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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】ダイカスト鋳造装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/32 20060101AFI20250708BHJP
   B22D 17/14 20060101ALI20250708BHJP
【FI】
B22D17/32 A
B22D17/14
B22D17/32 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022002729
(22)【出願日】2022-01-12
(65)【公開番号】P2023102330
(43)【公開日】2023-07-25
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥本 雅
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-062652(JP,A)
【文献】特開2009-285679(JP,A)
【文献】特開平08-099161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 15/00 - 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイカスト鋳造装置であって、
溶湯を導入する導入口を有し、キャビティを形成する金型と、
前記導入口と連通するスリーブと、
前記スリーブ内に進退可能に配置され、前進することにより前記スリーブ内に供給された前記溶湯を前記キャビティ内に出射するプランジャーと、
前記キャビティ内を減圧する減圧装置と、
前記スリーブから前記キャビティに向かって流れる前記溶湯の到達を検出する検出センサと、
前記プランジャーの進退を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記プランジャーの前進開始時点から、前記検出センサが前記溶湯の到達を検出する検出時点までの到達時間が、予め定められた基準時間よりも短い場合、前記検出時点での前記プランジャーの位置から前記キャビティへの前記溶湯の供給が完了する際の前記プランジャーの最前進位置までの前進時間が予め定められた基準前進時間よりも短くなるように前記プランジャーの前進速度の切替位置と、前記前進速度の大きさと、のうち少なくともいずれか一方を制御する速度制御ステップを実行し、
前記スリーブに前記溶湯が供給された後、前記前進速度を第1速度に設定して前記プランジャーを前記前進開始時点の位置である第1位置から前記切替位置まで前進させる第1ステップと、
前記第1ステップの後、前記前進速度を前記第1速度よりも大きい第2速度に切り替え、前記プランジャーを前記最前進位置よりも後退側の予め定められた位置である第2位置まで前進させる第2ステップと、を行い、
前記到達時間が前記基準時間よりも短い場合、前記切替位置を、前記第2速度を予め定められた基準第2速度に設定して前進させた場合の前記前進時間が前記基準前進時間となる前記切替位置である基準切替位置に設定するとともに、前記第2速度を、前記基準第2速度よりも大きい速度に変更することで前記速度制御ステップを実行する、ダイカスト鋳造装置。
【請求項2】
請求項に記載のダイカスト鋳造装置であって、
前記速度制御ステップは、
前記到達時間が、前記基準時間よりも長い場合、前記前進時間が前記基準前進時間よりも長くなるように前記前進速度を制御することを含む、ダイカスト鋳造装置。
【請求項3】
請求項に記載のダイカスト鋳造装置であって、
前記到達時間が前記基準時間よりも長い場合、前記切替位置を前記基準切替位置と前記第2位置との間の位置に変更することで前記速度制御ステップを実行する、ダイカスト鋳造装置。
【請求項4】
請求項に記載のダイカスト鋳造装置であって、
前記到達時間が前記基準時間よりも長い場合、前記到達時間が長いほど、前記切替位置を前記第2位置に近づける、ダイカスト鋳造装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載のダイカスト鋳造装置であって、
前記制御部は、
前記スリーブに前記溶湯を供給する供給ステップと、
前記供給ステップの後、前記第1ステップと前記第2ステップとにより、前記プランジャーを前記第1位置から前記第2位置まで前進させる前進ステップと、
前記前進ステップの後、前記プランジャーを前記第1位置まで後退させる後退ステップと、を有する射出処理を繰り返し行い、
n(nは正の整数)番目の前記射出処理の前記第2ステップにおいて、前記切替位置を変更した場合、n+1番目の前記射出処理の開始前に、前記基準切替位置を変更後の前記切替位置に変更する、ダイカスト鋳造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ダイカスト鋳造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、減圧されたキャビティ内に溶融金属を射出するダイカスト鋳造方法がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-35008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャビティ内の減圧に伴い、スリーブ内のキャビティに近い位置にある溶湯の一部が先にキャビティ内に流入する場合がある。この場合、先にキャビティ内に流入した一部の溶湯と、後から流入する溶湯とで、凝固する時期が異なるため、鋳造品の品質が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
本開示の一形態によれば、ダイカスト鋳造装置が提供される。このダイカスト鋳造装置は、溶湯を導入する導入口を有し、キャビティを形成する金型と、前記導入口と連通するスリーブと、前記スリーブ内に進退可能に配置され、前進することにより前記スリーブ内に供給された前記溶湯を前記キャビティ内に出射するプランジャーと、前記キャビティ内を減圧する減圧装置と、前記スリーブから前記キャビティに向かって流れる前記溶湯の到達を検出する検出センサと、前記プランジャーの進退を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記プランジャーの前進開始時点から、前記検出センサが前記溶湯の到達を検出する検出時点までの到達時間が、予め定められた基準時間よりも短い場合、前記検出時点での前記プランジャーの位置から前記キャビティへの前記溶湯の供給が完了する際の前記プランジャーの最前進位置までの前進時間が予め定められた基準前進時間よりも短くなるように前記プランジャーの前進速度の切替位置と、前記前進速度の大きさと、のうち少なくともいずれか一方を制御する速度制御ステップを実行し、前記スリーブに前記溶湯が供給された後、前記前進速度を第1速度に設定して前記プランジャーを前記前進開始時点の位置である第1位置から前記切替位置まで前進させる第1ステップと、前記第1ステップの後、前記前進速度を前記第1速度よりも大きい第2速度に切り替え、前記プランジャーを前記最前進位置よりも後退側の予め定められた位置である第2位置まで前進させる第2ステップと、を行い、前記到達時間が前記基準時間よりも短い場合、前記切替位置を、前記第2速度を予め定められた基準第2速度に設定して前進させた場合の前記前進時間が前記基準前進時間となる前記切替位置である基準切替位置に設定するとともに、前記第2速度を、前記基準第2速度よりも大きい速度に変更することで前記速度制御ステップを実行する。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、ダイカスト鋳造装置が提供される。このダイカスト鋳造装置は、溶湯を導入する導入口を有し、キャビティを形成する金型と、前記導入口と連通するスリーブと、前記スリーブ内に進退可能に配置され、前進することにより前記スリーブ内に供給された前記溶湯を前記キャビティ内に出射するプランジャーと、前記キャビティ内を減圧する減圧装置と、前記スリーブから前記キャビティに向かって流れる前記溶湯の到達を検出する検出センサと、前記プランジャーの進退を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記プランジャーの前進開始時点から、前記検出センサが前記溶湯の到達を検出する検出時点までの到達時間が、予め定められた基準時間よりも短い場合、前記検出時点での前記プランジャーの位置から前記キャビティへの前記溶湯の供給が完了する際の前記プランジャーの最前進位置までの前進時間が予め定められた基準前進時間よりも短くなるように前記プランジャーの前進速度の切替位置と、前記前進速度の大きさと、のうち少なくともいずれか一方を制御する速度制御ステップを実行する。この形態によれば、プランジャーの前進時間を短くすることにより、後の溶湯を早くキャビティに流入させることができ、先に流入した溶湯との凝固する時期の差を小さくすることができる。基準時間経過する前に、検出センサにより溶湯の到達が検出された場合とは、溶湯の一部が先にキャビティ内に流入している場合である。この場合には、プランジャーを早く前進させて残りの溶湯を早くキャビティに流入させることで、先に流入した溶湯と後に流入する溶湯との凝固する時期の差を小さくすることができる。よって、鋳造品の品質低下を抑制することができる。
(2)上記形態のダイカスト鋳造装置において、前記制御部は、前記スリーブに前記溶湯が供給された後、前記前進速度を第1速度に設定して前記プランジャーを前記前進開始時点の位置である第1位置から前記切替位置まで前進させる第1ステップと、前記第1ステップの後、前記前進速度を前記第1速度よりも大きい第2速度に切り替え、前記プランジャーを前記最前進位置よりも後退側の予め定められた位置である第2位置まで前進させる第2ステップと、を行い、前記到達時間が前記基準時間よりも短い場合、前記切替位置を、前記前進時間が前記基準前進時間となる場合の前記切替位置である基準切替位置と前記第1位置との間の位置に変更することで前記速度制御ステップを実行してもよい。この形態によれば、切替位置を基準切替位置と第1位置との間に変更することで、第1速度よりも大きい第2速度で前進する距離を長くし、前進時間を基準前進時間よりも短くすることができる。よって、残りの溶湯を早くキャビティに流入させることができる。
(3)上記形態のダイカスト鋳造装置において、前記制御部は、前記到達時間が前記基準時間よりも短い場合、前記到達時間が短いほど、前記切替位置を前記第1位置に近づけてもよい。この形態によれば、検出センサが検出した時期に応じて、切替位置を細かく調整することができる。
(4)上記形態のダイカスト鋳造装置において、前記速度制御ステップは、前記到達時間が、前記基準時間よりも長い場合、前記前進時間が前記基準前進時間よりも長くなるように前記前進速度を制御することを含んでもよい。この形態によれば、前進時間を長くすることにより、溶湯における乱流の発生を抑制し、鋳造品の品質低下を抑制することができる。到達時間が基準時間よりも長い場合とは、溶湯が導入口付近に未だ到達していない場合である。この場合には、プランジャーが第2位置に到達する時期を遅らせることで、乱流の発生を抑制することができる。
(5)上記形態のダイカスト鋳造装置において、前記到達時間が前記基準時間よりも長い場合、前記切替位置を前記基準切替位置と前記第2位置との間の位置に変更することで前記速度制御ステップを実行してもよい。この形態によれば、切替位置を基準切替位置と第2位置との間に変更することで、第2速度よりも小さい第1速度で前進する距離を長くし、前進時間を長くすることができる。よって、乱流の発生を抑制することができる。
(6)上記形態のダイカスト鋳造装置において、前記到達時間が前記基準時間よりも長い場合、前記到達時間が長いほど、前記切替位置を前記第2位置に近づけてもよい。この形態によれば、検出センサが検出した時期に応じて、切替位置を細かく調整することができる。
(7)上記形態のダイカスト鋳造装置において、前記制御部は、前記スリーブに前記溶湯を供給する供給ステップと、前記供給ステップの後、前記第1ステップと前記第2ステップとにより、前記プランジャーを前記第1位置から前記第2位置まで前進させる前進ステップと、前記前進ステップの後、前記プランジャーを前記第1位置まで後退させる後退ステップと、を有する射出処理を繰り返し行い、n(nは正の整数)番目の前記射出処理の前記第2ステップにおいて、前記切替位置を変更した場合、n+1番目の前記射出処理の開始前に、前記基準切替位置を変更後の前記切替位置に変更してもよい。この形態によれば、後続の射出処理における、一部の溶湯のキャビティへの流入を抑制することができる。n番目で基準時間経過前に検出センサにて溶湯の到着が検出されている場合とは、一部の溶湯がキャビティに先行して流入している場合である。この場合、溶湯の先頭位置が目標位置よりも導入口に近いと考えられ、後続の射出処理においても同様に一部の溶湯のキャビティへの流入が発生する可能性が高い。そこで、基準切替位置を基準切替位置と第1位置との間の位置に変更することで、後続の鋳造工程における一部の溶湯のキャビティへの流入を抑制することができる。
本開示は、ダイカスト鋳造装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、ダイカスト鋳造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ダイカスト鋳造装置の断面を示す模式図。
図2】時間とプランジャーの前進速度および位置との関係を示す図。
図3】溶湯の一部がキャビティに流入する場合を説明する図。
図4】射出処理のフローチャート。
図5】第2実施形態に係る連続射出処理のフローチャート。
図6】切替位置の決定方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、ダイカスト鋳造装置1の断面を示す模式図である。ダイカスト鋳造装置1は、金型10と、スリーブ20と、プランジャー30と、減圧装置40と、制御部80とを備える。ダイカスト鋳造装置1は、真空ダイカスト法または減圧ダイカスト法と呼ばれる方法、すなわち、減圧装置40により減圧されたキャビティ13内に注湯して鋳造品を製造するための装置である。金型10は、固定型11と可動型12とを有する。固定型11と可動型12との間にキャビティ13が形成されている。固定型11は、キャビティ13に溶湯を導入するための導入口14を有する。スリーブ20は、固定型11に形成された溶湯の流路であるライナ16を介して導入口14と連通する。スリーブ20には、溶湯が注入される注湯口21が設けられている。プランジャー30は、スリーブ20内に進退可能に配置され、前進することによりスリーブ20内に供給された溶湯をキャビティ13内に出射する。具体的には、プランジャー30は、後端に接続されたロッド31を介して図示しない油圧装置に連結されている。そして、油圧装置の駆動力により、プランジャー30は前進または後退する。図1には、プランジャー30が金型10に近づく方向である前進方向と、その逆方向である後退方向とが示されている。金型10には、キャビティ13を減圧するための流路15が形成されている。流路15は、減圧装置40に接続されている。減圧装置40は、真空ポンプなどで実現される。流路15には、減圧バルブ41が取り付けられている。キャビティ13内が減圧される場合、減圧バルブ41が開弁され、減圧装置40によりキャビティ13内の空気が排出される。
【0009】
制御部80は、CPUおよびメモリなどを備えたコンピュータとして構成されている。メモリには、後述する射出処理の実行プログラムなどが記憶されている。制御部80は、減圧装置40や油圧装置などを制御する。具体的には、制御部80は、プランジャー30の進退を制御する。本実施形態において、後述する基準切替位置WPとは、プランジャー30の前進速度を切り替える際の基準位置を意味し、プランジャー30の先端位置として予め設定されている。ここで、第1位置SPは、注湯口21よりも後退方向にある位置である。第2位置EPは、第1位置SPより前進方向にある位置であり、第1位置SPよりも導入口14に近い。
【0010】
さらに、ダイカスト鋳造装置1は、検出センサ51と、ストロークセンサ52を有する。検出センサ51は、プランジャー30からキャビティ13に向かって流れる溶湯の到達を検出する。本実施形態では、検出センサ51は、導入口14付近に配置されている。検出センサ51に溶湯が到達すると、検出センサ51は、到達検出信号を制御部80へ出力する。すなわち、検出センサ51に溶湯が到達することで、溶湯が導入口14に到達したことが検出される。検出センサ51は、2つの導電体を備える。2つの導電体の間には電圧が印加されている。2つの導電体は、各々の先端が離れた状態で、各々の先端がライナ16から露出して取り付けられている。検出センサ51に溶湯が到達していない場合、すなわち、2つの導電体の先端に溶湯が無い場合には、2つの導電体の間に電流は流れないない。一方、検出センサ51に溶湯が到達した場合、すなわち、2つの導電体の先端に溶湯がある場合には、導電体である溶湯を介して2つの導電体の間に電流が流れる。よって、検出センサ51は、内蔵する2つの導電体の間に電流が流れた場合には、到達検出信号を制御部80へ出力する。ストロークセンサ52は、プランジャー30に取り付けられており、プランジャー30の基準位置からの距離を検出する変位センサである。本実施形態において、基準位置と、第1位置SPとは一致する。
【0011】
図2は、時間と、プランジャー30の前進速度および位置との関係を示す図である。図2の上段は、時間とプランジャー30の位置との関係を示す。図2の下段は、時間とプランジャー30の前進速度との関係を示す。本実施形態では、図2の実線で示すように、スリーブ20に注湯された後、プランジャー30は始め低速である第1速度V1で前進し、その後、高速である第2速度V2で前進する。具体的には、プランジャー30は、図1に示す前進開始時点の位置である第1位置SPから第1速度V1で前進し始める。第1速度V1は、スリーブ20内の溶湯に乱流が発生しない程度に遅い速度である。これにより、乱流の発生により、空気が溶湯内に巻き込まれることによる鋳巣の発生を低減することができる。その後、キャビティ13内が減圧される。これにより、キャビティ13内の空気や離型剤起因のガスの巻き込みによる鋳巣の発生を低減することができる。プランジャー30は、基準切替位置WPまで第1速度で前進する。本実施形態では、基準切替位置WPは、溶湯が導入口14に到達する程度の位置である。その後、プランジャー30は、第2位置EPまで、第1速度V1よりも大きな第2速度V2で前進される。これにより、キャビティ13への溶湯の充填を短時間で行うことができ、凝固時期のバラツキを低減することができる。第2位置EPは、キャビティ13への溶湯の供給が完了する際のプランジャー30の最前進位置FPよりも後退側の予め定められた位置である。最前進位置FPは、キャビティ13内の圧力が目標圧力となる場合のプランジャー30の位置である。プランジャー30は、最前進位置FPに近づくと、キャビティ13に充填された溶湯の圧力により減速する。第2位置EPは、プランジャー30が減速し始める時点の位置である。以下の記載において、前進速度が基準切替位置WPにて第1速度V1から第2速度V2に切り替えられる場合を基準状態と呼ぶ場合がある。
【0012】
図3は、溶湯の一部がキャビティ13に流入する場合を説明する図である。図3に示すように、減圧装置40によりキャビティ13が減圧されると、溶湯のうち、キャビティ13に近い一部の溶湯が、他の多くの溶湯(後述の本流MM)から離れてキャビティ13に流入する場合がある。溶湯が波打つ場合があり、また、減圧バルブ41に近いほど、減圧の影響を受け易いからである。ここで、キャビティ13に流入する一部の溶湯を先湯TMと称し、その他の溶湯を本流MMと称する。先湯TMが発生した場合、本流MMは、先湯TMに遅れてキャビティ13に流入するため、先湯TMは、本流MMより先に凝固する。凝固時期が異なると、界面が発生し鋳造品の強度が低下する場合がある。そこで、本実施形態では、次の射出処理が実行される。射出処理では、検出センサ51を用いて、先湯TMが発生しているか否かが予測される。そして、先湯TMが発生していると予測される場合には、前進速度が第2速度V2に切り替えられる切替位置が変更される。これにより、先湯TMと、本流MMとの凝固時期の差を低減できる。よって、鋳造品の品質低下を抑制することができる。
【0013】
図4は、射出処理のフローチャートである。射出処理は、鋳造工程において実行される。図4に示すように、制御部80は、固定型11と可動型12とを密着させ、図示しないラドルを制御して、注湯口21を介してスリーブ20に注湯する(供給ステップS10)。制御部80は、プランジャー30の前進速度を第1速度V1に設定してプランジャー30を前進させる(ステップS12)。プランジャー30が注湯口21を閉塞する位置まで前進した後、制御部80は、減圧バルブ41を開弁し、キャビティ13内を減圧する(ステップS14)。制御部80は、検出センサ51が溶湯の到達を検出したか否かを判断する(ステップS16)。検出センサ51が溶湯の到達を検出していないと判断した場合(ステップS16:NO)、制御部80は、プランジャー30が前進を開始した前進開始時点から基準時間経過したか否かを判断する(ステップS18)。本実施形態では、基準時間は、プランジャー30が前進を開始してから基準切替位置WPに到達するまでの時間に設定されている。基準時間経過していないと判断した場合(ステップS18:NO)、検出センサ51が検出するまで、または基準時間経過するまで、予め定められた時間間隔にてステップS16または、ステップS16およびステップS18を繰り返し実行する。予め定められた時間間隔とは、例えば数msである。
【0014】
基準時間経過したと判断した場合(ステップS18:YES)、先湯TMは発生していないと予測されるため、制御部80は、切替位置としての基準切替位置WPにて、プランジャー30の前進速度を第2速度V2に切り替えて、プランジャー30を継続して前進させる(ステップS20)。これにより、キャビティ13内に溶湯が迅速に充填される。キャビティ13内が溶湯により充填されるに伴い、プランジャー30は減速する。なお、切替位置とは、前進速度を第1速度V1から第2速度V2へと切り替える位置である。制御部80は、キャビティ13内の圧力が目標圧力となる最前進位置FPまでプランジャー30を前進させた後、プランジャー30を最前進位置FPで停止させる(ステップS50)。溶湯は、キャビティ13内で凝固する。制御部80は、可動型12を固定型11から離し、図示しない押し出しピンを突出させて鋳造品を金型10から取り出す(ステップS52)。制御部80は、プランジャー30を第1位置SPまで後退させ(後退ステップS54)、本処理ルーチンを終了する。
【0015】
射出処理は、第1ステップと、第2ステップとを含む。第1ステップは、供給ステップS10にてスリーブ20に溶湯が供給された後、ステップS12にて前進速度が第1速度V1に設定されて、ステップS20にて前進速度が第2速度V2に切り替えられるまでの、プランジャー30を切替位置まで前進させるステップである。第2ステップは、第1ステップの後の、ステップS20にて前進速度を第1速度V1よりも大きい第2速度V2に切り替えられてから第2位置EPまで、プランジャー30を前進させるステップである。第1ステップおよび第2ステップを前進ステップとも呼ぶ。
【0016】
検出センサ51が溶湯の到達を検出したと判断した場合(ステップS16:YES)、先湯TMが発生していると予測されるため、制御部80は切替位置を基準切替位置WPと第1位置SPとの間の位置である変更切替位置WPa(図2)に変更する(ステップS22)。ステップS22を速度制御ステップとも呼ぶ。本実施形態では、変更切替位置WPaは、予め定められた位置である。なお、検出センサ51が溶湯の到達を検出したと判断した場合とは、前進開始時点から、検出センサ51が溶湯の到達を検出する検出時点までの到達時間が、基準時間よりも短い場合である。制御部80は、切替位置としての変更切替位置WPaにて、プランジャー30の前進速度を第2速度V2に切り替えて、プランジャー30を継続して前進させる(ステップS24)。これにより、基準状態よりも、溶湯を早くキャビティ13に出射することができる。よって、先湯TMと、本流MMとの凝固時期の差を低減でき、鋳造品の品質低下を抑制することができる。なお、ステップS24の実行後、制御部80は、ステップS50に移行する。
【0017】
ステップS22,S24について、図2を用いて説明する。図2に示す一点鎖線は、検出センサ51が溶湯の到達を検出したと制御部80が判断した場合(ステップS16:YES)、つまり、先湯TMが発生していると予測される場合の時間と前進速度および位置との関係を示している。先湯TMが発生していると予測される場合、基準切替位置WPにて前進速度が第2速度V2に切り替えられる時刻t1より前の時刻ta1にて、前進速度が第1速度V1から第2速度V2に切り替えられる。よって、基準状態における、プランジャー30が第2位置EPに到達する時刻t2より前の時刻ta2にて、プランジャー30は、第2位置EPに到達する。つまり、前進速度が変更切替位置WPaにて第2速度V2に切り替えられる場合における、プランジャー30が第1位置SPから第2位置EPまでの前進に要する前進時間は、基準状態における前進時間である基準前進時間TAtよりも短くなる。そして、プランジャー30が第1位置SPから最前進位置FPまでの前進に要する前進時間は、基準状態における前進時間よりも短くなる。これにより、溶湯は、基準状態よりも早くキャビティ13に出射される。よって、先湯TMと、本流MMとの凝固時期の差を低減できる。
【0018】
以上説明した第1実施形態によれば、制御部80は、プランジャー30の前進開始時点から、検出センサ51が溶湯の到達を検出するまでの到達時間が基準時間よりも短い場合、ステップS24にて、第1位置SPから第2位置EPまでの前進時間が基準前進時間TAtよりも短くなるように前進速度を制御する。具体的には、制御部80は、ステップS22において、切替位置を基準切替位置WPと第1位置SPとの間の位置である変更切替位置WPaに変更する。そして、ステップS24において、制御部80は、変更切替位置WPaにて前進速度を第2速度V2に切り替える。よって、先湯TMが発生していると予測される場合には、プランジャー30の前進時間を短くすることにより、本流MMを早くキャビティに流入させることができ、先湯TMと本流MMとの凝固時期の差を小さくすることができる。よって、鋳造品の品質低下を抑制することができる。
【0019】
B.第2実施形態:
図5は、第2実施形態に係る連続射出処理のフローチャートである。図6は、切替位置の決定方法を説明する図である。第2実施形態では、切替位置の決定方法が第1実施形態と異なる。第1実施形態と同じ処理ステップには同じ符号を付し、詳細な説明は、適宜省略する。本実施形態に係る連続射出処理では、射出処理が繰り返し実行される。
【0020】
図5に示すように、制御部80は、第1実施形態と同様に、供給ステップS10からステップS16までを実行する。制御部80は、検出センサ51が溶湯の到達を検出していないと判断した場合(ステップS16:NO)、検出センサ51が溶湯の到達を検出したと判断するまで、予め定められた時間間隔にてステップS16を実行する。予め定められた時間間隔とは、例えば数msである。検出センサ51が溶湯の到達を検出したと判断すると(S16:YES)、制御部80は切替位置を決定する(ステップS40)。
【0021】
ステップS40において、制御部80は、図6に示す、到達時間と切替位置との関係を用いて切替位置を決定する。到達時間と切替位置との関係は、予め実験などにより定められており、制御部80のメモリに記憶されている。到達時間と切替位置との関係は、数式により規定されてもよく、到達時間と切替時間とを対応付けたマップにより規定されてもよい。図6の横軸は、到達時間[s]であり、縦軸は、切替位置[mm]である。切替位置は、第1位置SPを基準として、前進方向を正方向とする位置である。
【0022】
到達時間が基準時間TRtである場合、切替位置は、基準切替位置WPに設定される。本実施形態では、第1実施形態と同様に、基準切替位置WPは、先湯TMが発生していない基準の場合において、溶湯が導入口14に到達したときのプランジャー30の位置に設定されている。つまり、基準時間TRtは、基準の場合における、前進開始時点から検出センサ51が溶湯の到達を検出するまでの到達時間である。
【0023】
到達時間と切替位置との関係は、到達時間が基準時間TRtよりも短い場合、検出センサ51の溶湯の到着を検出した時期が早いほど、つまり、到達時間が短いほど、切替位置は、第1位置SPに近づくように設定されている。そして、到達時間が基準時間TRtよりも長い場合、検出センサ51の溶湯の到着を検出した時期が遅いほど、つまり、到達時間が長いほど、切替位置は、第2位置EPに近づくように設定されている。
【0024】
上記の様に、到達時間が基準時間TRtよりも短い場合とは、先湯TMが発生していると予測される場合である。この場合には、切替位置を第1位置SPに近づけることにより、プランジャー30の前進時間を短くし、本流MMを早くキャビティに流入させることができ、先湯TMと本流MMとの凝固時期の差を小さくすることができる。対して、到達時間が基準時間TRtよりも長い場合とは、溶湯の導入口14への到達が遅い場合である。この場合には、早期に第2速度V2に切り替えると、乱流が発生し易くなる。そこで、切替位置を第2位置EPに近づけることにより、溶湯が導入口14に到達するくらいの時期に第2速度に切り替えることで、乱流の発生を抑制することができる。いずれの場合も、到達時間と切替位置との関係を用いることにより、切替位置を細かく調整することができる。例えば、切替位置が基準切替位置WPよりも第1位置SPに近づけられた場合には、本流MMをキャビティ13に早期に流入させることができる一方で、乱流が発生し易くなる場合も考えられる。そこで、到達時間と切替位置との関係を、乱流発生を抑制しつつ、先湯TM発生による品質低下を抑制することができるように規定することで、鋳造品の品質低下を抑制することができる。
【0025】
制御部80は、ステップS40にて決定した切替位置である変更切替位置WPbにて前進速度を第2速度V2に切り替える(ステップS42)。ステップS40およびステップS42を速度制御ステップとも呼ぶ。制御部80は、基準切替位置WPを変更切替位置WPbに変更する(ステップS44)。これにより、後続の射出処理では、変更後の基準切替位置WPである変更切替位置WPbにて前進速度が切り替えられる。なお、変更切替位置WPbが基準切替位置WPと一致する場合には、基準切替位置は変更されないこととなる。よって、後続の射出処理における先湯TMの発生、または溶湯での乱流の発生を抑制することができる。
【0026】
変更切替位置WPbに変更される場合には、変更切替位置WPbが基準切替位置WPと第1位置SPとの間である場合と、変更切替位置WPbが基準切替位置WPと第2位置EPとの間である場合とがある。このうち、変更切替位置WPbが基準切替位置WPと第1位置SPとの間である場合とは、先湯TMが発生していると予測される場合である。この場合、溶湯の先頭位置が目標位置よりも導入口14に近いと考えられ、後続の射出処理においても同様に先湯TMが発生する可能性が高い。そこで、予め基準切替位置を基準切替位置WPと第1位置SPとの間の位置に変更することで、後続の射出処理における一部の溶湯のキャビティへの流入を抑制することができる。
【0027】
一方、変更切替位置WPbが基準切替位置WPと第2位置EPとの間にある場合とは、溶湯の導入口14への到達が遅い場合である。この場合には、早期に第2速度V2に切り替えると、溶湯が導入口14に到達する前にプランジャー30の速度が速く切り替えられるため、乱流が発生し易くなる場合がある。そこで、切替位置を第2位置EPに近づけることにより、後続の射出処理における、乱流の発生を抑制することができる。
【0028】
制御部80は、プランジャー30を最前進位置FPで停止させる(ステップS50)。制御部80は、鋳造品を金型10から取り出す(ステップS52)。制御部80は、プランジャー30を第1位置SPまで後退させる(後退ステップS54)。制御部80は、鋳造工程が終了するか否かを判断する(ステップS56)。制御部80は、例えば終了ボタンを介して鋳造工程の終了指示を受け付けた場合、鋳造工程が終了すると判断する。一方、制御部80は、鋳造工程の終了指示を受け付けていない場合、鋳造工程を終了しないと判断する。
【0029】
鋳造工程が終了すると判断した場合(ステップS56:YES)、制御部80は、本処理ルーチンを終了する。鋳造工程が終了しないと判断した場合(ステップS56:NO)、次の射出処理のため、供給ステップS10と同様に、制御部80は、スリーブ20に注湯する(供給ステップS60)。制御部80は、ステップS12と同様に、プランジャー30の前進速度を第1速度V1に設定してプランジャー30を前進させる(ステップS62)。制御部80は、ステップS14と同様に、キャビティ13内を減圧する(ステップS64)。
【0030】
制御部80は、基準切替位置WPにて前進速度を第2速度V2に変更する(ステップS66)。ここで、ステップS44にて、基準切替位置WPが変更されている場合には、ステップS66では、変更後の基準切替位置WPである変更切替位置WPbにて前進速度が変更される。よって、前の射出処理における溶湯の状態を反映することができるため、先湯TMの発生、または溶湯での乱流の発生を抑制することができる。
【0031】
ステップS50と同様に、制御部80は、プランジャー30を最前進位置FPで停止させる(ステップS68)。ステップS52と同様に、制御部80は、鋳造品を金型10から取り出す(ステップS70)。後退ステップS54と同様に、制御部80は、プランジャー30を第1位置SPまで後退させ(後退ステップS72)、次の射出処理のため、ステップS56に移行する。
【0032】
供給ステップS60にてスリーブ20に溶湯が供給された後、ステップS66にて前進速度が第2速度V2に切り替えられるまでプランジャー30を前進させるステップを第1ステップとも呼ぶ。ステップS66にて前進速度を第1速度V1よりも大きい第2速度V2に切り替えられてから第2位置EPまでプランジャー30を前進させるステップを第2ステップとも呼ぶ。供給ステップS60から後退ステップS72までの処理を射出処理とも呼ぶ。
【0033】
以上説明した第2実施形態によれば、制御部80は、ステップS40において、到達時間が基準時間よりも短い場合、到達時間が短いほど、切替位置を第1位置SPに近づける。これにより、検出センサ51が検出した時期に応じて、切替位置を細かく調整することができる。
【0034】
また、制御部80は、ステップS40において、到達時間が基準時間よりも長い場合、ステップS40にて、第1位置SPから第2位置EPまでの前進時間が基準前進時間TAtよりも長くなるように前進速度を制御する。具体的には、到達時間が長いほど、切替位置を第2位置EPに近づける。これにより、溶湯が導入口付近に未だ到達していない場合に、溶湯が導入口14に到達する前にプランジャー30の前進速度が第2速度V2に切り替えられることによる溶湯における乱流の発生を抑制し、鋳造品の品質低下を抑制することができる。
【0035】
また、制御部80は、n番目の射出処理としての供給ステップS10から後退ステップS54に含まれる第2ステップとしてのステップS42にて切替位置を変更した場合、n+1番目の射出処理としての供給ステップS60から後退ステップS72の開始前に実行されるステップS44において、基準切替位置WPを変更切替位置WPbに変更する。これにより、後続の射出処理である供給ステップS60から後退ステップS72における、先湯TMの発生を抑制することができる。
【0036】
C.他の実施形態:
(C1)上記第1実施形態では、第1速度V1から第2速度V2に切り替える位置が、基準切替位置WPと第1位置SPとの間の位置に変更されることにより、前進時間が基準前進時間よりも短く設定される。前進時間を基準前進時間よりも短くする態様はこれに限られない。例えば、切替位置は変更せずに、第2速度を基準の状態における第2速度V2よりも大きくしてもよい。さらに、前進速度は、第1速度V1および第2速度V2の2速度だけでなく、3以上の速度が用いられてもよい。
【0037】
(C2)上記第2実施形態では、到達時間が基準時間TRtより長い場合、第1速度V1から第2速度V2に切り替える位置が、基準切替位置WPと第2位置EPとの間の位置に変更されることにより、前進時間が基準前進時間よりも長く設定される。前進時間を基準前進時間よりも長くする態様はこれに限られない。例えば、切替位置は変更せずに、第2速度を基準の状態における第2速度V2よりも小さくしてもよい。
【0038】
(C3)上記第2実施形態では、制御部80は、図6に示す、到達時間と切替位置との関係を用いて、到達時間が基準時間TRtよりも長い場合、到達時間が長いほど、切替位置を第2位置EPに近づける。これとは別に、制御部80は、到達時間が基準時間TRtよりも長い場合には、到達時間の長さに拘わらず、予め定められた位置であって、基準切替位置WPと第2位置EPとの間の位置に切替位置を変更する制御を行ってもよい。この態様においても、プランジャー30の前進時間を長くすることにより、溶湯における乱流の発生を抑制し、鋳造品の品質低下を抑制することができる。
【0039】
(C4)上記第1実施形態では、先湯TMが発生しているか否かを判断するために使用される基準時間は、プランジャー30が前進を開始してから基準切替位置WPに到達するまでの時間に設定されている。基準時間は、これに限られず、プランジャー30が前進を開始してから基準切替位置WPに到達するまでの時間以内であればよい。
【0040】
(C5)上記第2実施形態では、2回目以降の射出処理では、ステップS44のような検出センサ51を用いた基準切替位置の変更は行われない。これとは別に、毎回、射出処理にてステップS44のような検出センサ51を用いた基準切替位置の変更が行われてもよい。これにより、溶湯の挙動のばらつきを細かく反映することができる。
【0041】
(C6)上記第2実施形態では、2回目以降の射出処理では、ステップS44のような検出センサ51を用いた基準切替位置の変更は行われない。これとは別に、例えば射出処理が数回行われる毎に、検出センサ51を用いた基準切替位置の変更を行う構成としてもよい。これにより、検出センサ51を用いた基準切替位置の変更ステップを適宜削減しつつ、前回の溶湯の挙動を反映することができる。
【0042】
(C7)上記実施形態では、溶湯が導入口14に到達する程度の時期に、プランジャー30の速度は、第1速度V1から第2速度V2に切り替えられる。第2速度V2に切り替えられる時期は、溶湯が導入口14に到達する時期に限られない。溶湯の先端位置が、導入口14に到達する手前で、第2速度V2に切り替えられてもよい。これにより、溶湯を早期にキャビティ13に流入させることができる。
【0043】
(C8)上記実施形態では、検出センサ51は、導入口14付近に配置されているが、検出センサ51の配置場所は、導入口14付近に限られない。第2実施形態においては、検出センサ51の設置場所を切替位置に対応させた場所とするとよい。上記(C7)に記載したように、溶湯の先端位置が、導入口14に到達する手前で、第2速度V2に切り替えられる構成の場合には、検出センサ51を導入口14の手前に配置することで、検出センサ51が溶湯の到着を検出した後に、プランジャー30の速度を切り替えることでる。よって、溶湯の先端位置が、導入口14に到達する手前で、第2速度V2に切り替える構成を実現することができる。
【0044】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…ダイカスト鋳造装置、10…金型、11…固定型、12…可動型、13…キャビティ、14…導入口、15…流路、16…ライナ、20…スリーブ、21…注湯口、30…プランジャー、31…ロッド、40…減圧装置、41…減圧バルブ、51…検出センサ、52…ストロークセンサ、80…制御部、MM…本流、TM…先湯、SP…第1位置、EP…第2位置、FP…最前進位置、V1…第1速度、V2…第2速度、TAt…基準前進時間、TRt…基準到達時間、WP…基準切替位置、WPa,WPb…変更切替位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6