(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】電子部品包装用カバーテープ
(51)【国際特許分類】
B65D 85/86 20060101AFI20250708BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20250708BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20250708BHJP
【FI】
B65D85/86 300
B32B27/18 D
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2020192491
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2023-10-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】上村 祥司
(72)【発明者】
【氏名】山口 啓太
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-179911(JP,A)
【文献】特開2017-109753(JP,A)
【文献】特開2019-172281(JP,A)
【文献】国際公開第2016/024529(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/86
B32B 27/18
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
中間層と、
シーラント層と、
をこの順に有する電子部品包装用カバーテープであって、
前記シーラント層が接着樹脂および帯電防止剤を含み、
前記帯電防止剤が、
(A)リンドープ錫
(B)カーボンナノチューブ
(C)ポリチオフェン又はポリチオフェン誘導体
からなる群から選択される1種または2種以上を含み、
以下<ピール強度の測定>により測定されるポリスチレン製フィルムに対するピール強度が、0.3N以上0.9N以下であり、
当該電子部品包装用カバーテープ全体を対象として測定されるアンチモン含有量が、当該電子部品包装用カバーテープ全体に対して0ppm以上150ppm以下であ
り、
前記シーラント層の厚さが0.02μm以上15μm以下であり、
前記中間層の厚さが15μm以上50μm以下である、電子部品包装用カバーテープ。
<ピール強度の測定>
当該電子部品包装用カバーテープを幅5.5mmの寸法にして、当該カバーテープのシーラント層側と、幅8mmの寸法の、凹凸面の平均表面粗さ(Ra)が0.25μmであるポリスチレン製フィルムの前記凹凸面側とを合わせ、片刃が幅0.5mm、長さ28mmの寸法の二本刃アイロンを用いて、シール温度160℃、荷重5kgf、シール時間60ミリ秒間、キャリアテープ送りピッチ4mmの条件でヒートシールした場合の、前記ポリスチレン製フィルムに対する当該電子部品包装用カバーテープのピール強度を、剥離速度300mm/min、測定温度25℃、剥離角度170°の条件にて測定する。
【請求項2】
請求項1に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
25℃、50%RHで測定した前記基材層の表面における表面抵抗値が1.0×10
13Ω以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
25℃、50%RHで測定した前記シーラント層の表面における表面抵抗値が1.0×10
3Ω以上1.0×10
12Ω以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
当該電子部品包装用カバーテープの前記ポリスチレン製フィルムに対する170°ピール強度をP1とし、前記電子部品包装用カバーテープを40℃90%RHに14日間置いた後の前記<ピール強度の測定>により測定されるポリスチレン製フィルムに対する170°ピール強度をP2とした場合の、(P2/P1)×100の値が50%以上150%以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
以下の手順(a)~(e)により25℃、50%RHで測定した樹脂ペレットの表面における摩擦帯電量が0.0nC以上1.0nC以下である、電子部品包装用カバーテープ。
(a)当該電子部品包装用カバーテープを幅25mm、長さ200mmの寸法となるようにカットし、前記シーラント層の表面が内側となるように、長さ方向に半分に折り曲げ、両サイドをテープで留めることにより、幅25mm、長さ100mmの袋を作成する。
(b)シリカ85質量%、エポキシ樹脂15質量%からなり、寸法3mm×1.5mm×1mmの樹脂ペレットを準備する。
(c)前記袋と前記樹脂ペレットを除電した後、前記樹脂ペレット5個を前記袋内に入れ、開口部をテープで留め、密封する。
(d)前記(c)により密封した前記樹脂ペレット入り前記袋を、ボルテックス・ミキサーに固定し、600rpm、5分間の条件で振動させる。
(e)前記袋の内部から前記樹脂ペレット5個を取り出した後、すべてファラデーカップへ移し、ナノクーロンメーターを用いて、25℃、50%RH条件にて、前記樹脂ペレットの帯電量を測定する。その測定値の絶対値を摩擦帯電量とする。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
JIS K7361-1(1997)に準拠した、光源D65で測定される全光線透過率が70%以上95%以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
JIS K7136(2000)に準拠した、光源D65で測定される外部ヘイズが5%以上50%以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記(C)ポリチオフェン又はポリチオフェン誘導体が、ポリ3,4-エチレンジオキシチオフェン又はその誘導体である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記シーラント層が、ポリアクリル酸誘導体、スチレン系ポリマーから選択される1種または2種を含む、電子部品包装用カバーテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品包装用カバーテープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トランジスタ、ダイオード、コンデンサ、圧電素子レジスタ等の電子部品は、電子機器の製造現場において、当該電子部品を収納することが可能なポケットが連続的に形成されたキャリアテープと、上記キャリアテープにシールするカバーテープとからなる包装体に収容して熱シール処理を施した後、紙製或いはプラスチック製のリールに巻かれた状態で、電子回路基板等に表面実装を行う作業領域まで搬送されている。そして、かかる電子部品は、上述した作業領域内で上記包装体のカバーテープを剥離した後、キャリアテープに形成された上記ポケットから取り出され、電子回路基板等に表面実装されることとなる。上記電子部品については、近年の電子機器の小型化に伴って、さらなる小型化、高度実装化が要求されている。そのため、近年の電子部品は、これまで以上に静電気による影響を受けやすくなってきている傾向にある。
【0003】
こうした事情に鑑みて、近年、電子部品を搬送するために使用するカバーテープについても、後述する種々の特性を向上させることが要求されてきた。
第1にカバーテープに要求される特性は、キャリアテープに対する十分な接着強度と、実装工程においてキャリアテープから首尾よく剥離される剥離性のバランスに優れることである。カバーテープがキャリアテープから剥離される工程において、キャリアテープからカバーテープを剥離するために必要な強度である剥離強度が高すぎると、カバーテープが剥離される際にキャリアテープが振動し、電子部品が格納ポケットから飛び出してしまう現象が生じる。一方、キャリアテープとカバーテープとの接着強度が低いと、パッケージの輸送中に、カバーテープがはがれ、パッキングされた電子部品が落下する場合がある。
第2にカバーテープに要求される特性は、搬送中にカバーテープと電子部品とが摩擦することにより生じる静電気、キャリアテープからカバーテープを剥離する際に生じる静電気、付着した埃や内容物から発生する静電気等により、包装体内に収容している電子部品が故障してしまうこと(静電破壊されること)を抑制できる程度に必要な帯電防止性である。特に、カバーテープの帯電防止性を向上させる技術については、搬送中にカバーテープと電子部品とが摩擦することにより生じる静電気やキャリアテープからカバーテープを剥離する際に生じる静電気により受ける影響を抑制するという観点において、これまでに種々の検討がなされてきた。
【0004】
たとえば特許文献1には、アンチモンをドーピングした酸化錫の針状粒子を帯電防止ヒートシール層に使用した電子部品包装用カバーテープが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記背景技術の項に前述したように、従来のカバーテープにおいても、上述した特性を向上させることについては、種々検討されてきた。しかしながら、良好な帯電防止剤として使用されてきたアンチモンは、近年、環境保護の観点から、使用の低減が望まれている。
上記事情に鑑み、本発明者は、アンチモンを低減させた場合において、キャリアテープとカバーテープを剥離する際の接着性と剥離性のバランスが良好であり、かつ、剥離時の静電気の発生を抑制することのできる電子部品包装用カバーテープの開発に取り組んできた。
【0007】
本発明は、アンチモンを低減させた場合において、キャリアテープに対する接着性と剥離性のバランスに優れ、キャリアテープの剥離に伴う帯電防止性に優れた電子部品包装用カバーテープを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者はさらに検討したところ、電子部品包装用カバーテープのシーラント層に含まれる帯電防止剤として、(A)リンドープ錫、(B)カーボンナノチューブ、または(C)ポリチオフェン又はポリチオフェン誘導体からなる群から選択される1種または2種以上を含むことにより、アンチモンを低減させた場合において、キャリアテープに対する接着性と剥離性のバランスが良好であり、剥離に伴う静電気の発生を抑制できる電子部品包装用カバーテープが実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
基材層と、
中間層と、
シーラント層と、
をこの順に有する電子部品包装用カバーテープであって、
上記シーラント層が接着樹脂および帯電防止剤を含み、
上記帯電防止剤が、
(A)リンドープ錫
(B)カーボンナノチューブ
(C)ポリチオフェン又はポリチオフェン誘導体
からなる群から選択される1種または2種以上を含み、
以下<ピール強度の測定>により測定されるポリスチレン製フィルムに対するピール強度が、0.3N以上0.9N以下であり、
当該電子部品包装用カバーテープ全体を対象として測定されるアンチモン含有量が、当該電子部品包装用カバーテープ全体に対して0ppm以上150ppm以下である、電子部品包装用カバーテープ。
<ピール強度の測定>
当該電子部品包装用カバーテープを幅5.5mmの寸法にして、当該カバーテープのシーラント層側と、幅8mmの寸法の、凹凸面の平均表面粗さ(Ra)が0.25μmであるポリスチレン製フィルムの上記凹凸面側とを合わせ、片刃が幅0.5mm、長さ28mmの寸法の二本刃アイロンを用いて、シール温度160℃、荷重5kgf、シール時間60ミリ秒間、キャリアテープ送りピッチ4mmの条件でヒートシールした場合の、上記ポリスチレン製フィルムに対する当該電子部品包装用カバーテープのピール強度を、剥離速度300mm/min、測定温度25℃、剥離角度170°の条件にて測定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アンチモンを低減させた場合において、キャリアテープに対する接着性と剥離性のバランスに優れ、剥離に伴う静電気の発生を抑制できる電子部品包装用カバーテープを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の電子部品包装用カバーテープの一例を、模式的に表した図である。
【
図2】電子部品包装用カバーテープをキャリアテープに接着(ヒートシール)した状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
【0013】
<電子部品包装用カバーテープ>
図1は、本実施形態の電子部品包装用カバーテープの一例を、模式的に表したものである。
本実施形態の電子部品包装用カバーテープは、基材層1と、中間層2と、シーラント層3とを、この順番で備える電子部品包装用カバーテープである。
電子部品包装用カバーテープ10は、通常、シーラント層3がキャリアテープと接着される。換言すると、通常、
図1における上面側がキャリアテープと接着される。
また、各層は複数の層から構成されていてもよい。
【0014】
<その他の層>
電子部品包装用カバーテープ10は、各層の間に接着層(図示せず)を設けてもよい。この接着層によれば、各層の間の接着性を向上させることができる。
接着層を形成する材料としては、ウレタン系のドライラミネート用接着樹脂あるいはアンカーコート用接着樹脂が挙げられ、一般に、ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオールなどのポリエステル組成物とイソシアネート化合物とを組み合わせたものが挙げられる。
また、接着層以外の層を設けていてもよく、例えばフィルム全体の強度を向上させるための層、水蒸気バリア層等を設けていてもよい。
【0015】
<基材層>
基材層1は、電子部品包装用カバーテープ10の加工時、キャリアテープへのヒートシール時、使用時などに加わる外力に耐えうる機械的強度およびヒートシール時の熱に耐えうる耐熱性があれば、種々の材料を加工したフィルムを用いることができる。
【0016】
基材層1を構成する材料の具体例としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリメタアクリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂などが挙げられる。この中でも、基材層1を構成する材料としては、ポリエステル系樹脂およびポリオレフィン系樹脂が好ましく、機械的強度を向上させることができるポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンが特に好ましい。また、基材層1を構成する材料としてポリアミド系樹脂を選択する場合、機械的強度、柔軟性を向上させることができるナイロンを用いることが好ましい。
【0017】
基材層1を形成するために使用するフィルムの形態としては、延伸フィルムであってもよいし、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよいが、電子部品包装用カバーテープの機械的強度を向上させる観点から、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであることが好ましい。
【0018】
基材層1は、上述した材料を含む単層フィルムにより形成してもよいし、上述した材料を各層に含む多層フィルムを用いて形成してもよい。
基材層1は、キャリアテープの剥離に伴い発生する帯電量を低減させる観点から、帯電防止剤を含んでもよいし、基材層1における中間層2が設けられた面とは反対側の面に、基材層のうちの一層として帯電防止層を設けても良い。かかる帯電防止剤を含む基材層1または帯電防止層の表面は、キャリアテープと電子部品包装用カバーテープ10とからなる包装体に電子部品を収容して搬送する際に、複数の包装体を積み重ねて搬送する場合において、上に積み重ねられた包装体のキャリアテープの底面と接触する可能性を有している。
【0019】
基材層1の厚さは、例えば、6μm以上、好ましくは7μm以上、さらに好ましくは8μm以上であることが好ましい。また、基材層1の厚さは、例えば、35μm以下、好ましくは33μm以下、さらに好ましくは30μm以下であることが好ましい。基材層1の厚さが上記上限値以下であれば、電子部品包装用カバーテープの剛性が高くなりすぎず、シール後のキャリアテープに対して捻り応力がかかったとしても、電子部品包装用カバーテープ10がキャリアテープの変形に追従し、剥離してしまう可能性を低減することができる。また、基材層1の厚さが上記下限値以上であれば、電子部品包装用カバーテープ10の機械的強度が好適なものとなり、キャリアテープから電子部品包装用カバーテープ10を高速で剥離する場合であっても、電子部品包装用カバーテープ10が破断してしまう可能性を低減することができる。
なお、基材層1は第一基材層と第二基材層の二層構造、あるいはさらなる層を有する三層以上の構造になっていてもよい。この場合、材質は例えば基材層1で使用のものを使用することができる。また、厚みは第一基材層、第二基材層等の合計の厚みが「基材層1の厚さ」になることが好ましい。
【0020】
<中間層>
中間層2は、本実施形態に係る電子部品包装用カバーテープ10にクッション性を付与する目的で設ける層である。これにより、シール時の電子部品包装用カバーテープ10とキャリアテープの密着性を向上させることができる。
【0021】
中間層2は、電子部品包装用カバーテープ10にクッション性を付与できれば、材料は特に限定されないが、例えば、ポリアクリル酸誘導体、ポリアクリル酸エステル誘導体、ポリ酢酸ビニル誘導体、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、環状オレフィン樹脂のなかから選ばれる1種または2種以上およびこれらの共重合体が挙げられる。これらの中でも、オレフィン系樹脂が好ましく、より好ましくはエチレン系樹脂を好適に用いることができる。
【0022】
中間層2の厚さは、シール時の電子部品包装用カバーテープ10とキャリアテープとの密着性を向上させる観点から、典型的には10μm以上50μm以下、好ましくは15μm以上45μm以下である。
【0023】
<シーラント層>
シーラント層3は、接着樹脂および帯電防止剤を含み、中間層2の基材層1に接する面とは反対側の面側に設けられる層であり、電子部品包装用カバーテープ10をキャリアテープにシール(例えば、ヒートシール)した際に、キャリアテープと接触する層である。
シーラント層3はヒートシール性を有し、キャリアテープに対して接着させられるものであり、使用時に容易に剥がすことのできる易剥離性を示すものである。
シーラント層3は、樹脂中に、帯電防止剤が溶解または分散している。すなわち、接着樹脂と帯電防止剤との間に良好な相溶性が得られ、マトリックス樹脂としての接着樹脂中に、帯電防止剤がシーラント層3全体に亘り均一に分散されている。
なお、シーラント層3は中間層2と接する面とは反対側に接着樹脂層、帯電防止層の順に積層したものでもよい。
【0024】
シーラント層3の上記接着樹脂の材料の具体例としては、ポリアクリル酸誘導体、ポリアクリル酸エステル誘導体、スチレン系ポリマー、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂のなかから選ばれる1種または2種以上およびこれらの共重合体などが挙げられる。この中でも、帯電防止剤を良好に溶解または分散させる観点から、ポリアクリル酸誘導体、スチレン系ポリマーが好ましい。
【0025】
シーラント層3は、上記帯電防止剤として、(A)リンドープ錫、(B)カーボンナノチューブ、(C)ポリチオフェン又はポリチオフェン誘導体からなる群から選択される1種または2種以上を含むことが好ましい。これにより、シーラント層3の表面抵抗値を低下させて剥離に伴う静電気の発生を抑制し、接着性を保持することができ、またシーラント層3に用いられる上記接着樹脂に対する良好な相溶性を得ることができる。
また、帯電防止剤を(A)リンドープ錫または(C)ポリチオフェン又はポリチオフェン誘導体とすることで、剥離時の静電気の抑制という効果を、より確実に得られる。
【0026】
上記(C)ポリチオフェンまたはポリチオフェンの誘導体としては、例えば、ポリチオフェン、ポリ(3,4)-エチレンジオキシチオフェン、ポリ(3-チオフェン-β-エタンスルホン酸)が挙げられる。この中でも、さらに良好な帯電防止性とシール性を保持する観点から、ポリ3,4-エチレンジオキシチオフェン又はその誘導体であることが好ましい。
【0027】
シーラント層3は、その他添加剤として、帯電防止剤の分散性を良好とするための分散剤、シリカゾル、レベリング剤、導電助剤等を含んでもよい。
【0028】
シーラント層3の厚さは、シール作業と剥離作業とを好適に行う観点から、典型的には0.02μm以上20μm以下が好ましく、0.03μm以上15μm以下がより好ましい。
【0029】
本実施形態に係る電子部品包装用カバーテープの厚さは、フィルム強度担保の観点から、40μm以上65μm以下であることが好ましく、45μm以上60μm以下であることがより好ましい。
【0030】
以下、本実施形態に係る電子部品包装用カバーテープの特性について説明する。
【0031】
本実施形態に係る電子部品包装用カバーテープにおいて、電子部品包装用カバーテープ全体を対象として測定されるアンチモン含有量の上限値は、電子部品包装用カバーテープ全体に対して150ppm以下、好ましくは140ppm以下、さらに好ましくは130ppm以下である。本実施形態に係る電子部品包装用カバーテープ全体を対象として測定されるアンチモン含有量の下限値は、特に制限されないが、0ppm以上である。電子部品包装用カバーテープ全体を対象として測定されるアンチモン含有量を上記範囲内とすることで、アンチモン低減の要望に対応することが可能となる。
【0032】
本実施形態に係る電子部品包装用カバーテープにおいて、当該電子部品包装用カバーテープを幅5.5mmの寸法にして、当該電子部品包装用カバーテープのシーラント層側と、幅8mmの寸法の、凹凸面の平均表面粗さ(Ra)が0.25μmであるポリスチレン製フィルムの上記凹凸面側とを合わせ、片刃が幅0.5mm、長さ28mmの寸法の二本刃アイロンを用いて、シール温度160℃、荷重5kgf、シール時間60ミリ秒間、キャリアテープ送りピッチ4mmの条件でヒートシールした場合の、上記ポリスチレン製フィルムに対する上記電子部品包装用カバーテープの、剥離速度300mm/min、測定温度25℃、剥離角度170°の条件におけるピール強度の下限値は、0.3N以上であり、好ましくは0.35N以上であり、さらに好ましくは0.4N以上である。また上記ポリスチレン製フィルムに対する上記電子部品包装用カバーテープの170°ピール強度の上限値は、0.9N以下であり、好ましくは0.8N以下であり、さらに好ましくは0.7N以下である。上記ポリスチレン製フィルムに対する上記電子部品包装用カバーテープの170°ピール強度を上記範囲内とすることで、キャリアテープに対する接着性と剥離性のバランスが良好なものとすることができる。
【0033】
また本実施形態に係る電子部品包装用カバーテープにおいて、上記ポリスチレン製フィルムに対する上記電子部品包装用カバーテープの170°ピール強度をP1とし、上記電子部品包装用カバーテープを40℃90%RHに14日間置いた後に、P1と同様の方法で測定したポリスチレン製フィルムに対する当該電子部品包装用カバーテープの170°ピール強度をP2とした場合の、(P2/P1)×100の値は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上であり、好ましくは150%以下、より好ましくは140%以下、さらに好ましくは130%以下である。(P2/P1)×100の値を上記範囲内とすることで、輸送時や保管中の環境変化を経た後も、安定した剥離強度を維持できる。
【0034】
本実施形態に係る電子部品包装用カバーテープの、25℃50%RHで測定した上記基材層の表面における表面抵抗値は、好ましくは1.0×103Ω以上であり、より好ましくは1.0×104Ω以上であり、さらに好ましくは1.0×105Ω以上であり、好ましくは1.0×1013Ω以下であり、より好ましくは1.0×1012Ω以下であり、さらに好ましくは1.0×1011Ω以下である。電子部品包装用カバーテープの上記基材層の表面抵抗値を上記範囲内とすることで、種々の要因により発生した静電気を効率よく外部に放出させることができる。
なお、上記基材層における表面とは、上記電子部品包装用カバーテープにおける基材層の露出面側を指す(つまり、上記基材層における上記中間層に接する面ではない面を指す)。
【0035】
本実施形態に係る電子部品包装用カバーテープの、25℃、50%RHで測定した上記シーラント層の表面における表面抵抗値は、好ましくは1.0×103Ω以上であり、より好ましくは1.0×104Ω以上であり、さらに好ましくは1.0×105Ω以上であり、好ましくは1.0×1012Ω以下であり、より好ましくは1.0×1011Ω以下であり、さらに好ましくは1.0×1010Ω以下である。電子部品包装用カバーテープの25℃、50%RHで測定した上記シーラント層の表面における表面抵抗値を上記範囲内とすることで、キャリアテープの剥離に伴う帯電防止性により一層優れた電子部品包装用カバーテープとすることができる。
なお、上記シーラント層における表面とは、上記電子部品包装用カバーテープにおけるシーラント層の露出面側を指す(つまり、上記シーラント層における上記中間層に接する面ではない面を指す)。
【0036】
本実施形態に係る電子部品包装用カバーテープにおいて、25℃、50%RHの条件下、当該カバーテープを用いて作成した袋に樹脂ペレットを入れ、振動させた後、当該樹脂ペレットの表面における摩擦帯電量を所定の方法で測定した。当該樹脂ペレットの表面における摩擦帯電量の絶対値の下限値は、好ましくは0.0nC以上である。また好ましくは、当該樹脂ペレットの表面における摩擦帯電量の絶対値の上限値は、1.0nC以下であり、より好ましくは0.8nC以下であり、さらに好ましくは0.6nC以下である。こうすることで、キャリアテープの剥離に伴う帯電防止性をより一層向上させることができる。具体的には、摩擦帯電量の値が、上記数値範囲を満たす場合には、電子機器の製造現場における作業環境が湿度30%RH程度の乾燥状態にある場合においても、搬送中にカバーテープと電子部品とが摩擦することにより発生した静電気、キャリアテープからカバーテープを剥離する際に発生した静電気、付着した埃や内容物から発生した静電気等に対する帯電特性に優れたカバーテープを実現することができる。
なお、摩擦帯電量の測定に用いる樹脂ペレットは、シリカ85質量%、エポキシ樹脂15質量%からなり、寸法3mm×1.5mm×1mmのものを用いる。シリカとしては、平均粒径1~10μmのものと、平均粒径0.5~1μmのものとを混合して用いることができる。またエポキシ樹脂としては、フェノールノボラック系の樹脂を用いることができる。なお、シリカとエポキシ樹脂の配合が上記の配合であれば、エポキシ樹脂の種類やシリカの平均粒径が多少異なっても、摩擦帯電量の結果には大きく影響しない。
【0037】
本実施形態に係る電子部品包装用カバーテープの、JIS K7361-1(1997)に準拠した、光源D65で測定した際の全光線透過率は、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、好ましくは95%以下、より好ましくは94%以下、さらに好ましくは93%以下である。こうすることで、電子部品包装用カバーテープ10とキャリアテープとからなる包装体100において、上記キャリアテープのポケット内に電子部品が正しく収容されているか否かを検査することができる程度の透明性を付与することができる。即ち、電子部品包装用カバーテープの全光線透過率を上記下限値以上とすることにより、電子部品包装用カバーテープ10とキャリアテープとからなる包装体100の内部に収容した電子部品を、当該包装体100の外部から視認して確認することが可能となる。
【0038】
本実施形態に係る電子部品包装用カバーテープの、JIS K7136(2000)に準拠した、光源D65で測定される外部ヘイズは、好ましくは5%以上、より好ましくは6%以上、最も好ましくは7%以上であり、好ましくは50%以下、より好ましくは45%以下、最も好ましくは40%以下である。電子部品包装用カバーテープの外部ヘイズを上記上限値以下とすることにより、電子部品包装用カバーテープ10とキャリアテープとからなる包装体において、上記キャリアテープのポケット内に電子部品が正しく収容されているか否かを検査することができる程度の透明性を付与することができる。
【0039】
本実施形態では、たとえば電子部品包装用カバーテープを構成する基材層1、中間層2、シーラント層3に含まれる各成分の種類や配合量、シーラント層形成用塗布液の調製方法や電子部品包装用カバーテープの作製方法等の条件を適切に選択することにより、上記ポリスチレン製フィルムに対する170°ピール強度、電子部品包装用カバーテープ全体に対するアンチモン含有量を制御することが可能となる。これにより、アンチモンを低減させた電子部品包装用カバーテープにおいても、キャリアテープに対する接着性と剥離性のバランスに優れ、剥離に伴う静電気の発生を抑制することができる。
また本実施形態では、上記条件を適切に選択することにより、上記ポリスチレン製フィルムに対する170°ピール強度をP1とし、上記電子部品包装用カバーテープを40℃90%RHに14日間置いた後に測定される上記ポリスチレン製フィルムに対する170°ピール強度P2としたときの(P2/P1)×100の値、基材層1の表面抵抗値、シーラント層3の表面抵抗値、摩擦帯電量、全光線透過率および外部ヘイズを制御することが可能となり、アンチモンを低減させた電子部品包装用カバーテープにおいて、環境変化を経ても剥離強度を安定なものとすることができ、剥離時の静電気の抑制という効果をより確実なものとし、さらに外部から電子部品を視認することができる程度の透明性を付与することができる。
【0040】
<電子部品包装用カバーテープの製造方法>
本実施形態に係る電子部品包装用カバーテープの製造方法の一例について説明する。
まず、基材層1の表面に中間層2を形成する。中間層2の形成は、例えば、押出ラミネート法やドライラミネート法により形成できる。次に、中間層2の上に、所定の材料を、コーティング法により塗布し乾燥させる、または押出ラミネート法により積層することによって、シーラント層3を形成する。
【0041】
また上述した接着層を形成する場合には、従来公知の塗布方法によって、対象となる層の面に接着層の材料を塗布すればよい。
【0042】
本実施形態に係る電子部品包装用カバーテープは、キャリアテープに貼りつけ包装体として用いることができる。即ち、電子部品を収納する複数の収納部を有するキャリアテープと、上記収納部に収納された電子部品と、上記収納部を覆うように配置された、上記電子部品包装用カバーテープと、を備える包装体とすることが好ましい。
このような包装体であれば、静電気の発生を抑制することができ、収納部に収納された電子部品をより確実に静電気から保護することができる。
【0043】
<電子部品包装体>
上記で説明した本実施形態の電子部品包装用カバーテープと、電子部品が凹部に収容されたキャリアテープとから、電子部品包装体を得ることができる。これについて
図2を参照しつつ説明する。
【0044】
図2において、電子部品包装用カバーテープ10は、電子部品の形状に合わせて凹状のポケット21が連続的に設けられた帯状のキャリアテープ20の蓋材として用いられている。
具体的には、電子部品包装用カバーテープ10は、キャリアテープ20のポケット21の開口部全面を覆うように、キャリアテープ20の表面に接着(通常、ヒートシール)される。なお、以降、電子部品包装用カバーテープ10と、キャリアテープ20とを接着して得られた構造体のことを、電子部品包装体100と称する。
【0045】
電子部品包装体100は、例えば、以下の手順で作製することができる。
まず、キャリアテープ20のポケット21内に電子部品を収容する。
次いで、キャリアテープ20のポケット21の開口部全面を覆うように、キャリアテープ20の表面に電子部品包装用カバーテープ10をヒートシール法により接着する。この際、電子部品包装用カバーテープ10におけるシーラント層3がキャリアテープ20と接するようにする(つまり、
図2における電子部品包装用カバーテープ10の「裏面」がシーラント層3となるようにしてヒートシールを行う)。
ヒートシールの具体的なやり方や条件は、電子部品包装用カバーテープ10がキャリアテープ20に十分強く接着する限り特に限定されない。典型的には、公知のヒートシール機を用い、温度100~240℃、荷重0.1~10kgf、時間0.0001~1秒の範囲内で行うことができる。
【0046】
以上により、電子部品が密封収容された構造体(電子部品包装体100)が得られる。
この構造体(電子部品包装体100)は、例えば、リールに巻かれ、その後、電子部品を電子回路基板等に実装する作業領域まで搬送される。リールの素材は、金属製、紙製、プラスチック製などであることができる。
【0047】
電子部品包装体100が作業領域まで搬送された後、電子部品包装用カバーテープ10をキャリアテープ20から剥離し、収容された電子部品を取り出す。
【0048】
なお、電子部品包装体100内に収容される電子部品は、特に限定されない。半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、コンデンサ、圧電素子、光学素子、LED関連部材、コネクタ、電極など、電気・電子機器の製造に用いられる部品全般を挙げることができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について詳細に述べたが、これらは本発明の例示である。また、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
本発明の実施形態を、実施例及び比較例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
表1に示されるシーラント層の各構成材料は、以下のものである。
(接着樹脂)
・樹脂1:ポリ(メタ)アクリル酸誘導体(大日本インキ社製 「A450A」)
・樹脂2:スチレン系ポリマー(日本ゼオン社製 「Nipol 2507H」)
・樹脂3:ポリアクリル酸誘導体(三井・ダウ・ポリケミカル社製 「エルバロイ AC1820」)
・樹脂4:スチレン系ポリマー(新日鐵化学株式会社製 「エスチレンMS-600」)
(帯電防止剤)
・帯電防止剤1:リンドープ酸化スズ(三菱マテリアル社製 「SP-2」)
・帯電防止剤2:カーボンナノチューブ(Sigmaaldrich社製 「isoNanotubes-M(登録商標) 750530」)
・帯電防止剤3:ポリチオフェン誘導体 (Sigmaaldrich社製 「Aedotron(登録商標) C3-NM」)
・帯電防止剤4:ポリチオフェン誘導体(PEDOT:PSS)(Heraeus社製 「Clevios P1000」)
・帯電防止剤5:アンチモンドープ酸化スズ(三菱マテリアル社製 「T-1」)
・帯電防止剤6:ポリプロピレン/ポリエチレングリコール(三洋化成株式会社製 「ペレスタット212」)
【0052】
<実施例1>
〔基材層および中間層の作製〕
厚さ12μmの帯電防止ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡株式会社製 「E7455」)に、アンカーコート剤をグラビアコーティングでウエット4μm塗布し、100℃乾燥後、低密度ポリエチレン(住友化学社製 「スミカセンL705」37μ厚)を押し出しラミネートし、冷却ロール(表面温度20℃)にて冷却して基材層および中間層からなる積層フィルムを作製した。
【0053】
得られた積層フィルムの中間層側の面上に、表1に示す配合の成分からなるシーラント層をグラビアコーティング法により膜厚0.5μmで製膜した。
カバーテープ全体の厚みを、表1に示す。
【0054】
<実施例2~4、比較例1~4>
表1に記載の配合に従って、実施例1と同様の方法にて電子部品包装用カバーテープを作成した。
【0055】
<ポリスチレン製フィルムに対する170°ピール強度>
上記で得られた各電子部品包装用カバーテープを幅5.5mmの寸法にして、当該電子部品包装用カバーテープのシーラント層側と、幅8mmの寸法の、凹凸面の平均表面粗さ(Ra)が0.25μmであるポリスチレン製フィルム(住友ベークライト社製 「CEL-E980A」)の上記凹凸面側とを合わせ、片刃が幅0.5mm、長さ28mmの寸法の二本刃アイロンを用いて、シール温度160℃、荷重5kgf、シール時間60ミリ秒間、キャリアテープ送りピッチ4mm、2列・7度打ちの条件でヒートシール機(東京ウエルズ社製 「TWA-6621」)を用いてヒートシールして、サンプルを調整した。ヒートシール直後のピール強度(N)を測定した。ヒートシール直後のピール強度をP1(N)とする。なお、ピール強度の測定は、剥離試験機(EPI社製 「PTS-5000」)を用いて、剥離速度300mm/min、剥離角度170°、測定温度25℃の条件で行った。
なお、ポリスチレン製フィルムの表面粗さ(Ra)は、上記で使用したポリスチレン製フィルムにおける上記電子部品包装用カバーテープと貼り合わせる部分について、上記電子部品包装用カバーテープと貼り合わせる前に、JIS B 0601(2001)に準拠して、表面粗さ測定器(Mitutoyo社製 「SJ-210」)を用いて測定した。なお、単位はμmである。
また、上記で得られた電子部品包装用カバーテープを40℃90%RH環境に14日間置いた後、当該電子部品包装用カバーテープのポリスチレン製フィルムに対する170°ピール強度(N)を上記と同様の方法で測定した。40℃90%RH環境に14日間置いた後の上記電子部品包装用カバーテープのヒートシール直後のピール強度をP2(N)とした。
得られたP1およびP2の値から、(P2/P1)×100の値を算出した。
P1、P2および(P2/P1)×100の値を表1に示す。
【0056】
<アンチモン含有量>
上記で得られた電子部品包装用カバーテープを硝酸/塩酸/フッ酸溶液にマイクロウェーブを使用して完全に溶解させ、電子部品包装用カバーテープ全体に対するアンチモン含有量(ppm)を、誘導結合高周波プラズマ発光分光分析(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectro-metry:IPC)法により測定した。結果を表1に示す。
【0057】
<基材層の表面抵抗値>
上記で得られた電子部品包装用カバーテープの基材層表面における表面抵抗値(Ω)を、SIMCO社製の表面抵抗測定器(SIMCO社製 「ST-3」)を用いて、25℃50%RH環境下にて測定した。結果を表1に示す。
なお、表1に記載の、たとえば実施例1の「5.E+10」は、「5×1010」を表す。
【0058】
<シーラント層の表面抵抗値>
上記で得られた電子部品包装用カバーテープのシーラント層表面における表面抵抗値(Ω)を、SIMCO社製の表面抵抗測定器(SIMCO社製 「ST-3」)を用いて、25℃50%RH環境下にて測定した。結果を表1に示す。
なお、表1に記載の、たとえば実施例1の「2.E+09」は、「2×109」を表す。
【0059】
<摩擦帯電量>
上記で得られた電子部品包装用カバーテープにおいて、以下の手順(a)~(e)により、樹脂ペレットの表面における25℃、50%RH条件下の摩擦帯電量を測定した。
(a)当該電子部品包装用カバーテープを幅25mm、長さ200mmの寸法となるようにカットし、上記シーラント層の表面が内側となるように、長さ方向に半分に折り曲げ、両サイドをテープで留めることにより、幅25mm、長さ100mmの袋を作成した。
(b)シリカ85質量%、エポキシ樹脂15質量%からなり、寸法3mm×1.5mm×1mmの樹脂ペレットを準備した。
(c)上記袋と上記樹脂ペレットを除電した後、上記樹脂ペレットを5個上記袋内に入れ、開口部をテープで留め、密封した。
(d)上記(c)により密封した上記樹脂ペレット入り上記袋を、ボルテックス・ミキサー(SCIENTIFIC INDUSTRIES社製 「G-560E」)に固定し、600rpm、5分間の条件で振動させた。
(e)上記袋の内部から上記樹脂ペレット5個を取り出し、すべてファラデーカップ(Electro-Tech Systems社製、Model 231)へ移し、ナノクーロンメーター(Electro-Tech Systems社製、Model 230)を用いて、25℃、50%RHという条件にて、上記樹脂ペレット5個分の帯電量を測定した。その測定値の絶対値を摩擦帯電量とした。結果を表1に示す。
【0060】
次に、測定した摩擦帯電量について、以下の評価基準に照らして評価した。結果を表1に示す。
帯電防止性の評価基準:
◎:摩擦帯電量が0.0nC以上0.2nC以下
〇:摩擦帯電量が0.2nCより大きく1.0nC以下
×:摩擦帯電量が1.0nCより大きい
【0061】
<全光線透過率>
上記で得られた電子部品包装用カバーテープの全光線透過率(%)を、JIS K7361-1(1997)に準拠し、日本電飾工業社製のHaze Meter NDH 2000を用いて、光源D65にて測定した。結果を表1に示す。
【0062】
<外部ヘイズ>
上記で得られた電子部品包装用カバーテープの外部ヘイズ(%)を、JIS K7136(2000)に準拠し、日本電飾工業社製のHaze Meter NDH 2000を用いて、光源D65にて測定した。結果を表1に示す。
【0063】
【0064】
実施例1~4においては、アンチモン含有量を低減させつつ、ポリスチレン製フィルムに対する170°ピール強度、シーラント層表面の表面抵抗値、基材層表面の表面抵抗値、摩擦帯電量、電子部品包装用カバーテープ全体の全光線透過率およびヘイズが適正な範囲である電子部品包装用カバーテープが得られた。実施例1~4は、アンチモン含有量を低減させていない比較例1と比較しても、遜色ないピール強度等を示すものであった。また比較例2は、アンチモン含有量を低減させたが、ポリスチレン製フィルムに対する170°ピール強度が適正な範囲とならなかった。
また比較例4は、シーラント層に帯電防止剤を含まないため、十分なシーラント面の抵抗値が得られなかった。
比較例3は基材層、中間層、シーラント層の構成を満たさないため、ポリスチレン製フィルムに対する170°ピール強度が適正な範囲とならなかった。
【符号の説明】
【0065】
1 基材層
2 中間層
3 シーラント層
10 カバーテープ
20 キャリアテープ
21 ポケット
100 電子部品包装体