IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TOTO株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-水栓装置 図1
  • 特許-水栓装置 図2
  • 特許-水栓装置 図3
  • 特許-水栓装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】水栓装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/05 20060101AFI20250708BHJP
   E03C 1/042 20060101ALI20250708BHJP
   E03C 1/046 20060101ALI20250708BHJP
【FI】
E03C1/05
E03C1/042 B
E03C1/046
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021141540
(22)【出願日】2021-08-31
(65)【公開番号】P2023034987
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2024-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻田 正実
(72)【発明者】
【氏名】小林 基紀
(72)【発明者】
【氏名】金子 義行
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 陽一
(72)【発明者】
【氏名】小森 康寛
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-110444(JP,A)
【文献】特開2009-299293(JP,A)
【文献】特開2004-346710(JP,A)
【文献】特開平04-050575(JP,A)
【文献】特開平03-152316(JP,A)
【文献】特開2007-154588(JP,A)
【文献】特開2014-156696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/05
E03C 1/042
E03C 1/046
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性のスパウト本体部と、
所定の検知範囲内における検知対象を検知する第1センサと、
前記スパウト本体部を電極として検知を行なう静電式の第2センサと、
前記第1センサによる検知結果に応じて吐水、および止水を切り替える第1吐水モードと、前記第2センサによる検知結果に応じて吐水を行う第2吐水モードとを実行可能な制御装置と
を備え、
前記第1センサの検知範囲は、前記スパウト本体部の下方を含み、
前記第2センサの検知範囲は、前記スパウト本体部の側方、および、上方を含む前記スパウト本体部の周囲であり、前記第1センサの検知範囲よりも広く、
前記制御装置は、
前記第2吐水モードによって吐水を開始した場合、吐水開始から少なくとも所定時間経過するまで吐水を継続し、
前記第2吐水モードによって吐水を開始し、前記所定時間経過後に前記第1センサによって検知対象が検知されない場合に止水する、水栓装置。
【請求項2】
前記第1吐水モードは、原水を吐水するモードであり、
前記第2吐水モードは、前記原水とは異なる改質水を吐水するモードである、請求項1に記載の水栓装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記第1吐水モードでは、前記第1センサによる検知対象の検知時間が第1検知時間継続する場合に吐水を開始し、
前記第2吐水モードでは、前記第2センサによる検知対象の検知時間が、前記第1検知時間よりも長い第2検知時間継続する場合に吐水を開始する、請求項1または2に記載の水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、センサによる検知対象の検知結果に応じて、水道水を吐水、および止水する水栓装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-248474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記する水栓装置では、複数の吐水モードを有する場合に、センサによる検知対象の検知結果に応じて、複数の吐水モードによる吐水、および止水を実行することができない。
【0005】
実施形態の一態様は、センサによる検知対象の検知結果に応じて、複数の吐水モードによる吐水、および止水を実行する水栓装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係る水栓装置は、導電性のスパウト本体部と、所定の検知範囲内における検知対象を検知する第1センサと、前記スパウト本体部を電極として検知を行なう静電式の第2センサと、前記第1センサによる検知結果に応じて吐水、および止水を切り替える第1吐水モードと、前記第2センサによる検知結果に応じて吐水を行う第2吐水モードとを実行可能な制御装置とを備える。前記制御装置は、前記第2吐水モードによって吐水を開始した場合、前記第1センサによる検知結果に応じて止水を行う。
【0007】
これにより、水栓装置は、第1センサ、および第2センサによる検知対象の検知結果に応じて、第1吐水モード、および第2吐水モードによる吐水、および止水を実行することができる。水栓装置は、第2センサによる検知結果に応じて吐水を開始した場合に、使用者の意図しないタイミングで止水することを抑制することができる。水栓装置は、第1吐水モードにおける止水と、第2吐水モードにおける止水とを第1センサによる検知結果に応じて実行することで、検知対象が所定の検知範囲外となるタイミングで止水する。すなわち、水栓装置は、使用者の同じ止水動作によって、各モードにおいて止水する。そのため、水栓装置は、例えば、第1吐水モードによる止水のタイミングと、第2吐水モードによる止水のタイミングとを合わせることができ、使用者に違和感を与えることを抑制することができる。また、水栓装置は、第2センサにおいて導電性のスパウト本体部を電極として用いることによって、既存の構成を用いつつ、第2吐水モードによる吐水を実行することができる。
【0008】
また、前記第1吐水モードは、原水を吐水するモードである。前記第2吐水モードは、前記原水とは異なる改質水を吐水するモードである。
【0009】
これにより、水栓装置は、第1センサ、および第2センサによる検知対象の検知結果に応じて、原水、および改質水を吐水、および止水することができる。そのため、水栓装置は、複数種類の洗浄水を使用者の動作に応じて、区別して吐水することができる。また、水栓装置は、使用頻度が高い原水の吐水を第1吐水モードによって実行することで、例えば、原水を吐水させる方法を変更せずに、複数種類の洗浄水を吐水させることができる。
【0010】
また、前記制御装置は、前記第2吐水モードによって吐水を開始した場合、吐水開始から少なくとも所定時間経過するまで吐水を継続する。
【0011】
これにより、水栓装置は、第2吐水モードによる吐水を開始した後に、スパウト本体部から検知対象が一旦、遠ざかった場合でも、吐水を継続することができる。例えば、使用者が、スパウト本体部の上方や側方に、触れたり手をかざしたりした後に、スパウト本体部の下方に手を移動させる場合に、水栓装置は、第2吐水モードにおける止水を抑制することができる。また、例えば、水栓装置は、第2吐水モードによって除菌水を吐水する場合、検知対象に多くの除菌水を当てることができ、除菌効果を向上させることができる。
【0012】
また、前記制御装置は、前記第2吐水モードによって吐水を開始し、前記所定時間経過後に前記第1センサによって検知対象が検知されない場合に止水する。
【0013】
これにより、水栓装置は、第2吐水モードよって所定時間吐水しつつ、検知対象が所定の検知範囲外となるタイミングで第2吐水モードにおける止水を実行することができる。そのため、水栓装置は、例えば、第1吐水モードによる止水のタイミングと、第2吐水モードによる止水のタイミングとを合わせることができ、使用者に違和感を与えることを抑制することができる。
【0014】
また、前記制御装置は、前記第1吐水モードでは、前記第1センサによる検知対象の検知時間が第1検知時間継続する場合に吐水を開始する。前記制御装置は、前記第2吐水モードでは、前記第2センサによる検知対象の検知時間が、前記第1検知時間よりも長い第2検知時間継続する場合に吐水を開始する。
【0015】
これにより、水性装置は、例えば、第1センサ、および第2センサによって検知対象が同時に検知される場合に、第1モードによる吐水を優先させることができる。水栓装置は、第1センサよりも検知対象の検知範囲が広い第2センサによって、例えば、水撥ねなどが誤検知されることを抑制し、誤検知によって吐水されることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
実施形態の一態様によれば、センサによる検知対象の検知結果に応じて、複数の吐水モードによる吐水、および止水を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態に係る水栓装置を説明する模式図である。
図2図2は、比較例の水栓装置において、使用者がスパウトに手を近づけた場合の静電容量の時間変化を示すタイムチャートである。
図3図3は、実施形態に係る水道水の吐水処理を説明するフローチャートである。
図4図4は、実施形態に係る除菌水の吐水処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する水栓装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。以下では、鉛直方向を下向きとする上下方向を規定し説明する。
【0019】
<水栓装置の構成>
実施形態に係る水栓装置1について、図1を参照し説明する。図1は、実施形態に係る水栓装置1を説明する模式図である。図1では、水栓装置1のスパウト本体部2が断面で示される。
【0020】
水栓装置1は、例えば、洗面台などの基部100に取り付けられ、検知対象を検知すると、洗浄水を吐水、および止水する。すなわち、水栓装置1は、自動で吐水、および止水する自動水栓である。
【0021】
検知対象は、人体を含む。検知対象は、使用者の手を含む。検知対象は、洗浄対象物を含む。洗浄対象物は、例えば、歯ブラシや、コップを含む。
【0022】
洗浄水は、原水を含む。洗浄水は、改質水を含んでもよい。原水は、例えば、水道水である。改質水は、除菌水、浄水、またはアルカリイオン水である。除菌水、およびアルカリイオン水は、例えば、水道水が電気分解されて生成される。浄水は、例えば、水道水がフィルターを通されることで生成される。以下では、原水として水道水、および改質水として除菌水が用いられる一例について説明する。
【0023】
水栓装置1は、スパウト本体部2(第2センサ6)と、第1通水部3と、第2通水部4と、第1センサ5と、制御装置7と、吐水部10とを備える。
【0024】
スパウト本体部2は、導電性の部材で構成される。スパウト本体部2は、金属製である。スパウト本体部2は、導電性のカーボンや、導電性のプラスチックなどであってもよい。吐水部10は、第1吐水キャップ11と、第2吐水キャップ12とを備える。
【0025】
スパウト本体部2は、例えば、洗面台などの基部100に取り付けられる。スパウト本体部2は、例えば、略L字状である。スパウト本体部2は、略J字状であってもよく、直線状であってもよい。
【0026】
第1吐水キャップ11は、スパウト本体部2の先端側に設けられる。第1吐水キャップ11は、第1通水部3を介して供給される水道水を吐水する。第1吐水キャップ11は、下方、または斜め下方に向けて水道水を吐水するように設けられる。
【0027】
第2吐水キャップ12は、例えば、第1吐水キャップ11よりも基部100側に設けられる。なお、第2吐水キャップ12は、スパウト本体部2の先端側に設けられてもよく、第1吐水キャップ11に近接して設けられてもよい。第2吐水キャップ12は、第2通水部4を介して供給される除菌水を吐水する。第2吐水キャップ12は、斜め下方、また下方に向けて除菌水を吐水するように設けられる。
【0028】
第1吐水キャップ11、および第2吐水キャップ12は、絶縁体である樹脂などのプラスチックなどで構成されることが望ましい。
【0029】
第1通水部3は、第1供給管20と、第1バルブ21とを含む。第1供給管20の一端は、水道水の供給源に接続される。第1供給管20の他端は、第1吐水キャップ11に接続される。第1供給管20の一部は、スパウト本体部2に収容される。
【0030】
第1バルブ21は、第1供給管20に設けられる。第1バルブ21は、電磁バルブであり、アクチュエータを含む。アクチュエータは、モータなどを含む。第1バルブ21は、アクチュエータによって開閉される。第1バルブ21は、制御装置7から送信される信号に基づいてアクチュエータが動作することで開閉される。第1バルブ21が開くと、第1吐水キャップ11から水道水が吐水される。第1バルブ21が閉じると、水道水が止水される。
【0031】
第2通水部4は、第2供給管25と、第2バルブ26とを含む。第2供給管25の一端は、除菌水の供給源に接続される。第2供給管25の他端は、第2吐水キャップ12に接続される。第2供給管25の一部は、スパウト本体部2に収容される。
【0032】
第2バルブ26は、第2供給管25に設けられる。第2バルブ26は、電磁バルブであり、アクチュエータを含む。第2バルブ26は、アクチュエータによって開閉される。第2バルブ26は、制御装置7から送信される信号に基づいてアクチュエータが動作することで開閉される。第2バルブ26が開くと、第2吐水キャップ12から除菌水が吐水される。第2バルブ26が閉じると、除菌水が止水される。
【0033】
第1センサ5は、所定の検知範囲内における検知対象の有無を検知する。所定の検知範囲は、予め設定された範囲であり、第1吐水キャップ11の下方側を含む範囲である。
【0034】
第1センサ5は、例えば、第1吐水キャップ11よりもスパウト本体部2の先端側に設けられる。第1センサ5は、第1吐水キャップ11の近傍に設けられる。第1センサ5は、第1吐水キャップ11に隣接して設けられる。第1センサ5は、例えば、光電センサである。例えば、第1センサ5は、検出光を投光し、検知対象から反射した検出光の反射光を受光することによって、検知対象の有無を検知する。
【0035】
第2センサ6は、第1センサ5よりも広範囲の検知範囲内において検知対象の有無を検知する。第2センサ6は、スパウト本体部2を電極とする静電センサである。スパウト本体部2(第2センサ6)は、接続部6aを介して制御装置7と接続される。
【0036】
スパウト本体部2(第2センサ6)にて検知対象を検知した検知信号を制御装置7へ電送する接続部6aの長さを極力短くすることで、接続部6a(例えばハーネス)から侵入するノイズを抑制し、検知信号への影響を抑制することができる。
【0037】
したがって、スパウト本体部2(第2センサ6)が取り付けられている基部100の下側付近に、スパウト本体部2(第2センサ6)にて検知対象を検知した検知信号を入力し検知可否を判断できる信号に変換する静電センサICなどを有する静電センサ基板を制御装置7と別に配置してもよい。これにより、スパウト本体部2(第2センサ6)と静電センサ基板を接続する接続部6aの長さを短くすることができる。
【0038】
スパウト本体部2(第2センサ6)に検知対象が近づくと、静電容量が変化する。第2センサ6は、静電容量の変化量に応じて、検知対象の有無を検知する。例えば、静電容量は、スパウト本体部2(第2センサ6)に検知対象が近づくと大きくなる。また、静電容量は、吐水部10から洗浄水が吐水されると大きくなる。また、静電容量は、洗浄水と検知対象とが電気的に接続されると大きくなる。
【0039】
第2センサ6は、スパウト本体部2を電極とするため、スパウト本体部2(第2センサ6)の上方、およびスパウト本体部2(第2センサ6)の側方を含むスパウト本体部2(第2センサ6)の周囲に検知範囲を有する。
【0040】
なお、各供給管20、25内の洗浄水、または吐水部10を導電性の金属などで構成する場合の影響を抑制し第2センサ6による吐水検知の精度を向上するために、スパウト本体部2(第2センサ6)と吐水部10の間は、水栓装置1のサイズやデザインを考慮しながら、空隙を設けて極力距離を離すことが望ましい。
【0041】
制御装置7は、たとえばコンピュータであり、制御部7aと記憶部7bとを備える。
【0042】
記憶部7bには、水栓装置1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。記憶部7bは、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子等の記憶装置によって実現される。
【0043】
制御部7aは、記憶部7bに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって水栓装置1の動作を制御する。なお、プログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、記憶媒体から制御装置7の記憶部7bにインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク、メモリカードなどがある。
【0044】
制御装置7は、第1吐水モードと、第2吐水モードとを実行可能である。
【0045】
第1吐水モードは、第1センサ5による検知結果に応じて第1吐水キャップ11からの水道水の吐水、および止水を切り替えるモードである。
【0046】
制御装置7は、第1センサ5による検知対象の第1検知条件を満たす場合に、第1バルブ21を開くための信号を生成し、生成した信号を第1バルブ21に送信する。制御装置7は、第1センサ5によって検知対象が連続して検知された第1継続時間(検知時間)が、第1所定継続時間(第1検知時間)以上になると、第1検知条件を満たすと判定し、検知対象の検知を確定させる。そして、制御装置7は、検知対象の検知が確定した後に、第1バルブ21を開くための信号を生成する。これによって、アクチュエータによって第1バルブ21が開き、水道水が第1吐水キャップ11から吐水される。第1所定継続時間は、予め設定された時間である。
【0047】
制御装置7は、水道水の吐水を開始すると、水道水の吐水を第1所定吐水時間継続する。第1所定吐水時間は、予め設定された時間である。
【0048】
制御装置7は、水道水が第1吐水キャップ11から吐水された状態で、第1センサ5による検知対象の第1非検知条件を満たす場合に、第1バルブ21を閉めるための信号を生成し、生成した信号を第1バルブ21に送信する。制御装置7は、第1所定吐水時間経過後に、第1センサ5によって検知対象が連続して検知されない第2継続時間が、第2所定継続時間以上になると、第1非検知条件を満たすと判定し、検知対象の非検知を確定させる。そして、制御装置7は、検知対象の非検知が確定すると、第1バルブ21を閉じるための信号を生成する。これによって、アクチュエータによって第1バルブ21が閉じ、水道水が止水される。第2所定継続時間は、予め設定された時間である。
【0049】
第2吐水モードは、第2センサ6による検知結果に応じて第2吐水キャップ12からの除菌水の吐水を行うモードである。なお、第2吐水モードでは、第1センサ5による検知結果に応じて除菌水の止水が行われる。
【0050】
制御装置7は、第2センサ6による検知対象の第2検知条件を満たす場合に、第2バルブ26を開くための信号を生成し、生成した信号を第2バルブ26に送信する。制御装置7は、第2センサ6によって検知対象が連続して検知された第3継続時間(検知時間)が、第3所定継続時間(第2検知時間)以上になると、第2検知条件を満たすと判定し、検知対象の検知を確定させる。そして、制御装置7は、検知対象の検知が確定した後に、第2バルブ26を開くための信号を生成する。これによって、アクチュエータによって第2バルブ26が開き、除菌水が第2吐水キャップ12から吐水される。第3所定継続時間は、予め設定された時間である。第3所定継続時間は、第1所定継続時間よりも長い。
【0051】
例えば、検知対象が、スパウト本体部2の下方に差し出されて、第1センサ5、および第2センサ6によってほぼ同時に検知対象が検知される場合には、第1センサ5による検知の確定は、第2センサ6による検知の確定よりも早い。そのため、この場合には、水道水が吐水される。
【0052】
制御装置7は、除菌水の吐水を開始した場合、吐水開始から少なくとも第2所定吐水時間(所定時間)経過するまで除菌水の吐水を継続する。第2所定吐水時間は、予め設定された時間である。第2所定吐水時間は、例えば、スパウト本体部2(第2センサ6)の上方から、第2吐水キャップ12の下方まで検知対象が移動するまでの時間である。これにより、例えば、スパウト本体部2(第2センサ6)の上方に検知対象がかざされて除菌水の吐水が開始された後に、第2吐水キャップ12の下方に検知対象が移動するまでの間に、制御装置7は、除菌水が止水することを抑制することができる。
【0053】
制御装置7は、除菌水の吐水を開始した場合、除菌水の吐水開始から第2所定吐水時間経過後に、第1センサ5によって検知対象が検知されない場合に除菌水を止水する。
【0054】
制御装置7は、除菌水が第2吐水キャップ12から吐水された状態で、第1センサ5による検知対象の第2非検知条件を満たす場合に、第2バルブ26を閉じるための信号を生成し、生成した信号を第2バルブ26に送信する。制御装置7は、第2所定吐水時間経過後に、第2継続時間が、第4所定継続時間以上になると、第2非検知条件を満たすと判定し、検知対象の非検知を確定させる。そして、制御装置7は、検知対象の非検知が確定すると、第2バルブ26を閉じるための信号を生成する。これによって、アクチュエータによって第2バルブ26が閉じ、除菌水が止水される。第4所定継続時間は、予め設定された時間である。第4所定継続時間は、例えば、第2所定継続時間と同じ時間である。第4所定継続時間は、第2所定継続時間と異なる時間であってもよい。
【0055】
なお、制御装置7は、第1センサ5による検知結果に応じて水道水を吐水した状態で、第2センサ6によって検知対象が検知された場合には、除菌水の吐水を行わない。また、制御装置7は、第2センサ6による検知結果に応じて除菌水を吐水した状態で、第1センサ5によって検知対象が検知された場合には、水道水の吐水を行わない。
【0056】
本実施形態では、第2吐水モードにおいて除菌水の止水は、第1センサ5による検知結果に基づいて行われる。第2吐水モードにおいて除菌水の止水を第1センサ5による検知結果に基づく理由について説明する。
【0057】
<比較例の説明>
ここでは、除菌水の止水を第2センサ6による検知結果、すなわち、第2センサ6によって検知対象が検知されない場合に、除菌水の止水を行う比較例について図2を参照し説明する。図2は、比較例の水栓装置1において、使用者がスパウト本体部2(第2センサ6)に手を近づけた場合の静電容量の時間変化を示すタイムチャートである。
【0058】
スパウト本体部2(第2センサ6)の近傍に手が無い場合には、静電容量は小さく、ほぼ変化しない。時間t1において、使用者がスパウト本体部2(第2センサ6)に手を近づけると、静電容量が大きくなる。
【0059】
時間t2において第2センサ6によって検知される手の継続検知時間である第3継続時間が第3所定継続時間以上になると、検知対象の検知が確定され、除菌水の吐水が開始される。除菌水の吐水か開始されると、第2供給管25を除菌水が流れるため、静電容量が大きくなる。
【0060】
時間t3において手がスパウト本体部2(第2センサ6)に近づけられ、除菌水が手に着水すると、除菌水と使用者とが電気的に接続された状態になり、静電容量が大きくなる。
【0061】
第2センサ6によって検知される静電容量は、スパウト本体部2(第2センサ6)と手との距離などによって変動する。例えば、第2吐水キャップ12の下方から手が抜かれて直ぐに、除菌水を止水するように、第1所定止水容量が設定された場合、スパウト本体部2(第2センサ6)の下方側における手の距離が長くなると、時間t4において、第2センサ6によって検知される静電容量が第1所定止水容量よりも小さくなることがある。このような場合に、比較例に係る水栓装置1は、スパウト本体部2(第2センサ6)の下方から手が抜かれたと誤検知し、除菌水を止水するおそれがある。そのため、比較例に係る水栓装置1は、使用者に違和感を与える。
【0062】
このような誤検知を防止するために、比較例に係る水栓装置1では、第2センサ6によって検知され静電容量が第1所定止水容量以下となる状態が第5所定継続時間、継続する場合に、除菌水を止水することも考えられる。第5所定継続時間は、予め設定された時間であり、誤検知により除菌水が止水されることを防止するための時間である。
【0063】
この場合、例えば、時間t5において静電容量が第1所定止水容量よりも大きくなり、静電容量が連続して第1所定止水容量以下となる第5継続時間が、第5所定継続時間よりも短い場合、除菌水は、止水されない。
【0064】
しかしながら、このような場合には、時間t6において、スパウト本体部2(第2センサ6)の下方から手が抜かれて、第2センサ6によって検知される静電容量が第1所定止水容量以下となっても、第5所定継続時間が経過する時間t7まで、除菌水の吐水が継続される。そのため、使用者が、スパウト本体部2(第2センサ6)の下方から手を抜いたにも関わらず、除菌水の吐水が継続されるため、比較例に係る水栓装置1は、使用者に違和感を与える。さらに、除菌水が無駄に吐水される。
【0065】
また、水栓装置1は、設置環境によって除菌水の水圧などが異なるため、例えば、第1所定止水容量を設置環境に応じて学習させる必要があり、制御が複雑になる。
【0066】
なお、比較例に係る水栓装置1において、除菌水の吐水中に、使用者がスパウト本体部2(第2センサ6)に手をかざした場合に除菌水を止水するように設定することも考えられる。この場合、例えば、第2センサ6によって検知される静電容量が、第2所定止水容量以上になると、除菌水が止水される。しかし、手に着水した除菌水の位置がスパウト本体部2(第2センサ6)近傍である場合などに、第2センサ6によって検知される静電容量が、第2所定止水容量以上となることがあり、誤検知によって除菌水が止水されるおそれがある。
【0067】
このように、比較例に係る水栓装置1は、除菌水の止水に関して誤検知が生じ、使用者に違和感を与えるおそれがある。
【0068】
そこで、実施形態に係る水栓装置1は、上記するように、第2吐水モードにおいて、第2センサ6における検知結果に応じて除菌水の吐水を開始し、第1センサ5における検知結果に応じて除菌水を止水することとした。
【0069】
<第1モードによる吐水処理>
次に、実施形態に係る第1モードにおける水道水の吐水処理について図3を参照し説明する。図3は、実施形態に係る水道水の吐水処理を説明するフローチャートである。なお、第1バルブ21は閉じており、水道水は吐水されていないものとする。
【0070】
制御装置7は、第1検知条件を満たすか否かを判定する(S100)。具体的には、制御装置7は、第1センサ5によって検知対象が連続して検知された第1継続時間が、第1所定継続時間以上であるか否かを判定する。
【0071】
制御装置7は、第1検知条件を満たさない場合(S100:No)、今回の処理を終了する。
【0072】
制御装置7は、第1検知条件を満たす場合(S100:Yes)、除菌水を吐水しているか否かを判定する(S101)。
【0073】
制御装置7は、除菌水を吐水している場合(S101:Yes)、今回の処理を終了する。すなわち、制御装置7は、除菌水を吐水している場合には、第1検知条件を満たす場合であっても、水道水の吐水を行わない。
【0074】
制御装置7は、除菌水を吐水していない場合(S101:No)、水道水の吐水を開始する(S102)。
【0075】
制御装置7は、水道水の吐水を開始してからの吐水時間が第1所定吐水時間経過したか否かを判定する(S103)。制御装置7は、水道水の吐水を開始してからの吐水時間が第1所定吐水時間経過していない場合(S103:No)、水道水の吐水を継続し、ステップS103の判定を繰り返す。
【0076】
制御装置7は、水道水の吐水を開始してからの吐水時間が第1所定吐水時間経過した場合(S103:Yes)、第1非検知条件を満たすか否かを判定する(S104)。具体的には、制御装置7は、第1センサ5によって検知対象が連続して検知されない第2継続時間が、第2所定継続時間以上であるか否かを判定する。
【0077】
制御装置7は、第1非検知条件を満たさない場合(S104:No)、水道水の吐水を継続し、ステップS104の判定を繰り返す。
【0078】
制御装置7は、第1非検知条件を満たす場合(S104:Yes)、水道水を止水する(S105)。
【0079】
<第2モードによる吐水処理>
次に、実施形態に係る第2モードにおける除菌水の吐水処理について図4を参照し説明する。図4は、実施形態に係る除菌水の吐水処理を説明するフローチャートである。なお、第2バルブ26は閉じており、除菌水は吐水されていないものとする。
【0080】
制御装置7は、第2検知条件を満たすか否かを判定する(S200)。具体的には、制御装置7は、第2センサ6によって検知対象が連続して検知された第3継続時間が、第3所定継続時間以上であるか否かを判定する。
【0081】
制御装置7は、第2検知条件を満たさない場合(S200:No)、今回の処理を終了する。
【0082】
制御装置7は、第2検知条件を満たす場合(S200:Yes)、水道水を吐水しているか否かを判定する(S201)。
【0083】
制御装置7は、水道水を吐水している場合(S201:Yes)、今回の処理を終了する。すなわち、制御装置7は、水道水を吐水している場合には、第2検知条件を満たす場合であっても、除菌水の吐水を行わない。
【0084】
制御装置7は、水道水を吐水していない場合(S201:No)、除菌水の吐水を開始する(S202)。
【0085】
制御装置7は、除菌水の吐水を開始してからの吐水時間が第2所定吐水時間経過したか否かを判定する(S203)。制御装置7は、除菌水の吐水を開始してからの吐水時間が第2所定吐水時間経過していない場合(S203:No)、除菌水の吐水を継続し、ステップS203の判定を繰り返す。
【0086】
制御装置7は、除菌水の吐水を開始してからの吐水時間が第2所定吐水時間経過した場合(S203:Yes)、第2非検知条件を満たすか否かを判定する(S204)。具体的には、制御装置7は、第1センサ5によって検知対象が連続して検知されない第2継続時間が、第4所定継続時間以上であるか否かを判定する。
【0087】
制御装置7は、第2非検知条件を満たさない場合(S204:No)、除菌水の吐水を継続し、ステップS204の判定を繰り返す。
【0088】
制御装置7は、第2非検知条件を満たす場合(S204:Yes)、除菌水を止水する(S205)。
【0089】
<効果>
水栓装置1は、導電性のスパウト本体部2と、第1センサ5と、制御装置7とを備える。第1センサ5は、所定の検知範囲内における検知対象を検知する。第2センサ6は、スパウト本体部2を電極として検知を行なう静電式のセンサである。制御装置7は、第1センサ5による検知結果に応じて吐水、および止水を切り替える第1吐水モードと、第2センサ6による検知結果に応じて吐水を行う第2吐水モードとを実行可能である。制御装置7は、第2吐水モードによって吐水を開始した場合、第1センサ5による検知結果に応じて止水を行う。
【0090】
これにより、水栓装置1は、第1センサ5、および第2センサ6による検知対象の検知結果に応じて、第1吐水モード、および第2吐水モードによる吐水、および止水を実行することができる。水栓装置1は、第2センサ6による検知結果に応じて吐水を開始した場合に、使用者の意図しないタイミングで止水することを抑制することができる。水栓装置1は、第1吐水モードにおける止水と、第2吐水モードによる止水とを第1センサ5による検知結果に応じて実行することで、検知対象が所定の検知範囲外となるタイミングで止水する。すなわち、水栓装置1は、使用者の同じ止水動作によって、各モードにおいて止水する。そのため、水栓装置1は、例えば、第1吐水モードによる止水のタイミングと、第2吐水モードによる止水のタイミングとを合わせることができ、使用者に違和感を与えることを抑制することができる。また、水栓装置1は、第2センサ6において導電性のスパウト本体部2を電極として用いることによって、既存の構成を用いつつ、第2吐水モードによる吐水を実行することができる。
【0091】
第1吐水モードは、水道水を吐水するモードである。第2吐水モードは、水道水とは異なる除菌水を吐水するモードである。
【0092】
これにより、水栓装置1は、第1センサ5、および第2センサ6による検知対象の検知結果に応じて、水道水、および除菌水を吐水、および止水することができる。そのため、水栓装置1は、複数種類の洗浄水を使用者の動作に応じて、区別して吐水することができる。また、水栓装置1は、使用頻度が高い水道水の吐水を第1吐水モードによって実行することで、例えば、水道水を吐水させる方法を変更せずに、複数種類の洗浄水を吐水させることができる。
【0093】
制御装置7は、第2吐水モードによって除菌水の吐水を開始した場合、吐水開始から少なくとも第2所定吐水時間経過するまで除菌水の吐水を継続する。
【0094】
これにより、水栓装置1は、第2吐水モードによる吐水を開始した後に、スパウト本体部2から検知対象が一旦、遠ざかった場合でも、吐水を継続することができる。例えば、使用者が、スパウト本体部2の上方や、側方に、触れたり手をかざしたりした後に、スパウト本体部2の下方に手を移動させる場合に、水栓装置1は、第2吐水モードによる除菌水を止水することを抑制することができる。また、水栓装置1は、第2吐水モードによって除菌水を吐水する場合、検知対象に多くの除菌水を当てることができ、除菌効果を向上させることができる。
【0095】
制御装置7は、第2吐水モードによって除菌水の吐水を開始し、第2所定吐水時間経過後に第1センサ5によって検知対象が検知されない場合に除菌水を止水する。
【0096】
これにより、水栓装置1は、第2吐水モードよって除菌水を第2所定吐水時間、吐水しつつ、検知対象が所定の検知範囲外となるタイミングで第2吐水モードにおける除菌水の止水を実行することができる。そのため、水栓装置1は、例えば、第1吐水モードによる止水のタイミングと、第2吐水モードによる止水のタイミングとを合わせることができ、使用者に違和感を与えることを抑制することができる。
【0097】
制御装置7は、第1吐水モードでは、第1センサ5による検知対象の第1継続時間が第1所定継続時間、継続する場合に水道水の吐水を開始する。制御装置7は、第2吐水モードでは、第2センサ6による検知対象の第3継続時間が、第1所定継続時間よりも長い第3所定継続時間、継続する場合に除菌水の吐水を開始する。
【0098】
これにより、水性装置は、例えば、第1センサ5、および第2センサ6によって検知対象がほぼ同時に検知される場合に、第1モードによる吐水を優先させることができる。水栓装置1は、第1センサ5よりも検知対象の検知範囲が広い第2センサ6によって、例えば、水撥ねなどが誤検知されることを抑制し、除菌水が吐水されることを抑制することができる。
【0099】
変形例に係る水栓装置1は、水道水の吐水を第1センサ5による検知対象の検知回数に応じて実行してもよい。例えば、変形例に係る水栓装置1は、所定時間内に、第1センサ5による検知対象の検知回数が第1所定回数以上である場合に、第1検知条件を満たすと判定してもよい。変形例に係る水栓装置1は、同様に、水道水の止水を第1センサ5による検知対象の非検知回数に応じて実行してもよい。
【0100】
また、変形例に係る水栓装置1は、除菌水の吐水を第2センサ6による検知対象の検知回数に応じて実行してもよい。変形例に係る水栓装置1は、除菌水の止水を第1センサ5による検知対象の非検知回数に応じて実行してもよい。
【0101】
変形例に係る水栓装置1は、第1吐水モード、および第2吐水モードにおいて、水道水の吐水方法を変更してもよい。例えば、第1吐水モードでは、水道水がシャワー吐水される。第2吐水モードでは、水道水がストレート吐水される。
【0102】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 水栓装置
2 スパウト本体部
5 第1センサ
6 第2センサ
7 制御装置
21 第1バルブ
26 第2バルブ
図1
図2
図3
図4