IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ハイブリッド車の制御装置 図1
  • 特許-ハイブリッド車の制御装置 図2
  • 特許-ハイブリッド車の制御装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】ハイブリッド車の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/06 20060101AFI20250708BHJP
   B60K 6/445 20071001ALI20250708BHJP
   B60W 20/16 20160101ALI20250708BHJP
   F02D 41/30 20060101ALI20250708BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/445 ZHV
B60W20/16
F02D41/30
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022120508
(22)【出願日】2022-07-28
(65)【公開番号】P2024017694
(43)【公開日】2024-02-08
【審査請求日】2024-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯澤 侑貴
(72)【発明者】
【氏名】熊沢 卓
(72)【発明者】
【氏名】藤竹 良徳
(72)【発明者】
【氏名】正源寺 良行
(72)【発明者】
【氏名】本田 信之介
(72)【発明者】
【氏名】谷山 元彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 啓太
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-260392(JP,A)
【文献】特開2011-088504(JP,A)
【文献】特開2014-189159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 20/50
F02D 41/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒のエンジンと、前記エンジンからの排ガスを浄化する触媒を有する排ガス浄化装置と、第1モータと、前記エンジンと前記第1モータと入力軸との3軸に3つの回転要素が接続されたプラネタリギヤと、前記入力軸に接続された第2モータと、前記入力軸と駆動輪に連結された駆動軸とに接続された有段変速機と、を備えるハイブリッド車の前記エンジンと前記第1、第2モータと前記有段変速機とを制御するハイブリッド車の制御装置であって、
前記複数の気筒のうち少なくとも1つの気筒への燃料供給を停止する一部気筒フューエルカット制御を実行し、
前記一部気筒フューエルカット制御を実行しているときには、前記有段変速機については、同一の車速およびアクセル開度において前記一部気筒フューエルカット制御を実行していないときに比して低速段となるように前記有段変速機を制御し、前記エンジンおよび前記第1、第2モータについては、前記車速が大きいほど線形で大きくなり且つ前記有段変速機の変速段が大きいほど前記車速に対する傾きが小さくなるように仮目標回転数を設定し、前記エンジンが失火しない回転数の下限値より高く、且つ、前記アクセル開度が高いときには低いときに比して高く、且つ、前記車速が高いときには低いときに比して高くなるように下限回転数を設定し、前記仮目標回転数と前記下限回転数とのうち大きいほうの値を前記エンジンの目標回転数に設定し、前記アクセル開度と前記車速とに基づく走行パワーで前記ハイブリッド車が走行するように前記エンジンの目標パワーを設定し、前記目標パワーを前記目標回転数で除した目標トルクと前記目標回転数で前記エンジンが運転されると共に走行用トルクで前記ハイブリッド車が走行するように制御する
ハイブリッド車の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド車の制御装置としては、複数気筒のエンジンと、エンジンからの排ガスを浄化する触媒を有する排ガス浄化装置と、第1、第2モータと、を備えるハイブリッド車のエンジンと第1、第2モータとを制御するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、複数の気筒のうち少なくとも1つの気筒への燃料供給を停止する一部気筒フューエルカット(一部気筒FC)制御の実行中は、一部気筒FC制御を実行していないときに比してエンジンの回転を高くする。これにより、一部気筒FC制御中におけるドライバビリティの悪化を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-127709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のハイブリッド車の制御装置では、ハイブリッド車の走行状態に拘わらず、一部気筒FC制御の実行中は、一部気筒FC制御を実行していないときに比してエンジンの回転を高くするから、ハイブリッド車の走行状態によっては、ドライバに違和感を与えてしまう。
【0005】
本発明のハイブリッド車の制御装置は、一部気筒フューエルカット制御の実行中にドライバに違和感を与えるのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド車の制御装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のハイブリッド車の制御装置は、
複数の気筒のエンジンと、前記エンジンからの排ガスを浄化する触媒を有する排ガス浄化装置と、第1モータと、前記エンジンと前記第1モータと駆動輪に連結された駆動軸との3軸に3つの回転要素が接続されたプラネタリギヤと、前記駆動軸に接続された第2モータと、を備えるハイブリッド車の前記エンジンと前記第1、第2モータとを制御するハイブリッド車の制御装置であって、
前記複数の気筒のうち少なくとも1つの気筒への燃料供給を停止する一部気筒フューエルカット制御を実行し、
前記一部気筒フューエルカット制御の実行中に、前記ハイブリッド車の走行状態に基づいて、同一の前記走行状態で且つ前記一部気筒フューエルカット制御を実行していないときに比して前記エンジンの回転数を高くする
ことを要旨とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ハイブリッド車20の構成の概略を示す構成図である。
図2】制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図3】変速線図の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例
【0010】
図1は、本発明の一実施例としての制御装置を搭載するハイブリッド車20の構成の概略を示す構成図である。ハイブリッド車20は、図示するように、エンジン22と、排ガス浄化装置(浄化装置)24と、プラネタリギヤ30と、モータMG1,MG2(第1、第2モータ)と、インバータ41,42と、バッテリ50と、変速機(変速装置)60と、電子制御ユニット(以下、「ECU」という)70とを備える。エンジン22は、内燃機関として構成されており、ECU70によって運転制御されている。排ガス浄化装置24は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)を含む排ガスを浄化する触媒や排気中の酸素を吸蔵する酸素吸蔵触媒からなる触媒を備えている。プラネタリギヤ30は、シングルピニオン式の遊星歯車機構として構成されており、サンギヤにはモータMG1の回転子が接続され、リングギヤには変速機60の入力軸33が接続され、キャリアには、エンジン22のクランクシャフト23が接続されている。モータMG1、MG2は、例えば同期発電電動機として構成されており、モータMG2は、入力軸33に接続されている。インバータ41,42は、モータMG1,MG2の駆動に用いられると共に電力ライン54を介してバッテリ50に接続されている。モータMG1,MG2は、ECU70によって、インバータ41,42の図示しない複数のスイッチング素子がスイッチング制御されることにより、回転駆動される。バッテリ50は、二次電池として構成されており、ECU70により管理されている。変速機60は、例えば、10段変速の有段変速機として構成されており、入力軸33と、駆動輪39a,39bにデファレンシャルギヤ38を介して連結された駆動軸36とに接続され、ECU70により制御されている。ECU70は、図示しないが、CPUやROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを有するマイクロコンピュータを備える。ECU70には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。ECU70に入力される信号としては、例えば、エンジン22を運転制御するのに必要な各種センサからの信号や、モータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する図示しない回転位置センサからの回転位置θm1,θm2、車両の走行状態を検出するセンサからの検出値(例えば、アクセルペダルの開度を検出するセンサからのアクセル開度Accや車速を検出する車速センサからの車速V)などのモータMG1,MG2を駆動制御するのに必要な各種センサからの信号、バッテリ50を管理するのに必要な各種センサからの信号、後述する一部気筒フューエルカット(一部気筒FC)制御の要求(一部気筒FC要求)が有るときにオンされるスイッチSWからのスイッチ信号などを挙げることができる。ECU70からは、エンジン22を運転制御するための各種制御信号やインバータ41,42の図示しない複数のスイッチング素子へのスイッチング制御信号,変速機60への変速制御信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0011】
こうして構成された実施例のハイブリッド車20では、ECU70の制御により、エンジン22の運転を伴って走行するハイブリッド走行(HV走行)モードや、エンジン22の運転停止を伴って走行する電動走行(EV走行)モードで走行する。例えば、ECU70は、HV走行モードでは、基本的には、エンジン22が下限回転数Nemin以上の回転数で効率よく運転されながら走行するようにエンジン22とモータMG1,MG2とを駆動制御する第1制御を実行する。第1制御では、下限回転数Neminを、エンジン22が失火しない回転数の下限値として予め定めた回転数とする。ECU70は、変速機60の制御では、アクセル開度Accと車速Vと変速線図とに基づいて変速機60の目標変速段M*を設定し、変速機60の現在の変速段Mと目標変速段M*とが一致するときには、変速段Mが保持されるように変速機60を制御し、変速段Mと目標変速段M*とが異なるときには、変速段Mが目標変速段M*に一致するように変速機60を制御する変速制御(アップシフトやダウンシフト)を実行する。変速線図については後述する。ECU70は、エンジン22の負荷運転中に排ガス浄化装置24の昇温が要求されたときには、その旨を運転席近傍の図示しないディスプレイに表示する。そして、スイッチSWがオンされたときには、複数の気筒のうち少なくとも何れか1つの気筒への燃料供給を停止させる一部気筒フューエルカット(一部気筒FC)制御を実行する。こうした一部気筒FC制御の実行により、低温環境下において、排ガス浄化装置24により多くの空気を供給して昇温させている。
【0012】
次に、こうして構成されたハイブリッド車20の動作、特に、HV走行モードで走行中の動作について説明する。図2は、ECU70により実行される制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。本ルーチンは、HV走行モードでの走行中且つエンジン22を負荷運転しているときに、所定時間毎(例えば、数msec毎)に実行される。
【0013】
本ルーチンが実行されると、ECU70は、スイッチSWがオンか否か、即ち、一部気筒FC要求の有無を判定する(ステップS100)。ECU70は、スイッチSWがオフのときには、一部気筒FC要求が無いと判断して、通常時制御を実行し(ステップS110)、スイッチSWがオンのときには、一部気筒FC要求が有ると判断して、一部気筒FC時制御を実行して(ステップS120)、本ルーチンを終了する。ステップS110の通常時制御では、エンジン22やモータMG1、MG2については上述の第1制御を実行し、変速機60については図3に示す変速線図の実線、破線の変速線を用いて制御する。
【0014】
ステップS120の一部気筒FC時制御では、変速機60については、図3に示す変速図の一点鎖線の変速線を用いて制御する。一点鎖線の変速線は、同一の車速V、アクセル開度Accにおいて実線、破線の変速線より低速段を選択できる傾向となるように設定されている。なお、図3では、1速から4速までの変速線のみを記載しているが、5速から10速までの変速線においても、同一の車速V、アクセル開度Accにおいて実線、破線の変速線より低速段を選択できる傾向になるよう設定されている。
【0015】
ステップS120の一部気筒FC時制御では、エンジン22やモータMG1、MG2については、第1制御に代えて第2制御を実行する。第2制御では、最初に、車速Vと目標変速段M*と第2制御用回転数設定用マップとを用いてエンジン22の仮目標回転数Netmpを設定する。第2制御用回転数設定用マップでは、仮目標回転数Netmpは、各変速段で車速Vが大きいほど線形で大きくなるように、且つ、変速段が大きいほど車速Vに対する傾きが小さくなるように設定される。これにより、エンジン22が仮目標回転数Netmpで運転されると、変速機60の各変速段で車速Vが大きくなるにつれてエンジン22の回転数Neが大きくなり、変速段がアップシフトする際にはエンジン22の回転数Neが低下し、変速段がダウンシフトする際にはエンジン22の回転数Neが増加する。これにより、エンジン22の回転数Neの挙動を、エンジンと有段変速機とを備える自動車に搭載されるエンジンの挙動に近づけることができ、ドライバの違和感を抑制できる。こうして仮目標回転数Netmpを設定することにより、図3に示す変速図の実線や破線の変速線を用いるものに比して、仮目標回転数Netmpが高くなる。これにより、エンジン22が仮目標回転数Netmpで運転されると、エンジン22のトルク変動の周期を駆動系の共振周波数帯より高くできる機会が多くなり、車両の振動を抑制でき、ドライバの違和感を抑制できる。ECU70は、エンジン22の仮目標回転数Netmpを設定すると、エンジン22の下限回転数Neminを、第1制御より高く、且つ、アクセル開度Accが高いときには低いときに比して高く、且つ、車速Vが高いときには低いときに比して高く設定し、仮目標回転数Netmpと下限回転数Neminとのうち大きいほうの値をエンジン22の目標回転数Ne*に設定し、アクセル開度Accと車速Vとに基づく走行用パワーで車両が走行するようにエンジン22の目標パワーPe*を設定し、目標パワーPe*を目標回転数Ne*で除した目標トルクTe*と目標回転数Ne*とでエンジン22が運転されると共に走行用トルクTd*で車両が走行するようにエンジン22とモータMG1,MG2とを駆動制御する。このように下限回転数Neminをアクセル開度Accが高いときには低いときに比して高く、且つ、車速Vが高いときには低いときに比して高く設定することにより、エンジン22の回転数Neの挙動を、エンジンと有段変速機とを備える自動車に搭載されるエンジンの挙動に近づけることができ、ドライバの違和感を抑制できる。
【0016】
以上説明した実施例の制御装置を搭載するハイブリッド車20によれば、複数の気筒のうち少なくとも1つの気筒への燃料供給を停止する一部気筒FC制御を実行し、一部気筒FC制御の実行中に、アクセル開度Accや車速Vと図3に示す変速図の一点鎖線の変速線とを用いて、同一のアクセル開度Accや車速Vで一部気筒FC制御を実行していない第1制御に比してエンジン22の回転数Neを高くすることにより、一部気筒FC時制御の実行中にドライバに違和感を与えることを抑制できる。
【0017】
実施例の制御装置を搭載するハイブリッド車20では、一部気筒FC時制御の第2制御において、図3に示す変速図の一点鎖線の変速線を用いたり、下限回転数Neminをより高くすることで、エンジン22の回転数Neを同一のアクセル開度Accや車速Vで第1制御の実行時に比して高くしている。図3に示す変速図の一点鎖線の変速線や下限回転数Neminを用いることと共に、または、図3に示す変速図の一点鎖線の変速線や下限回転数Neminの少なくとも一方に代えて、第2制御用回転数設定用マップにおける仮目標回転数Netmpの車速Vに対する傾きを大きくしたり、車速毎に高い変速段への変速を禁止することで、エンジン22の回転数Neを同一のアクセル開度Accや車速Vで第1制御に比して高くしてもよい。
【0018】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、ハイブリッド車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0020】
20 ハイブリッド車、70 電子制御ユニット(ECU)。
図1
図2
図3