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  • 特許-内燃機関の歯車装置 図1
  • 特許-内燃機関の歯車装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】内燃機関の歯車装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/14 20060101AFI20250708BHJP
   F02B 77/00 20060101ALI20250708BHJP
   F16F 15/12 20060101ALI20250708BHJP
【FI】
F16H55/14
F02B77/00 L
F16F15/12 S
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022076028
(22)【出願日】2022-05-02
(65)【公開番号】P2023165228
(43)【公開日】2023-11-15
【審査請求日】2024-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 寿行
【審査官】岸本 和真
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-92849(JP,U)
【文献】特開2020-133801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/14
F16F 15/12
F02B 77/00
F16F 15/126
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフトに取り付けられた第1ギヤと、
バランサシャフトに取り付けられ、前記第1ギヤに噛み合う第2ギヤと、を具備し、
前記バランサシャフトにバランサマスが取り付けられ、
前記第1ギヤは2つの板部および第1ダンパを有し、
前記第2ギヤは2つの板部および第2ダンパを有し、
前記第1ギヤの前記2つの板部、前記第2ギヤの前記2つの板部、前記第1ダンパおよび前記第2ダンパは円環形状を有し、
前記第1ダンパは、前記第1ギヤの前記2つの板部の間に設けられ、
前記第2ダンパは、前記第2ギヤの前記2つの板部の間に設けられ、
前記第1ダンパが前記第2ダンパよりも薄いことにより、前記第1ダンパの共振周波数は前記第2ダンパの共振周波数よりも高い、内燃機関の歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関で発生する振動を抑制するために、バランサ装置を設けることがある。内燃機関のクランクシャフトにギヤが設けられ、バランサ装置のバランサシャフトにギヤが設けられる。これらのギヤが噛み合うことで、バランサシャフトはクランクシャフトと同期して回転する。バランサ装置のギヤにゴム製のダンパを設けることで、振動を抑制する技術が開発されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-204372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、振動を十分に抑制できないことがある。そこで、振動を抑制することが可能な内燃機関の歯車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、クランクシャフトに取り付けられた第1ギヤと、バランサシャフトに取り付けられ、前記第1ギヤに噛み合う第2ギヤと、を具備し、前記バランサシャフトにバランサマスが取り付けられ、前記第1ギヤは2つの板部および第1ダンパを有し、前記第2ギヤは2つの板部および第2ダンパを有し、前記第1ギヤの前記2つの板部、前記第2ギヤの前記2つの板部、前記第1ダンパおよび前記第2ダンパは円環形状を有し、前記第1ダンパは、前記第1ギヤの前記2つの板部の間に設けられ、前記第2ダンパは、前記第2ギヤの前記2つの板部の間に設けられ、前記第1ダンパが前記第2ダンパよりも薄いことにより、前記第1ダンパの共振周波数は前記第2ダンパの共振周波数よりも高い、内燃機関の歯車装置によって達成することができる。
【発明の効果】
【0006】
振動を抑制することが可能な内燃機関の歯車装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は実施形態に係る歯車装置を例示する斜視図である。
図2図2(a)および図2(b)はギヤを例示する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は実施形態に係る歯車装置100を例示する斜視図である。歯車装置100は2つのギヤ(歯車)を有する。ギヤ10(第1ギヤ)は、内燃機関のクランクシャフト30の先端に取り付けられている。ギヤ20(第2ギヤ)およびバランサマス34が、バランサシャフト32の先端に取り付けられている。クランクシャフト30とバランサシャフト32とは、互いに離間し、かつ互いに平行である。
【0009】
図2(a)はギヤ10を例示する正面図である。ギヤ10は板部12、板部14、およびダンパ16(第1ダンパ)を有する。板部12、板部14、およびダンパ16は、それぞれ円環形状を有する。板部12の外周面に複数の歯12aが設けられている。複数の歯12aは、板部12の外周の方向に沿って並ぶ。板部14はギヤ10の径方向において中央に位置する。ダンパ16は、図2(a)において斜線が記された部分である。ダンパ16は板部12と板部14との間に設けられている。すなわち、板部14の外周面にダンパ16が取り付けられ、ダンパ16の外周面に板部12が取り付けられる。
【0010】
図2(b)はギヤ20を例示する正面図である。ギヤ20は板部22、板部24、およびダンパ26(第2ダンパ)を有する。板部22、板部24、およびダンパ26は、それぞれ円環形状を有する。板部22の外周面に複数の歯22aが設けられている。複数の歯22aは、板部22の外周の方向に沿って並ぶ。板部24はギヤ20の径方向において中央に位置する。ダンパ26は、図2(b)において斜線が記された部分である。ダンパ26は板部22と板部24との間に設けられている。すなわち、板部24の外周面にダンパ26が取り付けられ、ダンパ26の外周面に板部22が取り付けられる。
【0011】
ギヤ10の板部12および板部14、ギヤ20の板部22および板部24は、例えば金属または樹脂で形成される。板部は、例えばダクタイル鋳鉄(FCD:Ferrum Casting Ductile)など、鉄を含む材料で形成されてもよい。ダンパ16およびダンパ26はゴムで形成される。
【0012】
クランクシャフト30が回転すると、クランクシャフト30とともにギヤ10も回転する。ギヤ10の複数の歯12aと、ギヤ20の複数の歯22aとは噛み合う。このため、動力がギヤ10からギヤ20に伝達される。ギヤ20はギヤ10に同期して回転する。バランサシャフト32はギヤ20とともに回転する。
【0013】
ダンパ16の共振周波数は、ダンパ26の共振周波数とは異なる。図2(a)に示すダンパ16の厚さT1は、図2(b)に示すダンパ26の厚さT2より小さい。ダンパ16がダンパ26よりも薄いことで、ダンパ16の剛性はダンパ26の剛性よりも高くなる。ダンパ16の歪率はダンパ26の歪率よりも低くなる。ダンパ16の共振周波数はダンパ26の共振周波数よりも高くなる。
【0014】
2つのギヤの両方にダンパを設けることで、振動を抑制する。しかし2つのダンパの共振周波数が等しい場合、共振周波数で2つのダンパの振動が大きくなる。共振周波数における振動を抑制することが困難である。
【0015】
本実施形態によれば、ギヤ10はダンパ16を有し、ギヤ20はダンパ26を有する。ダンパ16の共振周波数は、ダンパ26の共振周波数とは異なる。したがって、同一の周波数においてダンパ16とダンパ26の両方が振動することが抑制される。この結果、振動を抑制することができる。
【0016】
振動を抑制することで、騒音の発生、ギヤ10およびギヤ20への負荷を抑制することができる。2つのダンパの間で共振周波数を異ならせることで、振動を抑制することができる。振動抑制のためにダンパを大型化しなくてよい。
【0017】
ダンパ26はダンパ16よりも厚い。ダンパ16の剛性がダンパ26の剛性よりも高くなり、ダンパ16の共振周波数がダンパ26の共振周波数よりも高くなる。ダンパ26の厚さT2は、例えばダンパ16の厚さT1の1.2倍以上、1.5倍以上、2倍以上などでもよい。
【0018】
共振周波数を異ならせるためには、ダンパ16の厚さT1がダンパ26の厚さT2と異なればよい。例えば、ダンパ16がダンパ26よりも厚くてもよい。しかし、ダンパ16を厚くすることで、ダンパ16の剛性はダンパ26の剛性よりも低くなり、ダンパ16の歪率はダンパ26の歪率よりも高くなる。ダンパ16には、バランサマス34などから負荷がかかる。剛性の低いダンパ16に負荷がかかることで、ダンパ16が破損する恐れがある。共振周波数を異ならせ、かつダンパ16の剛性を高めるために、ダンパ16をダンパ26よりも薄くする。ダンパ16の剛性を高め、破損を抑制することができる。
【0019】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0020】
10、20 ギヤ
12、14、22、24 板部
12a、22a 歯
16、26 ダンパ
30 クランクシャフト
32 バランサシャフト
34 バランサマス
100 歯車装置
図1
図2