(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20250708BHJP
G08G 1/01 20060101ALI20250708BHJP
G01W 1/00 20060101ALI20250708BHJP
G01W 1/08 20060101ALI20250708BHJP
G16Y 20/10 20200101ALI20250708BHJP
【FI】
G08G1/00 J
G08G1/01 A
G01W1/00 J
G01W1/08 P
G16Y20/10
(21)【出願番号】P 2021209534
(22)【出願日】2021-12-23
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 豊和
(72)【発明者】
【氏名】相良 俊介
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/199306(WO,A1)
【文献】特開2010-237732(JP,A)
【文献】特開2021-043910(JP,A)
【文献】特許第6631677(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
G08G 1/01
G01W 1/00
G01W 1/08
G16Y 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶部および制御部を備える情報処理装置であって、
前記記憶部は、河川の各位置における危険水位を含む地理情報を記憶し、
前記制御部は、
人工衛星によって収集された、所定の地域における
河川の水位に関する
情報を含む第1情報を取得することと、
記憶された前記地理情報に含まれる前記危険水位を前記記憶部から取得することと、
取得された前記第1情報
および前記危険水位に基づいて、
前記第1情報に含まれる前記河川の水位が前記危険水位となっている位置を前記所定の地域において氾濫が予測される位置として特定することと、
特定された前記氾濫が予測される位置から所定の範囲内のエリアを、車両によって道路の冠水の有無を特定する所定のエリア
として決定することと、
前記所定のエリア内を走行している車両によって収集された道路の冠水の有無に関連する第2情報に基づいて、前記所定のエリア内における道路の冠水の有無を特定することと、
を実行
し、
前記制御部は、
車両の現在位置に基づいて前記所定のエリア内を走行している車両を特定することと、
前記特定された車両に前記第2情報を送信することを指示するための第3情報を送信することと、
をさらに実行する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記第1情報は、冠水している土地の水位に関する情報を
さらに含み、
前記制御部は、
前記第1情報に基づいて、前記所定の地域において冠水が発生している地点を特定し、
前記冠水が発生している地点に
さらに基づいて、所定のエリアを決定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記所定の地域を含む地域の標高に関する情報にさらに基づいて、前記所定のエリアを
決定する、
請求項1
または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記所定の地域を含む地域における冠水の危険度に関する情報にさらに基づいて、前記所定のエリアを決定する、
請求項1
または2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第2情報は、前記所定のエリア内を走行している車両の走行の状態に関する情報である、
請求項1から
4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記第2情報は、前記所定のエリア内を走行している車両が撮像した該車両の周囲の画像である、
請求項1から
4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
コンピュータが実行する情報処理方法であって、
河川の各位置における危険水位を含む地理情報を記憶することと、
人工衛星によって収集された、所定の地域における
河川の水位に関する
情報を含む第1情報を取得することと、
記憶された前記地理情報に含まれる前記危険水位を取得することと、
取得された前記第1情報
および前記危険水位に基づいて、
前記第1情報に含まれる前記河川の水位が前記危険水位となっている位置を前記所定の地域において氾濫が予測される位置として特定することと、
特定された前記氾濫が予測される位置から所定の範囲内のエリアを、車両によって道路の冠水の有無を特定する所定のエリア
として決定することと、
前記所定のエリア内を走行している車両によって収集された道路の冠水の有無に関連する第2情報に基づいて、前記所定のエリア内における道路の冠水の有無を特定することと、
を含み、
車両の現在位置に基づいて前記所定のエリア内を走行している車両を特定することと、
前記特定された車両に前記第2情報を送信することを指示するための第3情報を送信することと、
をさらに含む、
情報処理方法。
【請求項8】
前記第1情報は、冠水している土地の水位に関する情報を
さらに含み、
前記情報処理方法において、
前記第1情報に基づいて、前記所定の地域において冠水が発生している地点を特定し、
前記冠水が発生している地点に
さらに基づいて、所定のエリアを決定する、
請求項
7に記載の情報処理方法。
【請求項9】
前記所定の地域を含む地域の標高に関する情報にさらに基づいて、前記所定のエリアを決定する、
請求項
7または8に記載の情報処理方法。
【請求項10】
前記所定の地域を含む地域における冠水の危険度に関する情報にさらに基づいて、前記所定のエリアを決定する、
請求項
7または8に記載の情報処理方法。
【請求項11】
前記第2情報は、前記所定のエリア内を走行している車両の走行の状態に関する情報である、
請求項
7から
10のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項12】
前記第2情報は、前記所定のエリア内を走行している車両が撮像した該車両の周囲の画像である、
請求項
7から
10のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項13】
コンピュータに情報処理方法を実行させるプログラムであって、
前記情報処理方法は、
河川の各位置における危険水位を含む地理情報を記憶することと、
人工衛星によって収集された、所定の地域における
河川の水位に関する
情報を含む第1情報を取得することと、
記憶された前記地理情報に含まれる前記危険水位を取得することと、
取得された前記第1情報
および前記危険水位に基づいて、
前記第1情報に含まれる前記河川の水位が前記危険水位となっている位置を前記所定の地域において氾濫が予測される位置として特定することと、
特定された前記氾濫が予測される位置から所定の範囲内のエリアを、車両によって道路の冠水の有無を特定する所定のエリア
として決定することと、
前記所定のエリア内を走行している車両によって収集された道路の冠水の有無に関連する第2情報に基づいて、前記所定のエリア内における道路の冠水の有無を特定することと、
を含み、
車両の現在位置に基づいて前記所定のエリア内を走行している車両を特定することと、
前記特定された車両に前記第2情報を送信することを指示するための第3情報を送信することと、
をさらに含む、
プログラム。
【請求項14】
前記第1情報は、冠水している土地の水位に関する情報を
さらに含み、
前記情報処理方法において、
前記第1情報に基づいて、前記所定の地域において冠水が発生している地点を特定し、
前記冠水が発生している地点に
さらに基づいて、所定のエリアを決定する、
請求項
13に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、冠水検知装置が開示されている。冠水検知装置は、車両の走行に関する複数種類の走行状態データに基づいて、前記車両が走行する道路の冠水を検知した検知結果を取得する。また、冠水検知装置は、前記車両が走行する地域の降雨実績量を表す降雨情報、及び降雨予測量を表す降雨予測情報の少なくとも一方を含む気象情報を取得する。そして、冠水検知装置は、検知結果と気象情報とを用いて、道路の冠水を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、道路の冠水の状況をリアルタイムで把握することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の態様に係る情報処理装置は、
人工衛星によって収集された、所定の地域における水位に関する第1情報を取得することと、
前記第1情報に基づいて、車両によって道路の冠水の有無を特定する所定のエリアを決定することと、
前記所定のエリア内を走行している車両によって収集された道路の冠水の有無に関連する第2情報に基づいて、前記所定のエリア内における道路の冠水の有無を特定することと、
を実行する制御部を備える。
【0006】
本開示の第2の態様に係る情報処理方法は、
コンピュータが実行する情報処理方法であって、
人工衛星によって収集された、所定の地域における水位に関する第1情報を取得することと、
前記第1情報に基づいて、車両によって道路の冠水の有無を特定する所定のエリアを決定することと、
前記所定のエリア内を走行している車両によって収集された道路の冠水の有無に関連する第2情報に基づいて、前記所定のエリア内における道路の冠水の有無を特定することと、
を含む。
【0007】
本開示の第3の態様に係るプログラムは、
コンピュータに情報処理方法を実行させるプログラムであって、
前記情報処理方法は、
人工衛星によって収集された、所定の地域における水位に関する第1情報を取得することと、
前記第1情報に基づいて、車両によって道路の冠水の有無を特定する所定のエリアを決定することと、
前記所定のエリア内を走行している車両によって収集された道路の冠水の有無に関連する第2情報に基づいて、前記所定のエリア内における道路の冠水の有無を特定することと、
を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示により、道路の冠水の状況をリアルタイムで把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る観測システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、所定の地域における冠水の状況の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、観測サーバの機能構成の一例を概略的に示すブロック図である。
【
図4】
図4は、地理情報データベースに保持されている地理情報のテーブル構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、観測システムにおける情報処理の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
人工衛星を用いて冠水の状況を観測する場合を想定する。この場合において、人工衛星が水位に関する情報を収集することによって、冠水の状況が観測される。一方、人工衛星には回帰日数が定まっている。そのため、人工衛星が一度ある地域の水位に関する情報を収集した後に該地域の水位に関する情報を再び収集できるタイミングは、人工衛星が該地域の上空に存在するタイミングである。つまり、人工衛星が一度ある地域の水位に関する情報を収集した後に該地域の水位に関する情報を再び収集できるタイミングは、回帰日数が経過した後となる。そうすると、人工衛星は同一の地域の水位に関する情報を常に収集することが困難となる。したがって、人工衛星を用いてリアルタイムでの冠水の状況を把握することは困難となる。
【0011】
次に、車両を用いて冠水の状況を観測する場合を想定する。この場合において、車両が収集した道路の冠水の有無に関連する情報に情報処理が行われることによって道路の冠水の状況が観測される。このとき、車両によって道路の冠水の有無を特定するエリアが指定されていない状況では、該エリア外の車両が収集した道路の冠水の有無に関連する情報も情報処理の対象となり、計算コストが増加する虞がある。
【0012】
本開示に係る情報処理装置は、道路の冠水の状況を観測するための情報処理装置である。本開示に係る情報処理装置の制御部は、第1情報を取得する。第1情報は、人工衛星によって収集された、所定の地域における水位に関する情報である。情報処理装置の制御部は、第1情報に基づいて、車両によって冠水の有無を特定する所定のエリアを決定する。そして、制御部は、第2情報に基づいて、所定のエリア内における冠水の有無を特定する。ここで、第2情報は、所定のエリア内を走行している車両によって収集された道路の冠水の有無に関連する情報である。
【0013】
以上説明した通り、本開示に係る情報処理装置によって、所定のエリアが決定される。そして、情報処理装置によって、所定のエリア内の車両によって収集された第2情報に基づいて、冠水の有無が特定される。これにより、人工衛星が第1情報を収集した後、再び第1情報を収集可能となるまでの間、車両によって第2情報が収集される。そして、第2情報に基づいて、所定のエリア内における道路の冠水の有無を特定することができる。また、第1情報に基づいて所定のエリアが特定されることによって、情報処理装置が第2情報の情報処理を行うための計算コストを低くすることが可能となる。その結果、道路の冠水の状況をリアルタイムで把握することが可能となる。
【0014】
以下、本開示の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、および、その相対配置等は、特に記載がない限りは本開示の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0015】
<実施形態>
本実施形態における観測システム1について、
図1および
図2に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る観測システム1の概略構成を示す図である。観測システム1には、人工衛星100、観測サーバ200、および車両300を含んで構成される。観測システム1においては、人工衛星100、観測サーバ200、および車両300がネットワークN1によって相互に接続される。ネットワークN1には、例えば、インターネット等の世界規模の公衆通信網であるWAN(Wide Area Network)または、携帯電話等の電話通信網が採用されてもよい。
【0016】
(人工衛星)
人工衛星100は、水位を検知する人工衛星である。人工衛星100は、例えば、合成開口レーダ衛星(SAR衛星)である。人工衛星100は、地表面に電波を照射することで地表面の標高を観測する。具体的には、人工衛星100は、土地に照射した電波の反射波によって、電波を照射した土地の標高を観測することができる。ここで、電波を照射した土地が冠水している場合を想定する。この場合において、人工衛星100は、電波を照射した土地の標高に、冠水している水の深さを加えた値を標高として観測する。また、人工衛星100は、例えば、河川に対して照射した電波の反射に基づいて、河川の水位を観測することが可能である。人工衛星100は、ネットワークN1を介して、観測した土地の標高および河川の水位に関する情報(以下、「観測情報」と称する場合がある。)を観測サーバ200に送信する。
【0017】
ここで、人工衛星100は、回帰日数が定まっている人工衛星である。そのため、人工衛星100が所定の地域の標高および水位を観測できるタイミングは、人工衛星100が所定の地域の上空に存在しているタイミングとなる。
【0018】
(車両)
車両300は、所定の地域内に存在する車両である。車両300は、ネットワークN1を介して、車両300の走行状態に関する情報(以下、「車両情報」と称する場合がある。)を観測サーバ200に送信する。本実施形態においては、車両情報は、車両300の、走行速度およびアクセルペダルの踏み込み量等を含む情報である。
【0019】
(観測サーバ)
観測サーバ200は、冠水の状況を観測するためのサーバである。観測サーバ200は、ネットワークN1を介して、観測情報を人工衛星100から受信する。観測サーバ200は、観測情報に基づいて、所定の地域において、現在冠水が発生している地点(以下、「冠水地点」と称する場合がある。)を特定する。観測サーバ200が観測情報に基づいて所定の地域の冠水の状況を把握する方法の詳細については後述する。
【0020】
図2は、所定の地域における冠水の状況の一例を示す図である。
図2においては、所定の地域の一部が示されている。また、
図2においては、冠水地点から成るエリア(以下、「冠水エリア」と称する場合がある。)が斜線部によって示されている。
図2に示す例においては、川が氾濫することによって冠水が発生している。
【0021】
観測サーバ200は、人工衛星100から所定の地域に関する観測情報を受信することによって、人工衛星100が観測を行ったタイミングにおける所定の地域の冠水の状況を把握することができる。しかしながら、人工衛星100が所定の地域の上空に存在してい
ない場合には、人工衛星100は所定の地域に関する観測情報を観測サーバ200に送信することはできない。そのため、観測サーバ200が人工衛星100から受信する観測情報に基づいて、リアルタイムでの冠水の状況を把握することは困難となる。
【0022】
また、観測サーバ200は、ネットワークN1を介して車両情報を車両300から受信する。観測サーバ200は、車両情報に基づいて、道路の冠水の有無を特定することができる。観測サーバ200が車両情報に基づいて道路の冠水の有無を特定する方法の詳細については後述する。
【0023】
ここで、観測サーバ200が所定の地域内に存在するすべての車両300の車両情報を取得して、所定の地域内の道路の冠水の有無を特定する場合を想定する。この場合、所定の地域内の一部のエリア内の道路の冠水の有無を特定する場合と比べ、観測サーバ200が所定の地域内の道路の冠水の状況を把握するための計算コストが増加してしまう。
【0024】
そこで、観測サーバ200は、観測情報に基づいて、所定の地域内における冠水地点に基づいて、所定の地域内において車両によって道路の冠水の有無を特定するエリア(以下、「観測エリア」と称する場合がある。)を決定する。なお、観測サーバ200が観測エリアを決定する方法の詳細については後述する。そして、観測サーバ200は、決定した観測エリア内を走行している車両300の車両情報に基づいて、観測エリア内における道路の冠水の有無を特定する。
【0025】
観測サーバ200は、プロセッサ210、主記憶部220、補助記憶部230、および通信インタフェース(通信I/F)240を有するコンピュータを含んで構成される。プロセッサ210は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはDSP(Digital Signal Processor)である。主記憶部220は、例えば、RAM(Random Access Memory)である。補助記憶部230は、例えば、ROM(Read Only Memory)である。また、補助記憶部230は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、またはCD-ROM、DVDディスク、もしくはブルーレイディスクのようなディスク記録媒体である。また、補助記憶部230は、リムーバブルメディア(可搬記憶媒体)であってもよい。ここで、リムーバブルメディアとして、例えば、USBメモリまたはSDカードが例示される。通信I/F240は、例えば、LAN(Local Area Network)インターフェースボード、または無線通信のための無線通信回路である。
【0026】
観測サーバ200において、補助記憶部230には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、および各種情報テーブル等が格納されている。また、観測サーバ200において、プロセッサ210が、補助記憶部230に記憶されたプログラムを主記憶部220にロードして実行することによって、後述するような各種の機能を実現することができる。ただし、観測サーバ200における一部または全部の機能はASICまたはFPGAのようなハードウェア回路によって実現されてもよい。なお、観測サーバ200は、必ずしも単一の物理的構成によって実現される必要はなく、互いに連携する複数台のコンピュータによって構成されてもよい。
【0027】
(機能構成)
次に、本実施形態に係る観測システム1を構成する観測サーバ200の機能構成について、
図3および
図4に基づいて説明する。
図3は、観測サーバ200の機能構成の一例を概略的に示すブロック図である。
【0028】
観測サーバ200は、制御部201、通信部202、および地理情報データベース203(地理情報DB203)を含んで構成される。制御部201は、観測サーバ200の制
御をするための演算処理を行う機能を有する。制御部201は、観測サーバ200におけるプロセッサ210によって実現できる。通信部202は、観測サーバ200をネットワークN1に接続する機能を有する。通信部202は、観測サーバ200における通信I/F240によって実現できる。
【0029】
地理情報DB203は、地理情報を保持する機能を有する。地理情報は、所定の地域を含む地域(以下、「広域地域」と称する場合がある。)の地理に関する情報である。地理情報DB203は、観測サーバ200における補助記憶部230によって実現できる。
【0030】
図4は、地理情報DB203に保持されている地理情報のテーブル構成の一例を示す図である。
図4に示すように、位置フィールド、属性フィールド、標高フィールド、危険水位フィールド、および危険度フィールドが入力される。位置フィールドには、地理情報に含まれる広域地域における各位置を特定するための情報が入力される。位置フィールドには、例えば、緯度および経度が入力される。属性フィールドには、位置フィールドに入力されている各位置の属性が入力される。具体的には、位置フィールドに入力されている位置に土地(道路または建物等を含む。)が存在する場合には、属性フィールドには「土地」が入力される。また、位置フィールドに入力されている位置に川が存在する場合には、属性フィールドには「川」が入力される。
【0031】
標高フィールドには、標高フィールドに対応する位置フィールドに入力されている位置における土地の標高のデータが入力される。ここで、標高フィールドに対応する属性フィールドに「土地」が入力されている場合に、標高フィールドにデータが入力される。標高フィールドに対応する属性フィールドに「川」が入力されている場合には、標高フィールドにデータは入力されない。
【0032】
危険水位フィールドには、危険水位フィールドに対応する位置フィールドに入力されている位置において、氾濫が生じる虞のある川の水位が入力される。氾濫が生じる虞のある水位は、川に設けられている堤防の高さ等から予め定められている。ここで、危険水位フィールドに対応する属性フィールドに「川」が入力されている場合に、危険水位フィールドにデータが入力される。危険水位フィールドに対応する属性フィールドに「土地」が入力されている場合には、危険水位フィールドにはデータは入力されない。
【0033】
危険度フィールドには、危険度フィールドに対応する位置フィールドに入力されている位置における土地における冠水の危険度が複数のレベルに分けて入力される。ここで、危険度フィールドに対応する属性フィールドに「土地」が入力されている場合に、危険度フィールドにデータが入力される。危険度フィールドに対応する属性フィールドに「川」が入力されている場合には、危険度フィールドにデータは入力されない。
【0034】
制御部201は、通信部202によって観測情報を人工衛星100から受信する。制御部201は、地理情報DB203に保持されている地理情報と、人工衛星100から受信した観測情報に基づいて、所定の地域における冠水地点を特定する。具体的には、制御部201は、地理情報における各位置の標高と、観測情報における各位置の標高と、を比較する。このとき、ある位置において冠水が生じている場合、観測情報における該位置の標高には、冠水している水の深さが加えられている。そのため、ある位置において冠水が生じている場合には、観測情報における該位置の標高は、地理情報における該位置の標高よりも高くなっている。そこで、制御部201は、ある位置において、観測情報における標高が地理情報における標高よりも所定の値以上高くなっている場合に、該位置において冠水が生じていると判別する。このようにして、制御部201は、所定の地域における冠水地点を特定し、冠水エリアを特定する。
【0035】
制御部201は、冠水エリア(冠水地点)に基づいて観測エリアを決定する。具体的には、制御部201は、地理情報DB203に格納されている地理情報に基づいて、冠水エリアよりも標高の低い地点を含むように所定の地域内における観測エリアを決定する。具体的には、制御部201は、地理情報に基づいて、所定の地域内において、冠水エリアよりも標高の低い地点を取得する。そして、制御部201は、冠水エリアよりも標高の低い地点が含まれるように観測エリアを決定する。このように、冠水エリアよりも標高の低い地点が含まれるように観測エリアを決定することによって、冠水が新たに発生しやすいエリアが含まれるように観測エリアを決定することができる。このとき、観測エリアは、各エリアが互いに重なり合わない2つのエリアに分かれていてもよい。
【0036】
なお、
図2に示す例においては、所定の地域内において観測エリアが決定されている。しかしながら、観測サーバ200は、必ずしも、所定の地域内において観測エリアを決定しなくてもよい。つまり、観測サーバ200は、所定の地域外に観測エリアを決定してもよい。この場合において、観測サーバ200は、地理情報DB203に保持されている地理情報によって、広域地域の各地点の標高を取得する。ここで、広域地域には、所定の地域以外の地域も含まれている。そこで、観測サーバ200は、所定の地域以外の地域における各地点の標高も取得することができる。そして、観測サーバ200は、所定の地域外の地点であって、冠水エリアよりも標高の低い地点を特定することによって、所定の地域外において観測エリアを設定する。
【0037】
制御部201は、通信部202によって、車両300の現在位置を含む位置情報を車両300から繰り返し受信する。これにより、制御部201は、車両300の現在位置を把握することができる。そこで、制御部201は、位置情報に基づいて観測エリア内を走行している車両300(以下、「対象車両300」と称する場合がある。)を特定する。そして、制御部201は、通信部202によって、対象車両300に依頼情報を送信する。ここで、依頼情報は、対象車両300に車両情報の送信を依頼するための情報である。対象車両300は、ネットワークN1を介して、観測サーバ200から依頼情報を受信すると、車両情報を観測サーバ200に送信する。
【0038】
制御部201は、観測エリア内を走行している対象車両300が収集した車両情報に基づいて、観測エリア内における道路の冠水の有無を特定する。ここで、道路が冠水している場合には、車両300のアクセルペダルが踏み込まれたとしても道路上の水によって車両300の加速が阻害される。つまり、道路が冠水している場合には、車両300のアクセルペダルが踏み込まれたとしても、道路が冠水していない場合と比べて車両300の速度が増加しない。そこで、制御部201は、車両300の車両情報における、車両300のアクセルペダルの踏み込み量から予想される車両300の速度と実際の車両300の速度とを比較することによって、道路が冠水しているか否かを判別する。このようにして、制御部201は、車両情報に基づいて観測エリア内における道路の冠水の有無を特定する。
【0039】
なお、制御部201は、道路の冠水の有無に関連して値の変化する車両300の走行状態に関する情報であれば、必ずしも、車両300の走行速度およびアクセルペダルの踏み込み量に基づいて、観測エリア内における道路の冠水の有無を特定しなくてもよい。制御部201は、例えば、車両300のブレーキの効き等に基づいて、観測エリア内における道路の冠水の有無を特定してもよい。また、制御部201は、車両300の走行速度およびアクセルペダルの踏み込み量と、それら以外の車両300の走行状態に関する情報に基づいて、観測エリア内における道路の冠水の有無を特定してもよい。
【0040】
(情報処理の流れ)
次に、観測システム1における情報処理の流れについて
図5に基づいて説明する。
図5
は、観測システム1における情報処理の流れを示すシーケンス図である。人工衛星100、観測サーバ200、および車両300が実行する各処理は、それぞれ人工衛星100の制御部、制御部201、および車両300の制御部によって実行される。
【0041】
観測システム1においては、人工衛星100が地表面に照射した電波の反射波に基づいて、観測情報を取得する(S11)。人工衛星100は、観測情報を観測サーバ200に送信する(S12)。
【0042】
観測サーバ200は、人工衛星100から受信した観測情報に基づいて、冠水エリア(冠水地点)を特定する(S13)。次に、観測サーバ200は、冠水エリアに基づいて観測エリアを決定する(S14)。次に、観測サーバ200は、所定の地域内を走行している複数の車両300の中から、観測エリア内を走行している対象車両300を特定する(S15)。次に、観測サーバ200は、対象車両300に依頼情報を送信する(S16)。
【0043】
対象車両300は、依頼情報を受信すると、車両情報を観測サーバ200に送信する(S17)。そして、観測サーバ200は、受信した車両情報に基づいて、観測エリア内の道路上の冠水の有無を特定する(S18)。
【0044】
ここで、依頼情報には、観測エリアを示す情報(例えば、観測エリアの境界における各地点の緯度および経度を含む情報)が含まれている。これにより、車両300は、観測エリアを把握することが可能となる。そして、車両300は、依頼情報を受信すると、車両300が観測エリア外に位置するまで車両情報を繰り返し送信する。つまり、車両300は、車両300が移動した各地点における車両情報を観測サーバ200に送信する。これにより、観測サーバ200は、観測エリア内の各地点における道路上の冠水の有無を特定することが可能となる。
【0045】
以上説明した通り、観測システム1によって、観測情報に基づいて観測エリアが決定される。そして、観測システム1において、対象車両300によって収集された車両情報に基づいて、冠水の有無が特定される。これにより、観測サーバ200は、人工衛星100が観測情報を収集した後、再び観測情報を収集可能となるまでの間、対象車両300の車両情報に基づいて観測エリア内における道路上の冠水の有無を特定することが可能となる。また、観測情報に基づいて観測エリアが特定されることによって、観測サーバ200が車両情報の情報処理を行うための計算コストを低くすることが可能となる。その結果、道路上の冠水の状況をリアルタイムで把握することが可能となる。
【0046】
(変形例)
本実施形態においては、人工衛星100は合成開口レーダ衛星である。しかしながら、人工衛星100は、必ずしも、合成開口レーダ衛星でなくてもよい。地上の水位に関する情報を収集することが可能な人工衛星であれば、公知の人工衛星を人工衛星100として採用することができる。人工衛星100は、例えば、地表面を撮像するためのカメラを有する衛星であってもよい。この場合において、観測サーバ200は、人工衛星100によって撮像された画像に基づいて、例えば、画像認識処理を行うことによって、所定の地域における冠水の状況を把握する。このようにしても、道路の冠水の状況をリアルタイムで把握することが可能となる。
【0047】
また、本実施形態においては、観測サーバ200は、観測情報に基づいて、所定の地域における冠水地点を特定し、冠水エリアを特定する。一方、観測サーバ200は、冠水エリアに代わって、冠水が予想されるエリア(以下、「予測エリア」と称する場合がある。)を特定してもよい。具体的には、観測サーバ200は、地理情報DB203に保持され
ている地理情報から川の各位置における危険水位を取得する。観測サーバ200は、川の水位が危険水位となっている位置が存在する場合に、該位置から所定の範囲内の土地を予測エリアとして特定する。そして、観測サーバ200は、冠水エリアの代わりに、予測エリアに基づいて、観測エリアを決定する。このように、人工衛星100が観測情報を収集した時点において実際に冠水が発生していない場合であっても、対象車両300が観測エリアにおいて車両情報を観測サーバ200に送信することとなる。そうすると、対象車両300は、観測エリアにおいて実際に冠水が発生したとき、冠水が発生したことを示す車両情報を観測サーバ200に送信する。これにより、観測サーバ200は、実際に冠水が発生した場合に、観測エリアにおいて冠水が発生していることを把握することができる。このようにしても、道路の冠水の状況をリアルタイムで把握することが可能となる。
【0048】
また、本実施形態において、観測サーバ200は、地理情報DB203に保持されている地理情報における標高の情報に基づいて、観測エリアを決定する。しかしながら、観測サーバ200は、必ずしも、地理情報DB203に保持されている地理情報における標高の情報に基づいて観測エリアを決定しなくてもよい。観測サーバ200は、例えば、地理情報DB203に保持されている地理情報における各位置の危険度に基づいて、観測エリアを決定してもよい。具体的には、観測サーバ200は、冠水エリアの周囲に、危険度が所定のレベル以上である地点が存在する場合、該地点を含むエリアを観測エリアとして決定する。このようにしても、冠水が新たに発生しやすいエリアが含まれるように観測エリアとして決定することができる。
【0049】
また、本実施形態においては、観測サーバ200は、車両情報に基づいて道路の冠水の有無を特定する。しかしながら、観測サーバ200は、必ずしも、車両情報に基づいて道路の冠水の有無を特定しなくてもよい。観測サーバ200は、例えば、対象車両300が撮像した対象車両300の周囲の画像を含む情報(以下、「画像情報」と称する場合がある。)であってもよい。この場合において、観測サーバ200は、画像情報に含まれる画像に基づいて画像認識処理を行うことにより、対象車両300が走行している道路に冠水が生じているか否かを判別する。このようにして、観測サーバ200は、画像情報に基づいて、道路の冠水の有無を特定する。このようにしても、道路の冠水の状況をリアルタイムで把握することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態においては、観測サーバ200は、依頼情報を対象車両300に送信することにより、車両情報を対象車両300から受信する。しかしながら、観測サーバ200は、必ずしも、車両情報を対象車両300から受信するために、依頼情報を対象車両300に送信しなくてもよい。例えば、観測サーバ200は、所定の地域における全ての車両300から車両情報を繰り返し受信していてもよい。この場合において、観測サーバ200は、対象車両300を特定した後、所定の地域における全ての車両300から受信した車両情報のうち、対象車両300から受信した車両情報を抽出して、道路の冠水の有無を特定してもよい。このようにしても、観測サーバ200が所定の地域における全ての車両300から受信した車両情報に基づいて道路の冠水の有無を特定するよりも、計算コストを低くすることができる。
【0051】
<その他の実施形態>
上述の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。また、本開示において説明した処理および手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0052】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハード
ウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0053】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、またはハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク、またはブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、または光学式カードのような、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0054】
1・・観測システム
100・・人工衛星
200・・観測サーバ
201・・制御部
202・・通信部
203・・地理情報DB
300・・車両