(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-04
(45)【発行日】2025-07-14
(54)【発明の名称】目地板を施工対象物の上面上に供給する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
E02B 3/16 20060101AFI20250707BHJP
【FI】
E02B3/16 A
(21)【出願番号】P 2025080167
(22)【出願日】2025-05-13
(62)【分割の表示】P 2021012845の分割
【原出願日】2021-01-29
【審査請求日】2025-05-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】菅井 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】三浦 悟
(72)【発明者】
【氏名】奈須野 恭伸
(72)【発明者】
【氏名】出石 陽一
(72)【発明者】
【氏名】宮内 良和
(72)【発明者】
【氏名】神戸 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】青木 恒
(72)【発明者】
【氏名】上本 勝広
(72)【発明者】
【氏名】小熊 正
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-277868(JP,A)
【文献】特開平09-203031(JP,A)
【文献】特開昭60-164507(JP,A)
【文献】特開平08-184105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/16
E02B 7/00
E04G 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工対象物内に挿入される目地板を前記施工対象物の上面上に供給する方法であって、
前記方法では、前記施工対象物の上面上を走行可能な車体と、前記車体上に配置されて複数枚の目地板を積載可能なストッカーと、前記ストッカーに積載された複数枚の目地板を1枚ずつ前記施工対象物の上面上に供給可能な供給部と、を備える装置を用い、
前記方法は、前記施工対象物内への目地板の挿入に先立って、前記供給部を用いて前記施工対象物の上面上に目地板を載置することを含む、方法。
【請求項2】
前記供給部は把持部を備え、前記把持部は、前記ストッカーに積載された複数枚の目地板を1枚ずつ把持しながら前記ストッカー外に排出するように構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記供給部は、エアー式の吸引部を備え、前記吸引部は、前記ストッカーに積載された複数枚の目地板を1枚ずつ吸引しながら前記ストッカー外に排出するように構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
施工対象物内に挿入される目地板を前記施工対象物の上面上に供給する装置であって、
前記施工対象物の上面上を走行可能な車体と、
前記車体上に配置されて複数枚の目地板を積載可能なストッカーと、
前記ストッカーに積載された複数枚の目地板を1枚ずつ前記施工対象物の上面上に供給可能な供給部と、
を備える、装置。
【請求項5】
前記供給部は把持部を備え、前記把持部は、前記ストッカーに積載された複数枚の目地板を1枚ずつ把持しながら前記ストッカー外に排出するように構成されている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記供給部は、エアー式の吸引部を備え、前記吸引部は、前記ストッカーに積載された複数枚の目地板を1枚ずつ吸引しながら前記ストッカー外に排出するように構成されている、請求項4に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばダム堤体などの施工対象物内に挿入される目地板を施工対象物の上面上に供給する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートダムやCSGダムにおける堤体の構築工事では、堤体の膨張や収縮に伴って発生する応力に起因した弊害の発生を防止するために、いわゆる目地切り作業が実施されることが多い。この目地切り作業では、堤体の所定の位置に複数枚の目地板(板状の目地材)を挿入することで目地(継目)を形成する。この目地切り作業に用いられる装置の一例が特許文献1にコンクリート目地切り機として開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の目地切り作業では、1枚の目地板を堤体内に挿入する度に、コンクリート目地切り機を構成する目地切り板に、J字状断面を有する目地板を装着する必要があるので(例えば特許文献1の段落0024,0033参照)、この装着作業に手間がかかっていた。
【0005】
本発明は、このような実状に鑑み、ダム堤体などの施工対象物に対する目地切り作業の効率化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため本発明の一側面は、施工対象物内に挿入される目地板を前記施工対象物の上面上に供給する方法であって、
前記方法では、前記施工対象物の上面上を走行可能な車体と、前記車体上に配置されて複数枚の目地板を積載可能なストッカーと、前記ストッカーに積載された複数枚の目地板を1枚ずつ前記施工対象物の上面上に供給可能な供給部と、を備える装置を用い、
前記方法は、前記施工対象物内への目地板の挿入に先立って、前記供給部を用いて前記施工対象物の上面上に目地板を載置することを含む。
【0007】
本発明の別の側面は、施工対象物内に挿入される目地板を前記施工対象物の上面上に供給する装置であって、
前記施工対象物の上面上を走行可能な車体と、
前記車体上に配置されて複数枚の目地板を積載可能なストッカーと、
前記ストッカーに積載された複数枚の目地板を1枚ずつ前記施工対象物の上面上に供給可能な供給部と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、施工対象物の上面上に載置された目地板を施工対象物内に挿入するので、前述の目地板の目地切り板への装着作業を省略することができる。ゆえに、施工対象物に対する目地切り作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態における目地板挿入装置の概略構成を示す図である。
【
図5】目地板をストッカーから堤体の上面上に供給する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態における目地板挿入装置の概略構成を示す図である。
図2(ア)は、ストッカー及びガイド部の平面図である。
図2(イ)は、ストッカー及びガイド部の側面図である。
図2(ウ)は
図2(ア)のA-A断面図である。
【0011】
ここで、本実施形態では、本発明の「施工対象物」の例としてダムの堤体を挙げて説明するが、本発明の「施工対象物」はダムの堤体に限らない。また、本実施形態では、堤体がCSG製であるとして以下説明するが、この他、例えば、スランプの値が略ゼロの超硬練りのコンクリート製であってもよい。CSG(Cemented Sand and Gravel)やコンクリートはセメント、固化材が混合された後、時間の経過とともに硬化する。
【0012】
本実施形態では、堤体1を構築する際に、目地板挿入装置10が用いられる。ここにおいて、堤体1を構成するCSGは、例えば砂や石などの岩石質材料にセメント及び水を混ぜ合わせてなるセメント系材料である。堤体1を構成するCSGは、目地切りの際に、その上面2上を目地板挿入装置10が走行可能(移動可能)な程度の硬さを有している。
【0013】
目地板挿入装置10は目地板5(後述する
図3~
図8参照)を堤体1内に挿入する装置である。目地板挿入装置10は、ベースマシン20、腕部30、ストッカー40、及び、挿入部60を備える。
【0014】
ベースマシン20は、堤体1の上面2上を自走可能な車体21と、この車体21上に水平旋回可能に設けられた旋回体22とを有する。
【0015】
車体21は、車体本体23と、無限軌道24とを有する。無限軌道24は、車体本体23の両側部に設けられており、車体本体23に内蔵された図示しない駆動装置に駆動されて回転する。従って、車体21は、この無限軌道24を回転させることにより、堤体1の上面2上を走行する。
【0016】
旋回体22は、車体本体23上に設置されている。この旋回体22の下部には旋回軸25が連結されており、旋回軸25は車体本体23に内蔵された図示しない駆動装置に駆動されて回転する。旋回体22は、この旋回軸25を回転させることにより水平旋回する。
【0017】
旋回体22の前部には操縦室26が設けられている。操縦室26には、目地板挿入装置10の全体の動作を制御するための各種操作器具が備えられている。作業者は、操縦室26内で操作器具を操作することによって、目地板挿入装置10を操縦することができる。
【0018】
腕部30は、「く」の字状に曲がっており、その基端部が、水平方向に延びる枢支軸(図示せず)を介して、旋回体22の前部(操縦室26の側方)に枢支されている。一対のジャッキ32は、各々の上端が腕部30の中央部(前述の「く」の字状における曲がり部)を左右両側から挟むように取り付けられる一方、下端が、旋回体22の前部(操縦室26の側方)に取り付けられている。従って、ジャッキ32を伸縮させることにより、腕部30が、その基端部の枢支軸を介して、旋回体22に対して上下方向に揺動する。尚、ジャッキ32は、例えば油圧ジャッキである。
【0019】
腕部30の先端部33には、水平方向に延びる枢支軸34を介して、挿入部60のブラケット61が取り付けられている。腕部30の上方にはジャッキ35が配置されている。ジャッキ35は、その一端が腕部30の中央部(前述の「く」の字状における曲がり部)の上部に取り付けられる一方、他端が、挿入部60のブラケット61に、水平方向に延びる枢支軸36を介して取り付けられている。従って、ジャッキ35を伸縮させることにより、挿入部60が、枢支軸34を介して、腕部30に対して揺動する。尚、ジャッキ35は、例えば油圧ジャッキである。
【0020】
挿入部60は、前述のブラケット61と、ブラケット61に設けられて上下方向に伸縮可能な伸縮筒62と、伸縮筒62の下端に設けられた旋回装置63と、旋回装置63の被旋回部側に取り付けられた門型フレーム64と、門型フレーム64にゴムやばねなどの弾性体65を介して取り付けられた起振装置66と、起振装置66に取り付けられたブレード(目地切り板)67とを有する。
【0021】
伸縮筒62は、外筒62aと、この外筒62aに昇降可能に取付けられた内筒62bと、外筒62aに対して内筒62bを昇降させる油圧シリンダ(図示せず)と有する。本実施形態では、旋回装置63は、下部の被旋回部を手回しにより旋回可能としたものであるが、この代わりに旋回モータなどを用いた遠隔操作式旋回装置を用いてもよい。
【0022】
起振装置66は、2個の偏心錘(図示せず)をそれぞれ回転させるモータ68を有している。起振装置66の下端部にはブレード67の上端部が固定されている。起振装置66は、ブレード67を振動させるものである。ブレード67は例えば鋼製の矩形板状である。
【0023】
ストッカー40は、旋回体22の前部の底面28に設けられており、複数枚の目地板5を重ねて積載可能である。ストッカー40は、例えば数十枚から百枚程度の目地板5を上下に重ねて積載可能なように構成されている。
【0024】
目地板5は矩形状であり、金属製である。目地板5は、例えば、亜鉛の薄板鋼板からなる。目地板5の厚さは、例えば1mm以下である。目地板5は、例えば、各辺が1m程度の正方形状である。
【0025】
ストッカー40は、例えば、上面が開口した矩形箱状である。本実施形態では、ストッカー40の後壁41、左壁42、及び右壁43が底面44から立ち上がっており、その前側部分は開口して、ガイド部45の受入部45aに連通している。
【0026】
ガイド部45は、ストッカー40の前方に位置してストッカー40に連通する受入部45aと、受入部45aの下端から下方に延びる矩形断面の筒部45bとからなる。
【0027】
受入部45aは、ストッカー40の左壁42の前端から前方に延びる左壁延長部42eと、右壁43の前端から前方に延びる右壁延長部43eと、左壁延長部42eの前端と右壁延長部43eの前端とに両端が接続された前壁46と、を有している。
【0028】
本実施形態では、前壁46、後壁41、左壁42、左壁延長部42e、右壁43、及び、右壁延長部43eにより、上面視矩形状の周壁48が形成されている。本実施形態では、周壁48のうち、後壁41の下端、左壁42の下端、及び右壁43の下端によって囲まれる開口が底面44によって塞がれている。周壁48のうち、前壁46の下端、左壁延長部42eの下端、及び右壁延長部43eの下端によって囲まれる開口は、筒部45bの上面開口に連通している。
【0029】
筒部45bは矩形断面を有して上下方向に延びており、その上面と下面とがそれぞれ開口している。筒部45bは、その上端が、前壁46の下端、左壁延長部42eの下端、右壁延長部43eの下端、及び、底面44の前端に接続されている。筒部45bの高さ(上下方向の長さ)については、例えば堤体1の上面2のうち勾配があるところを目地板挿入装置10が走行する際に筒部45bの下端が上面2に擦らないように予め設定されている。
【0030】
尚、ストッカー40及びガイド部45の形状は前述のものに限らない。
【0031】
次に、ストッカー40に上下に重ねて積載された複数枚の目地板5を1枚ずつストッカー40からガイド部45の受入部45a(すなわちストッカー40外)に排出する排出部50について、
図3及び
図4を用いて説明する。
【0032】
図3及び
図4は排出部50の第1例及び第2例を示す。
【0033】
排出部50は、旋回体22とストッカー40との少なくとも一方に設けられる。ここにおいて、目地板挿入装置10は、ストッカー40に上下に重ねて積載された複数枚の目地板5を1枚ずつ堤体1の上面2上に供給可能な供給部70を備え、この供給部70が、排出部50とガイド部45とを備えている。
【0034】
図3に示す排出部50の第1例では、
図3(ア)及び(イ)に示すように、電動の伸縮自在かつ揺動自在なアーム51で目地板5を1枚ずつストッカー40からガイド部45の受入部45aへ送り出す(排出する)。ここにおいて、目地板5に当接するアーム51の先端部にゴムなどからなる滑り止め52を設けておくことで、目地板5を1枚ずつストッカー40から良好に排出することができる。
【0035】
図4に示す排出部50の第2例では、
図4(ア)及び(イ)に示すように、例えばゴム製のローラ53を目地板5の上面に当接させつつ図中の矢印の方向に回転させることで、目地板5を1枚ずつストッカー40からガイド部45の受入部45aへ送り出す(排出する)。尚、本例において、ローラ53に代えて、小型のベルトコンベアを用いて、目地板5を1枚ずつストッカー40からガイド部45の受入部45aへ送り出すようにしてもよい。この場合においても、ベルトコンベアのうち目地板5に当接する部分に、ゴムなどからなる滑り止めを設けておくことで、目地板5を1枚ずつストッカー40から良好に排出することができる。
【0036】
図示は省略するが、排出部50の第3例では、排出部50が把持部を備え、この把持部が目地板5を1枚ずつ把持しつつストッカー40からガイド部45の受入部45aへ排出するように構成され得る。また、排出部50の第4例では、排出部50がエアー式の吸引部を備え、この吸引部が目地板5を1枚ずつ吸引しつつストッカー40からガイド部45の受入部45aへ排出するように構成され得る。
【0037】
尚、前述の排出部50の各例については、例えば、操縦室26に設けられた操作スイッチ(図示せず)を作業者が押下することにより、目地板5を1枚ずつストッカー40からガイド部45の受入部45a(すなわちストッカー40外)に排出できるように構成され得る。
【0038】
図5は、ストッカー40に上下に重ねて積載された複数枚の目地板5を1枚ずつストッカー40から堤体1の上面2上に供給する方法を説明するための図である。
【0039】
ストッカー40に上下に重ねて積載された複数枚の目地板5については、
図5中に白抜き矢印で示すように、まず、排出部50の作動によって、ストッカー40からガイド部45の受入部45aに向けて略水平に排出される。この排出された目地板5は、ガイド部45の受入部45aの前壁46に当たった後、筒部45b内を通って、堤体1の上面2上に落下(自由落下)する。ここにおいて、供給部70は、ストッカー40に上下に重ねて積載された複数枚の目地板5を1枚ずつ堤体1の上面2上に供給する機能を実現する。また、ガイド部45は、排出部50によってストッカー40から排出された目地板5を堤体1の上面2に向けてガイドする機能を実現する。また、ガイド部45は、排出部50によってストッカー40から排出された目地板5の向きや姿勢を修正する機能も実現し得る。
【0040】
次に、目地板挿入装置10を用いる目地切り作業について、
図6~
図8を用いて説明する。
図6~
図8は目地板5を堤体1内に挿入する方法を示す。尚、以下の説明において、堤体1の上面2上に順に載置される複数枚の目地板5に関して、n番目に載置される目地板5の符号を「5-n」(nは自然数)とする。
【0041】
この目地板5の挿入方法では、まず、
図6(ア)に示すように、供給部70(排出部50及びガイド部45)を用いて、堤体1の上面2上に目地板5-1を載置する(載置工程)。この工程では、ストッカー40と挿入部60との間にて、堤体1の上面2上に目地板5-1を載置する。
【0042】
この後、
図6(イ)及び(ウ)に示すように、ベースマシン20の後退と、供給部70を用いる堤体1の上面2上への目地板5の載置とを繰り返して、
図6(ウ)に示すように、目地板5-1の直上に挿入部60を位置させる。このベースマシン20を後退させる工程が、本発明の「移動工程」に対応する。つまり、この工程では、目地板5-1の直上に挿入部60が位置するようにベースマシン20を移動させている。尚、本実施形態では、隣り合う目地板5同士の間の間隔は、例えば10cm程度空いている。
【0043】
次に、
図7(エ)に示すように、目地板5-1を、挿入部60により折り曲げつつ堤体1内の所定の深さまで挿入する(挿入工程)。この挿入時には、起振装置66によってブレード67を振動させつつ、伸縮筒62を下方に伸長作動させることでブレード67を下降させることにより、ブレード67で目地板5-1を折り曲げつつ堤体1内に挿入する。折り曲げられた目地板5-1は、いわゆる2つ折りの状態であるが、均等に半分に折られていなくてもよい。
【0044】
次に、
図7(オ)に示すように、伸縮筒62を短縮作動させることでブレード67を上昇させる(引き上げ工程)。
【0045】
次に、
図7(カ)に示すように、目地板5-2の直上に挿入部60が位置するようにベースマシン20を後退させる(移動工程)。
【0046】
次に、
図8(キ)に示すように、供給部70を用いて堤体1の上面2上に目地板5-4を載置する(載置工程)。
【0047】
次に、
図8(ク)に示すように、目地板5-2を、挿入部60により折り曲げつつ堤体1内の所定の深さまで挿入する(挿入工程)。この挿入時には、起振装置66によってブレード67を振動させつつ、伸縮筒62を下方に伸長作動させることでブレード67を下降させることにより、ブレード67で目地板5-2を折り曲げつつ堤体1内に挿入する。折り曲げられた目地板5-2についても、前述の目地板5-1と同様に、いわゆる2つ折りの状態であるが、均等に半分に折られていなくてもよい。
【0048】
以下、前述の引き上げ工程、移動工程、載置工程、挿入工程を順次繰り返すことで、複数枚の目地板5が堤体1内に挿入される(
図8(ケ)参照)。ここにおいて、
図8(ケ)は、10枚の目地板5(5-1~5-10)が堤体1内に挿入された状態を示しているが、堤体1内に挿入される目地板5の枚数はこれに限らないことは言うまでもない。例えば、施工延長が100mある目地切り箇所には、約100枚の目地板5が堤体1内に挿入され得る。
【0049】
尚、本実施形態では、載置工程の後に挿入工程を行っているが、この他、載置工程に先立って挿入工程を行ってもよい。又は、載置工程の少なくとも一部と挿入工程の少なくとも一部とを同時に実施してもよい。
【0050】
ところで、従来の目地切り作業では、例えば特許文献1に開示の目地切り機を用いて、1枚の目地板を堤体内に挿入する度に、当該目地切り機を構成する目地切り板に、J字状断面を有する目地板を装着する必要があり、この装着作業は作業者によって人力で実施されていた。
【0051】
この点、本実施形態によれば、この装着作業を省略することができるので、作業者による人力の作業の低減を図ることができる。
【0052】
本実施形態によれば、目地板挿入装置10は、施工対象物(例えば堤体1)の上面2上を走行可能な車体21と、この車体21上に旋回可能に設けられた旋回体22と、を有するベースマシン20と、旋回体22に基端部が枢支されて揺動可能な腕部30と、旋回体22に設けられて複数枚の目地板5を積載可能なストッカー40と、旋回体22及び/又はストッカー40に設けられて、ストッカー40に積載された複数枚の目地板5を1枚ずつ施工対象物(例えば堤体1)の上面2上に供給可能な供給部70と、腕部30の先端部33に設けられて、施工対象物(例えば堤体1)の上面2上に供給された目地板5を施工対象物(例えば堤体1)内に挿入可能な挿入部60と、を備える。ゆえに、目地板5のブレード67への装着作業を省略することができるので、施工対象物(例えば堤体1)に対する目地切り作業の効率化を図ることができる。
【0053】
また本実施形態によれば、供給部70は、ストッカー40に積載された複数枚の目地板5を1枚ずつストッカー40外に排出する排出部50と、排出部50によって排出された目地板5を施工対象物(例えば堤体1)の上面2に向けてガイドするガイド部45と、を備える。これにより、目地板5を施工対象物(例えば堤体1)の上面2上の所定位置に簡易に精度よく供給することができる。
【0054】
また本実施形態によれば、目地板挿入装置10を用いて目地板5を施工対象物(例えば堤体1)内に挿入する方法は、供給部70を用いて施工対象物(例えば堤体1)の上面2上に目地板5を載置する載置工程と、この載置された目地板5の直上に挿入部60が位置するようにベースマシン20を移動する移動工程と、この載置された目地板5を、挿入部60により折り曲げつつ施工対象物(例えば堤体1)内に挿入する挿入工程と、を含む。ゆえに、目地板5のブレード67への装着作業を省略することができるので、施工対象物(例えば堤体1)に対する目地切り作業の効率化を図ることができる。
【0055】
また本実施形態によれば、前述の載置工程では、ストッカー40と挿入部60との間にて、施工対象物(例えば堤体1)の上面2上に目地板5を載置する。これにより、前述の移動工程にてベースマシン20を後退させるのみで、簡易に目地板5の直上に挿入部60を位置させることができる。
【0056】
また本実施形態によれば、目地板5を施工対象物(例えば堤体1)内に挿入する方法は、施工対象物(例えば堤体1)の上面2上に少なくとも1枚の目地板5を載置する載置工程と、この載置された目地板5を折り曲げつつ施工対象物(例えば堤体1)内に挿入する挿入工程と、を含む。ゆえに、目地板5のブレード67への装着作業を省略することができるので、施工対象物(例えば堤体1)に対する目地切り作業の効率化を図ることができる。
【0057】
尚、本実施形態では、本発明の「施工対象物」の例としてダムの堤体を挙げて説明したが、本発明の「施工対象物」はダムの堤体に限らず、例えば、沿岸や河川の堤防などの堤体であってもよい。
【0058】
図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
尚、特願2021-012845号の出願当初の請求項は以下の通りであった。
[請求項1]
施工対象物の上面上を走行可能な車体と、この車体上に旋回可能に設けられた旋回体と、を有するベースマシンと、
前記旋回体に基端部が枢支されて揺動可能な腕部と、
前記旋回体に設けられて複数枚の目地板を積載可能なストッカーと、
前記旋回体及び/又は前記ストッカーに設けられて、前記ストッカーに積載された複数枚の目地板を1枚ずつ前記施工対象物の上面上に供給可能な供給部と、
前記腕部の先端部に設けられて、前記施工対象物の上面上に供給された目地板を前記施工対象物内に挿入可能な挿入部と、
を備える、目地板挿入装置。
[請求項2]
前記供給部は、
前記ストッカーに積載された複数枚の目地板を1枚ずつ前記ストッカー外に排出する排出部と、
前記排出部によって排出された目地板を前記施工対象物の上面に向けてガイドするガイド部と、
を備える、請求項1に記載の目地板挿入装置。
[請求項3]
請求項1又は請求項2に記載の目地板挿入装置を用いて目地板を前記施工対象物内に挿入する方法であって、
前記供給部を用いて前記施工対象物の上面上に目地板を載置する載置工程と、
この載置された目地板の直上に前記挿入部が位置するように前記ベースマシンを移動する移動工程と、
前記載置された目地板を、前記挿入部により折り曲げつつ前記施工対象物内に挿入する挿入工程と、
を含む、目地板の挿入方法。
[請求項4]
前記載置工程では、前記ストッカーと前記挿入部との間にて、前記施工対象物の上面上に目地板を載置する、請求項3に記載の目地板の挿入方法。
[請求項5]
目地板を施工対象物内に挿入する方法であって、
前記施工対象物の上面上に少なくとも1枚の目地板を載置する載置工程と、
この載置された目地板を折り曲げつつ前記施工対象物内に挿入する挿入工程と、
を含む、目地板の挿入方法。
【符号の説明】
【0059】
1…堤体、2…上面、5,5-1~5-n…目地板、10…目地板挿入装置、20…ベースマシン、21…車体、22…旋回体、23…車体本体、24…無限軌道、25…旋回軸、26…操縦室、28…底面、30…腕部、32…ジャッキ、33…先端部、34…枢支軸、35…ジャッキ、36…枢支軸、40…ストッカー、41…後壁、42…左壁、42e…左壁延長部、43…右壁、43e…右壁延長部、44…底面、45…ガイド部、45a…受入部、45b…筒部、46…前壁、48…周壁、50…排出部、51…アーム、52…滑り止め、53…ローラ、60…挿入部、61…ブラケット、62…伸縮筒、62a…外筒、62b…内筒、63…旋回装置、64…門型フレーム、65…弾性体、66…起振装置、67…ブレード(目地切り板)、68…モータ、70…供給部
【要約】
【課題】ダム堤体などの施工対象物に対する目地切り作業の効率化を図る。
【解決手段】施工対象物(例えば堤体1)内に挿入される目地板5を施工対象物の上面2上に供給する方法では、施工対象物の上面2上を走行可能な車体21と、車体21上に配置されて複数枚の目地板5を積載可能なストッカー40と、ストッカー40に積載された複数枚の目地板5を1枚ずつ施工対象物の上面2上に供給可能な供給部70と、を備える装置を用いる。前記方法は、施工対象物内への目地板5の挿入に先立って、供給部70を用いて施工対象物の上面2上に目地板5を載置することを含む。
【選択図】
図6