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  • 特許-内燃機関の制御装置 図1
  • 特許-内燃機関の制御装置 図2
  • 特許-内燃機関の制御装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 21/08 20060101AFI20250708BHJP
   F02M 26/51 20160101ALI20250708BHJP
【FI】
F02D21/08 L
F02M26/51
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022128691
(22)【出願日】2022-08-12
(65)【公開番号】P2024025323
(43)【公開日】2024-02-26
【審査請求日】2024-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保崎 一司
【審査官】村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-207041(JP,A)
【文献】特開2022-77240(JP,A)
【文献】特開2018-119406(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0198122(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 21/08
F02M 26/51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気通路に、気化燃料を導入するためのパージ通路、ブローバイガスを導入するためのPCV通路、および、前記吸気通路にEGRガスを導入するためのEGR通路を有する内燃機関の制御装置であって、
前記吸気通路における負圧を取得する負圧取得部と、
前記内燃機関の負荷率である第1負荷率を取得する第1負荷率取得部と、
前記内燃機関の負荷率である第2負荷率を取得する第2負荷率取得部と、
前記内燃機関の負荷率である第3負荷率を取得する第3負荷率取得部と、
前記内燃機関の回転数および負荷に基づいて、前記内燃機関の負荷率である第4負荷率を取得する第4負荷率取得部と、
前記EGR通路に設けられたEGRバルブを制御することで、前記EGRガスの流量を制御する制御部と、を具備し、
前記負圧取得部は、前記内燃機関の燃費に基づいて定められる第1負圧、前記気化燃料を前記吸気通路に導入するために要求される第2負圧、前記ブローバイガスを前記吸気通路に導入するために要求される第3負圧を取得し、
前記第1負荷率取得部は、前記第1負圧、前記第2負圧および前記第3負圧のうち最小の負圧に対応して前記第1負荷率を取得し、
前記第2負荷率取得部は、前記吸気通路から導入される新気の量を、前記吸気通路に設けられたスロットルバルブを全開にしたときの空気量で割ることによって前記第2負荷率を取得し、
前記第3負荷率取得部は、前記スロットルバルブを全開にしたときの負荷率から、前記第1負荷率および前記第2負荷率を引くことで、前記第3負荷率を取得し、
前記制御部は、前記EGRバルブの開度を、前記第3負荷率および前記第4負荷率のうち小さい方に応じた開度に制御して、前記EGRガスの流量を制御する内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排気の一部を吸気通路に還流させるEGR(Exhaust Gas Recirculation)装置、および気化した燃料をパージさせる装置を有する内燃機関が知られている(例えば特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-119406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
EGRガスを導入することで、燃焼ガスの温度を低下させ、ノッキングの発生を抑制する。これにより効率がよい時期での燃焼が可能となる。吸気通路内の負圧を低下させることでポンピングロスも低減される。このため燃費を向上することができる。しかし、EGRガスを増量することで、吸気通路内の負圧が低下する。負圧を利用した、蒸発燃料のパージおよびブローバイガスの導入が難しくなる。そこで、EGRガスの流量を制御することが可能な内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、内燃機関の吸気通路に、気化燃料を導入するためのパージ通路、ブローバイガスを導入するためのPCV通路、および、前記吸気通路にEGRガスを導入するためのEGR通路を有する内燃機関の制御装置であって、前記吸気通路における負圧を取得する負圧取得部と、前記内燃機関の負荷率である第1負荷率を取得する第1負荷率取得部と、前記内燃機関の負荷率である第2負荷率を取得する第2負荷率取得部と、前記内燃機関の負荷率である第3負荷率を取得する第3負荷率取得部と、前記内燃機関の回転数および負荷に基づいて、前記内燃機関の負荷率である第4負荷率を取得する第4負荷率取得部と、前記EGR通路に設けられたEGRバルブを制御することで、前記EGRガスの流量を制御する制御部と、を具備し、前記負圧取得部は、前記内燃機関の燃費に基づいて定められる第1負圧、前記気化燃料を前記吸気通路に導入するために要求される第2負圧、前記ブローバイガスを前記吸気通路に導入するために要求される第3負圧を取得し、前記第1負荷率取得部は、前記第1負圧、前記第2負圧および前記第3負圧のうち最小の負圧に対応して前記第1負荷率を取得し、前記第2負荷率取得部は、前記吸気通路から導入される新気の量を、前記吸気通路に設けられたスロットルバルブを全開にしたときの空気量で割ることによって前記第2負荷率を取得し、前記第3負荷率取得部は、前記スロットルバルブを全開にしたときの負荷率から、前記第1負荷率および前記第2負荷率を引くことで、前記第3負荷率を取得し、前記制御部は、前記EGRバルブの開度を、前記第3負荷率および前記第4負荷率のうち小さい方に応じた開度に制御して、前記EGRガスの流量を制御する内燃機関の制御装置によって達成することができる。
【発明の効果】
【0006】
EGRガスの流量を制御することが可能な内燃機関の制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1はエンジンシステムを例示する模式図である。
図2図2はECUが実行する処理を例示するフローチャートである。
図3図3(a)および図3(b)はECUが実行する処理を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は実施形態に係るエンジンシステム100を例示する模式図である。エンジンシステム100は、内燃機関10、パージシステム20、EGR装置30、PCV(Positive crankcase ventilation)システム40、およびECU(Electronic Control Unit)50を備える。
【0009】
内燃機関10には、吸気通路12および排気通路14が接続されている。吸気通路12にはスロットルバルブ16が設けられている。排気通路14には触媒18が設けられている。空気は吸気通路12を通り、内燃機関10に導入される。スロットルバルブ16の開度が大きくなると、吸気通路12内の空気の流量が増加する。内燃機関10は例えばガソリンエンジンであり、空気と燃料との混合気を燃焼させる。内燃機関10で発生する排気は、排気通路14に排出される。触媒18は排気を浄化する。
【0010】
パージシステム20は、キャニスタ22、パージ通路24およびパージバルブ26を有する。キャニスタ22は、燃料タンク19に接続されており、蒸発した燃料(ベーパ)を吸着する。パージ通路24は、キャニスタ22と吸気通路12とに接続されている。パージバルブ26はパージ通路24に設けられている。パージバルブ26が開くことで、キャニスタ22に捕集された燃料が、パージ通路24を通り、吸気通路12に導入される。
【0011】
EGR装置30は、EGR通路32、EGRクーラ34、およびEGRバルブ36を有する。EGR通路32は、排気通路14と吸気通路12とに接続されている。EGRクーラ34およびEGRバルブ36は、EGR通路32に設けられ、排気通路14に近い方からこの順番に並ぶ。EGRバルブ36が開弁することで、排気の一部(EGRガス)がEGR通路32を通り、吸気通路12に導入される。EGRクーラ34はEGRガスを冷却する。
【0012】
PCVシステム40はPCV通路42およびPCVバルブ44を有する。PCV通路42は例えば内燃機関10と吸気通路12とに接続されている。PCVバルブ44はPCV通路42に設けられている。内燃機関10においてブローバイガスが発生する。PCVバルブ44を開弁することで、ブローバイガスはPCV通路42を通り、吸気通路12に導入される。
【0013】
ベーパ、EGRガスおよびブローバイガスは、空気とともに内燃機関10に供給され、燃焼される。
【0014】
EGRガスを内燃機関10に供給することで、燃焼温度が低下し、燃費の改善などが可能である。しかし、EGRガスを吸気通路12に導入することで、EGRガスを導入しない場合に比べて吸気通路12の負圧が低下する。つまり圧力が増加する。負圧の低下によって、ベーパのパージおよびブローバイガスの導入がしにくくなる。EGRガスの流量を適切な大きさに制御することで、パージおよびブローバイガスの導入も可能になる。
【0015】
ECU50は内燃機関10の制御装置である。ECU50は、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)などの記憶装置を備える。ECU50は、スロットルバルブ16、パージバルブ26、EGRバルブ36およびPCVバルブ44の開度を制御する。ECU50は、ROMや記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより各種制御を行う。ECU50は、内燃機関10の負荷率の要求量を取得する取得部、およびEGRガスの流量を制御する制御部として機能する。
【0016】
図2から図3(b)はECU50が実行する処理を例示するフローチャートである。図2に示すように、ECU50は、例えば燃費に基づいて、燃費要求負圧を取得する(ステップS10)。
【0017】
ECU50はパージ要求負圧を取得する(ステップS12)。このときECU50は図3(a)の処理を行う。ECU50は気化燃料(ベーパ)の濃度を反映した補正係数を取得する(ステップS30)。ECU50は、内燃機関10の運転条件(負荷、回転数など)に基づいて、ベーパ濃度が最大時における吸気通路12の負圧を取得する(ステップS32)。ECU50は、内燃機関10の運転条件(負荷、回転数など)に基づいて、吸気通路12の基本負圧を取得する(ステップS34)。ECU50は、補正係数のマップ、運転条件と濃度最大時の負圧とを対応させたマップ、および運転条件と基本負圧とを対応させたマップを記憶してもよい。ECU50は、例えば次の(1)式を用いて、パージ要求負圧を取得する(ステップS36)。
パージ要求負圧=基本負圧-(基本負圧-ベーパ濃度が最大時の負圧)×補正係数 (1)
【0018】
図2に示すように、ECU50はPCV要求負圧を取得する(ステップS14)。このときECU50は図3(b)の処理を行う。ECU50はPCV通路42内の圧力を反映した負圧の補正量を取得する(ステップS40)。ECU50は、内燃機関10の運転条件(負荷、回転数など)に基づいて、吸気通路12の基本負圧を取得する(ステップS42)。ECU50は、補正量のマップ、運転条件と基本EGR開度とを対応させたマップを記憶してもよい。ECU50は、例えば次の(2)式を用いて、PCV要求負圧を取得する(ステップS44)。
PCV要求負圧=基本負圧-補正量 (2)
【0019】
ECU50は、燃費要求負圧、パージ要求負圧、およびPCV要求負圧のうち最小の負圧を選択し、負圧の要求量とする(ステップS16)。つまり3つのうち大気圧から最も遠い負圧が選択される。ECU50は選択した負圧に対応する内燃機関10の負荷率(負荷率の要求量)を取得する(ステップS17)。負圧が大きいほど負荷率も高い。ECU50は、内燃機関10に要求されるトルクなどに基づいて、新気負荷率を取得する(ステップS18)。新気負荷率は以下の(3)式で算出される。
新気負荷率=新気の量/スロットルバルブ16を全開にしたときの空気量 (3)
【0020】
ECU50は、次の(4)式によって限界EGR負荷率を取得する(ステップS19)。限界EGR負荷率は、内燃機関10の燃焼限界に対応するEGR負荷率である。スロットル全開負荷率は、スロットルバルブ16を全開にしたときの負荷率である。
限界EGR負荷率=スロットル全開負荷率-新気負荷率-負荷率の要求量-圧損 (4)
【0021】
ECU50は、内燃機関10の運転条件に基づいて基本EGR負荷率も取得する。基本EGR負荷率は、EGRバルブ36の基本開度(基本EGR開度)に対応する負荷率である。ECU50は、運転条件と基本EGR開度とを対応させたマップを記憶してもよい。ECU50は、限界EGR負圧率および基本EGR負荷率のうち小さい方をEGR負荷率として選択する(ステップS20)。ECU50は、EGR負荷率に基づいてEGRバルブ36を制御する(ステップS22)。EGRバルブ36の開度がEGR負荷率に応じた大きさとなる。EGRガスの流量は、EGRバルブ36の開度に応じた量に調整される。
【0022】
本実施形態によれば、ECU50は負荷率の要求量を取得し(ステップS17)、要求量とスロットル全開負荷率とに基づいてEGR負荷率を取得する(ステップS20、(4)式)。ECU50はEGR負荷率に応じてEGRバルブ36を制御することで、EGRガスの流量を制御する。EGRガスの流量が制御されることで、EGRガスの導入とともに、蒸発燃料のパージおよびブローバイガスの導入も可能である。蒸発燃料によるエミッションの悪化が抑制される。ブローバイガスによるエンジンオイルの劣化が抑制される。
【0023】
ECU50は、限界EGR負荷率および基本EGR負荷率のうち小さい方をEGR負荷率とする(ステップS20)。EGR負荷率が小さくなることで、吸気通路12の負圧の低下が抑制される。吸気通路12の負圧が得られることで、ベーパのパージおよびブローバイガスの導入が効果的に行われる。
【0024】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0025】
10 内燃機関
12 吸気通路
14 排気通路
16 スロットルバルブ
18 触媒
19 燃料タンク
20 パージシステム
22 キャニスタ
24 パージ通路
26 パージバルブ
30 EGR装置
32 EGR通路
34 EGRクーラ
36 EGRバルブ
40 PCVシステム
42 PCV通路
44 PCVバルブ
50 ECU
100 エンジンシステム
図1
図2
図3