(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】真皮血管収縮下での皮膚病変のレーザ治療
(51)【国際特許分類】
A61B 18/20 20060101AFI20250708BHJP
A61N 5/067 20060101ALI20250708BHJP
A61N 5/06 20060101ALI20250708BHJP
【FI】
A61B18/20
A61N5/067
A61N5/06 A
A61N5/06 B
A61N5/06 Z
(21)【出願番号】P 2022575274
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(86)【国際出願番号】 IB2021000384
(87)【国際公開番号】W WO2021245460
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2024-03-22
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519061860
【氏名又は名称】クラッシーズ インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】522472936
【氏名又は名称】イン,ソンイル
(73)【特許権者】
【識別番号】522474022
【氏名又は名称】キム,ヨンジン
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨンハン
(72)【発明者】
【氏名】イン,ソンイル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨンジン
【審査官】近藤 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-253573(JP,A)
【文献】特表平11-501231(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0154381(US,A1)
【文献】米国特許第06059820(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/20
A61N 5/067
A61N 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚病変を治療するための装置であって、
レーザ光を発生させる光源と、
前記レーザ光を透過させる媒体であって、第1部分と第2部分とを含む媒体と、
を備え、
前記レーザ光が、前記第1部分及び前記第2部分を逐次透過し、
前記第2部分が、治療部位に接触する接触面を含み、
前記第2部分が、前記第1部分よりも高い熱伝導率を有し、
前記第1部分
及び前記第2部分
は、前記媒体内で界面を介して互いに連続している、
装置。
【請求項2】
前記レーザ光が、約300nm~約2500nmの波長を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記レーザ光がパルス光である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記レーザ光が、0~3000J/cm
2のフルエンスを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記第1部分及び前記第2部分が光学的に透明である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第1部分が、石英、サファイア、水晶、ポリ(メタクリル酸メチル)又はポリスチレンを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第2部分が、石英、サファイア、水晶、ポリ(メタクリル酸メチル)又はポリスチレンを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第1部分と前記第2部分との間に位置しているビームスプリッタをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記媒体の温度を目標温度範囲まで低下させる冷却ユニットをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記媒体の前記目標温度範囲が-30℃~0℃である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記冷却ユニットが、熱電冷却器、冷却空気、冷却ガス又は冷却液を含む、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記冷却ユニットと前記媒体との間に配置されている金属ユニットをさらに備える、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記金属ユニットが温度センサを含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記温度センサが、前記媒体の温度を検出することができる、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記温度センサが、前記冷却ユニットの温度を検出することができる、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記温度センサが、前記治療部位の温度を検出することができる、請求項13に記載の装置。
【請求項17】
前記皮膚病変が色素性病変である、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記皮膚病変が非色素性病変である、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
皮膚病変を治療するためのシステムであって、
レーザ光を発生させる光源と、
前記レーザ光を透過させる媒体であって、前記媒体が第1部分と第2部分とを含み、
前記レーザ光が、前記第1部分及び前記第2部分を逐次透過し、前記第2部分が、治療部位に接触する接触面を含み、
前記第2部分が、前記第1部分よりも高い熱伝導率を
有する、媒体と、
前記媒体の温度を目標温度範囲まで低下させる冷却ユニットと、
画像取込装置に作動的に結合されて、前記皮膚病変の1つ又は複数の特性を分析するコントローラであって、
前記コントローラが、前記1つ又は複数の特性に従って、前記皮膚病変を治療するために前記レーザ光を誘導する、コントローラと、
を備え
、前記第1部分及び前記第2部分は、前記媒体内で界面を介して互いに連続している、システム。
【請求項20】
前記レーザ光が、約300nm~約2500nmの波長を有する、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記レーザ光がパルス光である、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
前記レーザ光が、0~3000J/cm
2のフルエンスを有する、請求項19に記載のシステム。
【請求項23】
前記第1部分及び前記第2部分が光学的に透明である、請求項19に記載のシステム。
【請求項24】
前記第1部分が、石英、サファイア、水晶、ポリ(メタクリル酸メチル)又はポリスチレンを含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項25】
前記第2部分が、石英、サファイア、水晶、ポリ(メタクリル酸メチル)又はポリスチレンを含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項26】
前記媒体の前記目標温度範囲が-30℃~0℃である、請求項19に記載のシステム。
【請求項27】
前記冷却ユニットが、熱電冷却器、冷却空気、冷却ガス又は冷却液を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項28】
前記第1部分と前記第2部分との間に位置しているビームスプリッタであって、前記ビームスプリッタが、前記皮膚病変の画像を画像取込装置に送る、ビームスプリッタをさらに備える、請求項19に記載のシステム。
【請求項29】
前記画像がリアルタイム画像である、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記1つ又は複数の特性が、前記皮膚病変の場所、境界、サイズ、厚さ又は色素レベルである、請求項19に記載のシステム。
【請求項31】
前記皮膚病変が色素性病変である、請求項19に記載のシステム。
【請求項32】
前記皮膚病変が非色素性病変である、請求項19に記載のシステム。
【請求項33】
皮膚病変を治療するためのシステムであって、
レーザ光を発生させる光源と、
前記レーザ光を透過させる媒体であって、前記媒体が第1部分と第2部分とを含み、
前記レーザ光が、前記第1部分及び前記第2部分を逐次透過し、前記第2部分が、治療部位に接触する接触面を含み、
前記第2部分が、前記第1部分よりも高い熱伝導率を
有する、媒体と、
前記媒体の温度を目標温度範囲まで低下させる冷却ユニットと、
を備え
、前記第1部分及び前記第2部分は、前記媒体内で界面を介して互いに連続している、システム。
【請求項34】
前記レーザ光が、約300nm~約2500nmの波長を有する、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記レーザ光がパルス光である、請求項33に記載のシステム。
【請求項36】
前記レーザ光が、0~3000J/cm
2のフルエンスを有する、請求項33に記載のシステム。
【請求項37】
前記第1部分及び前記第2部分が光学的に透明である、請求項33に記載のシステム。
【請求項38】
前記第1部分が、石英、サファイア、水晶、ポリ(メタクリル酸メチル)又はポリスチレンを含む、請求項33に記載のシステム。
【請求項39】
前記第2部分が、石英、サファイア、水晶、ポリ(メタクリル酸メチル)又はポリスチレンを含む、請求項33に記載のシステム。
【請求項40】
前記媒体の前記目標温度範囲が-30℃~0℃である、請求項33に記載のシステム。
【請求項41】
前記冷却ユニットが、熱電冷却器、冷却空気、冷却ガス又は冷却液を含む、請求項33に記載のシステム。
【請求項42】
前記冷却ユニットと前記媒体との間に配置されている金属ユニットをさらに備える、請求項33に記載のシステム。
【請求項43】
前記金属ユニットが温度センサを含む、請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
前記温度センサが、前記媒体の温度を検出することができる、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
コントローラが、前記温度センサに作動的に結合されて、前記媒体の前記温度を制御する、請求項44に記載のシステム。
【請求項46】
前記温度センサが、前記冷却ユニットの温度を検出することができる、請求項43に記載のシステム。
【請求項47】
コントローラが、前記温度センサに作動的に結合されて、前記冷却ユニットの前記温度を制御する、請求項46に記載のシステム。
【請求項48】
前記温度センサが、前記治療部位の温度を検出することができる、請求項43に記載のシステム。
【請求項49】
コントローラが、前記温度センサに作動的に結合されて、前記治療部位の前記温度を制御する、請求項48に記載のシステム。
【請求項50】
前記皮膚病変が色素性病変である、請求項33に記載のシステム。
【請求項51】
前記皮膚病変が非色素性病変である、請求項33に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2020年6月5日に出願された米国仮特許出願第63/035,569号の優先権を主張し、その出願は、その全体が参照により本明細書に援用される。
技術分野
本発明は、皮膚科レーザ治療に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
メラニンは、皮膚の基底膜に位置するメラノサイト(メラニン細胞)で生合成される。メラニンは、メラノソームの形態で、メラノサイトの樹状突起を経由して周囲のケラチノサイトに輸送される。メラニンが過剰に産生されるか、又は、ある刺激によって既存のメラニンがより活発にケラチノサイトに移送されると、さまざまな色素性病変が形成される可能性があり、又は、既存の色素沈着が増悪する可能性がある。過剰なメラニン産生は、紫外線(UV)曝露又は炎症性皮膚反応によって引き起こされる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
皮膚科において、さまざまな血管性及び色素性皮膚病変、刺青、皮膚良性腫瘍、前がん病変、非黒色腫皮膚上皮内がん(non-melanoma skin cancers in situ)及び微小浸潤性皮膚がんを治療するために、レーザ治療が広く使用されてきた。皮膚病変に対する従来のレーザ治療法は、一般的に安全で効果的であるが、火傷、創感染、局所麻酔に対する過敏反応等の副作用、及び、持続性のレーザ照射後紅斑(PLE)、炎症後色素沈着(PIH)及び瘢痕等の慢性又は恒久的な副作用が生じる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
概して、皮膚病変を治療する方法は、治療部位の温度を、治療部位の真皮において血管収縮を誘発するのに十分な温度範囲まで低下させることと、治療部位の温度をその温度範囲内に維持しながら、媒体を通して皮膚病変にレーザ光を適用することとを含むことができる。
【0005】
いくつかの実施形態では、媒体は第1部分及び第2部分を含むことができ、レーザ光は第1部分及び第2部分を逐次透過し、第2部分は、治療部位に接触する接触面を含み、第2部分は、第1部分よりも高い熱伝導率を有する。
【0006】
いくつかの実施形態では、第1部分及び第2部分が光学的に透明であり得る。
【0007】
いくつかの実施形態では、第1部分は、石英、サファイア、水晶、ポリ(メタクリル酸メチル)又はポリスチレンを含むことができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、第2部分は、石英、サファイア、水晶、ポリ(メタクリル酸メチル)又はポリスチレンを含むことができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、ビームスプリッタが、第1部分と第2部分との間に位置することができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、第1部分と第2部分とは、密閉された空気によって分離することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、治療部位の温度を低下させることは、治療部位を媒体の第2部分の接触面と接触させることを含むことができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、治療部位を媒体の第2部分の接触面と接触させることは、治療部位の表面を媒体の第2部分の接触面で圧縮することを含むことができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、治療部位の温度を低下させることは、レーザ光を適用する前に治療部位の血管収縮を誘発する薬物を投与することを含むことができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、レーザ光は、約300nm~約2500nmの波長を有することができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、レーザ光はパルス光である。
【0016】
いくつかの実施形態では、レーザ光は、0~3000J/cm2のフルエンスを有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、本方法は、治療部位の表面に又は媒体の第2部分の接触面に不凍液を塗布することをさらに含むことができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、治療部位の真皮において血管収縮を誘発するのに十分な治療部位の温度範囲は、0℃~20℃であり得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、媒体は、-30℃~0℃の温度を有することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、本方法は、皮膚病変を特定することと、皮膚病変の1つ又は複数の特性を分析することとをさらに含むことができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の特性は、皮膚病変の場所、境界、サイズ、厚さ又は色素レベルであり得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、皮膚病変は色素性病変である。
【0023】
いくつかの実施形態では、皮膚病変は非色素性病変である。
【0024】
概して、皮膚病変を治療するための装置は、レーザ光を発生させる光源と、レーザ光を透過させる媒体であって、第1部分と第2部分とを含む媒体とを含むことができ、レーザ光は、第1部分及び第2部分を逐次透過し、第2部分は、治療部位に接触する接触面を含み、第2部分は、第1部分よりも高い熱伝導率を有する。
装置。
【0025】
いくつかの実施形態では、レーザ光は、約300nm~約2500nmの波長を有することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、レーザ光はパルス光であり得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、レーザ光は、0~3000J/cm2のフルエンスを有することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、第1部分及び第2部分は光学的に透明であり得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、第1部分は、石英、サファイア、水晶、ポリ(メタクリル酸メチル)又はポリスチレンを含むことができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、第2部分は、石英、サファイア、水晶、ポリ(メタクリル酸メチル)又はポリスチレンを含むことができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、本装置は、第1部分と第2部分との間に位置しているビームスプリッタをさらに含むことができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、第1部分と第2部分とは、密閉された空気によって分離することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、本装置は、媒体の温度を目標温度範囲まで低下させる冷却ユニットをさらに含むことができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、媒体の目標温度範囲は-30℃~0℃であり得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、冷却ユニットは、熱電冷却器、冷却空気、冷却ガス又は冷却液を含むことができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、冷却ユニットと媒体との間に配置されている金属ユニットをさらに備える。
【0037】
いくつかの実施形態では、金属ユニットは温度センサを含むことができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、温度センサは、媒体の温度を検出することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、温度センサは、冷却ユニットの温度を検出することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、温度センサは、治療部位の温度を検出することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、皮膚病変は色素性病変である。
【0042】
いくつかの実施形態では、皮膚病変は非色素性病変である。
【0043】
概して、皮膚病変を治療するためのシステムは、レーザ光を発生させる光源と、レーザ光を透過させる媒体であって、媒体が第1部分と第2部分とを含み、レーザ光が、第1部分及び第2部分を逐次透過し、第2部分が、治療部位に接触する接触面を含み、第2部分が、第1部分よりも高い熱伝導率を有する、媒体と、媒体の温度を目標温度範囲まで低下させる冷却ユニットと、第1部分と第2部分との間に位置しているビームスプリッタであって、皮膚病変の画像を画像取込装置に送るビームスプリッタと、画像取込装置に作動的に結合されて、皮膚病変の1つ又は複数の特性を分析するコントローラであって、1つ又は複数の特性に従って、皮膚病変を治療するためにレーザ光を誘導するコントローラとを含むことができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、レーザ光は、約300nm~約2500nmの波長を有することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、レーザ光はパルス光であり得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、レーザ光は、0~3000J/cm2のフルエンスを有することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、第1部分及び第2部分は光学的に透明であり得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、第1部分と第2部分とは、密閉された空気によって分離することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、第1部分は、石英、サファイア、水晶、ポリ(メタクリル酸メチル)又はポリスチレンを含むことができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、第2部分は、石英、サファイア、水晶、ポリ(メタクリル酸メチル)又はポリスチレンを含むことができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、媒体の目標温度範囲は-30℃~0℃であり得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、冷却ユニットは、熱電冷却器、冷却空気、冷却ガス又は冷却液を含むことができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、画像はリアルタイム画像であり得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の特性は、皮膚病変の場所、境界、サイズ、厚さ又は色素レベルであり得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、皮膚病変は色素性病変である。
【0056】
いくつかの実施形態では、皮膚病変は非色素性病変である。
【0057】
概して、皮膚病変を治療するためのシステムは、レーザ光を発生させる光源と、レーザ光を透過させる媒体であって、媒体が第1部分と第2部分とを含み、レーザ光が、第1部分及び第2部分を逐次透過し、第2部分が、治療部位に接触する接触面を含み、第2部分が、第1部分よりも高い熱伝導率を有する、媒体と、媒体の温度を目標温度範囲まで低下させる冷却ユニットとを含むことができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、レーザ光は、約300nm~約2500nmの波長を有することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、レーザ光はパルス光であり得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、レーザ光は、0~3000J/cm2のフルエンスを有することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、第1部分及び第2部分は光学的に透明であり得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、第1部分と第2部分とは、密閉された空気によって分離することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、第1部分は、石英、サファイア、水晶、ポリ(メタクリル酸メチル)又はポリスチレンを含むことができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、第2部分は、石英、サファイア、水晶、ポリ(メタクリル酸メチル)又はポリスチレンを含むことができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、媒体の目標温度範囲は-30℃~0℃であり得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、冷却ユニットは、熱電冷却器、冷却空気、冷却ガス又は冷却液を含むことができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、本システムは、冷却ユニットと媒体との間に配置されている金属ユニットをさらに含むことができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、金属ユニットは温度センサを含むことができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、温度センサは、媒体の温度を検出することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、コントローラが、温度センサに作動的に結合されて、媒体の温度を制御することができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、温度センサは、冷却ユニットの温度を検出することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、コントローラは、温度センサに作動的に結合されて、冷却ユニットの温度を制御することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、温度センサは、治療部位の温度を検出することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、コントローラは、温度センサに作動的に結合されて、治療部位の温度を制御することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、皮膚病変は色素性病変である。
【0076】
いくつかの実施形態では、皮膚病変は非色素性病変である。
【0077】
他の態様、実施形態及び特徴は、以下の説明、図面及び特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図面の簡単な説明
【
図1A】真皮内の正常な毛細血管係蹄における血流の概略図である。
【
図2】真皮血管収縮下での皮膚病変に対するレーザ治療の概略図である。
【
図3】真皮血管収縮下で皮膚病変を治療するための装置の実施形態である。
【
図4】真皮血管収縮下で皮膚病変を治療するための装置の実施形態である。
【
図5】真皮血管収縮下で皮膚病変を治療するための装置の実施形態である。
【
図6】真皮血管収縮下で皮膚病変を治療するための装置の実施形態である。
【
図7】病変認識アルゴリズムを用いる解析を含む、真皮血管収縮下での皮膚病変のレーザ治療の概略図である。
【
図8A】皮膚病変を治療する病変認識アルゴリズムの一例を示す。
【
図8B】皮膚病変を治療する病変認識アルゴリズムの一例を示す。
【
図8C】皮膚病変を治療する病変認識アルゴリズムの一例を示す。
【
図8D】皮膚病変を治療する病変認識アルゴリズムの一例を示す。
【
図8E】皮膚病変を治療する病変認識アルゴリズムの一例を示す。
【
図8F】皮膚病変を治療する病変認識アルゴリズムの一例を示す。
【
図9】病変認識アルゴリズムによるレーザ治療の図である。
【
図10A】従来のレーザ治療直後の治療部位の写真を示す。
【
図10B】本方法によるレーザ治療の直後の治療部位の写真を示す。
【
図11A】本方法によるレーザ治療の後の皮膚病変を含む表皮の除去を示す写真である。
【
図11B】レーザショットと基底膜上に存在する発色団とを示す図である。
【
図12A】本方法によるレーザ治療の前の写真を示す。
【
図12B】本方法によるレーザ治療の2週間後の写真を示す。
【
図12C】本方法によるレーザ治療の前の写真を示す。
【
図12D】本方法によるレーザ治療の2週間後の写真を示す。
【
図13A】従来のCO
2レーザ治療の前の写真を示す。
【
図13B】従来のCO
2レーザ治療の1ヶ月後の写真を示す。
【
図13C】従来のCO
2レーザ治療の2ヶ月後の写真を示す。
【
図13D】従来のCO
2レーザ治療の9ヶ月後の写真を示す。
【
図14】従来のレーザ治療と本方法によるレーザ治療との比較を示す。
【
図15】532nmのQスイッチNd:YAGレーザの場合の従来のレーザ治療と本方法によるレーザ治療との組織学的比較を示す。
【
図16】694nmのQスイッチルビーレーザの場合の従来のレーザ治療と本方法によるレーザ治療との組織学的比較を示す
【
図17】755nmのロングパルスアレキサンドライトレーザの場合の従来のレーザ治療と本方法によるレーザ治療との組織学的比較を示す
【発明を実施するための形態】
【0079】
詳細な説明
本明細書で用いる場合の「含む」という用語は、含む、を意味するがそれに限定されない。
【0080】
本明細書で用いる場合の「色素性病変」という用語は、任意の種類の色素を含む任意の病変を含む。色素は、天然(例えば、メラニン又はオキシヘモグロビン)又は人工(例えば、タトゥー色素)であり得る。
【0081】
色素性病変が所定の波長の光を吸収することを利用することにより、さまざまなレーザを使用して皮膚の色素性病変を治療することができる。言い換えれば、色素性病変は、レーザ光のその所定の波長に対する発色団である。通常、発色団の熱緩和時間(TRT)よりも短いパルス幅を有するレーザを使用して、色素性病変を治療することができ、それは、TRTが短いほど、高出力エネルギーで標的色素を選択的に破壊することにより周囲の皮膚組織に対する損傷を最小限にし、一方で発色団による光電子の吸収時間を最小限にし、それにより熱エネルギーへの変換と近隣の皮膚組織及び細胞への拡散を最小限にすることができるためである。しかしながら、レーザによって施される高出力エネルギーにより、必然的に炎症反応及び組織損傷が起こり、その後、創傷治癒過程を経ることになる。実際に、多くのレーザ皮膚治療モダリティは、皮膚再生を促進するために創傷治癒過程を利用する。しかしながら、レーザ治療が過剰な反応を招くと、望ましくない副作用、PLE、PIH及び瘢痕が発生する可能性がある。
【0082】
レーザ治療は、非色素沈着性皮膚病変にも使用することができる。メラニンを除き、水、オキシヘモグロビン及び皮脂腺等の皮膚の発色団の大部分は、大部分、真皮に存在する。目下、レーザ治療が真皮の病変を標的とする場合、あり得る表皮の火傷並びに周囲の真皮組織及び血管系の損傷を防止するように、フルエンス及びエネルギーレベルは十分低くなければならない。レーザに使用される既存の冷却装置があるが、それらは大部分、表皮の火傷を防止するように設計されており、組織の損傷及びさまざまな副作用を防止しながら十分なエネルギーで効果的であり効率的な治療を可能にするように、真皮を十分に冷却することはできない。これらの制限下で、コラーゲン、毛髪及び皮脂腺等の真皮の病変を標的とするには、既存のレーザによって送達されるエネルギーレベルは十分ではなく、複数回、長時間のレーザ治療セッションが必要になることが多い。
【0083】
レーザ治療後に組織損傷が起こると、炎症細胞が、真皮の毛細血管を介して損傷部位に移動し、損傷部位の周囲の細胞と相互作用し、炎症反応を引き起こすさまざまなサイトカインを分泌する。これらのサイトカインはまた、損傷した皮膚において新しい皮膚組織を生成する創傷治癒過程を引き起こす。サイトカインは、過剰な炎症反応をもたらす場合、新生血管の形成及び細胞外マトリックスの過増殖を促進し、メラノサイトを刺激して損傷部位に過剰な量のメラニンを産生する可能性がある。その結果、レーザ治療から、PLE、瘢痕及びPIH等の一般的な副作用が生じる可能性がある。場合により、これらは、創傷が治癒するに従って消える可能性がある一時的な現象である。しかしながら、重度の組織損傷の場合、副作用は極めて深刻であり、長時間続き、その結果、紅斑が長引き、望ましくない色素沈着が生じる可能性がある。
【0084】
皮膚病変に最も一般に使用されるレーザは、標的発色団と同様に血管系内のオキシヘモグロビンに吸収されやすい波長の光を使用する。オキシヘモグロビンによる高出力エネルギーの吸収は、毛細血管の出血(点状出血)に続き、皮膚浮腫及び紫斑を引き起こす可能性がある。レーザ光のフルエンスが高くなると、毛細血管の損傷も増加する。目下、レーザ治療によって引き起こされる痛み又は副作用を最小限にするために、局所麻酔クリーム、レーザ治療前後の処方薬及び/又はウェットドレッシング等が使用されているが、それらは効果が非常に限られている。これまで、従来のレーザ治療モダリティでは、PLE、PIH及び瘢痕等の副作用は避けられないと考えられ、副作用の予防よりも治療後管理に重点が置かれてきた。
【0085】
真皮は、その血管系が、皮膚科における多くのタイプの従来のレーザに対する発色団である、赤血球中のオキシヘモグロビンを含むため、レーザ光からの高出力エネルギーによって最も深刻に影響を受ける。真皮毛細血管は、高出力エネルギーの吸収によって損傷を受ける可能性があり、毛細血管を通って移動する炎症細胞は、炎症反応を引き起こすサイトカインを産生する可能性がある。炎症反応は、一旦開始すると、損傷部位にさらに大規模な炎症細胞の移動を誘発して、進行中の反応を増悪させる可能性がある。その結果、移動した炎症細胞による拡大及び持続性の炎症反応により、損傷部位における皮膚再生が遅れる可能性があり、それは、深刻なレベルのPLE、PIH及び瘢痕に関連することが最も多い。
【0086】
従来のレーザ治療の欠点を克服するために、真皮血管収縮を誘発して、体温を維持するように自律神経系の短い反射作用を引き起こすことができる。
図1Aは、真皮の正常な毛細血管係蹄における血流の概略図である。
図1Bは、真皮血管収縮下での血流の概略図である。反射作用及びそれに続く真皮血管収縮により、一時的に前毛細血管括約筋を収縮させ、括約筋の前の血管叢にのみ血流を分流させることができる(
図1B)。そうすることにより、主要な真皮毛細血管への血流を、短時間遮断することができる。真皮毛細血管において赤血球量が減少すると、レーザ光に反応する標的外の発色団(例えば、オキシヘモグロビン)が減少する。結果として、毛細血管に対する損傷を低減させ、それにより、損傷部位に移動する炎症細胞の量を減少させることができる。その結果、レーザ光に対する炎症反応及び副作用を著しく軽減させることができ、それにより、より迅速な創傷治癒及び皮膚再生が促進される。したがって、この方法は、「血管系救済レーザ手術(VSLS:Vasculature Salvage Laser Surgery)」と命名されている。
【0087】
真皮血管収縮は、レーザに作動的に結合された冷却装置を使用して皮膚温度を目標範囲まで低下させることによって、達成することができる。しかしながら、既存の冷却方法のいずれも、レーザ治療に関連する副作用を防止するように十分に真皮血管収縮を誘発するには十分でない。目下、レーザ用の冷却方法には、2つのタイプ、すなわち、接触型冷却及び非接触型冷却がある。接触型冷却の場合、皮膚は0℃以上の温度で固体媒体に接触する。冷却ガスが、温度を0℃以下まで低下させることができるが、それは、10~100ミリ秒程度の非常に短時間しか作動しない。これらの方法のうちのいずれも、真皮血管収縮を誘発するには十分ではない。さらに、主として、主目的が脱毛、血管病変、及び皮膚の引き締めを誘発する真皮加熱であるロングパルスレーザに使用される、動的冷却装置は、レーザショット前に数ミリ秒間、寒剤の冷却バーストを使用し、冷却バーストとレーザショットとの間に不整合がある場合、水疱及び瘢痕が形成される可能性がある。接触型冷却は、パルス持続時間が数ミリ秒範囲であるインテンスパルスライト(IPL:Intense Pulsed Light)に使用されているが、IPLは、レーザのような単一波長の光とは異なる、スペクトル光である。Qスイッチレーザについては、ナノ秒範囲の非常に短いパルス持続時間と比較的低いエネルギーレベルとにより、別個の冷却装置が使用されていない。しかしながら、別個の冷却がないことにより、レーザ応用のフルエンス及びエネルギーレベルが制限され、その結果、治療が効果のない非効率的なものとなり、深刻な副作用が生じ、転帰が不十分なものとなる。
【0088】
真皮血管収縮下でレーザ光が適用される場合、従来の方法と比較して、一度にはるかに高いエネルギーを印加することができる。例えば、3mmビームスポットサイズの532nmのQスイッチレーザの場合、レーザ製造業者により、通常、0.6~1.0J/cm2のフルエンス範囲が推奨されおり、臨床医により、0.6~0.8J/cm2のフルエンス範囲が最も一般的に使用されている。従来のレーザ治療法では、オキシヘモグロビンによる吸収が強すぎるため、より高いフルエンスでは主要毛細血管の破裂がもたらされる。これには、痛み、浮腫、点状出血、斑状出血及び重度のPIH等、深刻な副作用が伴う。しかしながら、治療される部位が、真皮血管収縮を誘発するのに十分な温度まで冷却されると、いかなる著しい副作用もなしに、一度に最大20倍のエネルギーを印加することができる。
【0089】
図2は、真皮血管収縮下での皮膚病変に対するレーザ治療の概略図である。いくつかの実施形態では、皮膚病変は、色素性皮膚病変であり得る。いくつかの他の実施形態では、皮膚病変は、非色素性皮膚病変であり得る。この方法により、レーザによって引き起こされる望ましくない副作用を最小限にしながら、レーザ光103を使用して皮膚102の皮膚病変101を治療することができる。本方法により、所望の治療効果を得ながら、治療部位120の真皮血管系を可能な限り保存することができる。治療部位120は、レーザ光の媒体に接触する皮膚表面と、レーザ光103が影響を与えるその皮膚表面の下のある体積の皮膚とを含む。レーザ治療中に治療部位120の毛細血管内の赤血球の量を一時的に減少させることにより、レーザ光103に反応する不要な発色団の量を減少させ、それにより毛細血管に対するレーザエネルギーの影響を最小限にすることができる。これは、治療部位120の温度を、治療部位120の真皮において血管収縮を誘発するのに十分な目標温度範囲に低下させ(
図2、B)、治療部位120の温度を目標温度範囲内に維持しながら皮膚病変にレーザ光103を適用する(
図2、C)ことによって達成することができる。いくつかの実施形態では、治療部位120を局所麻酔薬及びエピネフリン150で前処理して、さらなる血管収縮を促進することができる(
図2、A)。いくつかの他の実施形態では、血流を最小限にするように治療部位120を圧縮することができる。この方法により、皮膚病変を治療している間、真皮血管系に対する損傷を最小限にすることができ(
図2、D)、PLE、PIH及び瘢痕等の副作用を著しく低減させることができる(
図2、E)。いくつかの実施形態では、本方法は、皮膚病変を特定することと、皮膚病変の1つ又は複数の特性を分析することとをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の特性は、皮膚病変の場所、境界、サイズ、厚さ又は色素レベルである。
【0090】
図3に示すように、レーザの望ましくない副作用を最小限にしながら、レーザ光103を使用して皮膚102の皮膚病変101を治療するための装置100は、レーザ光103を発生させる光源(図示せず)と、レーザ光103を透過させる媒体104とを含むことができ、媒体104は、第1部分105及び第2部分106を含む。レーザ光103は、第1部分105及び第2部分106を逐次透過することができる。第2部分106は、治療部位120の表面に接触する接触面107を含むことができる。いくつかの実施形態では、第2部分106は、第1部分105よりも高い熱伝導率を有することができる。いくつかの実施形態にでは、装置100は、媒体104の温度を目標温度範囲まで低下させる冷却ユニット108を含むことができる。冷却ユニット108は、熱電冷却器、冷却空気、冷却ガス又は冷却液を含むことができる。いくつかの実施形態では、冷却液は冷却水であり得る。
【0091】
図4に示すように、装置200は、媒体104と冷却ユニット108との間に配置された金属ユニット109をさらに含むことができる。金属ユニット109は、冷却ユニット108によって冷却され、次いで媒体104を冷却することができる。金属ユニット109は、温度センサ(図示せず)をさらに含むことができる。温度センサは、冷却ユニット108の温度、媒体104の温度、及び/又は治療部位120の温度を検出することができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、レーザ光103は、パルス光であり得る。レーザ光は、長パルス光又は短パルス光であり得る。長パルス光又は短パルス光の典型的なパルス持続時間は、当業者には周知であるはずである。いくつかの実施形態では、レーザ光103は、約300nm~約2500nmの波長を有することができる。いくつかの実施形態では、レーザ光103の光源は、Qスイッチレーザであり得る。例えば、694nmのQスイッチルビーレーザ、755nmのQスイッチアレキサンドライトレーザ、又は532nm/1064nmのQスイッチNd:YAGレーザを使用することができる。他のいくつかの実施形態では、レーザ光103の光源は、Qスイッチレーザよりも短いパルス持続時間ではるかに高いエネルギーを送達するピコ秒領域レーザであり得る。いくつかの実施形態では、レーザ光103の光源は、308nm、511nm、532nm、578nm、755nm又は1064nmの波長を有するロングパルスレーザであり得る。いくつかの実施形態では、レーザ光の光源は、赤外線レーザ(例えば、1450nm等)、ツリウムレーザ(例えば、1927nm等)、又は1210nm、1728nm、1760nm、2306nm及び2346nm等の波長を含む他の任意のレーザであり得る。
【0093】
治療部位120の真皮において血管収縮を誘発するために、冷却ユニット108の温度は、-30℃~0℃、好ましくは-20℃~0℃であり得る。媒体104は、冷却ユニット108によって直接又は間接的に(例えば、金属ユニット109を介して)冷却されて、同様に、-30℃~0℃、好ましくは-20℃~0℃の温度に達することができる。媒体104の接触面107は、治療部位120の表面と接触して、治療部位120の温度を低下させることができる。真皮血管収縮を維持するために、冷却時間と冷却ユニット108の温度とを調整することにより、治療部位120の温度を、表面で0℃~20℃、好ましくは5℃~15℃に維持することができる。好ましい実施形態では、治療部位120の温度もまた、表面で5℃~15℃に維持される。
【0094】
治療部位120が、真皮血管収縮を誘発するのに十分な温度まで冷却されると、レーザ光103は、0~3000J/cm2で適用することができる。いくつかの実施形態において、レーザ光103は、0.5~3000J/cm2で適用することができる。いくつかの実施形態では、ロングパルスNd:YAGレーザを用いて、0~1000J/cm2を適用することができる。いくつかの実施形態では、黄色レーザ(例えば、511nm、578nm等)を用いて0~3000J/cm2を適用することができる。概して、Qスイッチレーザ又は本方法に適用可能な他の任意のレーザを用いて、0~100J/cm2を適用することができる。いくつかの実施形態では、レーザ光103は、0~5J/cm2で適用することができる。好ましい実施形態では、レーザ光103は、2~4J/cm2で適用することができる。
【0095】
媒体が-30℃~0℃の温度範囲まで冷却されると、周囲空気からの水が媒体の表面に凝縮して凍結するため、媒体に曇りが生じる可能性がある。これにより、レーザ光が散乱することになる可能性があり、それは、レーザ治療の効率及び安全性に影響を与える可能性がある。いくつかの実施形態では、媒体104を、各部分が他の部分と異なる熱伝導率を有する2つ以上の部分で作製することにより、曇りを防止することができる。治療部位120を効率的に冷却するために、皮膚と接触する部分は、最も高い熱伝導率を有する材料で作製することができる。いくつかの実施形態では、媒体104は、第1部分105及び第2部分106を含むことができ、第2部分106は、第1部分105よりも高い熱伝導率を有する。
【0096】
いくつかの実施形態では、第1部分105は、石英、サファイア、水晶、ポリ(メタクリル酸メチル)又はポリスチレンを含むことができる。いくつかの実施形態では、第2部分106は、石英、サファイア、水晶、ポリ(メタクリル酸メチル)又はポリスチレンを含むことができる。いくつかの実施形態では、第1部分は水晶を含むことができ、第2部分はサファイアを含むことができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、接触面107の曇りを防止するために、接触面107と治療部位120との間に不凍液140を塗布することができる。不凍液140は、凍結温度未満でも光を効果的に透過させるべきである。不凍液140は、接触面107上に又は治療部位120の表面上に塗布することができる。いくつかの実施形態では、不凍液140は、グリセリン及び/又は油を含むことができる。
【0098】
図5に示すように、システム300は、
図4に示すような装置200と、コントローラ112とを含むことができる。いくつかの実施形態では、システム300は、治療部位120の画像111を分類し、通過させ、及び/又は反射するために、第1部分105と第2部分106との間にビームスプリッタ110をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、コントローラ112は、ビームスプリッタ110によって得られた画像111を特定、処理及び分析することができる。ビームスプリッタ110は、皮膚病変101を含む画像を画像取込装置113に送ることができる。いくつかの実施形態では、画像は、リアルタイム画像であり得る。いくつかの実施形態では、コントローラ112は、皮膚病変101の特性を分析し、特性に従って皮膚病変101を治療するためにレーザ光103を誘導するように、画像取込装置113に作動的に結合することができる。皮膚病変の特性は、病変の場所、境界、サイズ、厚さ及び色素レベル(すなわち、色素密度又は濃度)を含むことができる。これらの特性に基づいて、ビームサイズ、周波数及びビームオーバーラップ率(beam-to-beam overlapping ratio)等、レーザ光103のさまざまなパラメータを決定することができる。
【0099】
いくつかの実施形態では、コントローラ112は、温度センサ(図示せず)への冷却ユニット108に作動的に結合することができる。温度センサは、冷却ユニット108の温度、媒体104の温度及び/又は治療部位120の温度を検出することができる。いくつかの実施形態では、コントローラ112は、冷却ユニット108の温度、媒体104の温度、及び/又は治療部位120の温度を制御するように、温度センサに作動的に結合することができる。
【0100】
図6に示すように、装置400は、密閉された空気130によって分離された第1部分105及び第2部分106を含むことができる。いくつかの実施形態では、第1部分105及び第2部分104と同様に金属部分109が、レーザ光103のための密閉された経路を構成することができる。いくつかの実施形態では、治療部位120の画像111を分類し、通過させ、及び/又は反射するために、第1部分105と第2部分106との間にビームスプリッタ110を配置することができる。いくつかの実施形態では、画像取込装置113及び/又はコントローラ112を含むことができる。
【0101】
図7は、病変認識アルゴリズムを用いる分析を含む、真皮血管収縮下の皮膚病変101に対するレーザ治療の概略図である。レーザの望ましくない副作用を最小限にしながら、レーザ光103を使用して皮膚102の皮膚病変101を治療する方法は、皮膚病変101の画像を取り込み、場所、境界、サイズ、厚さ及び色素レベル等、その特性について分析することを含む、病変認識アルゴリズムを用いる分析をさらに含むことができる(
図7、F)。
【0102】
図8A~8Fは、皮膚病変を治療するための病変認識アルゴリズムの一例を示す。いくつかの実施形態では、病変は、コントローラ112によって特定することができる(
図8A)。病変の特性を分析することができ、レーザ照射の境界を決定することができる(
図8B及び
図8C)。病変の特性に基づいて、各ショットに適切なビームサイズ、周波数及びビームオーバーラップ率等のさまざまなパラメータを計算し、それに応じて適用することができる(
図8D)。いくつかの実施形態では、追加のレーザショットは、当て損なったか、又はある程度のビームオーバーラップを必要とする任意の領域に、さらに適用することができる(
図8E)。いくつかの実施形態では、レーザ治療の後に、任意のレーザ後処理を行うことができる(
図8F)。これらのステップを詳細に記載したが、この実施形態は単なる一例であり、当業者は、本明細書に開示する趣旨及び範囲から逸脱することなく、さまざまな変更、置換、切替え又は順序、及び改変を行うことができることを理解するはずである。
【0103】
図9は、病変認識アルゴリズムを用いるレーザ治療の図である。病変認識アルゴリズムに基づき、各レーザショットの強度及び座標を精密に制御することができ、それにより、任意の所与の場所に対して単一ショットのレーザ光を適用して、皮膚病変を治療することができる。これにより、レーザ光の照射ムラ、照射過多又は照射不足の問題を解消することができる。
【0104】
本方法によるレーザ治療により、従来のレーザ治療法よりもはるかに高いレベルのレーザエネルギーでも、痛み、浮腫、点状出血及び斑状出血等、従来のレーザ治療の一般的な副作用を著しく低減させることができる。
図10Aは、0.6~1.0J/cm
2フルエンスのエネルギーを有する532nmのQスイッチレーザを用いる従来のレーザ治療の直後の色素性病変の写真を示す。左列の写真は、従来のレーザ治療の直後の治療部位を示し、治療部位の点状出血及び紫斑性皮膚浮腫を示す。右列の写真は、従来のレーザ治療の1分後(上)、5分後(中)及び30分後(下)における治療部位を示し、経時的に悪化する副作用を実証している。
図10Bは、3J/cm
2フルエンスのエネルギーを有する532nmのQスイッチレーザを用いる本方法によるレーザ治療の直後の治療部位の写真を示す。いかなる点状出血、出血又は皮膚浮腫も伴わず、即時の黒化のみが観察された。
【0105】
図11Aは、本方法によるレーザ治療の後の色素性病変を含む表皮の治療を示す写真である。例えば、532nmのQスイッチNd:YAGレーザを使用して、約2~4J/cm
2のフルエンスを色素性病変に適用して、色素性病変を治療することができる。このレベルのエネルギーを、治療部位の表面を0℃~20℃で冷却及び維持しながら、色素性病変に単一パスで適用すると、
図11Aに示すように、治療の約2週間後に色素性病変の表皮のみが剥離される。真皮の損傷は観察されない。この方法は、組織を実際に切除せずに、従来の切除型(ablative)レーザ手術の代わりとして使用することができ、それにより、PLE、PIH及び瘢痕等の深刻な副作用を防止することができる。532nmのQスイッチNd:YAGレーザの場合の皮膚の主要な発色団は、メラニン及びオキシヘモグロビンであるため、オキシヘモグロビンが真皮血管収縮によって治療部位から大部分除去されると、表皮と真皮との間の基底膜に大部分存在する唯一残っている発色団のメラニンが、治療部位に印加されたエネルギーの大部分を吸収することができる(
図11B)。結果として、真皮に損傷を与えることなく、色素性病変を含む表皮を治療することができ、これにより、従来の切除型レーザ手術と比較して、はるかに迅速な回復が可能となる。
【0106】
本方法によるレーザ治療により、従来のレーザ治療法よりもはるかに良好な長期予後をもたらすことができる。
図12A~12Dは、本方法によるレーザ治療の前及び2週間後の写真を示す。本方法による治療前(
図12A及び12C)及び2週間後(
図12B及び12D)の色素性病変を有する2人の患者の写真を示す。いずれの場合も、PIH又はPLEは観察されず、完全な回復は、各患者について、治療の約2週間後にのみ観察された。
図13A~
図13Dは、治療前(
図13A)、従来の切除型CO
2レーザ治療の1ヶ月後(
図13B)、2ヶ月後(
図13C)及び9ヶ月後(
図13D)の色素性病変の写真を示す。著しいレベルのPLE及びPIHは、治療の少なくとも2ヶ月後までに観察され(
図13B及び13C)、PIHは、治療の9ヶ月後にも依然として残っていた(
図13D)。
【0107】
非限定的な例として、以下の表は、表皮及び/又は真皮の色素性病変に対する従来のレーザ治療と本方法によるレーザ治療(「VSLS」)との典型的なフルエンス範囲の比較を示す。
【0108】
【表1】
図14は、532nmのQスイッチNd:YAGレーザ(Qx-max、3mmレーザスポットサイズ、Fotona Inc.、スロベニア)、694nmのQスイッチルビーレーザ(Sinon-I、3mmレーザスポットサイズ、Alma Inc.、ドイツ)、及び755nmのロングパルスアレキサンドライトレーザ(Pento 755nm、3mmレーザスポットサイズ、NSON、韓国)に対する、従来の方法と本方法との例示的な比較をそれぞれ示す。532C、694C及び755Cと表記した行は、それぞれ532nm、694nm及び755nmのレーザを用いる従来の方法による対照治療スポットを表す。532V、694V及び755Vと表記した行は、それぞれ532nm、694nm及び755nmのレーザを用いる本方法による治療スポットを表す。列D0(0日目)は、各治療の直後に組織学的検査のために生検が行われた治療スポットを示す。列D1、D2、D3及びD7は、それぞれの治療の1日後、2日後、3日後及び7日後に生検が行われた治療スポットを示す。D21スポット(処理の21日後)は生検が行われなかった。
【0109】
3J/cm
2の532nmのQスイッチNd:YAGレーザの場合、0日目及び1日目に、従来の方法と本方法の両方により、表皮及び真皮の血管系に損傷がもたらされた。2日目には、従来の治療方法により、表皮と真皮とが剥離し、真皮に著しい損傷があった。対照的に、本方法では、真皮の血管系に損傷をもたらすことなく、表皮及び真皮の両方が非常に迅速に回復した。
図15は、従来の方法(左列)と本方法(右列)との場合の532nmのQスイッチNd:YAGレーザの治療スポットの組織学的比較を示す。
【0110】
9J/cm
2の694nmのQスイッチルビーレーザの場合、結果は、532nmのNd:YAGレーザと同様であった。
図16は、従来の方法(左列)と本方法(右列)との場合の694nmのQスイッチルビーレーザの治療スポットの組織学的比較を示す。
【0111】
40J/cm
2の755nmのロングパルスアレキサンドライトレーザの場合、真皮の回復は、本方法を用いた場合、従来の方法と比較して3日目からはるかに迅速であった。
図17は、従来の方法(左列)と本方法(右列)との場合の755nmのロングパルスレーザの治療スポットの組織学的比較を示す。
【0112】
本明細書に開示する方法及び装置を使用して、脂漏性角化症、肝斑、そばかす、日光黒子、色素性母斑及び真皮メラノサイトーシスを含む、さまざまな色素性皮膚病変を治療することができる。これらの方法及び装置を使用して、レーザの波長、パルス幅、並びに他のパラメータ及びタイプを変更することにより、太田母斑、先天性色素性母斑、ベッカー母斑、刺青除去、レーザ脱毛、皮脂腺、並びに他の血管の色素性皮膚病変及び良性皮膚腫瘍も治療することができる。これらの方法及び装置を使用して、ウイルス性いぼ、光線角化症、光線性口唇炎、ボーエン病、ボーエン様丘疹症、表在性基底細胞がん、上皮内扁平上皮がん、微小浸潤性扁平上皮がん及び乳房外パジェット病を含む表皮由来の非がん性、前がん性病変及び非黒色腫皮膚がんを含む他の任意の皮膚病変も治療することができる。
【0113】
他の実施形態は、以下の請求項の範囲内にある。