(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】通信異常判定装置、方法、プログラム、及び車両
(51)【国際特許分類】
H04W 24/08 20090101AFI20250708BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20250708BHJP
H04W 4/44 20180101ALI20250708BHJP
【FI】
H04W24/08
G08G1/09 F
H04W4/44
(21)【出願番号】P 2022128018
(22)【出願日】2022-08-10
【審査請求日】2024-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 正貴
(72)【発明者】
【氏名】吉田 薫
(72)【発明者】
【氏名】栗山 奏
(72)【発明者】
【氏名】角谷 昌俊
(72)【発明者】
【氏名】篠原 俊樹
【審査官】山中 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-118200(JP,A)
【文献】特開2001-307295(JP,A)
【文献】特開2010-147754(JP,A)
【文献】特開2020-088460(JP,A)
【文献】特開2018-164123(JP,A)
【文献】特開2020-141330(JP,A)
【文献】特開2017-188846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
G08G 1/09
DB名 3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の中継基地局を介してサーバーと通信を行う車両に搭載された通信異常判定装置であって、
前記車両と前記サーバーとの間で通信途絶が発生したことを検出する検出部と、
前記サーバーとの間で前記通信途絶が発生した
ときの前記車両の位置である第1の位置の通信強度
及び前記第1の位置から所定の距離を離れた第2の位置の通信状態に基づいて、前記通信途絶の発生原因を判定する判定部と、を備え
、
前記判定部は、
前記通信途絶が発生した場合、前記第1の位置の通信強度に基づいて、前記車両、前記中継基地局、及び前記サーバーのいずれかの通信装置の異常が原因なのか、通信環境に依存する前記通信強度の変化が原因なのかを判定し、
前記通信装置の異常が原因であると判定した場合、前記第2の位置の通信状態に基づいて、前記車両、前記中継基地局、及び前記サーバーのどこが異常かを特定する、通信異常判定装置。
【請求項2】
前記サーバーとの通信が可能な通信エリアにおける通信強度の情報を前記サーバーから取得する取得部をさらに備え、
前記判定部は、前記取得部が前記サーバーから事前に取得した前記第1の位置の通信強度が所定の閾値以上である場合、通信装置が異常であると判定する、請求項1に記載の通信異常判定装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記検出部において前記通信途絶の状態が所定の時間継続して検出された場合に、前記通信途絶が発生した原因の判定を実施する、請求項2に記載の通信異常判定装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記通信装置
の異常が原因であると判定した後
、前記第1の位置から
前記第1の位置で前記車両と前記サーバーとの間の通信を中継した前記中継基地局の通信エリアを外れる第2の位置に前記車両が移動するまでの通信の状態に基づいて、
前記車両、前記中継基地局、及び前記サーバーのどこが異常かを特定する、請求項2に記載の通信異常判定装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記車両が前記第2の位置に移動する間も前記車両と前記サーバーとの間の通信が途絶している場合、前記車
両が異常であると判定する、請求項4に記載の通信異常判定装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記車両が前記第2の位置に移動する間に前記車両と前記サーバーとの間の通信が行われた場合、前記第1の位置から前記第2の位置までにおける他の車両と前記サーバーとの間の通信の状態に基づいて、
前記車両、前記中継基地局、及び前記サーバーのどこが異常かを特定する、請求項4に記載の通信異常判定装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記車両が前記第2の位置に移動する間に前記他の車両と前記サーバーとの間で前記通信途絶が発生していない場合、前記車
両が異常であると判定する、請求項6に記載の通信異常判定装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記第1の位置において発生した通信途絶の原因が前記サーバーの通信環境にある場合、前記車
両が正常であると判定する、請求項7に記載の通信異常判定装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記第1の位置において前記他の車両と前記サーバーとの間で通信途絶が発生し、かつ、前記第2の位置に移動するまでに前記他の車両と前記サーバーとの間で通信途絶が発生していない場合、前記第1の位置で前記車両と前記サーバーとの間の通信を中継する
前記中継基地
局が異常であると判定する、請求項6に記載の通信異常判定装置。
【請求項10】
前記判定部は、前記第1の位置において発生した通信途絶の原因が前記サーバーの通信環境にある場合、前記中継基地
局が正常であると判定する、請求項9に記載の通信異常判定装置。
【請求項11】
複数の中継基地局を介してサーバーと通信を行う車両に搭載された通信異常判定装置が行う方法であって、
前記車両と前記サーバーとの間で通信途絶が発生したことを検出するステップと、
前記サーバーとの通信が可能な通信エリアにおける通信強度の情報を前記サーバーから取得するステップと、
前記サーバーとの間で前記通信途絶が発生した
ときの前記車両の位置である第1の位置における前記サーバーから事前に取得した前記通信強度が所定の閾値以上である場合、通信装置が異常であると判定
し、前記通信強度が前記所定の閾値未満である場合、通信環境に依存する前記通信強度の変化が原因であると判定するステップと
、
前記通信装置の異常が原因であると判定した場合、前記第1の位置から所定の距離を離れた第2の位置の通信状態に基づいて、前記車両、前記中継基地局、及び前記サーバーのどこが異常かを特定するステップと、を含む、方法。
【請求項12】
複数の中継基地局を介してサーバーと通信を行う車両に搭載された通信異常判定装置のコンピューターが実行するプログラムであって、
前記車両と前記サーバーとの間で通信途絶が発生したことを検出するステップと、
前記サーバーとの通信が可能な通信エリアにおける通信強度の情報を前記サーバーから取得するステップと、
前記サーバーとの間で前記通信途絶が発生した
ときの前記車両の位置である第1の位置における前記サーバーから事前に取得した前記通信強度が所定の閾値以上である場合、通信装置が異常であると判定
し、前記通信強度が前記所定の閾値未満である場合、通信環境に依存する前記通信強度の変化が原因であると判定するステップと
、
前記通信装置の異常が原因であると判定した場合、前記第1の位置から所定の距離を離れた第2の位置の通信状態に基づいて、前記車両、前記中継基地局、及び前記サーバーのどこが異常かを特定するステップと、を含む、プログラム。
【請求項13】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の通信異常判定装置を搭載した、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両とサーバーとの通信に用いられる通信装置などの異常を判定する装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に搭載された通信装置に通信途絶の状態が発生した場合、途絶理由を自動的に判定して通知することのできる車両情報管理システムが開示されている。この車両情報管理システムでは、車両とサーバーとの間で通信の途絶を検出した場合、車両の位置が修理工場エリア内であれば途絶理由が車両の故障であると判定する、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術では、車両が修理工場エリア内まで移動しないと車両の故障を判定することができない。このため、車両とサーバーとの間で通信途絶が発生している原因の判定が遅れてしまうおそれがある。
【0005】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、車両とサーバーとの間で通信途絶が発生している原因を早期に判定することができる、通信異常判定装置などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示技術の一態様は、サーバーと通信を行う車両に搭載された通信異常判定装置であって、車両とサーバーとの間で通信途絶が発生したことを検出する検出部と、通信途絶が発生した第1の位置の通信強度に基づいて、通信途絶の発生原因を判定する判定部と、を備える、通信異常判定装置である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の通信異常判定装置などによれば、車両とサーバーとの間で通信途絶が発生している原因を早期に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る通信異常判定装置を備えた複数の車両を含む通信システムの概略構成を示す図
【
図2】通信異常判定装置を備えた車両の機能ブロック図
【
図3】複数の車両とサーバーとが実行する通信を説明する処理シーケンス
【
図4】通信異常判定装置が実行する異常判定制御を説明する処理フローチャート
【
図5A】異常ありを判定した車両とサーバーとが実行する異常箇所特定制御を説明する処理フローチャート
【
図5B】異常ありを判定した車両とサーバーとが実行する異常箇所特定制御を説明する処理フローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の車両に搭載される通信異常判定装置は、車両とサーバーとの間で通信途絶が発生した場合、予め取得した通信途絶の発生位置における通信強度の情報に基づいて、通信途絶の発生原因が通信環境に依存するものなのか、通信装置などの異常に基づくものなのかを早期に判定する。
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
<実施形態>
[構成]
図1は、本開示の一実施形態に係る通信異常判定装置230を備えた複数の車両200を含む通信システム10の概略構成を示す図である。
図1に例示した通信システム10は、サーバー100と、複数の車両200と、複数の中継基地局300と、を含んで構成される。
【0011】
(1)サーバー
サーバー100は、複数の中継基地局300を介して、複数の車両200と通信可能な構成である。このサーバー100は、複数の車両200から、各車両の状態に関する情報(車両の位置、速度、走行方向など)や、各車両の周囲に関する情報(映像データ、ソナー値)や、各車両の位置における通信状態に関する情報(通信強度、通信途絶の有無など)を、通信によってそれぞれ取得する。そして、サーバー100は、複数の車両200から取得した情報を図示しないデータベース(例えば、デジタルツインや通信品質マップデータベース)に逐次蓄積し、この蓄積した情報を現在又は将来の通信環境情報として、情報を必要とする車両200に提供することを行う。蓄積する通信環境情報としては、各場所(車両位置)における通信強度履歴の情報を例示できる。また、サーバー100は、複数の車両200などに対して、要求される通信環境情報や必要な通信に関する情報(通信途絶の警告など)を送信することができる。サーバー100としては、クラウド上に構成されるクラウドサーバーを例示できる。
【0012】
なお、通信システム10を構成するサーバー100の数は、1つに限定されるものではなく、予め定められた地域や区域(リージョン)などに応じて、2つ以上のサーバー100が設けられてもよい。
【0013】
(2)中継基地局
複数の中継基地局300は、複数の車両200とサーバー100との間で行われる通信を中継するための構成(中継器)である。複数の中継基地局300とサーバー100との通信は、無線で行われてもよいし、有線で行われてもよい。各中継基地局300は、それぞれの通信可能な範囲である通信エリアに存在する1台又は2台以上の車両200との間で、無線通信を行うことができる。また、各中継基地局300には、自局を識別するための情報であるセルID(Identification)を、通信するサーバー100や車両200に提供する。
【0014】
(3)車両
複数の車両200は、複数の中継基地局300を介して、サーバー100と通信可能に構成されるモビリティである。この複数の車両200は、自車両の状態に関する情報や自車両の周囲に関する情報などを、サーバー100に提供することができる。自車両の状態に関する情報には、車両の位置、車両の速度、及び車両の走行方向などが含まれる。自車両の周囲に関する情報には、車両200の前後の映像や車両200の周辺のソナー値などが含まれる。また、複数の車両200は、通信環境情報(通信強度)や通信に関する情報(通信途絶の警告など)を、サーバー100から受け取ることができる。
【0015】
図2は、各車両200の機能ブロック図の一例である。
図2に例示する車両200は、通信部210と、記憶部220と、本実施形態に係る通信異常判定装置230と、を備えている。
【0016】
通信部210は、サーバー100との間で中継基地局300を介した通信を行って、車両の状態に関する情報(車両の位置、速度、走行方向など)や車両の位置における通信状態に関する情報(通信強度、通信途絶の有無など)を、サーバー100へ送信する。また、通信部210は、サーバー100との間で中継基地局300を介した通信を行って、通信環境情報(通信強度)や、通信に関する情報(通信途絶の警告など)を、サーバー100から受信する。車両200は、車両の現在位置を通信エリアとする中継基地局300を介して、サーバー100と通信を行う。
【0017】
記憶部220は、通信部210が中継基地局300を介してサーバー100から受信した、通信状態に関する情報を保存する。具体的には、記憶部220は、車両200の現在位置及び車両200の走行予定経路を含む将来走行の可能性がある領域(例えば、車両200の位置から半径○○km以内)における、通信強度を記憶する。
【0018】
通信異常判定装置230は、車両200とサーバー100との通信に用いられる通信装置(通信部210など)の異常を判定するための構成である。この通信異常判定装置230は、検出部231と、取得部232と、判定部233と、を備えている。
【0019】
通信異常判定装置230は、典型的には、プロセッサ、メモリ、及び入出力インターフェイスなどを含む電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)として構成される。この電子制御装置は、メモリに格納されたプログラムをプロセッサが読み出して実行することによって、検出部231、取得部232、及び判定部233によって行われる全部又は一部の機能を実現する。
【0020】
検出部231は、車両200とサーバー100との間で通信途絶が発生したこと、すなわち車両200が通信エリア内で中継基地局300と行っていた通信が途絶したことを検出する。通信途絶の発生は、車両200が通信を行っていた中継基地局300から信号を受信しなくなったことによって判断することができる。信号を受信しなくなったと判断する時間は、瞬時的なごく短い時間であってもよいし、それよりも長い第1時間であってもよい。また、検出部231は、この通信途絶の状態が第1時間よりも長い第2時間継続している状態である連続した通信途絶が発生したことをさらに検出する。
【0021】
取得部232は、検出部231によって連続した通信途絶の発生が検出された場合、検出時における車両200の位置及び車両200の走行予定経路を含む走行の可能性がある領域における通信強度を、記憶部220から取得する。なお、該当する領域の通信強度が記憶部220に記憶されていなければ、取得部232は、通信部210を介してサーバー100から該当する領域の通信強度を取得するようにしてもよい。
【0022】
判定部233は、取得部232が取得した通信強度に基づいて、検出部231が検出した連続した通信途絶の発生原因を判定する。より具体的には、判定部233は、通信途絶の発生が、検出時の車両位置(又は通信エリア)における通信強度が実際に弱いことが原因なのか、サーバー100、車両200、及び中継基地局300の少なくともいずれかの通信装置の異常が原因なのかを、判定する。また、判定部233は、サーバー100、車両200、及び中継基地局300の少なくともいずれかの通信装置(通信環境)の異常が通信途絶の発生原因であると判定した場合、どの通信装置(通信環境)が異常なのかをさらに特定する。この判定部233が行う異常判定制御については、後述する。
【0023】
[制御]
図3、
図4、
図5A、及び
図5Bをさらに参照して、本実施形態に係る通信異常判定装置230を備えた複数の車両200を含む通信システム10によって行われる制御を説明する。
図3は、複数の車両200(通信異常判定装置230)がサーバー100との間で実行する常時通信を説明する処理シーケンスである。
図4は、各車両200の通信異常判定装置230が実行する異常判定制御を説明する処理フローチャートである。
図5A及び
図5Bは、異常ありを判定した車両200とサーバー100とが実行する異常箇所特定制御を説明する処理フローチャートである。
【0024】
(1)常時通信
図3を用いて、複数の車両200がサーバー100との間で実行する常時通信の処理を説明する。
図3に例示する処理シーケンスでは、2台の車両200(車両200A及び車両200Bと表記する)とサーバー100との間で実行される常時通信を説明している。なお、このシーケンスでは、車両200とサーバー100との通信を中継する中継基地局300の記載を省略している。
【0025】
(ステップS301)
車両200Aの通信部210は、車両200Aの現在位置やその位置における通信途絶の有無を含む通信状態に関する情報をサーバー100に送信する。
【0026】
(ステップS302)
車両200Bの通信部210は、車両200Bの現在位置やその位置における通信途絶の有無を含む通信状態に関する情報をサーバー100に送信する。
【0027】
(ステップS303)
サーバー100は、車両200A及び車両200Bからの現在位置やその位置における通信途絶の有無を含む通信状態に関する情報をそれぞれ受信し、受信した情報をデータベースに蓄積する。
【0028】
(ステップS304)
サーバー100は、車両200Aの現在位置及び車両200Aが将来走行する可能性がある領域における通信環境情報(通信強度、通信途絶の履歴など)を、データベースから抽出して車両200Aに送信する。また、サーバー100は、車両200Bの現在位置及び車両200Bが将来走行する可能性がある領域における通信環境情報(通信強度、通信途絶の履歴など)を、データベースから抽出して車両200Bに送信する。
【0029】
(ステップS305)
車両200Aの通信部210は、通信環境情報をサーバー100から受信し、受信した情報を記憶部220に保存する。
【0030】
(ステップS306)
車両200Aの通信部210は、通信環境情報をサーバー100から受信し、受信した情報を記憶部220に保存する。
【0031】
以降のステップS307からは、上述したステップS301~S306の処理が繰り返し実施される。
【0032】
この常時通信によって、複数の車両200(車両200Aや車両200B)は、通信途絶が発生する以前から、自車両の現在位置及びその位置周辺における通信強度や過去に通信途絶のあったなどの情報を、常に保持することができる。
【0033】
(2)異常判定制御
図4を用いて、各車両200の通信異常判定装置230が実行する異常判定制御を説明する。
図4に示す異常判定制御は、例えば、検出部231によって車両200とサーバー100との間で通信途絶が発生したことが検出されると、開始される。
【0034】
(ステップS401)
通信異常判定装置230の検出部231は、通信途絶の状態が所定の時間継続している状態である連続した通信途絶の発生を検出したか否かを判断する。検出部231が連続した通信途絶の発生を検出した場合は(ステップS401、はい)、ステップS402に処理が進む。一方、検出部231が連続した通信途絶の発生を検出しない場合は(ステップS401、いいえ)、ステップS405に処理が進む。
【0035】
(ステップS402)
通信異常判定装置230の取得部232は、連続した通信途絶が発生したときの車両200の位置(第1の位置)における通信強度(通信環境情報に含まれる)を、記憶部220から取得する。取得部232によって連続した通信途絶が発生したときの車両200の位置における通信強度が取得されると、ステップS403に処理が進む。
【0036】
(ステップS403)
通信異常判定装置230の判定部233は、連続した通信途絶が発生したときの車両200の位置における通信強度が強いか弱いかを判断する。具体的には、判定部233は、その通信強度が予め定めた閾値以上であるか否かを判断する。この判断は、上記ステップS401において検出した通信途絶が物理的に正しいか否かを判断するために行われる。よって、この閾値は、これ以上低いと通信途絶が発生しても仕方がないという所定の通信強度に設定される。判定部233が、連続した通信途絶が発生したときの車両位置における通信強度が閾値以上であると判断した場合は(ステップS403、強い)、通信途絶が発生する可能性は低いと予想され、ステップS404に処理が進む。一方、判定部233が、連続した通信途絶が発生したときの車両位置における通信強度が閾値未満であると判断した場合は(ステップS403、弱い)、通信途絶が発生する可能性は高いと予想され、ステップS405に処理が進む。
【0037】
(ステップS404)
通信異常判定装置230の判定部233は、サーバー100、車両200、及び中継基地局300の少なくともいずれかの通信装置に異常があると判定する。判定部233によって通信装置に異常があると判定されると、本異常判定制御が終了する。
【0038】
(ステップS405)
通信異常判定装置230の判定部233は、サーバー100、車両200、及び中継基地局300の通信装置のいずれにも異常がないと判定する。判定部233によって通信装置に異常がないと判定されると、ステップS401に処理が進む。
【0039】
この異常判定制御によって、連続した通信途絶の発生が、通信環境に依存する通信強度の変化を原因とするものなのか、サーバー100、車両200、及び中継基地局300の少なくともいずれかの通信装置の異常を原因とするものなのかを、容易に判断することができる。
【0040】
(3)異常箇所特定制御
図5A及び
図5Bを用いて、異常ありを判定した車両200とサーバー100とが実行する異常箇所特定制御を説明する。
図5Aの処理と
図5Bの処理とは、結合子X及びYで結ばれる。この
図5A及び
図5Bに示す異常箇所特定制御は、上述した異常判定制御(
図4のステップS404)において、サーバー100、車両200、及び中継基地局300の少なくともいずれかの通信装置に異常があると通信異常判定装置230によって判定されると、開始される。
【0041】
なお、以下の説明では、異常ありを判定した車両200を「車両200A」と表記し、車両200A以外の他の車両200を「車両200B」と表記する。また、異常ありを判定したときに車両200が通信していた中継基地局300を「中継基地局300A」と表記し、中継基地局300A以外の他の中継基地局300を「中継基地局300B」と表記する。
【0042】
(ステップS501)
車両200Aの判定部233は、サーバー100、車両200A、及び中継基地局300Aの少なくともいずれかの通信装置に異常があると判定したときに車両200Aがいた位置(第1の位置)から、所定の距離を離れた位置(第2の位置)まで車両200Aが走行したか否かを判断する。この判断は、通信途絶が発生した場所から離れて通信途絶が発生しない場所まで車両200Aが移動したか否かを判断するために行われる。よって、所定の距離は、車両200Aがいた第1の位置から直線的な距離(半径など)であることが好ましい。判定部233が、異常があると判定した第1の位置から第2の位置まで車両200Aが走行したと判断した場合は(ステップS501、はい)、ステップS502に処理が進む。
【0043】
(ステップS502)
車両200Aの判定部233は、異常があると判定した第1の位置から所定の距離を離れた第2の位置まで車両200Aが走行する間に、検出部231において連続した通信途絶の発生を検出しなくなった、すなわち車両200Aとサーバー100との間の通信が復帰したか否かを判断する。この判断は、中継基地局300A以外の中継基地局300Bにおける車両200Aとサーバー100との間の通信状態を再確認するために行われる。よって、この所定の距離は、上述した直線的な距離であることに加え、中継基地局300Aの通信エリアを少なくとも脱出できる距離であることが望ましい。判定部233が、第1の位置から第2の位置まで移動する間に車両200Aとサーバー100との間の通信が復帰したと判断した場合は(ステップS502、はい)、ステップS503に処理が進む。一方、判定部233が、第1の位置から第2の位置まで移動する間に車両200Aとサーバー100との間の通信が復帰しなかったと判断した場合は(ステップS502、いいえ)、ステップS509に処理が進む。
【0044】
(ステップS503)
車両200Aの通信部210は、第1の位置から第2の位置まで移動する間に車両200Aとサーバー100との間の通信が復帰したことを、中継基地局300B(あるいは中継基地局300A)を介してサーバー100に通知する。通信部210によってサーバー100との通信復帰が通知されると、ステップS504に処理が進む。
【0045】
(ステップS504)
サーバー100は、車両200Aから通信復帰の通知を受けると、サーバー100の通信環境を確認する。具体的には、サーバー100は、自身の通信装置などのハードウェアの故障やアプリケーションなどのソフトウェアの不具合など、通信に関わるクラウド環境が正常に動作しているか否かを判断する。サーバー100が、通信環境に問題がないと判断した場合は(ステップS504、正常)、ステップS505に処理が進む。一方、サーバー100が、通信環境に問題があると判断した場合は(ステップS504、異常)、ステップS507に処理が進む。
【0046】
(ステップS505)
サーバー100は、複数の車両200との間の通信によってデータベースに蓄積されている通信状態に関する情報の中から、車両200Aが走行した経路について同一の(又は近似する)経路を走行した他の車両200Bの通信状態に関する情報を取得する。サーバー100によって車両200Aの走行経路と同一の走行経路の他の車両200Bの通信状態に関する情報が取得されると、ステップS506に処理が進む。
【0047】
(ステップS506)
サーバー100は、車両200Aが走行した経路の通信状態と、他の車両200Bが同一の経路を走行したときの通信状態とが同じであるか否かを判断する。具体的には、サーバー100は、車両200Aにおいて中継基地局300Aの通信エリアで通信の途絶が発生しかつ中継基地局300Bの通信エリアで通信が復帰した事象が、車両200Bにも同様に起こっているか否かを判断する。サーバー100が、車両200Aと車両200Bとで走行経路の通信状態が同じであると判断した場合は(ステップS506、はい)、ステップS508に処理が進む。一方、サーバー100が、車両200Aと車両200Bとで走行経路の通信状態が同じではないと判断した場合は(ステップS506、いいえ)、ステップS509に処理が進む。
【0048】
(ステップS507)
サーバー100は、車両200Aとサーバー100との間の通信途絶の発生原因が、サーバー100自身の異常であることを確定する。サーバー100によってサーバー100自身の異常が特定されると、ステップS510に処理が進む。
【0049】
(ステップS508)
サーバー100は、車両200A及び車両200Bとサーバー100との間の通信途絶の発生原因が、中継基地局300Aの異常であることを確定する。サーバー100によって中継基地局300Aの異常が特定されると、ステップS511に処理が進む。
【0050】
(ステップS509)
サーバー100は、車両200Aとサーバー100との間の通信途絶の発生原因が、車両200Aの異常であることを確定する。サーバー100によって車両200Aの異常が特定されると、ステップS513に処理が進む。
【0051】
(ステップS510)
サーバー100は、サーバー100の管理者などに対して、サーバー100に異常が生じていることを通知する。なお、サーバー100に異常が生じていることの通知は、サーバー100と通信を行う車両200に対して行われてもよい。サーバー100によってサーバー管理者などにサーバー100の異常が通知されると、本異常箇所特定制御が終了する。
【0052】
(ステップS511)
サーバー100は、通信途絶が発生する経路、つまり中継基地局300Aの通信エリアを走行している車両200及び将来走行する可能性が高い車両200などに対して、通信が途絶することを警告するための通知を行う。サーバー100によって通信途絶が発生する経路を走行している及び走行する可能性が高い車両200などに通信途絶の警告が通知されると、ステップS512に処理が進む。
【0053】
(ステップS512)
サーバー100は、通信途絶が発生する経路に関する情報(中継基地局300Aの情報)を、現在の通信環境情報としてデータベースに蓄積する。サーバー100によって通信途絶が発生する経路に関する情報がデータベースに蓄積されると、本異常箇所特定制御が終了する。
【0054】
(ステップS513)
サーバー100は、車両200Aに対して、車両200Aに異常が生じていることを通知する。この通知は、車両200Aのドライバーなどに故障の有無などの確認を指示する目的で行われる。サーバー100によって車両200Aに対して車両200の異常が通知されると、本異常箇所特定制御が終了する。
【0055】
この異常箇所特定制御によって、連続した通信途絶の発生が、サーバー100、車両200、及び中継基地局300のうちどの構成の異常を原因とするものなのかを、容易に判断することができる。
【0056】
<作用・効果>
以上のように、本開示の一実施形態に係る通信異常判定装置230を備えた複数の車両200を含む通信システム10によれば、サーバー100と中継基地局300を介して通信する車両200は、中継基地局300との通信が可能な通信エリアにおける通信強度の情報をサーバー100から予め取得しておく。そして、通信異常判定装置230は、車両200とサーバー100との間で連続した通信途絶が発生したことを検出すると、その通信途絶が発生した位置について予め取得済みの通信強度に基づいて、通信途絶の発生原因を判定する。
【0057】
この処理によって、車両200とサーバー100との間における通信途絶の発生が、通信環境に依存する通信強度の変化を原因とするものなのか、サーバー100、車両200、及び中継基地局300の少なくともいずれかの通信装置の異常を原因とするものなのかを、早期に容易に判定することができる。
【0058】
また、本実施形態に係る通信異常判定装置230によれば、通信装置が異常であると判定した後、通信途絶が発生した位置(第1の位置)から車両200が所定の距離を移動した別の位置(第2の位置)における通信の状態に基づいて、異常と判定した通信装置を特定する。
【0059】
この処理によって、連続した通信途絶の発生が、サーバー100、車両200、及び中継基地局300のうちどの構成の異常を原因とするものなのかを、さらに詳しく判定することができる。
【0060】
以上、本開示技術の一実施形態を説明したが、本開示は、通信異常判定装置だけでなく、通信異常判定装置とサーバーとを含むシステム、プロセッサとメモリを備えた通信異常判定装置が実行する方法、プログラム、プログラムを記憶したコンピューター読み取り可能な非一時的な記憶媒体、あるいは通信異常判定装置を備えた車両など、として捉えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本開示の通信異常判定装置などは、中継基地局を介してサーバーと通信する車両などに利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 通信システム
100 サーバー
200 車両
300 中継基地局
210 通信部
220 記憶部
230 通信異常判定装置
231 検出部
232 取得部
233 判定部