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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-03
(45)【発行日】2025-07-11
(54)【発明の名称】直流配電システム及び制御電源生成装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/00 20060101AFI20250704BHJP
   H02J 1/12 20060101ALI20250704BHJP
【FI】
H02J1/00 304B
H02J1/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024524130
(86)(22)【出願日】2022-06-03
(86)【国際出願番号】 JP2022022608
(87)【国際公開番号】W WO2023233651
(87)【国際公開日】2023-12-07
【審査請求日】2024-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 勇人
(72)【発明者】
【氏名】川上 知之
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-97818(JP,A)
【文献】特開2017-85780(JP,A)
【文献】国際公開第2019/130375(WO,A1)
【文献】特開昭62-239863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00
H02J 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電力供給源から複数の電気負荷に電力を供給する配電網が形成された直流配電システムにおいて、前記複数の電力供給源と前記複数の電気負荷との間に接続され、電気負荷に応じた電力を供給する電力変換回路、前記電力変換回路を制御するための制御電源を供給する制御電源生成部、を備え、前記制御電源生成部は、それぞれの電力供給源の検出された電圧を入力し、入力された検出電圧があらかじめ定められた値よりも大きい場合に、検出電圧に応じた電圧指令値を設定する制御装置と、それぞれの電力供給源と接続され、前記電圧指令値に応じて変換された直流電圧を出力する複数の電源回路と、前記複数の電源回路の出力の1つに基づいた制御電源を前記電力変換回路に供給する制御電源回路と、を有し、前記制御装置は、前記あらかじめ定められた値よりも大きい検出電圧のうち、最も低い電圧に対応した電圧指令値を最も大きい値に設定することを特徴とする直流配電システム。
【請求項2】
前記複数の電源回路は、前記電力供給源からの電圧と出力電圧との電気的絶縁が可能なDC/DCコンバータ回路が構成され、出力段にはシャントレギュレータと、複数の抵抗と、開閉スイッチからなる出力電圧設定部を有し、前記開閉スイッチは、前記制御装置の出力信号によって、導通状態と開放状態とを切り替えることを特徴とする請求項1に記載の直流配電システム。
【請求項3】
複数の電力供給源から複数の電気負荷に電力を供給する配電網が形成された直流配電システムにおいて、前記複数の電力供給源と前記複数の電気負荷との間に接続され、電気負荷に応じた電力を供給する電力変換回路、前記電力変換回路を制御するための制御電源を供給する制御電源生成部、を備え、前記制御電源生成部は、それぞれの電力供給源と接続され、直流電圧を出力する複数の電源回路と、それぞれの電力供給源の検出された電圧を入力し、入力された検出電圧があらかじめ定められた値よりも大きい検出電圧のうち、最も低い電圧に応じた前記電源回路の直流電圧出力を制御電源として前記電力変換回路に供給する制御装置と、を備えたことを特徴とする直流配電システム。
【請求項4】
前記複数の電力供給源と前記複数の電気負荷とは直流バス電路で接続されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の直流配電システム。
【請求項5】
前記複数の電力供給源は、系統電源、蓄電池、太陽電池のうち、少なくとも2つを備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の直流配電システム。
【請求項6】
複数の電力供給源から複数の電気負荷に電力を供給する配電網が形成され、前記複数の電力供給源と前記複数の電気負荷との間に接続され、電気負荷に応じた電力を供給する電力変換回路を制御するための制御電源を供給する制御電源生成装置であって、それぞれの電力供給源の検出された電圧を入力し、入力された検出電圧があらかじめ定められた値よりも大きい場合に、検出電圧に応じた電圧指令値を設定する制御装置と、それぞれの電力供給源と接続され、前記電圧指令値に応じて変換された直流電圧を出力する複数の電源回路と、前記複数の電源回路の出力の1つに基づいた制御電源を前記電力変換回路に供給する制御電源回路と、を備え、前記制御装置は、前記あらかじめ定められた値よりも大きい検出電圧のうち、最も低い電圧に対応した電圧指令値を最も大きい値に設定することを特徴とする制御電源生成装置。
【請求項7】
複数の電力供給源から複数の電気負荷に電力を供給する配電網が形成され、前記複数の電力供給源と前記複数の電気負荷との間に接続され、電気負荷に応じた電力を供給する電力変換回路を制御するための制御電源を供給する制御電源生成装置であって、それぞれの電力供給源と接続され、直流電圧を出力する複数の電源回路と、それぞれの電力供給源の検出された電圧を入力し、入力された検出電圧があらかじめ定められた値よりも大きい検出電圧のうち、最も低い電圧に応じた前記電源回路の直流電圧出力を制御電源として前記電力変換回路に供給する制御装置と、を備えたことを特徴とする制御電源生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、直流配電システム及び制御電源生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電圧型インバータの制御用電源としてDC/DCコンバータを採用し、その入力電源を交流電源と、インバータの直流電圧または外部直流電源との両方から供給するものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に示す電源回路は、DC/DCコンバータ入力用に別にコンデンサを設け、リレー接点と整流器を介して交流電源からこのコンデンサを充電するか、インバータの直流電圧からこのコンデンサを充電するか、のいずれかにより充電できるよう構成している。すなわち、インバータ運転中はインバータの直流電圧から充電し、インバータ停止中は交流電源から充電することにより、インバータの直流電圧検出を実現している。
【0004】
特許文献2に示す電力システムでは、電気自動車と電力系統との間で電力の授受を行っており、電力系統と自動車用バッテリとの間に充放電回路と双方向インバータ回路、およびそれらの制御回路を有している。自動車の直流電源から供給される直流電圧に基づく電圧を制御回路の動作電圧として選択することで、電力消費を抑制し安定した電圧を生成することを図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平5-62193号公報
【文献】特開2012-70536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
制御回路の電圧を生成する手段において、DC/DCコンバータなどの電源回路は入出力の電圧差が小さい電力変換を実施することで、電力消費を抑制できることが知られている。しかし、特許文献1に記載された装置では、直流電圧の高い方を優先してDC/DCコンバータ用のコンデンサを充電するよう構成している。このため、インバータ運転中は常に主回路の直流電圧から制御回路へ電力を供給するため、電力損失が発生しシステム全体の効率を悪化させる要因となる。また、交流電源停電時には制御電源が喪失するといった課題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載された装置では、電力系統または発電システムから電力が供給されている場合、常にそれら電力源に接続された電源回路から制御回路の動作電圧を選択している。このため、電気自動車内の直流電源から供給される直流電圧に基づいて制御回路の動作電圧を生成する条件は限られており、電力消費を抑制するといった効果が十分に得られないという課題がある。
【0008】
本願は上述のような課題を解決するためなされたもので、電力供給源の電圧変動に応じて電圧値を設定することにより、システムの制御電源を複数の電力供給源のいずれかから生成することで、機器故障および停電による異常時でもシステムの運転を継続可能にするとともに、電力供給源の電圧変動に対し、制御電源の電力消費を抑制する直流配電システム及び制御電源生成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願に開示された直流配電システムは、複数の電力供給源から複数の電気負荷に電力を供給する配電網が形成されたものであって、複数の電力供給源と複数の電気負荷との間に接続され、電気負荷に応じた電力を供給する電力変換回路、電力変換回路を制御するための制御電源を供給する制御電源生成部、を備え、制御電源生成部は、それぞれの電力供給源の検出された電圧を入力し、入力された検出電圧があらかじめ定められた値よりも大きい場合に、検出電圧に応じた電圧指令値を設定する制御装置と、それぞれの電力供給源と接続され、電圧指令値に応じて変換された直流電圧を出力する複数の電源回路と、複数の電源回路の出力の1つに基づいた制御電源を電力変換回路に供給する制御電源回路と、を有し、制御装置は、あらかじめ定められた値よりも大きい検出電圧のうち、最も低い電圧に対応した電圧指令値を最も大きい値に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本願に開示された直流配電システムによれば、複数の電力供給源の電圧変動に応じて電圧指令値を設定し、電圧指令値に応じて変換された直流電圧を出力する複数の電源回路の出力の1つを制御電源として電力変換回路に供給することにより、機器故障および停電による異常時でもシステムの運転を継続可能にするとともに、電力供給源の電圧変動に対し、制御電源の電力消費を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る直流配電システムの全体構成図である。
図2】実施の形態1に係る電力変換装置のDC/DCコンバータ回路の概要を示す図である。
図3】実施の形態1に係る制御装置の機能ブロック図である。
図4図1の電力供給源の電源電圧の大小関係を示す図である。
図5】実施の形態1に係る最大電圧の選出を説明する図である。
図6】実施の形態1における電源回路の一例を示す回路図である。
図7】実施の形態2における電源回路の一例を示す回路図である。
図8】実施の形態3に係る直流配電システムの全体構成図である。
図9】実施の形態3に係る制御装置の機能ブロック図である。
図10】実施の形態3における電源電圧の大小関係と開閉スイッチの動作を示すタイムチャートである。
図11】直流電圧設定部および制御部のハードウエア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本願に係る直流配電システムの好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、同一内容および相当部については同一符号を配し、その詳しい説明は省略する。以降の実施形態も同様に、同一符号を付した構成について重複した説明は省略する。
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る直流配電システムの全体構成図である。直流配電システムには、系統電源1、太陽電池2、および蓄電池3といった複数の電力供給源と、複数の電気負荷4~6との間に接続された電力変換装置10と、電力変換装置10に制御電源を供給する制御電源生成部20とを備え、電力変換装置10は、例えば本実施の形態の場合、系統電源1と直流バス電路17との間に接続され、交流電力と直流電力との双方向の変換を行う双方向AC/DCコンバータ回路11と、複数の電源のうち太陽電池2と直流バス電路17との間に接続され、直流電力を変換するDC/DCコンバータ回路12と、複数の電源のうち蓄電池3と直流バス電路17との間に接続され、蓄電池3の充放電を行う充放電回路13と、直流バス電路17と複数の電気負荷4~6との間に接続され、直流バス電路17の直流電力を変換するDC/DCコンバータ回路14~16を有している。図2は、電力変換装置10の各DC/DCコンバータ回路の概要を具体的に示している。なお、制御電源生成部20と電力変換装置10との接続は省略している。なお、実施の形態2および3においても電力変換装置10の回路構成は図2と同様である。
【0014】
図1において、制御電源生成部20は、系統電源1から得られる電圧Vac、太陽電池2から得られる電圧Vpv、蓄電池3から得られる電圧Vbat、直流バス電路17から得られる電圧Vbus、を入力とし、制御装置30で演算された電圧指令値に従って各入力電圧を所望の直流電圧へ変換する電源回路21~24をそれぞれ備えている。電源回路21~24の各出力はダイオードで突き合わされたのち、制御電源Vdcを出力とする制御電源回路25へと入力される。
【0015】
図3は、図1の制御装置30の機能ブロック図である。制御装置30は、電圧検出器41によって系統電源1から得られる電圧Vacと、電圧検出器42によって太陽電池2から得られる電圧Vpvと、電圧検出器43によって蓄電池3から得られる電圧Vbatと、電圧検出器44によって直流バス電路17から得られる電圧Vbusとを入力とし、電圧指令部35から出力される電圧指令値Vdc*をそれぞれの入力から減算する減算器31~34と、減算器31~34の出力に応じて電圧指令値Va*~Vd*を電源回路21~24へ出力する直流電圧設定部36で構成されている。
【0016】
次に、このように構成された制御電源生成部20の動作を説明する。図4は、図1の電力供給源の電源電圧の大小関係を示す図である。図4Aにおいて、例えば、系統電源1の交流電圧VacがAC400Vの場合、電圧Vacのピーク電圧はおよそ565Vとなる。さらに、太陽電池2から得られる電圧VpvがDC230V、蓄電池3の直流電圧VbatがDC266V、直流バス電路17の直流電圧VbusがDC690Vとした場合の動作について説明する。
【0017】
図5は、最大電圧の選出を説明する図である。図5Aは最大電圧選出のためのフローチャートであり、図5B図5Cは入力値を整列させる手順を示す概念図である。図3に示す制御装置30は、電圧検出器41によって系統電源1から得られる電圧Vacと、電圧検出器42によって太陽電池2から得られる電圧Vpvと、電圧検出器43によって蓄電池3から得られる電圧Vbatと、電圧検出器44によって直流バス電路17から得られる電圧Vbusをそれぞれ入力とし、電圧指令部35から出力される電圧指令値Vdc*を減算器31~34により減算する。ここで、それぞれの電圧には以下の関係がある。
V’ac=Vac-Vdc*
V’pv=Vpv-Vdc*
V’bat=Vbat-Vdc*
V’bus=Vbus-Vdc*
【0018】
直流電圧設定部36は、各電圧V’ac、V’pv、V’bat、V’busのうち正の数をとる入力値をカウントする(ステップS100)。図4Aに示すように、電圧Vac、Vpv、Vbat、Vbusは全て電圧指令値Vdc*よりも大きいため、電圧指令値Vdc*を減算した電圧V’ac、V’pv、V’bat、V’busは全て正の値としてカウントされる。
【0019】
つぎに、未整列の正の値の入力値から最大値を1つ選択し(ステップS110)、正の値の入力値を降順に整列する(ステップS120)。図5Bにおいて、電圧V’busが最大値であるので、この値を先頭とするため、V’acとV’busを入れ替える。入れ替えたV’acとV’pvを比較し、V’acが大きければ、V’acとV’pvを入れ替える。このように、カウントされた全ての正の値の入力値が整列するまで比較演算を行う(ステップS130)。
【0020】
図5Bでは、以下に示す(式1)の条件が成立し、太陽電池2から得られる直流電圧V’pvを最も低い電圧として選択する。
V’bus>V’ac>V’bat>V’pv>0 ・・・(式1)
【0021】
(式1)の演算結果から、直流電圧設定部36からは、電源回路21に電圧指令値Va*を、電源回路22に電圧指令値Vb*を、電源回路23に電圧指令値Vc*を、電源回路24に電圧指令値Vd*を、それぞれ出力する。ここで、電圧指令値には、以下の(式2)で示されるような大小関係を設定する。すなわち、選択されたV’pvと電圧指令値Vb*との差V[4](図4A参照)が一番小さくなるように電圧指令値Vb*を設定する。(式1)の条件から、整列された入力値と電圧指令値との差V[i]が小さくなるようにそれぞれの電圧指令値を設定する(ステップS140)と(式2)のようになる。
Vb*>Vc*>Va*>Vd* ・・・(式2)
【0022】
前述したように、電源回路21~24の出力はダイオードで突合せており、(式2)の関係から制御電源回路25には電源回路22の出力電圧Vbが入力される。
【0023】
一方、図4Bでは、日射量など気象環境の変化により太陽電池2から得られる電圧VpvがDC175Vとした場合の動作について説明する。直流電圧設定部36は、V’ac、V’pv、V’bat、V’busのうち正の数をとる入力値をカウントする(ステップS100)。この場合、V’pvは負の値となるため、整列の対象から除かれる。
【0024】
未整列の値から最大値を1つ選択し(ステップS110)、正の値をとる入力値として電圧V’ac、V’bat、V’busを降順に整列する(ステップS120)。図5Cにおいて、V’busが最大値であるので、この値を先頭とするため、V’acとV’busを入れ替える。入れ替えたV’acとV’batを比較し、V’acが大きければ、V’acとV’batを入れ替える。このように、カウントされた全ての入力値が整列するまで比較演算を行う(ステップS130)。
【0025】
図5Cでは、以下に示す(式3)の条件が成立し、蓄電池3から得られる直流電圧V’batを最も低い電圧として選択する。
V’bus>V’ac>V’bat>0 ・・・(式3)
【0026】
(式3)の演算結果から、直流電圧設定部36からは、電源回路21に電圧指令値Va*を、電源回路22には停止指令を、電源回路23に電圧指令値Vc*を、電源回路24に電圧指令値Vd*を、それぞれ出力する。ここで、電圧指令値には、以下の式(4)で示されるような大小関係を設定する。すなわち、選択されたV’batと電圧指令値Vc*との差V[3](図4B参照)が一番小さくなるように電圧指令値Vc*を設定する。(式3)の条件から、整列された入力値と電圧指令値との間の差V[i]が小さくなるように電圧指令値を設定すると(式4)のようになる。
Vc*>Va*>Vd* ・・・(式4)
【0027】
前述した通り、電源回路21~24の出力はダイオードで突合せており、(式4)の関係から制御電源回路25には電源回路22の出力電圧Vcが入力される。このように、電圧値の大小関係を、制御装置30に認識させるために降順に整列させ、制御装置30が電圧値の大小関係を保持することにより、日射量の変化および交流系統の停電でVpvおよびVacが消失しても別の電力供給源を即座に選択することができ、電力供給源の電圧変動に対しシステムを停止させることなく制御電源の電力消費を抑制することが可能となる。
【0028】
図6は、制御電源生成部20に備えた電源回路21、22の一例を示す回路図である。電源回路21は、系統電源1から得られる電圧Vac、電源回路22は、太陽電池2から得られる電圧Vpvをそれぞれ入力とし出力電圧との電気的絶縁が可能なDC/DCコンバータ回路を構成している。
【0029】
電源回路21の出力段にはシャントレギュレータIC1と複数の抵抗R11、R12からなる出力電圧設定部211を有しており、出力電圧Vaには以下に示す(式5)の関係が成り立つ。
Va=Vref×(R11+R12)/R12 ・・・(式5)
【0030】
直流電圧設定部36から出力される電圧指令値Va*を受け、(式5)に示す抵抗R11の抵抗値を可変とすることにより出力電圧Vaを調整することができる。図6で示された電源回路22にも同様に出力電圧設定部221を有している。さらに、図6では示されていないが、電源回路23および電源回路24も同様に構成され、それぞれが有する電圧設定部により、電圧指令値に応じた出力電圧を調整することができる。
【0031】
以上のように、実施の形態1においては、直流配電システムの制御電源を複数の電力供給源から生成することで、機器故障および停電による異常時でもシステムの運転を継続可能にしつつ、電源回路における入出力差の小さい電力供給源が選択されるため、電力供給源の電圧変動に対して制御電源の電力消費を抑制することができる。なお、本実施の形態では、直流配電システムに、電気負荷が3台接続された構成を示したが、さらに電気負荷を増加させても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0032】
実施の形態2.
図7は、制御電源生成部20に備えた電源回路の別の一例である。電源回路21aは、系統電源1から得られる電圧Vac、電源回路22aは、太陽電池2から得られる電圧Vpvをそれぞれ入力とし出力電圧との電気的絶縁が可能なDC/DCコンバータ回路を構成している。
【0033】
電源回路21aの出力段にはシャントレギュレータIC1と複数の抵抗R11、R12、R13と、開閉スイッチS1からなる出力電圧設定部211aを有しており、開閉スイッチS1は制御装置30の出力信号によって、導通状態と開放状態とを切り替える。図7で示された電源回路22aにも同様に出力電圧設定部221aを有している。さらに、図7では示されていないが、他の電源回路、すなわち蓄電池3から得られる電圧Vbatを入力とする電源回路、直流バス電路17から得られるVbusを入力とする電源回路も同様に構成されていてもよい。
【0034】
以下、電源回路21aにより動作を説明するが、同様な構成を有する他の電源回路も同様な動作を行う。開閉スイッチS1が導通状態の場合、出力電圧Vaには以下に示す(式6)の関係が成り立つ。
Va=Vref×(R11×R13/(R11+R13)+R12)/R12・・・(式6)
【0035】
一方、開閉スイッチS1が開放状態の場合、出力電圧Vaには以下に示す(式7)の関係が成り立つ。
Va=Vref×(R11+R12)/R12 ・・・(式7)
【0036】
制御装置30の演算結果から、開閉スイッチの導通状態と開放状態とを切り替えることにより、各電源回路の出力電圧は(式6)または(式7)にしたがって、変化する。
【0037】
以上のように、実施の形態2においては、直流配電システムの制御電源を複数の電力供給源から生成し、制御電源生成部20に備えた各電源回路の出力にシャントレギュレータと複数の抵抗と、開閉スイッチと、からなる出力電圧設定部211a、221aを設けることにより、複数の電源回路の出力電圧を切り替えることができる。このため、機器故障および停電による異常時でもシステムの運転を継続可能にしつつ、制御電源に必要な電力を所望の電力供給源から選択することができる。なお、本実施の形態では、開閉スイッチS1、S2を機械的な動きをする開閉器で図示したが、電気的な半導体スイッチを用いて導通状態と開放状態とを切り替えても同様の効果が得られることは言うまでもない。なお、切替える抵抗を増やすことにより、実施の形態1で示す可変抵抗と同様な切替えができる。
【0038】
実施の形態3.
以下、実施の形態3による直流配電システムの構成について説明する。図8は、実施の形態3に係る直流配電システムの全体構成図である。直流配電システムには、系統電源1、太陽電池2、および蓄電池3といった複数の電力供給源と、複数の電気負荷4~6との間に接続された電力変換装置10を備え、電力変換装置10に内蔵した複数の回路に制御電源を供給する制御電源生成部20Aを有している。
【0039】
制御電源生成部20Aは、系統電源1から得られる電圧Vac、太陽電池2から得られる電圧Vpv、蓄電池3から得られる電圧Vbat、直流バス電路17から得られる電圧Vbus、を入力とし、あらかじめ設定された制御電源Vdcを出力する電源回路21~24と、電源回路21~24の出力には電力変換装置10に内蔵した複数のDC/DCコンバータ回路12、14~16、双方向AC/DCコンバータ回路11、および充放電回路13に制御電源を供給する電路を、導通状態と開放状態とに切り替える開閉スイッチ26~29とを備えている
【0040】
図9は、実施の形態3にかかる制御装置30Aの機能ブロック図である。制御装置30Aは、電圧検出器41によって系統電源1から得られる電圧Vacと、電圧検出器42によって太陽電池2から得られる電圧Vpvと、電圧検出器43によって蓄電池3から得られる電圧Vbatと、電圧検出器44によって直流バス電路17から得られる電圧Vbusとを入力とし、電圧指令部35から出力される電圧指令値Vdc*をそれぞれの入力から減算する減算器31a~34aと、開閉スイッチ26~29の導通状態と開放状態とを切り替える信号を出力する制御部37で構成されている。
【0041】
図10は、実施の形態3にかかる電源電圧の大小関係と開閉スイッチの動作を示すタイムチャートである。はじめに、時刻t0において太陽電池2から得られる電圧Vpvが電圧指令値Vdc*よりも大きくかつ電圧差が最も小さいため、図9に示す開閉スイッチ27を導通状態とし、その他の開閉スイッチ26、28、29は開放状態とする。
【0042】
次に、時刻t1において、太陽電池2から得られる電圧Vpvが日射量の変化などによって電圧指令値Vdc*を下回ったとき、開閉スイッチ27を開放状態とし開閉スイッチ28を導通状態とする。本動作により、電圧指令値Vdc*よりも大きくかつ電圧差が最も小さい蓄電池3から得られる電圧Vbatから制御電源Vdcを得ることができる。
【0043】
さらに、時刻t2において、系統電源1から得られる電圧Vacが停電などの影響により消失した場合であっても、蓄電池3から得られる電圧Vbatから制御電源Vdcを継続して得ている。最後に、時刻t3において太陽電池2から得られる電圧Vpvが日射量の変化などによって電圧指令値Vdc*を上回ったとき、開閉スイッチ28を開放状態とし開閉スイッチ27を導通状態とする。
【0044】
以上のように、本実施の形態3による直流配電システムとその制御電源装置においては、システムの制御電源を複数の電力供給源から生成し、あらかじめ設定された制御電源Vdcを出力する電源回路の出力に、制御電源を供給する電路を導通状態と開放状態とに切り替わる開閉スイッチ26~29を設けることにより、機器故障および停電による異常時でもシステムの運転を継続可能にしつつ、電源回路における入出力差の小さい電力供給源が選択されるため、電力供給源の電圧変動に対して制御電源の電力消費を抑制することができる。
なお、本実施の形態では、開閉スイッチを機械的な動きをする開閉器で図示したが、電気的な半導体スイッチを用いて導通状態と開放状態とを切り替えても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0045】
実施の形態1の直流電圧設定部36および実施の形態3の制御部37は、ハードウエアの一例を図11に示すように、プロセッサ100と記憶装置101から構成してもよい。記憶装置101は図示していないが、ランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリ等の不揮発性の補助記憶装置とを具備する。また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクの補助記憶装置を具備してもよい。プロセッサ100として、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、IC(Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、各種の論理回路、及び各種の信号処理回路等が備えられてもよい。また、プロセッサ100として、同じ種類のもの又は異なる種類のものが複数備えられ、各処理が分担して実行されてもよい。
【0046】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0047】
1:系統電源、2:太陽電池、3:蓄電池、4,5,6:電気負荷、10:電力変換装置、11:双方向AC/DCコンバータ回路、12,14,15,16:DC/DCコンバータ回路、13:充放電回路、17:直流バス電路、20、20A:制御電源生成部、21、21a、22、22a、23、24:電源回路、25:制御電源回路、26、27、28、29:開閉スイッチ、30、30A:制御装置、35:電圧指令部、36:直流電圧設定部、37:制御部、41、42、43、44:電圧検出器。
図1
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図11