(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-04
(45)【発行日】2025-07-14
(54)【発明の名称】構成部品およびシステムのための適合型コーティングマスク
(51)【国際特許分類】
F01D 5/28 20060101AFI20250707BHJP
F01D 5/18 20060101ALI20250707BHJP
F01D 9/02 20060101ALI20250707BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20250707BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20250707BHJP
【FI】
F01D5/28
F01D5/18
F01D9/02 102
B22F10/28
B33Y80/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021069939
(22)【出願日】2021-04-16
【審査請求日】2024-03-29
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・クラレンス・ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】ザカリー・ジョン・スナイダー
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ドナルド・ポーター
(72)【発明者】
【氏名】ブラッド・ウィルソン・ヴァンタッセル
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-108582(JP,A)
【文献】特開2018-080101(JP,A)
【文献】特開平11-158684(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0101004(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0281006(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0189115(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 1/00 - 25/00
F02C 7/00 , 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の冷却孔(201)を有するタービン構成部品に用いる適合型コーティングマスク(300)であって、
少なくとも2つのアンカー(301、302)と、
前記少なくとも2つのアンカー(301、302)の各々と一体に
同時に形成され、かつ前記少なくとも2つのアンカー(301、302)の各々の間に延在する複数の半径方向マスクストリップ(303)と、
少なくとも1つのコーティングマスク固定インサート(330)であって、前記少なくとも1つのコーティングマスク固定インサート(330)の各々が少なくとも1つの半径方向マスクストリップ(303)の各々と一体に
同時に形成される、少なくとも1つのコーティングマスク固定インサート(330)とを備え、
前記複数の半径方向マスクストリップ(303)が前記複数の冷却孔(201)と位置を合わせて前記複数の冷却孔(201)を覆う適合型コーティングマスク(300)。
【請求項2】
前記少なくとも2つのアンカー(301、302)と、前記複数の半径方向マスクストリップ(303)と、前記少なくとも1つのコーティングマスク固定インサート(330)とが付加製造によって一体に
同時に形成されている、請求項1に記載の適合型コーティングマスク(300)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのコーティングマスク固定インサート(330)の各々が、
プラグキャップ(331)と、
少なくとも1つの冷却孔(200)に挿入可能な挿入部(350)とを含む、請求項1に記載の適合型コーティングマスク(300)。
【請求項4】
前記挿入部(350)が前記少なくとも1つの冷却孔(200)の壁に摩擦係合する、請求項3に記載の適合型コーティングマスク(300)。
【請求項5】
前記挿入部(350)が正弦波部(353)を含む、請求項3に記載の適合型コーティングマスク(300)。
【請求項6】
前記挿入部(350)が細長い螺旋部を含む、請求項3に記載の適合型コーティングマスク(300)。
【請求項7】
前記プラグキャップ(331)と一体に形成される複数の圧縮可能脚(333、334)であって、ギャップ(335)によって互いに分離され、前記複数の圧縮可能脚(333、334)にかかる力によって前記ギャップ(335)内に移動可能な複数の圧縮可能脚(333、334)を含む圧縮可能部分(332)を、前記挿入部(350)が含み、前記力が解除されると、前記複数の圧縮可能脚(333、334)が前記ギャップ(335)から復帰する、請求項3に記載の適合型コーティングマスク(300)。
【請求項8】
前記複数の圧縮可能脚(333、334)が2つの圧縮可能脚(333、334)のみを含む、請求項7に記載の適合型コーティングマスク(300)。
【請求項9】
前記ギャップ(335)の断面形状が三角形である、請求項7に記載の適合型コーティングマスク(300)。
【請求項10】
前記プラグキャップ(331)が隆起した上部を含み、楕円形の外周を有している、請求項3に記載の適合型コーティングマスク(300)。
【請求項11】
前記プラグキャップ(331)が隆起した上部を含み、円形の外周を有している、請求項3に記載の適合型コーティングマスク(300)。
【請求項12】
前記プラグキャップ(331)の底面(339)が窪み(340)を含む、請求項3に記載の適合型コーティングマスク(300)。
【請求項13】
タービン構成部品と、前記タービン構成部品と同時に形成される適合型コーティングマスク(300)とを備えるシステムであって、
前記タービン構成部品が翼形部(105)および前記翼形部(105)の中の複数の冷却孔(201)を含み、
前記適合型コーティングマスク(300)が
少なくとも2つのアンカー(301、302)と、
前記少なくとも2つのアンカー(301、302)の各々と一体に
同時に形成されかつ前記少なくとも2つのアンカー(301、302)の各々の間に延在する複数の半径方向マスクストリップ(303)と、
前記少なくとも1つの半径方向マスクストリップ(303)のうちの各々1つと一体に
同時に形成される少なくとも1つのコーティングマスク固定インサート(330)とを含み、
前記複数の半径方向マスクストリップ(303)が前記複数の冷却孔(201)と位置を合わせて前記複数の冷却孔(201)を覆う、システム。
【請求項14】
前記少なくとも1つのコーティングマスク固定インサート(330)の各々が、プラグキャップ(331)と、少なくとも1つの冷却孔(200)に挿入可能な挿入部(350)とを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記少なくとも1つの冷却孔(200)に挿入可能な前記挿入部(350)が、前記プラグキャップ(331)と一体に形成されて冷却孔の壁に摩擦係合するために前記プラグキャップ(331)の底面から延びる複数の脚、正弦波部、および細長い螺旋部のうちの少なくとも1つを含む、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して構成部品と同時に形成されるコーティングマスクを含むシステムに関する。特に、本開示は付加製造によってタービンブレード構成部品と同時に形成される適合型コーティングマスクを含むシステムに関する。
【発明の概要】
【0002】
本開示の第1の態様は、複数の冷却孔を有するタービン構成部品と共に用いられる適合型コーティングマスクを提供する。適合型コーティングマスクは、少なくとも2つのアンカーと、少なくとも2つのアンカーの各々と一体に形成されかつ少なくとも2つのアンカーの各々の間に延在する複数の半径方向マスクストリップと、少なくとも1つのコーティングマスク固定インサートとを含む。少なくとも1つのコーティングマスク固定インサートの各々は、少なくとも1つの半径方向マスクストリップの各々と一体に形成され、複数の半径方向マスクストリップは、複数の冷却孔と位置を合わせて複数の冷却孔を覆う。
【0003】
本開示の第2の態様は、タービン構成部品と、タービン構成部品と同時に形成される適合型コーティングマスクとを含むシステムを提供する。タービン構成部品は、翼形部および翼形部の中の複数の冷却孔を含む。適合型コーティングマスクは、少なくとも2つのアンカーと、少なくとも2つのアンカーの各々と一体に形成されかつ少なくとも2つのアンカーの各々の間に延在する複数の半径方向マスクストリップと、少なくとも1つのコーティングマスク固定インサートとを含む。少なくとも1つのコーティングマスク固定インサートの各々は、少なくとも1つの半径方向マスクストリップの各々と一体に形成され、複数の半径方向マスクストリップは、複数の冷却孔と位置を合わせて複数の冷却孔を覆う。
【0004】
本開示の例示的な態様は、本明細書で説明される問題および/または論じられていない他の問題を解決するように設計されている。
【0005】
本開示のこれらおよび他の特徴は、本開示の様々な実施形態を図示する添付の図面と併せて、本開示の様々な態様に関する以下の詳細な説明から、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の実施形態による適合型コーティングマスクを備えたブレードの概略斜視図である。
【
図2】本開示の実施形態による適合型コーティングマスクを備えたブレードを
図1の線2-2から切断した断面図である。
【
図3】本開示の実施形態によるブレード冷却孔内のコーティングマスク固定インサートの側面断面図である。
【
図4】本開示の実施形態によるコーティングマスク固定インサートの側面断面図である。
【
図5】本開示の実施形態によるコーティングマスク固定インサートの側面断面図である。
【
図6】本開示の実施形態によるコーティングマスク固定インサートを
図4の線6-6から見た上面図である。
【
図7】本開示の実施形態によるコーティングマスク固定インサートを
図4の線6-6から見た上面図である。
【
図8】本開示の実施形態によるコーティングマスク固定インサートの底面斜視図である。
【
図9】本開示の実施形態によるコーティングマスク固定インサートの底面斜視図である。
【
図10】本開示の実施形態による冷却孔のためのコーティングマスク固定インサートのさらなる態様を示す図である。
【
図11】本開示の実施形態によるコーティングマスク固定インサートのさらに別の態様を示す図である。
【0007】
本開示の図面は、必ずしも原寸に比例していないことに留意されたい。図面は、本開示の典型的な態様だけを図示することを意図しており、したがって、本開示の範囲を限定するものと考えるべきではない。図面では、類似する符号は、図面間で類似する要素を表す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
最初の事項として、付加製造によって、冷却孔を備えるタービンブレードまたはその他のタービン構成部品(以下「タービンブレード」または参照の便宜上「ブレード」という)と同時に形成される適合型コーティングマスクについて言及および説明する際には、最近の技術を明確に説明するために、一定の専門用語を選択することが必要になるであろう。これらの適合型コーティングマスクシステムは、非限定的な例であるコーティングなど、あらゆるタービンブレード形成後の処理の間に、冷却孔を保護するタービンブレードを提供する。一般的な工業専門用語は、その受け入れられている意味と可能な限り同じ意味で使用および採用される。別途記載のない限り、このような専門用語は、本出願の文脈および添付の特許請求の範囲と一致する広義の解釈を与えられるべきである。当業者であれば、多くの場合、特定の構成部品がいくつかの異なるまたは重複する用語を使用して参照されることがあることを理解するであろう。単一の部品であるとして本明細書に記載され得るものは、別の文脈においては、複数の構成部品からなる例もあり、そのように参照される場合がある。あるいは、複数の構成部品を含むものとして本明細書に記載され得るものは、単一の部品として他の場所で参照されてもよい。
【0009】
また、本明細書ではいくつかの記述的用語を繰り返し使用する場合があり、本項の始めでこれらの用語を定義することが有用であることがわかるはずである。これらの用語およびその定義は、別途記載のない限り、以下の通りである。本明細書で使用する場合、「下流」および「上流」とは、タービンエンジンを通る作動流体、または例えば、燃焼器を通る空気の流れ、もしくはタービンの構成部品システムの1つを通る冷却剤などの流体の流れに対する方向を示す用語である。「下流」という用語は、流体の流れの方向に対応し、「上流」という用語は、流れの反対の方向を指す。「前方」および「後方」という用語は、別途指定のない限り、方向を指し、「前方」はエンジンの前方または圧縮機端を指し、「後方」はエンジンの後方またはタービン端を指す。
【0010】
多くの場合、中心軸線に関して異なる半径方向位置に配置された部品を説明することが要求される。「半径方向」という用語は、軸線に垂直な移動または位置を指す。例えば、第1の構成部品が第2の構成部品よりも軸線に近接して位置する場合には、本明細書では、第1の構成部品は第2の構成部品の「半径方向内側」または「内方」にあると述べる。一方、第1の構成部品が第2の構成部品よりも軸線から遠くに位置する場合には、本明細書では、第1の構成部品は第2の構成部品の「半径方向外側」または「外方」にあると述べることができる。「軸方向」という用語は、軸線に平行な移動または位置を指す。最後に、「円周方向」という用語は、軸線周りの移動または位置を指す。このような用語は、タービンの中心軸線に関連して適用することができることが理解されよう。
【0011】
加えて、以下に記載されるように、本明細書ではいくつかの記述的用語を繰り返し使用することができる。「第1の」、「第2の」、および「第3の」という用語は、ある構成部品を別の構成部品から区別するために交換可能に使用することができ、個々の構成部品の場所または重要性を示すことを意図するものではない。
【0012】
本明細書で使用される専門用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、本開示を限定することを意図するものではない。本明細書で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「この(the)」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数形も含むことを意図している。「備える(comprise)」および/または「備えている(comprising)」という用語は、本明細書で使用する場合、記載した特徴、特徴的要素、ステップ、動作、要素、および/または構成部品が存在することを明示するが、1つまたは複数の他の特徴、特徴的要素、ステップ、動作、要素、構成部品、および/またはそれらの組が存在することまたは追加することを除外しないことがさらに理解されよう。「任意選択の」または「任意選択で」は、後で述べられる事象または状況が、起こる場合も起こらない場合もあることを意味し、この記述は、その事象が起こる事例と、起こらない事例とを含むことを意味する。
【0013】
ある要素または層が別の要素または層に対して「上に」、「係合される」、「接続される」、または「結合される」と言及される場合には、他の要素または層に対して直接上にあってもよいし、直接に係合され、接続され、または結合されてもよいし、あるいは介在する要素または層が存在してもよい。逆に、ある要素が別の要素または層に対して「直接上に」、「直接係合される」、「直接接続される」、または「直接結合される」と言及される場合には、介在する要素または層は存在しなくてもよい。要素間の関係について説明するために使用される他の語も、同様に解釈されるべきである(例えば、「~の間に」に対して「直接~の間に」、「~に隣接して」に対して「直接~に隣接して」など)。本明細書で使用する場合、「および/または」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つまたは複数のありとあらゆる組合せを含む。
【0014】
発電、航空、および他分野の世界で使用される構成部品を製造するための広範な研究には、これらの分野における変化と改善のスピードが伴ってきたことが知られており、本開示の実施形態の理解を容易にする。金属、プラスチック、またはセラミック複合構成部品の従来の製造は、一般に、材料のスラブからある領域をフライス加工または切除することであって、部品を得るために、切除された材料の加工および改造の前に行われるフライス加工または切除を含み、これらは、例えば製図ソフトウェアにおけるコンピューターモデルを用いてシミュレートすることができる。製造される構成部品は、金属から形成することができ、例として、航空機エンジンまたは発電システムなどのターボ機械内に設置するための、翼形部構成部品が挙げられる。
【0015】
付加製造(AM)は、材料の除去ではなく、材料の連続的な層形成により構成部品を製造する多種多様なプロセスを含む。そのため、付加製造では、いかなる種類の工具、金型または固定具も使用することなく、かつ材料をほとんどまたは全く無駄にすることなく、複雑な幾何学的形状を形成することができる。材料の固体ビレットから構成部品を機械加工して、材料の大半が切除されて廃棄されるのと異なり、付加製造に使用される材料は、構成部品を成形するために必要とされる材料のみである。
【0016】
付加製造技術は、典型的には、形成される構成部品の三次元コンピュータ支援設計(CAD)ファイルを取得することと、構成部品を例えば、18~102マイクロメートル厚の層に電子的にスライスすることと、ベクトル、画像または座標を含む各層の二次元画像を有するファイルを作成することとを含む。このファイルは、その後、ファイルを解釈する準備ソフトウェアシステムにこのファイルをロードし、異なるタイプの付加製造システムによって構成部品を構築することができるように、準備ソフトウェアシステムがファイルを解釈してもよい。3D印刷、ラピッドプロトタイピング(RP)、および直接デジタル製造(DDM)の付加製造形式では、材料層を選択的に分配し、焼結し、形成し、堆積させるなどして構成部品を形成する。
【0017】
直接金属レーザ溶融(DMLM)(選択的レーザ溶融(SLM)とも呼ばれる)などの金属粉末付加製造技術では、複数の金属粉末層を順次、一緒に溶融して構成部品を形成する。より具体的には、金属粉末床上に、アプリケータを使用して複数の微細な金属粉末層を均一に分布させた後、これらを順次溶融させる。各アプリケータは、金属、プラスチック、セラミック、炭素繊維、またはゴム製のリップ、ブラシ、ブレード、またはローラの形態をしたアプリケータ要素であって、金属粉末をビルドプラットフォーム上に均一に広げるアプリケータ要素を含む。金属粉末床は、垂直軸線に沿って移動させることができる。プロセスは、正確に制御された雰囲気を有する処理チャンバで行われる。各層が形成されると、金属粉末を選択的に溶融することによって、構成部品の幾何学的形状の各二次元スライスを融着させることができる。金属粉末を完全に溶接(溶融)して固体金属を形成するために、溶融は、100ワットのイッテルビウムレーザなどの高出力溶融ビームによって実施することができる。溶融ビームは走査ミラーを使用してX-Y方向に移動し、金属粉末を完全に溶接(溶融)して固体金属を形成するのに十分な強度を有する。後続の二次元層ごとに金属粉末床を下げてもよく、構成部品が完全に形成されるまでそのプロセスを繰り返す。
【0018】
さらに、これらに限定されないが、ガスタービンエンジンの翼形部、タービンブレード、およびベーン(ノズル)などのタービン構成部品には、多くの場合、冷却空気が翼形部を通って流れ、その後入念に構成された冷却孔を通って排気される、複雑な冷却機構が要求される。例えば、単に本開示の例示に過ぎないが、構成部品の冷却孔は、翼形部の後縁部にある冷却孔であってもよい。タービンブレードの性能は、翼形部表面を均一に冷却する能力に関係する。したがって、開口部の大きさおよび形状が、所定の孔から流出する流量、翼形部全体の孔分布、および冷却回路内の全流量分布を定め得るため、タービン翼形部の設計において冷却孔の大きさおよび形状の調整が重要である。バックフローマージンなどのその他の要因も開口部の大きさの変化によって影響を受ける。したがって、コーティングなどの構成部品の後処理中を含めて、冷却孔の目的とする構成を保護することによって、冷却孔の所期の機能を発揮することができるであろう。
【0019】
開口部の大きさを再現可能に調整するために、レーザ加工および放電加工(EDM)などの従来の穴あけ加工技術に加え、複雑な高度鋳造作法を用いて寸法的に正確な冷却孔の開口部を備えた翼形部を製造してもよい。一旦鋳造されると、複数の冷却孔の一部またはすべての開口部の寸法を変更するであろう作業によって、適切な大きさに鋳造された冷却孔の開口部が処理されないように、後続する翼形部の製造作業を実施しなければならない。
【0020】
しかし、いくつかのタービンの空気通路の基準がますます複雑になるにつれ、タービン構成部品を形成するために(前述の)付加製造プロセスが用いられてきた。付加製造プロセスによって、入り組んで曲がりくねった複雑な冷却通路および冷却孔の開口部を、いくつかの伝統的な形成手法に比べてより容易、効率的、および低コストな方法で形成できる。
【0021】
形成方法を問わず、タービン構成部品の動作環境がますます厳しくなるにつれ、通常、製造するとき、および場合によっては修理中もタービン構成部品に保護コーティングが施される。最新式の高効率燃焼タービンは、発火温度が約1,000℃を超え、より効率的なエンジンに対する要求が続くにつれて、発火温度はさらに高くなることが予期される。燃焼器およびタービンセクション内に「高温ガス経路」を形成する多くの構成部品、例えば燃焼器ライナ、燃焼セクションとタービンセクションとの間の移行ダクト、タービン静翼、回転ブレード、および周囲のリングセグメントは、過酷な高温燃焼ガスに直接曝される。これらのおよびその他の構成部品は、熱的ストレスに加えて、機械的ストレスおよび構成部品にさらにかかる負荷にも曝される。
【0022】
この過酷な高温燃焼環境内での長期間の運転に耐えるため、燃焼タービンエンジンの高温ガス経路セクションで用いられる燃焼タービン構成部品の大部分を製造するために従来から使用されている鉄、コバルト、およびニッケル基超合金材料の多くは、構成部品を保護コーティングで被覆することによって高温ガス流から断熱されている。保護コーティングは、遮熱コーティング(TBC)、ボンドコート、耐環境コーティング(EBC)、これらの組合せ、および現在知られている、または今後開発されるその他のコーティングを含むがこれらに限定されない。タービン構成部品の使用目的およびその使用に関連する環境に依存して、多段階プロセスで保護コーティングを実施することができ、その多段階プロセスには、例えばボンドコートおよびそれに続く追加被覆で保護コーティングが必要な表面を被覆することが含まれる。
【0023】
TBCは高度先進材料システムである。これらのコーティングは、負荷がかかっている合金とコーティング面との間の相当な温度差に耐えることができる断熱材料を利用することによって、多大で長期にわたる熱負荷から構成部品を断熱する保護コーティングとして機能する。このとき、これらのコーティングによって、構造構成部品の熱暴露を制限しながら、より高温での動作が可能となり、酸化および熱疲労が減少して構成部品の寿命が延びる。
【0024】
TBCは様々な方法でタービン構成部品に施される。TBC(またはその他のコーティング)を施すために噴霧がしばしば使用される。例示的な噴霧施工プロセスは、空気中でも真空中でも行われるプラズマ溶射、コールドスプレー、静電塗装、電子ビーム物理蒸着、化学気相成長、溶射、高速フレーム溶射、物理蒸着、これらの組合せ、ならびに現在知られているもしくは今後開発されるその他の噴霧技術を含むがこれらに限定されない。
【0025】
図1を参照すると、タービンブレード100は、翼形部105およびベース116を含む。ベース116は、翼形部105が取り付けられたプラットフォーム104を含む。翼形部105は、凹部122が画定されている先端108を有する。翼形部105は、前縁部110および後縁部111をさらに含む。
【0026】
前述したように、多くの場合、ガスタービンエンジン構成部品には冷却孔が必要である。冷却孔には、多くの場合、冷却空気が翼形部を通って流れ、その後入念に構成された冷却孔を通って排気される複雑な冷却機構が要求される。
図1および
図2において、複雑な冷却機構は、先端108にある先端冷却孔201に至る冷却通路128(
図2)を含む。複雑な冷却機構は、接続管129を通って冷却通路128(
図2)に接続される翼形部冷却孔200をさらに含む。複数の冷却孔200は、多くの場合、プラットフォーム104から翼形部105の先端108までの、冷却通路128と位置を合わせた列状に設けられている。
【0027】
本開示の実施形態によるブレード100などのタービン構成部品をコーティングする噴霧の1つの態様は、ブレード100の冷却孔200、201の周辺の噴霧を抑制すること、または抑制しないことを取り巻く。本明細書で噴霧抑制は、噴霧によって冷却孔200、201の周辺にブリッジングが発生し、その後、再処理が必要になることを防ぐことを意味する。もちろん、いかなるコーティングまたはその他の後処理/構成部品形成後処理によっても、翼形部が動作要件を満たすことを妨げてはならず、その動作要件には、翼形部を通り抜けて翼形部表面の冷却孔を通って排出する冷却空気の気流要件が含まれる。
【0028】
避けるべき後処理/形成後コーティング結果の1つは「ブリッジング」であり、これはコーティングされた表面とコーティングマスクの端との間にコーティングが蓄積され、したがってそのギャップにブリッジが形成されることである。コーティングマスクの目的はコーティングが冷却孔に入るのを防ぐことであり、過剰なブリッジングがあるとコーティングされた部分からマスクを容易に外すことができない。コーティングマスクはブリッジングを避けるために表面から十分に離れていなければならないが、コーティング材料が冷却孔に入らないようにするために表面に十分近くなければならない。もちろん、冷却孔の所期の機能を維持するために、ブリッジングは抑制されるべきである。
【0029】
以下に詳細に述べられるように、ブリッジングは、噴霧(実施形態の限定を意図するものではないが例えばTBC)が構成部品、ここではブレード100の上に堆積するときのその「シャドーイング」効果に起因する。シャドーイング効果は、光源の前に物体を置き、その物体の影を観察することによって最もよく視覚化できる。物体周辺を通る光線は堆積する噴霧の典型であり、その物体の影は堆積した噴霧の中にできる空間の典型である。しかし、コーティングは、シャドーイングと呼ばれる自然の過程で、孔にかかる「ブリッジ」を孔の上に築き得るため、小さすぎるまたは互いに近すぎる孔(冷却孔200、201など)は、ブリッジを作る場合がある。これらの孔では、コーティングは孔を塞ぐ場合がある。また、コーティング材料は構成部品または基材に厳密に接着も付着もしない場合がある。その結果、(コーティングが対象領域および孔を覆って堆積した場合)冷却孔200、201から「ブリッジ」を取り除くため、または(コーティングが構成部品または基材に厳密に接着も付着もしていない)場所を再コーティングするために再処理が必要となる場合があり、このことによって処理時間が延び、追加の資源が必要となり、かつ機会費用などの損失を引き起こす可能性がある。
【0030】
本開示によって具現化されるように、タービン構成部品、例えばブレード100と同時に形成される適合型コーティングマスクを提供し、ブリッジング、およびこれに限定されないがコーティングなどの形成後処理のその他の悪影響を軽減、および場合によっては回避する。
図1および
図2に例示されるように、適合型コーティングマスク300は付加製造によってブレード100と同時に形成される。したがって、適合型コーティングマスク300はその構成をブレード100の形状、輪郭および公差に適合させることができる。例示されるように、適合型コーティングマスク300は、ブレード100の少なくとも一部を包み込んで取り囲み、適合型コーティングマスク300が翼形部105を取り囲むその輪郭と位置合わせする。
【0031】
適合型コーティングマスク300は、自己付勢アンカー301、302を含む。アンカー301、302は、ブレード100の先端108およびプラットフォーム104の近傍に配置されることが好ましい。アンカー301、302は、翼形部105を包み込んで取り囲めるように柔軟に形成される。アンカー301、302には、翼形部105周辺の様々な場所に位置することができる端部320および321が形成されている。アンカー301、302は、翼形部105上の任意の場所にある端部320、321から延びてもよく、
図1では、(本明細書で説明されるように)始端のコーティングマスク固定インサート330が、対応する冷却孔200に挿入されるように構成されている後縁部111に端部320がある。アンカー301、302は、翼形部105を包み込んで取り囲むことができ、したがって、多くの場合、翼形部105上の、アンカー301、302が翼形部105のほぼ全周を取り囲む位置で端部321が終端する。(以下においても説明されるように)終端のコーティングマスク固定インサート330は、対応する冷却孔200に挿入されるように構成されており、終端プラグキャップ331を翼形部105上に固定する。
【0032】
アンカー301、302は、付加製造で形成されたヒンジ構造308(
図2)を含むことができる。ヒンジ構造308によって、ブレード100上に適合型コーティングマスク300を設置することが可能かつ容易になる。ヒンジ構造308によって、アンカー301、302は、ブレード100上の屈曲部およびその他の入り組んだ表面形状領域の周辺に位置することができる。
【0033】
さらに、必須ではないが、アンカー301、302は、翼形部105周辺に延在して、翼形部105の冷却孔200が配置されている領域に対応することが望ましい。その結果、以下に説明されるように、適合型コーティングマスク300は、コーティングマスク固定インサート330を備えた半径方向マスクストリップ303を含む。半径方向マスクストリップ303は、アンカー301とアンカー302との間に延在し、翼形部105の全高にわたって延びる。本明細書に説明されたように、付加製造中に、翼形部冷却孔200の位置に合わせてアンカー301、302および半径方向マスクストリップ303を形成することによって、コーティングマスク固定インサート330を冷却孔200の位置に合わせて配置してそれらの冷却孔200をマスキングすることができる。
【0034】
半径方向マスクストリップ303は、一般に冷却孔200の列と位置が合っており、少なくとも1つの、好ましくは複数のコーティングマスク固定インサート330を含む。コーティングマスク固定インサート330は、半径方向マスクストリップ303、およびアンカー301、302と同時に付加的に製造される。したがって、本明細書に説明されるように、コーティングマスク固定インサート330は冷却孔200と位置が合っている。
【0035】
図1および
図3に例示するように、半径方向マスクストリップ303上にあるコーティングマスク固定インサート330は、翼形部105上にある冷却孔200と位置が合うように構成されている。本開示の非限定的な態様において、全ての冷却孔200は、対応するコーティングマスク固定インサート330を有している。本開示のその他の非限定的な態様は、翼形部105上にある1列のうち1つの冷却孔200のみに対応する半径方向マスクストリップ303(半径方向マスクストリップ306)上にあるコーティングマスク固定インサート330、1列のうち複数の冷却孔200に対応する半径方向マスクストリップ303(半径方向マスクストリップ305)上にあるコーティングマスク固定インサート330、または1列全ての冷却孔200に対応する半径方向マスクストリップ303(半径方向マスクストリップ304)上にあるコーティングマスク固定インサート330を含む。
【0036】
半径方向マスクストリップ303は、先端108からプラットフォーム104までの翼形部105の全長にわたって延在するように構成されている。あるいは、半径方向マスクストリップ303は、先端108から延びるがプラットフォーム104手前で終端する、先端108から下方向に延びてプラットフォーム104で終端する、または先端108から下方向に延びるがプラットフォーム104手前で終端するなど、翼形部105の全長の一部の領域にわたって延在するように構成されている。
【0037】
コーティングマスク固定インサート330は、付加製造中に各半径方向マスクストリップ303と一体に形成され、冷却孔200を覆って対応するように構成されている。コーティングマスク固定インサート330は、半径方向マスクストリップ303を定位置に位置合わせして固定することを補助する。各半径方向マスクストリップ303の少なくとも1つのコーティングマスク固定インサート330の挿入部350が冷却孔200に入ることによって、コーティングマスク固定インサート330による半径方向マスクストリップ303の冷却孔200への位置合わせおよび固定が達成される。
【0038】
場合によっては、半径方向マスクストリップ303を定位置に位置合わせして固定するために、挿入部350は、冷却孔200に簡単に嵌まるように構成されている。本出願のその他の実施形態では、半径方向マスクストリップ303を定位置に位置合わせして固定するために、挿入部350は、冷却孔200内に嵌まって冷却孔200の一部に摩擦係合するように構成されている。
【0039】
実施形態の非限定的な態様において、
図3に例示するように、適合型コーティングマスク300がブレード100をマスクするために使用される場合、コーティングマスク固定インサート330の挿入部350には、冷却孔200、201内に配置されるように構成されている圧縮可能部分332が形成されている。適合型コーティングマスク300およびブレード100の同時付加製造によって、適合型コーティングマスク300はブレード100の表面106に適合および整合することが可能となる。付加的に製造される要素、ここではブレード100は固有の輪郭および公差を含むが、ブレード100に適合するように構成された適合型コーティングマスク300を同時的に付加製造することによって、コーティングマスク固定インサート330と翼形部105の冷却孔200、201との所望の位置合せが可能となる。
【0040】
コーティングマスク固定インサート330は、プラグキャップ331(
図3)を含む。プラグキャップ331は、隆起した上部を有し、外周構成で各冷却孔200を補完するものであり、マスクと共に付加製造される。プラグキャップ331の外周構成は、楕円形の外周(
図6)、円形の外周(
図7)、または冷却孔を補完する現在知られているもしくは今後開発されるその他の外周構成でもよい。プラグキャップ331の外周の形状にかかわらず、プラグキャップ331の外周は、対応する各冷却孔200の全体にわたって延在するように構成されており、各コーティングマスク固定インサート330は、その対応する各冷却孔200と位置を合わせてかつその上を覆って配置することができる。楕円形の外周(
図6)は、これに限定されないが前縁部110および後縁部111など翼形部105の特に湾曲した表面部にある冷却孔200に役立つように構成されている。円形の外周(
図7)は、翼形部105上の中間の場所に位置する冷却孔200で役立つように構成されている。さらに、本開示の実施形態は、冷却孔を覆うプラグキャップ331の任意の構成を含むことを意図している。
【0041】
コーティングマスク固定インサート330の圧縮可能部分332は、コーティングマスク固定インサート330の底面339上に形成される。圧縮可能部分332によって、コーティングマスク固定インサート330を冷却孔200に挿入および設置することができる。コーティングマスク固定インサート330の圧縮可能部分332は、コーティングマスク固定インサート330が冷却孔200に入るときに圧縮可能な程度に弾力性がある。圧縮可能部分332は、圧縮可能部分332を圧縮しながら冷却孔200の壁と接触する。その後、圧縮可能部分332は、コーティングマスク固定インサート330を冷却孔200内に摩擦で固定することができる。
【0042】
コーティングマスク固定インサート330の圧縮可能部分332は、2つの圧縮可能脚333、334(説明の便宜上、圧縮可能脚333、334は脚333、334という)を含む。脚333、334は、付加製造中にプラグキャップ331、半径方向マスクストリップ303、および適合型コーティングマスク300と一体に形成される。脚333、334は、冷却孔200に嵌まるように形成される。脚333、334の弾力性によって、コーティングマスク固定インサート330に、ギャップ335内で脚333、334を互いに向かって圧縮することができる力をかけることができる。脚333、334は、冷却孔200内にあるとき、圧縮から復元して冷却孔200の壁に摩擦係合し、コーティングマスク固定インサート330を冷却孔200内に保持することができる。その結果、脚333、334は、適合型コーティングマスク300をブレード100の冷却孔200内に摩擦で保持する。
【0043】
さらに、脚333、334は、分割した円錐構造として想定してもよい。円錐体には、底面339上にそのベースが形成され、頂点からベースまで実質的に半分に「分割」して形成される。ベース部がコーティングマスク固定インサート330の底面339上にそのままで残り、各半分の頂点からの各半分は「分割」もしくは離隔構造で付加製造されるか、または互いに分離して形成される。したがって、頂点はV字型ギャップ335を形成するように構成され、本明細書で述べられるように、その断面は三角形である。
【0044】
図3~
図5、
図8および
図9で例示されるように、V字型ギャップ335は、(本明細書に記載されたように)コーティングマスク固定インサート330が、冷却孔200に挿入されるときに圧縮される脚333、334を有することができるように構成される。脚333、334の圧縮は、コーティングマスク固定インサート330を冷却孔200に挿入できるように、適切な外力、例えば、全く本開示を制限するものではないが個人の指で脚333、334を圧迫し、脚333、334を互いに向かって移動させ、V字型ギャップ335の大きさを縮小させることによってなされてもよい。あるいは、(本明細書に記載されたように)適合型コーティングマスク300がブレード100に取り付けられるときに脚333、334が冷却孔200の内面に当接すれば(
図3参照)、脚333、334は互いに向かって移動して圧縮される。上述した各状況において、コーティングマスク固定インサート330の脚333、334は、(少なくともある程度)圧縮から復元し、コーティングマスク固定インサート330を冷却孔200内に摩擦で保持することができる。
【0045】
脚333、334の構成は概して円錐形として例示されているが、それは単に脚333、334がとり得る多数の構成の例示に過ぎない。もちろん、脚333、334が補完的で対応する係合面を有しているならば、冷却孔200に対する脚333、334の圧縮は、より円滑になる。脚333、334の構成は、冷却孔200に適合して位置合わせできれば、いかなる形状、断面および/または長さでもよい。したがって、本開示の態様は、脚333、334が、冷却孔200内に圧縮されて入ること、および跳ね返ってコーティングマスク固定インサート330を冷却孔200内に摩擦で保持することを可能にする任意構造の脚333、334を含む。
【0046】
図3に見られるように、コーティングマスク固定インサート330は、翼形部105の表面106を覆う。プラグキャップ331が覆う方向および構造は、プラグキャップ331および半径方向マスクストリップ303の同時付加製造によって生じる。適合型コーティングマスク300および構成部品、ここではブレード100の同時形成によって、適合型コーティングマスク300は、上述のようにブレード100の表面公差に整合することができ、コーティングマスク固定インサート330と翼形部105の冷却孔200との位置合わせが可能となる。
【0047】
図10および
図11は、少なくとも1つのコーティングマスク固定インサート330の挿入部350のさらなる実施形態を例示する。
図10は、細長い螺旋またはコークスクリュー部351の形状をした挿入部350を説明する。細長い螺旋またはコークスクリュー部351は、冷却孔200、201の側壁に係合してまたは係合しないで冷却孔200、201の中に延びるように構成されている。したがって、細長い螺旋またはコークスクリュー部351は、冷却孔200、201に摩擦係合して、または冷却孔200、201に係合しないで、のいずれかで冷却孔200、201の中に延びて、コーティングマスク固定インサート330の細長い螺旋またはコークスクリュー部351およびその上にある半径方向マスクストリップ303を簡単に位置決めするように構成されている。
【0048】
図11は、正弦波部353の形状をした挿入部350を説明する。正弦波部353は、冷却孔200、201の側壁に係合してまたは係合しないで冷却孔200、201の中に延びるように構成されている。したがって、正弦波部353は、冷却孔200、201に摩擦係合して、または冷却孔200、201に係合しないで、のいずれかで冷却孔200、201の中に延びて、コーティングマスク固定インサート330の正弦波部353およびその上にある半径方向マスクストリップ303を簡単に位置決めするように構成されている。
【0049】
本明細書内で具現化されるように、各挿入部350用にコーティングマスク固定インサート330の細長い螺旋またはコークスクリュー部351および正弦波部353のいずれか、ならびに半径方向マスクストリップ303は、プラグキャップ331の任意の構成と共に使用することができる。さらに、本明細書に記載されたように、細長い螺旋またはコークスクリュー部351および正弦波部353のいずれかを備えたプラグキャップ331は、窪み340を備えても備えなくてもよい。
【0050】
付加製造プロセスは、コーティングマスク固定インサート330の挿入部350を冷却孔200に挿入するときにコーティングマスク固定インサート330の底面339が冷却孔200の場所で表面106を間隔Aで覆う構成をしたコーティングマスク固定インサート330を形成する(
図3)。間隔Aは、プラグキャップ331の下から表面106までの間にコーティングが入るのを防ぐに十分な間隔である。したがって、コーティングはプラグキャップ331の下に入らず、冷却孔200にブリッジが形成されることがない。意図的におよび有利に間隔Aを設定し、そうしてプラグキャップ331の下のコーティング量を除去することによって、適合型コーティングマスク300は冷却孔200周辺のコーティング材料を抑え、冷却孔200同士の間のブリッジングを防ぐ。
【0051】
図8および
図9を参照すると、本開示のいくつかの様態では、プラグキャップ331の底面339は平坦であり、付加製造によって脚333、334から延びて形成されてもよい。本開示の別の態様によると、プラグキャップ331は、底面339からプラグキャップ331の上部に向かって延在して形成される窪み340(
図5)を有する底面339を含む。窪み340は、適合型コーティングマスク300、挿入部350、半径方向マスクストリップ303、およびコーティングマスク固定インサート330の形成に必要な材料の量を低減する。窪み340によって、コーティングマスク固定インサート330がより軽量になり、結果として、必要に応じて冷却孔200の中に、および冷却孔200の中から外へ移動しやすくなるため、コーティングマスク固定インサート330のあらゆる操作の向上も可能になる。
【0052】
ブレード100および適合型コーティングマスク300を、付加製造によって同時に形成すると、適合型コーティングマスク300をブレード100の位置に合わせて摩擦係合させることができる。その結果、同時形成によって、適合型コーティングマスク300およびその外観はブレード100の表面公差および輪郭に整合する。
【0053】
図1を参照すると、適合型コーティングマスク300をブレード100に取り付けるため、端部320および最初の始端の半径方向マスクストリップ303が冷却孔200の列と位置が合うようにアンカー301、302を配置する。こうして、各コーティングマスク固定インサート330の少なくとも1つの挿入部350を対応する冷却孔200に入れるまたは摩擦係合させることによって適合型コーティングマスク300を固定することができる。その後、アンカー301、302を移動させて翼形部105を取り囲み、端部321に関連する最後の末端の半径方向マスクストリップ303が冷却孔200と位置合わせできるまで各個々の半径方向マスクストリップ303上にあるコーティングマスク固定インサート330は対応する冷却孔と位置合わせして挿入することができ、端部321における個々のコーティングマスク固定インサート330の挿入部350が冷却孔200に挿入される。
【0054】
あるいは、適合型コーティングマスク300をブレード100に取り付ける更なる方法では、端部320および最初の始端の半径方向マスクストリップ303が冷却孔200の列と位置が合うようにアンカー301、302を配置する。こうして、少なくとも1つのコーティングマスク固定インサート330の挿入部350をその最初の始端の半径方向マスクストリップ303において対応する冷却孔200に摩擦係合させることによって適合型コーティングマスク300を固定することができる。その後、アンカー301、302が翼形部105を取り囲むようにアンカー301、302を移動させ、各個々の半径方向マスクストリップ303上にあるコーティングマスク固定インサート330は冷却孔200と位置を合わせることができる(しかしコーティングマスク固定インサート330の挿入部350は冷却孔200に挿入されない)。次に、端部321に関連する最後の末端の半径方向マスクストリップ303は冷却孔200の列と位置を合わせることができ、その端部321上にある個々のコーティングマスク固定インサート330の挿入部350は冷却孔200に挿入される。そして最初の始端のおよび最後の末端の半径方向マスクストリップ303は、対応する冷却孔200内に摩擦で固定され、その後残りのコーティングマスク固定インサート330の挿入部350を冷却孔200に挿入することができる。
【0055】
本実施形態の短い説明から分かるように、冷却孔200を覆うための大きさおよび形状をした個々のマスクの幾何学的形状を備えた適合型コーティングマスク300、自己付勢アンカー301、302、および半径方向マスクストリップ303によって、冷却孔200がコーティングで塞がれるのを防ぐ。こうして、全体的な構成によって、構成部品表面と適合型コーティングマスク300の端との間にできるコーティングのブリッジングを防ぐ。
【0056】
同じく本実施形態の説明から分かるように、適合型コーティングマスク300の特徴、および適合型コーティングマスク300をブレード100に使用することによって、タービン構成部品をマスクして形成後コーティング処理の間にタービン構成部品内の任意の孔をブロックする方法が提供される。その方法は、付加製造によって適合型コーティングマスク300およびタービンブレード100を同時に形成することを含む。形成後、適合型コーティングマスク300は、少なくとも1つの閉鎖プラグが少なくとも1つの対応する冷却孔200を覆うようにブレード100を覆って配置される。1つもしくは複数のコーティングマスク固定インサート330または半径方向マスクストリップ303に力がかかると、少なくとも1つだが、好ましくは全ての挿入部350が、対応する冷却孔200の中に移動する。
【0057】
コーティング(またはその他の形成後処理)を施すことができ、コーティングマスク固定インサート330を差し込むことによってブレード100上の冷却孔200にコーティングが入るのを防ぐ。さらに、コーティングマスク固定インサート330が提供されず、かつ冷却孔200に挿入もされない場合であっても、少なくとも1つの半径方向マスクストリップ303が近接した冷却孔200の列を覆うためコーティングが冷却孔200に入るのを防ぐことができる。各半径方向マスクストリップ303は、冷却孔200の列を覆うことができる。その結果、全ての冷却孔200が、対応するコーティングマスク固定インサート330を必要とするとは限らず、それでもなおマスキングを実現することができる。換言すると、コーティングマスク固定インサート330は、アンカー301、302のうちの1つが壊れた場合に半径方向マスクストリップ303を所定の位置に位置決めして固定する働きをする。本明細書の実施形態は、全ての冷却孔に対する挿入部350およびコーティングマスク固定インサート330を必要としないが、全ての冷却孔200を覆う半径方向マスクストリップ303によってコーティングがその中に入るのを防ぐことができる。
【0058】
任意の形成後処理が完了すると、適合型コーティングマスク300は、これらに限定されないが、アンカー301、302、半径方向マスクストリップ303または任意のコーティングマスク固定インサート330などの適合型コーティングマスク300の任意の部分を持ち上げることによって取り外すことができる。
【0059】
本開示のその他の態様は、タービン構成部品をマスクし、形成後処理の間にタービン構成部品内の任意の孔をブロックする方法を提供する。その方法は、付加製造によってタービン構成部品を形成することと同時に付加製造によって適合型コーティングマスクを形成することを含む。適合型コーティングマスクを形成することは、付加製造によって少なくとも2つのアンカーと、少なくとも2つのアンカーの各々と一体に形成され、少なくとも2つのアンカーの各々の間に延在する複数の半径方向マスクストリップと、少なくとも1つのコーティングマスク固定インサートとを一体に形成することを含む。少なくとも1つのコーティングマスク固定インサートの各々は、個々の少なくとも1つの半径方向マスクストリップと一体に形成され、複数の半径方向マスクストリップは複数の冷却孔と位置を合わせてそれらの複数の冷却孔を覆う。
【0060】
近似を表す文言は、本明細書および特許請求の範囲を通じてここで使用される場合、関連する基本的機能に変化をもたらすことなく変動することが許され得るあらゆる量的な表現を修飾するために適用することができる。したがって、「およそ」、「約」、および「実質的に」などの1つまたは複数の用語によって修飾された値は、明記された厳密な値に限定されるものではない。少なくともいくつかの例では、近似を表す文言は、値を測定するための機器の精度に対応することができる。ここで、ならびに本明細書および特許請求の範囲を通して、範囲の限定は、組合せおよび/または置換えが可能であり、文脈または文言が特に指示しない限り、このような範囲は、識別され、範囲に包含されるすべての部分範囲を含む。範囲の特定の値に適用される「約」は、両端の値に適用され、値を測定する機器の精度に特に依存しない限り、記載された値の±10%を示すことができる。
【0061】
以下の特許請求の範囲におけるミーンズプラスファンクションまたはステッププラスファンクションの要素すべての、対応する構造、材料、動作、および均等物は、具体的に請求された他の特許請求された要素と組み合わせてその機能を実施するための、一切の構造、材料、または動作を包含することを意図している。本開示の説明は、例示および説明の目的で提示されており、網羅的であることも、または本開示を開示した形態に限定することも意図していない。当業者には、本開示の範囲および趣旨から逸脱することなく多くの修正および変形が明らかであろう。本実施形態は、本開示の原理および実際の応用を最良に説明し、想定される特定の用途に適するように様々に変更された様々な実施形態について当業者が本開示を理解できるように、選択され、説明されている。
【符号の説明】
【0062】
100 タービンブレード(ブレード)
104 プラットフォーム
105 翼形部
106 表面
108 先端
110 前縁部
111 後縁部
116 ベース
122 凹部
128 冷却通路
129 接続管
200 冷却孔
201 冷却孔
300 適合型コーティングマスク
301 アンカー
302 アンカー
303 半径方向マスクストリップ
304 半径方向マスクストリップ
305 半径方向マスクストリップ
306 半径方向マスクストリップ
308 ヒンジ構造
320 端部
321 端部
330 コーティングマスク固定インサート
331 プラグキャップ
332 圧縮可能部分
333 圧縮可能脚(脚)
334 圧縮可能脚(脚)
335 ギャップ
339 底面
340 窪み
350 挿入部
351 細長い螺旋またはコークスクリュー部
353 正弦波部