(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-04
(45)【発行日】2025-07-14
(54)【発明の名称】光走査装置、及びマイクロミラーデバイスの駆動方法
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20250707BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20250707BHJP
【FI】
G02B26/10 C
G02B26/10 104Z
G02B26/08 E
(21)【出願番号】P 2022578308
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 JP2022002053
(87)【国際公開番号】W WO2022163501
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2024-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2021011351
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西浦 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】直野 崇幸
(72)【発明者】
【氏名】青島 圭佑
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/230065(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/085063(WO,A1)
【文献】特開2009-223165(JP,A)
【文献】特開2012-203079(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0110400(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/00-26/12
B81B 1/00-7/04
B81C 1/00-99/00
G01S 7/48-7/51,17/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を反射する反射面を有するミラー部と、前記ミラー部が静止している場合の前記反射面を含む平面内にある第1軸の周りに前記ミラー部を揺動させる第1アクチュエータと、前記平面内において前記第1軸に直交する第2軸の周りに前記ミラー部を揺動させる第2アクチュエータとを備えるマイクロミラーデバイスと、
前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータに、それぞれ同一の駆動周波数を有する第1駆動信号及び第2駆動信号を与えることにより前記ミラー部を歳差運動させるプロセッサと、
を備える光走査装置であって、
前記マイクロミラーデバイスは、前記第1軸周りの共振周波数をf
1とし、前記第2軸周りの共振周波数をf
2とした場合、f
2<f
1の関係を満たし、
前記ミラー部を前記第1軸周り及び前記第2軸周りに同時に駆動した場合に、前記第1軸周りの共振周波数がf
1からΔfだけ変化する特性を有し、
前記駆動周波数をf
dとした場合に、f
1-Δf<f
d≦f
1の関係を満たす、
光走査装置。
【請求項2】
Δf>0の関係を満たす、
請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
f
1-Δf<f
d<f
2の関係を満たす、
請求項
2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータは、それぞれ圧電素子を備えた圧電アクチュエータである、
請求項1
から請求項3のうちいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記第1アクチュエータは、前記ミラー部を前記第1軸周りで揺動可能に支持する第1支持部を介して前記ミラー部に接続されており、
前記第2アクチュエータは、前記第1アクチュエータを前記第2軸周りで揺動可能に支持する第2支持部を介して前記第1アクチュエータに接続されている、
請求項1
から請求項4のうちいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記第1支持部及び前記第2支持部は、それぞれトーションバーである、
請求項
5に記載の光走査装置。
【請求項7】
前記ミラー部が静止している場合の前記反射面に垂直に光ビームを照射する光源を備える、
請求項1
から請求項6のうちいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項8】
入射光を反射する反射面を有するミラー部と、前記ミラー部が静止している場合の前記反射面を含む平面内にある第1軸の周りに前記ミラー部を揺動させる第1アクチュエータと、前記平面内において前記第1軸に直交する第2軸の周りに前記ミラー部を揺動させる第2アクチュエータとを備えるマイクロミラーデバイスの駆動方法であって、
前記マイクロミラーデバイスは、前記第1軸周りの共振周波数をf
1とし、前記第2軸周りの共振周波数をf
2とした場合、f
2<f
1の関係を満たし、
前記ミラー部を前記第1軸周り及び前記第2軸周りに同時に駆動した場合に、前記第1軸周りの共振周波数がf
1からΔfだけ変化する特性を有し、
プロセッサが前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータに、f
1-Δf<f
d≦f
1の関係を満たす駆動周波数f
dを有する第1駆動信号及び第2駆動信号をそれぞれ与えることにより前記ミラー部を歳差運動させる、
マイクロミラーデバイスの駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、光走査装置、及びマイクロミラーデバイスの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン(Si)の微細加工技術を用いて作製される微小電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems:MEMS)デバイスの1つとしてマイクロミラーデバイス(マイクロスキャナともいう。)が知られている。マイクロミラーデバイスは、光走査装置に設けられた駆動制御部により駆動される。駆動制御部は、マイクロミラーデバイスのミラー部を駆動することにより、ミラー部で反射される光ビームを、対象物に対して2次元走査する。
【0003】
マイクロミラーデバイスによる光走査方式は、従来のポリゴンミラーによる光走査方式と比べて、小型、軽量、かつ低消費電力という点で優れている。このため、マイクロミラーデバイスは、LiDAR(Light Detection and Ranging)装置、又は走査ビームディスプレイなどへの適用が注目されている。
【0004】
マイクロミラーデバイスの駆動方式には、静電駆動方式、電磁駆動方式、又は圧電駆動方式などがある。圧電駆動方式は、トルクが大きい一方で、デバイス構造及び駆動回路が単純であるため、小型で、かつスキャン角度が大きい。また、マイクロミラーデバイスは、質量、構造、及びばね定数で決まる固有の振動周波数で共振する。マイクロミラーデバイスを、共振周波数で駆動することにより、より大きなスキャン角度が得られる。スキャン角度は、ミラー部の振れ角に対応する。
【0005】
国際公開第2018/230065号公報では、ミラー部を歳差運動させることを可能とする圧電型2軸駆動方式のマイクロミラーデバイスが提案されている。歳差運動とは、ミラー部の反射面に直交する中心軸が円を描くように振れる運動である。ミラー部を歳差運動させるためには、互いに直交する第1軸及び第2軸のそれぞれの周りにミラー部を、同一の周波数で揺動させる必要がある。このため、国際公開第2018/230065号公報では、第1軸周りの共振周波数(以下、第1共振周波数という。)と、第2軸周りの共振周波数(以下、第2共振周波数という。)とを一致させることが提案されている。
【0006】
ミラー部を歳差運動させることにより、ミラー部で反射される光ビームは、円を描くように走査される。この円状の光ビームは、例えば、LiDAR装置で利用される。
【0007】
また、特開2019-144497号公報では、圧電型2軸駆動方式のマイクロミラーデバイスにおいて、第1軸周りにミラー部を共振駆動する第1アクチュエータと、第2軸周りにミラー部を共振駆動する第2アクチュエータとの間でクロストークが発生することが開示されている。このクロストークは、一方のアクチュエータで生じる振動が、他方のアクチュエータに伝搬することにより、共振振動が励起されることが原因である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
国際公開第2018/230065号公報に記載のように、第1共振周波数と第2共振周波数とを一致させ、かつ第1及び第2アクチュエータに与える駆動信号の周波数を第1共振周波数及び第2共振周波数に一致させることで、駆動信号に対するミラー部の動作の応答性が向上する。しかし、第1共振周波数と第2共振周波数とを一致させると、特開2019-144497号公報に記載のクロストークが大きくなるという弊害が生じると考えられる。
【0009】
本出願人は、第1アクチュエータがミラー部を第1軸周りに揺動させ、かつ第2アクチュエータがミラー部とともに第1アクチュエータを第2軸周りに揺動させるマイクロミラーデバイスでは、クロストークが生じやすいことを確認している。具体的には、本出願人は、第2軸周りの振れ角に応じて第1共振周波数がシフトすることを確認している。
【0010】
ミラー部を歳差運動させるためには、第1軸周りの振れ角と、第2軸周りの振れ角とを正確に一致させる必要がある。しかし、上記のようなクロストークが発生すると、第2軸周りの振れ角に応じて第1共振周波数がシフトするため、第1軸周りの振れ角が低下してしまう。
【0011】
振れ角を向上させるためには、駆動信号の振幅電圧を大きくすることが考えられる。しかし、駆動信号の振幅電圧を大きくすると、マイクロミラーデバイスを駆動するための駆動回路が大型化し、かつ消費電力が大きくなるという弊害が生じる。
【0012】
本開示の技術は、ミラー部を歳差運動させる場合に、低電力で振れ角を向上させることを可能とする光走査装置、及びマイクロミラーデバイスの駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本開示の光走査装置は、入射光を反射する反射面を有するミラー部と、ミラー部が静止している場合の反射面を含む平面内にある第1軸の周りにミラー部を揺動させる第1アクチュエータと、平面内において第1軸に直交する第2軸の周りにミラー部を揺動させる第2アクチュエータとを備えるマイクロミラーデバイスと、第1アクチュエータ及び第2アクチュエータに、それぞれ同一の駆動周波数を有する第1駆動信号及び第2駆動信号を与えることによりミラー部を歳差運動させるプロセッサと、を備える光走査装置であって、マイクロミラーデバイスは、第1軸周りの共振周波数をf1とし、第2軸周りの共振周波数をf2とした場合、f2<f1の関係を満たし、駆動周波数をfdとした場合に、fd≦f1の関係を満たす。
【0014】
ミラー部を第1軸周り及び第2軸周りに同時に駆動した場合に、第1軸周りの共振周波数がf1からΔfだけ変化する特性を有し、f1-Δf<fdの関係を満たすことが好ましい。
【0015】
Δf>0の関係を満たすことが好ましい。
【0016】
f1-Δf<fd<f2の関係を満たすことが好ましい。
【0017】
第1アクチュエータ及び第2アクチュエータは、それぞれ圧電素子を備えた圧電アクチュエータであることが好ましい。
【0018】
第1アクチュエータは、ミラー部を第1軸周りで揺動可能に支持する第1支持部を介してミラー部に接続されており、第2アクチュエータは、第1アクチュエータを第2軸周りで揺動可能に支持する第2支持部を介して第1アクチュエータに接続されていることが好ましい。
【0019】
第1支持部及び第2支持部は、それぞれトーションバーであることが好ましい。
【0020】
ミラー部が静止している場合の反射面に垂直に光ビームを照射する光源を備えることが好ましい。
【0021】
本開示のマイクロミラーデバイスの駆動方法は、入射光を反射する反射面を有するミラー部と、ミラー部が静止している場合の反射面を含む平面内にある第1軸の周りにミラー部を揺動させる第1アクチュエータと、平面内において第1軸に直交する第2軸の周りにミラー部を揺動させる第2アクチュエータとを備えるマイクロミラーデバイスの駆動方法であって、マイクロミラーデバイスは、第1軸周りの共振周波数をf1とし、第2軸周りの共振周波数をf2とした場合、f2<f1の関係を満たし、第1アクチュエータ及び第2アクチュエータに、fd≦f1の関係を満たす駆動周波数fdを有する第1駆動信号及び第2駆動信号をそれぞれ与えることによりミラー部を歳差運動させる。
【発明の効果】
【0022】
本開示の技術によれば、ミラー部を歳差運動させる場合に、低電力で振れ角を向上させることを可能とする光走査装置、及びマイクロミラーデバイスの駆動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】駆動制御部のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】マイクロミラーデバイスの外観斜視図である。
【
図4】マイクロミラーデバイスを光入射側から見た平面図である。
【
図7】逆位相の共振モードで第1アクチュエータを駆動した例を示す図である。
【
図8】逆位相の共振モードで第2アクチュエータを駆動した例を示す図である。
【
図9】第1アクチュエータ及び第2アクチュエータに与える駆動信号の一例を示す図である。
【
図10】最大振れ角の時間変化を説明する図である。
【
図12】振れ角と駆動周波数との関係を模式的に示す図である。
【
図13】最大振れ角に対するシフト量の変化の一例を示す図である。
【
図14】駆動周波数f
dを、f
d<f
1-Δfの範囲内に設定した場合における最大振れ角の計測結果を示す図である。
【
図15】駆動周波数f
dを、f
1-Δf<f
d<f
2の範囲内に設定した場合における最大振れ角の計測結果を示す図である。
【
図16】駆動周波数f
dを、f
d=f
2と設定した場合における最大振れ角の計測結果を示す図である。
【
図17】駆動周波数f
dを、f
2<f
d≦f
1の範囲内に設定した場合における最大振れ角の計測結果を示す図である。
【
図18】駆動周波数f
dを、f
1<f
dの範囲内に設定した場合における最大振れ角の計測結果を示す図である。
【
図19】リブを有するマイクロミラーデバイスを裏面側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付図面に従って本開示の技術に係る実施形態の一例について説明する。
【0025】
図1は、一実施形態に係る光走査装置10を概略的に示す。光走査装置10は、マイクロミラーデバイス(以下、MMD(Micro Mirror Device)という。)2と、光源3と、駆動制御部4とを有する。光走査装置10は、駆動制御部4の制御に従って、光源3から照射された光ビームLをMMD2により反射することにより被走査面5を光走査する。被走査面5は、例えばスクリーンである。
【0026】
MMD2は、第1軸a
1と、第1軸a
1に直交する第2軸a
2との周りに、ミラー部20(
図3参照)を揺動させることを可能とする圧電型2軸駆動方式のマイクロミラーデバイスである。以下、第1軸a
1と平行な方向をX方向、第2軸a
2と平行な方向をY方向、第1軸a
1及び第2軸a
2に直交する方向をZ方向という。
【0027】
光源3は、光ビームLとして、例えばレーザ光を発するレーザ装置である。光源3は、MMD2のミラー部20が静止した状態において、ミラー部20が備える反射面20A(
図3参照)に垂直に光ビームLを照射することが好ましい。
【0028】
駆動制御部4は、光走査情報に基づいて光源3及びMMD2に駆動信号を出力する。光源3は、入力された駆動信号に基づいて光ビームLを発生してMMD2に照射する。MMD2は、入力された駆動信号に基づいて、ミラー部20を第1軸a1及び第2軸a2の周りに揺動させる。
【0029】
詳しくは後述するが、駆動制御部4は、ミラー部20を歳差運動させる。ミラー部20が歳差運動を行うことにより、ミラー部20で反射される光ビームLは、被走査面5上において円を描くように走査される。この円状の光ビームLは、例えば、LiDAR装置で利用される。
【0030】
図2は、駆動制御部4のハードウェア構成の一例を示す。駆動制御部4は、CPU(Central Processing Unit)40、ROM(Read Only Memory)41、RAM(Random Access Memory)42、光源ドライバ43、及びMMDドライバ44を有する。CPU40は、ROM41等の記憶装置からプログラム及びデータをRAM42に読み出して処理を実行することにより、駆動制御部4の全体の機能を実現する演算装置である。CPU40は、本開示の技術に係るプロセッサの一例である。
【0031】
ROM41は、不揮発性の記憶装置であり、CPU40が処理を実行するためのプログラム、及び前述の光走査情報等のデータを記憶している。RAM42は、プログラム及びデータを一時的に保持する不揮発性の記憶装置である。
【0032】
光源ドライバ43は、CPU40の制御に従って、光源3に駆動信号を出力する電気回路である。光源ドライバ43においては、駆動信号は、光源3の照射タイミング及び照射強度を制御するための駆動電圧である。
【0033】
MMDドライバ44は、CPU40の制御に従って、MMD2に駆動信号を出力する電気回路である。MMDドライバ44においては、駆動信号は、MMD2のミラー部20を揺動させるタイミング、周期、及び振れ角を制御するための駆動電圧である。
【0034】
CPU40は、光走査情報に基づいて光源ドライバ43及びMMDドライバ44を制御する。光走査情報は、被走査面5にどのように光ビームLを走査するかを表す情報である。本実施形態では、被走査面5に円を描くように光ビームLを走査することを表す情報である。なお、例えば、光走査装置10をLiDAR装置に組み込む場合には、光走査情報には、距離測定用の光ビームLを照射するタイミング、及び照射範囲等が含まれる。
【0035】
次に、
図3~
図6を用いてMMD2の一例を説明する。
図3は、MMD2の外観斜視図である。
図4は、MMD2を光入射側から見た平面図である。
図5は、
図4のA-A線に沿った断面図である。
図6は、
図4のB-B線に沿った断面図である。
【0036】
図3及び
図4に示すように、MMD2は、ミラー部20、第1アクチュエータ21、第2アクチュエータ22、支持枠23、第1支持部24、第2支持部25、及び固定部26を有する。MMD2は、いわゆるMEMSデバイスである。
【0037】
ミラー部20は、入射光を反射する反射面20Aを有する。反射面20Aは、ミラー部20の一面に設けられた、例えば、金(Au)又はアルミニウム(Al)等の金属薄膜で形成されている。反射面20Aは、例えば円形である。
【0038】
第1アクチュエータ21は、ミラー部20を囲うように配置されている。支持枠23は、ミラー部20及び第1アクチュエータ21を囲うように配置されている。第2アクチュエータ22は、ミラー部20、第1アクチュエータ21、及び支持枠23を囲うように配置されている。なお、支持枠23は、本開示の技術に必須の構成要素ではない。
【0039】
第1支持部24は、ミラー部20と第1アクチュエータ21とを、第1軸a1上で接続し、かつミラー部20を第1軸a1周りに揺動可能に支持している。第1軸a1は、ミラー部20が静止している場合の反射面20Aを含む平面内にある。例えば、第1支持部24は、第1軸a1に沿って延伸したトーションバーである。また、第1支持部24は、第1軸a1上で支持枠23に接続されている。
【0040】
第2支持部25は、第1アクチュエータ21と第2アクチュエータ22とを、第2軸a2上で接続し、かつミラー部20及び第1アクチュエータ21を第2軸a2周りに揺動可能に支持している。第2軸a2は、ミラー部20が静止している場合の反射面20Aを含む平面内において第1軸a1と直交する。また、第2支持部25は、第2軸a2上で支持枠23及び固定部26に接続されている。
【0041】
固定部26は、第2支持部25により、第2アクチュエータ22と接続されている。固定部26は、外形が矩形状であり、第2アクチュエータ22を取り囲んでいる。固定部26のX方向及びY方向への長さは、それぞれ、例えば1mm~10mm程度である。固定部26のZ方向への厚みは、例えば5μm~0.2mm程度である。
【0042】
第1アクチュエータ21及び第2アクチュエータ22は、それぞれ圧電素子を備えた圧電アクチュエータである。第1アクチュエータ21は、ミラー部20に第1軸a1周りの回転トルクを作用させる。第2アクチュエータ22は、ミラー部20及び第1アクチュエータ21に第2軸a2周りの回転トルクを作用させる。これにより、ミラー部20は、第1軸a1及び第2軸a2周りに揺動する。
【0043】
第1アクチュエータ21は、XY面内においてミラー部20を囲む環状の薄板部材である。第1アクチュエータ21は、一対の第1可動部21A及び第2可動部21Bで構成されている。第1可動部21A及び第2可動部21Bは、それぞれ半環状である。第1可動部21Aと第2可動部21Bとは、第1軸a1に関して線対称となる形状であり、第1軸a1上で接続されている。
【0044】
支持枠23は、XY面内においてミラー部20及び第1アクチュエータ21を囲む環状の薄板部材である。
【0045】
第2アクチュエータ22は、XY面内においてミラー部20、第1アクチュエータ21、及び支持枠23を囲む環状の薄板部材である。第2アクチュエータ22は、一対の第1可動部22A及び第2可動部22Bで構成されている。第1可動部22A及び第2可動部22Bは、それぞれ半環状である。第1可動部22Aと第2可動部22Bとは、第2軸a2に関して線対称となる形状であり、第2軸a2上で接続されている。
【0046】
第1アクチュエータ21において、第1可動部21A及び第2可動部21Bには、それぞれ圧電素子27A及び圧電素子27Bが設けられている。また、第2アクチュエータ22において、第1可動部22A及び第2可動部22Bには、それぞれ圧電素子28A及び圧電素子28Bが設けられている。
【0047】
なお、
図3及び
図4では、圧電素子27A,27B,28A,28Bに駆動信号を与えるための配線及び電極パッドについては図示を省略している。電極パッドは、固定部26上に複数設けられる。
【0048】
図5及び
図6に示すように、MMD2は、例えばSOI(Silicon On Insulator)基板30をエッチング処理することにより形成されている。SOI基板30は、単結晶シリコンからなる第1シリコン活性層31の上に、酸化シリコン層32が設けられ、酸化シリコン層32の上に単結晶シリコンからなる第2シリコン活性層33が設けられた基板である。
【0049】
ミラー部20、第1アクチュエータ21、第2アクチュエータ22、支持枠23、第1支持部24、及び第2支持部25は、SOI基板30からエッチング処理により第1シリコン活性層31及び酸化シリコン層32を除去することで残存した第2シリコン活性層33により形成されている。第2シリコン活性層33は、弾性を有する弾性部として機能する。固定部26は、第1シリコン活性層31、酸化シリコン層32、及び第2シリコン活性層33の3層で形成されている。
【0050】
圧電素子27A,27B,28A,28Bは、第2シリコン活性層33上に、下部電極51、圧電膜52、及び上部電極53が順に積層された積層構造を有する。なお、上部電極53上には絶縁膜が設けられるが、図示は省略している。
【0051】
上部電極53及び下部電極51は、例えば、金(Au)又は白金(Pt)等で形成されている。圧電膜52は、例えば、圧電材料であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)で形成されている。上部電極53及び下部電極51は、配線及び電極パッドを介して、前述の駆動制御部4に電気的に接続されている。
【0052】
上部電極53には、駆動制御部4から駆動電圧が印加される。下部電極51は、配線及び電極パッドを介して駆動制御部4に接続され、基準電位(例えば、グランド電位)が付与されている。
【0053】
圧電膜52は、分極方向に正又は負の電圧が印加されると、印加電圧に比例した変形(例えば、伸縮)が生じる。すなわち、圧電膜52は、いわゆる逆圧電効果を発揮する。圧電膜52は、駆動制御部4から上部電極53に駆動電圧が印加されることにより逆圧電効果を発揮して、第1アクチュエータ21及び第2アクチュエータ22を変位させる。
【0054】
図7は、第1可動部21A及び第2可動部21Bの一方の圧電膜52を伸張させ、他方の圧電膜52を収縮させることにより、第1アクチュエータ21を駆動した様子を示している。このように、第1可動部21Aと第2可動部21Bとが互いに逆方向に変位することにより、ミラー部20が第1軸a
1の周りに回動する。
【0055】
また、
図7は、第1可動部21A及び第2可動部21Bの変位方向と、ミラー部20の回動方向とが互いに逆向きである逆位相の共振モードで第1アクチュエータ21を駆動した例である。
図7では、第1可動部21Aが-Z方向に変位し、かつ第2可動部21Bが+Z方向に変位することにより、ミラー部20が+Y方向に回動している。なお、第1可動部21A及び第2可動部21Bの変位方向と、ミラー部20の回動方向とが同じ方向である同位相の共振モードで第1アクチュエータ21を駆動してもよい。
【0056】
ミラー部20の反射面20Aの法線Nが、YZ平面において傾斜する角度を第1振れ角θ1という。反射面20Aの法線Nが+Y方向に傾斜した場合には、第1振れ角θ1は正の値をとり、-Y方向に傾斜した場合には、第1振れ角θ1は負の値をとる。
【0057】
第1振れ角θ1は、駆動制御部4が第1アクチュエータ21に与える駆動信号(以下、第1駆動信号という。)により制御される。第1駆動信号は、例えば正弦波の交流電圧である。第1駆動信号は、第1可動部21Aに印加される駆動電圧波形V1A(t)と、第2可動部21Bに印加される駆動電圧波形V1B(t)とを含む。駆動電圧波形V1A(t)と駆動電圧波形V1B(t)は、互いに逆位相(すなわち位相差180°)である。
【0058】
図8は、第1可動部22A及び第2可動部22Bの変位方向と、ミラー部20の回動方向とが互いに逆向きである逆位相の共振モードで第2アクチュエータ22を駆動した例を示している。
図8では、第1可動部22Aが-Z方向に変位し、かつ第2可動部22Bが+Z方向に変位することにより、ミラー部20が+X方向に回動している。なお、第1可動部22A及び第2可動部22Bの変位方向と、ミラー部20の回動方向とが同じ方向である同位相の共振モードで第2アクチュエータ22を駆動してもよい。
【0059】
ミラー部20の反射面20Aの法線Nが、XZ平面において傾斜する角度を第2振れ角θ2という。反射面20Aの法線Nが+X方向に傾斜した場合には、第2振れ角θ2は正の値をとり、-X方向に傾斜した場合には、第2振れ角θ2は負の値をとる。
【0060】
第2振れ角θ2は、駆動制御部4が第2アクチュエータ22に与える駆動信号(以下、第2駆動信号という。)により制御される。第2駆動信号は、例えば正弦波の交流電圧である。第2駆動信号は、第1可動部22Aに印加される駆動電圧波形V2A(t)と、第2可動部22Bに印加される駆動電圧波形V2B(t)とを含む。駆動電圧波形V2A(t)と駆動電圧波形V2B(t)は、互いに逆位相(すなわち位相差180°)である。
【0061】
図9は、第1アクチュエータ21及び第2アクチュエータ22に与える駆動信号の一例を示す。
図9(A)は、第1駆動信号に含まれる駆動電圧波形V
1A(t)及びV
1B(t)を示す。
図9(B)は、第2駆動信号に含まれる駆動電圧波形V
2A(t)及びV
2B(t)を示す。
【0062】
駆動電圧波形V1A(t)及びV1B(t)は、それぞれ次のように表される。
V1A(t)=Voff1+V1sin(2πfdt)
V1B(t)=Voff1+V1sin(2πfdt+α)
【0063】
ここで、V1は振幅電圧である。Voff1はバイアス電圧である。fdは駆動周波数である。tは時間である。αは、駆動電圧波形V1A(t)及びV1B(t)の位相差である。本実施形態では、例えば、α=180°とする。
【0064】
駆動電圧波形V
1A(t)及びV
1B(t)がそれぞれ第1可動部21A及び第2可動部21Bに印加されることにより、ミラー部20が第1軸a
1の周りに揺動する(
図7参照)。
【0065】
駆動電圧波形V2A(t)及びV2B(t)は、それぞれ次のように表される。
V2A(t)=Voff2+V2sin(2πfdt+φ)
V2B(t)=Voff2+V2sin(2πfdt+β+φ)
【0066】
ここで、V2は振幅電圧である。Voff2はバイアス電圧である。fdは駆動周波数である。tは時間である。βは、駆動電圧波形V2A(t)及びV2B(t)の位相差である。本実施形態では、例えば、β=180°とする。また、φは、駆動電圧波形V1A(t)及びV1B(t)と、駆動電圧波形V2A(t)及びV2B(t)との位相差である。本実施形態では、ミラー部20を歳差運動させるために、φ=90°とする。
【0067】
バイアス電圧Voff1及びVoff2は、ミラー部20が静止した状態を決定する直流電圧である。ミラー部20が静止した状態において、反射面20Aを含む平面は、固定部26の上面と平行でなくてもよく、固定部26の上面に対して傾斜していてもよい。
【0068】
駆動電圧波形V
2A(t)及びV
2B(t)がそれぞれ第1可動部22A及び第2可動部22Bに印加されることにより、ミラー部20が第2軸a
2の周りに揺動する(
図8参照)。
【0069】
上記のように、第1駆動信号と第2駆動信号とは、同一の駆動周波数f
dを有し、かつ位相差は90°である。ミラー部20を歳差運動させるには、
図10に示すように、第1振れ角θ
1の最大振れ角θ
m1と第2振れ角θ
2の最大振れ角θ
m2とが一致するように、振幅電圧V
1及びV
2を適切に設定する必要がある。これは、振幅電圧V
1と第1振れ角θ
1と、振幅電圧V
2と第2振れ角θ
2との関係は同一でないためである。なお、本明細書の説明において、「一致」の意味には、完全な一致の意味の他に、設計上及び製造上において許容される誤差を含む略一致の意味も含まれる。
【0070】
以下、第1振れ角θ1の最大振れ角θm1を第1最大振れ角θm1という。また、第2振れ角θ2の最大振れ角θm2を第2最大振れ角θm2という。さらに、第1最大振れ角θm1と第2最大振れ角θm2とを区別しない場合には、単に最大振れ角θmという。
【0071】
また、ミラー部20を精度よく歳差運動させるためには、駆動周波数f
dを適切に設定する必要がある。
図11は、ミラー部20の歳差運動を示す。歳差運動とは、ミラー部20の反射面20Aの法線Nが円を描くように振れる運動である。このように歳差運動を行っているミラー部20に、光源3から光ビームLを照射することにより、被走査面5上に円を描くように光ビームLを走査することができる。
【0072】
図12は、ミラー部20の振れ角と駆動周波数f
dとの関係の一例を模式的に示す。ミラー部20は、第1軸a
1及び第2軸a
2の周りに固有の振動数で振動する。駆動周波数f
dが固有振動数に一致する場合にミラー部20は共振する。
【0073】
図12において、f
1は、ミラー部20の第1軸a
1周りの共振周波数(以下、第1共振周波数という。)を表している。f
2は、ミラー部20の第2軸a
2周りの共振周波数(以下、第2共振周波数という。)を表している。第1共振周波数f
1は、ミラー部20を第2軸a
2周りには揺動させずに、第1軸a
1周りにのみ揺動させる場合における共振周波数である。第2共振周波数f
2は、ミラー部20を第1軸a
1周りには揺動させずに、第2軸a
2周りにのみ揺動させる場合における共振周波数である。
【0074】
ミラー部20の揺動には、前述の可動部との位相(同位相又は逆位相)に加えて、複数の共振モードが存在する。例えば、第1共振周波数f1及び第2共振周波数f2は、それぞれ逆位相で、かつ最も低次(すなわち、最も周波数が低い)の共振モードにおける共振周波数である。
【0075】
駆動周波数fdが第1共振周波数f1に近いほど、第1振れ角θ1が大きくなる。また、駆動周波数fdが第2共振周波数f2に近いほど、第2振れ角θ2が大きくなる。このため、一般的には、第1共振周波数f1と第2共振周波数f2とを一致させ、かつ駆動周波数fdを第1共振周波数f1及び第2共振周波数f2と一致させることにより、駆動信号に対する振れ角の応答性を上げることが行われている。第1共振周波数f1及び第2共振周波数f2は、MMD2の構成要素の慣性モーメント及びばね定数等を設計的に調整することにより、設定することができる。
【0076】
しかし、第1共振周波数f1と第2共振周波数f2とを一致させると、クロストークが大きくなるという弊害が生じると考えられる。クロストークは、第1アクチュエータ21及び第2アクチュエータ22のうちの一方で生じる振動が、他方に伝搬することにより、共振振動が励起されることが原因である。第1共振周波数f1と第2共振周波数f2とを一致させると、特に、ミラー部20の最大振れ角θmが小さい場合、すなわち駆動信号が小さい場合に、クロストークの影響を大きく受ける。
【0077】
本実施形態のMMD2は、第1アクチュエータ21がミラー部20を第1軸a1周りに揺動させ、かつ第2アクチュエータ22がミラー部20とともに第1アクチュエータ21を第2軸a2周りに揺動させる。このように、ミラー部20を第2軸a2周りに揺動させる場合には、第1アクチュエータ21も第2軸a2周りに揺動するため、第2軸a2周りの振動成分が第1軸a1に伝搬し、第1アクチュエータ21の電圧特性の変化及び第1共振周波数f1に影響を与える。本出願人は、ミラー部20を第1軸a1周り及び第2軸a2周りに同時に揺動させた場合に、第1共振周波数f1がシフトすることを確認した。以下、このシフト量をΔfと表記する。
【0078】
クロストークを避けるためには、第1共振周波数f1と第2共振周波数f2とを一致させないことが好ましい。また、第1共振周波数f1と第2共振周波数f2との大小関係は、シフト量Δfを考慮して決定する必要がある。これは、シフト量Δfが、ミラー部20の最大振れ角θmの大きさに依存して変化するためである。
【0079】
図13は、ミラー部20の最大振れ角θ
mに対するシフト量Δfの変化の一例を示す。本出願人は、ミラー部20を歳差運動させて、被走査面5に正円を描くように光ビームLを走査した場合における最大振れ角θ
mに対する第1共振周波数f
1のシフト量Δfを測定した。被走査面5に走査される円の大きさは、最大振れ角θ
mに比例する。
【0080】
図13に示すように、第1共振周波数f
1のシフト量Δfは、最大振れ角θ
mが大きくなるとともに大きくなることが確認された。ここで、シフト量Δfは、正の値(すなわちΔf>0)であった。
【0081】
本出願人は、第1共振周波数f1及び第2共振周波数f2が「f2<f1」の関係を満たし、かつ駆動周波数fdが「fd≦f1」の関係を満たす場合に、低電力で振れ角を向上させること見出した。
【0082】
例えば、光走査装置10をLiDAR装置に適用する場合には、光ビームLにより被走査面5上に走査される円の半径(以下、走査半径という。)の制御が行われる。この走査半径は、ミラー部20の最大振れ角θmに対応する。また、第1最大振れ角θm1は、第1駆動信号の振幅電圧V1に依存する。第2最大振れ角θm2は、第2駆動信号の振幅電圧V2に依存する。十分な大きさの走査半径を得るためには、最大振れ角θmは、10°以上であることが好ましい。また、低電力化のために、振幅電圧V1及び振幅電圧V2はそれぞれ40V未満であることが好ましい。
【0083】
以下に、ミラー部20の最大振れ角θmと振幅電圧V1及びV2との測定結果を示す。本出願人は、駆動周波数fdを、fd<f1-Δfの範囲内に設定した場合、f1-Δf<fd<f2の範囲内に設定した場合、f1=f2に設定した場合、f2<fd≦f1の範囲内に設定した場合、f1<fdの範囲内に設定した場合の5つのケースについてそれぞれ最大振れ角θmを計測した。
【0084】
具体的には、ミラー部20を歳差運動させて、被走査面5に正円を描くように光ビームLを走査した場合における円の半径(走査半径)に対する振幅電圧V1及びV2との関係を測定した。被走査面5には、1mm間隔の目盛りが付されており、目盛りを用いた円の形状及びサイズの計測値に基づき、最大振れ角θmを計測した。なお、本計測で用いたMMD2は、f1=1237Hz、f2=1230Hzであり、f2<f1の関係を満たすものである。
【0085】
図14は、駆動周波数f
dを、f
d<f
1-Δfの範囲内に設定した場合における最大振れ角θ
mの計測結果を示す。ここで、f
d=f
1-25Hzとした。
図14において、V
1≧33Vの場合にθ
m1≧10°となり、V
2≧50Vの場合にθ
m2≧10°となることがわかる。
【0086】
図15は、駆動周波数f
dを、f
1-Δf<f
d<f
2の範囲内に設定した場合における最大振れ角θ
mの計測結果を示す。
図15において、V
1≧15Vの場合にθ
m1≧10°となり、V
2≧9Vの場合にθ
m2≧10°となることがわかる。
【0087】
図16は、駆動周波数f
dを、f
d=f
2と設定した場合における最大振れ角θ
mの計測結果を示す。
図16において、V
1≧28Vの場合にθ
m1≧10°となり、V
2≧29Vの場合にθ
m2≧10°となることがわかる。
【0088】
図17は、駆動周波数f
dを、f
2<f
d≦f
1の範囲内に設定した場合における最大振れ角θ
mの計測結果を示す。
図17において、V
1≧40Vの場合にθ
m1≧10°となり、V
2≧25Vの場合にθ
m2≧10°となることがわかる。
【0089】
図18は、駆動周波数f
dを、f
1<f
dの範囲内に設定した場合における最大振れ角θ
mの計測結果を示す。
図17において、V
1≧50Vの場合にθ
m1≧10°となり、V
2≧32Vの場合にθ
m2≧10°となることがわかる。
【0090】
以上のように、低電力で振れ角を向上させるためには、駆動周波数fdが「fd≦f1」の関係を満たすことが好ましいことがわかる。さらに、駆動周波数fdが「f1-Δf<fd<f2」の関係を満たすことがより好ましいことがわかる。すなわち、駆動周波数fdは、f1-Δf及びf2から離れすぎることは好ましくはなく、f1-Δfとf2との間の範囲内であることが好ましい。
【0091】
[共振周波数の調整]
次に、第1共振周波数f
1と第2共振周波数f
2との関係を調整する方法の一例を説明する。
図19及び
図20に示すMMD2Aは、ミラー部20の裏面側(すなわち、光入射側とは反対側)にリブ60を有する。
図19は、MMD2Aを裏面側から見た平面図である。
図20は、
図19のC-C線に沿った断面図である。MMD2Aのその他の構成は、上記実施形態に係るMMD2と同様である。
【0092】
リブ60は、ミラー部20の剛性を高めることにより、ミラー部20の光入射側に形成された反射面20Aの平坦性を高める。リブ60は、第1シリコン活性層31及び酸化シリコン層32をエッチング処理によりパターニングすることにより形成されている。
【0093】
図19に示すように、本例では、リブ60の平面形状は、中心がミラー部20の中心に一致した楕円形である。本例では、リブ60は、短軸が第1軸a
1に平行であり、長軸が第2軸a
2に平行である。短径D1の長さを変えることにより、ミラー部20の第1軸a
1周りの慣性モーメントが変化する。また、長径D2の長さを変えることにより、ミラー部20の第2軸a
2周りの慣性モーメントが変化する。したがって、短径D1と長径D2との比率を変えることにより、「f
2<f
1」の関係を満たすように、第1共振周波数f
1と第2共振周波数f
2との比率を調整することができる。
【0094】
上記実施形態で示したMMD2及びMMD2Aの構成は適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、第1アクチュエータ21及び第2アクチュエータ22を環状としているが、第1アクチュエータ21及び第2アクチュエータ22のうちの一方又は両方をミアンダ構造とすることも可能である。また、第1支持部24及び第2支持部25として、トーションバー以外の構成の支持部材を用いることも可能である。
【0095】
また、駆動制御部4のハードウェア構成は種々の変形が可能である。駆動制御部4の処理部は、1つのプロセッサで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA(Field Programmable Gate Array)の組み合わせ、及び/又は、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。
【0096】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。