(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】電極シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20250708BHJP
【FI】
H01M4/139
(21)【出願番号】P 2022133223
(22)【出願日】2022-08-24
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三村 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】池田 丈典
(72)【発明者】
【氏名】山北 雅史
(72)【発明者】
【氏名】盛山 智
【審査官】山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-317220(JP,A)
【文献】特開2017-033848(JP,A)
【文献】特開2020-138167(JP,A)
【文献】特開2017-027849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 - 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して回転する第1ロール及び第2ロールの間に、電極合材を通し、前記第2ロール表面に塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記塗膜に対しブレードを押し当てることにより、前記塗膜の幅方向端部に形成された突出部を除去する除去工程と、
前記除去工程後、前記第2ロールと対向して回転する第3ロールが搬送する集電箔と、前記塗膜とを、前記第2ロール及び前記第3ロールの間を通し、前記集電箔表面に、前記塗膜を転写する転写工程と、
を含
み、
前記ブレードと前記第2ロールとの接点を通って前記第2ロールの回転方向側の接線と、前記ブレードの前記第2ロール側表面とがなす角度θが、20°~60°であり、
前記ブレードにより前記塗膜に対して加えられる面圧が100MPa~300MPaである、
電極シートの製造方法。
【請求項2】
前記ブレードの厚さが、0.3mm~2.0mmである、
請求項1に記載の電極シートの製造方法。
【請求項3】
前記ブレードが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)からなる群より選択される1種以上の樹脂を含む、
請求項1に記載の電極シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電極シート(正極シート又は負極シート)として、集電箔の表面に電極合材層を備える電極シートが知られている。電極シートの製造方法としては、以下の方法が知られている。まず、電極活物質、結着材及び溶媒を混合して造粒した複数の湿潤造粒体からなる電極合材を作製する。次いで、対向して回転する第1ロールと第2ロールとの間に電極合材を通すことによって電極合材を圧縮しつつ膜状にして、膜状にした電極合材を第2ロールの表面に付着させる。さらに、第2ロールと対向して回転する第3ロールによって搬送される集電箔を、第2ロールと第3ロールとの間隙に通すことによって、第2ロールの表面に付着している膜状の電極合材を、集電箔の表面に対し加圧しつつ接触させて、集電箔の表面に転写し、乾燥させることにより電極シートを得る。
【0003】
上記方法のように、集電箔の表面に転写した膜状電極合材は、幅方向の両端部において、幅方向の外側に突出する突出部が形成され、幅方向の両端部が凹凸形状となってしまうことがあった。
これに対し、特許文献1の製造方法では、膜状の電極合材の集電箔表面への転写後、乾燥前に、ブレードを用いて上記突出部を除去することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の製造方法は、ブレードの膜状電極合材に対する面圧の調整を厳密に行う必要がある。具体的には、面圧を高く設定した場合、集電箔に傷、箔切れ等が生じる可能性があり、面圧を低く設定した場合、突出部の除去が十分ではなく、いわゆるドクタースジが生じる可能性がある。
【0006】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、集電箔に傷及び箔切れが生じることを抑制することができ、且つ突出部の除去性に優れる、電極シートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 対向して回転する第1ロール及び第2ロールの間に、電極合材を通し、上記第2ロール表面に塗膜を形成する塗膜形成工程と、
上記塗膜に対しブレードを押し当てることにより、上記塗膜の幅方向端部に形成された突出部を除去する除去工程と、
上記除去工程後、上記第2ロールと対向して回転する第3ロールが搬送する集電箔と、上記塗膜とを、上記第2ロール及び上記第3ロールの間を通し、上記集電箔表面に、上記塗膜を転写する転写工程と、
を含む、電極シートの製造方法。
<2> 上記ブレードと上記第2ロールとの接点を通る接線と、上記ブレードの上記第2ロール側表面とがなす角度θが、20°~60°である、上記<1>に記載の電極シートの製造方法。
<3> 上記ブレードの厚さが、0.3mm~2.0mmである、上記<1>又は<2>に記載の電極シートの製造方法。
<4> 上記ブレードが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)からなる群より選択される1種以上の樹脂を含む、上記<1>~<3>のいずれか1つに記載の電極シートの製造方法。
<5> 上記ブレードにより上記塗膜に対して加えられる面圧は、100MPa~300MPaである、上記<1>~<4>のいずれか1つに記載の電極シートの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態によれば、集電箔に傷及び箔切れが生じることを抑制することができ、且つ突出部の除去性に優れる、電極シートの製造方法を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、ブレードと第2ロールとの接点を通る接線と、ブレードの第2ロール側表面とがなす角度θを説明するための側面概略図である。
【
図2】
図2は、電極シート製造装置の一実施形態を示す側面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、「工程」という語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
【0011】
[電極シートの製造方法]
対向して回転する第1ロール及び第2ロールの間に、電極合材を通し、上記第2ロール表面に塗膜を形成する塗膜形成工程と、
上記塗膜に対しブレードを押し当てることにより、塗膜の幅方向端部に形成された突出部を除去する除去工程と、
上記除去工程後、上記第2ロールと対向して回転する第3ロールが搬送する集電箔と、上記塗膜とを、上記第2ロール及び上記第3ロールの間を通し、上記集電箔表面に、上記塗膜を転写する転写工程と、
を含む、電極シートの製造方法。
【0012】
本開示の電極シートの製造方法によれば、集電箔に傷及び箔切れが生じることを抑制することができ、且つ突出部の除去性に優れる。上記効果が奏される理由は明らかではないが、以下のように推測される。
本開示の電極シートの製造方法では、塗膜を集電箔表面に転写する前に、突出部の除去が行われる。これにより、集電箔に傷及び箔切れが生じることを抑制することができると推測される。
また、塗膜を集電箔表面に転写する前に突出部の除去を行うため、ブレードの塗膜に対する面圧を高く設定することができる。そのため、突出部の除去を十分に行うことができると推測される。
【0013】
本開示の電極シートの製造方法は、転写工程後、塗膜を乾燥する乾燥工程を含むことができる。
【0014】
(塗膜形成工程)
塗膜形成工程においては、対向して回転する第1ロール及び第2ロールの間に、電極合材を通し、上記第2ロール表面に塗膜を形成する。
【0015】
形成される塗膜の厚さは、用途に応じ適宜変更することが好ましく、例えば、50μm~600μmとすることができる。
なお、第2ロール及び第3ロールの間を通過後の塗膜の厚さについても、用途に応じ適宜変更することが好ましく、例えば、30μm~500μmとすることができる。
【0016】
第2ロールの回転速度は、第1ロールの回転速度よりも大きいことが好ましい。第2ロール表面への塗膜の形成を容易に行うことができる。第1ロールの回転速度(rpm:revolutions per minute)をS1、第2ロールの回転速度をS2としたとき、S2/S1は、1.5~4.0であることが好ましい。
【0017】
-電極合材-
電極合材は、ペースト、スラリー、及び造粒体のいずれの形態であってもよい。中でも、造粒体、特に湿潤状態の造粒体が好ましい。
なお、本開示において、「湿潤状態の造粒体」とは、少なくとも粉体材料と溶媒との混合物であって、粉体状、そぼろ状、チャンク状(粉体状より比較的大きな塊状)の不連続体として複数に分散して存在する造粒体をいう。
【0018】
電極合材は、従来から非水電解質二次電池、特に、リチウムイオン二次電池の電極材料として一般的に使用されているものを用いることができる。
【0019】
正極シートを製造する場合、電極合材は、正極活物質及び溶媒を含む。また、電極合材は、導電材、バインダ等を含むことができる。
正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム遷移金属リン酸化合物(例えば、LiFePO4)等を好ましく用いることができる。リチウム遷移金属複合酸化物の例としては、リチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物(例えば、LiNi0.5Mn1.5O4)、リチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物(例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)等が挙げられる。溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン等を使用し得る。導電材としては、アセチレンブラック(AB)等のカーボンブラックやその他(グラファイト等)の炭素材料を好適に使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を使用し得る。
【0020】
負極シートを製造する場合、電極合材は、負極活物質および溶媒を含む。また、電極合材は、バインダ、結着材等を含むことができる。
負極活物質としては、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンナノチューブ等の炭素材料を好適に使用し得る。溶媒としては、水等を使用し得る。バインダとしては、スチレンブタジエンラバー(SBR)等を使用し得る。結着材としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用し得る。
【0021】
電極合材は、公知の攪拌造粒機内に、上記材料を投入し、混合及び造粒することにより作製することができる。また、電極合材は、市販されるものを使用してもよい。
【0022】
(除去工程)
除去工程においては、塗膜に対しブレードを押し当てることにより、塗膜の幅方向端部に形成された突出部を除去する。
ブレードは、塗膜の幅方向の両端部に設けられ、塗膜の両端部に形成される突出部を除去することが好ましい。
【0023】
ブレードの厚さは、0.3mm~2.0mmであることが好ましく、0.5mm~1.5mmであることがより好ましい。ブレードの厚さが0.3mm以上であることにより、ブレードの強度を向上することができる。ブレードの厚さが2.0mm以下であることにより、塗膜に対して加えられる面圧の低下を抑制することができ、突出部の除去性を向上することができる。
なお、ブレードの厚さとは、ブレードの厚さが最大となる部分での厚さを意味する。
【0024】
ブレードの材質は、特に限定されるものではなく、従来公知のものを使用することができ、樹脂、金属等を使用することができる。異物混入を抑制する観点から、樹脂であることが好ましい。
樹脂の中でも、電極合材が含みうる溶媒に対する耐溶解性が高い樹脂が好ましく、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)からなる群より選択される1種以上の樹脂であることがより好ましい。ブレードの総質量に対する樹脂の含有率は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であってもよい。
【0025】
ブレードの形状は、特に限定されるものではなく、例えば、板状とすることができる。
【0026】
図1に示すように、ブレード10と第2ロール11との接点を通る接線と、ブレード10の第2ロール側表面とがなす角度θは、20°~60°であることが好ましく、25°~55°であることがより好ましく、30°~40°であることが更に好ましい。角度θが20°以上であることにより、摩耗したブレードと第2ロールとの間に電極合材が入り込むことを抑制することができ、突出部の除去性を向上することができる。角度θが60°以下であることにより、塗膜に対しブレードを押し当てた際にブレードが変形することを抑制することができ、突出部の除去性を向上することができる。
第2ロール11の回転方向を
図1において矢印で示す。
【0027】
突出部の除去性の観点から、ブレードにより塗膜に対して加えられる面圧は、100MPa~300MPaであることが好ましく、150MPa~250MPaであることがより好ましく、180MPa~220MPaであることが更に好ましい。
上記面圧は、以下のようにして測定する。
ロール表面に感圧フィルム(例えば富士フイルム製プレスケールHHS)を貼り付けた状態でブレードを当接させた後、ブレードをロールから離して感圧フィルムを回収し、その感圧フィルムをスキャナーで読み込ませ、(例えば富士フイルム製FPD-8010J等を用いて)画像解析する。
【0028】
除去した突出部は、回収装置により回収されることが好ましい。これにより、突出部がブレードの表面に堆積し、突出部の除去性が低下してしまうことを抑制することができる。回収装置としては、従来公知の集塵機を使用することができる。回収装置は、塗膜の幅方向の両端部に設けられることが好ましい。
【0029】
(転写工程)
転写工程は、除去工程の後に行われ、第2ロールと対向して回転する第3ロールが搬送する集電箔と、第2ロールの表面に形成され、搬送される塗膜とを、第2ロール及び第3ロールの間を通し、上記集電箔表面に、上記塗膜を転写する。
【0030】
第2ロール及び第3ロールの間の最小間隙寸法は、塗膜及び集電箔の厚さの合計よりも小さいことが好ましい。これにより、第2ロール及び第3ロールにより、塗膜及び集電箔に対して圧力が加えられ、塗膜が集電箔の表面に転写される。
上記最小間隙寸法は、塗膜及び集電箔の厚さの合計よりも30μm以上小さいことが好ましく、50μm以上小さいことがより好ましい。
【0031】
第3ロールの回転速度は、第2ロールの回転速度よりも大きいことが好ましい。集電箔表面への塗膜の転写を容易に行うことができる。第3ロールの回転速度をS3、第2ロールの回転速度をS2としたとき、S3/S2は、1.5~4.0であることが好ましい。
【0032】
-集電箔-
集電箔は、従来公知のものを使用することができる。正極シートを製造する場合、集電箔としては、アルミニウム箔を使用することができる。負極シートを製造する場合、集電箔としては、銅箔を使用することができる。
集電箔の厚さは、用途に応じ適宜変更することが好ましく、例えば、6μm~50μmとすることができる。
【0033】
(乾燥工程)
本開示の電極シートの製造方法は、転写工程後、塗膜を乾燥する乾燥工程を含むことができる。
乾燥方法は、特に限定されるものではなく、例えば、第3ロールにより、集電箔及び塗膜の積層体を乾燥装置内へ搬送し、これを通過させる方法が挙げられる。
【0034】
(その他の工程)
本開示の電極シートは、集電箔の塗膜が形成された表面と反対側の表面に、電極合材の塗膜を更に形成する第2塗膜形成工程を含んでいてもよい。
具体的には、転写工程又は乾燥工程の後、対向して回転する第4ロール及び第5ロールの間に、電極合材と、集電箔及び塗膜の積層体とを通し、上記集電箔の塗膜が形成された表面と反対側の表面に、第2塗膜を形成することにより行うことができる。第2塗膜形成工程後、塗膜を乾燥する第2乾燥工程を含んでいてもよい。
【0035】
以下、
図2及び
図3を参照して、本開示の電極シートの製造方法の一実施形態について説明する。なお、本開示の電極シートの製造方法は、これらに限定されるものではない。
図2は、本開示の電極シートの製造方法に使用することができる電極シート製造装置の一実施形態を示す側面概略図である。
図3は、
図2のX方向からみた拡大図である。
図2に示す電極シート製造装置20は、第1ロール21、第2ロール22、第3ロール23、ブレード24、回収装置25及び仕切り板26を備える。
電極シート製造装置は、第3ロールよりも下流に、乾燥装置29及び巻き取りロール(図示せず)を備えていてもよい。
図2及び
図3において、塗膜、集電箔等の搬送方向を符号CDで示す。
また、
図2及び
図3において、電極合材を符号27で示し、集電箔を符号28で示す。
【0036】
まず、第1ロール21及び第2ロール22の幅方向に離間して配置された仕切り板26の上方から、電極合材27を供給し、対向して回転する第1ロール21と第2ロール22との間を通し、第2ロール22の表面に塗膜27Aを形成する(塗膜形成工程)。形成された塗膜27Aは、第2ロール22の回転により、搬送される。第1ロール21及び第2ロール22の回転方向を
図2において矢印で示す。
【0037】
次いで、
図3に示すように、塗膜27Aの幅方向の両端部に配置されたブレード24を、塗膜27Aに押し当てることにより、塗膜27Aの幅方向両端部に形成された突出部27aを除去する(除去工程)。
除去された突出部27aは、回収装置25により回収される。
【0038】
次いで、第2ロール22と対向して回転する第3ロール23が搬送する集電箔28及び塗膜27Aを、第2ロール22と第3ロール23との間を通し、集電箔28の表面に、塗膜27Aを転写する。
【0039】
次いで、第3ロール23により集電箔28及び塗膜27Aの積層体を乾燥装置29へと搬送し、通過させることにより塗膜27Aを乾燥させる。
【0040】
次いで、図示しない巻き取りロールにより、積層体(電極シート)を巻き取る。
【0041】
本開示の電極シートの製造方法により得られる電極シートは、リチウムイオン二次電池の正極シート又は負極シートとして使用することができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本開示をさらに詳細に説明するが、本開示の発明がこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0043】
<実施例1>
図2に示す電極シート製造装置を用意した。
第1ロール及び第2ロール間の最小間隙寸法は220μm、第2ロール及び第3ロール間の最小間隙寸法は130μmとした。
第1ロールの回転速度は0.75rpm、第2ロールの回転速度は2rpm、第3ロールの回転速度は5rpmとした。
ブレードは、ポリエーテルエーテルケトン製であり、厚さ0.8mmの板状のものを使用し、塗膜の幅方向の両端部に設けた。
【0044】
電極合材として、97.3質量%のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物(正極活物質)と、1.5質量%のカーボンナノチューブ(導電材)と、1.2質量%のポリフッ化ビニリデン(バインダ)とを混合し、更にN-メチル-2-ピロリドン(溶媒)を混合し、電極合材を得た(固形分濃度89質量%)。電極合材は、湿潤状態の造粒体であった。
【0045】
まず、第1ロール及び第2ロールの幅方向に離間して配置された仕切り板の上方から、電極合材を供給し、対向して回転する第1ロールと第2ロールとの間を通し、第2ロールの表面に厚さ200μmの塗膜を形成した(塗膜形成工程)。形成された塗膜は、第2ロールの回転により、搬送した。
【0046】
次いで、
図3に示すように、塗膜の幅方向の両端部に配置されたブレードを、塗膜に押し当てることにより、塗膜の幅方向両端部に形成された突出部を除去した(除去工程)。
ブレードと第2ロールとの接点を通る接線と、ブレードの第2ロール側表面とがなす角度θは、30°に設定した。また、ブレードにより塗膜に対して加えられる面圧は、200MPaとした。
除去された突出部は、回収装置により回収した。
【0047】
次いで、第2ロールと対向して回転する第3ロールが搬送する集電箔及び塗膜を、第2ロールと第3ロールとの間を通し、集電箔の表面に、塗膜を転写した。集電箔は厚さ30μmのアルミニウム箔を使用した。また、第2ロールと第3ロールとの間を通過した塗膜の厚さは100μmであった。
【0048】
次いで、第3ロールにより集電箔及び塗膜の積層体を乾燥装置へと搬送し、通過させることにより塗膜を乾燥させた。
【0049】
次いで、図示しない巻き取りロールにより、積層体(電極シート)を巻き取った。
【0050】
得られた電極シートを目視により観察したところ、集電箔に傷及び箔切れが生じておらず、また、突出部が良好に除去されていることが確認できた。
【符号の説明】
【0051】
10:ブレード、11:第2ロール、20:電極シート製造装置、21:第1ロール、22:第2ロール、23:第3ロール、24:ブレード、25:回収装置、26:仕切り板、27:電極合材、27A:塗膜、27a:突出部、28:集電箔、29:乾燥装置