(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-04
(45)【発行日】2025-07-14
(54)【発明の名称】地絡検出回路およびそれを用いた電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02H 3/34 20060101AFI20250707BHJP
H02H 3/247 20060101ALI20250707BHJP
H02H 3/16 20060101ALI20250707BHJP
G01R 31/50 20200101ALI20250707BHJP
【FI】
H02H3/34 M
H02H3/247
H02H3/16 A
G01R31/50
(21)【出願番号】P 2024573971
(86)(22)【出願日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2024022514
【審査請求日】2024-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 彰修
(72)【発明者】
【氏名】松本 泰明
(72)【発明者】
【氏名】松本 郁哉
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/153596(WO,A1)
【文献】特開2003-61380(JP,A)
【文献】特開昭53-43850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/34
H02H 3/247
H02H 3/16
G01R 31/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の三相交流電力を直流電力に変換し、前記直流電力を第2の三相交流電力に変換し、第1~第3の交流ラインを介して負荷に供給する電力変換装置において地絡事故を検出する地絡検出回路であって、
第1~第4の抵抗素子を備え、
前記第1~第3の抵抗素子の一方端子はそれぞれ前記第1~第3の交流ラインに接続され、前記第1~第3の抵抗素子の他方端子はともに前記第4の抵抗素子の一方端子に接続され、前記第4の抵抗素子の他方端子は接地電圧を受け、
前記地絡検出回路は、さらに、前記第4の抵抗素子の端子間電圧に基づいて、前記電力変換装置において前記地絡事故が発生したか否かを判別する判別回路を備え、
前記判別回路は、
前記第4の抵抗素子の端子間電圧と、第1の参照電圧とを比較する第1の比較器と、
前記第1の比較器の出力を受ける第1のオンディレイタイマと、を含む、地絡検出回路。
【請求項2】
前記判別回路は、さらに、
前記電力変換装置の起動開始を表わす信号を受ける第2のオンディレイタイマと、
前記第1のオンディレイタイマの出力と、前記第2のオンディレイタイマの出力とを受ける論理回路と、を含む、請求項1記載の地絡検出回路。
【請求項3】
前記第2の三相交流電力の周波数は変更可能であり、
前記負荷は同期電動機であり、
前記電力変換装置は、前記同期電動機を起動させるサイリスタ起動装置である、請求項1記載の地絡検出回路。
【請求項4】
前記判別回路は、さらに、
前記同期電動機の回転数と、所定の回転数とを比較する第2の比較器と、
前記第1のオンディレイタイマの出力と、前記第2の比較器の出力とを受ける論理回路と、を含む、請求項3記載の地絡検出回路。
【請求項5】
前記判別回路は、さらに、
前記同期電動機の端子間電圧と、第2の参照電圧とを比較する第2の比較器と、
前記第1のオンディレイタイマの出力と、前記第2の比較器の出力とを受ける論理回路と、を含む、請求項3記載の地絡検出回路。
【請求項6】
前記判別回路は、さらに、
前記同期電動機の回転数と、所定の回転数とを比較する第2の比較器を備え、
前記第1のオンディレイタイマの遅延時間が、前記第2の比較器の出力によって設定される、請求項3記載の地絡検出回路。
【請求項7】
前記同期電動機の回転数が前記所定の回転数よりも小さいときには、前記第1のオンディレイタイマの遅延時間が第1の時間に設定され、前記同期電動機の回転数が前記所定の回転数以上のときには、前記第1のオンディレイタイマの遅延時間が前記第1の時間よりも短い第2の時間に設定される、請求項6記載の地絡検出回路。
【請求項8】
前記判別回路は、さらに、
前記同期電動機の端子間電圧と、第2の参照電圧とを比較する第2の比較器を備え、
前記第1のオンディレイタイマの遅延時間が、前記第2の比較器の出力によって設定される、請求項3記載の地絡検出回路。
【請求項9】
前記同期電動機の端子間電圧が前記第2の参照電圧よりも小さいときには、前記第1のオンディレイタイマの遅延時間が第1の時間に設定され、前記同期電動機の端子間電圧が前記第2の参照電圧以上のときには、前記第1のオンディレイタイマの遅延時間が前記第1の時間よりも短い第2の時間に設定される、請求項8記載の地絡検出回路。
【請求項10】
電力変換装置であって、
第1の三相交流電力を直流電力に変換するコンバータと、
前記直流電力を平滑化させる直流リアクトルと、
前記コンバータから前記直流リアクトルを介して与えられた前記直流電力を第2の三相交流電力に変換し、第1~第3の交流ラインを介して負荷に供給するインバータと、
前記電力変換装置の地絡事故を検出する請求項1~9のいずれか1項に記載の地絡検出回路と、
前記地絡検出回路によって前記地絡事故が検出された場合に前記電力変換装置の運転を停止させる制御回路と、を備えた、電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、地絡検出回路およびそれを用いた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サイリスタ起動装置は、商用周波数の三相交流電力を直流電力に変換するコンバータと、直流電力を平滑化させる直流リアクトルと、コンバータから直流リアクトルを介して与えられた直流電力を所望の周波数の三相交流電力に変換し、第1~第3の交流ラインを介して同期電動機に与えるインバータとを備える。同期電動機に与える三相交流電力を制御することにより、停止状態の同期電動機を起動させて所定の回転速度で回転駆動させることができる(たとえば、特開2003-61380号公報(特許文献1)参照)。
【0003】
また、このようなサイリスタ起動装置には、地絡事故を検出する地絡検出回路が設けられている。地絡検出回路によって地絡事故が検出されると、サイリスタ起動装置の運転が停止される。
【0004】
従来の地絡検出回路としては、サイリスタ起動装置と同期電動機の間の第1~第3の交流ラインに三相変圧器を接続し、その三相変圧器の出力電圧に基づいて地絡事故の発生を検出するものがある(たとえば、特開2009-131048号公報(特許文献2)、特開2010-130704号公報(特許文献3)、特開2011-130634号公報(特許文献4)参照)。
【0005】
また、第1および第2の抵抗素子の一方端子をインバータの2つの入力端子にそれぞれ接続し、第1および第2の抵抗素子の他方端子と接地電圧のラインとの間に第3の抵抗素子を接続し、第3の抵抗素子の端子間電圧に基づいて地絡事故の発生を検出するものがある(たとえば、「火力発電所用サイリスタ起動装置」、三菱電機技報、Vol.67、No.5、1993(非特許文献1)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-61380号公報
【文献】特開2009-131048号公報
【文献】特開2010-130704号公報
【文献】特開2011-130634号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】「火力発電所用サイリスタ起動装置」、三菱電機技報、Vol.67、No.5、1993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2~4の地絡検出回路では、三相変圧器を使用するので、回路が大型で高価格になるという問題があった。また、非特許文献1の地絡検出回路には、検出精度が悪いという問題があった。さらに、電動機が停止している状態から起動させる初期段階において、電動機の残留磁束などによって、中性点の電位が変動するため、地絡の発生を誤検出してしまう問題がある。
【0009】
それゆえに、本開示の目的は、高精度の地絡検出回路とそれを用いた電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の地絡検出回路は、第1の三相交流電力を直流電力に変換し、直流電力を第2の三相交流電力に変換し、第1~第3の交流ラインを介して負荷に供給する電力変換装置において地絡事故を検出する地絡検出回路であって、第1~第4の抵抗素子を備える。第1~第3の抵抗素子の一方端子はそれぞれ第1~第3の交流ラインに接続され、第1~第3の抵抗素子の他方端子はともに第4の抵抗素子の一方端子に接続され、第4の抵抗素子の他方端子は接地電圧を受ける。地絡検出回路は、さらに、第4の抵抗素子の端子間電圧に基づいて、電力変換装置において地絡事故が発生したか否かを判別する判別回路を備える。判別回路は、第4の抵抗素子の端子間電圧と、第1の参照電圧とを比較する第1の比較器と、第1の比較器の出力を受ける第1のオンディレイタイマと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示の地絡検出回路は、第1のオンディレイタイマを備えることによって、地絡を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態のサイリスタ起動装置の構成を表わす図である。
【
図2】コンバータ3およびインバータ5の構成を示す回路図である。
【
図3】第1の実施形態の地絡検出回路6の構成を表わす図である。
【
図4】第1の実施形態における、増幅器35の出力電圧V35、比較器36の出力信号(オンディレイタイマ37の入力信号)V36、およびオンディレイタイマ37の出力信号V37を表わす図である。
【
図5】第2の実施形態の地絡検出回路6Aの構成を表わす図である。
【
図6】第2の実施形態における、増幅器35の出力電圧V35、比較器36の出力信号(オンディレイタイマ37の入力信号)V36、オンディレイタイマ37の出力信号V37、オンディレイタイマ38の出力信号V38、およびAND回路39の出力信号V39を表わす図である。
【
図7】第3の実施形態の地絡検出回路6Bの構成を表わす図である。
【
図8】第3の実施形態における、増幅器35の出力電圧V35、比較器36の出力信号(オンディレイタイマ37の入力信号)V36、オンディレイタイマ37の出力信号V37、比較器40の出力信号V40、およびAND回41の出力信号V41を表わす図である。
【
図9】第4の実施形態の地絡検出回路6Cの構成を表わす図である。
【
図10】第4の実施形態における、増幅器35の出力電圧V35、比較器36の出力信号(オンディレイタイマ37の入力信号)V36、オンディレイタイマ37の出力信号V37、比較器42の出力信号V42、およびAND回43の出力信号V43を表わす図である。
【
図11】第5の実施形態の地絡検出回路6Dの構成を表わす図である。
【
図12】第5の実施形態における、増幅器35の出力電圧V35、比較器36の出力信号(オンディレイタイマ37Dの入力信号)V36、比較器40の出力信号V40、およびオンディレイタイマ37Dの出力信号V44を表わす図である。
【
図13】第6の実施形態の地絡検出回路6Eの構成を表わす図である。
【
図14】第6の実施形態における、増幅器35の出力電圧V35、比較器36の出力信号(オンディレイタイマ37Eの入力信号)V36、比較器42の出力信号V42、およびオンディレイタイマ37Eの出力信号V45を表わす図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態のサイリスタ起動装置の構成を表わす図である。サイリスタ起動装置は、電力変換装置の一種である。サイリスタ起動装置は、たとえば発電所において、停止状態の同期発電機を同期電動機8として起動させるために使用される。同期発電機を同期電動機8として所定の回転数で回転駆動させた状態で、サイリスタ起動装置を同期電動機8から切り離すとともに、ガスタービンなどによって同期電動機8を回転駆動させて交流電力を生成する。
【0014】
サイリスタ起動装置は、交流電源1からの三相交流電力を受けて、負荷である同期電動機8を起動させる。サイリスタ起動装置は、三相変圧器2、コンバータ3、直流リアクトル4、インバータ5、地絡検出回路6、および制御回路7を備える。
【0015】
三相変圧器2は、交流電源(電力系統)1からの商用周波数の三相交流電圧を所定の三相交流電圧に変換する。三相変圧器2で生成された三相交流電圧は、U相ラインUL、V相ラインVL、およびW相ラインWLを介してコンバータ3に与えられる。
【0016】
コンバータ3は、三相変圧器2からの三相交流電力を直流電力に変換する。
直流リアクトル4は、コンバータ3の高電圧側出力端子3aとインバータ5の高電圧側入力端子5aとの間に接続され、コンバータ3で生成された直流電力を平滑化させる。コンバータ3の低電圧側出力端子3bとインバータ5の低電圧側入力端子5bとは直接接続される。直流リアクトル4は、コンバータ3の低電圧側出力端子3bとインバータ5の低電圧側入力端子5bとの間の方に接続されていてもよい。直流リアクトル4は、コンバータ3の高電圧側出力端子3aとインバータ5の高電圧側入力端子5aとの間と、コンバータ3の低電圧側出力端子3bとインバータ5の低電圧側入力端子5bとの間との各々に接続されていてもよい。
【0017】
インバータ5は、コンバータ3から直流リアクトル4を介して与えられた直流電力を所望の周波数の三相交流電力に変換し、その三相交流電力をR相ラインRL、S相ラインSL、およびT相ラインTLを介して同期電動機8に与える。
【0018】
同期電動機8は、インバータ5からの三相交流電力によって回転駆動される。三相交流電力を徐々に増大させると、同期電動機8の回転速度(回転数/分)が徐々に増大する。制御回路7は、同期電動機8の回転速度に合わせて、インバータ5のスイッチング周波数を増大させる。これにより、同期電動機8の回転速度は0から所定値まで徐々に増大し、三相交流電力の周波数は0から所定値まで徐々に増大する。
【0019】
図2は、コンバータ3およびインバータ5の構成を示す回路図である。
コンバータ3は、サイリスタ11~16を含む。サイリスタ11~13のアノードはそれぞれU相ラインUL、V相ラインVL、およびW相ラインWLに接続され、それらのカソードはともに高電圧側出力端子3aに接続される。サイリスタ14~16のカソードはそれぞれU相ラインUL、V相ラインVL、およびW相ラインWLに接続され、それらのアノードはともに低電圧側出力端子3bに接続される。サイリスタ11~16は、制御回路7によって制御される。サイリスタ11~16を所定のタイミングでオンさせることにより、三相交流電力を直流電力に変換することができる。
【0020】
インバータ5は、サイリスタ21~26を含む。サイリスタ21~23のアノードはともに高電圧側入力端子5aに接続され、それらのカソードはそれぞれR相ラインRL、S相ラインSL、およびT相ラインTLに接続される。サイリスタ24~26のアノードはそれぞれR相ラインRL、S相ラインSL、およびT相ラインTLに接続され、それらのカソードはともに低電圧側入力端子5bに接続される。サイリスタ21~26は、制御回路7によって制御される。サイリスタ21~26を所定のタイミングでオンさせることにより、直流電力を所望の周波数の三相交流電力に変換することができる。
【0021】
地絡検出回路6は、サイリスタ起動装置において地絡事故の発生を検出する。
図3は、第1の実施形態の地絡検出回路6の構成を表わす図である。
【0022】
地絡検出回路6は、抵抗素子31~34、増幅器35、および判別回路100を備える。判別回路100は、比較器36、およびオンディレイタイマ37を含む。
【0023】
抵抗素子31~33の一方端子はそれぞれR相ラインRL、S相ラインSL、およびT相ラインTLに接続され、それらの他方端子はともに中性点であるノードN31に接続される。抵抗素子34の一方端子はノードN31に接続され、抵抗素子34の他方端子は接地電圧GNDのラインに接続される。
【0024】
増幅器35は、抵抗素子34の端子間電圧V31を増幅する。
比較器36は、増幅器35の出力電圧V35と所定の参照電圧VRとを比較し、比較結果に応じたレベルの信号V36を出力する。増幅器35の出力電圧V35が参照電圧VRよりも小さい場合は(V35<VR)、信号V36は「L」レベルにされる。増幅器35の出力電圧V35が参照電圧VR以上の場合は(VR≧V35)、信号V36は「H」レベルにされる。
【0025】
サイリスタ起動装置において、地絡事故などの電圧変動が発生していない場合は、R相、S相、およびT相の交流電圧の和は約0Vになり、抵抗素子34の端子間電圧V31は約0Vになる。この場合は、V35<VRとなり、信号V36は非活性化レベルの「L」レベルになる。
【0026】
サイリスタ起動装置において、地絡事故が発生した場合は、地絡な発生した地点(たとえばR相ラインRL)が抵抗素子34の他方端子(接地電圧GNDのライン)に接続され、電流が流れるループが生成され、抵抗素子34の端子間に電圧V31が発生する。この場合は、VR<V35となり、信号V36は活性化レベルの「H」レベルになる。地絡事故でない一過性の電圧変動が生じた場合にも、VR<V35となり、信号V36は活性化レベルの「H」レベルになる。
【0027】
オンディレイタイマ37は、比較器36から出力される信号V36を受ける。オンディレイタイマ37は、信号V36が「H」レベルに立ち上がったタイミングで起動され、遅延時間TD1を経過した後に、入力信号V36を出力信号V37として出力する。遅延時間TD1の長さは、過去のデータなどを用いて設定することができる。
【0028】
図4は、第1の実施形態における、増幅器35の出力電圧V35、比較器36の出力信号(オンディレイタイマ37の入力信号)V36、およびオンディレイタイマ37の出力信号V37を表わす図である。
【0029】
図4の(1)に示すようにサイリスタ起動装置の起動開始後における電圧変動、
図4の(2)に示すように一過性の電圧変動が発生した場合には、オンディレイタイマ37の入力信号V36は、短い時間において「H」レベルとなるが、遅延時間TD1以上の時間において「H」レベルとならないので、オンディレイタイマ37の出力信号V37は「L」レベルのままである。
【0030】
図4の(3)に示すように、地絡事故が発生した場合には、オンディレイタイマ37の入力信号V36が遅延時間TD1以上の時間において「H」レベルとなる。オンディレイタイマ37の出力信号V37は、地絡事故が発生してから遅延時間TD1が経過した後、「H」レベルとなる。
【0031】
地絡事故および電圧変動のいずれかも発生していない場合には、オンディレイタイマ37の入力信号V36は「L」レベルのままなので、オンディレイタイマ37の出力信号V37は「L」レベルとなる。
【0032】
制御回路7は、複数のセンサ(図示せず)からコンバータ3の入力電流、インバータ5の出力電圧、同期電動機8の回転速度などを示す信号を受け、受けた信号に基いてコンバータ3およびインバータ5を制御する。制御回路7は、停止状態にある同期電動機8を起動させる場合は、同期電動機8の回転速度が0から所定値まで徐々に増大するのに応じて、インバータ5から出力される三相交流電力の周波数を0から所定値まで徐々に上昇させる。制御回路7は、地絡検出回路6の出力信号V37が「H」レベルにされた場合は、コンバータ3およびインバータ5の運転を停止させるとともに、複数の遮断器(図示せず)を遮断し、地絡事故によってサイリスタ起動装置および同期電動機8などが破壊されるのを防止する。
【0033】
本実施の形態では、オンディレイタイマによって、地絡事故ではない遅延時間TD1よりも短い期間の一過性の電位変動を地絡事故として検出しないようにすることができる。
【0034】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態の地絡検出回路6Aの構成を表わす図である。
【0035】
第2の実施形態の地絡検出回路6Aの判別回路100Aが、第1の実施形態の地絡検出回路6の判別回路100と相違する点は、第2の実施形態の地絡検出回路6Aの判別回路100Aが、さらに、オンディレイタイマ38と、AND回路39とを備える点である。
【0036】
オンディレイタイマ38は、制御回路7からサイリスタ起動装置の起動開始信号STを受ける。オンディレイタイマ38は、起動開始信号STが「H」レベルに立ち上がったタイミングで起動され、遅延時間TD2を経過した後に、起動開始信号STを出力信号V38として出力する。遅延時間TD2の長さは、遅延時間TD1の長さよりも大きな値に設定することができる。遅延時間TD2の長さは、過去のデータなどを用いて設定することができる。
【0037】
AND回路39は、オンディレイタイマ37の出力と接続される入力端子と、オンディレイタイマ38の出力と接続される入力端子とを備える。AND回路39は、オンディレイタイマ37の出力信号V37と、オンディレイタイマ38の出力信号V38との論理積を表わす信号V39を出力する。
【0038】
図6は、第2の実施形態における、増幅器35の出力電圧V35、比較器36の出力信号(オンディレイタイマ37の入力信号)V36、オンディレイタイマ37の出力信号V37、オンディレイタイマ38の出力信号V38、およびAND回路39の出力信号V39を表わす図である。
【0039】
図6の(1)に示すように、サイリスタ起動装置の起動開始後における電圧変動が発生した場合には、オンディレイタイマ37の入力信号V36が「H」レベルになってから遅延時間TD1が経過した後、オンディレイタイマ37の出力信号V37は、「H」レベルとなる。しかし、オンディレイタイマ38の出力信号V38は「L」レベルのままである。サイリスタ起動装置の起動開始から遅延時間TD2が経過していないからである。よって、サイリスタ起動装置の起動開始後における電圧変動が発生した場合には、AND回路39の出力信号V39は「L」レベルである。
【0040】
図6の(2)に示すように、サイリスタ起動装置の起動開始から遅延時間TD2が経過した後、オンディレイタイマ38の出力信号V38は「H」レベルとなる。
【0041】
図6の(3)に示すように、一過性の電圧変動が発生した場合には、オンディレイタイマ37の入力信号V36は、短い時間において「H」レベルとなるが、遅延時間TD1以上の時間において「H」レベルとならないので、オンディレイタイマ37の出力信号V37は「L」レベルのままである。
【0042】
図6の(4)に示すように、地絡事故が発生した場合には、オンディレイタイマ37の入力信号V36が遅延時間TD1以上の時間において「H」レベルとなる。オンディレイタイマ37の出力信号V37は、地絡事故が発生してから遅延時間TD1が経過した後、「H」レベルとなる。よって、地絡事故が発生してから遅延時間TD1が経過した後、AND回路39の出力信号V39は「H」レベルとなる。
【0043】
地絡事故、一過性の電圧変動、およびサイリスタ起動装置の起動開始後の電圧変動のうちのいずれも発生していない場合には、オンディレイタイマ37の入力信号V36は「L」レベルのままなので、AND回路39の出力信号V39は「L」レベルとなる。
【0044】
本実施の形態では、オンディレイタイマ38によって、サイリスタ起動装置の起動開始後の電位変動を地絡事故として検出しないようにすることができる。これによって、オンディレイタイマ37を起動開始後よりも後の時点における短い期間の電位変動の検出を防止するために使用するようにすることができる。その結果、オンディレイタイマ37の遅延時間TD1を短く設定することができるので、地絡事故を迅速に検出することができる。
【0045】
(第3の実施形態)
図7は、第3の実施形態の地絡検出回路6Bの構成を表わす図である。
【0046】
第3の実施形態の地絡検出回路6Bの判別回路100Bが、第1の実施形態の地絡検出回路6の判別回路100と相違する点は、第3の実施形態の地絡検出回路6Bの判別回路100Bが、さらに、比較器40と、AND回路41とを備える点である。
【0047】
制御回路7は、回転数センサなどによって同期電動機8の回転数を検出し、同期電動機8の回転数FBNRを表わす信号を比較器40に送る。制御回路7は、同期電動機8の端子間電圧、および同期電動機8の相電流などに基づいて、同期電動機8の角周波数を算出し、同期電動機8の角周波数から同期電動機8の回転数を算出するものとしてもよい。
【0048】
比較器40は、制御回路7から送られる同期電動機8の回転数FBNRを表わす信号と、所定の回転数NRとを比較し、比較結果に応じたレベルの信号V40を出力する。同期電動機8の回転数FBNRが所定の回転数NRよりも小さい場合は(FBNR<NR)、信号V40は「L」レベルにされる。同期電動機8の回転数FBNRが所定の回転数NR以上の場合は(FBNR≧NR)、信号V40は「H」レベルにされる。
【0049】
AND回路41は、オンディレイタイマ37の出力と接続される入力端子と、比較器40の出力と接続される入力端子とを備える。AND回路41は、オンディレイタイマ37の出力信号V37と、比較器40の出力信号V40との論理積を表わす信号V43を出力する。
【0050】
図8は、第3の実施形態における、増幅器35の出力電圧V35、比較器36の出力信号(オンディレイタイマ37の入力信号)V36、オンディレイタイマ37の出力信号V37、比較器40の出力信号V40、およびAND回41の出力信号V41を表わす図である。
【0051】
図8の(1)に示すように、サイリスタ起動装置の起動開始後における電圧変動が発生した場合には、オンディレイタイマ37の入力信号V36が「H」レベルになってから遅延時間TD1が経過した後、オンディレイタイマ37の出力信号V37は、「H」レベルとなる。しかし、比較器40の出力信号V40は「L」レベルのままである。サイリスタ起動装置の起動開始からある程度の時間が経過するまでは、同期電動機8の回転数FBNRが所定の回転数NRよりも小さいからである。よって、サイリスタ起動装置の起動開始後における電圧変動が発生した場合には、AND回路41の出力信号V41は「L」レベルである。
【0052】
図8の(2)に示すように、サイリスタ起動装置の起動開始からある程度の時間が経過すると、同期電動機8の回転数FBNRは所定の回転数NR以上となり、比較器40の出力信号V40は「H」レベルとなる。
【0053】
図8の(3)に示すように、一過性の電圧変動が発生した場合には、オンディレイタイマ37の入力信号V36は、短い時間において「H」レベルとなるが、遅延時間TD1以上の時間において「H」レベルとならないので、オンディレイタイマ37の出力信号V37は「L」レベルのままである。
【0054】
図8の(4)に示すように、地絡事故が発生した場合には、オンディレイタイマ37の入力信号V36が遅延時間TD1以上の時間において「H」レベルとなる。オンディレイタイマ37の出力信号V37は、地絡事故が発生してから遅延時間TD1が経過した後、「H」レベルとなる。よって、地絡事故が発生してから遅延時間TD1が経過した後、AND回路41の出力信号V41は「H」レベルとなる。
【0055】
地絡事故、一過性の電圧変動、およびサイリスタ起動装置の起動開始後の電圧変動のうちのいずれも発生していない場合には、オンディレイタイマ37の入力信号V36は「L」レベルのままなので、AND回路41の出力信号V41は「L」レベルとなる。
【0056】
本実施の形態では、比較器40によって、サイリスタ起動装置の起動開始後の電位変動を地絡事故として検出しないようにすることができる。これによって、オンディレイタイマ37を起動開始後よりも後の時点における短い期間の電位変動の検出を防止するために使用するようにすることができる。その結果、オンディレイタイマ37の遅延時間TD1を短く設定することができるので、地絡事故を迅速に検出することができる。
【0057】
(第4の実施形態)
図9は、第4の実施形態の地絡検出回路6Cの構成を表わす図である。
【0058】
第4の実施形態の地絡検出回路6Cの判別回路100Cが、第1の実施形態の地絡検出回路6の判別回路100と相違する点は、第4の実施形態の地絡検出回路6Cの判別回路100Cが、さらに、比較器42と、AND回路43とを備える点である。
【0059】
制御回路7は、電圧センサなどによって同期電動機8のR相の端子の電圧VR、S相の端子の電VS、T相の端子の電圧VTを取得する。制御回路7は、VRとVSの差の絶対値DRSとVTとVRの差の絶対値DTRのうちのいずれか1つあるいはそれらの平均値を同期電動機8の端子間電圧FBVとし、端子間電圧FBVを表わす信号を比較器42に送る。
【0060】
比較器42は、同期電動機8の端子間電圧FBVを表わす信号と、所定の参照電圧VR2とを比較し、比較結果に応じたレベルの信号V42を出力する。同期電動機8の端子間電圧FBVが所定の参照電圧VR2よりも小さい場合は(FBV<VR2)、信号V42は「L」レベルにされる。同期電動機8の端子間電圧FBVが所定の参照電圧VR2以上の場合は(FBV≧VR2)、信号V42は「H」レベルにされる。
【0061】
AND回路43は、オンディレイタイマ37の出力と接続される入力端子と、比較器42の出力と接続される入力端子とを備える。AND回路43は、オンディレイタイマ37の出力信号V37と、比較器42の出力信号V42との論理積を表わす信号V43を出力する。
【0062】
図10は、第4の実施形態における、増幅器35の出力電圧V35、比較器36の出力信号(オンディレイタイマ37の入力信号)V36、オンディレイタイマ37の出力信号V37、比較器42の出力信号V42、およびAND回43の出力信号V43を表わす図である。
【0063】
図10の(1)に示すように、サイリスタ起動装置の起動開始後における電圧変動が発生した場合には、オンディレイタイマ37の入力信号V36が「H」レベルになってから遅延時間TD1が経過した後、オンディレイタイマ37の出力信号V37は、「H」レベルとなる。しかし、比較器42の出力信号V42は「L」レベルのままである。サイリスタ起動装置の起動開始からある程度の時間が経過するまでは、同期電動機8の端子間電圧FBVが所定の電圧VR2よりも小さいからである。よって、サイリスタ起動装置の起動開始後における電圧変動が発生した場合には、AND回路43の出力信号V43は「L」レベルである。
【0064】
図10の(2)に示すように、サイリスタ起動装置の起動開始からある程度の時間が経過すると、同期電動機8の端子間電圧FBVが所定の電圧VR2以上となり、比較器42の出力信号V42は「H」レベルとなる。
【0065】
図10の(3)に示すように、一過性の電圧変動が発生した場合には、オンディレイタイマ37の入力信号V36は、短い時間において「H」レベルとなるが、遅延時間TD1以上の時間において「H」レベルとならないので、オンディレイタイマ37の出力信号V37は「L」レベルのままである。
【0066】
図10の(4)に示すように、地絡事故が発生した場合には、オンディレイタイマ37の入力信号V36が遅延時間TD1以上の時間において「H」レベルとなる。オンディレイタイマ37の出力信号V37は、地絡事故が発生してから遅延時間TD1が経過した後、「H」レベルとなる。よって、地絡事故が発生してから遅延時間TD1が経過した後、AND回路43の出力信号V43は「H」レベルとなる。
【0067】
地絡事故、一過性の電圧変動、およびサイリスタ起動装置の起動開始後の電圧変動のうちのいずれも発生していない場合には、オンディレイタイマ37の入力信号V36は「L」レベルのままなので、AND回路43の出力信号V43は「L」レベルとなる。
【0068】
本実施の形態では、比較器42によって、サイリスタ起動装置の起動開始後の一過的な電位変動を地絡事故として検出しないようにすることができる。これによって、オンディレイタイマ37を起動開始後よりも後の時点における短い期間の電位変動の検出を防止するために使用するようにすることができる。その結果、オンディレイタイマ37の遅延時間TD1を短く設定することができるので、地絡事故を迅速に検出することができる。
【0069】
(第5の実施形態)
図11は、第5の実施形態の地絡検出回路6Dの構成を表わす図である。
【0070】
第5の実施形態の地絡検出回路6Dの判別回路100Dが、第1の実施形態の地絡検出回路6の判別回路100と相違する点は、第5の実施形態の地絡検出回路6Dの判別回路100Dが、オンディレイタイマ37に代えてオンディレイタイマ37Dを備え、さらに、比較器40を備える点である。
【0071】
制御回路7は、第3の実施形態と同様に、同期電動機8の回転数FBNRを表わす信号を比較器40に送る。
【0072】
比較器40は、第3の実施形態と同様に、同期電動機8の回転数FBNRを表わす信号と、所定の回転数NRとを比較し、比較結果に応じたレベルの信号V40を出力する。同期電動機8の回転数FBNRが所定の回転数NRよりも小さい場合は(FBNR<NR)、信号V40は「L」レベルにされる。同期電動機8の回転数FBNRが所定の回転数NR以上の場合は(FBNR≧NR)、信号V40は「H」レベルにされる。
【0073】
オンディレイタイマ37Dは、比較器36から出力される信号V36、および比較器40から出力される信号V40を受ける。オンディレイタイマ37Dの遅延時間は、信号V40によって設定される。オンディレイタイマ37Dの遅延時間は、信号V40が「L」レベルの場合(すなわち、同期電動機8の回転数FBNRが所定の回転数NRよりも小さい場合)には、TD2に設定され、信号V40が「H」レベルの場合(すなわち、同期電動機8の回転数FBNRが所定の回転数NR以上の場合)には、TD1に設定される。TD1<TD2である。
【0074】
図12は、第5の実施形態における、増幅器35の出力電圧V35、比較器36の出力信号(オンディレイタイマ37Dの入力信号)V36、比較器40の出力信号V40、およびオンディレイタイマ37Dの出力信号V44を表わす図である。
【0075】
図12の(1)に示すように、サイリスタ起動装置の起動開始後における電圧変動が発生した場合には、比較器40の出力信号V40は「L」レベルのままである。サイリスタ起動装置の起動開始からある程度の時間が経過するまでは、同期電動機8の回転数FBNRが所定の回転数NRよりも小さいからである。よって、この間は、オンディレイタイマ37Dの遅延時間は、TD2に設定される。サイリスタ起動装置の起動開始後における電圧変動が発生した場合にオンディレイタイマ37Dの入力信号V36が「H」レベルとなる期間の長さは、TD2よりも短いので、オンディレイタイマ37Dの出力信号V44は「L」レベルである。
【0076】
図12の(2)に示すように、サイリスタ起動装置の起動開始からある程度の時間が経過すると、同期電動機8の回転数FBNRは所定の回転数NR以上となり、比較器40の出力信号V40は「H」レベルとなる。これによって、オンディレイタイマ37Dの遅延時間は、TD1に設定される。
【0077】
図12の(3)に示すように、一過性の電圧変動が発生した場合には、オンディレイタイマ37Dの入力信号V36は、短い時間において「H」レベルとなるが、遅延時間TD1以上の時間において「H」レベルとならないので、オンディレイタイマ37Dの出力信号V44は「L」レベルのままである。
【0078】
図12の(4)に示すように、地絡事故が発生した場合には、オンディレイタイマ37Dの入力信号V36が遅延時間TD1以上の時間において「H」レベルとなる。オンディレイタイマ37Dの出力信号V44は、地絡事故が発生してから遅延時間TD1が経過した後、「H」レベルとなる。
【0079】
地絡事故、一過性の電圧変動、およびサイリスタ起動装置の起動開始後の電圧変動のうちのいずれも発生していない場合には、オンディレイタイマ37Dの入力信号V36は「L」レベルのままなので、オンディレイタイマ37Dの出力信号V44は「L」レベルとなる。
【0080】
本実施の形態では、サイリスタ起動装置の起動開始後の比較的長い電位変動を地絡事故として検出しないようにするために、オンディレイタイマ37Dの遅延時間TD2を長い値に設定し、起動開始後よりも後の時点における一過的な比較的短い電位変動を地絡事故として検出しないようにするために、オンディレイタイマ37Dの遅延時間をTD1を短い値に設定することができる。その結果、地絡事故を迅速に検出することができる。
【0081】
(第6の実施形態)
図13は、第6の実施形態の地絡検出回路6Eの構成を表わす図である。
【0082】
第6の実施形態の地絡検出回路6Eの判別回路100Eが、第1の実施形態の地絡検出回路6の判別回路100と相違する点は、第6の実施形態の地絡検出回路6Eの判別回路100Eが、オンディレイタイマ37に代えてオンディレイタイマ37Eを備え、さらに、比較器42を備える点である。
【0083】
制御回路7は、第4の実施形態と同様に、同期電動機8の端子間電圧FBVを表わす信号を表わす信号を比較器42に送る。
【0084】
比較器42は、同期電動機8の端子間電圧FBVを表わす信号と、所定の参照電圧VR2とを比較し、比較結果に応じたレベルの信号V42を出力する。同期電動機8の端子間電圧FBVが所定の参照電圧VR2よりも小さい場合は(FBV<VR2)、信号V42は「L」レベルにされる。同期電動機8の端子間電圧FBVが所定の参照電圧VR2以上の場合は(FBV≧VR2)、信号V42は「H」レベルにされる。
【0085】
オンディレイタイマ37Eは、比較器36から出力される信号V36、および比較器42から出力される信号V42を受ける。オンディレイタイマ37Eの遅延時間は、信号V42によって設定される。オンディレイタイマ37Eの遅延時間は、信号V42が「L」レベルの場合(すなわち、同期電動機8の端子間電圧FBVが所定の参照電圧VR2よりも小さい場合)には、TD2に設定され、信号V42が「H」レベルの場合(すなわち、同期電動機8の端子間電圧FBVが所定の参照電圧VR2以上)には、TD1に設定される。TD1<TD2である。
【0086】
図14は、第6の実施形態における、増幅器35の出力電圧V35、比較器36の出力信号(オンディレイタイマ37Eの入力信号)V36、比較器42の出力信号V42、およびオンディレイタイマ37Eの出力信号V45を表わす図である。
【0087】
図14の(1)に示すように、サイリスタ起動装置の起動開始後における電圧変動が発生した場合には、比較器42の出力信号V42は「L」レベルのままである。サイリスタ起動装置の起動開始からある程度の時間が経過するまでは、同期電動機8の端子間電圧FBVが所定の参照電圧VR2よりも小さいからである。よって、この間は、オンディレイタイマ37Eの遅延時間は、TD2に設定される。サイリスタ起動装置の起動開始後における電圧変動が発生した場合にオンディレイタイマ37Eの入力信号V36が「H」レベルとなる期間の長さは、TD2よりも短いので、オンディレイタイマ37Eの出力信号V45は「L」レベルである。
【0088】
図14の(2)に示すように、サイリスタ起動装置の起動開始からある程度の時間が経過すると、同期電動機8の端子間電圧FBVが所定の参照電圧VR2以上となり、比較器42の出力信号V42は「H」レベルとなる。これによって、オンディレイタイマ37Eの遅延時間は、TD1に設定される。
【0089】
図14の(3)に示すように、一過性の電圧変動が発生した場合には、オンディレイタイマ37Eの入力信号V36は、短い時間において「H」レベルとなるが、遅延時間TD1以上の時間において「H」レベルとならないので、オンディレイタイマ37Eの出力信号V45は「L」レベルのままである。
【0090】
図14の(4)に示すように、地絡事故が発生した場合には、オンディレイタイマ37Eの入力信号V36が遅延時間TD1以上の時間において「H」レベルとなる。オンディレイタイマ37Eの出力信号V45は、地絡事故が発生してから遅延時間TD1が経過した後、「H」レベルとなる。
【0091】
地絡事故、一過性の電圧変動、およびサイリスタ起動装置の起動開始後の電圧変動のうちのいずれも発生していない場合には、オンディレイタイマ37Eの入力信号V36は「L」レベルのままなので、オンディレイタイマ37Eの出力信号V45は「L」レベルとなる。
【0092】
本実施の形態では、サイリスタ起動装置の起動開始後の比較的長い電位変動を地絡事故として検出しないようにするために、オンディレイタイマ37Eの遅延時間TD2を長い値に設定し、起動開始後よりも後の時点における一過的な比較的短い電位変動を地絡事故として検出しないようにするために、オンディレイタイマ37Eの遅延時間をTD1を短い値に設定することができる。その結果、地絡事故を迅速に検出することができる。
【0093】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0094】
1 交流電源、2 三相変圧器、3 コンバータ、3a 高電圧側出力端子、3b 低電圧側出力端子、4 直流リアクトル、5 インバータ、5a 高電圧側入力端子、5b 低電圧側入力端子、6,6A,6B,6C,6D,6E 地絡検出回路、7 制御回路、8 同期電動機、11,13,14,16,21,23,24,26 サイリスタ、31,32,33,34 抵抗素子、35 増幅器、36,40,42 比較器、37,37D,37E,38 オンディレイタイマ、39,41,43 AND回路、100,100A,100B,100C,100D,100E 判別回路。
【要約】
地絡検出回路(6)は、第1~第4の抵抗素子(31~34)を備える。第1~第3の抵抗素子(31~33)の一方端子はそれぞれ第1~第3の交流ライン(RL,SL,TL)に接続され、第1~第3の抵抗素子(31~33)の他方端子はともに第4の抵抗素子(34)の一方端子に接続され、第4の抵抗素子(34)の他方端子は接地電圧を受ける。地絡検出回路(6)は、第4の抵抗素子(34)の端子間電圧に基づいて、電力変換装置において地絡事故が発生したか否かを判別する判別回路(100)を備える。判別回路(100)は、第4の抵抗素子(34)の端子間電圧と、第1の参照電圧(VR)とを比較する第1の比較器(36)と、第1の比較器(36)の出力を受ける第1のオンディレイタイマ(37)とを含む。