(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-04
(45)【発行日】2025-07-14
(54)【発明の名称】切除電極及び戻り電極を有するバルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20250707BHJP
【FI】
A61B18/14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021131893
(22)【出願日】2021-08-13
【審査請求日】2024-06-21
(32)【優先日】2020-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・トーマス・ビークラー
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・トーマス・キース
(72)【発明者】
【氏名】ケビン・ジャスティン・ヘレラ
【審査官】小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0007157(US,A1)
【文献】特表2008-515544(JP,A)
【文献】特表2016-527959(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0351836(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルであって、
患者の器官の中に挿入するための拡張可能なフレームと、
前記拡張可能なフレーム上において、前記器官の標的組織と接触している1つ以上の第1の位置に配置され、(i)前記標的組織から1つ以上の電気信号を感知することと、(ii)1つ以上の切除パルスを前記標的組織に印加することとの一方又は両方を実行するように構成された1つ以上の第1の電極と、
前記拡張可能なフレームの内部容積内において、前記1つ以上の第1の電極が前記標的組織に接触している間に前記標的組織と接触していない第2の位置に配置され、前記電気信号のための戻り電極又は共通電極として機能するように構成されている、第2の電極と、を備
え、
前記器官が患者の心臓を含み、前記1つ以上の電気信号が、前記心臓から感知された1つ以上の単極心内電気信号を含む、カテーテル。
【請求項2】
前記カテーテルに電気的に接続され、前記1つ以上の第1の電極に1つ以上の単極切除パルスを印加するように構成されている切除電源を含む、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記拡張可能なフレームは膨張可能バルーンを含む、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記拡張可能なフレームは、拡張可能なバスケットを含む、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
カテーテルを製造する方法であって、
患者の器官の中に挿入するための拡張可能なフレームを受容することと、
前記拡張可能なフレーム上において、1つ以上の第1の位置に、前記器官の標的組織と接触するように配置するための
、(i)前記標的組織から1つ以上の電気信号を感知することと、(ii)1つ以上の切除パルスを前記標的組織に印加することとの一方又は両方を実行するように構成された、1つ以上の第1の電極を配置することと、
前記拡張可能なフレームの内部容積内において、前記1つ以上の第1の電極が前記標的組織に接触している間に前記標的組織と接触していない第2の位置に、前記電気信号のための戻り電極又は共通電極として機能する第2の電極を配置することと、を含
み、
前記器官が患者の心臓を含み、前記1つ以上の電気信号が、前記心臓から感知された1つ以上の単極心内電気信号を含む、方法。
【請求項6】
前記カテーテルに、1つ以上の単極切除パルスを前記1つ以上の第1の電極に印加するための切除電源を電気的に接続することを含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の第1の電極を配置することが、前記1つ以上の第1の電極を前記拡張可能なフレームに連結することを含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上の第1の電極を配置することが、前記拡張可能なフレーム内に前記1つ以上の第1の電極を生成することを含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の電極を配置することが、前記第2の電極を前記拡張可能なフレームの前記内部容積内にある前記第2の位置でカテーテルシャフトに連結することを含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項10】
前記拡張可能なフレームを受容することは、膨張可能バルーンを受容することを含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項11】
前記拡張可能なフレームを受容することは、拡張可能なバスケットを受容することを含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上の第1の電極が前記標的組織に接触している間に前記標的組織と接触していない第3の位置に、前記電気信号のための追加の戻り電極として機能する第3の電極を配置することを含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項13】
前記第3の位置に前記第3の電極を配置することが、前記第3の電極を前記拡張可能なフレームの前記内部容積の外でカテーテルシャフト上に配置することを含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
カテーテルであって、
患者の器官の中に挿入するための拡張可能なフレームと、
前記拡張可能なフレーム上において、前記器官の標的組織と接触している1つ以上の第1の位置に配置され、(i)前記標的組織から1つ以上の電気信号を感知することと、(ii)1つ以上の切除パルスを前記標的組織に印加することとの一方又は両方を実行するように構成された1つ以上の第1の電極と、
前記拡張可能なフレームの内部容積内において、前記1つ以上の第1の電極が前記標的組織に接触している間に前記標的組織と接触していない第2の位置に配置され、前記電気信号のための戻り電極又は共通電極として機能するように構成されている、第2の電極と、を備え、
前記器官が患者の心臓を含み、前記1つ以上の切除パルスが、前記心臓に印加される1つ以上の単極高周波(RF)切除パルスを含む、カテーテル。
【請求項15】
カテーテルを製造する方法であって、
患者の器官の中に挿入するための拡張可能なフレームを受容することと、
前記拡張可能なフレーム上において、前記器官の標的組織と接触している1つ以上の第1の位置に、(i)前記標的組織から1つ以上の電気信号を感知することと、(ii)1つ以上の切除パルスを前記標的組織に印加することとの一方又は両方を実行するように構成された1つ以上の第1の電極を配置することと、
前記拡張可能なフレームの内部容積内において、前記1つ以上の第1の電極が前記標的組織に接触している間に前記標的組織と接触していない第2の位置に、前記電気信号のための戻り電極又は共通電極として機能する第2の電極を配置することと、を含み、
前記器官が患者の心臓を含み、前記1つ以上の切除パルスが、前記心臓に印加される1つ以上の単極高周波(RF)切除パルスを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に医療装置に関し、具体的には拡張可能なフレームを有するカテーテルを使用して単極切除手順を実行するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
バルーンカテーテルなどの様々な種類の診断及び治療用カテーテルは、患者器官の単極切除などのマッピング及び/又は治療用途に使用され得る。
【0003】
例えば、米国特許出願公開第2016/0199127号は、脾臓及び/又は頚動脈の除神経を通じて全身性神経過敏を治療するためのツール及び方法を記載している。本発明は、切除を実行し、塞栓の形成から患者を保護するための装置、並びに分枝切除を実施するための切除ユニットを開示する。
【0004】
米国特許第9,925,001号は、遠位領域を有する細長い管状部材を含む腎神経切除装置を記載している。拡張可能な部材は、遠位領域に連結されてもよい。1つ以上の活性電極は、拡張可能な部材に連結されてもよい。1つ以上の接地電極は、拡張可能な部材に連結されてもよい。1つ以上の活性電極及び/又は1つ以上の接地電極は、拡張可能な部材の長さを中心に螺旋状に配向されてもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で記載される本発明の実施形態は、患者の器官の中に挿入するための拡張可能なフレーム、及び1つ以上の第1の電極、及び第2の電極を含むカテーテルを提供する。拡張可能なフレーム上において、1つ以上の第1の電極は、器官の標的組織と接触して配置するための1つ以上の第1の位置に配置され、(i)標的組織から1つ以上の電気信号を感知することと、(ii)1つ以上の切除パルスを標的組織に印加することと、のうちの1つ又は両方を実行するように構成されている。拡張可能なフレームの内部容積内において、第2の電極は、1つ以上の第1の電極が標的組織に接触している間に標的組織と接触していない第2の位置に配置され、電気信号のため戻り電極又は共通電極として機能するように構成されている。
【0006】
いくつかの実施形態では、カテーテルは、カテーテルに電気的に接続され、1つ以上の単極切除パルスを1つ以上の第1の電極に印加するように構成されている。他の実施形態では、器官は、患者の心臓を含み、1つ以上の電気信号は、心臓から感知された1つ以上の単極心内電気信号を含む。更に他の実施形態では、器官は、患者の心臓を含み、1つ以上の切除パルスは、心臓に印加される1つ以上の単極高周波(RF)切除パルスを含む。
【0007】
実施形態では、拡張可能なフレームは膨張可能バルーンを含む。別の実施形態では、拡張可能なフレームは、拡張可能なバスケットを含む。
【0008】
本発明の実施形態により、カテーテルを製造するための方法であって、患者の器官の中に挿入するための拡張可能なフレームを受容することを含む方法が更に提示される。拡張可能なフレーム上において、器官の標的組織と接触して配置される1つ以上の第1の電極が、1つ以上の第1の位置に配置される。拡張可能なフレームの内部容積内において、電気信号のための戻り電極又は共通電極として機能する第2の電極は、1つ以上の第1の電極が標的組織に接触している間に標的組織と接触していない第2の位置に配置される。
【0009】
いくつかの実施形態では、1つ以上の第1の電極を配置することは、拡張可能なフレーム内に1つ以上の第1の電極を生成することを含む。他の実施形態では、第2の電極を配置することは、拡張可能なフレームの内部容積内において、第2の電極を第2の位置でカテーテルシャフトに連結することを含む。
【0010】
実施形態では、方法は、1つ以上の第1の電極が標的組織に接触している間に標的組織と接触していない第3の位置に、電気信号のための追加の戻り電極として機能する第3の電極を配置することを含む。別の実施形態では、第3の位置に第3の電極を配置することは、第3の電極をカテーテルシャフト上に拡張可能なフレームの内部容積の外に配置することを含む。
【0011】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態による、カテーテルベースの位置追跡及び高周波(RF)切除システムの概略描写図である。
【
図2】本発明の実施形態による、RF切除システムのカテーテル先端の概略描写図である。
【
図3】本発明の実施形態による、バルーン及び複数の電極を含むカテーテル先端を製造するための方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概論
単極(単極、高周波(RF)切除処置とも呼ばれる)は、患者の心臓の感知及び切除などのいくつかの医療用途に使用される。原則として、医師は、単極信号を取得し及び/又は外部患者の皮膚に連結され得る戻り電極パッチと共に1つ以上の感知/切除電極を使用して、単極パルスを印加することができる。しかしながら、この構成では、患者の心臓の標的組織と接触している感知/切除電極間の大きな距離、及び戻り電極は、(i)組織から取得された単極信号にノイズを付加することができ、及び/又は(ii)RF切除処置中に組織に印加される単極信号への増加したインピーダンスを有することができる。
【0014】
本明細書に記載される本発明の実施形態は、拡張可能なバルーン又は拡張可能なバスケットなどの拡張可能なフレームを含むカテーテルを有する切除システムを提供し、この拡張可能なフレームは、カテーテル遠位端のカテーテル先端に連結されており、カテーテル先端は、患者の心臓に挿入される。
【0015】
いくつかの実施形態では、拡張可能なフレーム上において、カテーテルは、心臓の標的組織(切除されることを意図する)と接触して配置するための1つ以上の位置に配置された1つ以上の感知電極及び/又は切除電極を備え、(i)標的組織から1つ以上の心内電気信号を感知することと、(ii)1つ以上のRF切除パルスを標的組織に印加することと、のうちの1つ又は両方を実行するように構成されている。
【0016】
いくつかの実施形態では、拡張可能なフレームの内部容積内において、カテーテルは、1つ以上の感知電極及び/又は切除電極が標的組織に接触している間に標的組織と接触していない位置に配置される追加の電極を備える。このような実施形態では、追加の電極は、電気信号又は印加されたパルスの戻り電極又は共通電極として機能するように構成され、(i)心臓からの単極心内電気信号の取得を可能にし、及び/又は(ii)切除電極(複数可)を使用して、標的組織に単極RF切除パルスを印加する。
【0017】
いくつかの実施形態では、切除システムは、カテーテルに電気的に接続され、RF切除パルスを1つ以上の切除電極に印加するように構成されたパルス発生器を備える。切除システムは、感知電極によって取得された心内信号を受信し、パルス発生器を制御して、RF切除パルスを切除電極に印加するように構成されたプロセッサを更に備える。
【0018】
いくつかの実施形態では、開示された技術は、必要な変更を加えて、腎神経の感知及び切除処置、又は患者の他の器官の感知及び/又は切除などの他の用途で使用されてもよい。
【0019】
開示された技術、具体的には、同じカテーテル上に配置された感知/切除電極と戻り電極との間の近接性は、患者組織から取得された電気信号におけるノイズレベルを低減し、切除処置で使用される切除電極と戻り電極との間のインピーダンスを低減することによって組織切除の精度を改善する。
【0020】
システムの説明
図1は、本発明の実施形態による、カテーテルベースの位置追跡及び高周波(RF)切除システム20の概略描写図である。
【0021】
ここで、挿入
図25を参照する。いくつかの実施形態では、システム20は、
図1の全体図に示されるカテーテル21のシャフト22の遠位端22aに取り付けられたカテーテル先端40を備える。
【0022】
いくつかの実施形態では、カテーテル先端40は、拡張可能なフレーム、本実施例では、複数の電極を有する膨張可能なバルーン66を備え、例えば、(i)複数の感知電極及び/又はRF切除電極77、並びに(ii)以下に詳細に記載されるように、戻り電極又は共通電極として機能するように構成された1つ以上の電極50及び55などであるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、電極77及び電極50及び55は、心臓26内の肺静脈(PV)の小孔51から単極信号を取得するか、又は心臓26内の小孔51へ1つ以上の単極切除パルスを切除するための戻り電極として使用される。バルーン66及び電極50、55及び77は、以下の
図2に詳細に記載される。
【0023】
再度
図1の概略図を参照する。いくつかの実施形態では、カテーテル21の近位端は、単極切除パルスを小孔51の組織に印加するためのRF発生器45を備える制御コンソール24に接続される。切除パラメータを含む切除プロトコルが、コンソール24のメモリ48に記憶される。
【0024】
いくつかの実施形態では、医師30は、シース23を介してシャフト22の遠位端22aを、台29に横たわる患者28の心臓26に挿入する。医師30は、カテーテル21の近位端の近くに位置するマニピュレータ32を使用してシャフト22を操作することによって、シャフト22の遠位端を心臓26内の、本明細書では標的位置とも呼ばれる小孔51まで前進させる。遠位端22aを挿入する間、カテーテル先端40はシース23の内部に維持されて、標的位置への経路に沿った血管外傷を最小限に抑える。
【0025】
いくつかの実施形態では、システム20は、心臓26内のカテーテル先端30の位置をナビゲート及び追跡するために医師30によって使用され得るインピーダンスに基づくアクティブ電流位置(ACL)システムを含む。
【0026】
実施形態では、医師30は、カテーテル先端40の位置を追跡することによって、シャフト22の遠位端を標的位置にナビゲートする。心臓26内の遠位端22aのナビゲーションの間、コンソール24は、コイル(図示せず)又は他の任意の要素、例えば、ACLシステムのインピーダンスベースの位置センサーとして機能するように構成された電極50及び55のいずれかから信号を受信する。
【0027】
いくつかの実施形態では、ACLシステムは、例えば、患者28の皮膚に付着するパッチ29を介して患者28の身体に連結される複数の電極38を備える。
図1の例では、システム10は、6つの電極を含み、これらのうち、電極38a、38b、及び38cは、患者28の前側(例えば、胸部)に連結され、電極38d、38e、及び38fは、患者28の後側に連結される。
図1に示すように、電極は、次のように、対で配置される:電極38a及び38dは、患者28の右側で互いに対向しており、電極38c及び38fは、患者28の左側で互いに対向しており、電極38b及び38eは、患者28の胸部及び後側の上部で互いに対向している。
【0028】
別の実施形態では、システム20は、任意の好適な配置で患者の皮膚に連結された、任意の好適な数の電極を含むことができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、電極38a~38fは、典型的には、ケーブル37を介してシステム20のプロセッサ41に接続され、システム20は、測定されたインピーダンスを示す電極38a~38fから受信し、受信した信号に基づいて、本明細書に記載される技術を使用して心臓26内のカテーテル先端40の位置を推定するように構成されている。
【0030】
いくつかの実施形態では、電極38a~38fは典型的には、上述のインピーダンスに基づくACLシステム及び追跡技術、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,456,182号及び米国特許出願公開第2015/0141798号に記載の技術を使用して、患者28の身体内のカテーテル21を誘導するために使用される。
【0031】
いくつかの実施形態では、ACLシステムは、カテーテル先端40に連結された電極と電極38a~38fのそれぞれとの間で測定された異なるインピーダンスに応じてカテーテル先端40の位置を推定するように構成される。
【0032】
いくつかの実施形態では、プロセッサ41は、心臓26内のカテーテル先端40の位置を推定し、コンソール24のディスプレイ27上に、心臓26の解剖学的画像42(又は合成モデル)上に重ねられたマーカー(図示せず)を表示するように構成されている。医師30は、例えば、カテーテル先端40を小孔51内にナビゲートするためにマーカーを使用してもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、シャフト22の遠位端22aが心臓26に到達すると、医師30は、シース23を後退させ、シャフト22を更に操作してカテーテル先端40を肺静脈の小孔51、又は心臓26の他の任意の標的位置にナビゲートする。
【0034】
いくつかの実施形態では、カテーテル先端40が組織と接触して配置されている間、医師30は、心臓26の標的組織から単極心内電気信号を取得するため、及び/又は単極切除パルスを標的組織に印加するために、システム20を制御することができる。
【0035】
原則として、医師30は、患者28の皮膚の外部に連結された戻り電極(本明細書では、不関電極又は中性電極とも呼ばれる)パッチを使用して単極信号を取得してもよい。同様に、医師30は、1つ以上の単極切除パルスを心臓26の組織に印加するために戻り電極を使用してもよい。戻り電極は、電極38a~38fのいずれかから、又はウィルソン中央終端(WCT)などの任意の他の電極構成で使用される電極パッチから選択されてもよい。この構成に基づいて、医師30は、RF発生器45を制御して、カテーテル先端40の電極77と、患者28の皮膚の外部に連結された選択された不関電極パッチとの間に流れるRF電流のパルスを印加することができる。しかしながら、この構成では、(心臓26の標的組織と接触する)電極77と選択された異なる電極との間の大きな距離は、(i)組織から取得された単極信号にノイズを付加することができ、及び/又は(ii)RF切除処置中に組織に印加される単極信号へのインピーダンスの増加をもたらし得る。
【0036】
付加されたノイズ及び/又はインピーダンスの増加を克服する技術は、以下の
図2に詳細に記載される。
【0037】
プロセッサ41は、典型的には、フロントエンドと、(a)電極38からのECG信号を受信するためのECGインターフェース回路44と、(b)カテーテル21からの信号を受信するとともに、心臓26の左心房内でカテーテル21を介してRFエネルギー処置を適用し、システム20の他の構成要素を制御するための電気インターフェース回路52と、を備えた汎用コンピュータである。プロセッサ41は、典型的には、本明細書に記載される機能を実行するようにプログラムされた、システム20のメモリ48内のソフトウェアを含む。ソフトウェアは、例えばネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードすることができる、あるいは代替的に又は追加的に、磁気メモリ、光学メモリ、若しくは電子メモリなどの、非一時的実体的媒体上に提供及び/又は記憶することができる。
【0038】
システム20のこの特定の構成は、本発明の実施形態で対処する特定の問題を説明し、またこのような切除システムの性能を向上させる際にこれらの実施形態の適用を実証するために、例として示される。しかしながら、本発明の実施形態は、この特定の種類の例示的なシステムに限定されるものではなく、本明細書に記載される原理は、他の種類の切除システムにも同様に適用され得る。
【0039】
他の実施形態では、バルーン66の代わりに、カテーテル先端40は、拡張可能なバスケット又は任意の他の好適なタイプの拡張可能なフレームなど、任意の他の好適な構成要素を有してもよい。
【0040】
切除バルーンカテーテルに組み込まれた戻り電極を使用して単極切除を行う
図2は、本発明の実施形態によるカテーテル先端40の概略描写図である。
【0041】
いくつかの実施形態では、カテーテル21のカテーテル先端40に連結されたバルーン66又は任意の他の拡張可能なフレームは、典型的には、医師30がカテーテル先端40を標的位置に移動するときに畳み込まれた位置にあり、標的位置で拡張されるように構成される。
【0042】
本開示の文脈において、拡張可能なフレームは、畳み込まれた位置及び拡張位置を有し、具体的には、バルーン66は、拡張可能なフレームの拡張位置に対応する畳み込まれた位置及び膨張した位置を有する。以下の説明は、バルーン66を指すが、以下に記載される技術は、バスケットカテーテルなどであるが、これらに限定されない、他の種類の拡張可能なフレームを有する任意のカテーテルに、必要な変更を加えて適用されてもよいことに留意されたい。
【0043】
いくつかの実施形態では、バルーン66は、約12mmの直径、又は任意の他の好適な直径を有し、バルーン66の表面上に配置された電極77を備える。いくつかの実施形態では、心臓26の組織と接触して配置されると、電極77は、組織からの心内電気信号を感知するように構成されている。
図2の例では、バルーン66は、組織内の電気信号の高解像度マッピングを得るために、複数の電極77を有する。本実施例では、カテーテル先端40は、組織単極心内電気信号から取得するように構成されている。
【0044】
本開示の文脈において及び特許請求の範囲において、任意の数値や数値の範囲について用いられる「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書で述べるその意図された目的に沿って機能することを可能とする、適当な寸法の許容誤差を示すものである。
【0045】
いくつかの実施形態では、電極77は、上記の
図1に記載されるように、RF発生器45から受信され、プロセッサ41及び/又は医師30によって制御される1つ以上の単極RF切除パルスを組織に印加するように更に構成される。いくつかの実施形態では、1つの電極77を組織と接触させることによって、医師30は、切除された組織の所望の位置で高解像度切除(例えば、狭い病変を形成する)を得ることができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、医師30は、とりわけ、標的位置で組織に印加されるRF切除パルスのエネルギー及び持続時間を制御することによって、病変の深さを決定することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、カテーテル先端40は、バルーン66に近接して選択された位置でシャフト22に連結され、戻り電極として機能するように構成されている電極55を備える。バルーン66が膨張位置にあるとき、1つ以上の電極77は、標的組織(例えば、小孔51)と接触して配置されるが、電極55は、心臓26の血液プールと接触して配置されているが、標的組織と直接接触しない。したがって、電極55は、標的組織から単極信号を感知するため、及び/又は単極切除パルスを標的組織に印加するための戻り電極として機能することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、カテーテル先端40は、バルーン66の内部容積内、したがって、
図2に破線要素として示され、標的組織と接触して配置されていない位置に配置される電極50を含み得る。例えば、電極50は、カテーテル先端40の軸74に沿ってシャフト22に連結され得る。この構成では、バルーン66が膨張した位置にあるとき、1つ以上の電極77が標的組織と接触して配置される。しかしながら、電極50は、バルーン66の内部容積内にあるため、標的組織と接触していないが、別の組織(例えば、心臓26の血液プール)、又はバルーン66を膨張させるために使用される生理食塩水溶液と接触して配置されている。血液及び生理食塩水溶液の両方が導電性であるため、電極50並びに電極55が上述のような戻り電極又は共通電極として機能し得るように、感知された信号及び/又は上記の印加されたパルスを伝導するように構成されていることに留意されたい。更に、電極50又は55が、1つ以上の電極77と一緒に標的組織と接触している場合、前述の感知信号及び又は印加パルスは、例えば、電極77と50との間、又は望ましくない電極77と55との間の双極性であってもよく、場合によっては、心臓26への損傷を引き起こし得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、バルーン66は、印刷された電気的相互接続を有する可撓性プリント回路基板(PCB)などであるが、これらに限定されない可撓性基板を備えてもよい。本実施例では、電気相互接続は、カテーテル先端40の軸74に平行である電気トレース76と、軸74に直交する電気トレース78とを含む。可撓性PCBは、電気トレース76及び78が電極77とコンソール24との間で電気信号及び/又はRF切除パルスを伝導するように構成されるように、バルーン66の表面の周囲に巻かれる。
【0050】
バルーン66の構成は、本発明の実施形態によって対処される特定の問題を説明し、そのような切除カテーテルのカテーテル先端の性能を高めることにおけるこれらの実施形態の適用を実証するために、例として提供される。しかしながら、本発明の実施形態は、この特定の種類の例示的なカテーテル先端に限定されるものではなく、本明細書に記載される原理は、他の種類の切除システムにも同様に適用され得る。
【0051】
他の実施形態では、バルーン66の代わりにカテーテル先端40は、カテーテル21のシャフト22に連結された拡張可能なフレームを有するバスケット型遠位端などの任意の他の好適な構成要素を有してもよい。このような実施形態では、電極77は、バスケットの拡張可能なフレームのスプラインに連結されてもよく、電極50は、拡張可能なフレームの内部容積内のシャフト22に連結されてもよい。追加的に又は代替的に、電極55は、例えば、
図2に示す位置でシャフト22に連結されてもよい。電極50及び55は、電極77によって感知された電気信号のため戻り電極又は共通電極として機能するように構成されていることに留意されたい。したがって、カテーテル先端40は電極50及び55のうちの1つのみを含み得ることに留意されたい。この構成では、電極50又は電極55は心臓26の血液プールと接触し、心臓26の標的組織と接触していない。
【0052】
戻り電極を有する切除バルーンカテーテルを製造する
図3は、本発明の実施形態による、カテーテル先端40の製造方法を概略的に示すフローチャートである。この方法は、電気トレース76及び78などの電気相互接続を有する可撓性PCBを受容する、基板受容工程100で開始する。切除電極配置工程102では、1つ以上の切除電極77が可撓性PCB上に配置され、電気トレース76及び78に接続される。本開示及び特許請求の範囲の文脈において、用語「配置」は「形成」又は「生成」(例えば、任意の適切なPCB生成プロセスを使用して、PCB内の電極77)又は「連結」又は「取り付け」(PCBへの電極77、限定されないがはんだ付けなどの適切な連結技術を使用)を指す。
【0053】
戻り電極連結工程104では、1つ以上の戻り電極50及び55であるが、典型的には1つの戻り電極が十分であり、カテーテル21の遠位端22aでカテーテル先端40に連結される。電極50及び55の位置は、バルーン66又は任意の他の好適なタイプの拡張可能なフレームが膨張又は拡張された位置にあるとき、1つ以上の電極77が標的組織と接触して配置されるが、電極50及び電極55のいずれも、標的組織と接触して配置されないことを示すために例として提供されることに留意されたい。他の実施形態では、戻り電極又は共通電極は、任意の適切な位置で拡張可能フレーム(例えば、バルーン66又は前述のバスケット)に連結又は生成され得、その結果、戻り電極又は共通電極は、電極77が、
図1及び
図2に詳細に説明されるように、心臓内電気信号を感知するために、又は1つ以上の切除パルスを標的組織に印加するために標的組織と接触して配置される場合、標的組織と接触しない。
【0054】
方法を完結するカテーテル先端アセンブリ工程106では、可撓性PCBはバルーン66の周りに巻き付けられ、バルーン66に連結され(例えば、ボンディング又ははんだ付けを使用して)、バルーン66は、カテーテル先端40の形成を完了するようにシャフト22の遠位端22aに連結される。バルーン66の代わりに前述のバスケットを使用する場合、工程106は、バスケットをシャフト22の遠位端22aに連結してカテーテル先端40の製造を完了させることを含み得ることに留意されたい。
【0055】
カテーテル先端40の構成及びその製造方法は簡略化され、開示された発明の主要な特徴を示すために概念的明確性のために説明される。
【0056】
本明細書に記載される実施形態は、主に心臓組織の単極感知及び切除に対処するが、本明細書に記載される方法及びシステムはまた、患者の身体の任意の他の組織において単極感知及び/又は切除を実施する際など、他の用途で使用することもできる。
【0057】
したがって、上述の実施形態は、例として引用したものであり、本発明は、上記の明細書に具体的に示し、かつ説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の明細書に記載される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の不可欠な部分と見なすものとする。
【0058】
〔実施の態様〕
(1) カテーテルであって、
患者の器官の中に挿入するための拡張可能なフレームと、
前記拡張可能なフレーム上において、前記器官の標的組織と接触している1つ以上の第1の位置に配置され、(i)前記標的組織から1つ以上の電気信号を感知することと、(ii)1つ以上の切除パルスを前記標的組織に印加することとの一方又は両方を実行するように構成された1つ以上の第1の電極と、
前記拡張可能なフレームの内部容積内において、前記1つ以上の第1の電極が前記標的組織に接触している間に前記標的組織と接触していない第2の位置に配置され、前記電気信号のための戻り電極又は共通電極として機能するように構成されている、第2の電極と、を備える、カテーテル。
(2) 前記カテーテルに電気的に接続され、前記1つ以上の第1の電極に1つ以上の単極切除パルスを印加するように構成されている切除電源を含む、実施態様1に記載のカテーテル。
(3) 前記器官が患者の心臓を含み、前記1つ以上の電気信号が、前記心臓から感知された1つ以上の単極心内電気信号を含む、実施態様1に記載のカテーテル。
(4) 前記器官が患者の心臓を含み、前記1つ以上の切除パルスが、前記心臓に印加される1つ以上の単極高周波(RF)切除パルスを含む、実施態様1に記載のカテーテル。
(5) 前記拡張可能なフレームは膨張可能バルーンを含む、実施態様1に記載のカテーテル。
【0059】
(6) 前記拡張可能なフレームは、拡張可能なバスケットを含む、実施態様1に記載のカテーテル。
(7) カテーテルを製造する方法であって、
患者の器官の中に挿入するための拡張可能なフレームを受容することと、
前記拡張可能なフレーム上において、1つ以上の第1の位置に、前記器官の標的組織と接触するように配置するための1つ以上の第1の電極を配置することと、
前記拡張可能なフレームの内部容積内において、前記1つ以上の第1の電極が前記標的組織に接触している間に前記標的組織と接触していない第2の位置に、前記電気信号のための戻り電極又は共通電極として機能する第2の電極を配置することと、を含む、方法。
(8) 前記カテーテルに、1つ以上の単極切除パルスを前記1つ以上の第1の電極に印加するための切除電源を電気的に接続することを含む、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記1つ以上の第1の電極を配置することが、前記1つ以上の第1の電極を前記拡張可能なフレームに連結することを含む、実施態様7に記載の方法。
(10) 前記1つ以上の第1の電極を配置することが、前記拡張可能なフレーム内に前記1つ以上の第1の電極を生成することを含む、実施態様7に記載の方法。
【0060】
(11) 前記第2の電極を配置することが、前記第2の電極を前記拡張可能なフレームの前記内部容積内にある前記第2の位置でカテーテルシャフトに連結することを含む、実施態様7に記載の方法。
(12) 前記拡張可能なフレームを受容することは、膨張可能バルーンを受容することを含む、実施態様7に記載の方法。
(13) 前記拡張可能なフレームを受容することは、拡張可能なバスケットを受容することを含む、実施態様7に記載の方法。
(14) 前記1つ以上の第1の電極が前記標的組織に接触している間に前記標的組織と接触していない第3の位置に、前記電気信号のための追加の戻り電極として機能する第3の電極を配置することを含む、実施態様7に記載の方法。
(15) 前記第3の位置に前記第3の電極を配置することが、前記第3の電極を前記拡張可能なフレームの前記内部容積の外でカテーテルシャフト上に配置することを含む、実施態様14に記載の方法。