(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-04
(45)【発行日】2025-07-14
(54)【発明の名称】シートバックフレーム及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/427 20060101AFI20250707BHJP
B60N 2/64 20060101ALI20250707BHJP
【FI】
B60N2/427
B60N2/64
(21)【出願番号】P 2021213144
(22)【出願日】2021-12-27
【審査請求日】2024-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 大輔
(72)【発明者】
【氏名】吉賀 謙祐
(72)【発明者】
【氏名】水野 明彦
(72)【発明者】
【氏名】北仲 史門
(72)【発明者】
【氏名】南雲 健二
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-025240(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056337(WO,A1)
【文献】特許第6364309(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/42,2/64
B60R 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのシートバックの左右の側部内でシート上下方向に延在する左右のサイドフレームと、
前記左右のサイドフレームの下端部間に架け渡されたロアフレームと、
前記ロアフレームの下端部からシート前方側へ延出され、着座者の仙骨部をシート後方側から支持すると共に、シート前方側からの荷重に対して脆弱化された脆弱部が設けられた仙骨支持部と、
を備え
、
前記仙骨支持部は、板金によって構成されており、前記ロアフレームの下面に固定された固定部と、前記固定部からシート前方側へ延出された前方延出部と、前記前方延出部の前端からシート上下方向の一方側へ延出された縦延出部とによって構成されているシートバックフレーム。
【請求項2】
前記脆弱部は、前記前方延出部におけるシート前後方向の中間部に設けられている請求項1に記載のシートバックフレーム。
【請求項3】
前記脆弱部は、前記前方延出部におけるシート前後方向の中間部がシート上下方向の一方側へ凸をなして曲がった曲げ部を有する請求項2に記載のシートバックフレーム。
【請求項4】
前記脆弱部には、前記脆弱部をシート上下方向に貫通した貫通孔が形成されている請求項2又は請求項3に記載のシートバックフレーム。
【請求項5】
前記
左右のサイドフレームの下端部間には、リクライニングロッドが架け渡されており、
前記仙骨支持部は、前記リクライニングロッドに対してシート下方側に配置されている請求項1~請求項4の何れか1項に記載のシートバックフレーム。
【請求項6】
シートクッションフレームを有するシートクッションと、
前記左右のサイドフレームの各下端部が前記シートクッションフレームの後端部に連結された請求項1~請求項5の何れか1項に記載のシートバックフレームを有するシートバックと、
を備えた車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックフレーム及び車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載されたシートでは、シートバックの骨格を構成するシートバックフレームのシート幅方向両側に一対のサイドフレームが設けられている。一対のサイドフレームには、着座者の仙骨部を支持する仙骨支持部材が架け渡されている。これにより、車両走行時における着座者のロール方向への揺動が抑制され、着座姿勢が安定する。
【0003】
下記特許文献2に記載されたシートバックフレームでは、左右のサイドフレームの下部における後端部間に、板金により形成された背面パネル(ロアフレーム)が架け渡されている。このロアフレームは、シート幅方向に凹凸が交互に並ぶように曲げられた凹凸形状部を有している。車両の後面衝突時に乗員からの過大な荷重がロアフレームに入力された際には、凹凸形状部が伸長する。これにより、上記の荷重が分散され、ロアフレームと左右のサイドフレームとの固定部に加わる引張り荷重が低減される。その結果、当該固定部及び左右のサイドフレーム等の他の部材が破損することを防止又は抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6364309号公報
【文献】特許第6387258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された先行技術では、車両の後面衝突時における着座者の保護については考慮されていない。一方、上記特許文献2に記載された先行技術では、通常の車両走行時における着座者の姿勢保持については考慮されていない。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、通常の車両走行時における着座者の姿勢保持と、車両の後面衝突時における着座者の保護とを両立することができるシートバックフレーム及び車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様のシートバックフレームは、車両用シートのシートバックの左右の側部内でシート上下方向に延在する左右のサイドフレームと、前記左右のサイドフレームの下端部間に架け渡されたロアフレームと、前記ロアフレームの下端部からシート前方側へ延出され、着座者の仙骨部をシート後方側から支持すると共に、シート前方側からの荷重に対して脆弱化された脆弱部が設けられた仙骨支持部と、を備えている。
【0008】
第1の態様のシートバックフレームでは、左右のサイドフレームが車両用シートのシートバックの左右の側部内でシート上下方向に延在している。左右のサイドフレームの下端部間には、ロアフレームが架け渡されている。ロアフレームの下端部からは、仙骨支持部がシート前方側へ延出されている。この仙骨支持部によって着座者の仙骨部がシート後方側から支持される。これにより、通常の車両走行時における着座者のロール方向への揺動が抑制され、着座姿勢が保持される。この仙骨支持部には、シート前方側からの荷重に対して脆弱化された脆弱部が設けられている。このため、車両の後面衝突時には、仙骨支持部に対して着座者の仙骨部から荷重が入力されることにより、仙骨支持部が脆弱部において変形する。これにより、着座者の慣性エネルギーが吸収され、シートバックフレームに加わるモーメントが低減される。その結果、着座者が車両後方斜め上方へせり上がる現象の発生が抑制されるので、着座者を保護することができる。
【0009】
第2の態様のシートバックフレームは、第1の態様において、前記仙骨支持部は、板金によって構成されており、前記ロアフレームの下面に固定された固定部と、前記固定部からシート前方側へ延出された前方延出部と、を有し、前記脆弱部は、前記前方延出部におけるシート前後方向の中間部に設けられている。
【0010】
第2の態様のシートバックフレームでは、板金によって構成された仙骨支持部が、固定部と前方延出部とを有している。固定部は、ロアフレームの下面に固定されており、前方延出部は、固定部からシート前方側へ延出されている。車両の後面衝突時には、前方延出部におけるシート前後方向の中間部に設けられた脆弱部が、着座者の仙骨部からの荷重によって変形する。このように、板金製の仙骨支持部が有する前方延出部に脆弱部が設けられるので、脆弱部の形状設定等の自由度が高く、脆弱部の変形荷重の調整が容易である。
【0011】
第3の態様のシートバックフレームは、第2の態様において、前記脆弱部は、前記前方延出部におけるシート前後方向の中間部がシート上下方向の一方側へ凸をなして曲がった曲げ部を有する。
【0012】
第3の態様のシートバックフレームでは、板金によって構成された仙骨支持部が前述した固定部と前方延出部とを有している。前方延出部のシート前後方向の中間部には、シート上下方向の一方側へ凸をなして曲がった曲げ部が脆弱部として設けられている。車両の後面衝突時には、着座者の仙骨部からの荷重によって上記曲げ部に応力が集中し、上記曲げ部が変形(座屈)する。このように、曲げ部が脆弱部とされているので、脆弱部を簡素な構成にすることができる。
【0013】
第4の態様のシートバックフレームは、第2の態様又は第3の態様において、前記脆弱部には、前記脆弱部をシート上下方向に貫通した貫通孔が形成されている。
【0014】
第4の態様のシートバックフレームでは、板金によって構成された仙骨支持部が前述した固定部と前方延出部とを有している。前方延出部のシート前後方向の中間部に設けられた脆弱部には、当該脆弱部をシート上下方向に貫通した貫通孔が形成されている。この貫通孔の形状や数等を設定変更することにより、脆弱部の変形荷重を容易に調整することができる。
【0015】
第5の態様のシートバックフレームは、第2の態様~第4の態様の何れか1つの態様において、前記仙骨支持部は、前記前方延出部の前端からシート上下方向の一方側へ延出された縦延出部を有する。
【0016】
第5の態様のシートバックフレームでは、板金によって構成された仙骨支持部が前述した固定部と前方延出部と縦延出部とを有している。縦延出部は、前方延出部の前端からシート上下方向の一方側へ延出されている。この縦延出部の前面によって着座者の仙骨部が支持されるので、着座者の違和感が少なくなる。
【0017】
第6の態様のシートバックフレームは、第1の態様~第5の態様の何れか1つの態様において、前記左右のサイドフレームの下端部間には、リクライニングロッドが架け渡されており、前記仙骨支持部は、前記リクライニングロッドに対してシート下方側に配置されている。
【0018】
第6の態様のシートバックフレームでは、左右のサイドフレームの下端部間には、リクライニングロッドが架け渡されている。ロアフレームの下端部からシート前方側へ延出された仙骨支持部は、リクライニングロッドに対してシート下方側に配置されている。この高さに仙骨支持部が配置されることにより、着座者の仙骨部を適切に支持することができる。
【0019】
第7の態様の車両用シートは、シートクッションフレームを有するシートクッションと、前記左右のサイドフレームの各下端部が前記シートクッションフレームの後端部に連結された第1の態様~第6の態様の何れか1つの態様のシートバックフレームを有するシートバックと、を備えている。
【0020】
第7の態様のシートバックフレームでは、シートバックフレームが有する左右のサイドフレームの各下端部が、シートクッションが有するシートクッションフレームの後端部に連結されている。上記のシートバックフレームは、第1の態様~第6の態様の何れか1つの態様のものであるため、前述した作用及び効果が得られる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明に係るシートバックフレーム及び車両用シートでは、通常の車両走行時における着座者の姿勢保持と、車両の後面衝突時における着座者の保護とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態に係る車両用シートを示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係るシートバックフレームを示す正面図である。
【
図3】同シートバックフレームを示す下面図である。
【
図4】同シートバックフレームが備える仙骨支持ブラケットの平面図である。
【
図7】比較例に係る車両用シートの部分的な構成を示す側面図である。
【
図8】比較例に係る車両用シートの部分的な構成を示す側面図であり、車両の後面衝突初期の状態を示す図である。
【
図9】
図8に示される状態よりも若干時間が経過した状態を示す
図8に対応した側面図である。
【
図10】
図9に示される状態よりも若干時間が経過した状態を示す
図8及び
図9に対応した側面図である。
【
図11】
図10に示される状態での車両用シート及び着座者の状態を示す側面図である。
【
図12】実施形態に係る車両用シートの部分的な構成を示す側面図であり、車両の後面衝突初期の状態を示す図である。
【
図13】
図12に示される状態よりも若干時間が経過した状態を示す
図12に対応した側面図である。
【
図15】
図14に示される状態での車両用シート及び着座者の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、
図1~
図15を参照して本発明の一実施形態に係るシートバックフレーム32及び車両用シート10について説明する。なお、各図においては図面を見易くする関係から一部の符号を省略している場合がある。また、各図中に適宜示される矢印FRは車両前方を示し、矢印UPは車両上方を示し、矢印RHは車両右方を示している。以下、前後左右上下の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両左右方向(車両幅方向)の左右、車両上下方向の上下を示すものとする。
【0024】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、シートクッション12と、シートバック30と、ヘッドレスト56とを備えている。シートクッション12は、着座者の臀部及び大腿部を支持し、シートバック30は、着座者の腰部及び背部を支持し、ヘッドレスト56は、着座者の頭部を支持する。シートクッション12は、骨格部材であるシートクッションフレーム14を有しており、シートバック30は、骨格部材であるシートバックフレーム32を有しており、ヘッドレスト56は、骨格部材であるヘッドレストフレーム(図示省略)を有している。なお、
図1では車両用シート10を概略的に図示している。
【0025】
シートクッションフレーム14、シートバックフレーム32及びヘッドレストフレームには、それぞれ表皮22、54、58によって覆われたパッド材(図示省略)が取り付けられている。この車両用シート10の前後方向、左右方向(幅方向)、及び上下方向は、車両の前後左右上下の方向と一致している。
【0026】
シートクッションフレーム14は、シートクッション12の左右の側部においてシート前後方向に延在した左右一対のサイドフレーム16と、左右のサイドフレーム16の前部における上端部間に架け渡されたフロントフレーム18と、左右のサイドフレーム16の後端部間に架け渡されたリヤフレーム20とを備えている。フロントフレーム18とリヤフレーム20との間には、図示しないシートクッションスプリングが架け渡されている。このシートクッションスプリングによって、シートクッション12のパッド材がシート下方側から弾性的に支持されている。
【0027】
左右のサイドフレーム16は、例えば板金がプレス成形されることにより長尺状に形成されており、長手方向がシート前後方向に沿い且つ厚さ方向がシート幅方向に沿う姿勢で配置されている。フロントフレーム18は、例えば板金によって略矩形状に形成され、厚さ方向がシート上下方向に沿う姿勢で配置されており、シート幅方向の両端部が左右のサイドフレーム16の前部に溶接等の手段によって固定されている。リヤフレーム20は、例えば金属製のパイプによって形成され、軸線方向がシート幅方向に沿う姿勢で配置されており、シート幅方向の両端部がカシメ等の手段で左右のサイドフレーム16の後端部に回転可能に連結されている。
【0028】
左右のサイドフレーム16は、周知のシートスライド機構24を介して車体床部に連結されており、車体床部に対する車両前後方向の位置を調節可能とされている。また、左右のサイドフレーム16の後端部には、周知のリクライニング機構26を介してシートバックフレーム32がリクライニング可能に連結されている。なお、本実施形態において、シートバック30に関して記載する前後左右上下の方向は、シートバック30がシートクッション12に対して起立した状態での方向を示すものとする。
【0029】
図1~
図3に示されるように、シートバックフレーム32は、シートバック30の左右の側部においてシート上下方向(シートバック30の高さ方向)に延在した左右一対のサイドフレーム34と、左右のサイドフレーム34の上端部間に架け渡されたアッパフレーム36と、アッパフレーム36に固定されたアッパパネル38と、左右のサイドフレーム34の下端部の後端部間に架け渡されたロアパネル40と、ロアパネル40の下端部からシート前方側へ延出された仙骨支持ブラケット42とを備えている。ロアパネル40は、本発明における「ロアフレーム」に相当し、仙骨支持ブラケット42は、本発明における「仙骨支持部」に相当する。
【0030】
左右のサイドフレーム34は、例えば板金がプレス成形されることにより長尺状に形成されており、長手方向がシート上下方向に沿い且つ厚さ方向がシート幅方向に沿う姿勢で配置されている。左右のサイドフレーム34の下端部は、シートクッションフレーム14の左右のサイドフレーム16の後端部に対して、前述したリクライニング機構26を介して連結されている。このリクライニング機構26は、左右のサイドフレーム34の下端部間に架け渡されたリクライニングロッド28を含んで構成されている。このリクライニングロッド28は、シート左右方向(シート幅方向)を軸線方向とする円筒状をなしている。
【0031】
アッパフレーム36は、例えば金属製のパイプが曲げ加工されることにより形成されており、シート正面視で略逆U字状をなしている。このアッパフレーム36は、シート上下方向に延びる左右の側部の下端部が、左右のサイドフレーム34の上端部に溶接等の手段によって固定されている。このアッパフレーム36において、シート左右方向に延びる上端部には、ヘッドレスト56が有する図示しないヘッドレストフレームを連結するための左右一対のヘッドレストサポートブラケット37が固定されている。なお、アッパフレーム36が板金製とされた構成にしてもよい。
【0032】
アッパパネル38は、例えば板金がプレス成形されることにより長尺状に形成されており、長手方向がシート左右方向に沿い且つ厚さ方向がシート前後方向に沿う姿勢で配置されている。アッパパネル38のシート左右方向の両端部は、アッパフレーム36の左右の側部におけるシート上下方向の中間部に対してシート後方側から重ね合わされており、溶接等の手段でアッパフレーム36に固定されている。
【0033】
ロアパネル40は、例えば板金がプレス成形されることにより長尺状に形成されており、長手方向がシート左右方向に沿い且つ厚さ方向がシート前後方向に沿う姿勢で配置されている。このロアパネル40のシート左右方向の両端部は、一例として、シート左右方向の外側へ向かうほどシート上方側に高さ寸法が拡大されている。このロアパネル40のシート左右方向の両端部は、左右のサイドフレーム34の下端部に対してシート後方側から重ね合わされており、溶接等の手段で左右のサイドフレーム34に固定されている。このロアパネル40は、リクライニングロッド28に対してシート後方側に配置されている。このロアパネル40の下端部には、シート上下方向を厚さ方向とする下フランジ部40Aが形成されている。
【0034】
図1に示されるように、アッパパネル38とロアパネル40との間には、左右一対のシートバックスプリング50が架け渡されている。左右のシートバックスプリング50のシート前方側には、例えば樹脂からなるランバーサポートプレート52が取り付けられている。ランバーサポートプレート52は、シート前後方向を厚さ方向として配置されており、シート前後方向視で略梯子状をなしている。このランバーサポートプレート52と左右のシートバックスプリング50とによってシートバック30のパッド材がシート後方側から弾性的に支持されており、着座者の腰部がランバーサポートプレート52によってシート後方側から支持される構成になっている。
【0035】
図1~
図6に示されるように、仙骨支持ブラケット42は、板金がプレス成形されることにより長尺状に形成されており、長手方向がシート左右方向に沿い且つ主要部の厚さ方向がシート上下方向に沿う姿勢で配置されている。この仙骨支持ブラケット42は、ロアパネル40の下フランジ部40A(
図3参照)の下面に固定された固定部42Aと、固定部42Aからシート前方側へ延出された前方延出部42Bと、前方延出部42Bの前端からシート上方側へ延出された縦延出部42Cとを一体に有している。
【0036】
図4には、固定部42Aは、シート左右方向を長手方向とし且つシート上下方向を厚さ方向とする長尺板状をなしている。この固定部42Aは、ロアパネル40の下フランジ部40Aの下面に対してシート下方側から重ね合わされている。この固定部42Aには、一例として複数(ここでは8個)の溶接用貫通孔44が形成されている。複数の溶接用貫通孔44は、仙骨支持ブラケット42の長手方向に間隔をあけて並んでいる。固定部42Aは、複数の溶接用貫通孔44の孔縁部が溶接によってロアパネル40の下フランジ部40Aに接合されている。なお、固定部42Aがボルト締結等の手段でロアパネル40に固定される構成にしてもよい。
【0037】
前方延出部42Bは、固定部42Aの前端からシート前方側へ一体に延出されており、シート左右方向を長手とする長尺状をなしている。前方延出部42Bにおけるシート前後方向の中間部は、脆弱部である曲げ部42B1とされている。この曲げ部42B1は、前方延出部42Bにおけるシート前後方向の中間部がシート上方側へ凸をなして曲がることで形成されている。この曲げ部42B1は、一例としてシート左右方向視で逆V字状をなしている。この曲げ部42B1の頂部には、シート左右方向に延びる稜線45が形成されている。前方延出部42Bは、上記の曲げ部42B1において、シート前方側からの荷重に対して脆弱化(弱化)されている。前方延出部42Bにおいて曲げ部42B1以外の部位は、シート上下方向を厚さ方向とする板状をなしている。なお、前方延出部42Bにおけるシート前後方向の中間部がシート下方側へ凸をなして曲がることで曲げ部が形成される構成にしてもよい。また、曲げ部42B1の曲げ形状は上記に限らず、適宜変更可能である。
【0038】
前方延出部42Bの曲げ部42B1(脆弱部)には、当該曲げ部42B1をシート上下方向に貫通した複数(ここでは5個)の貫通孔46が形成されている。複数の貫通孔46は、一例としてシート上下方向視でシート左右方向を長手とする略長尺矩形状をなしており、シート左右方向に間隔をあけて並んでいる。複数の貫通孔46は、曲げ部42B1の頂部及び上下方向中間部を貫通している。これらの貫通孔46によって、曲げ部42B1の頂部の稜線45がシート左右方向に複数に分割されている。なお、
図4に示されるように、曲げ部42B1の後部には、一例として左右一対の凹部48が形成されている。左右の凹部48は、平面視でシート前方側へ凹んでいる。これらの凹部48は、ロアパネル40の下端部に形成された左右一対の凸部(図示省略)との干渉を避けるために形成されている。
【0039】
縦延出部42Cは、前方延出部42Bの前端からシート上方側へ延出されている。縦延出部42Cの上端部は、シート後方側へ斜めに屈曲されている。この縦延出部42Cは、車両用シート10に着座した着座者の仙骨部に対してシート後方側から対向して配置される。着座者の仙骨部は、シートバック30の表皮54及び図示しないパッド材を介して仙骨支持ブラケット42の縦延出部42Cに押し当てられ、当該仙骨支持ブラケット42によってシート後方側から支持される。なお、縦延出部が前方延出部42Bの前端からシート下方側へ延出された構成にしてもよい。
【0040】
上記構成の仙骨支持ブラケット42は、リクライニングロッド28に対してシート下方側に配置されている。この仙骨支持ブラケット42に対してシート前方側から過大な荷重が入力されると、脆弱部である曲げ部42B1に応力が集中する。その結果、仙骨支持ブラケット42が曲げ部42B1において変形(座屈)するように構成されている。
【0041】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0042】
上記構成の車両用シート10では、シートバックフレーム32の左右のサイドフレーム34がシートバック30の左右の側部内でシート上下方向に延在している。左右のサイドフレーム34の下端部の後端部間には、ロアパネル40が架け渡されている。ロアパネル40の下端部からは、仙骨支持ブラケット42がシート前方側へ延出されている。この仙骨支持ブラケット42によって着座者の仙骨部がシート後方側から支持される。これにより、通常の車両走行時における着座者のロール方向への揺動が抑制され、着座姿勢が保持される。この仙骨支持ブラケット42には、シート前方側からの荷重に対して脆弱化された曲げ部42B1(脆弱部)が設けられている。このため、車両の後面衝突時には、仙骨支持ブラケット42に対して着座者の仙骨部から荷重が入力されることにより、仙骨支持ブラケット42が曲げ部42B1において変形する。これにより、着座者の慣性エネルギーが吸収され、シートバックフレーム32に加わるモーメントが低減される。その結果、着座者が車両後方斜め上方へせり上がる現象の発生が抑制されるので、着座者を保護することができる。
【0043】
上記の効果について、
図7~
図11に示される車両用シート100(比較例)を用いて詳細に説明する。なお、
図10及び
図11では、車両の後面衝突時に着座者Pからシートバック30に加わる荷重によってシートバック30がシート後方側へ大きく傾いた状態が図示されている。この車両用シート100では、
図7に示されるように、仙骨支持ブラケット42が脆弱部である曲げ部42B1を有しない構成となっており、前方延出部42Bの全体がシート上下方向を厚さ方向とする板状をなしている。この車両用シート100では、上記以外の構成は、本実施形態に係る車両用シート10と同様とされている。
【0044】
この車両用シート100が搭載された車両が後面衝突をすると、
図8に示されるように、車両後方側へ慣性移動する着座者Pの臀部P2が図示しない表皮及びパッド材を介して仙骨支持ブラケット42に衝突し、仙骨支持ブラケット42及びロアパネル40に過大な荷重が入力される。これにより、
図9に示されるように、シート左方側から見て時計回りのモーメントMがロアパネル40に発生する。その結果、
図10に示されるように、ロアパネル40がシート後方側へ大きく傾くように変形し(
図10の矢印C参照)、ランバーサポートプレート52がシートバックフレーム32に対してシート後方側へ大きく変位する。このランバーサポートプレート52の変位により、ランバーサポートプレート52による着座者Pの腰部P1の支持が弱くなる。この際には、
図10及び
図11に示されるように、シートバック30が着座者からの荷重によってシート後方側へ大きく傾いた状態となるため、着座者Pはシートバック30の表面に沿ってシート後方斜め上方側へせり上がる(
図11の矢印R参照)。このせり上がりにより、シートバック30への入力が増加し、シートバック30が更にシート後方側へ傾くこととなる(
図11の矢印L参照)。よって、この車両用シート100では、着座者Pの安全性を高める観点で改善の余地がある。
【0045】
一方、本実施形態に係る車両用シート10では、
図12に示されるように、着座者Pの臀部P2のシート後方側に配置される仙骨支持ブラケット42が、脆弱部としての曲げ部42B1を有している。この車両用シート10が搭載された車両が後面衝突をすると、
図13に示されるように、車両後方側へ慣性移動する着座者Pの臀部P2が図示しない表皮及びパッド材を介して仙骨支持ブラケット42に衝突し、仙骨支持ブラケット42が曲げ部42B1において変形(座屈)する(
図13の矢印B参照)。その結果、ロアパネル40に対して前述したモーメントMが発生しなくなり、シートバックフレーム32に対するランバーサポートプレート52のシート後方側への変位が小さくなる。また、着座者Pは、シートバック30にめり込むこととなり(
図14の矢印E参照)、ランバーサポートプレート52等による着座者Pの腰部P1の支持が維持される。その結果、
図14及び
図15に示されるように、シート後方斜め上方側への着座者Pのせり上がりが抑制され、シートバック30への入力の増加が回避される。よって、この車両用シート10では、車両用シート100と比較して、着座者Pの安全性を高めることができる。
【0046】
また、本実施形態では、板金によって構成された仙骨支持ブラケット42が、固定部42Aと前方延出部42Bとを有している。固定部42Aは、ロアパネル40の下面に固定されており、前方延出部42Bは、固定部42Aからシート前方側へ延出されている。車両の後面衝突時には、前方延出部42Bにおけるシート前後方向の中間部に設けられた曲げ部42B1が、着座者Pの仙骨部からの荷重によって座屈する。このように、板金製の仙骨支持ブラケット42が有する前方延出部42Bに曲げ部42B1(脆弱部)が設けられるので、脆弱部の形状設定等の自由度が高く、脆弱部の変形荷重の調整が容易である。
【0047】
また、本実施形態では、前方延出部42Bのシート前後方向の中間部に設けられた脆弱部が、シート上方側へ凸をなして曲がった曲げ部42B1である。この曲げ部42B1には、車両の後面衝突時の着座者Pからの荷重によって応力が集中し、当該曲げ部42B1が変形(座屈)する。このように、曲げ部42B1が脆弱部とされているので、脆弱部を簡素な構成にすることができる。
【0048】
また、本実施形態では、前方延出部42Bのシート前後方向の中間部に設けられた曲げ部42B1(脆弱部)には、当該曲げ部42B1をシート上下方向に貫通した複数の貫通孔46が形成されている。これらの貫通孔46の形状や数等を設定変更することにより、曲げ部42B1の変形荷重を容易に調整することができる。
【0049】
また、本実施形態では、仙骨支持ブラケット42は、前方延出部42Bの前端からシート上方側へ延出された縦延出部42Cを有している。この縦延出部42Cの前面によって着座者Pの仙骨部が支持されるので、着座者Pの違和感が少なくなる。
【0050】
さらに、本実施形態では、シートバックフレーム32の左右のサイドフレーム34の下端部間には、リクライニングロッド28が架け渡されている。ロアパネル40の下端部からシート前方側へ延出された仙骨支持ブラケット42は、リクライニングロッド28に対してシート下方側に配置されている。この高さに仙骨支持ブラケット42が配置されることにより、着座者Pの仙骨部を適切に支持することができる。
【0051】
なお、上記実施形態では、仙骨支持ブラケット42(仙骨支持部)の脆弱部が曲げ部42B1とされた構成にしたが、これに限るものではない。例えば曲げ部42B1が省略され、複数の貫通孔46のみによって脆弱部が脆弱化される構成にしてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、ロアパネル40(ロアフレーム)や仙骨支持ブラケット42(仙骨支持部)が板金製とされた構成にしたが、これに限るものではない。例えば金属製の棒材やパイプ材によってロアフレームや仙骨支持部が製造される構成にしてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、仙骨支持ブラケット42(仙骨支持部)の前方延出部42Bにおけるシート前後方向の中間部に脆弱部である曲げ部42B1が設けられた構成にしたが、これに限るものではない。例えば仙骨支持部におけるロアパネル40(ロアフレーム)への固定部に脆弱部が設けられた構成にしてもよい。その場合、例えば仙骨支持部に対してシート前方側から過大な荷重が加えられた際に、上記の脆弱部が破壊されて仙骨支持部がロアフレームから脱落するようにしてもよい。
【0054】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートクッションフレーム
28 リクライニングロッド
30 シートバック
32 シートバックフレーム
34 サイドフレーム
40 ロアパネル(ロアフレーム)
42 仙骨支持ブラケット(仙骨支持部)
42A 固定部
42B 前方延出部
42B1 曲げ部(脆弱部)
42C 縦延出部
46 貫通孔