(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】捺染装置及び捺染方法
(51)【国際特許分類】
D06P 5/30 20060101AFI20250708BHJP
D06P 5/00 20060101ALI20250708BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20250708BHJP
【FI】
D06P5/30
D06P5/00 101
B41J2/01 123
B41J2/01 401
(21)【出願番号】P 2021018871
(22)【出願日】2021-02-09
【審査請求日】2024-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓史
(72)【発明者】
【氏名】石谷 拓也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】仁藤 謙
(72)【発明者】
【氏名】中村 正樹
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-197532(JP,A)
【文献】特開2013-067925(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012229(WO,A1)
【文献】特開2005-246734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06P
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛の前処理部と、前記布帛に色材インクを塗布して画像を印捺する印捺部と、制御部を有する捺染装置であって、
前記前処理部が、前記布帛に対する前記色材インクの浸透性を調整する処理を行い、
前記制御部が、前記布帛に対する前記色材インクの、前記印捺部により印捺される画像において求められる浸透度の分布を表す浸透度画像に従って、前記前処理部における前記浸透性の調整処理を前記浸透度が高いほど前記浸透性が増加するように制御し、かつ前記印捺部における前記色材インクの塗布量を前記浸透度が高いほど増加するように制御
し、
前記前処理部が、前記布帛にインクジェット法により浸透抑制剤又は浸透促進剤を含有する機能性インクを塗布する機構を有し、前記制御部が、前記浸透度画像に従って前記機能性インクの塗布量及び塗布位置を制御することを特徴とする捺染装置。
【請求項2】
前記制御部が、前記布帛の態様情報に応じて、前記浸透度画像を調整することを特徴とする請求項
1に記載の捺染装置。
【請求項3】
前記布帛の態様情報が、布帛を構成する繊維の種類、布帛の厚さ、布帛の繊維密度、布帛を構成する繊維における化学繊維比率、布帛の織り方及び布帛を構成する繊維の太さから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項
2に記載の捺染装置。
【請求項4】
前記制御部が、環境温度及び環境相対湿度に応じて、前記浸透度画像を調整することを特徴とする請求項1から請求項
3までのいずれか一項に記載の捺染装置。
【請求項5】
前記浸透度画像が、前記印捺部が印捺する画像の色濃度の高さに従って前記浸透度が高くなるように設定された画像であることを特徴とする請求項1から請求項
4までのいずれか一項に記載の捺染装置。
【請求項6】
前記浸透度画像が、前記印捺部が印捺する画像から所定の幅を有するエッジ部を除く非エッジ部を対象とする画像であることを特徴とする請求項1から請求項
5までのいずれか一項に記載の捺染装置。
【請求項7】
前記浸透度画像としてユーザーが定義した浸透度画像を用いることを特徴とする請求項1から請求項
4までのいずれか一項に記載の捺染装置。
【請求項8】
前記機能性インクを塗布する機構は、前記浸透抑制剤を含有する第1の機能性インク及び前記浸透促進剤を含有する第2の機能性インクの少なくとも一方を塗布する、請求項1に記載の捺染装置。
【請求項9】
前記浸透度に応じて、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクの中から選択された機能性インクを塗布する、請求項8に記載の捺染装置。
【請求項10】
前記布帛の種類に応じて、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクの中から選択された機能性インクを塗布する、請求項8に記載の捺染装置。
【請求項11】
前記機構は、前記浸透抑制剤を含有する機能性インクを塗布する第1の機構と、前記浸透促進剤を含有する機能性インクを塗布する第2の機構とを有する、請求項1に記載の捺染装置。
【請求項12】
布帛の前処理工程と、布帛に色材インクを塗布して画像を印捺する印捺工程と、制御工程を有する捺染方法であって、
前記前処理工程が、前記布帛に対する前記色材インクの浸透性を調整する処理を行い、
前記制御工程が、前記布帛に対する前記色材インクの、前記印捺工程により印捺される画像において求められる浸透度の分布を表す浸透度画像に従って、前記前処理工程における前記浸透性の調整処理を前記浸透度が高いほど前記浸透性が増加するように制御し、かつ前記印捺工程における前記色材インクの塗布量を前記浸透度が高いほど増加するように制御
し、
前記前処理工程が、前記布帛にインクジェット法により浸透抑制剤又は浸透促進剤を含有する機能性インクを塗布する機構により行われ、
前記制御工程が、前記浸透度画像に従って前記機能性インクの塗布量及び塗布位置を制御することを特徴とする捺染方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捺染装置及び捺染方法に関する。より詳しくは、本発明は、画質を維持しながら、布帛の表裏における画像の濃度差の発生を抑制した捺染装置及び捺染方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、布帛に対して色材インク(以下、単に「インク」ともいう。)を用いてインクジェット法やスクリーン印刷法により印捺を行う捺染の技術が知られている。捺染においては、インクの布帛への浸透性に関連して、滲みが発生することで画質が劣化する問題や、インクの濃度が布帛の表裏で異なる問題があった。この問題を解決するために、布帛へのインクの浸透性を調整する前処理液を塗布した後、インクジェット捺染を行う捺染装置が採用されるようになった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、特許文献1の捺染装置では、前処理液による処理は、布帛全体に対して均一に行われる。したがって、例えば、印刷される画像の色濃度に関わらず、インクの浸透性を調整する能力が単一化される。例えば、画像中の色濃度の濃い領域に合わせて浸透性を調整すると、色濃度が薄い領域、すなわちインク塗布量が少ない領域では、インクの浸透性が十分でなく表面に比べて裏面の色濃度が薄くなる、あるいは、浸透性が高すぎると布帛表面のインク量が減り表面の色濃度が薄くなってしまうという問題がある。
【0004】
一方、特許文献2では、前処理液の塗布により布帛の風合いが損なわれ、滲み抑制と風合いの維持はトレードオフである点が記載され、これらの両立を目的として、前処理液による前処理手段を備えるインクジェット捺染装置において、布帛の基材情報と布帛に印刷する画像データに基づいて、インクの濡れ広がりを抑制する機能性材料を含んだ前処理液の付与位置と付与量を算出して、当該前処理液を布帛に塗布する構成の画像処理装置が記載されている。特許文献2では、具体的には、画像の輪郭近傍に前処理液を付与することで、布帛の風合いと滲み抑制の両立を実現できるとしている。
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載されている画像処理装置の構成では、布帛の表面と裏面で画像、特に色濃度が異なる問題を十分に解決できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-246734号公報
【文献】国際公開第2018/012229号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、画質を維持しながら、布帛の表裏における画像の濃度差の発生の抑制した捺染装置及び捺染方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、布帛に対する色材インクの所望の浸透度の分布を表す浸透度画像を作製し、それに従って、色材インクの浸透性を調整する機能性インクの塗布量と色材インク塗布量を制御することで、画質を維持しながら、布帛の表裏における画像の濃度差の発生を抑制できること見出し本発明に至った。すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0009】
1.布帛の前処理部と、前記布帛に色材インクを塗布して画像を印捺する印捺部と、制御部を有する捺染装置であって、
前記前処理部が、前記布帛に対する前記色材インクの浸透性を調整する処理を行い、
前記制御部が、前記布帛に対する前記色材インクの、前記印捺部により印捺される画像において求められる浸透度の分布を表す浸透度画像に従って、前記前処理部における前記浸透性の調整処理を前記浸透度が高いほど前記浸透性が増加するように制御し、かつ前記印捺部における前記色材インクの塗布量を前記浸透度が高いほど増加するように制御し、
前記前処理部が、前記布帛にインクジェット法により浸透抑制剤又は浸透促進剤を含有する機能性インクを塗布する機構を有し、前記制御部が、前記浸透度画像に従って前記機能性インクの塗布量及び塗布位置を制御することを特徴とする捺染装置。
【0011】
2.前記制御部が、前記布帛の態様情報に応じて、前記浸透度画像を調整することを特徴とする第1項に記載の捺染装置。
【0012】
3.前記布帛の態様情報が、布帛を構成する繊維の種類、布帛の厚さ、布帛の繊維密度、布帛を構成する繊維における化学繊維比率、布帛の織り方及び布帛を構成する繊維の太さから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする第2項に記載の捺染装置。
【0013】
4.前記制御部が、環境温度及び環境相対湿度に応じて、前記浸透度画像を調整することを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の捺染装置。
【0014】
5.前記浸透度画像が、前記印捺部が印捺する画像の色濃度の高さに従って前記浸透度が高くなるように設定された画像であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の捺染装置。
【0015】
6.前記浸透度画像が、前記印捺部が印捺する画像から所定の幅を有するエッジ部を除く非エッジ部を対象とする画像であることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の捺染装置。
【0016】
7.前記浸透度画像としてユーザーが定義した浸透度画像を用いることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の捺染装置。
8.前記機能性インクを塗布する機構は、前記浸透抑制剤を含有する第1の機能性インク及び前記浸透促進剤を含有する第2の機能性インクの少なくとも一方を塗布する、第1項に記載の捺染装置。
9.前記浸透度に応じて、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクの中から選択された機能性インクを塗布する、第8項に記載の捺染装置。
10.前記布帛の種類に応じて、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクの中から選択された機能性インクを塗布する、第8項に記載の捺染装置。
11.前記機構は、前記浸透抑制剤を含有する機能性インクを塗布する第1の機構と、前記浸透促進剤を含有する機能性インクを塗布する第2の機構とを有する、第1項に記載の捺染装置。
【0017】
12.布帛の前処理工程と、布帛に色材インクを塗布して画像を印捺する印捺工程と、制御工程を有する捺染方法であって、
前記前処理工程が、前記布帛に対する前記色材インクの浸透性を調整する処理を行い、
前記制御工程が、前記布帛に対する前記色材インクの、前記印捺工程により印捺される画像において求められる浸透度の分布を表す浸透度画像に従って、前記前処理工程における前記浸透性の調整処理を前記浸透度が高いほど前記浸透性が増加するように制御し、かつ前記印捺工程における前記色材インクの塗布量を前記浸透度が高いほど増加するように制御し、
前記前処理工程が、前記布帛にインクジェット法により浸透抑制剤又は浸透促進剤を含有する機能性インクを塗布する機構により行われ、
前記制御工程が、前記浸透度画像に従って前記機能性インクの塗布量及び塗布位置を制御することを特徴とする捺染方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の上記手段により、画質を維持しながら、布帛の表裏における画像の濃度差の発生を抑制した捺染装置及び捺染方法を提供することができる。本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、以下のように推察している。
【0019】
本発明においては、布帛への印捺に際して、印捺される画像において色材インクに求められる浸透度の分布を示す浸透度画像を作成し、当該浸透度画像に従って、浸透度が高いほど浸透性が増加するように前処理を行い、かつ色材インクの塗布量を浸透度が高いほど増加する。
【0020】
これにより、例えば、印捺される画像中で、布帛への色材インクの塗布量の増大が求められる領域、すなわち、色材インクの浸透性を増加が求められる領域の浸透性が高まり、結果として所望の量の色材インクを塗布することが可能となる。このようにして、例えば、布帛の裏面まで十分に色材インクを浸透させたい領域に対して、滲み等の画質の低下を招くことなく、布帛の表面と裏面で殆ど濃度差のない印捺を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の捺染装置の一例を模式的に示した概略図
【
図2】
図1に示す捺染装置の制御系の要部を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の捺染装置は、布帛の前処理部と、前記布帛に色材インクを塗布して画像を印捺する印捺部と、制御部を有する捺染装置であって、前記前処理部が、前記布帛に対する前記色材インクの浸透性を調整する処理を行い、前記制御部が、前記布帛に対する前記色材インクの、前記印捺部により印捺される画像において求められる浸透度の分布を表す浸透度画像に従って、前記前処理部における前記浸透性の調整処理を前記浸透度が高いほど前記浸透性が増加するように制御し、かつ前記印捺部における前記色材インクの塗布量を前記浸透度が高いほど増加するように制御することを特徴とする。この特徴は、各請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0023】
本発明の捺染装置の実施形態としては、本発明の効果発現の観点から、前記前処理部が、前記布帛にインクジェット法により浸透抑制剤又は浸透促進剤を含有する機能性インクを塗布する機構を有し、前記制御部が、前記浸透度画像に従って前記機能性インクの塗布量及び塗布位置を制御することが好ましい。
【0024】
本発明の捺染装置の実施形態としては、前記制御部が、前記布帛の態様情報に応じて、前記浸透度画像を調整することが好ましい。上記機能性インクを用いる態様では、これに対応して、前記機能性インクの塗布量及び前記色材インクの塗布量が変更される。布帛の態様情報としては、布帛を構成する繊維の種類、布帛の厚さ、布帛の繊維密度、布帛を構成する繊維における化学繊維比率、布帛の織り方及び布帛を構成する繊維の太さから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0025】
また、前記制御部が、環境温度及び環境相対湿度に応じて、前記浸透度画像を調整することが好ましい。上記機能性インクを用いる態様では、これに対応して、前記機能性インクの塗布量及び前記色材インクの塗布量が変更される。
【0026】
本発明の捺染装置の実施形態としては、本発明の効果発現の観点から、前記浸透度画像が、前記印捺部が印捺する画像の色濃度の高さに従って前記浸透度が高くなるように設定された画像であることが好ましい。
【0027】
本発明の捺染装置の実施形態としては、本発明の効果発現の観点から、前記浸透度画像が、前記印捺部が印捺する画像から所定の幅を有するエッジ部を除く非エッジ部を対象とする画像であることが好ましい。
【0028】
本発明の捺染装置の実施形態としては、本発明の効果発現の観点から、前記浸透度画像としてユーザーが定義した浸透度画像を用いることが好ましい。
【0029】
本発明の捺染方法は、布帛の前処理工程と、布帛に色材インクを塗布して画像を印捺する印捺工程と、制御工程を有する捺染方法であって、前記前処理工程が、前記布帛に対する前記色材インクの浸透性を調整する処理を行い、前記制御工程が、前記布帛に対する前記色材インクの、前記印捺工程により印捺される画像において求められる浸透度の分布を表す浸透度画像に従って、前記前処理工程における前記浸透性の調整処理を前記浸透度が高いほど前記浸透性が増加するように制御し、かつ前記印捺工程における前記色材インクの塗布量を前記浸透度が高いほど増加するように制御することを特徴とする。
【0030】
以下、図面を参照しながら、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。ただし、本発明の範囲は図示例に限定されない。図示例の捺染装置は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0031】
[捺染装置]
本発明の捺染装置は、前処理部と、印捺部と、制御部を有し、各部は以下のとおり作動する。
【0032】
前処理部は、布帛に対する色材インクの浸透性を調整する処理を行う。
印捺部は、布帛に色材インクを塗布して画像を印捺する。
制御部は、浸透度画像に従って、前処理部及び印捺部をそれぞれ以下の(1-1)及び(1-2)のとおり制御する。
【0033】
(1-1)前処理部における浸透性の調整処理を浸透度が高いほど浸透性が増加するように制御する。
(1-2)印捺部における色材インクの塗布量を浸透度が高いほど増加するように制御する。
【0034】
なお、上記浸透度画像は、布帛に対する色材インクの浸透度(本明細書において、単に「浸透度」ともいう。)の分布を表す画像であり、当該浸透度は、印捺部により印捺される画像(以下、「印捺画像」ともいう。)において求められる浸透度である。
【0035】
捺染装置では、印捺画像に基づいて色材インクの塗布位置と塗布量が決定される。色材インクの塗布領域の単位は、例えば、画素単位である。浸透度は、色材インクの塗布領域の単位、例えば、画素単位で設定される。浸透度画像は、色材インクの塗布単位、例えば、画素単位で求められた浸透度の分布を示す画像である。
【0036】
画素単位で浸透度を設定する場合、任意の画素単位における浸透度は、例えば、基準となる特定の布帛(布帛を構成する繊維の種類、布帛の厚さ、布帛の繊維密度、布帛を構成する繊維における化学繊維比率、布帛の織り方及び布帛を構成する繊維の太さ等が特定された布帛)を基準布として選択し、前処理を施していない当該基準布における基準環境(特定の環境温度及び環境相対湿度)でのインクの浸透深さを基準の浸透度とする。
【0037】
具体的には、前処理を施していない布帛(基準布)に対する基準環境での色材インクの浸透度を基準値「1」として、印捺画像に基づいて当該画素単位に要求される浸透度が、基準値に対する相対値として設定される。浸透度は、具体的には、布帛の厚さ方向における所定量の色材インクの浸透深さとして測定できる。基準となる浸透度の絶対値が小さい場合には、浸透度の調整は、浸透度を高めるように行われる。この場合、例えば、浸透度の最小値を1として、印捺画像に基づいて当該画素単位に要求される浸透度が、基準値に対して1.5倍である場合、浸透度を1.5として浸透度画像を作成する。
【0038】
一方、基準となる浸透度の絶対値が十分に大きい場合には、浸透度の調整は、浸透度を低下させるように行われる。この場合、例えば、浸透度の最大値を1として、印捺画像に基づいて当該画素単位に要求される浸透度が、基準値に対して0.5倍である場合、浸透度を0.5として浸透度画像を作成する。
【0039】
ここで、印捺画像に基づいて当該画素単位に要求される浸透度とは、例えば、印捺画像のおける色濃度の高さに対応させて浸透度を高く設定する等がある。詳細な説明は、後述の制御部の説明において行う。
【0040】
本発明の捺染装置に係る前処理部が行なう、布帛に対する色材インクの浸透性を調整する処理は、布帛に浸透抑制剤又は浸透促進剤を含有する機能性インクを塗布する処理であることが好ましい。浸透促進剤を含有する機能性インクは、例えば、上に説明した基準となる浸透度の絶対値が小さい場合に用いられる。浸透抑制剤を含有する機能性インクは、例えば、上に説明した基準となる浸透度の絶対値が十分に大きい場合に用いられる。また、機能性インクの塗布は、インクジェット法により行うことが好ましい。この場合、制御部は、上記浸透度画像に従って、例えば、機能性インクの塗布量及び塗布位置を制御する。
【0041】
以下、
図1に示す、機能性インクを用いて前処理が行なわれる捺染装置を例にして本発明の捺染装置を説明するが、本発明はこれに限定されない。
図1は、本発明の捺染装置の一例を模式的に示した概略図である。
図2は、
図1に示す捺染装置の制御系の要部を示すブロック図である。
【0042】
図1に示す捺染装置100は、布帛T1を繰り出す布帛繰り出し部101と、布帛を搬送する搬送部103と、布帛T1に機能性インクPrを塗布する前処理部10と、前処理された布帛T2(以下、「前処理布帛T2」ともいう。)に色材インクInを塗布する印捺部20と、色材インクIn等を乾燥する乾燥部105と、印捺された布帛T3(以下、「印捺布帛T3」ともいう。)を回収する布帛回収部102、及び各部材を制御する制御部30等を備える。
【0043】
図1において布帛T1の搬送方向を矢印で示す。捺染装置100において、必須の構成部材は、前処理部10、印捺部20、及び制御部30である。捺染装置100は、必要に応じて、
図1に示される構成部材以外にその他の構成部材を有してもよい。その他の構成部材としては、例えば、前処理部10と印捺部20の間に機能性インクPr等を乾燥する機能性インク乾燥部、乾燥部105の搬送方向下流側に設けられる定着部等がある。以下、捺染装置100の各構成部材を説明する。
【0044】
(布帛繰り出し部)
布帛T1は、前処理部10の搬送方向上流側に設けられた布帛繰り出し部101に設置されている。布帛繰り出し部101は、ロール状の布帛T1が装着される回転軸と、回転軸を所定の回転方向に回転駆動するモーター(図示しない)等を備える。布帛繰り出し部101は、モーターを駆動することにより回転軸の回転に沿って布帛T1を搬送方向下流側に繰り出す。なお、布帛T1は、上記のような連続した布帛であってもよいし、1枚ずつ分離された布帛であってもよい。
【0045】
(搬送部)
搬送部103は、布帛繰り出し部101から繰り出された布帛T1を搬送する。
図1では、布帛T1を搬送ローラーによって搬送する構成としたが、例えば、布帛T1を搬送ベルトに貼り付けて搬送する構成としてもよい。
【0046】
(前処理部)
前処理部10は、布帛T1に浸透抑制剤又は浸透促進剤を含有する機能性インクPrを塗布する処理を行う部材である。前処理部10として、具体的には、機能性インク塗布装置等が挙げられる。前処理部10における機能性インクPrの塗布は、制御部30により、塗布量及び塗布位置等が制御されて行われる。制御部30における前処理部10に対する上記制御は、浸透度画像に従って行われる。浸透度画像に対応した機能性インクPrの塗布を行うために、前処理部10の塗布方式としては、インクジェット法が好ましい。
【0047】
機能性インクの塗布方式としてインクジェット法を用いる場合、機能性インク塗布装置は、機能性インクを吐出するヘッドとヘッドを搭載するキャリッジを有する。ヘッドとキャリッジは、後述の色材インク塗布装置におけるヘッドとキャリッジと同様の構成とすることができる。
【0048】
機能性インクPrについては、例えば、色材インクの浸透性が良好な布帛を用いる場合には、浸透抑制剤を含有する機能性インクPr(以下、「浸透抑制インク」ともいう。)を用いる。一方、色材インクの浸透性が十分でない布帛を用いる場合には、浸透促進剤を含有する機能性インクPr(以下、「浸透促進インク」ともいう。)を用いる。浸透抑制インク及び浸透促進インクはそれぞれ1種を単独で2種以上を組み合わせて用いることも可能であるが、装置及び制御プログラムが複雑化することから、例えば、布帛の種類に応じて、浸透抑制インク又は浸透促進インクの1種を用いることが好ましい。
【0049】
機能性インク塗布装置は、ヘッドを2つ有し、一方を浸透抑制インク用ヘッド、他方を浸透促進インク用ヘッドとして、布帛の種類に応じて両ヘッドを使い分けるように動作させることも可能である。あるいは、機能性インク塗布装置は、ヘッドを1つ有し、布帛の種類に応じてヘッドに供給する機能性インクPrを浸透抑制インク又は浸透促進インクとすることで対応してもよい。
【0050】
ここで、前処理部10は、制御部30により上記(1-1)のとおり制御される。具体的には、前処理部10は、浸透度画像における浸透度が高いほど浸透性が増加するように機能性インクPrの塗布量が制御される。(1-1)の制御は、浸透抑制インク及び浸透促進インクにおいて、以下のように行われる。
【0051】
浸透抑制インクを用いる場合、浸透度画像において浸透度が高い画素領域ほど浸透抑制インクの塗布量を少なく設定し、浸透度が低い画素領域ほど浸透抑制インクの塗布量を多く設定する。浸透抑制インクを用いる場合、浸透度と浸透抑制インクの塗布量の関係は、比例係数が負の一次多項式で表すことができる。
【0052】
浸透促進インクを用いる場合、浸透度画像において浸透度が高い画素領域ほど浸透促進インクの塗布量を多く設定し、浸透度が低い画素領域ほど浸透抑制インクの塗布量を少なく設定する。浸透促進インクを用いる場合、浸透度と浸透促進インクの塗布量の関係は、比例係数が正の一次多項式で表すことができる。
【0053】
<機能性インク>
浸透抑制インクは、色材インクの浸透性を抑制する機能を有するインクであれば特に制限なく使用できる。浸透抑制インクとして、具体的には、色材インクを凝集させる作用を有する凝集剤を含有する浸透抑制インクが好ましい。以下、浸透抑制インクとして、凝集剤を含有する浸透抑制インクを例に説明する。
【0054】
また、浸透促進インクは、色材インクの浸透性を促進する機能を有するインクであれば特に制限なく使用できる。浸透促進インクとして、具体的には、色材インクの布帛に対する濡れ性を向上させる浸透剤を含有する浸透促進インクが好ましい。以下、浸透促進インクとして、浸透剤を含有する浸透促進インクを例に説明する。
【0055】
《浸透抑制インク》
浸透抑制インクは、例えば、インクジェット法により布帛に塗布される。浸透抑制インクをインクジェット法で塗布する場合、浸透抑制インクがインクジェットヘッド(以下、単に「ヘッド」ともいう。)のノズルから吐出可能なように、凝集剤に溶媒が添加される等によりその粘度が調整される。浸透抑制インクは、例えば、凝集剤を含有し、さらに、水、有機溶媒及び界面活性剤を基本成分として含有することができる。
【0056】
塗布がインクジェット法で行われる場合、浸透抑制インクの粘度は、1~40mPa・sの範囲内にあることが好ましく、5~10mPa・sの範囲内にあることがより好ましい。浸透抑制インクの粘度は、E型粘度計により、25℃で測定することができる。回転数は、粘度に応じて設定されうるが、例えば10rpm又は20rpmとしうる。特に断りのない限り、本明細書における粘度は、上記方法で測定した25℃における粘度である。
【0057】
〔凝集剤〕
凝集剤は、水溶性カチオンポリマー、有機酸又は多価金属塩のいずれを含有することが好ましく、より好ましくは水溶性カチオンポリマー又は多価金属塩である。
【0058】
上記水溶性カチオンポリマー及び多価金属塩は、塩析によって色材インク中のアニオン性の成分(例えば、顔料、染料、分散ポリマー、高分子微粒子等においてアニオン性基を有する成分)を凝集させることができる。上記有機酸は、pH変動によって上記インク中のアニオン性の成分を凝集させることができる。
【0059】
有機酸を使用すると一般的にpHが酸性域になる。そのため、ヘッド内で使用されている接着剤等の樹脂を劣化させ、ヘッド耐性が劣位になることがある。多価金属塩はpHが中性域から弱アルカリであり、水溶性カチオンポリマーについても品番等を適宜選択することで、pHを中性域に調整することができる。このように、pHを適正な範囲に調整できる観点から、凝集剤は水溶性カチオンポリマー又は多価金属塩であることがより好ましい。
【0060】
水溶性カチオンポリマーは、カチオン性基を有する水溶性樹脂である。カチオン性基としては、例えば、1~3級アミノ基、4級アンモニウム塩が挙げられる。水溶性カチオンポリマーとしては、例えば、アリルアミン、ジアリルアミン、アルキレンアミン、ジメチルアリルアミン、メチルジアリルアミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド等のカチオン性基を有するモノマーを単独重合又は共重合して得られる(共)重合体、アジリジン(エチレンイミン)等の環状アミンの開環重合体等が挙げられる。上記モノマーは、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩等であってもよい。また、水溶性カチオンポリマーは、上記モノマーと二酸化硫黄との共重合体であってもよい。
【0061】
さらに、水溶性カチオンポリマーは、上記モノマーと、上記モノマー以外のビニル基を有するモノマー、例えば、アクリルアミド、アクリレート、メタクリレート、アリレート、スチレン等のモノマーとの共重合体でもよい。
【0062】
水溶性カチオンポリマーの例には、ポリアリルアミン、アリルアミンジアリルアミン共重合体、ポリジアリルアミン、ポリメチルジアリルアミン、ジアリルアミン二酸化硫黄共重合体、メチルジアリルアミン二酸化硫黄共重合体、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド等が含まれる。水溶性カチオンポリマーの例には、また、上記(共)重合体における構成モノマーが塩酸塩、硫酸塩又は酢酸塩等である(共)重合体が含まれる。
【0063】
水溶性カチオンポリマーの市販品の例としては、センカ社製KHE100L、FPA100L、ニットーボーメディカル社製のPAAシリーズ、PASシリーズ(PAS-92A、PAS-M-1A、PAS-21CL、PAS-J-81等)が挙げられる。
【0064】
浸透抑制インクが凝集剤として水溶性カチオンポリマーを含有する場合には、浸透抑制インクは、色材の定着性を高めるためにアクリル系ポリマーを主成分とする高分子微粒子を含有してもよい。微粒子を構成する高分子のガラス転位温度は-10℃以下が好ましく、質量平均分子量は10万以上が好ましい。浸透抑制インクをインクジェット法で塗布する場合、ヘッドからの吐出性の観点から、高分子微粒子は光散乱法による粒子径が50~500nmであることが好ましい。さらには、上記観点から、高分子微粒子を含有しないことが好ましい。
【0065】
上記有機酸は、色材インク中に含まれる顔料を凝集し得るものであり、第一解離定数が3.5以下であることが好ましく、1.5~3.5の範囲内が好ましい。
【0066】
また、有機酸を用いることで浸透抑制インクの保存安定性を維持しやすく、浸透抑制インクを塗布、乾燥した後にブロッキングが起きにくい。上記観点から好ましい有機酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、シュウ酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、安息香酸、2-ピロリドン-5-カルボン酸、乳酸、アクリル酸及びその誘導体、メタクリル酸及びその誘導体、又は、アクリルアミド及びその誘導体などを含むカルボキシ基を有する化合物、スルホン酸誘導体、又は、リン酸及びその誘導体などが含まれる。
【0067】
浸透抑制インクにおける有機酸の含有量は、浸透抑制インクのpHを上記有機酸の第一解離定数未満に調整する量であればよい。浸透抑制インクのpHが上記有機酸の第一解離定数未満となる量の有機酸を浸透抑制インクに含有させることにより、高速プリント時の滲みを効果的に抑制できる。
【0068】
上記多価金属塩の例には、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩及び亜鉛塩などの水溶性の塩が含まれる。多価金属と塩を形成する化合物としては、塩酸、臭酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、チオシアン酸、および、酢酸、蓚酸、乳酸、フマル酸、フマル酸、クエン酸、サリチル酸、安息香酸等の有機カルボン酸及び、有機スルホン酸等が挙げられる。
【0069】
凝集剤は、浸透抑制インク全量に対して5質量%以下の範囲で含有することが好ましく、1~4質量%の範囲内で含有することが、色材インク中のアニオン性の成分を効果的に凝集させることができる。
【0070】
浸透抑制インク中の凝集剤の含有量は、公知の方法で測定することができる。例えば、凝集剤が多価金属塩であるときはICP発光分析で、凝集剤が酸であるときは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で含有量を測定することができる。
【0071】
〔水、有機溶媒及び界面活性剤〕
本発明に係る浸透抑制インクに含まれる水については、特に限定されるものではなく、イオン交換水、蒸留水、又は純水であり得る。浸透抑制インクにおける水の含有量は、特に限定されないが、45~80質量%の範囲内であることが好ましい。
【0072】
また、本発明に係る浸透抑制インクの溶媒として、水の他に有機溶媒を含有することができる。有機溶媒としては、水溶性の有機溶媒を好適に用いることができる。水溶性の有機溶媒としては、例えば、アルコール類、多価アルコール類、アミン類、アミド類、グリコールエーテル類、炭素数が4以上である1,2-アルカンジオール類などが挙げられる。
【0073】
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、t-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、n-ノニルアルコール、トリデシルアルコール、n-ウンデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0074】
多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレンオキサイド基の数が5以上のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、プロピレンオキサイド基の数が4以上のポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等が挙げられる。
【0075】
アミン類としては、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、モルホリン、N-エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等が挙げられる。
【0076】
アミド類としては、例えば、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0077】
グリコールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0078】
炭素数が4以上である1,2-アルカンジオール類としては、例えば、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール等が挙げられる。
【0079】
浸透抑制インクには、これら有機溶媒から選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて含有することができる。浸透抑制インクにおける有機溶媒の含有量は、特に限定されないが、10~50質量%の範囲内であることが好ましい。
【0080】
本発明に係る浸透抑制インクは、インクジェット法で塗布する場合に、ノズルからの吐出安定性、布帛に塗布後の乾燥性等の向上を目的として、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、特に制限なく用いることができるが、浸透抑制インクの構成成分にカチオン性の化合物を含有するときは、界面活性剤のイオン性はカチオン、ノニオン又はベタイン型が好ましい。界面活性剤の具体例としては、後述の浸透剤において説明する界面活性剤が挙げられる。なお、浸透抑制インクは、界面活性剤(浸透剤)を含有する場合であっても、凝集剤等の作用により、色材インクの浸透性を抑制するように機能する。
【0081】
浸透抑制インクにおける界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、0.05~3質量%の範囲内であることが好ましい。
【0082】
浸透抑制インクは、本発明の効果を損なわない範囲で、その他、架橋剤、防黴剤、殺菌剤等、他の成分を適宜配合することができる。
【0083】
さらに、例えば特開昭57-74193号公報、同57-87988号公報及び同62-261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57-74192号公報、同57-87989号公報、同60-72785号公報、同61-146591号公報、特開平1-95091号公報及び同3-13376号公報等に記載の退色防止剤、アニオン、カチオン又は非イオンの各種界面活性剤、特開昭59-42993号公報、同59-52689号公報、同62-280069号公報、同61-242871号公報及び特開平4-219266号公報等に記載の蛍光増白剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤等、公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0084】
《浸透促進インク》
浸透促進インクは、例えば、インクジェット法により布帛に塗布される。浸透促進インクをインクジェット法で塗布する場合、浸透剤に溶媒が添加される等によりその粘度が、浸透抑制インクと同程度に調整される。浸透促進インクは、例えば、浸透剤を含有し、さらに、水及び有機溶媒を基本成分として含有することができる。
【0085】
〔浸透剤〕
浸透剤として、具体的には、ラクタム構造を有する化合物及び界面活性剤等が挙げられる。
【0086】
ラクタム構造を有する化合物としては、例えば、2-ピロリドン、2-アセチジノン、2-ピペリドン、ε-カプロラクタム、4-エチル-2-アセチジノン、N-メチル-2-ピロリドン、及び3-アミノ-2-ピペリドンが挙げられる。
【0087】
界面活性剤として好ましくは、静的な表面張力の低減能が高いフッ素系又はシリコーン系界面活性剤や、動的な表面張力の低減能が高いジオクチルスルホサクシネートなどのアニオン界面活性剤、比較的低分子量のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アセチレングリコール類、プルロニック型界面活性剤(プルロニックは登録商標)、ソルビタン誘導体などのノニオン界面活性剤が好ましく用いられる。フッ素系又はシリコーン系界面活性剤と、動的な表面張力の低減能が高い界面活性剤を併用して用いることも好ましい。
【0088】
上記シリコーン系の界面活性剤としては、好ましくはポリエーテル変性ポリシロキサン化合物があり、例えば、信越化学工業社製のKF-351A、KF-642やビッグケミー社製のBYK345、BYK347、BYK348、エボニック社製のTegowet260等が挙げられる。
【0089】
上記フッ素系の界面活性剤は通常の界面活性剤の疎水性基の炭素に結合した水素の代わりに、その一部または全部をフッ素で置換したものを意味する。この内、分子内にパーフルオロアルキル基を有するものが好ましい。
【0090】
上記フッ素系の界面活性剤の内、ある種のものはDIC社からメガファック(Megafac)Fなる商品名で、AGC社からサーフロン(Surflon)なる商品名で、ミネソタ・マイニング・アンド・マニファクチュアリング・カンパニー社からフルオラッド(Fluorad)FCなる商品名で、インペリアル・ケミカル・インダストリー社からモンフロール(Monflor)なる商品名で、イー・アイ・デュポン・ネメラス・アンド・カンパニー社からゾニルス(Zonyls)なる商品名で、またファルベベルケ・ヘキスト社からリコベット(Licowet)VPFなる商品名で、それぞれ市販されている。
【0091】
界面活性剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤及びアセチレンアルコール系界面活性剤も好ましく用いられる。
【0092】
アセチレングリコール系界面活性剤及びアセチレンアルコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール及び2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのアルキレンオキシド付加物、並びに2,4-ジメチル-5-デシン-4-オール及び2,4-ジメチル-5-デシン-4-オールのアルキレンオキサイド付加物からなる群より選ばれる一種以上が好ましい。これらは、オルフィン104シリーズ、オルフィンE1010等のEシリーズ、オルフィンPD002W002、サーフィノール465、サーフィノール61(日信化学工業社製商品名)、ペレックス SS-H(花王ケミカル社製商品名)等の市販品として入手可能である。
【0093】
浸透促進インクにおける浸透剤の含有量は、浸透剤の種類により浸透性向上効果と粘度を勘案して適宜調整される。ラクタム構造を有する化合物の含有量は、浸透促進インクの全量に対して、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは25~55質量%である。界面活性剤の含有量は、浸透促進インクの全量に対して、0.1~5質量%であることが好ましく、0.2~3.0質量%であることがより好ましい。
【0094】
浸透促進インクが浸透剤として界面活性剤を含有する場合には、浸透促進インクは、インクジェット法に用いた場合の吐出安定性を向上させるために、キレート剤又は芳香族化合物を含有してもよい。
【0095】
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミンコハク酸、イミノジスルホコハク酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、ビス(2-アミノエチル)エチレングリコール四酢酸、ビス(2-アミノフェニル)エチレングリコール四酢酸、ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン、1,2-ジアミノシクロヘキサン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、イミノ二酢酸、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三メチルリン酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、テトラキス(2-ピリジルメチル)エチレンジアミン等の化合物が挙げられる。
【0096】
キレート剤は、例えば、フェノール樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、及びエポキシ樹脂が配位基を有する樹脂であってもよい。
【0097】
キレート剤は、上記の化合物又は樹脂と、金属イオン、NH4+、UO22+、VO2+等の陽イオンとの塩であってもよい。キレート剤は、上記の化合物、樹脂、及びそれらの塩の水和物であってもよい。
【0098】
芳香族化合物としては、特定の置換基を有するベンゼン環又はナフタレン環を有する化合物が好ましく、例えば、スルホン酸芳香族化合物、カルボン酸芳香族化合物、及びリン酸芳香族化合物が挙げられる。
【0099】
キレート剤の含有量は、浸透促進インクの全量に対して、0.001~0.1質量%が好ましい。芳香族化合物の含有量は、浸透促進インクの全量に対して、0.01~50質量%が好ましく、0.1~20質量%がより好ましい。
【0100】
〔水及び有機溶媒〕
浸透促進インクにおける水及び有機溶媒の具体例は、浸透抑制インクの場合と同様とすることができる。水及び有機溶媒の含有量は、浸透剤の種類に応じて、粘度が上記好ましい範囲となるように適宜調整することが好ましい。
【0101】
また、浸透促進インクは、本発明の効果を損なわない範囲で、浸透抑制インクと同様のその他の成分を適宜配合することができる。
【0102】
(機能性インク乾燥部)
捺染装置100は、必要に応じて前処理部10と印捺部20の間に機能性インク乾燥部を有してもよい。機能性インク乾燥部は、前処理部10で塗布された機能性インクPrを乾燥する。乾燥手段としては、特に限定されず、温風、ホットプレート、又はヒートローラーによる加熱であることが好ましい。短時間で十分に溶媒成分を除去する観点では、加熱乾燥がより好ましい。乾燥温度は、100~130℃の範囲内であることが好ましい。
【0103】
(印捺部)
印捺部20は、前処理が施された、すなわち機能性インクPrが塗布された布帛T2に色材インクInを塗布する部材である。印捺部20として、具体的には、色材インク塗布装置等が挙げられる。印捺部20における色材インクInの塗布は、制御部30により、塗布量及び塗布位置等が制御されて行われる。
【0104】
制御部30における印捺部20に対する上記制御は、浸透度画像及び印捺画像に従って行われる。特に色材インクInの塗布量については、浸透度画像に従って、上記(1-2)の制御が行なわれる。浸透度画像及び印捺画像に対応した色材インクInの塗布を行うために、印捺部20の塗布方式としては、インクジェット法が好ましい。
【0105】
色材インクの塗布方式としてインクジェット法を用いる場合、色材インク塗布装置は、色材インクを吐出するヘッドとヘッドを搭載するキャリッジを有する。ヘッドは、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの4色カラーインクを吐出する各ヘッドを有する。本明細書において、色の表記に関して、シアンは「C」、マゼンタは「M」、イエローは「Y」、ブラックは「K」とそれぞれ表記される。
【0106】
ヘッドを構成するCMYKの各ヘッドにおける色材インクの吐出方式は、特に制限されず、オンデマンド方式及びコンティニュアス方式のいずれのヘッドでもよい。オンデマンド方式のヘッドの例には、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型及びシェアードウォール型を含む電気-機械変換方式、ならびにサーマルインクジェット型及びバブルジェット(「バブルジェット」はキヤノン株式会社の登録商標)型を含む電気-熱変換方式等が含まれる。
【0107】
上記ヘッドの中では、オンデマンド方式のヘッドが好ましく、電気-機械変換方式に用いられる電気-機械変換素子として圧電素子を用いたヘッド(「ピエゾ型インクジェットヘッド」ともいう。)であることが好ましい。
【0108】
色材インク塗布装置はスキャン方式及びライン方式のいずれであってもよい。スキャン方式の場合、キャリッジがヘッドを前処理布帛T2の搬送方向と直交する前処理布帛T2の幅方向に移動させて印捺を行う。ヘッドが移動する方向を「走査方向」という。
【0109】
CMYKの各ヘッドの前処理布帛T2の表面と対向する面(ノズル面)には、それぞれノズルが走査方向と直交する搬送方向に沿って複数配列されて設けられており、色材インクに対して適切に圧力が印加されることでこれらのノズルから色材インクを微小な液滴として吐出する。色材インク塗布装置は、ヘッドにおけるノズル面が前処理布帛T2の表面に直交する方向(高さ方向)に当該表面から所定の距離離隔した状態でキャリッジにより支持されている。
【0110】
色材インク塗布装置は、さらに、キャリッジを走査方向に往復移動可能に支持するキャリッジ駆動機構を有している。キャリッジ駆動機構には、例えば、動力源となるモーター及び伝動装置並びにエンコーダ等のセンサが含まれる。
【0111】
色材インク塗布装置がライン方式の場合、色材インク塗布装置は、前処理布帛T2の幅以上の長さを持ち、CMYKの各色の色材インクに対応するヘッドは前処理布帛T2の搬送方向に沿って順に配置される。
【0112】
ライン方式の色材インク塗布装置において、一つのヘッドで前処理布帛T2の幅以上であるものを用いてもよいし、複数のヘッドを組み合わせて前処理布帛T2の幅以上となるように構成してもよい。また、複数のヘッドを、互いのノズルが互い違いとなるように並設して、これらヘッド全体として解像度を高くしてもよい。また、このような色材インク塗布装置を、布帛の搬送方向に沿って複数並設してもよい。
【0113】
なお、
図1の捺染装置100では、機能性インク塗布装置と色材インク塗布装置が別々に設けられているが、これらを一体化して設けてもよい。その場合、機能性インク用のヘッドと色材インク用のヘッドをその順に同一のキャリッジに搭載すればよい。
【0114】
<色材インク>
本発明の捺染装置に用いられる色材インクは、典型的には、色材と、水と、水溶性有機溶剤を含有する。色材インクは、さらに、疎水性高分子を含有することが好ましい。色材インクの25℃における粘度は、6~20mPa・sの範囲に調整されていることが好ましい。
【0115】
色材インクの粘度が6mPa・s以上であると、高い吐出周波数で吐出させても、ノズルの吐出口付近での色材インクのメニスカスが不安定になりにくいため、吐出安定性の低下を抑制できる。色材インクの粘度が20mPa・s以下であると、ノズル詰まりを抑制できる。色材インクの粘度は、同様の観点から、7~15mPa・sの範囲内であることがより好ましい。
【0116】
色材インクの粘度は、色材インク組成、例えば色材の含有量や、疎水性高分子の含有量、溶剤組成などによりで調整することができる。粘度を適度に高める観点では、色材の含有量を一定以上としたり、水溶性有機溶剤として、粘度が高いもの、例えばグリセリンなどの3価以上のアルコール類を含む多価アルコール類の含有量を一定以上としたり、疎水性高分子の含有量を一定以上としたりすることが好ましく、これらの二以上を組み合わせることがより好ましい。
【0117】
〔色材〕
色材としては、特に限定されず、例えば、顔料又は染料であることが好ましい。顔料は、特に限定されないが、例えばカラーインデックスに記載される下記番号の有機顔料又は無機顔料でありうる。
【0118】
赤又はマゼンタ顔料の例には、Pigment Red 3、5、19、22、31、38、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、208、216、226、257、Pigment Violet 3、19、23、29、30、37、50、88、Pigment Orange 13、16、20、36が含まれる。
【0119】
青又はシアン顔料の例には、Pigment Blue 1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17-1、22、27、28、29、36、60が含まれる。
【0120】
緑顔料の例には、Pigment Green 7、26、36、50が含まれる。黄顔料の例には、Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94,95、97、108、109、110、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193が含まれる。
【0121】
黒顔料の例には、Pigment Black 7、28、26が含まれる。
【0122】
顔料の市販品の例には、クロモファインイエロー2080、5900、5930、AF-1300、2700L、クロモファインオレンジ3700L、6730、クロモファインスカーレット6750、クロモファインマゼンタ6880、6886、6891N、6790、6887、クロモファインバイオレット RE、クロモファインレッド6820、6830、クロモファインブルーHS-3、5187、5108、5197、5085N、SR-5020、5026、5050、4920、4927、4937、4824、4933GN-EP、4940、4973、5205、5208、5214、5221、5000P、クロモファイングリーン2GN、2GO、2G-550D、5310、5370、6830、クロモファインブラックA-1103、セイカファストエロー10GH、A-3、2035、2054、2200、2270、2300、2400(B)、2500、2600、ZAY-260、2700(B)、2770、セイカファストレッド8040、C405(F)、CA120、LR-116、1531B、8060R、1547、ZAW-262、1537B、GY、4R-4016、3820、3891、ZA-215、セイカファストカーミン6B1476T-7、1483LT、3840、3870、セイカファストボルドー10B-430、セイカライトローズR40、セイカライトバイオレットB800、7805、セイカファストマルーン460N、セイカファストオレンジ900、2900、セイカライトブルーC718、A612、シアニンブルー4933M、4933GN-EP、4940、4973(大日精化工業製); KET Yellow 401、402、403、404、405、406、416、424、KET Orange 501、KET Red 301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、336、337、338、346、KET Blue 101、102、103、104、105、106、111、118、124、KET Green 201(大日本インキ化学製);Colortex Yellow 301、314、315、316、P-624、314、U10GN、U3GN、UNN、UA-414、U263、Finecol Yellow T-13、T-05、Pigment Yellow1705、Colortex Orange 202、ColortexRed101、103、115、116、D3B、P-625、102、H-1024、105C、UFN、UCN、UBN、U3BN、URN、UGN、UG276、U456、U457、105C、USN、Colortex Maroon601、Colortex BrownB610N、Colortex Violet600、Pigment Red 122、ColortexBlue516、517、518、519、A818、P-908、510、Colortex Green402、403、Colortex Black 702、U905(山陽色素製);Lionol Yellow1405G、Lionol Blue FG7330、FG7350、FG7400G、FG7405G、ES、ESP-S(東洋インキ製)、Toner Magenta E02、Permanent RubinF6B、Toner Yellow HG、PermanentYellow GG-02、Hostapeam BlueB2G(ヘキストインダストリ製);Novoperm P-HG、Hostaperm Pink E、Hostaperm Blue B2G(クラリアント製);カーボンブラック#2600、#2400、#2350、#2200、#1000、#990、#980、#970、#960、#950、#850、MCF88、#750、#650、MA600、MA7、MA8、MA11、MA100、MA100R、MA77、#52、#50、#47、#45、#45L、#40、#33、#32、#30、#25、#20、#10、#5、#44、CF9(三菱化学製)が含まれる。
【0123】
染料は、特に限定されないが、例えば、分散性染料、反応性染料、酸性染料、塩基性染料、直接染料等が挙げられる。なお、分散性染料を含有するインクを分散性インクといい、反応性染料を含有するインクを反応性インクともいう。
【0124】
分散性染料としては、昇華性染料であることが好ましい。ここで、「昇華性染料」としては、加熱により昇華する性質を有する染料をいう。
【0125】
分散性染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ディスパースイエロー3、4、5、7、9、13、23、24、30、33、34、42、44、49、50、51、54、56、58、60、63、64、66、68、71、74、76、79、82、83、85、86、88、90、91、93、98、99、100、104、108、114、116、118、119、122、124、126、135、140、141、149、160、162、163、164、165、179、180、182、183、184、186、192、198、199、202、204、210、211、215、216、218、224、227、231、232;C.I.ディスパースオレンジ1、3、5、7、11、13、17、20、21、25、29、30、31、32、33、37、38、42、43、44、45、46、47、48、49、50、53、54、55、56、57、58、59、61、66、71、73、76、78、80、89、90、91、93、96、97、119、127、130、139、142;C.I.ディスパースレッド1、4、5、7、11、12、13、15、17、27、43、44、50、52、53、54、55、56、58、59、60、65、72、73、74、75、76、78、81、82、86、88、90、91、92、93、96、103、105、106、107、108、110、111、113、117、118、121、122、126、127、128、131、132、134、135、137、143、145、146、151、152、153、154、157、159、164、167、169、177、179、181、183、184、185、188、189、190、191、192、200、201、202、203、205、206、207、210、221、224、225、227、229、239、240、257、258、277、278、279、281、288、298、302、303、310、311、312、320、324、328;C.I.ディスパースバイオレット1、4、8、23、26、27、28、31、33、35、36、38、40、43、46、48、50、51、52、56、57、59、61、63、69、77;C.I.ディスパースグリーン9;C.I.ディスパースブラウン1、2、4、9、13、19;C.I.ディスパースブルー3、7、9、14、16、19、20、26、27、35、43、44、54、55、56、58、60、62、64、71、72、73、75、79、81、82、83、87、91、93、94、95、96、102、106、108、112、113、115、118、120、122、125、128、130、139、141、142、143、146、148、149、153、154、158、165、167、171、173、174、176、181、183、185、186、187、189、197、198、200、201、205、207、211、214、224、225、257、259、267、268、270、284、285、287、288、291、293、295、297、301、315、330、333、359、360;C.I.ディスパースブラック1、3、10、24が挙げられる。
【0126】
酸性染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.アシッドイエロー1、3、6、11、17、18、19、23、25、36、38、40、40:1、42、44、49、59、59:1、61、65、67、72、73、79、99、104、159、169、176、184、193、200、204、207、215、219、219:1、220、230、232、235、241、242、246;C.I.アシッドオレンジ3、7、8、10、19、22、24、33、51、51S、56、67、74、80、86、87、88、89、94、95、107、108、116、122、127、140、142、144、149、152、156、162、166、168、C.I.アシッドレッド1、6、8、9、13、18、27、35、37、52、54、57、60、73、82、88、97、97:1、106、111、114、118、119、127、131、138、143、145、151、183、195、198、211、215、217、225、226、249、251、254、256、257、260、261、265、266、274、276、277、289、296、299、315、318、336、337、357、359、361、362、364、366、399、407、415;C.I.アシッドバイオレット17、19、21、42、43、47、48、49、54、66、78、90、97、102、109、126;C.I.アシッドブルー1、7、9、15、23、25、40、61:1、62、72、74、80、83、90、92、103、104、112、113、114、120、127、127:1、128、129、138、140、142、156、158、171、182、185、193、199、201、203、204、205、207、209、220、221、224、225、229、230、239、258、260、264、277:1、278、279、280、284、290、296、298、300、317、324、333、335、338、342、350;C.I.アシッドグリーン9、12、16、19、20、25、27、28、40、43、56、73、81、84、104、108、109;C.I.アシッドブラウン2、4、13、14、19、28、44、123、224、226、227、248、282、283、289、294、297、298、301、355、357、413;C.I.アシッドブラック1、2、3、24、24:1、26、31、50、52、52:1、58、60、63、63S、107、109、112、119、132、140、155、172、187、188、194、207、222等が挙げられる。
【0127】
塩基性染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ベーシックイエロー1、2、13、19、21、25、32、36、40、51;C.I.ベーシックレッド1、5、12、19、22、29、37、39、92;C.I.ベーシックブルー1、3、9、11、16、17、24、28、41、45、54、65、66;C.I.ベーシックブラック2、8等が挙げられる。
【0128】
直接染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ダイレクトイエロー8、9、10、11、12、22、27、28、39、44、50、58、86、87、98、105、106、130、137、142、147、153;C.I.ダイレクトオレンジ6、26、27、34、39、40、46、102、105、107、118;C.I.ダイレクトレッド2、4、9、23、24、31、54、62、69、79、80、81、83、84、89、95、212、224、225、226、227、239、242、243、254;C.I.ダイレクトバイオレット9、35、51、66、94、95;C.I.ダイレクトブルー1、15、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、160、168、189、192、193、199、200、201、202、203、218、225、229、237、244、248、251、270、273、274、290、291;C.I.ダイレクトグリーン26、28、59、80、85;C.I.ダイレクトブラウン44、44:1、106、115、195、209、210、212:1、222、223、C.I.ダイレクトブラック17、19、22、32、51、62、108、112、113、117、118、132、146、154、159、169等が挙げられる。
【0129】
反応性染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.リアクティブイエロー2、3、7、15、17、18、22、23、24、25、27、37、39、42、57、69、76、81、84、85、86、87、92、95、102、105、111、125、135、136、137、142、143、145、151、160、161、165、167、168、175、176;C.I.リアクティブオレンジ1、4、5、7、11、12、13、15、16、20、30、35、56、64、67、69、70、72、74、82、84、86、87、91、92、93、95、99、107;C.I.リアクティブレッド2、3、3:1、5、8、11、21、22、23、24、28、29、31、33、35、43、45、49、55、56、58、65、66、78、83、84、106、111、112、113、114、116、120、123、124、128、130、136、141、147、158、159、171、174、180、183、184、187、190、193、194、195、198、218、220、222、223、226、228、235、245;C.I.リアクティブバイオレット1、2、4、5、6、22、23、33、36、38;C.I.リアクティブブルー2、3、4、7、13、14、15、19、21、25、27、28、29、38、39、41、49、50、52、63、69、71、72、77、79、89、104、109、112、113、114、116、119、120、122、137、140、143、147、160、161、162、163、168、171、176、182、184、191、194、195、198、203、204、207、209、211、214、220、221、222、231、235、236;C.I.リアクティブグリーン8、12、15、19、21;C.I.リアクティブブラウン2、7、9、10、11、17、18、19、21、23、31、37、43、46;C.I.リアクティブブラック5、8、13、14、31、34、39等が挙げられる。
【0130】
以上述べた染料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0131】
これらの中でも、色材インクの構成成分に対して良好な分散性を有し、かつ耐候性に優れることから、顔料が好ましい。
【0132】
色材の含有量は、特に限定されないが、色材インクの粘度を上記範囲内に調整しやすく、かつ高濃度の画像を形成可能にする観点では、色材インクに対して4~15質量%の範囲内であることが好ましい。
色材の含有量が4質量%以上であると、色材インクの粘度を適度に高めうるだけでなく、高濃度の画像を形成しやすい。色材の含有量が15質量%以下であると、色材インクの粘度が高くなりすぎないため、ノズル詰まりなどを生じにくい。色材の含有量は、同様の観点から、色材インクに対して5~15質量%の範囲内であることがより好ましく、6.5~12質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0133】
〔疎水性高分子〕
疎水性高分子は、水分散性高分子であり、高分子分散剤や水分散性樹脂(バインダ樹脂)などでありうる。
【0134】
高分子分散剤の種類は、特に制限されないが、その例には、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれた2種以上の単量体からなるブロック共重合体、ランダム共重合体及びこれらの塩、ポリオキシアルキレン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどが含まれる。
【0135】
高分子分散剤がカルボキシ基などの酸性基を有する場合、酸性基は、中和塩基で中和されていることが好ましい。中和塩基の例には、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリンなどの有機塩基が含まれる。
【0136】
水分散性樹脂の例には、ウレタン系樹脂、ブタジエン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレンなどが含まれる。ブタジエン系樹脂の例には、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体が含まれる。アクリル系樹脂の例には、アクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル共重合体、シリコーン-アクリル共重合体、アクリル変性フッ素樹脂が含まれる。中でも、ウレタン系樹脂やスチレン-アクリル共重合体が好ましい。
【0137】
スチレン-アクリル共重合体の例には、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体が含まれる。(メタ)アクリル酸エステルの例には、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノールEO変性(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0138】
ウレタン樹脂は、ポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させて得られる重合体である。ポリオールの例には、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ジエチレンアジペート)、ポリ(プロピレンアジペート)、ポリ(テトラメチレンアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)、シリコーンポリオールが含まれる。イソシアネートの例には、トリレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソサネート、水素化4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートが含まれる。
【0139】
水分散性樹脂のガラス転移点Tgは、特に制限されないが、例えば-30~100℃、好ましくは-10~50℃、より好ましくは20~40℃の範囲内でありうる。
【0140】
水分散性樹脂の酸価は、特に制限されないが、分散安定性を高める観点などから、44mgKOH/g以上であることが好ましく、60mgKOH/g以上であることがより好ましい。酸価の上限値は、例えば110mgKOH/gとしうる。酸価は、JIS K0070に準じて測定することができる。
【0141】
水分散性樹脂の平均粒子径は、特に制限されないが、ヘッドのノズル詰まりを生じにくくする観点では、300nm以下であることが好ましく、130nm以下であることがより好ましい。水分散性樹脂の平均粒子径は、レーザ回折散乱式粒子径分布測定で測定することができる。
【0142】
疎水性高分子の含有量は、その種類に応じて適宜設定される。例えば、疎水性高分子が高分子分散剤である場合、高分子分散剤の含有量は、色材インクに対して例えば4質量%以下、好ましくは0.8~2質量%の範囲内であることが好ましい。高分子分散剤が0.8質量%以上であると、顔料などの固体着色剤の分散性を十分に高めやすく、4質量%以下であると、粘度の過剰な上昇を抑制しやすい。
【0143】
疎水性高分子が水分散性樹脂(バインダ樹脂)である場合は、色材インクの粘度を上記範囲内に調整しやすくする観点などから、水分散性樹脂(バインダ樹脂)の含有量は、色材インクに対して1~15質量%であることが好ましい。水分散性樹脂の含有量が1質量%以上であると、色材インクの粘度を適度に高めやすいため、吐出安定性をより高めうるだけでなく、得られる画像の布帛への密着性や耐擦過性も高めやすい。水分散性樹脂の含有量が15質量%以下であると、色材インクの粘度が高くなりすぎないため、ノズル詰まりなどを生じにくい。水分散性樹脂の含有量は、同様の観点から、色材インクに対して2~10質量%であることがより好ましい。
【0144】
疎水性高分子が高分子分散剤と水分散性樹脂の両方を含む場合、色材インクの粘度を上記範囲に調整しやすくする観点から、疎水性高分子の総量は、色材インクに対して1~20質量%であることが好ましく、2~15質量%であることが好ましい。
【0145】
〔水溶性有機溶剤〕
水溶性有機溶剤としては、機能性インクにおける水溶性有機溶剤と同様の化合物が例示できる。中でも、色材インクの粘度を適度に高めやすくする観点では、水溶性有機溶剤は、多価アルコール類を含むことが好ましい。多価アルコール類は、色材インクの粘度を高めやすくする観点から、3価以上のアルコール類を含むことが好ましく、グリセリンを含むことがより好ましい。
【0146】
多価アルコール類の含有量は、適度に多いことが好ましい。具体的には、多価アルコール類の含有量が、色材インクに対して25~50質量%の範囲内であることが好ましい。多価アルコール類の含有量が一定以上であると、色材インクの粘度を高めやすく、一定以下であると、色材インクの粘度が高くなりすぎることによるノズル詰まりを抑制しやすい。同様の観点から、多価アルコール類の含有量は、色材インクに対して30~45質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0147】
〔他の成分〕
色材インクは、必要に応じて他の成分をさらに含みうる。他の成分の例には、溶剤、界面活性剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤、pH調整剤などが含まれる。
【0148】
界面活性剤は、色材インクの表面張力を制御する機能を有する。色材インクの構成成分にアニオン性の化合物を含有するときは、界面活性剤のイオン性はアニオン、ノニオン又はベタイン型が好ましい。界面活性剤としては、機能性インクで説明した界面活性剤と同様の界面活性剤が例示できる。
【0149】
防腐剤又は防黴剤の例には、芳香族ハロゲン化合物(例えば、PreventolCMK)、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(例えば、PROXELGXL)等が含まれる。
【0150】
pH調整剤の例には、尿素、水酸化ナトリウムなどが含まれる。
【0151】
(制御部)
制御部30は、浸透度画像に従って、前処理部10及び印捺部20をそれぞれ上記の(1-1)及び(1-2)のとおり制御する。浸透度画像は、制御部30内で形成されてもよく、外部でユーザーが定義した浸透度画像であってもよい。
【0152】
制御部30は、コンピュータに搭載され、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより構成される。制御部30を搭載するコンピュータは、さらに、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等で構成される記憶部を備える。記憶部には、捺染装置100の各部を動作させるための各種プログラム等が格納されている。制御部30がROM等に格納された各種プログラムを例えばRAMの作業領域に展開し、当該プログラムが制御部30において実行されることによって、捺染装置100の各部が統括制御されるようになっている。
【0153】
以下、
図2に示すブロック図を用いて、
図1に示す捺染装置100の制御系の要部について説明する。
図2では、捺染装置100の制御部30内で浸透度画像が形成される場合を示す。
【0154】
図2において、制御部30は、制御装置(コンピュータ)106内に、記憶部50及び情報取得部40と共に設置される。制御部30は、前処理制御部31、印捺制御部32、浸透度画像形成部33等を備える。制御部30は、これら以外に、布帛繰り出し部101、搬送部103、乾燥部105、及び布帛回収部102をそれぞれ制御する制御部を有するが、
図2においては記載を省略した。
【0155】
制御装置106では、情報取得部40が外部装置から取得した各種データを用いて、記憶部50のROMに記憶されたプログラムによる演算が行われ、その結果に基づいて、制御部30が、捺染装置100の各部の制御を行う。前処理制御部31及び印捺制御部32においては、浸透度画像形成部33で形成された浸透度画像に基づいて、前処理部10の機能性インク塗布装置11及び印捺部20の色材インク塗布装置21の制御が行なわれる。
【0156】
図2のブロック図において、情報取得部40が外部装置から取得したデータとして、印捺画像41、布帛の態様情報42及び温・湿度43を示す。これらのうち、印捺画像41は必須のデータである。布帛の態様情報42及び温・湿度43は任意のデータであり、情報取得部40は、これ以外に各種データを取得することも可能である。
【0157】
浸透度画像は、浸透度画像形成部33において、印捺画像41に基づいて、記憶部50に記憶されたプログラムにより演算されて形成される。当該プログラムは、例えば、浸透度画像が、印捺画像41の色濃度の高さに従って浸透度が高くなるように演算が設定されたプログラムであることが好ましい。
【0158】
印捺画像41の色濃度としては、例えば、CIE1976L*a*b*色空間におけるL*を用いることができる。L*は、色の明度を表し、値が小さいほど色濃度は高い。したがって、L*の値と浸透度の関係は、比例係数が負の一次多項式の関係となる。L*を指標として浸透度画像を形成する場合、例えば、画素単位で測定したL*の値を、上記一次多項式に挿入して、画素単位の浸透度を求めて浸透度画像を作成する。
【0159】
また、浸透度画像は、例えば、印捺画像41から所定の幅を有するエッジ部を除く非エッジ部を対象とする画像であることが好ましい。この場合、制御部30は、例えば、印捺画像41の輪郭を検出する輪郭検出部を有する。印捺画像41の輪郭は、印捺画像41をハーフトーン処理して、色材インクInを付与する画素の配置等を決定する場合、ハーフトーン処理前の印捺画像41に対して、種々の手法(Sobel法、Laplacian of Gaussian法、Canny法等)により画像の濃淡の差が大きい境界として検出することができる。
【0160】
印捺画像のエッジ部は、印捺画像の輪郭から内側に所定の幅を有する領域である。所定の幅としては、例えば、0.05~10mmが挙げられ、0.2~1mmが好ましい。印捺画像から、エッジ部を除いた領域が非エッジ部である。印捺画像の非エッジ部のみに機能性インクを塗布するために、印捺画像の非エッジ部に対応する浸透度画像を形成する。浸透度画像の形成方法は、上記と同様に行うことができる。
【0161】
なお、ユーザー定義の浸透度画像を用いる場合、
図2のブロック図における、浸透度画像形成部33に、外部装置から入力されたユーザー定義の浸透度画像のデータが送信される。
【0162】
捺染装置100においては、前処理制御部31が、(1-1)前処理部10における浸透性の調整処理を浸透度が高いほど浸透性が増加するように制御する。そのために、制御装置106において、例えば、上記のようにして得られる浸透度画像に基づいて、記憶部50のプログラムにより、各画素の浸透度に対応する機能性インクPrの塗布量が求められ、機能性インクPrの塗布位置及び塗布量を示す機能性インク塗布画像が形成される。そして、機能性インク塗布画像に基づいて、前処理制御部31が動作して、前処理部10に機能性インクPrの塗布を行なわせる。
【0163】
機能性インクPrとしては、例えば、布帛の種類に応じて、浸透抑制インク又は浸透促進インクが用いられる。機能性インクPrの塗布量としては、浸透抑制インク及び浸透促進インクのいずれの場合においても、概ね0~100g/m2の範囲とすることができ、0~30g/m2の範囲が好ましい。また、機能性インクPrの塗布量に対する色材インクInの塗布量の割合は、浸透抑制インク及び浸透促進インクのいずれの場合においても、0~1000質量%のとすることができ、0~200質量%の範囲が好ましい。
【0164】
また、捺染装置100においては、印捺制御部32が、(1-2)印捺部20における色材インクの塗布量を浸透度が高いほど増加するように制御する。そのために、制御装置106において、例えば、上記のようにして得られる浸透度画像及び印捺画像41に基づいて、記憶部50のプログラムにより、各画素の色材インクInの塗布量が求められ、色材インクInの塗布位置及び塗布量を示す色材インク塗布画像が形成される。そして、色材インク塗布画像に基づいて、印捺制御部32が動作して、印捺部20に色材インクInの塗布を行なわせる。
【0165】
なお、捺染装置100は、例えば、制御装置106内に画像処理部を有し、印捺画像41をC、M、Y、Kの4色の各色画像に分解する分版処理を行う機能を有する。各色の色材インクInの塗布位置及び塗布量は、分版処理によって生成されるC画像、M画像、Y画像及びK画像と、上記のようにして得られる浸透度画像に基づいて、画素単位で求められる。なお、例えば、C画像と浸透度画像から得られる色材インク塗布画像をシアンインク塗布画像とすると、ある画素におけるC画像のインク塗布量に対して、シアンインク塗布画像のインク塗布量は、浸透度画像における浸透度に応じて、0.5~3倍の量とすることができる。他の色の色材インクの塗布量においても同様である。
【0166】
色材インクPrの塗布量としては、例えば、C、M、Y、Kの4色の合計量として、概ね0~150g/m2の範囲とすることができ、0~50g/m2の範囲が好ましい。なお、色材インクの塗布量が0g/m2であるとは、印捺画像中の布帛と同じ色の領域、例えば布帛が白布である場合の白色の領域の場合である。
【0167】
上に説明した浸透度画像は、例えば、基準布における基準環境下での浸透度画像である。したがって、浸透度画像の形成においては、さらに、布帛の態様情報42又は温・湿度43の因子を加えることが好ましい。
図2中、温・湿度とは、環境温度及び環境相対湿度を示す。
【0168】
布帛の態様情報としては、布帛を構成する繊維の種類、布帛の厚さ、布帛の繊維密度、布帛を構成する繊維における化学繊維比率、布帛の織り方及び布帛を構成する繊維の太さ等が挙げられる。
【0169】
布帛の厚さとしては、概ね0.1~2.0mmの範囲が本発明に適用可能であり、本発明の効果を顕著に発現できる点で0.1~1.0mmの範囲が好ましい。布帛の繊維密度としては、概ね10~1000g/m2の範囲が本発明に適用可能であり、本発明の効果を顕著に発現できる点で50~300g/m2の範囲が好ましい。
【0170】
布帛を構成する繊維の種類としては、綿、麻、羊毛、又は絹等の天然繊維(親水性繊維)、レーヨン、ビニロン、ナイロン、アクリル、ポリウレタン、ポリエステル又はアセテート等の化学繊維が挙げられる。
【0171】
布帛を構成する繊維と色材インクには浸透性を観点として好ましい組み合わせがある。このような組み合わせとして、例えば、反応性染料を含有する色材インクとセルロースを主成分とする繊維(綿、麻、レーヨン等)、酸性染料を含有する色材インクと絹、羊毛、ナイロン繊維、塩基性染料とアクリル繊維、直接染料を含有する色材インクと綿、麻、レーヨン、分散染料を含有する色材インクとポリエステル繊維が挙げられる。この中でも、反応性染料を含有する色材インクとセルロースを主成分とする繊維、酸性染料を含有する色材インクと絹、羊毛、ナイロン繊維が好ましい。しかしながら、布帛を構成する繊維と色材インクの組み合わせはこれに限定されない。
【0172】
布帛の作製に用いられる糸は、純糸に限らず、混紡糸又は交撚糸であってもよい。縦糸と横糸とが同じ種類の繊維である布帛については、縦糸又は横糸の一方の糸の繊維の種類情報が特定されればよい。交織の布帛のように縦糸と横糸が異なる種類の繊維を用いた布帛については、縦糸と横糸のそれぞれの繊維の種類情報が特定されることが好ましい。
【0173】
繊維の太さを表す単位は、番手、テックス又はデニール等であってもよい。繊維の太さは概ね、10~100デニールの範囲で本発明に適用可能である。
【0174】
布帛の織り方としては、織布、不織布、編布等があり、織布における織り方の種類には、縦糸と横糸の組み合わせにより、平織、綾織、及び繻子織などがある。布帛は、2種類以上の繊維の混紡織布又は混紡不織布であってもよい。
【0175】
布帛を構成する繊維における化学繊維比率は、布帛の全量に対する含有する化学繊維の質量%として示される。
【0176】
布帛の態様情報に関し、布帛の厚さが厚いほど、布帛の繊維密度が高いほど浸透度を高く設定する。また、布帛を構成する繊維における化学繊維比率が高いほど、繊維の太さが太いほど、浸透度を低く設定する。
【0177】
また、温・湿度に関し、環境温度が高いほど浸透度を低く設定する。環境相対湿度が高いほど、浸透度を低く設定する。
【0178】
(乾燥部)
乾燥部105は、印捺部20で塗布された色材インクInを乾燥する。乾燥手段としては、特に限定されず、温風、ホットプレート、又はヒートローラーによる加熱であることが好ましい。短時間で十分に溶媒成分を除去する観点では、加熱乾燥がより好ましい。乾燥温度は、100~130℃の範囲内であることが好ましい。
【0179】
(定着部)
捺染装置100は、必要に応じて乾燥部105の搬送方向下流側に定着部を有してもよい。定着部は、乾燥部105で色材インクIn中の揮発成分を除去した後、その残部(色材インクInの固形分)を、さらなる加熱等により布帛に定着させる部材である。乾燥部105及び任意の定着部を経ることにより、色材インクは所期の色相を発現させることができる。定着部における加熱手段としては、例えば、常圧スチーム法、高圧スチーム法、サーモフィックス法等による加熱手段が挙げられる。なお、乾燥部105が定着部を兼ねることも可能である。
【0180】
(布帛回収部)
布帛回収部102は、乾燥部105の下流側に設けられ、乾燥部105で色材インクInが乾燥された印捺布帛3を巻き取りながら回収する。或いはまた、1枚ずつ分離された布帛が搬送される構成の場合の布帛回収部102は、印捺布帛T3が排出される布帛排出部であってもよい。
【0181】
[捺染方法]
本発明の捺染方法は、前処理工程と、印捺工程と、制御工程とを有し、各工程は以下のとおり実行される。
【0182】
前処理工程では、布帛に対する色材インクの浸透性を調整する処理を行う。
印捺工程では、布帛に色材インクを塗布して画像を印捺する。
制御工程は、浸透度画像に従って、前処理工程及び印捺工程をそれぞれ以下の(2-1)及び(2-2)のとおり制御する。
【0183】
(2-1)前処理工程における浸透性の調整処理を浸透度が高いほど浸透性が増加するように制御する。
(2-2)印捺工程における色材インクの塗布量を浸透度が高いほど増加するように制御する。
【0184】
本発明の捺染方法の実施形態としては、本発明の効果発現の観点から、前記前処理工程が、前記布帛にインクジェット法により浸透抑制剤又は浸透促進剤を含有する機能性インクを塗布する機構により行われ、前記制御工程が、前記浸透度画像に従って前記機能性インクの塗布量及び塗布位置を制御することが好ましい。
【0185】
本発明の捺染方法の実施形態としては、前記制御工程が、前記布帛の態様情報に応じて、前記浸透度画像を調整することが好ましい。上記機能性インクを用いる態様では、これに対応して、前記機能性インクの塗布量及び前記色材インクの塗布量が変更される。布帛の態様情報としては、布帛を構成する繊維の種類、布帛の厚さ、布帛の繊維密度、布帛を構成する繊維における化学繊維比率、布帛の織り方及び布帛を構成する繊維の太さから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0186】
また、前記制御工程が、環境温度及び環境相対湿度に応じて、前記浸透度画像を調整することが好ましい。上記機能性インクを用いる態様では、これに対応して、前記機能性インクの塗布量及び前記色材インクの塗布量が変更される。
【0187】
本発明の捺染方法の実施形態としては、本発明の効果発現の観点から、前記浸透度画像が、前記印捺部が印捺する画像の色濃度の高さに従って前記浸透度が高くなるように設定された画像であることが好ましい。
【0188】
本発明の捺染方法の実施形態としては、本発明の効果発現の観点から、前記浸透度画像が、前記印捺部が印捺する画像から所定の幅を有するエッジ部を除く非エッジ部を対象とする画像であることが好ましい。
【0189】
本発明の捺染方法の実施形態としては、本発明の効果発現の観点から、前記浸透度画像としてユーザーが定義した浸透度画像を用いることが好ましい。
【0190】
本発明の捺染方法においては、さらに、前処理工程、印捺工程及び制御工程以外にその他の工程を有してもよい。その他の工程としては、例えば、前処理工程と印捺工程の間に設けて、前処理工程で布帛に塗布した機能性インクを乾燥する機能性インク乾燥工程、印捺工程の後に設けて、印捺工程で布帛に塗布された色材インクを乾燥する乾燥工程、乾燥工程後に設けて、布帛に色材インクの定着を行う定着工程等が挙げられる。
【0191】
本発明の捺染方法は、例えば、上記本発明の捺染装置を用いて行うことができる。本発明における各工程の詳細は、上に説明した本発明の捺染装置における各構成部材における動作において説明したとおりである。
【符号の説明】
【0192】
100 捺染装置
10 前処理部
20 印捺部
30 制御部
101 布帛繰り出し部
102 布帛回収部
103 搬送部
105 乾燥部