囲がその他の前記冷媒流路の周囲よりも厚肉である請求項1または請求項2記載の熱交換器。
【請求項10】
前記1または2以上の扁平管のそれぞれは、
1<δ
2/δ
1の関係を有し、前記L曲げ部の曲げ半径Rが、以下の式(1)を満足する請求項3記載の熱交換器。
【数1】
ここで、
T
w:前記垂直断面において前記扁平管の長軸方向の長さである長軸長さ、
D
p:前記垂直断面において前記扁平管のピッチ間隔。
【請求項11】
前記1または2以上の扁平管のそれぞれは、
2≦δ
2/δ
1の関係を有し、前記L曲げ部の曲げ半径Rが、以下の式(2)を満足する請求項3記載の熱交換器。
【数2】
ここで、
T
w:前記垂直断面において前記扁平管の長軸方向の長さである長軸長さ、
D
p:前記垂直断面において前記扁平管のピッチ間隔。
【請求項12】
上下方向に延伸し外形形状が扁平状に形成され、貫通孔で形成された複数の冷媒流路を有する複数の扁平管と、前記複数の扁平管の前記上下方向の両端部に接続され、上方から見てL字状のL曲げ部を有する一対のヘッダと、を備え、屋外または屋内の装置に搭載される熱交換器であって、
前記複数の扁平管のそれぞれは、管軸方向に垂直な垂直断面において長軸と短軸とを有する形状であり、
前記複数の扁平管のうち、少なくとも前記L曲げ部に接続された1または2以上の扁平管のそれぞれは、
前記垂直断面における前記長軸に沿う長軸方向の両端部ほど肉厚が大きく、前記長軸方向の中心部ほど肉厚が小さく、
前記1または2以上の扁平管のそれぞれは、
前記垂直断面において、前記長軸方向に複数の冷媒流路が並び、前記複数の冷媒流路のうち前記長軸方向の両端の端部冷媒流路の流路断面積が、他の冷媒流路の流路断面積よりも小さい
熱交換器。
【請求項13】
圧縮機と、凝縮器と、減圧器と、蒸発器と、を備え、
前記凝縮器および前記蒸発器の少なくとも一方が、請求項1または請求項2記載の熱交換器で構成されている冷凍サイクル装置。
【請求項14】
上下方向に延伸し外形形状が扁平状に形成され、貫通孔で形成された複数の冷媒流路を有する複数の扁平管と、前記複数の扁平管の前記上下方向の両端部に接続され、上方から見てL字状のL曲げ部を有する一対のヘッダと、を備え、屋外または屋内の装置に搭載される熱交換器の製造方法であって、
前記複数の扁平管のそれぞれは、管軸方向に垂直な垂直断面において長軸と短軸とを有する形状であり、
前記複数の扁平管のうち、少なくとも前記L曲げ部に接続された1または2以上の扁平管のそれぞれは、
前記垂直断面における前記長軸に沿う長軸方向の両端部ほど肉厚が大きく、前記長軸方向の中心部ほど肉厚が小さく形成されているものであり、
前記垂直断面において、
前記長軸方向の中心を通る線を中心線、
前記複数の冷媒流路の前記短軸に沿う短軸方向の両端のそれぞれを通る一対の線を一対の短軸流路端仮想線、
前記一対の短軸流路端仮想線よりも内側であって、前記複数の冷媒流路同士の間の部分を内柱というとき、
前記1または2以上の扁平管のそれぞれは、
前記内柱を複数有し、
前記複数の内柱のうち、前記中心線に最も近い前記内柱の前記長軸方向の肉厚δ
1
と、前記複数の内柱のうち、前記中心線から最も遠い前記内柱の前記長軸方向の肉厚δ
2
とが、δ
2
>δ
1
の関係を有し、
前記1または2以上の扁平管のそれぞれは、
前記複数の内柱において、隣接する前記内柱の前記長軸方向の中心同士の幅が前記長軸方向の中心部から外側に向かうに連れて短く形成されており、
前記複数の扁平管の管軸方向の両端部が前記一対のヘッダのそれぞれに形成された接続口に挿入されて一体化された一体物を形成し、前記一体物のヘッダを曲げ加工によって前記L曲げ部を形成する熱交換器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、扁平管を備えた熱交換器、この熱交換器の製造方法およびこの熱交換器を備えた冷凍サイクル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに間隔をおいて対向する一対のヘッダと、一対のヘッダ間に間隔を空けて配置され且つ管軸方向の両端部が一対のヘッダに接続された複数の扁平管と、を備えた熱交換器がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の熱交換器は、扁平管が延びる方向に見てL字状に構成されており、一対のヘッダはL字状に曲げられたL曲げ部を有している。
【0003】
特許文献1の熱交換器は、一対のヘッダがL字状に曲げられる際に、その曲げ部分においてヘッダと扁平管とのロウ付け部分が破損することを防止する技術を開示している。特許文献1の熱交換器では、扁平管においてヘッダに接続される管軸方向の両端部の外周の大きさを、両端部以外の外周の大きさに比べて大きくし、ロウ付け代を大きく確保することで、ヘッダのL曲げ部と扁平管との接続箇所の強度を確保して破損を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の熱交換器は、扁平管の管軸方向の両端部の外周を両端部以外の外周に比べて大きい構成を有しており、管軸方向において外周が一様ではないため、扁平管自体の製造工程が複雑になりがちである。このため、熱交換器は、扁平管の外周、言い換えれば扁平管の外形を管軸方向に一様な構成でありつつ、接続箇所の強度を上げることが求められる。接続箇所の強度を上げる方法として、扁平管の肉厚を厚くして扁平管の強度を上げる方法が考えられる。しかし、熱交換器は、扁平管の外形寸法を変えずに扁平管を肉厚にするには、扁平管の内部に形成された冷媒流路の流路断面積を小さくしなければならず、冷媒の圧力損失が増加するという問題があった。
【0006】
本開示は上記した問題点を解決するためのものであり、一対のヘッダがL曲げ部を有する熱交換器であって、扁平管の強度を向上しつつ、圧力損失の増加を抑えることが可能な熱交換器、この熱交換器の製造方法およびこの熱交換器を備えた冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る熱交換器は、上下方向に延伸し外形形状が扁平状に形成され、貫通孔で形成された複数の冷媒流路を有する複数の扁平管と、複数の扁平管の上下方向の両端部に接続され、上方から見てL字状のL曲げ部を有する一対のヘッダと、を備え、屋外または屋内の装置に搭載される熱交換器であって、複数の扁平管のそれぞれは、管軸方向に垂直な垂直断面において長軸と短軸とを有する形状であり、複数の扁平管のうち、少なくともL曲げ部に接続された1または2以上の扁平管のそれぞれは、垂直断面における長軸に沿う長軸方向の両端部ほど肉厚が大きく、長軸方向の中心部ほど肉厚が小さく、垂直断面において、長軸方向の中心を通る線を中心線、複数の冷媒流路の短軸に沿う短軸方向の両端のそれぞれを通る一対の線を一対の短軸流路端仮想線、一対の短軸流路端仮想線よりも内側であって、複数の冷媒流路同士の間の部分を内柱というとき、1または2以上の扁平管のそれぞれは、内柱を複数有し、複数の内柱のうち、中心線に最も近い内柱の長軸方向の肉厚δ
1
と、複数の内柱のうち、中心線から最も遠い内柱の長軸方向の肉厚δ
2
とが、δ
2
>δ
1
の関係を有し、1または2以上の扁平管のそれぞれは、複数の内柱において、隣接する内柱の長軸方向の中心同士の幅が長軸方向の中心部から外側に向かうに連れて短いものである。
【0008】
本開示に係る熱交換器の製造方法は、上下方向に延伸し外形形状が扁平状に形成され、貫通孔で形成された複数の冷媒流路を有する複数の扁平管と、複数の扁平管の上下方向の両端部に接続され、上方から見てL字状のL曲げ部を有する一対のヘッダと、を備え、屋外または屋内の装置に搭載される熱交換器の製造方法であって、複数の扁平管のそれぞれは、管軸方向に垂直な垂直断面において長軸と短軸とを有する形状であり、複数の扁平管のうち、少なくともL曲げ部に接続された1または2以上の扁平管のそれぞれは、垂直断面における長軸に沿う長軸方向の両端部ほど肉厚が大きく、長軸方向の中心部ほど肉厚が小さく形成されているものであり、垂直断面において、長軸方向の中心を通る線を中心線、複数の冷媒流路の短軸に沿う短軸方向の両端のそれぞれを通る一対の線を一対の短軸流路端仮想線、一対の短軸流路端仮想線よりも内側であって、複数の冷媒流路同士の間の部分を内柱というとき、1または2以上の扁平管のそれぞれは、内柱を複数有し、複数の内柱のうち、中心線に最も近い内柱の長軸方向の肉厚δ
1
と、複数の内柱のうち、中心線から最も遠い内柱の長軸方向の肉厚δ
2
とが、δ
2
>δ
1
の関係を有し、1または2以上の扁平管のそれぞれは、複数の内柱において、隣接する内柱の長軸方向の中心同士の幅が長軸方向の中心部から外側に向かうに連れて短く形成されており、複数の扁平管の管軸方向の両端部が一対のヘッダのそれぞれに形成された接続口に挿入されて一体化された一体物を形成し、一体物のヘッダを曲げ加工によってL曲げ部を形成するものである。
本開示に係る冷凍サイクル装置は、圧縮機と、凝縮器と、減圧器と、蒸発器と、を備え、凝縮器および蒸発器の少なくとも一方が、上記熱交換器で構成されているものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る熱交換器、この熱交換器の製造方法およびこの熱交換器を備えた冷凍サイクル装置は、少なくともL曲げ部に接続された1または2以上の扁平管のそれぞれが、垂直断面における長軸に沿う長軸方向の両端部ほど肉厚が大きく、長軸方向の中心部ほど肉厚が小さい。垂直断面における長軸に沿う長軸方向の両端部の一方は、一対のヘッダのL曲げ部における曲げ外側に位置している。このため、本開示に係る熱交換器および冷凍サイクル装置は、一対のヘッダのL曲げ部における曲げ外側の扁平管の肉厚を大きくして強度を増すことができ、扁平管の破損を抑制できる。また、本開示に係る熱交換器および冷凍サイクル装置は、扁平管の長軸方向の中心部の肉厚が長軸方向の両端部の肉厚に比べて薄いため、長軸方向の中心部の肉厚を両端部の肉厚と同様に大きくする構成に比べて流路断面積を確保できて圧力損失の増加を抑えることができる。つまり、熱交換器は、扁平管の強度を向上しつつ、圧力損失の増加を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る熱交換器の概略斜視図である。
【
図2】実施の形態1に係る熱交換器の扁平管の構成を示す説明図である。
【
図3】実施の形態1に係る熱交換器の扁平管とヘッダとの接続部分の概略斜視図である。
【
図4】実施の形態1に係る熱交換器におけるヘッダのL曲げ部の拡大平面図である。
【
図5】実施の形態1に係る熱交換器の扁平管の寸法名称の説明図である。
【
図6】実施の形態1に係る熱交換器の扁平管の構成を示す断面図である。
【
図7】実施の形態1に係る熱交換器の扁平管の寸法名称の説明図である。
【
図8】比較例の扁平管において内柱が破断した扁平管の垂直断面を示す図である。
【
図9】実施の形態1に係る熱交換器の製造工程の説明図である。
【
図10】実施の形態2に係る熱交換器の扁平管の垂直断面を示す図である。
【
図11】実施の形態3に係る熱交換器の扁平管の垂直断面を示す図である。
【
図12】ヘッダにおける液冷媒の偏流の説明図である。
【
図13】実施の形態4に係る熱交換器の扁平管の垂直断面を示す図である。
【
図14】実施の形態5に係る熱交換器の扁平管の垂直断面を示す図である。
【
図15】実施の形態6に係る熱交換器の扁平管の垂直断面を示す図である。
【
図16】実施の形態7に係る熱交換器における扁平管の長軸長さT
wと、扁平管のピッチ間隔D
pと、L曲げ部の曲げ可能半径R
0と、の関係を示すグラフである。
【
図17】実施の形態8に係る冷凍サイクル装置の概略構成を示す冷媒回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施の形態により本開示が限定されるものではない。また、
図1を含む以下の図面では、各構成部材の相対的な寸法の関係および形状等が実際のものとは異なる場合がある。また、以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、このことは明細書の全文において共通することとする。なお、以下の説明で用いる、上、下、右、左、前、後、といった用語は、熱交換器を前面側から見た場合の方向を意味している。これら方向に係る用語は、説明の便宜上、そのように記載しているだけであって、装置あるいは部品の配置および向きを限定するものではない。
【0012】
実施の形態1.
[熱交換器100の全体構成]
図1は、実施の形態1に係る熱交換器100の概略斜視図である。
図1の上下方向は、重力方向を表している。実施の形態1に係る熱交換器100は、冷凍サイクル装置の構成要素として用いられ、空気と冷媒との熱交換を行う空気熱交換器である。明細書中において、各構成部材同士の位置関係、各構成部材の延伸方向、および各構成部材の並列方向は、原則として、熱交換器100が使用可能な状態に設置されたときのものである。
【0013】
図1に示すように、熱交換器100は、上下方向に延伸する複数の扁平管10と、複数の扁平管10の延伸方向の両端に配置された一対のヘッダ20と、隣り合う扁平管10同士の間に配置された複数のコルゲートフィン30とを有する。なお、熱交換器100は、コルゲートフィン30を有する構成に限られず、コルゲートフィン30を有さないフィンレス熱交換器でもよいし、複数の扁平管10が貫通する複数のプレートフィンを有するプレート熱交換器でもよい。
【0014】
熱交換器100は、上下方向に見てL字状に形成されており、左右方向に延びる第1熱交換部101と、前後方向に延びる第2熱交換部102と、第1熱交換部101と第2熱交換部102とを接続する第3熱交換部103とを有する。第1熱交換部101、第2熱交換部102および第3熱交換部103のそれぞれは、複数の扁平管10と、一対のヘッダ20の一部と、複数のコルゲートフィン30とを有する。
【0015】
複数の扁平管10のそれぞれは、上下方向に延伸している。複数の扁平管10は、互いに間隔を空けて並列している。複数の扁平管10は、上下方向(管軸方向)の両端部が一対のヘッダ20に差し込まれてろう付けによって接合されている。
【0016】
ヘッダ20は、両端が閉じられた筒状体であり、内部には冷媒が流通する空間が形成されている。ヘッダ20は、
図1の例では、断面形状が矩形状の例を示しているが、矩形状に限らず、円形状または楕円状でもよいし、適宜変更することができる。また、ヘッダ20の構造は、上述した、両端が閉じられた筒状体で構成する以外にも、例えば、スリットが形成された板状体を積層させたものでもよい。また、一対のヘッダ20は、互いに、外形または断面形状が異なる構成でもよい。
【0017】
一方のヘッダ20には、冷媒が流入する流入口20aが設けられ、他方のヘッダ20には、冷媒が流出する流出口20bが設けられている。流入口20aから一方のヘッダ20に流入した冷媒は、複数の扁平管10のそれぞれに分配されて各扁平管10を下端から上端に向かって流れた後、他方のヘッダ20で合流し、流出口20bから流出する。
【0018】
一対のヘッダ20のそれぞれは、上下方向に見てL字状に形成されている。ヘッダ20は、左右方向に延びる第1直線部21と、前後方向に延びる第2直線部22と、第1直線部21と第2直線部22とを接続するL曲げ部23とを有する。
【0019】
図2は、実施の形態1に係る熱交換器100の扁平管10の構成を示す説明図である。
図3は、実施の形態1に係る熱交換器100の扁平管10とヘッダ20との接続部分の概略斜視図である。
図4は、実施の形態1に係る熱交換器100におけるヘッダ20のL曲げ部23の拡大平面図である。
図4には、ヘッダ20と扁平管10との位置関係を示すため、扁平管10の外形を点線で図示している。
図5は、実施の形態1に係る熱交換器100の扁平管10の寸法名称の説明図である。
図2および
図5は、扁平管10の管軸方向に垂直な扁平管10の断面(以下、垂直断面という)を示している。
【0020】
図2に示すように、扁平管10は、長円形状等の一方向に扁平な断面形状を有している。扁平管10は、外形形状が扁平状に構成されており、垂直断面において長軸と短軸とを有する形状である。扁平管10は、後述の中心線L1を中心として対称な構造である。
【0021】
扁平管10は、長軸に沿う長軸方向に沿って延びる一対の長軸辺11と、短軸に沿う短軸方向に沿って延びる一対の短軸辺12と、を有する。扁平管10は、一対の長軸辺11の一方側(
図2の左側)の両端と一対の短軸辺12のうちの短軸辺12aの両端とを接続する一対の湾曲部13を有する。扁平管10は、一対の長軸辺11の他方側(
図2の右側)の両端と一対の短軸辺12のうちの短軸辺12bの両端とを接続する一対の湾曲部14を有する。一対の短軸辺12のうち、短軸辺12aは曲げ外側に位置し、短軸辺12bは曲げ内側に位置している。ここで、曲げ外側とは、
図3および
図4に示すようにヘッダ20のL曲げ部23の曲げ外側に対応し、曲げ内側とはヘッダ20のL曲げ部23の曲げ内側に対応している。
【0022】
扁平管10は、貫通孔で形成された複数の冷媒流路10aを有する扁平多孔管である。複数の冷媒流路10aは、長軸方向に並んで配置されている。なお、図示の例では冷媒流路10aの流路断面形状が矩形状の例を示したが、矩形状に限られたものではなく、円形状など、他の形状でもよい。
【0023】
[用語および各箇所の寸法名称等]
まず、
図2、
図3および
図4を用いて、本明細書で用いる用語について整理する。
【0024】
R1、R2、R3、R4は、扁平管10の垂直断面を、中心線L1と、一対の中心仮想線L3とで4つに分けた各領域である。領域R1、領域R2、領域R3、領域R4は、この順に、曲げ外側から曲げ内側に向かう順である。
【0025】
Rc:扁平管10の垂直断面において一対の中心仮想線L3より内側の領域である中心領域。
Ro:扁平管10の垂直断面において一対の中心仮想線L3より外側の領域である外端領域
なお、
図4において、薄いドット部分が中心領域Rc、濃いドット部分が外端領域Roに対応している。中心領域Rcは、領域R2と領域R3とを有する領域でもある。外端領域Roは、領域R1と領域R4とを有する領域でもある。
【0026】
ここで、
L1:扁平管10の垂直断面において扁平管10の長軸方向の中心を通る線である中心線
L2:扁平管10の垂直断面において扁平管10の長軸方向の両端をそれぞれ通過し、中心線L1に平行な一対の線である一対の外端仮想線
L3:扁平管10の垂直断面において中心線L1と一対の外端仮想線L2のそれぞれとの中心を通る一対の線である一対の中心仮想線
L4:扁平管10の垂直断面において複数の冷媒流路10aの短軸方向の両端のそれぞれを通る一対の線である一対の短軸流路端仮想線
L5:扁平管10の垂直断面において複数の冷媒流路10aの長軸方向の両端を通る一対の線である一対の長軸流路端仮想線
【0027】
扁平管10は、垂直断面で見て、第1外柱15、内柱16および第2外柱17を有し、
図2のドットは、ドットの濃い方から薄い方の順に、第1外柱15、内柱16および第2外柱17を示している。第1外柱15、内柱16および第2外柱17の定義は、以下の通りである。
【0028】
第1外柱15:垂直断面において一対の短軸流路端仮想線L4よりも内側であって、一対の長軸流路端仮想線L5よりも外側の部分
内柱16:垂直断面において一対の短軸流路端仮想線L4よりも内側であって、隣接する冷媒流路10a同士の間の部分
第2外柱17:垂直断面において一対の短軸流路端仮想線L4よりも外側の部分
【0029】
第1外柱15は、長軸方向の両端に2箇所あり、曲げ外側に位置する第1外柱15を第1外柱15a、曲げ内側に位置する第1外柱15を第1外柱15bとして区別する場合がある。
【0030】
次に、
図5を用いて本明細書で用いる各箇所の寸法名称等について整理する。
T
w:垂直断面において扁平管10の長軸方向の長さである長軸長さ
D
p:垂直断面において扁平管10のピッチ間隔
δ
1:複数の内柱16のうち、中心線L1に最も近い内柱16aの長軸方向の肉厚
δ
2:複数の内柱16のうち、中心線L1から最も遠い内柱16bの長軸方向の肉厚
t
x:第1外柱15の長軸方向の肉厚
t
y:第2外柱17の短軸方向の肉厚
なお、L曲げ部23では、ピッチ間隔は曲げ内側と曲げ外側とで異なるため、ピッチ間隔D
pとは、曲げ加工前のピッチ間隔またはL曲げ部23以外の部分におけるピッチ間隔とする。
【0031】
熱交換器100は、扁平管10の冷媒流路10aの流路断面が円形状でもよいとしたが、冷媒流路10aの流路断面が円形状である場合の各寸法は次の
図6および
図7に示す通りである。
【0032】
図6は、実施の形態1に係る熱交換器100の扁平管10の構成を示す断面図である。
図7は、実施の形態1に係る熱交換器100の扁平管10の寸法名称の説明図である。冷媒流路10aの流路断面が矩形状の場合の各寸法は、円形状の場合と略同じであり、ここでは特に説明が必要な寸法についてのみ記載する。
【0033】
δ1:複数の内柱16のうち、中心線L1に最も近い内柱16aの長軸方向の肉厚であって、最も狭い部分の肉厚
δ2:複数の内柱16のうち、中心線L1から最も遠い内柱16bの長軸方向の肉厚であって、最も狭い部分の肉厚
tx:第1外柱15の長軸方向の肉厚であって、最も狭い部分の肉厚
ty:第2外柱17の短軸方向の肉厚であって、最も狭い部分の肉厚
【0034】
ところで、熱交換器100は、ヘッダ20がL曲げ部23を有することで、製造時に扁平管10には、曲げ外側において
図4の矢印aで示すように引き延ばす力が作用し、曲げ内側において
図4の矢印bに示すように圧縮する力が作用する。矢印a方向および矢印b方向は短軸方向である。
【0035】
図8は、比較例の扁平管1000において内柱160が破断した扁平管1000の垂直断面を示す図である。比較例の扁平管1000において、図示の左側が曲げ外側、図示の右側が曲げ内側である。比較例の扁平管1000は、L曲げ部を形成するための曲げ加工の際に、曲げ外側において、矢印a方向(短軸方向)に引き延ばされる力が作用することで、内柱160が破断し、扁平管1000の破損が生じている。また、
図8より、扁平管1000の長軸方向の中心から離れる位置ほど、言い換えれば扁平管1000の長軸方向の中心から離れた両端に近い箇所ほど、短軸方向の変形量が大きく、内柱160に大きな力が加わることがわかる。このため、曲げ加工の際に大きな力が加わる扁平管の長軸方向の両端に近い箇所になるほど内柱の肉厚を大きくしていくことで、流路断面積を確保しつつ、扁平管のL曲げ部に対する強度を向上できることがわかる。
【0036】
そこで、実施の形態1の熱交換器100は、扁平管10が以下の構造を有することで、扁平管10の破損、特に第1外柱15および内柱16の破断を抑制できる。
【0037】
[扁平管10の寸法設定]
扁平管10は、垂直断面における長軸方向の両端部ほど肉厚が大きく、長軸方向の中心部ほど肉厚が小さく形成されている。詳しくは、
図5に示すように、垂直断面における長軸方向の両端部は第1外柱15であり第1外柱15の肉厚t
xは、長軸方向の中心部の肉厚に相当するδ
1よりも大きくなっている。つまり、扁平管10は、t
x>δ
1の関係を有する。なお、「扁平管10は、垂直断面における長軸方向の両端部ほど肉厚が大きく、長軸方向の中心部ほど肉厚が小さい」の表現は、垂直断面における長軸方向の両端部の肉厚が、長軸方向の中心部の肉厚よりも大きければよく、垂直断面における長軸方向の両端部と中心部との間の複数の肉厚同士に同じ部分がある構成を含む。
【0038】
扁平管10は、垂直断面における長軸方向の両端部ほど肉厚が大きく、長軸方向の中心部ほど肉厚が小さく形成されていればよい。このため、扁平管10は、以下の(1)~(4)の少なくとも1つの構成を有する。
【0039】
(1)扁平管10は、長軸方向の両端部の肉厚が最も大きく、長軸方向の中心部に向かうに連れて次第に肉厚が小さい形状を有する。つまり、長軸方向の両端部の第1外柱15の肉厚が最も大きく、長軸方向の中心部に向かうに連れて内柱16の肉厚が徐々に肉厚が小さい形状を有する。
(2)扁平管10は、δ2>δ1の関係を有する。
(3)扁平管10は、tx≧δ2>δ1の関係を有する。
(4)扁平管10は、δ2>δ1>tyの関係を有する。
【0040】
熱交換器100は、扁平管10が上記構成を有することで、L曲げ部23における引き延ばし量が大きくなる曲げ外側の扁平管10の肉厚を大きくして強度を増すことができ、扁平管10の破損を抑制できる。
【0041】
熱交換器は、扁平管の外形寸法を変えずに扁平管の肉厚を全体的に一様に大きくすると、扁平管の破損を抑制できる一方で、冷媒流路の流路断面積を小さくしなければならない。よって、熱交換器は、扁平管の肉厚を全体的に一様に大きく構成すると、扁平管の破損を抑制できる一方で、冷媒の流体損失が大きくなり性能低下を招く。
【0042】
これに対し、熱交換器100は、上記構成を有し、曲げ外側の扁平管10の肉厚を大きくすることで、扁平管10の破損の抑制を可能としつつ、長軸方向の中心部の肉厚は薄いままであるため、流路断面積を確保できて圧力損失の増加を抑えることができる。つまり、熱交換器100は、扁平管10の強度を向上しつつ、圧力損失の増加を抑えることができる。
【0043】
なお、熱交換器100は、複数の扁平管10の全てが上記構成を有していてもよいし、複数の扁平管10のうちの一部が有する構成でもよい。一部の場合、熱交換器100は、一対のヘッダ20のL曲げ部23に接続される1または2以上の扁平管10が上記構成を有していればよい。つまり、熱交換器100は、複数の扁平管10のうち、少なくとも一対のヘッダ20のL曲げ部23に接続される1または2以上の扁平管10が上記構成を有していればよい。
【0044】
[熱交換器100の製造方法]
図9は、実施の形態1に係る熱交換器100の製造工程の説明図である。
図9は、熱交換器100の平面図であり、ヘッダ20と扁平管10との位置関係を示すため、ヘッダ20部分に、扁平管10の外形を点線で図示している。なお、
図9において、冷媒流路10aの図示は省略している。
【0045】
図9(a)は、複数の扁平管10の管軸方向の両端部が、一対のヘッダ20のそれぞれに形成された接続口(図示せず)に挿入され、その状態でロウ付けにより全体が一体化された一体物100Aを示している。その一体物100Aが、
図9(b)に示すようにL曲げ加工されることにより、第1熱交換部101と、第2熱交換部102と、第3熱交換部103とを有する熱交換器100が製造される。
【0046】
上記製造工程により製造された熱交換器100は、少なくともL曲げ部23に接続された扁平管10が上記構成を有するため、扁平管10の破損が抑制されて信頼性の高いものとできる。
【0047】
なお、扁平管10には、製造時に、上述したように曲げ外側において短軸方向に引き延ばす力が作用し、曲げ内側において短軸方向に圧縮する力が作用する。このため、最終的な熱交換器100の完成品は、扁平管10の管軸方向の両端部のヘッダ20との接続部分において、上記構成を有していない場合がある。例えば、最終的な熱交換器100の完成品は、扁平管10の管軸方向の両端部のヘッダ20との接続部分における扁平管10の垂直断面において、長軸方向の両端部の肉厚が、長軸方向の中心部の肉厚と同じである場合がありえる。ただし、最終的な熱交換器100の完成品は、扁平管10の管軸方向の両端部以外の部分では、上記構成を有するものとなる。
【0048】
[実施の形態1の熱交換器100の効果]
実施の形態1の熱交換器100は、上下方向に延伸し外形形状が扁平状に形成され、貫通孔で形成された複数の冷媒流路10aを有する複数の扁平管10と、複数の扁平管10の上下方向の両端部に接続され、上方から見てL字状のL曲げ部23を有する一対のヘッダ20と、を備えている。複数の扁平管10のそれぞれは、管軸方向に垂直な垂直断面において長軸と短軸とを有する形状である。複数の扁平管10のうち、少なくともL曲げ部23に接続された1または2以上の扁平管10は、垂直断面における長軸に沿う長軸方向の両端部ほど肉厚が大きく、長軸方向の中心部ほど肉厚が小さい。
【0049】
上記構成の熱交換器100において、垂直断面における長軸に沿う長軸方向の両端部の一方は、一対のヘッダ20のL曲げ部23における曲げ外側に位置している。このため、上記構成の熱交換器100は、一対のヘッダ20のL曲げ部23における引き延ばし量が大きくなる曲げ外側の扁平管10の肉厚を大きくして強度を増すことができ、扁平管10の破損を抑制できる。また、上記構成の熱交換器100は、扁平管の長軸方向の中心部の肉厚は長軸方向の両端部の肉厚に比べて薄いため、長軸方向の中心部の肉厚を両端部の肉厚と同様に大きくする構成に比べて流路断面積を確保できて圧力損失の増加を抑えることができる。つまり、熱交換器100は、扁平管10の強度を向上しつつ、圧力損失の増加を抑えることができる。
【0050】
1または2以上の扁平管10のそれぞれは、上記(1)~(4)の少なくとも1つの構成を有する。
【0051】
上記構成により、熱交換器100は、一対のヘッダ20のL曲げ部23における引き延ばし量が大きくなる曲げ外側の扁平管10の肉厚を大きくして強度を増すことができ、扁平管10の破損を抑制できる。
【0052】
実施の形態2.
実施の形態2の熱交換器100は、扁平管10の構成が実施の形態1と異なる。上記実施の形態1では、扁平管10の肉厚を特定していた。実施の形態2では、扁平管10の肉厚面積について特定するものである。以下、実施の形態2が実施の形態1と異なる点を中心に説明し、実施の形態2において説明していない構成は、実施の形態1と同様である。
【0053】
図10は、実施の形態2に係る熱交換器100の扁平管10の垂直断面を示す図である。実施の形態2の熱交換器100の扁平管10は、以下の(a)~(b)の少なくとも1つの構成を有する。
(a)扁平管10は、Ao>Acの関係を有する。
(b)扁平管10は、Ao1=Ao2、且つ、Ao>Acの関係を有する。
【0054】
ここで、
Ao:外端領域Roにおいて一対の短軸流路端仮想線L4よりも内側の部分の肉厚面積
Ac:中心領域Rcにおいて一対の短軸流路端仮想線L4よりも内側の部分の肉厚面積
Ao1:領域R1の肉厚面積
Ao2:領域R4の肉厚面積
【0055】
Acは、領域R2および領域R3における、一対の短軸流路端仮想線L4よりも内側の部分の合計の肉厚面積に相当する。Aoは、領域R1および領域R4における、一対の短軸流路端仮想線L4よりも内側の部分の合計の肉厚面積に相当する。
図10において、濃いドットで示した部分の合計面積が肉厚面積Ao、薄いドットで示した部分の合計面積が肉厚面積Acである。
【0056】
上記(b)の条件は、4つの領域R1、R2、R3およびR4のうち、長軸方向の両端の2つの領域である、領域R1の肉厚面積Ao1と領域R4の肉厚面積Ao2とが互いに同じである条件である。この条件は、扁平管10が、垂直断面において例えばくさび形の形状ではなく、中心線L1を中心として外柱17部分が対称または対称に近い形状であることを特定している。
【0057】
[実施の形態2の熱交換器100の効果]
実施の形態2の熱交換器100は、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0058】
実施の形態3.
実施の形態3の熱交換器100は、扁平管10の構成が実施の形態1と異なる。実施の形態3は、扁平管10の冷媒流路10aの流路断面積に関するものである。以下、実施の形態3が実施の形態1と異なる点を中心に説明し、実施の形態3において説明していない構成は、実施の形態1と同様である。
【0059】
図11は、実施の形態3に係る熱交換器100の扁平管10の垂直断面を示す図である。実施の形態3の熱交換器100の扁平管10は、
図11に示すように、外端領域Roに位置する複数の冷媒流路10a2の流路断面積の総和が、中心領域Rcに位置する複数の冷媒流路10a1の流路断面積の総和よりも小さい。
図11において、濃いドットは、外端領域Roに位置する各冷媒流路10a2の流路断面積を示し、薄いドットは、中心領域Rcに位置する各冷媒流路10a1の流路断面積を示している。
【0060】
上記構成により、実施の形態3の熱交換器100は、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0061】
図12は、ヘッダ120における液冷媒の偏流の説明図である。熱交換器では、ヘッダ120に流入した液冷媒が、L曲げ部123において遠心力の影響により偏流し、
図12の点線円で囲った部分のようにL曲げ部123の曲げ外側に過剰に流入することがある。
図12のドットは、L曲げ部123に滞留した液冷媒を示している。
【0062】
実施の形態3の熱交換器100は、扁平管10において、外端領域Roに位置する各冷媒流路10a2の総和が、中心領域Rcに位置する各冷媒流路10a1の流路断面積の総和よりも小さい。このため、熱交換器100は、扁平管10の垂直断面において長軸方向に並んだ複数の冷媒流路10aのうち、曲げ外側の冷媒流路10a2には、長軸方向の中心部の冷媒流路10a1に比べて液冷媒が流入し難くなる。よって、実施の形態3の熱交換器100は、曲げ外側の冷媒流路10a2に液冷媒が過剰に流入することを抑制できる。
【0063】
[実施の形態3の熱交換器100の効果]
実施の形態3の熱交換器100は、実施の形態1と同様の効果を得ることができるとともに、扁平管10において曲げ外側の冷媒流路10a2に液冷媒が過剰に流入することを抑制できる。
【0064】
実施の形態4.
実施の形態4の熱交換器100は、実施の形態3の熱交換器100と同様に扁平管10の冷媒流路10aの流路断面積に関するものである。以下、実施の形態4が実施の形態3と異なる点を中心に説明し、実施の形態4において説明していない構成は、実施の形態3と同様である。
【0065】
図13は、実施の形態4に係る熱交換器100の扁平管10の垂直断面を示す図である。実施の形態4の扁平管10は、隣接する内柱16の長軸方向の中心同士の幅が扁平管10の長軸方向の中心部から外側に向かうに連れて短い構成を有する。詳しくは、
図13において、扁平管10は、隣接する内柱16の長軸方向の中心同士の幅として、幅W1と幅W2とを有し、幅W2は幅W1よりも短くなっている。
【0066】
隣接する内柱16の長軸方向の中心同士の幅が扁平管10の長軸方向の中心部から外側に向かうに連れて短いという構成は、見方を変えれば、冷媒流路10a自体の長軸方向の長さが、扁平管10の長軸方向の中心部から外側に向かうに連れて短い構成と同じである。
図13において、扁平管10は、冷媒流路10a自体の長軸方向の幅として、幅W1aと幅W2aとを有し、幅W2aは幅W1aよりも短くなっている。
【0067】
[実施の形態4の熱交換器100の効果]
実施の形態4の熱交換器100は、実施の形態3と同様の効果を得ることができる。
【0068】
実施の形態5.
実施の形態5の熱交換器100は、扁平管10の構成が実施の形態1と異なる。以下、実施の形態5が実施の形態1と異なる点を中心に説明し、実施の形態5において説明していない構成は、実施の形態1と同様である。
【0069】
図14は、実施の形態5に係る熱交換器100の扁平管10の垂直断面を示す図である。扁平管10は、長軸方向に並んだ複数の冷媒流路10aのうち中心部の冷媒流路10a1が矩形状であり、少なくとも長軸方向の両端の端部冷媒流路10a21が4つの角部にRを設けて湾曲した矩形状を有する。そして、端部冷媒流路10a21の流路断面積は、Rを有することでその他の冷媒流路10aの流路断面積よりも小さく、その分、端部冷媒流路10a21の周囲の肉厚が厚くなっている。つまり、扁平管10は、端部冷媒流路10a21の周囲が、その他の冷媒流路10aの周囲よりも厚肉である。
【0070】
上記構成により、実施の形態5の熱交換器100は、扁平管10の垂直断面において、長軸方向の両端部の肉厚を増やすことができ、扁平管10の破壊強度を向上できる。なお、
図14では、複数の冷媒流路10aのうち、長軸方向の両端の端部冷媒流路10a21のみが、4つの角部にRを設けて湾曲した矩形状を有しているが、端部冷媒流路10a21のみに限られない。他に例えば、熱交換器100は、複数の冷媒流路10aのうち、長軸方向の両端の端部冷媒流路10a21と、その内側の冷媒流路10a3もまた4つの角部にRを設けて湾曲した矩形状を有していてもよい。
【0071】
[実施の形態5の熱交換器100の効果]
実施の形態5の熱交換器100は、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0072】
実施の形態6.
実施の形態6の熱交換器100は、扁平管10の構成が実施の形態1と異なる。以下、実施の形態6が実施の形態1と異なる点を中心に説明し、実施の形態6において説明していない構成は、実施の形態1と同様である。
【0073】
図15は、実施の形態6に係る熱交換器100の扁平管10の垂直断面を示す図である。扁平管10は、長軸方向に並んだ複数の冷媒流路10aのうち中心部の冷媒流路10a1が矩形状であり、少なくとも長軸方向の両端の端部冷媒流路10a21がD型形状を有する。D型形状とは、扁平管10の垂直断面において、長軸方向の外側に凸の湾曲部と湾曲部の両端を結ぶ直線部とを有する形状である。そして、端部冷媒流路10a21の流路断面積は、D型形状を有することでその他の冷媒流路10aの流路断面積よりも小さく、その分、端部冷媒流路10a21の周囲の肉厚が厚くなっている。つまり、扁平管10は、端部冷媒流路10a21の周囲が、その他の冷媒流路10aの周囲よりも厚肉である。
【0074】
上記構成により、実施の形態6の熱交換器100は、扁平管10の垂直断面において、長軸方向の両端の肉厚を増やすことができ、扁平管10の破壊強度を向上できる。なお、
図15では、複数の冷媒流路10aのうち、長軸方向の両端の端部冷媒流路10a21のみが、D型形状を有しているが、端部冷媒流路10a21のみに限られない。他に例えば、熱交換器100は、複数の冷媒流路10aのうち、長軸方向の両端の端部冷媒流路10a21と、その内側の冷媒流路10a3もまたD型形状を有していてもよい。
【0075】
[実施の形態6の熱交換器100の効果]
実施の形態6の熱交換器100は、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0076】
実施の形態7.
実施の形態7の熱交換器100は、扁平管10の破断を抑制できる、扁平管10の長軸長さTw[mm]と、扁平管10のピッチ間隔Dp[mm]と、L曲げ部の曲げ可能半径R0[mm]と、の関係を特定するものである。以下、実施の形態7が実施の形態1と異なる点を中心に説明し、実施の形態7において説明していない構成は、実施の形態1と同様である。
【0077】
図16は、実施の形態7に係る熱交換器100における扁平管10の長軸長さT
wと、L曲げ部23の曲げ可能半径R
0と、の関係を示すグラフである。
図16において横軸は扁平管10の長軸長さT
w[mm]、縦軸はL曲げ部23の曲げ可能半径R
0[mm]を示している。
図16は、δ
2/δ
1が1、2、3、4のそれぞれの場合における、扁平管10の長軸長さT
wに応じた曲げ可能半径R
0を示している。曲げ可能半径R
0とは、扁平管10の破断を抑制できる、L曲げ部23の最小の曲げ半径である。
【0078】
「δ
2/δ
1=1」のグラフは、扁平管10が「δ
2/δ
1=1」の関係を有する場合、扁平管10の長軸長さT
wが30[mm]のとき曲げ可能半径R
0が400[mm]であることを示している。よって、熱交換器100は、扁平管10が「δ
2/δ
1=1」の関係を有する場合、L曲げ部23の曲げ半径Rを、「δ
2/δ
1=1」のグラフで特定される曲げ可能半径R
0よりも大きい値に設定することで、扁平管10の破断を抑制できる。
図16の見方は、他のグラフについても同様である。
【0079】
図16の各グラフは、いずれも以下の(1)式の右辺にδ
2/δ
1の値を代入することにより得られるグラフである。
【0080】
【0081】
熱交換器100は、扁平管10が1<δ2/δ1の関係を有する場合、上記(1)式の関係を満足する。つまり、熱交換器100は、上記(1)の右辺にδ2/δ1=1を代入して得た右辺の値をR1とすると、L曲げ部23の曲げ半径Rは、R>R1を満足する。これにより、熱交換器100は、扁平管10の破断を抑制できる。
【0082】
また、熱交換器100は、扁平管10が2≦δ2/δ1の関係を有する場合、上記(1)式の関係を満足する。つまり、熱交換器100は、上記(1)の右辺にδ2/δ1=2を代入して得た右辺のRの値をR2とすると、L曲げ部23の曲げ半径Rが、R>R2を満足する。これにより、熱交換器100は、扁平管10の破断を抑制できる。
【0083】
[実施の形態7の熱交換器100の効果]
実施の形態7の熱交換器100は、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0084】
実施の形態8.
実施の形態8は、実施の形態1~実施の形態7のいずれかの熱交換器100が搭載される空気調和機などの冷凍サイクル装置に関する。
【0085】
図17は、実施の形態8に係る冷凍サイクル装置300の概略構成を示す冷媒回路図である。冷凍サイクル装置300は、圧縮機200と、吸入マフラ201と、四方切換弁202と、室外側熱交換器203と、電動膨張弁等の減圧器204と、室内側熱交換器205と、が配管で接続された冷媒回路を備えている。室外側熱交換器203および室内側熱交換器205は、四方切換弁202の切り換えにより凝縮器または蒸発器として機能する。冷凍サイクル装置300において四方切換弁202は省略可能である。よって、冷凍サイクル装置300は、圧縮機200と、凝縮器と、減圧器と、蒸発器と、を備えた構成としてもよい。なお、空気調和機では、室内側熱交換器205は屋内の装置に、残る圧縮機200、四方切換弁202、室外側熱交換器203および減圧器204は屋外の装置に搭載されている。
【0086】
圧縮機200は、冷媒を吸入し、その冷媒を圧縮して高温且つ高圧の状態にするものである。圧縮機200は運転周波数を可変させることが可能な容積式圧縮機で構成されている。なお、圧縮機200は運転周波数可変に駆動されるものに限定するものではなく、一定速のものでもよい。四方切換弁202は、圧縮機200の吐出側に接続され、圧縮機200からの冷媒の流れを切り換えるものである。
【0087】
室外側熱交換器203は、冷媒が流れる配管と、配管が挿入されたフィンと、を含んで構成されたフィンチューブ式の熱交換器である。減圧器204は、冷媒を膨張させるものである。減圧器204は、例えば開度を調整できる電子膨張弁または温度式膨張弁等で形成されているが、開度を調整できない毛細管等で構成されてもよい。室内側熱交換器205は、冷媒が流れる配管と、配管が挿入されたフィンと、を含んで構成されたフィンチューブ式の熱交換器である。冷凍サイクル装置300は、室外側熱交換器203および室内側熱交換器205の少なくとも一方に、実施の形態1~実施の形態7のいずれかの熱交換器100が用いられている。
【0088】
冷凍サイクル装置300が空気調和機に適用された場合の暖房運転では、四方切換弁202は
図17の実線側に接続される。圧縮機200で圧縮された高温高圧の冷媒は、室内側熱交換器205に流れ、凝縮し、液化する。液化した冷媒は、減圧器204で減圧され、低温低圧の二相状態となり、室外側熱交換器203へ流れ、蒸発し、ガス化して四方切換弁202を通って再び圧縮機200に戻る。すなわち、
図17の実線矢印に示すように冷媒は循環する。この循環によって、蒸発器である室外側熱交換器203では、冷媒が外気と熱交換して吸熱する。吸熱した冷媒は、凝縮器である室内側熱交換器205に送られ、室内の空気と熱交換を行い、室内の空気を温める。
【0089】
冷房運転では、四方切換弁202は
図17の破線側に接続される。暖房運転から冷房運転に変わると、室内側熱交換器205が凝縮器から蒸発器に変わり、室外側熱交換器203が蒸発器から凝縮器に変わる。圧縮機200で圧縮された高温高圧の冷媒は、室外側熱交換器203に流れ、凝縮し、液化する。液化した冷媒は、減圧器204で減圧され、低温低圧の二相状態となる。低温低圧の二相冷媒は、室内側熱交換器205へ流れ、蒸発し、ガス化し、四方切換弁202を通って再び圧縮機200に戻る。すなわち、
図17の破線矢印に示すように冷媒は循環する。この循環によって、蒸発器である室内側熱交換器205では、冷媒が室内の空気と熱交換して吸熱し、室内の空気を冷却する。吸熱した冷媒は、凝縮器である室外側熱交換器203に送られ、外気と熱交換を行い、外気に放熱する。
【0090】
ここで、冷媒は、R407C冷媒、R410A冷媒またはR32冷媒などが使われる。
【0091】
上記構成の冷凍サイクル装置300は、実施の形態1~実施の形態7のいずれかの熱交換器100を備えることで、扁平管10の強度を向上しつつ、冷媒の圧力損失の増加を抑えることができる。
【0092】
なお、冷凍サイクル装置300は、空気調和機以外にも適用でき、冷蔵庫、冷凍庫、自動販売機、冷凍装置または給湯器等の用途に用いられる冷凍サイクル装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0093】
10 扁平管、10a 冷媒流路、10a1 冷媒流路、10a2 冷媒流路、10a21 端部冷媒流路、10a3 冷媒流路、11 長軸辺、12 短軸辺、12a 短軸辺、12b 短軸辺、13 湾曲部、14 湾曲部、15 第1外柱、15a 第1外柱、15b 第1外柱、16 内柱、16a 内柱、16b 内柱、17 第2外柱、20 ヘッダ、20a 流入口、20b 流出口、21 第1直線部、22 第2直線部、23 部、30 コルゲートフィン、100 熱交換器、100A 一体物、101 第1熱交換部、102 第2熱交換部、103 第3熱交換部、120 ヘッダ、123 L曲げ部、160 内柱、200 圧縮機、201 吸入マフラ、202 四方切換弁、203 室外側熱交換器、204 減圧器、205 室内側熱交換器、300 冷凍サイクル装置、1000 扁平管、Ac 肉厚面積、Ao 肉厚面積、Ao1 肉厚面積、Ao2 肉厚面積、L1 中心線、L2 外端仮想線、L3 中心仮想線、L4 短軸流路端仮想線、L5 長軸流路端仮想線、R 曲げ半径、R0 曲げ可能半径、R1 領域、R2 領域、R3 領域、R4 領域、Rc 中心領域、Ro 外端領域、a 矢印、b 矢印、tx 肉厚。