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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-04
(45)【発行日】2025-07-14
(54)【発明の名称】回転方向判定装置及び作業機
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20250707BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20250707BHJP
   G01B 7/30 20060101ALI20250707BHJP
【FI】
G01D5/244 C
G01D5/245 H
G01B7/30 H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022007986
(22)【出願日】2022-01-21
(65)【公開番号】P2023106946
(43)【公開日】2023-08-02
【審査請求日】2024-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山中 之史
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】西田 圭佑
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-242742(JP,A)
【文献】特開2019-159655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/244-5/245
G01B 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸を中心に回転する回転対象物の回転方向を検出し、検出した回転方向に応じて異なるパルス幅の出力信号を出力する検出センサと、
前記検出センサからの出力信号のパルス幅が閾値よりも大きいか小さいかを判定することにより、前記回転対象物の回転方向が正転又は逆転であるかを判定する演算処理装置と、
周囲温度を検出する温度センサと、を備え、
前記演算処理装置は、変更条件が成立している場合に前記閾値を補正後の閾値に変更し、
前記演算処理装置は、前記温度センサにて検出された温度が予め定められた標準温度以外の温度である場合に、前記変更条件が成立していると判定し、前記温度センサにて検出された温度に応じて前記閾値又は前記補正後の閾値を補正した温度補正後の閾値に変更する回転方向判定装置。
【請求項2】
前記演算処理装置は、前記回転対象物の回転方向を正転と判定したときの前記検出センサの出力信号のパルス幅と、前記回転対象物の回転方向を逆転と判定したときの前記検出センサの出力信号のパルス幅との間の中央値を演算し、前記中央値が前記閾値と異なる場合に、前記変更条件が成立していると判定し、前記中央値を前記補正後の閾値とする請求項1に記載の回転方向判定装置。
【請求項3】
前記演算処理装置は、起動後の最初に正転から逆転に遷移する場合又は起動後の最初に逆転から正転に遷移する場合に、前記閾値を用いて前記回転対象物の回転方向を判定し、前記回転対象物の回転方向を正転と判定したときの前記検出センサの出力信号のパルス幅と、前記回転対象物の回転方向を逆転と判定したときの前記検出センサの出力信号のパルス幅との間の中央値を演算し、前記中央値が前記閾値と異なる場合に、前記変更条件が成立していると判定し、前記変更条件が成立していると判定した後は、前記補正後の閾値を用いて前記回転対象物の回転方向を判定する請求項2に記載の回転方向判定装置。
【請求項4】
前記演算処理装置は、前記回転対象物の正転と逆転とを複数回数繰り返し行うことにより、複数回数分の前記中央値をそれぞれ演算し、前記複数回数分の中央値の振れ幅が所定範囲内である場合に、前記複数回数分の中央値の平均値を前記補正後の閾値とする請求項2に記載の回転方向判定装置。
【請求項5】
前記演算処理装置にて前記回転対象物の回転方向が正転と判定されたときの前記検出センサの出力信号のパルス幅を複数個記憶し、前記演算処理装置にて前記回転対象物の回転方向が逆転と判定されたときの前記検出センサの出力信号のパルス幅を複数個記憶する記憶装置を備え、
前記演算処理装置は、前記記憶装置に記憶された、前記正転と判定されたときの直近の複数回分のパルス幅の平均値と、前記記憶装置に記憶された、前記逆転と判定されたときの直近の複数回分のパルス幅の平均値との間の中央値を演算し、前記中央値が前記閾値と異なる場合に、前記変更条件が成立していると判定し、前記中央値を前記補正後の閾値とする請求項2に記載の回転方向判定装置。
【請求項6】
前記補正後の閾値を記憶する記憶装置を備え、
前記演算処理装置は、再起動がされると、前記記憶装置に記憶された前記補正後の閾値を読み出し、読み出した前記補正後の閾値を用いて前記回転対象物の回転方向を判定する請求項2~5の何れか1項に記載の回転方向判定装置。
【請求項7】
前記温度センサにて検出された温度と補正値とを対応付けた温度特性マップを予め記憶する記憶装置を備え、
前記演算処理装置は、前記温度センサにて検出された温度が予め定められた標準温度以外の温度である場合に、前記変更条件が成立していると判定し、前記温度特性マップを用いて、前記温度センサにて検出された温度に対応する補正値を特定し、この特定した補正値を前記閾値又は前記補正後の閾値に加算した値を前記温度補正後の閾値とする請求項に記載の回転方向判定装置。
【請求項8】
前記温度センサにて検出された温度と補正値とを対応付けた温度特性式を予め記憶する記憶装置を備え、
前記演算処理装置は、前記温度センサにて検出された温度が予め定められた標準温度以外の温度である場合に、前記変更条件が成立していると判定し、前記温度特性式を用いて、前記温度センサにて検出された温度に対応する補正値を演算し、この演算した補正値を前記閾値又は前記補正後の閾値に加算した値を前記温度補正後の閾値とする請求項に記載の回転方向判定装置。
【請求項9】
前記演算処理装置は、前記検出センサに接続された配線のコネクタが接続され、当該検出センサからの出力信号が入力される入力部を有し、
前記温度センサは、前記入力部の周囲の所定範囲内に配置されている請求項1、7、8の何れか1項に記載の回転方向判定装置。
【請求項10】
軸を中心に回転する回転対象物を有する作業機であって、
請求項1~の何れか1項に記載の回転方向判定装置を備える作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転対象物の回転方向を判定する回転方向判定装置及び作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、軸回転する回転対象物の回転方向及び回転数を検出する逆回転検出機能付き回転センサと、この回転センサからの出力信号に基づいて回転対象物の回転方向及び回転数を判定するマイクロコンピュータとを備える判定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-205199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転センサは、回転対象物が正転している場合には、パルス幅を45μsとした出力信号を出力し、回転対象物が逆転している場合には、パルス幅を90μsとした出力信号を出力する。マイクロコンピュータは、回転方向を判定するための閾値として、45μsと90μsとの中央値である67.5μsを予め記憶しており、回転センサからの検出信号のパルス幅が閾値未満であれば、正転と判定し、回転センサからの検出信号のパルス幅が閾値を超えていれば、逆転と判定する。しかしながら、回転センサの公差を考慮すると、正転出力では最大値が52μsで、逆転出力では最小値が76μsであり、それらの差が24μsの幅となっている。マイクロコンピュータは、24μsの幅で確実に正逆を判定しなければならないが、不確定な外乱要素により、回転方向を誤判定することがある。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、回転対象物の回転方向の誤判定を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
本発明の一態様にかかる回転方向判定装置は、軸を中心に回転する回転対象物の回転方向を検出し、検出した回転方向に応じて異なるパルス幅の出力信号を出力する検出センサと、前記検出センサからの出力信号のパルス幅が閾値よりも大きいか小さいかを判定することにより、前記回転対象物の回転方向が正転又は逆転であるかを判定する演算処理装置と、周囲温度を検出する温度センサと、を備え、前記演算処理装置は、変更条件が成立している場合に前記閾値を補正後の閾値に変更し、前記演算処理装置は、前記温度センサにて検出された温度が予め定められた標準温度以外の温度である場合に、前記変更条件が成立していると判定し、前記温度センサにて検出された温度に応じて前記閾値又は前記補正後の閾値を補正した温度補正後の閾値に変更する
【0007】
また、本発明の一態様では、前記演算処理装置は、前記回転対象物の回転方向を正転と判定したときの前記検出センサの出力信号のパルス幅と、前記回転対象物の回転方向を逆転と判定したときの前記検出センサの出力信号のパルス幅との間の中央値を演算し、前記中央値が前記閾値と異なる場合に、前記変更条件が成立していると判定し、前記中央値を前記補正後の閾値とする。
【0008】
また、本発明の一態様では、前記演算処理装置は、起動後の最初に正転から逆転に遷移する場合又は起動後の最初に逆転から正転に遷移する場合に、前記閾値を用いて前記回転対象物の回転方向を判定し、前記回転対象物の回転方向を正転と判定したときの前記検出センサの出力信号のパルス幅と、前記回転対象物の回転方向を逆転と判定したときの前記検出センサの出力信号のパルス幅との間の中央値を演算し、前記中央値が前記閾値と異なる場合に、前記変更条件が成立していると判定し、前記変更条件が成立していると判定した後は、前記補正後の閾値を用いて前記回転対象物の回転方向を判定する。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記演算処理装置は、前記回転対象物の正転と逆転とを複数回数繰り返し行うことにより、複数回数分の前記中央値をそれぞれ演算し、前記複数回数分の中央値の振れ幅が所定範囲内である場合に、前記複数回数分の中央値の平均値を前記補正後の閾値とする。
また、本発明の一態様では、前記演算処理装置にて前記回転対象物の回転方向が正転と判定されたときの前記検出センサの出力信号のパルス幅を複数個記憶し、前記演算処理装置にて前記回転対象物の回転方向が逆転と判定されたときの前記検出センサの出力信号のパルス幅を複数個記憶する記憶装置を備え、前記演算処理装置は、前記記憶装置に記憶された、前記正転と判定されたときの直近の複数回分のパルス幅の平均値と、前記記憶装置に記憶された、前記逆転と判定されたときの直近の複数回分のパルス幅の平均値との間の中央値を演算し、前記中央値が前記閾値と異なる場合に、前記変更条件が成立していると判定し、前記中央値を前記補正後の閾値とする。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記補正後の閾値を記憶する記憶装置を備え、前記演算処理装置は、再起動がされると、前記記憶装置に記憶された前記補正後の閾値を読み出し、読み出した前記補正後の閾値を用いて前記回転対象物の回転方向を判定する
【0011】
また、本発明の一態様では、前記温度センサにて検出された温度と補正値とを対応付けた温度特性マップを予め記憶する記憶装置を備え、前記演算処理装置は、前記温度センサにて検出された温度が予め定められた標準温度以外の温度である場合に、前記変更条件が成立していると判定し、前記温度特性マップを用いて、前記温度センサにて検出された温度に対応する補正値を特定し、この特定した補正値を前記閾値又は前記補正後の閾値に加算した値を前記温度補正後の閾値とする。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記温度センサにて検出された温度と補正値とを対応付けた温度特性式を予め記憶する記憶装置を備え、前記演算処理装置は、前記温度センサにて検出された温度が予め定められた標準温度以外の温度である場合に、前記変更条件が成立していると判定し、前記温度特性式を用いて、前記温度センサにて検出された温度に対応する補正値を演算し、この演算した補正値を前記閾値又は前記補正後の閾値に加算した値を前記温度補正後の閾値とする。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記演算処理装置は、前記検出センサに接続された配線のコネクタが接続され、当該検出センサからの出力信号が入力される入力部を有し、前記温度センサは、前記入力部の周囲の所定範囲内に配置されている。
本発明の一態様にかかる作業機は、軸を中心に回転する回転対象物を有する作業機であって、上記の回転方向判定装置を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、回転対象物の回転方向の誤判定を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態における農業機械の構成を示す図である。
図2】検出センサの第1パルス幅の出力信号と第2パルス幅の出力信号とを示す図である。
図3A】検出センサの第1パルス幅及び第2パルス幅と閾値との関係を示す図である。
図3B】検出センサの第1パルス幅及び第2パルス幅と変更後の閾値との関係を示す図である。
図4A】第1実施形態における閾値確認処理の一例を示すフローチャートである。
図4B】第2実施形態における閾値確認処理の一例を示すフローチャートである。
図4C】第3実施形態における閾値確認処理の一例を示すフローチャートである。
図4D】第4実施形態における閾値確認処理の一例を示すフローチャートである。
図5A】第1実施形態における回転方向判定処理の一例を示すフローチャートである。
図5B】第4実施形態における回転方向判定処理の一例を示すフローチャートである。
図6】第5実施形態における再起動時の閾値確認処理の一例を示すフローチャートである。
図7A】第4実施形態における第1記憶処理の一例を示すフローチャートである。
図7B】第4実施形態における第2記憶処理の一例を示すフローチャートである。
図7C】第4実施形態における第3記憶処理の一例を示すフローチャートである。
図7D】第4実施形態における第4記憶処理の一例を示すフローチャートである。
図8】第6実施形態における農業機械の構成を示す図である。
図9】検出温度と補正値とを対応付けた温度特性の一例を示す図である。
図10】検出温度が-30℃、25℃及び80℃であった場合の検出センサからの出力信号のパルス幅をそれぞれ示す図である。
図11】第6実施形態における温度補正処理の一例を示すフローチャートである。
図12】農業機械の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
まず、本実施形態の作業機の一例としての農業機械1について説明する。図12は、農業機械1の側面図である。農業機械1は、トラクタから構成されている。なお、農業機械1は、トラクタに限定せず、例えば田植機又はコンバインなどの他の農業機械、或いは農作業を行うトラクタ以外の作業車両などにより構成されてもよい。
【0017】
農業機械1は、走行車体3、原動機4、変速装置5、及び走行装置7を備えている。走行装置7は、左右1対の前輪7Fと、左右1対の後輪7Rとを有している。前輪7Fは、走行車体3の左右前部を支持している。後輪7Rは、走行車体3の左右後部を支持している。前輪7Fは、タイヤ型であってもよいし、クローラ型であってもよい。また、後輪7Rも、タイヤ型であってもよいし、クローラ型であってもよい。原動機4は、ディーゼルエンジン或いは電動モータなどから構成されている。本実施形態では、原動機4はディーゼルエンジンにより構成されている。変速装置5は、変速によって走行装置7の推進力を切り替え可能であると共に、走行装置7の前進と後進を切り替え可能である。原動機4の駆動力が変速装置5により走行装置7に伝達されて、走行装置7が駆動することで、走行車体3が前後に走行する。
【0018】
本発明の実施形態において、農業機械1の運転席10に着座した運転者が向く方向(図12の矢印A1の方向)を前方といい、その反対方向(図12の矢印A2の方向)を後方という。運転者の右側(図12の紙面の奥側)を右方といい、運転者の左側(図12の紙面の手前側)を左方という。また、農業機械1の前後方向(図12の矢印A3の方向)に直交する方向である水平方向(図12の紙面の奥行方向)を車体幅方向(あるいは、幅方向)という。
【0019】
走行車体3にはキャビン9が設けられている。キャビン9の内部には、運転席10が設けられている。走行車体3の後部には、3点リンク機構などで構成された昇降装置8が設けられている。昇降装置8には、農作業を行うための作業装置2を連結可能な連結部8g、8hが設けられている。作業装置2を連結部8g、8hに連結することで、作業装置2と走行車体3(農業機械1)とが連結されて、走行車体3が作業装置2を牽引可能になる。
【0020】
作業装置2は圃場に対して対地作業を行う。例えば作業装置2には、圃場に対して耕うん作業を行う耕うん装置(ロータリ耕うん機)、粗耕起を行う粗耕起装置(スタブルカルチ)、及び代掻きを行う代掻き装置(ドライブハロー)、肥料若しくは農薬などを散布する散布装置、種まきを行う播種装置、苗を移植する移植装置、及び収穫を行う収穫装置などが含まれている。
【0021】
農業機械1は、図1に示すように、制御装置60、操作装置62、原動機4、変速装置5、制動装置6、操舵装置29、測位装置40、検出装置64、及び回転方向判定装置70を備えている。また、農業機械1には、LAN又はCANなどの車載ネットワークN1が構築されている。制御装置60、操作装置62、測位装置40、検出装置64、及び回転方向判定装置70は、車載ネットワークN1に接続されている。
【0022】
制御装置60は、CPU(又はマイクロコンピュータ)とメモリとを含んだ電気回路などから構成されている。制御装置60のメモリには、揮発性メモリと不揮発性メモリとが含まれている。制御装置60は、農業機械1の各部の動作を制御する。制御装置60には、農業機械1の走行(操舵と速度変更を含む。)と作業装置2の動作とを制御する自動制御部61が設けられている。操作装置62は、運転席10に着座した運転者又は農業機械1の近傍にいる作業者などのオペレータ(ユーザ)が操作可能なスイッチ、レバー、ペダル、及びその他のキーなどから構成されている。
【0023】
原動機4(エンジン)は、制御装置60により駆動、停止、及び回転数を制御される。変速装置5は制御弁37に接続されている。制御弁37は、制御装置60から送信される制御信号に基づいて作動する電磁弁である。制御弁37には、油圧ポンプ33から吐出された作動油が供給される。制御弁37は、変速装置5に設けられた油圧クラッチ又は油圧シリンダなどの油圧機器の数に応じて適宜数設けられている。
【0024】
制動装置6は制御弁38に接続されている。制御弁38は、制御装置60から送信される制御信号に基づいて作動する電磁弁である。制御弁38には、油圧ポンプ33から吐出された作動油が供給される。自動制御部61は、制御弁38の切り替え位置及び開度を電気的に制御することにより、制動装置6を作動させて、走行車体3にブレーキをかける。
変速装置5は、図1に示すように、推進軸(主軸)5a、主変速部5b、副変速部5c、伝達軸5g、シャトル部5d、PTO動力伝達部5e、及び前変速部5fなどを備えている。推進軸5aは、原動機(エンジン)4のクランク軸から動力が伝達されることで回転する。主変速部5bは、複数のギア及び当該ギアの接続を変更するシフタ(図示省略)を有している。主変速部5bは、複数のギアの接続(噛合)をシフタで適宜変更することによって、推進軸5aの回転速度を変速し、推進軸5aの回転力(動力)の大きさを可変する。
【0025】
副変速部5cは、主変速部5bと同様に、複数のギア及び当該ギアの接続を変更するシフタを有している。副変速部5cは、複数のギアの接続(噛合)をシフタで適宜変更することによって、主変速部5bから入力された動力の大きさを可変する。伝達軸5gは、副変速部5cから動力が伝達されることで回転する。
シャトル部5dは、シャトル軸11と前後進切替部13とを有している。シャトル軸11には、副変速部5cから伝達軸5gと前後進切替部13とを介して動力が伝達される。前後進切替部13は、例えば油圧クラッチなどで構成されている。前後進切替部13の油圧クラッチを接続又は切断することで、シャトル軸11の回転方向が切り替わり、農業機械1の進行方向(前進又は後進)が切り替わる。シャトル軸11は、後輪デフ装置20Rに接続されている。後輪デフ装置20Rは、後輪7Rが取り付けられた後車軸21Rを回転自在に支持している。
【0026】
PTO動力伝達部5eは、PTO推進軸14とPTOクラッチ15とを有している。PTO推進軸14は、推進軸5aからPTOクラッチ15を介して動力が伝達されることで回転する。PTO推進軸14は、ギアなどを介してPTO軸16と接続されている。PTOクラッチ15は、例えば油圧クラッチなどで構成されている。PTOクラッチ15を接続又は切断することで、推進軸5aの動力がPTO推進軸14に伝達される状態と、推進軸5aの動力がPTO推進軸14に伝達されない状態とに切り替わる。
【0027】
前変速部5fは、第1クラッチ17と第2クラッチ18とを有している。第1クラッチ17及び第2クラッチ18には、シャトル軸11の動力がギアと伝動軸5hを介して伝達される。第1クラッチ17及び第2クラッチ18に伝達された動力は、前伝動軸22と前輪デフ装置20Fとを介して前車軸21Fに伝達可能である。前伝動軸22は、前輪デフ装置20Fに接続されている。前輪デフ装置20Fは、前輪7Fが取り付けられた前車軸21Fを回転自在に支持している。
【0028】
第1クラッチ17及び第2クラッチ18は、油圧クラッチなどで構成されている。第1クラッチ17には、油路25aが接続されていて、当該油路25aには、第1制御弁37aが接続されている。第2クラッチ18には、油路25bが接続されていて、当該油路25bには、第2制御弁37bが接続されている。第1制御弁37a及び第2制御弁37bは、図1に示した制御弁37に含まれている。第1制御弁37a及び第2制御弁37bには、農業機械1に備わる油圧ポンプ33から吐出された作動油が、図示しない油路を介して供給される。
【0029】
第1制御弁37aと第2制御弁37bとは、例えば、電磁弁付き二位置切換弁から構成されている。制御装置60が、第1制御弁37aに備わる電磁弁のソレノイドを励磁又は消磁することで、第1制御弁37aは、油路25bを介して作動油をクラッチ17に供給する第1位置と、作動油をクラッチ17に供給しない第2位置とに切り替わる。また、制御装置60が、第2制御弁37bに備わる電磁弁のソレノイドを励磁又は消磁することで、第2制御弁37bは、油路25bを介して作動油をクラッチ18に供給する第1位置と、作動油をクラッチ18に供給しない第2位置とに切り替わる。クラッチ17、18は、例えば、第1制御弁37a及び第2制御弁37bから油路25a、25bを介して作動油が供給されたときに接続状態となり、当該作動油が供給されないときに切断状態となる。制御装置60は、第1制御弁37a及び第2制御弁37bの位置を切り替えることにより、クラッチ17、18を接続状態又は切断状態に切り替える。他の例として、第1制御弁37a及び第2制御弁37bを電磁比例弁で構成してもよい。この場合、制御装置60が第1制御弁37a(電磁比例弁)及び第2制御弁37b(電磁比例弁)の開度をそれぞれ変更することで、クラッチ17、18が接続状態又は切断状態に切り替わる。
【0030】
シャトル軸11からの動力(回転力)が後輪デフ装置20Rを介して後車軸21Rに伝達されることで、後車軸21R及び後輪7Rが回転する。また、シャトル軸11からの動力がクラッチ17、18と前伝動軸22と前輪デフ装置20Fとを介して前車軸21Fに伝達されることで、前車軸21F及び前輪7Fが回転する。後輪7Rの駆動状態に対する前輪7Fの駆動状態は、クラッチ17、18の状態に応じて変えることができる。
【0031】
詳しくは、シャトル軸11からの動力が後車軸21Rに伝達された状態で、第1クラッチ17が切断され且つ第2クラッチ18が接続された場合には、シャトル軸11からの動力が第2クラッチ18と前伝動軸22と前輪デフ装置20Fとを介して前車軸21Fに伝達される。これにより、前輪7F及び後輪7Rが駆動して(四輪駆動)、前輪7Fの回転速度と後輪7Rの回転速度とが略等しくなり、いわゆる「4WD等速状態」となる。
【0032】
対して、シャトル軸11からの動力が後車軸21Rに伝達された状態で、第1クラッチ17が接続され且つ第2クラッチ18が切断された場合には、シャトル軸11からの動力が第1クラッチ17と前伝動軸22と前輪デフ装置20Fとを介して前車軸21Fに伝達される。これにより、前輪7F及び後輪7Rが駆動して(四輪駆動)、前輪7Fの回転速度が後輪7Rの回転速度より速くなり、いわゆる「4WD増速状態」となる。
【0033】
また、シャトル軸11からの動力が後車軸21Rに伝達された状態で、第1クラッチ17及び第2クラッチ18が両方とも接続された場合には、シャトル軸11からの動力が前車軸21Fに伝達されなくなる。これにより、前輪7Fは駆動せず、後輪7Rだけが駆動して、「二輪駆動状態(2WD)」となる。
後車軸21Rの左部には、左制動装置6aが設けられ、後車軸21Rの右部には、右制動装置6bが設けられている。左制動装置6a及び右制動装置6bは、制動装置6(図1)に含まれるディスク型の制動装置であり、制動状態と解除状態とに切り替わる。農業機械1の運転席10(図12)の近傍には、左ブレーキペダルと右ブレーキペダルとが設けられている(図示省略)。左ブレーキペダルには、左連結部材26aが連結されている。右ブレーキペダルには、右連結部材26bが連結されている。農業機械1のオペレータ(運転者などのユーザ)が左ブレーキペダルを操作する(踏み込む)ことによって、左連結部材26aが制動方向へ動き、左制動装置6aを制動状態に切り替える。オペレータが右ブレーキペダルを操作する(踏み込む)ことによって、右連結部材26bが制動方向へ動き、右制動装置6bを制動状態に切り替える。
【0034】
左連結部材26aには、左油圧作動部27aが連結されている。右連結部材26bには、右油圧作動部27bが連結されている。左油圧作動部27a及び右油圧作動部27bは、油圧シリンダから構成されている。左油圧作動部27aには、油路28aを介して第3制御弁38aが接続されている。右油圧作動部27bには、油路28bを介して第4制御弁38bが接続されている。各制御弁38a、38bには、油圧ポンプ33から吐出された作動油が、図示しない油路を介して供給される。
【0035】
第3制御弁38a及び第4制御弁38bは、例えば、電磁弁付き二位置切換弁から構成されている。制御装置60が、制御弁38a、38bに備わる電磁弁のソレノイドを励磁又は消磁することで、制御弁38a、38bは、作動油を油路28a、28bを介して油圧作動部27a、27bに供給する第1位置と、作動油を油圧作動部27a、27bに供給しない第2位置とに切り替わる。制御弁38a、38bから油路28a、28bを介して油圧作動部27a、27bに作動油が供給されることで、油圧作動部27a、27bが作動して、連結部材26a、26bを制動方向に移動させて、制動装置6a、6bを制動状態に切り替える。
【0036】
上記のように、左制動装置6a及び右制動装置6bは、オペレータによる左ブレーキペダル及び右ブレーキペダルの操作だけでなく、制御装置60による第3制御弁38a、第4制御弁38b、左油圧作動部27a、及び右油圧作動部27bの作動によっても、左の後輪7R及び右の後輪7Rのそれぞれを独立して制動状態にすることが可能である。
図1に示す自動制御部61は、制御弁37(第1制御弁37a及び第2制御弁37b)の切り替え位置(開度)を電気的に制御して、変速装置5の駆動を制御する。前述したように、変速装置5が原動機4の駆動力を走行装置7に伝達することで、走行装置7が作動して、走行車体3を前後に走行させる。
【0037】
操舵装置29は、ハンドル(ステアリングホイール)30、操舵軸(回転軸)31、及び補助機構(パワーステアリング機構)32を有している。ハンドル30は、キャビン9(図12)の内部に設けられている。操舵軸31は、ハンドル30の回転に伴って回転する。補助機構32は、ハンドル30による操舵を補助する。
補助機構32には、制御弁34とステアリングシリンダ35とが含まれている。制御弁34は、制御装置60から送信される制御信号に基づいて作動する電磁弁である。詳しくは、制御弁34は、スプールなどの移動によって切り替え可能な3位置切替弁から構成されている。制御弁34には、油圧ポンプ33から吐出された作動油が供給される。制御装置60は、制御弁34の切り替え位置及び開度を電気的に制御することにより、ステアリングシリンダ35に供給する油圧を調整して、ステアリングシリンダ35を伸縮させる。ステアリングシリンダ35は、前輪7Fの向きを変えるナックルアーム39に接続されている。
【0038】
制御弁34は、操舵軸31の操舵によっても切り替え可能である。具体的には、ハンドル30を操作することで、当該操作状態に応じて操舵軸31が回転して、制御弁34の切り替え位置及び開度が切り替わる。ステアリングシリンダ35は、制御弁34の切り替え位置及び開度に応じて、走行車体3の左方又は右方に伸縮する。このステアリングシリンダ35の伸縮動作により、前輪7Fの操舵方向が変更される。なお、上述した操舵装置29は一例であり、上述した構成に限定されない。
【0039】
農業機械1の走行車体3は、ハンドル30の手動操作による手動操舵と、自動制御部61による自動操舵とが可能である。また、操作装置62に備わるアクセル部材又はブレーキペダル(共に図示省略)の手動操作に応じて、変速装置5又は制動装置6が作動することで、走行車体3は走行及び停止が可能である。さらに、自動制御部61による変速装置5と制動装置6の制御に応じて、走行車体3は、自動で走行及び停止が可能である。即ち、農業機械1では、オペレータ(運転者)が走行操作と操舵操作とを行う手動運転、自動制御部61が走行と操舵とを自動で行う自動運転、及び自動制御部61が操舵を自動で行い且つオペレータが走行操作を行うオートステア制御(自動操舵制御又は半自動運転とも言う。)がそれぞれ可能である。
【0040】
図1に示す測位装置40は、受信装置41と慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)42とを有している。受信装置41は、D-GPS、GPS、GLONASS、北斗、ガリレオ、みちびきなどの衛星測位システム(測位衛星)から送信された衛星信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報など)を受信する。測位装置40は、受信装置41により受信した衛星信号に基づいて、現在位置(例えば、緯度、経度)を検出する。即ち、測位装置40は、農業機械1の走行車体3の位置を検出する位置検出部である。慣性計測装置42は、加速度センサとジャイロセンサなどを有している。慣性計測装置42は、走行車体3のロール角、ピッチ角、ヨー角などを検出する。
【0041】
検出装置64は、農業機械1及び作業装置2の各部に設置されたセンサなど(カメラが含まれていてもよい。)から構成されている。検出装置64は、センサなどからの出力信号に基づいて、農業機械1の変速装置5、制動装置6、走行装置7、操舵装置29、及び操作装置62といった各部の動作状態(駆動及び停止の状態と、動作位置など)を検出する。また、検出装置64は、センサなどからの出力信号に基づいて、作業装置2の動作状態を検出する。さらに、検出装置64には、対象物検出部64aと、LiDARのようなレーザセンサと、超音波センサなどが含まれている。レーザセンサと、超音波センサなどは、走行車体3の前部、後部、及び左右側部に設置されていてる。対象物検出部64aは、レーザセンサ又は超音波センサからの出力信号から、農業機械1の周囲の対象物の有無と、対象物までの距離などを検出する。
【0042】
さて、農業機械1は、図1に示すように、シャトル軸11(回転対象物)の回転方向を判定する回転方向判定装置70を備えている。回転方向判定装置70は、検出センサ71と演算処理装置72と記憶装置73とを備えている。なお、回転方向判定装置70は、演算処理装置72にて判定したシャトル軸11の回転方向及び回転数を制御装置60に逐次に出力する。制御装置60は、シャトル軸11の回転方向及び回転数に応じた制御を行うことができる。
【0043】
検出センサ71は、軸を中心に回転するシャトル軸11の回転方向を検出し、検出した回転方向に応じて異なるパルス幅の出力信号を出力する。検出センサ71は、例えば、ホール素子などの検出素子を有する回転センサであり、回転方向及び回転数を検出する。具体的には、検出センサ71は、図2に示すように、シャトル軸11が正転している場合には、ローレベルのパルス幅が45μsである第1パルス幅PW1の出力信号を出力し、シャトル軸11が逆転している場合には、ローレベルのパルス幅が90μsである第2パルス幅PW2の出力信号を出力する。出力信号のハイレベルは例えば5ボルトである。また、検出センサ71の出力信号は、ローレベルのパルス幅を維持しつつ、シャトル軸11の回転数(回転速度)が大きくなるにつれて周期が短くなる。なお、検出センサ71は、ローレベルのパルス幅ではなく、ハイレベルのパルス幅を、回転方向に応じて異なるパルス幅(第1パルス幅PW1、第2パルス幅PW2)とする回転センサであってもよい。また、検出センサ71は、回転方向のみを検出する回転センサであってもよい。
【0044】
演算処理装置72は、検出センサ71からの出力信号のパルス幅が閾値Th(基準閾値)よりも大きいか小さいかを判定することにより、シャトル軸11の回転方向が正転又は逆転であるかを判定する。演算処理装置72は、例えば、CPU(又はマイクロコンピュータ)とメモリ(揮発性メモリ、不揮発性メモリ)とから構成されている。また、演算処理装置72は、検出センサ71からの出力信号(例えばアナログ信号)が入力される入力部72aを有している。演算処理装置72の入力部72aには、検出センサ71に接続された配線71aのコネクタ71bが接続される。入力部72aは、A/Dポートを有しており、検出センサ71からの出力信号(例えばアナログ信号)をデジタル信号に変換するインターフェース回路である。演算処理装置72は、入力部72aに入力された検出センサ71からの出力信号の立下りエッジ及び立上りエッジの両エッジを検出可能な信号処理用のソフトウエアを備えており、エッジ間の時間、つまり、パルス幅の長さを、ソフトウエアタイマでカウントすることで検出することが可能である。なお、演算処理装置72は、両エッジを検出可能な信号処理回路を備え、信号処理回路により、エッジ間の時間(つまり、パルス幅の長さ)を検出するとしてもよい。
【0045】
記憶装置73は、回転方向を判定するための閾値Thとして、45μsと90μsとの中央値である67.5μsを予め記憶している。記憶装置73は、例えば、EEPROMなどの不揮発性メモリである。
演算処理装置72は、記憶装置73に記憶された閾値Thを用いて、検出センサ71からの検出信号のパルス幅が閾値Th未満であれば、正転と判定し、検出センサ71からの検出信号のパルス幅が閾値Thを超えていれば、逆転と判定する。また、演算処理装置72は、検出センサ71からの検出信号の周期に基づいて、シャトル軸11の回転数を判定する。なお、演算処理装置72は、シャトル軸11の回転方向のみを判定するとしてもよい。
【0046】
図2図3Aに示すように、シャトル軸11が正転している場合において、検出センサ71の出力信号(正転出力)は、「±7μs」の公差により、第1パルス幅PW1(=45±7μs)となりうる。また、シャトル軸11が逆転している場合において、検出センサ71の出力信号(逆転出力)は、「±14μs」の公差により、第2パルス幅PW2(=90±14μs)となりうる。図3Aに示すように、検出センサ71の公差を考慮すると、例えば、正転出力では第1パルス幅PW1が最大で「52μs」となり、逆転出力では第2パルス幅PW2が最小で「76μs」となりうる。この差が「24μs」であり、マージンが小さいのが実状である。この状況下で、構成部品の不確定な外乱要素(検出センサ71などの各種の電気部品の性能のバラツキ、時定数などの回路特性バラツキ)があると、従来の判定装置では回転方向を誤判定することがある。これに対して、第1実施形態の回転方向判定装置70では、演算処理装置72は、変更条件が成立している場合に、閾値Thを補正後の閾値CThに変更する。このため、シャトル軸11(回転対象物)の回転方向の誤判定を低減することができる。
【0047】
具体的には、演算処理装置72は、シャトル軸11の回転方向を正転と判定したときの検出センサ71の出力信号のパルス幅と、シャトル軸11の回転方向を逆転と判定したときの検出センサ71の出力信号のパルス幅との間の中央値を演算し、中央値が閾値Thと異なる場合に、変更条件が成立していると判定し、中央値を補正後の閾値CThとする。
操作装置62には、閾値Thの確認を指示するための確認スイッチ65を備えている。確認スイッチ65は、オペレータ(運転者又は作業者など)によって操作されると、確認指令を演算処理装置72に出力する。確認スイッチ65は、確認指令を制御装置60に出力してもよい。
【0048】
以下、図4Aを用いて、演算処理装置72による閾値確認処理について説明する。図4Aは、第1実施形態における閾値確認処理の一例を示すフローチャートである。
演算処理装置72は、確認指令の有無を判定する(S11)。例えば、演算処理装置72は、オペレータにより確認スイッチ65が操作されると、確認指令ありと判定し(S11でYES)、確認モードに設定する。一方、演算処理装置72は、オペレータにより確認スイッチ65が操作されていない場合は、確認指令なしと判定し(S11でNO)、本処理を終了する。なお、演算処理装置72は、オペレータにより確認スイッチ65が操作されていない場合は、S11の処理に戻り、確認スイッチ65が操作されるまで待機するとしてもよい。
【0049】
制御装置60は、操作装置62に備わるアクセル部材の手動操作及びシフトレバーの前進操作に応じて、変速装置5を作動させて、前後進切替部13がシャトル軸11の回転方向を正転に切り替え、走行装置7を前進駆動させる。検出センサ71は、シャトル軸11の正転時の第1実測値を検出する(S12)。例えば、検出センサ71は、シャトル軸11の正転に応じた第1パルス幅PW1の出力信号(正転出力時の実測値)を、演算処理装置72に逐次に出力する。このときの検出センサ71の出力信号の第1パルス幅PW1は、45±7μsであると想定されるが、この値(45±7μs)を超えるものであっても構わない。演算処理装置72は、シャトル軸11の正転時の第1実測値を記憶装置73に記憶させる。演算処理装置72は、前述したように検出センサ71の出力信号のパルス幅を検出可能であるので、検出センサ71の出力信号のパルス幅が「90μs」よりも「45μs」に近い場合には、シャトル軸11の正転時の第1実測値として記憶装置73に記憶させる。なお、制御装置60は、走行車体3が前進状態で所定時速(例えば、2km)なった場合に検出開始指令を演算処理装置72に出力し、演算処理装置72は検出開始指令を受けると、検出センサ71からの出力信号に基づき、シャトル軸11の正転時の第1実測値を記憶装置73に記憶させるとしてもよい。
【0050】
制御装置60は、操作装置62に備わるアクセル部材の手動操作及びシフトレバーの後進操作に応じて、変速装置5を作動させて、前後進切替部13がシャトル軸11の回転方向を逆転に切り替え、走行装置7を後進駆動させる。検出センサ71は、シャトル軸11の逆転時の第2実測値を検出する(S13)。例えば、検出センサ71は、シャトル軸11の逆転に応じた第2パルス幅PW2の出力信号(逆転出力時の実測値)を、演算処理装置72に逐次に出力する。このときの検出センサ71の出力信号の第2パルス幅PW2は、90±14μsであると想定されるが、この値(90±14μs)を超えるものであっても構わない。演算処理装置72は、シャトル軸11の逆転時の第2実測値を記憶装置73に記憶させる。演算処理装置72は、前述したように検出センサ71の出力信号のパルス幅を検出可能であるので、検出センサ71の出力信号のパルス幅が「45μs」よりも「90μs」に近い場合には、シャトル軸11の逆転時の第2実測値として記憶装置73に記憶させる。なお、制御装置60は、走行車体3が後進状態で所定時速(例えば、2km)なった場合に検出開始指令を演算処理装置72に出力し、演算処理装置72は検出開始指令を受けると、検出センサ71からの出力信号に基づき、シャトル軸11の逆転時の第2実測値を記憶装置73に記憶させるとしてもよい。
【0051】
演算処理装置72は、第1実測値と第2実測値との間の中央値を演算する(S14)。例えば、記憶装置73に記憶された第1実測値が50μsであり、記憶装置73に記憶された第2実測値が80μsであったとする。演算処理装置72は、第1実測値(例えば50μs)と第2実測値(例えば80μs)との間の中央値が65μs(=(50μs+80μs)/2)であると演算する。
【0052】
演算処理装置72は、中央値と閾値Thとが等しいか否かを判定する(S15)。ここでは、演算処理装置72は、中央値(65μs)が閾値Th(67.5μs)と異なるため、中央値と閾値Thとが等しくないと判定し(S15でNO)、変更条件が成立していると判定し(S17)、中央値(65μs)を補正後の閾値CTh(65μs)に設定し(S18)、確認モードを終了する。演算処理装置72は、補正後の閾値CTh(65μs)を記憶装置73に記憶させると共に、閾値Thの変更の有無を示す設定変更フラグをオンに設定して記憶装置73に記憶させる。設定変更フラグは、オンの場合、補正後の閾値CThがあることを示し、オフの場合、補正後の閾値CThがないことを示す。
【0053】
一方、S15において、演算処理装置72は、中央値と閾値Thとが等しいと判定した場合(S15でYES)、中央値を補正後の閾値CThにすることなく、閾値Th(67.5μs)を維持する(S16)。
次に、図5Aを用いて、回転方向判定装置70による回転方向判定処理について説明する。図5Aは、第1実施形態における回転方向判定処理の一例を示すフローチャートである。
【0054】
演算処理装置72は、補正後の閾値CThの設定の有無を判定する(S21)。例えば、演算処理装置72は、記憶装置73に記憶された設定変更フラグがオフであれば、補正後の閾値CThの設定なしと判定し(S21でNO)、記憶装置73に記憶された閾値Th(67.5μs)を用いる(S22)。演算処理装置72は、検出センサ71からの出力信号のパルス幅が閾値Thよりも小さいか否かを判定する(S23)。演算処理装置72は、検出センサ71からの出力信号のパルス幅が閾値Th(67.5μs)よりも小さい場合(S23でYES)、シャトル軸11の回転方向が正転であると判定する(S24)。一方、演算処理装置72は、検出センサ71からの出力信号のパルス幅が閾値Th(67.5μs)よりも大きい場合(S23でNO)、シャトル軸11の回転方向が逆転であると判定する(S25)。S24のあと、又は、S25のあと、演算処理装置72は、検出センサ71からの次の出力信号の有無を判定し(S24A)、次の出力信号があれば(S24AでYES)、S23の処理に戻る。演算処理装置72は、次の出力信号がなければ(S24AでNO)、本処理を終了する。
【0055】
一方、S21において、演算処理装置72は、記憶装置73に記憶された設定変更フラグがオンであれば、補正後の閾値CThの設定ありと判定し(S21でYES)、記憶装置73に記憶された補正後の閾値CTh(65μs)を用いる(S26)。演算処理装置72は、検出センサ71からの出力信号のパルス幅が補正後の閾値CTh(65μs)よりも小さいか否かを判定する(S27)。演算処理装置72は、検出センサ71からの出力信号のパルス幅が補正後の閾値CTh(65μs)よりも小さい場合(S27でYES)、シャトル軸11の回転方向が正転であると判定する(S28)。一方、演算処理装置72は、検出センサ71からの出力信号のパルス幅が補正後の閾値CTh(65μs)よりも大きい場合(S27でNO)、シャトル軸11の回転方向が逆転であると判定する(S29)。
【0056】
例えば、図4AのS12にて検出された第1実測値が50μsであったので、シャトル軸11の回転方向が正転である場合の検出センサ71からの出力信号のパルス幅が50μsであることが想定される。また、図4AのS13にて検出された第2実測値が80μsであったので、シャトル軸11の回転方向が逆転である場合の検出センサ71からの出力信号のパルス幅が80μsであることが想定される。S26において、補正後の閾値CTh(65μs)が設定されている。図3Bに示すように、演算処理装置72は、正転時の出力信号の第1パルス幅PW1(=50μs)と逆転時の出力信号の第2パルス幅PW2(=80μs)との差を、30μsのマージンとすることができ、しかもその中央値を補正後の閾値CTh(65μs)に設定して正転又は逆転を判定する(S27)ので、回転方向の誤判定を低減することができる。
【0057】
S28のあと、又は、S29のあと、演算処理装置72は、検出センサ71からの次の出力信号の有無を判定し(S28A)、次の出力信号があれば(S28AでYES)、S27の処理に戻る。演算処理装置72は、次の出力信号がなければ(S28AでNO)、本処理を終了する。
上記したように本実施形態の回転方向判定装置70は、軸を中心に回転するシャトル軸11(回転対象物)の回転方向を検出し、検出した回転方向に応じて異なるパルス幅の出力信号を出力する検出センサ71と、検出センサ71からの出力信号のパルス幅が閾値Thよりも大きいか小さいかを判定することにより、シャトル軸11の回転方向が正転又は逆転であるかを判定する演算処理装置72と、を備え、演算処理装置72は、変更条件が成立している場合に閾値Thを補正後の閾値CThに変更する。この構成によれば、変更条件が成立している場合に閾値Thを補正後の閾値CThに変更するので、補正後の閾値CThを用いて回転方向の判定を行うことができ、回転方向の誤判定を低減することができる。
【0058】
また、演算処理装置72は、シャトル軸11の回転方向を正転と判定したときの検出センサ71の出力信号の第1パルス幅PW1と、シャトル軸11の回転方向を逆転と判定したときの検出センサ71の出力信号の第2パルス幅PW2との間の中央値を演算し、中央値が閾値Thと異なる場合に、変更条件が成立していると判定し、中央値を補正後の閾値CThとする。この構成によれば、正転時及び逆転時の実際の出力信号のパルス幅に基づいて閾値Thを変更するので、実状に即した適切な閾値に変更することができる。このため、適切な閾値を用いて回転方向の判定を行うので、回転方向の誤判定を低減することができる。例えば、構成部品の不確定な外乱要素(検出センサ71などの各種の電気部品の性能のバラツキ、時定数などの回路特性バラツキ)を考慮して補正後の閾値CThに変更して回転方向の判定を行うので、構成部品の不確定な外乱要素に起因する回転方向の誤判定を低減することができる。
また、本実施形態の農業機械1(作業機)は、軸を中心に回転するシャトル軸11を有する作業機であって、回転方向判定装置70を備える。この構成によれば、シャトル軸11(回転対象物)の回転方向の誤判定を低減することができる作業機を提供することができる。
【0059】
[第2実施形態]
第1実施形態では、演算処理装置72は、確認スイッチ65の操作に基づいて確認モードを設定して閾値確認処理を実行しているが、第2実施形態では、確認モードが不要であり、通常の動作状態において閾値確認処理を実行する点が、第1実施形態とは異なっている。つまり、農業機械1の起動後に前進及び後進させた場合の第1実測値及び第2実測値を用いて、閾値Thの変更の有無を判定することができる。言い換えれば、第2実施形態では、起動時には当初の閾値Thを用いて回転方向を判定し、変更条件の成立後には補正後の閾値CThを用いて回転方向を判定する構成である。
【0060】
図4Bは、第2実施形態における閾値確認処理の一例を示すフローチャートである。図4Bについては、図4Aと異なる処理について説明し、同じ処理については説明を省略する。
演算処理装置72は、農業機械1の起動後(例えば、図示しないイグニッションキーによる始動操作、原動機4の始動など)の最初の正転であるか否かを判定する(S11A)。演算処理装置72は、農業機械1の起動後に記憶装置73を確認し、第1実測値が記憶されていなければ、最初の正転であると判定し、記憶されていれば、最初の正転でないと判定する。
【0061】
そして、農業機械1の起動後の最初の正転(例えば1回目の前進走行)である場合(S11AでYES)、検出センサ71は、シャトル軸11の正転時の第1実測値を検出する(S12)。演算処理装置72は、検出センサ71からの出力信号を取得する。一方、演算処理装置72は、農業機械1の起動後の2回目以降の正転(例えば2回目以降の前進走行)である場合、最初の正転でないと判定し(S11AでNO)、本処理を終了する。
【0062】
具体的には、制御装置60は、農業機械1の起動後に、操作装置62に備わるアクセル部材の手動操作及びシフトレバーの前進操作があり、これらの操作に応じて、変速装置5を作動させて、前後進切替部13がシャトル軸11の回転方向を正転に切り替え、走行装置7を最初の前進駆動をさせたとする。検出センサ71は、シャトル軸11の正転時の第1実測値を検出する。例えば、検出センサ71は、シャトル軸11の正転に応じた第1パルス幅PW1の出力信号(正転出力時の実測値)を、演算処理装置72に逐次に出力する。演算処理装置72は、シャトル軸11の正転時の第1実測値を記憶装置73に記憶させる。演算処理装置72は、前述したように検出センサ71の出力信号のパルス幅を検出可能であるので、検出センサ71の出力信号のパルス幅が「90μs」よりも「45μs」に近い場合には、シャトル軸11の正転時の第1実測値として記憶装置73に記憶させる。
【0063】
演算処理装置72は、農業機械1の起動後の最初の逆転であるか否かを判定する(S12A)。演算処理装置72は、農業機械1の起動後に記憶装置73を確認し、第2実測値が記憶されていなければ、最初の逆転であると判定し、記憶されていれば、最初の逆転でないと判定する。
そして、農業機械1の起動後の最初の逆転(例えば1回目の後進走行)である場合(S12AでYES)、検出センサ71は、シャトル軸11の逆転時の第2実測値を検出する(S13)。演算処理装置72は、検出センサ71からの出力信号を取得する。制御装置60は、操作装置62に備わるアクセル部材の手動操作及びシフトレバーの後進操作があり、これらの操作に応じて、変速装置5を作動させて、前後進切替部13がシャトル軸11の回転方向を逆転に切り替え、走行装置7を最初の後進駆動をさせたとする。検出センサ71は、シャトル軸11の逆転時の第2実測値を検出する(S13)。例えば、検出センサ71は、シャトル軸11の逆転に応じた第2パルス幅PW2の出力信号(逆転出力時の実測値)を、演算処理装置72に逐次に出力する。演算処理装置72は、シャトル軸11の逆転時の第2実測値を記憶装置73に記憶させる。演算処理装置72は、前述したように検出センサ71の出力信号のパルス幅を検出可能であるので、検出センサ71の出力信号のパルス幅が「45μs」よりも「90μs」に近い場合には、シャトル軸11の逆転時の第2実測値として記憶装置73に記憶させる。
【0064】
図4Bに示すS14~S18については、図4Aと同じであり、ここでの説明を省略する。
第2実施形態では、演算処理装置72は、起動後の最初に正転から逆転に遷移する場合又は起動後の最初に逆転から正転に遷移する場合に、閾値Thを用いてシャトル軸11(回転対象物)の回転方向を判定し、シャトル軸11の回転方向を正転と判定したときの検出センサ71の出力信号のパルス幅と、シャトル軸11の回転方向を逆転と判定したときの検出センサ71の出力信号のパルス幅との間の中央値を演算し、中央値が閾値Thと異なる場合に、変更条件が成立していると判定し、変更条件が成立していると判定した後は、補正後の閾値CThを用いてシャトル軸11の回転方向を判定する。この構成によれば、起動後の最初に正転から逆転に遷移する場合又は起動後の最初に逆転から正転に遷移する場合に、閾値Thがそのまま維持できるのか、補正後の閾値CThに変更すべきかを、起動後に早期に判定することができる。
【0065】
[第3実施形態]
第1実施形態では、演算処理装置72は、1個の中央値を用いて補正後の閾値CThとしているが、第2実施形態では、複数計算した中央値が一定内であれば、補正後の閾値CThとする点が、第1実施形態とは異なっている。
図4Cは、第3実施形態における閾値確認処理の一例を示すフローチャートである。図4Cについては、図4Aと異なる処理について説明し、同じ処理については説明を省略する。
【0066】
演算処理装置72は、図4Cに示すように、第1実測値と第2実測値との間の中央値を演算する(S14)。演算処理装置72は、S14にて演算した中央値を記憶装置73に記憶する(S14A)。演算処理装置72は、中央値の演算回数が所定回数n(例えば、n=100回)であるか否かを判定する(S14B)。演算処理装置72は、中央値の演算回数が所定回数nでなければ(S14BでNO)、S12の処理に戻る。一方、演算処理装置72は、中央値の演算回数が所定回数nであれば(S14BでYES)、つまり、n個の中央値が記憶装置73に記憶された場合、n個の中央値の振れ幅が所定範囲(例えば±5μs)であるか否かを判定する(S14C)。演算処理装置72は、n個の中央値の振れ幅が所定範囲(例えば±5μs)であると判定すると(S14CでYES)、n個の中央値の平均値を演算する(S14D)。ここでは、中央値の平均値が64μsであったとする。演算処理装置72は、中央値の平均値(64μs)と閾値Th(67.5μs)とが等しいか否かを判定する(S15A)。演算処理装置72は、中央値の平均値が閾値Thと等しくないと判定すると(S15でNO)、変更条件が成立していると判定し(S17)、中央値の平均値(64μs)を補正後の閾値CTh(64μs)に設定し(S18)、確認モードを終了する。
【0067】
一方、S15Aにおいて、演算処理装置72は、中央値の平均値(64μs)と閾値Th(67.5μs)とが等しいと判定した場合(S15AでYES)、中央値を補正後の閾値CThにすることなく、閾値Th(67.5μs)を維持する(S16)。
ところで、S14Cにおいて、演算処理装置72は、n個の中央値の振れ幅が所定範囲(例えば±5μs)でないと判定すると(S14CでNO)、閾値Thの変更を行うことなく、本処理を終了する。
【0068】
第3実施形態では、演算処理装置72は、シャトル軸11(回転対象物)の正転と逆転とを複数回数繰り返し行うことにより、複数回数分の中央値をそれぞれ演算し、複数回数分の中央値の振れ幅が所定範囲内である場合に、複数回数分の中央値の平均値を補正後の閾値CThとする。この構成によれば、複数回数分の中央値の振れ幅が所定範囲内である場合に、複数回数分の中央値の平均値を補正後の閾値CThとするので、1個の中央値を補正後の閾値CThとする場合に比べて、より正確な補正後の閾値CThに変更することができ、シャトル軸11(回転対象物)の回転方向の誤判定をさらに低減することができる。
【0069】
[第4実施形態]
第4実施形態では、通常の動作状態で取得した直近の複数個(例えば1万個)の記憶データ(出力信号のパルス幅の記憶データ)を用いて補正後の閾値CThを決定する点が、第1実施形態とは異なっている。
図5Bは、第4実施形態における回転方向判定処理の一例を示すフローチャートである。図5Bについては、図5Aと異なる処理について説明し、同じ処理については説明を省略する。
【0070】
演算処理装置72は、図5Bに示すように、S24のあと、第1記憶処理を実行する(S30)。図7Aは、第4実施形態における第1記憶処理の一例を示すフローチャートである。演算処理装置72は、図7Aに示すように、シャトル軸11の回転方向が正転であると判定した場合、検出センサ71からの出力信号のパルス幅を記憶装置73に記憶させる(S31)。演算処理装置72は、第1記憶数RF1に「1」をインクリメントし、第1記憶数RF1を記憶する(S32)。例えば、1個記憶すると第1記憶数RF1が「1」となり、2個記憶すると第1記憶数RF1が「2」となる。演算処理装置72は、第1記憶数RF1が第1規定数NF(例えば、1万個)に到達しているか否かを判定する(S33)。演算処理装置72は、第1記憶数RF1が第1規定数NF(例えば、1万個)に到達していていれば(S33でYES)、第1フラグをオンにし(S34)、本処理を終了し、図5Bに示すS24Aの処理に進む。第1フラグは、第1記憶数RF1が第1規定数NFに到達した場合にオンとなり、第1記憶数RF1が第1規定数NFに到達していない場合にオフとなる。一方、演算処理装置72は、第1記憶数RF1が第1規定数NF(例えば、1万個)に到達していない場合(S33でNO)、本処理を終了し、図5Bに示すS24Aの処理に進む。
【0071】
また、演算処理装置72は、図5Bに示すS25のあと、第2記憶処理を実行する(S40)。図7Bは、第4実施形態における第2記憶処理の一例を示すフローチャートである。演算処理装置72は、図7Bに示すように、シャトル軸11の回転方向が逆転であると判定した場合、検出センサ71からの出力信号のパルス幅を記憶装置73に記憶させる(S41)。演算処理装置72は、第2記憶数RP1に「1」をインクリメントし、第2記憶数RP1を記憶する(S42)。例えば、1個記憶すると第2記憶数RP1が「1」となり、2個記憶すると第2記憶数RP1が「2」となる。演算処理装置72は、第2記憶数RP1が第2規定数NR(例えば、1万個)に到達しているか否かを判定する(S43)。演算処理装置72は、第2記憶数RP1が第2規定数NR(例えば、1万個)に到達していていれば(S43でYES)、第2フラグをオンにし(S44)、本処理を終了し、図5Bに示すS24Aの処理に進む。第2フラグは、第2記憶数RP1が第2規定数NRに到達した場合にオンとなり、第2記憶数RP1が第2規定数NRに到達していない場合にオフとなる。一方、演算処理装置72は、第2記憶数RP1が第2規定数NR(例えば、1万個)に到達していない場合(S33でNO)、本処理を終了し、図5Bに示すS24Aの処理に進む。
【0072】
図4Dは、第4実施形態における閾値確認処理の一例を示すフローチャートである。図4Dについては、図4Aと異なる処理について説明し、同じ処理については説明を省略する。
演算処理装置72は、図4Dに示すように、第1フラグ及び第2フラグの両方がオンであるか否かを判定する(S51)。演算処理装置72は、第1フラグ及び第2フラグの両方がオンであると判定すると(S51でYES)、シャトル軸11の正転時の複数回分(例えば、1万個)の第1実測値(つまり、図7AのS31で1万個収集された第1実測値)を記憶装置73から取得し、これらの平均値を演算する(S52)。演算処理装置72は、シャトル軸11の逆転時の複数回分(例えば、1万個)の第2実測値(つまり、図7BのS41で1万個収集された第2実測値)を記憶装置73から取得し、これらの平均値を演算する(S53)。なお、S53の処理のあとに、S52の処理を行うとしてもよい。また、図7Aに示す第1記憶処理において、事前に第1実測値の平均値を演算しておき、S52では、演算済みの第1実測値の平均値を取得するだけとしてもよい。これと同様に、図7Bに示す第2記憶処理において、事前に第2実測値の平均値を演算しておき、S53では、演算済みの第2実測値の平均値を取得するだけとしてもよい。
【0073】
演算処理装置72は、第1実測値の平均値と第2実測値の平均値との間の中央値を演算する(S54)。例えば、第1実測値の平均値が50μsであり、第2実測値の平均値が78μsであったとする。演算処理装置72は、第1実測値の平均値(例えば50μs)と第2実測値の平均値(例えば78μs)との間の中央値が64μs(=(50μs+78μs)/2)であると演算する。
【0074】
演算処理装置72は、中央値と閾値Thとが等しいか否かを判定する(S55)。ここでは、演算処理装置72は、中央値(64μs)が閾値Th(67.5μs)と異なるため、中央値と閾値Thとが等しくないと判定し(S55でNO)、変更条件が成立していると判定し(S57)、中央値(64μs)を補正後の閾値CTh(64μs)に設定する(S58)。演算処理装置72は、S58の処理のあと、第3フラグ及び第4フラグの両方をオフにする(S58A)。一方、S55において、演算処理装置72は、中央値と閾値Thとが等しいと判定した場合(S55でYES)、中央値を補正後の閾値CThにすることなく、閾値Th(67.5μs)を維持する(S56)。
【0075】
ところで、S51において、演算処理装置72は、第1フラグ及び第2フラグの少なくとも一方がオフであれば(S51でNO)、第3フラグ及び第4フラグの両方がオンであるか否かを判定する(S59)。
演算処理装置72は、補正後の閾値CThに変更した後も、シャトル軸11の正転時の複数回分(例えば、1万個)の第1実測値を記憶させ、且つ、シャトル軸11の逆転時の複数回分(例えば、1万個)の第2実測値を記憶させることを、繰り返し実行する。補正後の閾値CThに変更した後における第3記憶処理(S80)と第4記憶処理(S90)とについて、以下に説明する。
【0076】
演算処理装置72は、図5Bに示すように、S28のあと、第3記憶処理を実行する(S80)。図7Cは、第4実施形態における第3記憶処理の一例を示すフローチャートである。演算処理装置72は、図7Cに示すように、シャトル軸11の回転方向が正転であると判定した場合、検出センサ71からの出力信号のパルス幅を記憶装置73に記憶させる(S81)。演算処理装置72は、第3記憶数RF2に「1」をインクリメントし、第3記憶数RF2を記憶する(S82)。例えば、1個記憶すると第3記憶数RF2が「1」となり、2個記憶すると第3記憶数RF2が「2」となる。演算処理装置72は、第3記憶数RF2が第1規定数NF(例えば、1万個)に到達しているか否かを判定する(S83)。演算処理装置72は、第3記憶数RF2が第1規定数NF(例えば、1万個)に到達していれば(S83でYES)、第3フラグをオンにし(S84)、本処理を終了し、図5Bに示すS28Aの処理に進む。第3フラグは、第3記憶数RF2が第1規定数NFに到達した場合にオンとなり、第3記憶数RF2が第1規定数NFに到達していない場合にオフとなる。一方、演算処理装置72は、第3記憶数RF2が第1規定数NF(例えば、1万個)に到達していない場合(S83でNO)、本処理を終了し、図5Bに示すS28Aの処理に進む。
【0077】
また、演算処理装置72は、図5Bに示すS29のあと、第4記憶処理を実行する(S90)。図7Dは、第4実施形態における第4記憶処理の一例を示すフローチャートである。演算処理装置72は、図7Dに示すように、シャトル軸11の回転方向が逆転であると判定した場合、検出センサ71からの出力信号のパルス幅を記憶装置73に記憶させる(S91)。演算処理装置72は、第4記憶数RP2に「1」をインクリメントし、第4記憶数RP2を記憶する(S92)。例えば、1個記憶すると第4記憶数RP2が「1」となり、2個記憶すると第4記憶数RP2が「2」となる。演算処理装置72は、第4記憶数RP2が第2規定数NR(例えば、1万個)に到達しているか否かを判定する(S93)。演算処理装置72は、第4記憶数RP2が第2規定数NR(例えば、1万個)に到達していていれば(S93でYES)、第4フラグをオンにし(S94)、本処理を終了し、図5Bに示すS28Aの処理に進む。第4フラグは、第4記憶数RP2が第2規定数NRに到達した場合にオンとなり、第4記憶数RP2が第2規定数NRに到達していない場合にオフとなる。一方、演算処理装置72は、第4記憶数RP2が第2規定数NR(例えば、1万個)に到達していない場合(S93でNO)、本処理を終了し、図5Bに示すS28Aの処理に進む。
【0078】
ところで、図4DのS59において、演算処理装置72は、第3フラグ及び第4フラグの両方がオンであると判定すると(S59でYES)、シャトル軸11の正転時の複数回分(例えば、1万個)の第1実測値(つまり、図7CのS81で1万個収集された第1実測値)を記憶装置73から取得し、これらの平均値を演算する(S52)。演算処理装置72は、シャトル軸11の逆転時の複数回分(例えば、1万個)の第2実測値(つまり、図7DのS91で1万個収集された第2実測値)を記憶装置73から取得し、これらの平均値を演算する(S53)。なお、S53の処理のあとに、S52の処理を行うとしてもよい。また、図7Cに示す第3記憶処理において、事前に第1実測値の平均値を演算しておき、S52では、演算済みの第1実測値の平均値を取得するだけとしてもよい。これと同様に、図7Dに示す第4記憶処理において、事前に第2実測値の平均値を演算しておき、S53では、演算済みの第2実測値の平均値を取得するだけとしてもよい。
【0079】
演算処理装置72は、S54~S58Aの処理により、補正後の閾値CThに変更した後も、補正後の閾値CThを更新する。
第4実施形態では、記憶装置73は、演算処理装置72にてシャトル軸11(回転対象物)の回転方向が正転と判定されたときの検出センサ71の出力信号のパルス幅を複数個記憶し、演算処理装置72にてシャトル軸11の回転方向が逆転と判定されたときの検出センサ71の出力信号のパルス幅を複数個記憶し、演算処理装置72は、記憶装置73に記憶された、正転と判定されたときの直近の複数回分のパルス幅の平均値と、記憶装置73に記憶された、逆転と判定されたときの直近の複数回分のパルス幅の平均値との間の中央値を演算し、中央値が閾値Thと異なる場合に、変更条件が成立していると判定し、中央値を補正後の閾値CThとする。この構成によれば、正転と判定したときに記憶装置73に記憶しておいた直近の複数回分のパルス幅についての平均値と、逆転と判定したときに記憶装置73に記憶しておいた直近の複数回分のパルス幅についての平均値との間の中央値を演算し、中央値が閾値Thと異なる場合に、中央値を補正後の閾値CThとするので、最新の中央値を用いて補正後の閾値CThを更新することができ、より正確な補正後の閾値CThを用いるので、シャトル軸11(回転対象物)の回転方向の誤判定をさらに低減することができる。
【0080】
[第5実施形態]
第5実施形態では、再起動した場合に補正後の閾値CThを記憶している場合には、再起動の直後から補正後の閾値CThを用い、補正後の閾値CThが記憶されていない場合に閾値Th(基準閾値)を用いる点が、第1実施形態とは異なっている。
図6は、第5実施形態における再起動時の閾値確認処理の一例を示すフローチャートである。演算処理装置72は、図6に示すように、農業機械1の再起動後(例えば、図示しないイグニッションキーによる再度の始動操作、原動機4の再度の始動など)であるか否かを判定する(S71)。例えば、農業機械1の最初の起動時に起動フラグをオンにして記憶装置73に記憶させておき、再起動時に起動フラグがオンであれば、再起動であると判定し(S71でYES)、起動フラグがオフであれば再起動でないと判定し(S71でNO)、本処理を終了する。
【0081】
演算処理装置72は、再起動であると判定した場合(S71でYES)、記憶装置73に補正後の閾値CThが記憶されているか否かを判定する(S72)。演算処理装置72は、記憶装置73に補正後の閾値CThが記憶されていると判定した場合(S72でYES)、記憶装置73に記憶された補正後の閾値CThを設定し(S73)、本処理を終了する。
【0082】
一方、演算処理装置72は、記憶装置73に補正後の閾値CThが記憶されていないと判定した場合(S72でNO)、閾値Thを維持し(S74)、本処理を終了する。
第5実施形態では、回転方向判定装置70は、補正後の閾値CThを記憶する記憶装置73を備え、演算処理装置72は、再起動がされると、記憶装置73に記憶された補正後の閾値CThを読み出し、読み出した補正後の閾値CThを用いてシャトル軸11(回転対象物)の回転方向を判定する。この構成によれば、再起動後には、記憶装置73に記憶された補正後の閾値CThを読み出し、読み出した補正後の閾値CThを用いてシャトル軸11(回転対象物)の回転方向を判定することができるので、迅速に補正後の閾値CThを活用することができる。また、再度の補正後の閾値CThを演算する処理を削減することができるので、演算処理装置72の処理負担を低減することができる。
【0083】
[第6実施形態]
第6実施形態では、温度(例えば周囲温度)に応じて閾値Thを変更する点が、第1~第5実施形態とは異なっている。
第6実施形態の農業機械1の回転方向判定装置70は、図8に示すように、例えばサーミスタなどの温度センサ74を備えている。温度センサ74は、入力部72aの周囲の所定範囲内に配置されている。例えば、温度センサ74は、入力部72aの近傍箇所に配置されている。具体的には、温度センサ74は、入力コネクタの外壁部に接触して配置されるとしてもよいし、外壁部に非接触で数cm~数十cm以内の箇所に配置されるとしてもよい。
【0084】
演算処理装置72は、温度センサ74にて検出された温度が予め定められた標準温度以外の温度である場合に、変更条件が成立していると判定し、温度センサ74にて検出された温度に応じて閾値Th又は補正後の閾値CThを補正した温度補正後の閾値に変更する。
具体的には、記憶装置73は、温度センサ74にて検出された温度と補正値とを対応付けた温度特性式(図9参照)を予め記憶している。図9は、検出温度と補正値とを対応付けた温度特性の一例を示す図である。温度特性式は、以下の式(1)である。
y=0.0013x2―0.1827x+3.7727 ・・・ (1)
但し、yは補正値、xは検出温度である。
【0085】
温度特性は、例えば、実測又は回路シミュレーションにより導かれた特性である。
演算処理装置72は、温度センサ74にて検出された温度が予め定められた標準温度以外の温度である場合に、変更条件が成立していると判定し、温度特性式を用いて、温度センサ74にて検出された温度に対応する補正値を特定し、この特定した補正値を閾値Th又は補正後の閾値CThに加算した値を温度補正後の閾値とする。
【0086】
図9図10を用いて、補正値について説明する。図10は、検出温度が-30℃、25℃及び80℃であった場合の検出センサ71からの出力信号のパルス幅をそれぞれ示す図である。図10に示すように、温度センサ74の検出温度が25℃(所謂、常温)である場合、検出センサ71からの出力信号のパルス幅が27.2μsであった。また、温度センサ74の検出温度が-30℃である場合、検出センサ71からの出力信号のパルス幅が37.6μsであった。また、温度センサ74の検出温度が80℃である場合、検出センサ71からの出力信号のパルス幅が24.5μsであった。図10に示すように、温度が低くなるに連れて、検出センサ71からの出力信号のパルス幅が長くなる傾向がある。正確には、検出センサ71からの出力信号のパルス幅は、図9に示す温度特性式で表される2次関数に従って長くなる傾向がある。
【0087】
図11を用いて、第6実施形態における温度補正処理について説明する。図11は、第6実施形態における温度補正処理の一例を示す示すフローチャートである。
演算処理装置72は、温度センサ74にて検出された温度が予め定められた標準温度(例えば、25℃)であるか否かを判定する(S61)。演算処理装置72は、温度センサ74にて検出された温度が標準温度(例えば、25℃)であれば(S61でYES)、本処理を終了する。
【0088】
一方、演算処理装置72は、温度センサ74にて検出された温度が予め定められた標準温度(例えば、25℃)ではない、つまり、標準温度以外の温度である場合(S61でNO)、変更条件が成立していると判定し、温度センサ74にて検出された温度に対応した補正値を特定する(S62)。例えば、演算処理装置72は、温度特性式である上記の式(1)を用いて、補正値を特定する。
【0089】
具体的には、演算処理装置72は、温度センサ74の検出温度が-30℃である場合、図9に示すように、補正値が「+10.4μs」であると特定する。図10に示すように、25℃(常温)時の検出センサ71からの出力信号のパルス幅が27.2μsであり、-30℃時の検出センサ71からの出力信号のパルス幅が37.6μsであり、その差分が「+10.4μs」であり、補正値(「+10.4μs」)と一致する。
【0090】
また、演算処理装置72は、温度センサ74の検出温度が80℃である場合、図9に示すように、補正値が「-2.7μs」であると特定する。図10に示すように、25℃(常温)時の検出センサ71からの出力信号のパルス幅が27.2μsであり、80℃時の検出センサ71からの出力信号のパルス幅が24.5μsであり、その差分が「-2.7μs」であり、補正値(「-2.7μs」)と一致する。
【0091】
図11に示すように、演算処理装置72は、補正後の閾値CThに変更済みであるか否かを判定する(S63)。演算処理装置72は、補正後の閾値CThに変更済みであると判定した場合(S63でYES)、補正後の閾値CThに補正値を加算する(S64)。例えば、演算処理装置72は、温度センサ74の検出温度が-30℃である場合、補正後の閾値CThに補正値(「+10.4μs」)を加算する。また、演算処理装置72は、温度センサ74の検出温度が80℃である場合、補正後の閾値CThに補正値(「-2.7μs」)を加算する。
【0092】
一方、演算処理装置72は、補正後の閾値CThに変更済みでないと判定した場合(S63でNO)、閾値Thに補正値を加算する(S65)。例えば、演算処理装置72は、温度センサ74の検出温度が-30℃である場合、閾値Thに補正値(「+10.4μs」)を加算する。また、演算処理装置72は、温度センサ74の検出温度が80℃である場合、閾値Thに補正値(「-2.7μs」)を加算する。
【0093】
第6実施形態では、回転方向判定装置70は、周囲温度を検出する温度センサ74を備え、演算処理装置72は、温度センサ74にて検出された温度が予め定められた標準温度以外の温度である場合に、変更条件が成立していると判定し、温度センサ74にて検出された温度に応じて閾値Th又は補正後の閾値CThを補正した温度補正後の閾値に変更する。この構成によれば、温度センサ74にて検出された温度に応じて閾値Th又は補正後の閾値CThを補正した温度補正後の閾値に変更するので、温度変化に起因する回転方向の誤判定を低減することができる。例えば、不確定な外乱要素(検出センサなどの各種の電気部品の性能、回路特性が温度変化によって変化すること)を考慮して閾値Th又は補正後の閾値CThを補正した温度補正後の閾値を用いて回転方向の判定を行うので、構成部品の不確定な外乱要素(つまり、温度変化)に起因する回転方向の誤判定を低減することができる。
【0094】
また、回転方向判定装置70は、温度センサ74にて検出された温度と補正値とを対応付けた温度特性式を予め記憶する記憶装置73を備え、演算処理装置72は、温度センサ74にて検出された温度が予め定められた標準温度以外の温度である場合に、変更条件が成立していると判定し、温度特性式を用いて、温度センサ74にて検出された温度に対応する補正値を演算し、この演算した補正値を閾値Th又は補正後の閾値CThに加算した値を温度補正後の閾値とする。この構成によれば、温度特性式を用いて補正値を簡単に演算することができ、温度補正後の閾値に好適に変更することができる。
【0095】
なお、回転方向判定装置70は、温度センサ74にて検出された温度と補正値とを対応付けた温度特性マップを予め記憶する記憶装置73を備え、演算処理装置72は、温度センサ74にて検出された温度が予め定められた標準温度以外の温度である場合に、変更条件が成立していると判定し、温度特性マップを用いて、温度センサ74にて検出された温度に対応する補正値を特定し、この特定した補正値を閾値Th又は補正後の閾値CThに加算した値を温度補正後の閾値とするとしてもよい。この場合には、温度特性マップを用いて補正値を簡単に特定することができ、温度補正後の閾値に好適に変更することができる。また、演算処理装置による演算処理の負担を低減することができる。
【0096】
また、演算処理装置72は、検出センサ71に接続された配線71aのコネクタ71bが接続され、検出センサ71からの出力信号が入力される入力部72aを有し、温度センサ74は、入力部72aの周囲の所定範囲内に配置されている。この構成によれば、温度センサ74により、演算処理装置72の周囲温度を適切に検出することができ、温度補正後の閾値に好適に変更することができる。
【0097】
また、第6実施形態では、補正値を閾値Th又は補正後の閾値CThに加算しているが、これに限定されない。例えば、演算処理装置72は、検出温度を閾値Thに乗算する絶対値テーブルを実装し、直接に温度補正後の閾値を導出するとしてもよい。
上記の各実施形態では、回転対象物の一例としてシャトル軸11の回転方向を検出することについて説明しているが、回転対象物はシャトル軸11に限定されない。例えば、回転対象物としては、PTO軸16などの軸部品、ギア、走行系トランスミッション、走行モータなど、正転及び逆転する回転対象物であれば何でもよい。
【0098】
また、上記の各実施形態において、操作装置62は、オペレータによる閾値の入力を受け付け、演算処理装置72は、入力された閾値を補正後の閾値CThなどとする構成としてもよい。つまり、手動で閾値を入力可能としてもよい。
なお、演算処理装置72は、走行車体3を実際に前進走行させて、シャトル軸11(回転対象物)の回転方向の判定などを行ってもよいし、第1クラッチ17、第2クラッチ18を切断した状態として、走行車体3を空回り前進させて、シャトル軸11(回転対象物)の回転方向の判定などを行ってもよい。
【0099】
なお、演算処理装置72は、シャトル軸11(回転対象物)の回転方向の判定、補正後の閾値CThへの変更などについて、ハンドル30の手動操作による手動操舵である場合に実行するようにしているが、自動制御部61による自動操舵である場合に実行するようにしてもよい。
以上、本発明について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0100】
1 農業機械(作業機)
11 シャトル軸(回転対象物)
70 回転方向判定装置
71 検出センサ
71a 配線
71b コネクタ
72 演算処理装置
72a 入力部
73 記憶装置
74 温度センサ
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
図11
図12