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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】シフト装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/32 20060101AFI20250708BHJP
   F16H 63/38 20060101ALI20250708BHJP
【FI】
F16H61/32
F16H63/38
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021053673
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022150878
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2024-01-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】荻野 淳人
(72)【発明者】
【氏名】石川 康太
(72)【発明者】
【氏名】内田 豊
(72)【発明者】
【氏名】馬場 健太郎
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-8153(JP,A)
【文献】特開2021-38834(JP,A)
【文献】特開2020-191737(JP,A)
【文献】特開2016-75364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/32
F16H 63/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフト位置に応じた複数の谷部を含むシフト切替部材と、
ロータとステータとを含み、前記シフト切替部材を駆動させるモータと、
前記モータを駆動させる電圧を制御する第1制御部を含む第1駆動系統と、
前記第1駆動系統とは別個に設けられ、前記モータを駆動させる電圧を制御する第2制御部を含む第2駆動系統と、
前記シフト切替部材の前記複数の谷部のいずれかに嵌まり込んだ状態で前記シフト位置を成立させるための位置決め部材とを備え、
前記第1駆動系統および前記第2駆動系統のいずれか一方の駆動系統から出力された電圧により前記モータを駆動させて前記複数の谷部を連続して通過するように前記位置決め部材を移動させる際に、前記第1駆動系統および前記第2駆動系統の前記シフト位置を独立して取得するように構成され
前記第1制御部と、前記第2制御部とは、通信可能であり、
前記第1駆動系統および前記第2駆動系統のうち電圧を出力するいずれか一方の駆動系統は、前記第1制御部および前記第2制御部が互いに通信することにより、他方の駆動系統において前記複数の谷部の各々に対応する前記シフト位置の少なくともいずれかが取得されていないことを検知した場合に、取得した前記複数の谷部の各々に対応する前記シフト位置を消去するように構成されている、シフト装置。
【請求項2】
前記第1駆動系統および前記第2駆動系統のいずれか一方の駆動系統から出力された電圧により前記モータを駆動させて前記複数の谷部を連続して通過するように前記位置決め部材を移動させる際に、前記複数の谷部の各々の谷底の区間に前記位置決め部材が配置されたことに基づいて、前記第1駆動系統および前記第2駆動系統のいずれか一方から出力された電圧による前記モータの駆動に伴う前記位置決め部材の移動を所定時間停止させるように構成されている、請求項1に記載のシフト装置。
【請求項3】
前記位置決め部材の移動を前記所定時間停止したことに基づいて、前記第1駆動系統および前記第2駆動系統のうちのいずれか一方の駆動系統から再度電圧を出力することにより、前記モータを再駆動させるように構成されている、請求項2に記載のシフト装置。
【請求項4】
前記第1制御部と、前記第2制御部とは、通信可能であり、
前記第1制御部および前記第2制御部が互いに通信することにより、前記第1駆動系統および前記第2駆動系統のうち電圧を出力するいずれか一方の駆動系統が、前記モータを再駆動するタイミングを決定するように構成されている、請求項3に記載のシフト装置。
【請求項5】
前記モータの回転角度を計測する第1モータ回転角度センサおよび第2モータ回転角度センサと、
前記シフト切替部材に接続される出力軸の回転角度を計測する第1出力軸センサおよび第2出力軸センサとをさらに備え、
前記第1制御部は、前記第1モータ回転角度センサおよび前記第1出力軸センサの各々の計測値に基づいて前記シフト位置を取得するとともに、前記第2制御部は、前記第2モータ回転角度センサおよび前記第2出力軸センサの各々の計測値に基づいて前記シフト位置を取得する制御を行うように構成されている、請求項1~のいずれか1項に記載のシフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフト装置に関し、特に、複数の谷部を含むシフト切替部材を備えるシフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の谷部を含むシフト切替部材を備えるシフト装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、複数(4つ)の谷部を含むディテントプレートを備えるシフト装置が開示されている。シフト装置は、モータと、ディテントスプリングと、コントローラとを備えている。ディテントプレートは、モータにより駆動されてシフトレンジ(P位置、N位置、R位置およびD位置)を切り替えるシフト切替手段である。ディテントスプリングは、ディテントプレートのシフトレンジを固定するように構成されている。コントローラは、モータを駆動させて複数の谷部を連続して通過するようにディテントスプリングを移動させる際に、シフト位置を学習(取得)するように構成されている。
【0004】
ここで、上記特許文献1のシフト装置では、車両の前進、後進および車両の制動を制御するために、コントローラに異常が発生した場合でも、シフト切替を継続して行うことが求められている。
【0005】
そこで、上記のようなシフト装置を実現するため、第1マイコンと、第2マイコンとを備えるシフトバイワイヤシステムを適用することが考えられる(たとえば、特許文献2参照)。
【0006】
上記特許文献2のシフトバイワイヤシステムは、モータと、ディテントプレートと、ディテントスプリングとを備えている。シフトバイワイヤシステムでは、シフト切替の際、第1マイコンおよび第2マイコンのいずれかによりモータを駆動させる制御が行われている。また、シフトバイワイヤシステムでは、モータを制御可能な第1マイコンおよび第2マイコンが設けられているので、シフト切替の際、第1マイコンおよび第2マイコンのうちの一方が異常になった場合であっても、他方のマイコンを用いて、モータの駆動制御を継続可能である。ここで、上記特許文献2には、シフト位置を取得する際の第1マイコンおよび第2マイコンによるモータの駆動制御に関して開示されていない。
【0007】
これにより、上記特許文献1のシフト装置に上記特許文献2のようなシフトバイワイヤシステムを適用することにより、第1マイコンおよび第2マイコンを備えるシフト装置を実現可能である。すなわち、コントローラに異常が発生した場合でも、シフト切替を継続して行うことが可能なシフト装置が実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-75364号公報
【文献】特開2018-40426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、第1マイコンおよび第2マイコンを備える上記シフト装置において、上記特許文献2には明記されていないが、第1マイコンおよび第2マイコンによるシフト位置の学習が行われる。シフト位置の学習の一例として、上記シフト装置では、シフト位置の学習の際、ディテントプレートを駆動させるために必要なトルクをモータにおいて容易に出力させるため、第1マイコンおよび第2マイコンの両方からモータに電圧を加える場合が考えられる。すなわち、第1マイコンおよび第2マイコンの両方において、モータに電圧を加えて駆動させながら、ディテントスプリングの位置を認識することによりシフト位置の学習が行われると考えられる。このような場合、第1マイコンのシフト位置の学習が完了したが第2マイコンの学習が完了していない際、第1マイコンがモータを制動させるのに対して第2マイコンはモータを駆動させてしまうことが考えられる。したがって、このような上記シフト装置では、第1マイコンによるモータの制御および第2マイコンによるモータの制御同士が互いに干渉してまうことに起因して、第1マイコン(第1制御部)および第2マイコン(第2制御部)の互いのシフト位置の学習を阻害してしまうという問題点があると考えられる。
【0010】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、第1制御部および第2制御部の互いのシフト位置の学習を阻害しないようにすることが可能なシフト装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるシフト装置は、シフト位置に応じた複数の谷部を含むシフト切替部材と、ロータとステータとを含み、シフト切替部材を駆動させるモータと、モータを駆動させる電圧を制御する第1制御部を含む第1駆動系統と、第1駆動系統とは別個に設けられ、モータを駆動させる電圧を制御する第2制御部を含む第2駆動系統と、シフト切替部材の複数の谷部のいずれかに嵌まり込んだ状態でシフト位置を成立させるための位置決め部材とを備え、第1駆動系統および第2駆動系統のいずれか一方の駆動系統から出力された電圧によりモータを駆動させて複数の谷部を連続して通過するように位置決め部材を移動させる際に、第1駆動系統および第2駆動系統のシフト位置を独立して取得するように構成され、第1制御部と、第2制御部とは、通信可能であり、第1駆動系統および第2駆動系統のうち電圧を出力するいずれか一方の駆動系統は、第1制御部および第2制御部が互いに通信することにより、他方の駆動系統において複数の谷部の各々に対応するシフト位置の少なくともいずれかが取得されていないことを検知した場合に、取得した複数の谷部の各々に対応するシフト位置を消去するように構成されている。
【0012】
この発明の一の局面によるシフト装置では、上記のように、第1駆動系統および第2駆動系統のいずれか一方の駆動系統から出力された電圧によりモータを駆動させて複数の谷部を連続して通過するように位置決め部材を移動させる際に、シフト位置を取得するように構成されている。これにより、第1制御部および第2制御部によるシフト位置の学習の際、第1駆動系統および第2駆動系統のいずれかによりモータを制御しながら、第1制御部および第2制御部の両方によりディテントスプリングの位置を認識することによりシフト位置の学習が行われる。したがって、シフト位置の学習の際、第1制御部および第2制御部のいずれかからしかモータに電圧が加えられないので、第1制御部によるモータの制御および第2制御部によるモータの制御同士が互いに干渉しないようにすることができる。その結果、第1制御部によるモータの制御と第2制御部によるモータの制御とが干渉しないようにすることができるので、第1制御部および第2制御部の互いのシフト位置の学習を阻害しないようにすることができる。また、第1制御部および第2制御部のうちの一方が異常になった場合であっても、他方の制御部を用いて、モータの駆動制御を継続することができるので、モータの駆動制御を継続させることを保障することができる。また、他方の駆動系統においてシフト位置の取得が失敗していた場合に一方の駆動系統において取得されたシフト位置が消去されることにより、一方の駆動系統のみを用いてシフト切替部材を駆動させることを防止することができるので、第1駆動系統および第2駆動系統のいずれか一方しか駆動しないシフト装置の製造を防止することができる。
【0013】
上記一の局面によるシフト装置において、好ましくは、第1駆動系統および第2駆動系統のいずれか一方の駆動系統から出力された電圧によりモータを駆動させて複数の谷部を連続して通過するように位置決め部材を移動させる際に、複数の谷部の各々の谷底の区間に位置決め部材が配置されたことに基づいて、第1駆動系統および第2駆動系統のいずれか一方から出力された電圧によるモータの駆動に伴う位置決め部材の移動を所定時間停止させるように構成されている。
【0014】
このように構成すれば、複数の谷部の各々の谷底の区間に位置決め部材が配置されたことに基づいて、位置決め部材の移動を所定時間停止させることにより、モータの駆動に起因する振動、および、位置決め部材の実際の位置と計測された位置決め部材の位置との間のずれを解消することができるので、上記振動および上記ずれに起因する位置決め部材の位置の計測精度の悪化を抑制することができる。
【0015】
この場合、好ましくは、位置決め部材の移動を所定時間停止したことに基づいて、第1駆動系統および第2駆動系統のうちのいずれか一方の駆動系統から再度電圧を出力することにより、モータを再駆動させるように構成されている。
【0016】
このように構成すれば、位置決め部材の移動を所定時間停止させた後に再駆動させることにより、静的な状態で複数の谷部の各々の谷底の位置を学習することができるので、シフト位置を精度よく学習することができる。
【0017】
上記モータを再駆動させるシフト装置において、好ましくは、第1制御部と、第2制御部とは、通信可能であり、第1制御部および第2制御部が互いに通信することにより、第1駆動系統および第2駆動系統のうち電圧を出力するいずれか一方の駆動系統が、モータを再駆動するタイミングを決定するように構成されている。
【0018】
このように構成すれば、第1駆動系統および第2駆動系統のうち電圧を出力していないいずれか他方の駆動系統の制御周期に合わせて一方の駆動系統によるモータを再駆動させるタイミングを変更することができるので、第1制御部と第2制御部とを同期させた状態でモータを再駆動することができる。
【0021】
上記一の局面によるシフト装置において、好ましくは、モータの回転角度を計測する第1モータ回転角度センサおよび第2モータ回転角度センサと、シフト切替部材に接続される出力軸の回転角度を計測する第1出力軸センサおよび第2出力軸センサとをさらに備え、第1制御部は、第1モータ回転角度センサおよび第1出力軸センサの各々の計測値に基づいてシフト位置を取得するとともに、第2制御部は、第2モータ回転角度センサおよび第2出力軸センサの各々の計測値に基づいてシフト位置を取得する制御を行うように構成されている。
【0022】
このように構成すれば、一方の駆動系統から出力された電圧によりモータを駆動させて複数の谷部を連続して通過するように位置決め部材を移動させる際に、第1制御部および第2制御部の各々は並行してシフト位置を取得することができるので、第1制御部によるシフト位置の取得および第2制御部によるシフト位置の取得を互いに別個に行う場合と比較して、シフト位置の取得を効率良く行うことができる。
【0023】
なお、上記一の局面によるシフト装置において、以下のような構成も考えられる。
【0024】
(付記項1)
すなわち、シフト切替部材に接続される出力軸を含み、モータからシフト切替部材に駆動力を伝達する駆動力伝達機構部と、モータの回転角度を計測する第1モータ回転角度センサおよび第2モータ回転角度センサと、出力軸の回転角度を計測する第1出力軸センサおよび第2出力軸センサとをさらに備え、シフト位置を取得する際に、第1モータ回転角度センサおよび出力軸センサの計測値に基づいて第1駆動系統によりモータが駆動されるか、または、第2モータ回転角度センサおよび第2出力軸センサの計測値に基づいて第2駆動系統によりモータが駆動されるように構成されている。
【0025】
このように構成すれば、第1駆動系統および第2駆動系統の各々が独立してモータを駆動させる制御を行うことができるので、第1駆動系統および第2駆動系統のうちの一方が異常になった場合であっても、他方の駆動系統を用いて、モータの駆動制御を継続することができる。
【0026】
(付記項2)
上記一の局面によるシフト装置において、第1制御部と、第2制御部とは、通信可能であり、第1駆動系統および第2駆動系統のうち電圧を出力するいずれか一方の駆動系統が、他方の駆動系統からの通信結果に基づいて、モータの駆動を制御するように構成されている。
【0027】
このように構成すれば、第1制御部の制御周期と第2制御部の制御周期とのずれに合わせてモータの駆動を制御することにより、上記ずれを解消することができるので、第1制御部と第2制御部とを同期させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態によるシフト装置の全体構成を概略的に示した斜視図である。
図2】本実施形態によるシフト装置を構成するディテントプレートの構造を示した図である。
図3】本実施形態によるシフト装置を構成するアクチュエータユニットを示した断面図である。
図4】本実施形態によるシフト装置を構成するアクチュエータユニットにおいて、本体部からギヤハウジングを取り外した状態での減速機構部の内部構造を示した図である。
図5】本実施形態によるシフト装置を構成するアクチュエータユニットにおいて、中間ギヤの係合状態(駆動力伝達可能状態)を示した図である。
図6】本実施形態によるシフト装置を構成するアクチュエータユニットにおいて、中間ギヤの係合状態(駆動力非伝達状態)を示した図である。
図7】本実施形態による第1駆動系統および第2駆動系統を示したブロック図である。
図8】本実施形態によるシフト装置における、出力軸角度センサの出力値(出力軸角度)と、ロータ回転角度センサの出力値(モータ回転角度)と、モータの回転回数との関係を示す図である。
図9】本実施形態によるシフト装置のローラ部がR位置からN位置に向かって移動したときの状態を示した模式図である。
図10】本実施形態によるシフト装置のローラ部がN位置からR位置に向かって移動したときの状態を示した模式図である。
図11】本実施形態によるシフト装置の第2駆動系統によるモータを駆動させる際の通電パターンの一例を示した模式図である。
図12】本実施形態によるシフト装置において複数の谷部の各々の谷底において所定時間停止する状態を示した模式図である。
図13】本実施形態によるシフト装置の第2駆動系統によるモータを制動させる状態を示した模式図である。
図14】本実施形態によるシフト装置におけるシフト位置学習処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
図1図13を参照して、シフト装置100の構成について説明する。なお、本願明細書において、「モータの回転角度」と「ロータの回転角度」とは、同じ意味を表す。
【0031】
シフト装置100は、自動車などの車両に搭載されている。図1に示すように、車両は、乗員(運転者)がシフトレバー(またはシフトスイッチ)などの操作部を介してシフトの切替操作を行った場合に、変速機構部に対する電気的なシフト切替制御が行われる。すなわち、操作部に設けられたシフトセンサを介してシフトレバーの位置がシフト装置100側に入力される。そして、シフト装置100に設けられた後述する専用の第1MCU(Micro Controller Unit)171および第2MCU181から送信される制御信号に基づいて、乗員のシフト操作に対応したP(パーキング)位置、R(リバース)位置、N(ニュートラル)位置およびD(ドライブ)位置のいずれかのシフト位置に変速機構部が切り替えらえる。このようなシフト切替制御は、シフトバイワイヤ(SBW)と呼ばれる。
【0032】
シフト装置100は、アクチュエータユニット1と、アクチュエータユニット1により駆動されるシフト切替機構部2とを備えている。また、シフト切替機構部2は、変速機構部内の油圧制御回路部(図示せず)における油圧バルブボディのマニュアルスプール弁(図示せず)とパーキング機構部とに機械的に接続されている。そして、シフト切替機構部2が駆動されることによって変速機のシフト状態(P位置、R位置、N位置およびD位置)が機械的に切り替えられるように構成されている。
【0033】
アクチュエータユニット1は、モータ11と、駆動力伝達機構部12と、第1出力軸センサ13(図7参照)と、第2出力軸センサ14(図7参照)と、第1モータ回転角度センサ15(図7参照)と、第2モータ回転角度センサ16(図7参照)と、第1駆動系統17(図7参照)と、第2駆動系統18(図7参照)とを備えている。
【0034】
シフト切替機構部2は、図1に示すように、ディテントプレート21(特許請求の範囲の「シフト切替部材」の一例)と、ディテントスプリング22(特許請求の範囲の「位置決め部材」の一例)とを含んでいる。ディテントスプリング22は、P位置、R位置、N位置およびD位置のそれぞれに対応する回動角度位置でディテントプレート21を保持するように構成されている
【0035】
ディテントプレート21は、図2に示すように、シフト位置(P位置、R位置、N位置およびD位置)に対応するように設けられた複数(4つ)の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21d(複数の谷部)を有している。また、谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dによって、ディテントプレート21には連続的な起伏形状を有するカム面Caが形成されている。また、互いに隣接する谷部同士(たとえば、谷部21aおよび谷部21b、谷部21bおよび谷部21cなど)は、1つの頂部Tを有する山部Mにより隔てられている。ディテントスプリング22は、基端部(図2参照)が変速機構部のケーシング(図2参照)に固定されるとともに、自由端(図2参照)側にローラ部22aが取り付けられている。そして、ディテントスプリング22は、ローラ部22aが、常時、カム面Ca(谷部21a、谷部21b、谷部21c、谷部21dまたは山部Mのいずれかの位置)を押圧している。そして、ディテントスプリング22は、複数の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dのいずれかに嵌まり込んだ状態でシフト位置を成立させる。
【0036】
また、図2に示すように、最も端部側に配置される谷部21aには、ディテントスプリング22が谷部21aを超えて移動するのを抑制するための壁部121aが設けられている。最も端部側に配置される谷部21dには、ディテントスプリング22が谷部21dを超えて移動するのを抑制するための壁部121dが設けられている。具体的には、ディテントプレート21の矢印A方向の端部に配置される谷部21aに壁部121aが設けられている。また、ディテントプレート21の矢印B方向の端部に配置される谷部21dに壁部121dが設けられている。
【0037】
また、ディテントプレート21は、図1に示すように、後述する出力軸12b(図3参照)の下端部(Z2側)に固定されており、ディテントプレート21は、出力軸12bと一体的に回動軸C1まわりに回動される。これにより、ディテントスプリング22は、ディテントプレート21の矢印A方向または矢印B方向への正逆回動(揺動)に伴ってローラ部22aがカム面Caに沿って摺動することにより、ディテントスプリング22の付勢力によりローラ部22aが谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dのいずれかに嵌合するように構成されている。また、ディテントスプリング22は、ローラ部22aがディテントプレート21の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dのいずれかに選択的に嵌合することにより、それぞれ、P位置、R位置、N位置またはD位置に対応する回動角度位置でディテントプレート21が保持されるように構成されている。これにより、P位置、R位置、N位置またはD位置が個々に成立される。
【0038】
次に、アクチュエータユニット1の詳細な構成について説明する。
【0039】
図3に示すように、モータ11は、モータハウジングに対して回転可能に支持されたロータ111と、ロータ111の周囲に磁気的間隙を有して対向するように配置されたステータ112とによって構成されている。また、モータ11は、ディテントプレート21を駆動するように構成されている。
【0040】
また、モータ11として、永久磁石をロータ111の表面に組み込んだ表面磁石型(SPM)の三相モータが用いられる。具体的には、ロータ111は、シャフトピニオン111aと、ロータコア111bとを有している。
【0041】
ロータ111のシャフトピニオン111aと出力軸12bとは、同じ回動軸C1まわりに回転される。また、シャフトピニオン111aには、中央部から下端部(Z2側)にかけた外周領域に、ギヤ溝がヘリカル状に形成されたギヤ部121が一体的に形成されている。
【0042】
ステータ112は、モータハウジングのモータ室内に固定されたステータコア112aと、通電により磁力を発生する複数相(U相、V相およびW相)の励磁コイル(図示せず)とを有している。
【0043】
図3および図4に示すように、駆動力伝達機構部12は、モータ11の駆動力をディテントプレート21に伝達するように構成されている。駆動力伝達機構部12は、減速機構部12aと、出力軸12bとを含んでいる。
【0044】
減速機構部12aは、モータ11側から伝達される回転速度を減速した状態でディテントプレート21を回動させるように構成されている。
【0045】
具体的には、減速機構部12aは、ロータ111のギヤ部121と、ギヤ部121に噛合するギヤ部122aを有する中間ギヤ122と、中間ギヤ122と同じ軸心で下面側(Z2側)配置されるとともに中間ギヤ122と係合する中間ギヤ123と、中間ギヤ123のギヤ部123aに噛合するギヤ部124aを有する最終ギヤ124とを含む。
【0046】
また、図5および図6に示すように、中間ギヤ122には、回転中心部と外周部(ギヤ部122a)との間に、長径が周方向に沿って延びる複数(6個)の長孔122bが形成されている。複数の長孔122bは、周方向に互いに60度間隔で配置されている。また、中間ギヤ123は、ギヤ部123aが設けられた楕円形状の本体部123bを有しており、本体部123bのギヤ部123aとは反対側の上面(Z1側)から上方に突出する複数(2個)の円柱状の係合凸部123cが設けられている。係合凸部123cは、本体部123bにおける長径方向の両側の周縁部に配置されている。そして、中間ギヤ122に下方から上方(Z1側)に向かって中間ギヤ123が隣接配置された状態で、互いに180°間隔で配置された係合凸部123cの各々が、対応する中間ギヤ122の2つの長孔122bにそれぞれ挿入(係合)されるように構成されている。
【0047】
なお、係合凸部123cは、中間ギヤ122の長孔122bに対して所定の大きさ(周方向の長さ)からなるガタBaを有して嵌め合わされる。すなわち、互いに嵌め合わされた係合凸部123cと長孔122bとに生じる円周方向のガタBaの分(所定角度幅)だけ、中間ギヤ122と中間ギヤ123との間の相対的な自由回動(自由回転)が許容されるように構成されている。なお、図5は、中間ギヤ122から中間ギヤ123へ駆動力が伝達可能な状態を示しており、図6は、中間ギヤ122から中間ギヤ123へ駆動力が伝達不可能な状態を示している。
【0048】
出力軸12bは、モータ11の駆動力をディテントプレート21に出力するように構成されている。出力軸12bは、減速機構部12aの出力側に接続されている。出力軸12bは、ディテントプレート21の入力側に接続されている。これにより、出力軸12bと、ディテントプレート21とは、一体的に動作する。
【0049】
図7に示すように、第1出力軸センサ13は、出力軸12bの回転角度を検出するように構成されている。たとえば、第1出力軸センサ13は、ホール素子により構成されている。なお、出力軸12bの回転位置(出力角)は、連続的な出力軸角度として検出される。第2出力軸センサ14は、出力軸12bの回転角度を検出するように構成されている。たとえば、第2出力軸センサ14は、ホール素子により構成されている。なお、出力軸12bの回転位置(出力角)は、連続的な出力軸角度として検出される。
【0050】
第1モータ回転角度センサ15は、モータ11のロータ111の回転角度を検出するように構成されている。たとえば、第1モータ回転角度センサ15は、MRセンサ(Magneto Resistive Sensor)から構成されている。第2モータ回転角度センサ16は、モータ11のロータ111の回転角度を検出するように構成されている。たとえば、第2モータ回転角度センサ16は、MRセンサから構成されている。
【0051】
第1駆動系統17は、第1出力軸センサ13および第1モータ回転角度センサ15の計測値に基づいて、モータ11を駆動させる制御を行うように構成されている。第1駆動系統17は、第2駆動系統18とは独立してモータ11を制御するように構成されている。具体的には、第1駆動系統17は、第1MCU171(特許請求の範囲の「第1制御部」の一例)と、記憶部(図示せず)と、第1ドライバ172と、第1インバータ173とを有している。
【0052】
第1MCU171と、記憶部とは、電気的に接続されている。第1MCU171と、第1出力軸センサ13とは、電気的に接続されている。第1MCU171と、第1モータ回転角度センサ15とは、電気的に接続されている。第1MCU171と、第1ドライバ172とは、電気的に接続されている。第1ドライバ172と、第1インバータ173とは、電気的に接続されている。
【0053】
第1MCU171は、モータ11を駆動させる電圧を制御するように構成されている。第1MCU171は、基板に電子部品が実装された基板部品である。記憶部は、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などのメモリを有する記憶装置である。第1ドライバ172は、第1インバータ173を制御する信号を送信するように構成されている。第1ドライバ172は、電子部品である。第1インバータ173は、第1ドライバ172からの信号にON/OFFが切り替えられる複数(6個)の駆動FET(Field effect transistor)174を有している。第1インバータ173では、複数の駆動FET174のON/OFFを切り替えることにより、正弦波の三相交流電圧(U相、V相およびW相)が出力される。第1インバータ173は、複数(3個)の駆動FET174を有する上アーム173aと、複数(3個)の駆動FET174を有する下アーム173bとを有している。
【0054】
第2駆動系統18は、第2出力軸センサ14および第2モータ回転角度センサ16の計測値に基づいて、モータ11を駆動させる制御を行うように構成されている。第2駆動系統18は、第1駆動系統17とは独立してモータ11を制御するように構成されている。具体的には、第2駆動系統18は、第2MCU181(特許請求の範囲の「第2制御部」の一例)と、記憶部(図示せず)と、第2ドライバ182と、第2インバータ183とを有している。
【0055】
第2MCU181と、記憶部とは、電気的に接続されている。第2MCU181と、第2出力軸センサ14とは、電気的に接続されている。第2MCU181と、第2モータ回転角度センサ16とは、電気的に接続されている。第2MCU181と、第2ドライバ182とは、電気的に接続されている。第2ドライバ182と、第2インバータ183とは、電気的に接続されている。また、第1MCU171と、第2MCU181とは、互いに通信可能である。
【0056】
第2MCU181は、モータ11を駆動させる電圧を制御するように構成されている。第2MCU181は、基板に電子部品が実装された基板部品である。記憶部は、ROMおよびRAMなどのメモリを有する記憶装置である。第2ドライバ182は、第2インバータ183を制御する信号を送信するように構成されている。第2ドライバ182は、電子部品である。第2インバータ183は、第2ドライバ182からの信号にON/OFFが切り替えられる複数(6個)の駆動FET184を有している。第2インバータ183では、複数の駆動FET184のON/OFFを切り替えることにより、正弦波の三相交流電圧(U相、V相およびW相)が出力される。第2インバータ183は、複数(3個)の駆動FET184を有する上アーム183aと、複数(3個)の駆動FET184を有する下アーム183bとを有している。
【0057】
次に、シフト位置の移動と、第2出力軸センサ14の出力値および第2モータ回転角度センサ16の出力値との関係について説明する。なお、第1出力軸センサ13の出力値および第1モータ回転角度センサ15の出力値との関係は、第2出力軸センサ14の出力値および第2モータ回転角度センサ16の出力値との関係と同様の関係である。
【0058】
図8に示すように、モータ11の回転回数(0回、1回、2回、・・・、7回)の増加に伴って、シフト位置が、P位置、R位置、N位置およびD位置の順に変化するように、出力軸12bに接続されたディテントプレート21が回動する。この際、ディテントスプリング22は、谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dの順に嵌まり込む。そして、第2出力軸センサ14の出力値は、モータ11の回転回数が増加するのに伴って増加する。
【0059】
たとえば、図9および図10に示すように、現在、ローラ部22aが、谷部21b(R位置)に嵌まり込んでいたとする(区間1)。モータ11(図3参照)が駆動されることにより減速機構部12a(図1参照)を介してディテントプレート21が矢印A方向に回動される。なお、中間ギヤ122と中間ギヤ123との間に所定量のガタBa(図6参照)が設けられている。このため、ローラ部22aが谷部21bの谷底Vに完全に嵌まり込んだ状態では、ロータ111の回転とともに中間ギヤ122が回動されるにもかかわらず、長孔122bの内部において係合凸部123cがガタBaを利用して駆動力伝達不可能に係合されているので、中間ギヤ123は回動されない。この結果、区間1では、第2モータ回転角度センサ16(図8参照)により検出されるモータ11の回転角度(rad)は、線形的に増加する一方、第2出力軸センサ14(図8参照)により検出される出力軸12bの回転角度(出力軸角度(rad))は、一定である。
【0060】
その後、区間2において、中間ギヤ122の長孔122bの一方側端部が中間ギヤ123の係合凸部123cに駆動力伝達可能に係合されるので、モータ11の駆動力がギヤ部121、中間ギヤ122、中間ギヤ123および最終ギヤ124(図3参照)を介して出力軸12b(図1参照)に伝達される。そして、ディテントプレート21の矢印A方向への回動とともに、ローラ部22aは、谷部21b(R位置)の谷部21c(N位置)側の斜面を山部Mに向けて登るように移動する。なお、区間2において、第2モータ回転角度センサ16(図8参照)により検出されるモータ11の回転角度(rad)は、線形的に増加する。また、第2出力軸センサ14(図8参照)により検出される出力軸12bの回転角度(rad)が一定の割合で増加する。
【0061】
そして、区間3において、ローラ部22aが谷部21b(R位置)と谷部21c(N位置)との境の山部Mを乗り越えた後、ディテントプレート21は、モータ11(中間ギヤ122)よりも先行して回動される。すなわち、ディテントプレート21は、常にローラ部22aにより谷部21bに向かって付勢されているので、この付勢力によって、ディテントプレート21は、長孔122bのガタBaの大きさの範囲内でモータ11よりも先行して回動される。そして、ローラ部22aは、谷部21bの谷底Vに向けて落とし込まれる(図8の区間3参照)。この際、モータ11の回転角度は増加する一方、出力軸12bの回転角度(rad)は、ローラ部22aの谷底Vへの落ち込み(吸込み)とともに急激に増加する。
【0062】
なお、シフト位置のP位置からR位置への移動の動作、N位置からD位置への移動の動作は、上記のR位置からN位置への移動の動作と同様である。
【0063】
また、図8および図10に示すように、モータ11は、回転方向が反転されることにより、シフト位置がN位置(区間4)、区間5、および、区間6を介して、R位置に移動される。
【0064】
なお、N位置(区間4)の動作は、上記区間1の動作と同様である。つまり、第2モータ回転角度センサ16により検出されるモータ11の回転角度(rad)は、線形的に減少する一方、第2出力軸センサ14により検出される出力軸12bの回転角度(rad)は、一定である。
【0065】
また、区間5の動作は、上記区間2の動作と同様である。つまり、区間5において、モータ11の回転角度は、線形的に減少するとともに、出力軸12bの回転角度(rad)が一定の割合で減少する。
【0066】
また、区間6の動作は、上記区間3の動作と同様である。つまり、モータ11の回転角度は減少する一方、出力軸12bの回転角度(rad)は、ローラ部22aの谷底Vへの落ち込み(吸込み)とともに急激に減少する。
【0067】
(第2駆動系統によるシフト位置の学習)
シフト装置100では、たとえば、工場出荷時に、シフト装置100ごとに、谷底Vに対応するモータ11(ロータ111)の回転角度が取得(学習)される。すなわち、複数のシフト位置(P位置、R位置、N位置およびD位置)の各々における、谷底V(ガタBaの中心)に対応するモータ11(ロータ111)の回転角度が取得(学習)される。詳細には、複数のシフト位置(P位置、R位置、N位置およびD位置)に対応する谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dにおいて、減速機構部12aに含まれるガタ幅Wが検出される。そして、検出したガタBaの幅Wの中心が、谷底V(シフト位置)として学習される。なお、谷底Vに対応するモータ11の回転角度の取得は、第1MCU171および第2MCU181によって行われる。
【0068】
ここで、本実施形態のシフト装置100では、第1駆動系統17によるモータ11の制御と、第2駆動系統18によるモータ11の制御とが独立して行われるので、シフト位置の学習の際、第1駆動系統17によるモータ11の制御と、第2駆動系統18によるモータ11の制御との干渉を防止する必要がある。そこで、シフト装置100では、第1駆動系統17および第2駆動系統18同士の駆動干渉を防止するために、シフト位置(P位置、R位置、N位置およびD位置)の取得の際、第1駆動系統17および第2駆動系統18のいずれか一方の駆動系統のみを用いてモータ11が制御される。
【0069】
具体的には、シフト装置100は、第2駆動系統18から出力された電圧によりモータ11を駆動させて谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21d(複数の谷部)を連続して通過するようにディテントスプリング22を移動させる際に、シフト位置(P位置、R位置、N位置およびD位置)を取得するように構成されている。すなわち、シフト装置100では、シフト位置(P位置、R位置、N位置およびD位置)を取得する際に、第2モータ回転角度センサ16および第2出力軸センサ14の計測値に基づいて第2駆動系統18によりモータ11が駆動されるように構成されている。
【0070】
また、ディテントスプリング22を移動させる際、第1MCU171は、第1モータ回転角度センサ15および第1出力軸センサ13の計測値に基づいて、シフト位置(P位置、R位置、N位置およびD位置)を取得する制御を行うように構成されている。また、第2MCU181は、第1MCU171とは独立して、第2モータ回転角度センサ16および第2出力軸センサ14の計測値に基づいて、シフト位置(P位置、R位置、N位置およびD位置)を取得する制御を行うように構成されている。
【0071】
ここで、第2駆動系統18のみによりモータ11を駆動させる際、第2駆動系統18の複数(6個)の駆動FET184の各々のON/OFFが切り替えられることにより、モータ11に出力される駆動電流の通電パターンが変化する。なお、第1駆動系統17の全ての駆動FET174がOFFにされている。
【0072】
モータ11に出力される駆動電流の通電パターンの一例を図11に示す。第1駆動系統17では、全ての駆動FET174がOFFになっている。第2駆動系統18では、上アーム183aのU相の駆動FET184がONになっており、上アーム183aのV相の駆動FET184がOFFになっており、上アーム183aのW相の駆動FET184がOFFになっている。第2駆動系統18では、下アーム183bのU相の駆動FET184がOFFになっており、下アーム183bのV相の駆動FET184がONになっており、下アーム183bのW相の駆動FET184がONになっている。
【0073】
これにより、上アーム183aのU相からモータ11の励磁コイルを通過して、下アーム183bのV相およびW相の各々に駆動電流が流れることにより、モータ11が駆動する。
【0074】
また、図12に示すように、シフト装置100では、第1出力軸センサ13および第2出力軸センサ14により取得されるシフト位置の位置精度の向上のため、谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21d(複数の谷部)の各々の谷底Vにおいて、ディテントスプリング22の移動が所定時間停止される。図12において谷部21bの谷底Vの場合を一例として記載したが、他の谷部21a、谷部21cおよび谷部21dの各々の谷底Vにおいても同様にディテントスプリング22の移動が所定時間停止される。
【0075】
すなわち、第1出力軸センサ13および第2出力軸センサ14は、ばね(図示せず)を介して出力軸12bに取り付けられている。出力軸12bはモータ11から伝達される駆動力により回転するので、出力軸12bの回転に伴ってばねが振動する。このため、ディテントスプリング22の移動を停止した後でも、しばらく第1出力軸センサ13および第2出力軸センサ14はばねの振動に起因して振動する。このように、第1出力軸センサ13および第2出力軸センサ14の計測精度を回復させるために、ディテントスプリング22の移動が所定時間停止される。
【0076】
また、シフト装置100では、ディテントスプリング22の移動に伴って、ディテントスプリング22の実際の位置と、第1出力軸センサ13および第2出力軸センサ14により計測されるディテントスプリング22の計測位置との間にずれ(センサディレイ)が生じる。このため、センサディレイを解消するために、ディテントスプリング22の移動が所定時間停止される。
【0077】
このように、シフト装置100は、モータ11を駆動させてディテントスプリング22を移動させる際、谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dの各々の谷底Vの区間(区間1および区間4)にディテントスプリング22が配置されたことに基づいて、第2駆動系統18から出力された電圧によるモータ11の駆動に伴うディテントスプリング22の移動を所定時間停止させるように構成されている。
【0078】
具体的には、第2MCU181は、モータ11が駆動しているにも関わらず、第2出力軸センサ14の計測値が変化しない状態が所定回数続いた場合に、谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dの各々の谷底Vの区間(区間1および区間4)に到達したと判断する制御を行うように構成されている。また、第1MCU171は、モータ11が駆動しているにも関わらず、第1出力軸センサ13の計測値が変化しない状態が所定回数続いた場合に、谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dの各々の谷底Vの区間(区間1および区間4)に到達したと判断する制御を行うように構成されている。
【0079】
第2MCU181は、図13に示すように、谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dの各々の谷底Vの区間に到達したと判断したことに基づいて、第2インバータ183の下アーム183bの駆動FET184を全て接地させることにより、モータ11の駆動を制動(ショートブレーキ)させる制御を行うように構成されている。
【0080】
第2MCU181は、モータ11の駆動を制動させた後、ディテントスプリング22の移動を所定時間停止させる制御を行うように構成されている。すなわち、第2MCU181は、モータ11の駆動が制動したことに基づいて、所定時間をカウントする制御を行うように構成されている。同様に、第1MCU171は、モータ11の駆動が制動したことに基づいて、所定時間をカウントする制御を行うように構成されている。
【0081】
シフト装置100は、ディテントスプリング22の移動を所定時間停止したことに基づいて、第2駆動系統18から再度電圧を出力することにより、モータ11を再駆動させるように構成されている。これにより、シフト装置100では、計測精度が回復するとともにセンサディレイが解消した状態で、谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dの各々においてガタ幅Wの計測を行うことが可能となる。
【0082】
ここで、シフト装置100では、上記したように、第1MCU171と第2MCU181とは独立して所定時間を計測(カウント)しているので、第1MCU171の制御周期と第2MCU181の制御周期とがずれている場合、第1駆動系統17において所定時間を計測している状態であるにも関わらず、第2駆動系統18がモータ11を再駆動してしまうおそれがある。この場合、第1駆動系統17において、実際の谷底Vの位置と、取得(学習)した谷底Vの位置との誤差が増加してしまう。
【0083】
そこで、シフト装置100は、第1MCU171および第2MCU181が互いに通信することにより、第2駆動系統18が、モータ11を再駆動するタイミングを決定するように構成されている。具体的には、第2MCU181は、第1MCU171との通信により、第1MCU171と第2MCU181との制御周期のずれを認識したことに基づいて、モータ11を再駆動するタイミングを変更する制御を行うように構成されている。
【0084】
シフト装置100では、第1駆動系統17および第2駆動系統18の両方が、シフト位置(P位置、R位置、N位置およびD位置)を取得(学習)するように構成されている。このため、第1駆動系統17においてシフト位置の学習が失敗していた場合でも、第2駆動系統18においてシフト位置の学習が成功していれば、第2駆動系統18のみでモータ11を駆動させてシフト位置を切り替えることができてしまう。このような可能性を無くすために、シフト装置100では、第1駆動系統17および第2駆動系統18の一方においてシフト位置の学習が失敗していたならば、第1駆動系統17および第2駆動系統18の他方のシフト位置の学習がリセットされる。
【0085】
具体的には、第2駆動系統18は、第1MCU171および第2MCU181が互いに通信することにより、第1駆動系統17において谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dの各々に対応するシフト位置の少なくともいずれかが取得されていないことを検知した場合に、取得した谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dの各々に対応するシフト位置を消去するように構成されている。
【0086】
(シフト位置学習処理)
以下に、図14を参照して、第2駆動系統18によりモータ11を駆動させることによって行われるシフト位置学習処理について説明する。シフト位置学習処理は、第1駆動系統17と、第2駆動系統18との間で通信を行いながらシフト位置を取得(学習)する処理である。
【0087】
ステップS1において、第2MCU181では、N位置に組み付けられたディテントプレート21を回転させてD位置にセットするために、モータ11の目標位置がD位置に設定される。この際、第2MCU181では、予め設定されているD位置に基づいて、モータ11の目標位置がD位置に設定される。また、第1駆動系統17の第1MCU171に対して、第2駆動系統18においてシフト位置の学習が開始されたことが送信される。ステップS2において、第2MCU181では、D位置にシフト位置を切り替えるためにモータ11を駆動させる。
【0088】
ステップS3において、第2MCU181では、シフト位置がD位置かまたはP位置かが判断される。シフト位置がD位置またはP位置であった場合には、ステップS4に進み、シフト位置がD位置またはP位置でない場合には、ステップS5に進む。ステップS4において、第2MCU181では、モータ11の回転方向が反転される。この際、第1駆動系統17の第1MCU171に対して、第2駆動系統18においてモータ11の回転方向が反転されたことが送信される。
【0089】
ステップS5において、第2MCU181では、第2出力軸センサ14により出力軸12bの回転角度が取得される。ステップS6において、第2MCU181では、第2モータ回転角度センサ16によりモータ11の回転角度が取得される。ステップS7において、第2MCU181では、谷部21a、谷部21b、谷部21c、および、谷部21d(複数の谷部)のいずれかであるかが判断される。第2MCU181では、複数の谷部のいずれかである場合にはステップS8に進み、複数の谷部のいずれかでもない場合には、ステップS10に進む。
【0090】
ステップS8において、第2MCU181では、所定時間が経過したか否かが判断される。第2MCU181では、所定時間が経過した場合にはステップS9に進み、所定時間が経過していない場合にはステップS8を繰り返す。この際、第2駆動系統18の第2MCU181に対して、第1駆動系統17において所定時間が経過したことが送信される。
【0091】
ステップS9において、第2MCU181では、学習値が記憶部が記憶される。すなわち、第2MCU181では、P位置、R位置、N位置およびD位置の各々に対応する、谷部21a、谷部21b、谷部21c、および、谷部21dの各々の谷底Vの位置が学習値として記憶部に記憶される。この際、第2駆動系統18の第2MCU181に対して、第1駆動系統17において谷部21a、谷部21b、谷部21c、および、谷部21dの各々の谷底Vの位置が学習値として記憶部に記憶されたことが送信される。
【0092】
ステップS10では、第2MCU181では、学習動作を終了するか否かが判断される。すなわち、第2MCU181では、P位置、R位置、N位置、D位置の各々に対応する、谷部21a、谷部21b、谷部21c、および、谷部21dの各々の谷底Vの位置が学習値として記憶部に記憶されたか否かが判断される。学習動作を終了する場合にはステップS11に進みモータ11の駆動を停止した後シフト位置学習処理が終了される。この際、第2駆動系統18の第2MCU181に対して、第1駆動系統17において学習動作を終了することが送信される。また、学習動作を終了しない場合にはステップS3に戻る。
【0093】
また、上記した第2駆動系統18の制御と並行してステップS101において、第1MCU171では、第1出力軸センサ13により出力軸12bの回転角度が取得される。ステップS102において、第1MCU171では、第1モータ回転角度センサ15によりモータ11の回転角度が取得される。ステップS103において、第1MCU171では、谷部21a、谷部21b、谷部21c、および、谷部21d(複数の谷部)のいずれかであるかが判断される。第1MCU171では、複数の谷部のいずれかである場合にはステップS104に進み、複数の谷部のいずれかでもない場合には、ステップS106に進む。
【0094】
ステップS104において、第1MCU171では、所定時間が経過したか否かが判断される。第1MCU171では、所定時間が経過した場合にはステップS105に進み、所定時間が経過していない場合にはステップS104を繰り返す。この際、第2駆動系統18の第2MCU181に対して、第1駆動系統17において所定時間が経過したことが送信される。
【0095】
ステップS105において、第1MCU171では、学習値が記憶部が記憶される。すなわち、第1MCU171では、P位置、R位置、N位置およびD位置の各々に対応する、谷部21a、谷部21b、谷部21c、および、谷部21dの各々の谷底Vの位置が学習値として記憶部に記憶される。この際、第2駆動系統18の第2MCU181に対して、第1駆動系統17において谷部21a、谷部21b、谷部21c、および、谷部21dの各々の谷底Vの位置が学習値として記憶部に記憶されたことが送信される。
【0096】
ステップS106では、第1MCU171では、学習動作を終了するか否かが判断される。すなわち、第1MCU171では、P位置、R位置、N位置、D位置の各々に対応する、谷部21a、谷部21b、谷部21c、および、谷部21dの各々の谷底Vの位置が学習値として記憶部に記憶されたか否かが判断される。学習動作を終了する場合には、シフト位置学習処理が終了される。この際、第2駆動系統18の第2MCU181に対して、第1駆動系統17において学習動作を終了することが送信される。また、学習動作を終了しない場合にはステップS101に戻る。
【0097】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0098】
本実施形態では、上記のように、シフト装置100は、第1駆動系統17および第2駆動系統18のいずれか一方の駆動系統から出力された電圧によりモータ11を駆動させて複数の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dを連続して通過するようにディテントスプリング22を移動させる際に、シフト位置を取得するように構成されている。これにより、第1MCU171および第2MCU181によるシフト位置の学習の際、第1駆動系統17および第2駆動系統18のいずれかによりモータ11を制御しながら、第1MCU171および第2MCU181の両方によりディテントスプリング22の位置を認識することによりシフト位置の学習が行われる。したがって、シフト位置の学習の際、第1MCU171および第2MCU181のいずれかからしかモータ11に電圧が加えられないので、第1MCU171によるモータ11の制御および第2MCU181によるモータ11の制御同士が互いに干渉しないようにすることができる。この結果、第1MCU171によるモータ11の制御と第2MCU181によるモータ11の制御とを干渉しないようにすることができるので、第1MCU171および第2MCU181の互いのシフト位置の学習を阻害しないようにすることができる。また、第1MCU171および第2MCU181のうちの一方が異常になった場合であっても、他方のMCUを用いて、モータ11の駆動制御を継続することができるので、モータ11の駆動制御を継続させることを保障することができる。
【0099】
また、本実施形態では、上記のように、シフト装置100は、第2駆動系統18から出力された電圧によりモータ11を駆動させて複数の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dを連続して通過するようにディテントスプリング22を移動させる際に、複数の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dの各々の谷底Vの区間(区間1および区間4)にディテントスプリング22が配置されたことに基づいて、第2駆動系統18から出力された電圧によるモータ11の駆動に伴うディテントスプリング22の移動を所定時間停止させるように構成されている。これにより、複数の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dの各々の谷底Vの区間(区間1および区間4)にディテントスプリング22が配置されたことに基づいて、ディテントスプリング22の移動を所定時間停止させることにより、モータ11の駆動に起因する振動、および、ディテントスプリング22の実際の位置と計測されたディテントスプリング22の位置との間のずれを解消することができるので、上記振動および上記ずれに起因するディテントスプリング22の位置の計測精度の悪化を抑制することができる。
【0100】
また、本実施形態では、上記のように、シフト装置100は、ディテントスプリング22の移動を所定時間停止したことに基づいて、第2駆動系統18から再度電圧を出力することにより、モータ11を再駆動させるように構成されている。これにより、ディテントスプリング22の移動を所定時間停止させた後に再駆動させることにより、静的な状態で複数の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dの各々の谷底Vの位置を取得(学習)することができるので、シフト位置を精度よく学習することができる。
【0101】
また、本実施形態では、上記のように、第1MCU171と、第2MCU181とは、通信可能である。シフト装置100は、第1MCU171および第2MCU181が互いに通信することにより、第1駆動系統17および第2駆動系統18のうち電圧を出力するいずれか一方の駆動系統が、モータ11を再駆動するタイミングを決定するように構成されている。これにより、第1MCU171の制御周期に合わせて第2駆動系統18によるモータ11の再駆動のタイミングを変更することができるので、第1MCU171と第2MCU181とを同期させた状態でモータ11を再駆動することができる。
【0102】
また、本実施形態では、上記のように、第1MCU171と、第2MCU181とは、通信可能である。シフト装置100は、第1MCU171および第2MCU181が互いに通信することにより、第1駆動系統17において複数の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dの各々に対応するシフト位置の少なくともいずれかが取得されていないことを検知した場合に、取得した複数の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dの各々に対応するシフト位置を消去するように構成されている。これにより、第1駆動系統17においてシフト位置の取得が失敗していた場合に第2駆動系統18において取得されたシフト位置が消去されることにより、第2駆動系統18のみを用いてディテントプレート21を駆動させることを防止することができるので、第1駆動系統17および第2駆動系統18のいずれか一方しか駆動しないシフト装置の製造を防止することができる。
【0103】
また、本実施形態では、上記のように、シフト装置100は、モータ11の回転角度を計測する第1モータ回転角度センサ15および第2モータ回転角度センサ16と、ディテントプレート21に接続される出力軸12bの回転角度を計測する第1出力軸センサ13および第2出力軸センサ14とを備えている。第1MCU171は、第1モータ回転角度センサ15および第1出力軸センサ13の各々の計測値に基づいてシフト位置を取得するとともに、第2MCU181は、第2モータ回転角度センサ16および第2出力軸センサ14の各々の計測値に基づいてシフト位置を取得する制御を行うように構成されている。これにより、第2駆動系統18から出力された電圧によりモータ11を駆動させて複数の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dを連続して通過するようにディテントスプリング22を移動させる際に、第1MCU171および第2MCU181の各々は並行してシフト位置を取得することができるので、第1MCU171によるシフト位置の取得および第2MCU181によるシフト位置の取得を別個に行う場合と比較して、シフト位置の取得を効率良く行うことができる。
【0104】
[変形例]
今回開示された上記実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0105】
たとえば、上記実施形態では、シフト装置100では、シフト位置(P位置、R位置、N位置およびD位置)を取得する際に、第2モータ回転角度センサ16および第2出力軸センサ14の計測値に基づいて第2駆動系統18によりモータ11が駆動されるように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、シフト装置では、シフト位置(P位置、R位置、N位置およびD位置)を取得する際に、第1モータ回転角度センサおよび第1出力軸センサの計測値に基づいて第1駆動系統によりモータが駆動されるように構成されていてもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、第2MCU181(第2制御部)は、第1MCU171(第1制御部)との通信により、第1MCU171(第1制御部)と第2MCU181(第2制御部)との制御周期のずれを認識したことに基づいて、モータ11を再駆動するタイミングを変更する制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2制御部は、第1制御部との通信により、第1制御部と第2制御部との制御周期のずれを認識したことに基づいて、モータを再駆動するタイミングだけでなく、モータを制動するか、または、モータの回転方向を変えてもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、第2MCU181(第2制御部)は、N位置に組み付けられたディテントプレート21(シフト切替部材)を回転させてD位置にセットするために、モータ11の目標位置をD位置に設定する例を示したが、本発明これに限られない。本発明では、第2制御部は、N位置に組み付けられたシフト切替部材を回転させてP位置にセットするために、モータの目標位置をP位置に設定してもよい。
【0108】
また、上記実施形態では、ガタBaの幅Wが、減速機構部12aのガタBaの幅Wである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ガタ幅は、駆動力伝達機構部における減速機構部以外の他のガタ幅を含んでいてもよい。
【0109】
また、上記実施形態では、本発明のシフト装置100が、自動車用のシフト装置に適用される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、シフト装置は、たとえば、電車など、自動車用以外のシフト装置に適用されてもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、第2MCU181(第2制御部)は、複数の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dの各々の谷底Vの区間(区間1および区間4)にディテントスプリング22(位置決め部材)が配置されたことに基づいて、第2駆動系統18から出力された電圧によるモータ11の駆動に伴うディテントスプリング22(位置決め部材)の移動を所定時間停止させるように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1制御部が、複数の谷部の各々の谷底の区間(区間1および区間4)に位置決め部材が配置されたことに基づいて、第1駆動系統から出力された電圧によるモータの駆動に伴う位置決め部材の移動を所定時間停止させてもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、第1MCU171(第1制御部)と、第2MCU181(第2制御部)とは、通信可能である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1制御部と、第2制御部とは、通信可能でなくてもよい。
【0112】
また、上記実施形態では、第2駆動系統18は、第1MCU171(第1制御部)および第2MCU181(第2制御部)が互いに通信することにより、第1駆動系統17において複数の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dの各々に対応するシフト位置の少なくともいずれかが取得されていないことを検知した場合に、取得した複数の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21d(複数の谷部)の各々に対応するシフト位置を消去するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1駆動系統は、第1制御部および第2制御部が互いに通信することにより、第2駆動系統において複数の谷部の各々に対応するシフト位置の少なくともいずれかが取得されていないことを検知した場合に、取得した複数の谷部の各々に対応するシフト位置を消去するように構成されていてもよい。
【0113】
上記実施形態では、第1インバータ173では、複数の駆動FET174のON/OFFを切り替えることにより、正弦波の三相交流電圧(U相、V相およびW相)が出力される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1インバータでは、複数の駆動FETのON/OFFを切り替えることにより、パルス波の三相交流電圧(U相、V相およびW相)が出力されてもよい。
【0114】
上記実施形態では、第2インバータ183では、複数の駆動FET184のON/OFFを切り替えることにより、正弦波の三相交流電圧(U相、V相およびW相)が出力される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2インバータでは、複数の駆動FETのON/OFFを切り替えることにより、パルス波の三相交流電圧(U相、V相およびW相)が出力されてもよい。
【0115】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、第1MCU171(第1制御部)および第2MCU181(第2制御部)の制御処理を、処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1制御部および第2制御部の制御処理を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0116】
11 モータ
17 第1駆動系統
18 第2駆動系統
21 ディテントプレート(シフト切替部材)
21a、21b、21c、21d 谷部
22 ディテントスプリング(位置決め部材)
100 シフト装置
111 ロータ
112 ステータ
171 第1MCU(第1制御部)
181 第2MCU(第2制御部)
図1
図2
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