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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02M 63/00 20060101AFI20250708BHJP
   F02M 55/02 20060101ALI20250708BHJP
   F02M 59/44 20060101ALI20250708BHJP
   F02M 39/00 20060101ALI20250708BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20250708BHJP
【FI】
F02M63/00 C
F02M55/02 350H
F02M59/44 A
F02M39/00 Z
F02M37/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022163088
(22)【出願日】2022-10-11
(65)【公開番号】P2024056302
(43)【公開日】2024-04-23
【審査請求日】2024-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】永田 良介
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-194008(JP,A)
【文献】特開2022-131170(JP,A)
【文献】特開2017-187011(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0246857(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00 - 37/54
F02M 39/00 - 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気筒を有するシリンダブロックと、前記シリンダブロックに固定されているシリンダヘッドと、前記シリンダヘッドを覆うヘッドカバーと、燃料を噴射するインジェクタと、前記ヘッドカバーに取り付けられているとともに前記インジェクタに燃料を供給する燃料供給管と、前記燃料供給管を保護するためのブラケットと、センサから延びる配線と、を有し、
前記ブラケットは、前記シリンダブロック、前記シリンダヘッド、及び前記ヘッドカバーから選ばれる1以上に固定されている基部と、前記基部から立ち上がっているとともに上端が前記ヘッドカバーの上端に対して上側に位置している主壁部と、を有し、
前記配線は、前記ブラケットに取り付けられている
内燃機関。
【請求項2】
前記ブラケットは、前記主壁部が立ち上がっている方向と交差する方向に向けて前記主壁部の前記上端から突出している延長部を有し、
前記配線は、線状の配線本体と、前記配線本体の端に接続されたコネクタと、を有し、
前記コネクタは、前記延長部に取り付けられている
請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記ヘッドカバーの下端に対して下側に位置している排気管をさらに有し、
前記配線は、前記排気管に取り付けられていて前記排気管を流れる排気の状態を検出する前記センサから延びている
請求項1に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記主壁部の前記上端は、前記燃料供給管に対して上側に位置している
請求項1に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されている内燃機関は、エンジンルーム内に位置している。内燃機関は、動弁機構等を収容するシリンダヘッドと、シリンダヘッドを覆うヘッドカバーと、高圧燃料ポンプと、を有する。高圧燃料ポンプの一部は、ヘッドカバーの上面から突出している。また、内燃機関は、保護用のプロテクタを有する。プロテクタは、高圧燃料ポンプにおける、ヘッドカバーから突出した部分の周囲に配置されている。プロテクタは、車両に衝突があった際に、エンジンルーム内の部品が高圧燃料ポンプにぶつかることを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-008769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料供給系の部品を保護するためには、特許文献1のようにプロテクタを設ける必要がある。しかし、シリンダヘッドやヘッドカバーの周囲には、各種部品を取り付けるための種々のブラケットを設けることも要求される。ここで、シリンダヘッドやヘッドカバーにこれらブラケット等を設けるスペースにはある程度限りがある。そのため、内燃機関のレイアウトによっては、燃料供給系の部品の保護と、他の必要部品の取り付けと、の双方の要求を満たせないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための内燃機関は、気筒を有するシリンダブロックと、前記シリンダブロックに固定されているシリンダヘッドと、前記シリンダヘッドを覆うヘッドカバーと、燃料を噴射するインジェクタと、前記ヘッドカバーに取り付けられているとともに前記インジェクタに燃料を供給する燃料供給管と、前記燃料供給管を保護するためのブラケットと、センサから延びる配線と、を有し、前記ブラケットは、前記シリンダブロック、前記シリンダヘッド、及び前記ヘッドカバーから選ばれる1以上に固定されている基部と、前記基部から立ち上がっているとともに上端が前記ヘッドカバーの上端に対して上側に位置している主壁部と、を有し、前記配線は、前記ブラケットに取り付けられている。
【0006】
ブラケットを挟んで燃料供給管とは反対側から車両に衝突があったとする。そして、この衝突に伴ってエンジンルーム内の部品が燃料供給管に向けて動いたとする。上記構成によれば、この部品は、燃料供給管にぶつかる前にブラケットにぶつかる。したがって、ブラケットの存在によって、燃料供給管に対する上記部品の衝突を回避できる。このことで、燃料供給管の損傷を防止できる。その上、上記構成において、ブラケットは、配線の取り付け対象部品を兼ねている。したがって、配線の取り付け専用のブラケット等を別途設ける必要がないため、部品点数を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、エンジンルームを上から視た平面図である。
図2図2は、エンジンルームを後ろから視た平面図である。
図3図3は、ブラケットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、内燃機関を収容するエンジンルーム構造の一実施形態を、図面を参照して説明する。なお、本実施形態における上下前後左右は、車両を基準としたものである。また、以下では、例えば上方向側のことを単に上側と記載する。ここで、ある位置から視た上側とは、その位置を通る上下の軸線上のみならず、前後左右を含めてその位置を含む仮想平面よりも上に存在する全ての領域のことを指す。ここでは上側を例にして説明したが、他の方向についても同様である。
【0009】
<内燃機関の概略構成>
図1に示すように、ハイブリッド車両(以下、単に車両と記す。)1は、エンジンルーム2を有する。エンジンルーム2は、車両1における前寄りの部分に区画された空間である。エンジンルーム2は、ラジエータコアサポート、ダッシュパネル、左右のサイドメンバ等で区画された空間である。
【0010】
車両1は、内燃機関10を有する。内燃機関10は、エンジンルーム2内に位置している。図2に示すように、内燃機関10は、機関本体10Aを有する。機関本体10Aは、オイルパン、シリンダブロック11、シリンダヘッド12、及びヘッドカバー13を有する。オイルパン、シリンダブロック11、シリンダヘッド12、及びヘッドカバー13は、この順番で上に重ねられている。シリンダブロック11は、全体としては直方体状である。シリンダブロック11には、複数の気筒11Aが区画されている。気筒11Aの数は、4つである。図1に示すように、4つの気筒11Aは、前後に並んでいる。すなわち、内燃機関10のクランクシャフトは、車両1の前後に延びている。以下では、4つの気筒11Aを個別に説明するときは、これらを前から順番に第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、及び第4気筒#4として区別する。図2に示すように、シリンダヘッド12は、全体としては直方体状である。シリンダヘッド12は、シリンダブロック11の上面に固定されている。シリンダヘッド12は、カムシャフト等の動弁機構を収容している。また、シリンダヘッド12には、各気筒11Aに繋がる吸気ポート及び排気ポートが区画されている。ヘッドカバー13は、矩形の箱型である。ヘッドカバー13は下に開放されている。すなわち、箱型のヘッドカバー13の開口面が、ヘッドカバー13の下端を構成している。また、箱型のヘッドカバー13の底の外面が、ヘッドカバー13の上端を構成している。以下では、この外面を、ヘッドカバー13の上面と呼称する。ヘッドカバー13は、シリンダヘッド12の上面の略全域を上から覆っている。
【0011】
図2に示すように、内燃機関10は、排気管19、及び複数の状態検出センサ21を有する。排気管19は、シリンダヘッド12の排気ポートに繋がっている。排気管19には、気筒11Aから排出される高温な排気が流通する。排気管19の一部である特定部分は、機関本体10Aに対して右側に位置しているとともにヘッドカバー13の下端に対して下側に位置している。状態検出センサ21は、2つ設けられている。各状態検出センサ21は、排気管19の上記特定部分に取り付けられている。状態検出センサ21は、排気の状態を検出するセンサである。一方の状態検出センサ21は、排気の空燃比を検出する空燃比センサである。他方の状態検出センサ21は、排気の温度を検出する温度センサである。なお、図示は省略するが、内燃機関10は、吸入空気が流通する吸気管を有する。吸気管は、シリンダヘッド12の吸気ポートに繋がっている。
【0012】
図2に示すように、内燃機関10は、複数の中継配線70を有する。中継配線70は、状態検出センサ21毎に設けられている。各中継配線70は、線状の配線本体71と、配線本体71の端に接続されたコネクタ72と、を有する。コネクタ72は、別の配線との導通を可能にする接続部品である。コネクタ72には、別の配線のコネクタを嵌合可能である。配線本体71における、コネクタ72とは反対側の端は、状態検出センサ21に接続している。すなわち、配線本体71は、状態検出センサ21から延びている。
【0013】
図1に示すように、内燃機関10は、複数の点火装置18を有する。点火装置18は、気筒11A毎に設けられている。各点火装置18は、対象となる気筒11Aの直上に位置している。各点火装置18は、ヘッドカバー13に取り付けられている。図2に示すように、各点火装置18は、上下に延びている。点火装置18の先端は、気筒11A内に位置している。
【0014】
図1に示すように、内燃機関10は、高圧燃料ポンプ31を有する。高圧燃料ポンプ31は、ヘッドカバー13に取り付けられている。高圧燃料ポンプ31は、ヘッドカバー13における右寄りの後隅に位置している。高圧燃料ポンプ31の一部は、ヘッドカバー13の上面から上に突出している。高圧燃料ポンプ31における、ヘッドカバー13の上面から突出した部分は、専用のプロテクタ31Aによって上から覆われている。高圧燃料ポンプ31は、図示しない燃料タンクから燃料の供給を受ける。高圧燃料ポンプ31は、カムシャフトで駆動されて燃料を加圧する。なお、図2では高圧燃料ポンプ31の図示を省略している。
【0015】
図1に示すように、内燃機関10は、デリバリパイプ33を有する。デリバリパイプ33は、中空品である。デリバリパイプ33は、ヘッドカバー13に取り付けられている。デリバリパイプ33は、ヘッドカバー13の上面に対して上側に位置している。デリバリパイプ33は、ヘッドカバー13における左右の中央近傍に位置している。デリバリパイプ33は、点火装置18に対して左側に位置している。デリバリパイプ33は、前後に直線状に延びている。デリバリパイプ33は、ヘッドカバー13の前端から後端までの略全域に及んでいる。そして、上からの平面視において、デリバリパイプ33は、第1気筒#1から第4気筒#4にまで至っている。なお、デリバリパイプ33は、その前端から後端まで略同じ高さに位置している。
【0016】
図1に示すように、内燃機関10は、中継管32を有する。中継管32は、中空品である。中継管32は、デリバリパイプ33と高圧燃料ポンプ31とを繋いでいる。中継管32は、ヘッドカバー13の上面に対して上側に位置している。また、中継管32は、デリバリパイプ33に対して右側に位置しているとともに、ヘッドカバー13における後寄りに位置している。詳細には、中継管32は、高圧燃料ポンプ31から前側に向けて延びているとともに、途中で湾曲してデリバリパイプ33の規定位置に繋がっている。規定位置は、上からの平面視において、第3気筒#3と第4気筒#4との間の部分である。なお、中継管32の最上部は、デリバリパイプ33の上端と略同じ高さに位置している。中継管32を介して、高圧燃料ポンプ31で加圧された燃料がデリバリパイプ33に供給される。そして、デリバリパイプ33には高圧な燃料が流通する。
【0017】
図1に示すように、内燃機関10は、複数のインジェクタ34を有する。インジェクタ34は、気筒11A毎に設けられている。各インジェクタ34は、対応する気筒11Aの直上に位置している。各インジェクタ34は、デリバリパイプ33に取り付けられている。図2に示すように、各インジェクタ34は、デリバリパイプ33から下へと延びている。各インジェクタ34の先端は、気筒11A内に位置している。各インジェクタ34は、デリバリパイプ33から燃料の供給を受ける。各インジェクタ34は、気筒11A内に燃料を噴射する。なお、デリバリパイプ33及び中継管32は、各インジェクタ34に燃料を供給する燃料供給管を構成している。
【0018】
<ブラケット>
図1に示すように、内燃機関10は、ブラケット50を有する。ブラケット50は、燃料供給管を保護するための部品である。ブラケット50は、鉄系材料でできている。図3に示すように、ブラケット50は、全体としてはZ字状である。詳細には、ブラケット50は、基部51、主壁部52、及び延長部53を有する。基部51は、矩形の平板状である。主壁部52も矩形の平板状である。主壁部52における4つの辺のうちの一つである特定辺は、基部51における4つの辺の一つである特定辺に繋がっている。主壁部52の特定辺の寸法と、基部51の特定辺の寸法とは一致している。主壁部52の特定辺の両端は、基部51の特定辺の両端に及んでいる。主壁部52は、基部51から立ち上がっている。主壁部52は、基部51に対して略直交している。主壁部52における特定辺とは反対側の辺を規定辺と呼称する。規定辺は、主壁部52の上端を構成している。延長部53は、矩形の平板状である。延長部53における4つの辺のうちの一つである特定辺は、主壁部52の規定辺に繋がっている。延長部53の特定辺の寸法と、主壁部52の規定辺の寸法とは一致している。延長部53における特定辺の両端は、主壁部52における規定辺の両端に及んでいる。延長部53は、主壁部52から、基部51とは反対側へ延びている。延長部53は、主壁部52に対して略直交している。すなわち、延長部53は、主壁部52が基部51から立ち上がっている方向と略直交する方向に向けて規定辺から突出している。なお、図1に示すように、基部51、主壁部52、及び延長部53の特定辺の寸法は、例えば、円柱状の気筒11Aの直径と同程度である。
【0019】
図3に示すように、ブラケット50は、ボルトB用のボルト孔Hを有する。ボルト孔Hは、基部51にあいている。また、図示は省略するが、ブラケット50は、コネクタ72を取り付けるためのねじ孔を有する。ねじ孔は、延長部53にあいている。
【0020】
ブラケット50は、リブRを有する。基部51における、特定辺と直交する2つの辺を脇辺と呼称する。同様に、主壁部52における、特定辺と直交する2つの辺を脇辺と呼称する。同様に、延長部53における、特定辺と直交する2つの辺を脇辺と呼称する。リブRは、基部51の両脇辺から立ち上がっている。また、リブRは、主壁部52の両脇辺から基部51の側へ突出している。また、リブRは、延長部53の両脇辺から立ち上がっている。リブRは、基部51から延長部53まで一つながりになっている。リブRによって、ブラケット50の剛性が強化されている。
【0021】
図2に示すように、ブラケット50は、機関本体10Aに対して右側に位置している。図1に示すように、上からの平面視において、ブラケット50は、第3気筒#3の右隣りに位置している。図2に示すように、ブラケット50の基部51は、シリンダヘッド12に設けられたフランジ12Fの上面に位置している。フランジ12Fは、シリンダヘッド12の上端から外側へと張り出している。フランジ12Fは板状である。基部51とフランジ12Fには、ボルトBが貫通している。このボルトBによって基部51はフランジ12Fに固定されている。すなわち、ブラケット50は、シリンダヘッド12に固定されている。基部51がフランジ12Fに固定された状態において、主壁部52の上端は、デリバリパイプ33の上端に対して上側に位置している。そして、延長部53は、主壁部52の上端から右側へ突出している。延長部53の上面には、各中継配線70のコネクタ72が取り付けられている。各コネクタ72は、延長部53にねじ留めされている。図1に示すように、2つのコネクタ72は、前後に並んでいる。各コネクタ72には、車両1に搭載されている機関制御装置から延びる配線Wのコネクタが嵌合している。機関制御装置は、内燃機関10を制御対象とする制御装置である。なお、図面では、機関制御装置の図示を省略している。
【0022】
<他の構成>
図1に示すように、車両1は、モータジェネレータ3、インバータ5、及びバッテリ7を有する。インバータ5は、モータジェネレータ3及びバッテリ7の双方に電気的に接続している。モータジェネレータ3及びバッテリ7は、インバータ5を介して、互いに電力を授受する。インバータ5は、これらモータジェネレータ3及びバッテリ7間で直流交流の変換を行う。インバータ5は、エンジンルーム2内に位置している。本実施形態において、モータジェネレータ3及びバッテリ7は、エンジンルーム2の外部に位置している。
【0023】
エンジンルーム2内において、内燃機関10の機関本体10Aとインバータ5とは、車両1の車軸に沿う方向に並んでいる。すなわち、内燃機関10の機関本体10Aとインバータ5とは左右に並んでいる。本実施形態において、インバータ5は、機関本体10Aに対して右側に位置している。上からの平面視において、インバータ5は、第3気筒#3の右隣に位置している。このインバータ5とブラケット50との配置上、ブラケット50の主壁部52は、車両1の車軸に沿う方向において、インバータ5とデリバリパイプ33との間に位置している。なお、インバータ5は、例えば直方体状である。図2に示すように、インバータ5の下面は、ブラケット50の延長部53の上面に対して上側に位置している。
【0024】
<実施形態の作用>
上記のとおり、エンジンルーム2内において、機関本体10Aに対して右斜め上には、重量物であるインバータ5が位置している。ここで、車両1の前部に対して右側から衝突があったとする。そしてこの衝突に伴う荷重がエンジンルーム2内のインバータ5に作用し、図2の矢印Fで示すように、インバータ5がヘッドカバー13の上面に向けて動いたとする。このとき、ブラケット50は、ヘッドカバー13の上面に位置するデリバリパイプ33を保護する機能を果たす。すなわち、ブラケット50はデリバリパイプ33に対して右側に位置している。このことから、ブラケット50は、インバータ5がデリバリパイプ33に向けて動いた際に、デリバリパイプ33の手前でインバータ5の移動を遮る障害物になり得る。特に、ブラケット50における主壁部52の上端がデリバリパイプ33の上端よりも上側に位置していることで、インバータ5が主壁部52及び延長部53にぶつかり得る範囲はより広域に及んでいる。したがって、デリバリパイプ33に向かうインバータ5は、デリバリパイプ33にぶつかる前にブラケット50の主壁部52及び延長部53にぶつかる。そのため、ブラケット50の存在によって、デリバリパイプ33に対するインバータ5の衝突を回避できる。また、ブラケット50は、ヘッドカバー13の後寄りに位置する中継管32の近くに位置している。したがって、ブラケット50の存在によって、中継管32に対するインバータ5の衝突も回避できる。
【0025】
<実施形態の効果>
(1)上記作用に記載したとおり、内燃機関10では、ブラケット50の存在によって、デリバリパイプ33及び中継管32の損傷を防止できる。その上、ブラケット50は、中継配線70におけるコネクタ72の取り付け対象部品を兼ねている。したがって、コネクタ72の取り付け専用のブラケット等を内燃機関10に別途設ける必要がないため、内燃機関10の部品点数を削減できる。
【0026】
(2)内燃機関10において、ブラケット50の延長部53は、主壁部52の上端から連続している。したがって、延長部53は、機関本体10Aに対してより高い位置に配置される。この延長部53にコネクタ72を取り付けることで、コネクタ72を、高温になっている機関本体10Aからより離れた位置に配置できる。このことで、コネクタ72が、機関本体10Aからの熱の影響で劣化することを防げる。
【0027】
(3)(2)に加え、延長部53にコネクタ72を取り付けることで次のような利点がある。すなわち、延長部53を含むブラケット50は、排気管19に対して上側に位置している。したがって、ブラケット50にコネクタ72を取り付けることで、当該コネクタ72に接続している配線本体71を、排気管19に沿って引き回さずに、排気管19から上側に向かって遠ざかるように引き回すことができる。したがって、配線本体71が、排気管19からの熱の影響で劣化することを防げる。
【0028】
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせることができる。
【0029】
・デリバリパイプ33に対する衝突部品は、インバータ5に限定されない。エンジンルーム2内においてインバータ5以外の他の部品がデリバリパイプ33に向けて移動することもあり得る。ブラケット50は、そうした他の部品からデリバリパイプ33を保護することもある。
【0030】
・ブラケット50の材料は、上記実施形態の例に限定されない。ブラケット50の材料がどのようなものであっても、ブラケット50が存在しない場合に比較すれば、車両1に対する衝突があった際に、その衝突に伴う、エンジンルーム2内の部品の移動をブラケット50で抑制できる。
【0031】
・ブラケット50の形状及び寸法は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、延長部53は、主壁部52に対して略直交していなくてもよく、主壁部52から遠ざかるに従って右斜め上に向かうように、主壁部52に対して交差していてもよい。また、基部51、主壁部52、及び延長部53は、板状でなくてもよく、ブロック状の塊でもよい。また、主壁部52の上端は、デリバリパイプ33の上端に対して下側に位置していてもよい。この場合でも、主壁部52の上端は、ヘッドカバー13の上端に対して上側に位置していればよい。例えば以上のような変更を行った場合でも、ブラケット50が存在してさえいれば、インバータ5などの衝突部品はデリバリパイプ33にぶつかる前にブラケット50にぶつかり得る。そしてそのことで、ブラケット50は衝突部品の移動を抑制できる。
【0032】
・延長部53を省略してもよい。この場合、コネクタ72を、ブラケット50における、延長部53以外の部分に取り付ければよい。例えば、コネクタ72を、主壁部52に取り付けてもよい。
【0033】
・延長部53を省略することなく、コネクタ72を、ブラケット50における、延長部53以外の部分に取り付けてもよい。
・ブラケット50の固定対象は、シリンダヘッド12に限定されない。例えば、ブラケット50をヘッドカバー13に固定してもよい。また、ヘッドカバー13及びシリンダヘッド12の双方にブラケット50の固定構造を設け、これらの双方に対してブラケット50を固定してもよい。ブラケット50は、シリンダブロック11、シリンダヘッド12、ヘッドカバー13から選ばれる1以上に固定されていればよい。
【0034】
・機関本体10Aに対するブラケット50の固定方法は、ボルトBを利用したものに限定されない。上記固定方法として、例えば、溶接を利用してもよい。ブラケット50を機関本体10Aに固定できれば手法は問わない。
【0035】
・機関本体10Aに対するブラケット50の位置は、上記実施形態の例に限定されない。機関本体10Aに対してその上下左右前後のどの位置にブラケット50が配置されていてもよい。ブラケット50は、主壁部52の上端が、ヘッドカバー13の上端に対して上側に位置するように配置されていればよい。
【0036】
・内燃機関10にブラケット50を複数設けてもよい。
・ブラケット50に対するコネクタ72の取り付け方法は、ねじ留めを利用したものに限定されない。上記取り付け方法として、例えば、爪嵌合を採用してもよい。この場合、コネクタ72及びブラケット50のいずれか一方に爪を設け、他方にその爪が嵌る孔や窪みを設ければよい。ブラケット50にコネクタ72を取り付けることができれば手法は問わない。
【0037】
・ブラケット50に中継配線70を取り付ける上で、コネクタ72に代えて、又は加えて配線本体71をブラケット50に取り付けてもよい。この場合、配線本体71を取り付けるための構造をブラケット50に設ければよい。そうした構造として、例えば、配線本体71を巻き付けるための壁部、配線本体71をひっかけるフック、配線本体71を貫通させる孔などが挙げられる。配線本体71を安定して保持する上で適切な構造を採用すればよい。
【0038】
・中継配線70がコネクタ72を有することは必須ではない。ここで、状態検出センサ21から機関制御装置へと配線をつなぐにあたり、配線がその途中でブラケット50を経由している場合、ブラケット50によって配線の位置を安定させることができる。上記変更例のように、配線本体71をブラケット50に取り付けるのであれば、そのことをもって配線本体71の位置は安定する。この場合、配線本体71をそのまま機関制御装置まで延ばしても、適切な位置で配線を引き回すことができる。したがって、配線本体71の長さを相応に確保できるのであれば、コネクタ72を廃止して、配線本体71を機関制御装置に直接接続することも可能である。
【0039】
・ブラケット50に取り付ける中継配線70の数は、上記実施形態の例に限定されない。中継配線70は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
・状態検出センサ21は、上記実施形態の例に限定されない。状態検出センサ21は、例えば、排気圧を検出するセンサでもよい。状態検出センサ21は、排気管19を流れる排気の状態を検出するものであればよい。
【0040】
・中継配線70の接続元は、状態検出センサ21に限定されない。排気の状態を検出する用途以外の他のセンサから中継配線70が延びていてもよい。中継配線70の接続元のセンサは、内燃機関10の情報を検出するものであればよい。センサは、例えば、吸気管を流れる吸入空気の量を検出するセンサや、吸入空気の温度を検出するセンサでもよいし、機関本体10Aを冷却する冷却水の温度を検出するセンサでもよい。
【0041】
・中継配線70を介して情報を伝達する相手物は、機関制御装置に限定されない。内燃機関10についての情報が必要な相手物に情報を伝達すればよい。
・内燃機関10の全体構成は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、気筒11Aの数を上記実施形態の例から変更してもよい。また、ヘッドカバー13の形状を上記実施形態の例から変更してもよい。ヘッドカバー13は、シリンダヘッド12を覆っていればよい。
【0042】
・内燃機関10のレイアウト等によっては、デリバリパイプ33及び中継管32の配置が、上記実施形態の例とは異なっていることもあり得る。また、インジェクタ34に燃料を供給する燃料供給管として、これらデリバリパイプ33及び中継管32以外のものがヘッドカバー13に取り付けられていることもある。そして、ブラケット50と燃料供給管の位置関係によっては、デリバリパイプ33及び中継管32以外の燃料供給管が、ブラケット50による保護対象となることもあり得る。ヘッドカバー13に取り付けられている燃料供給管であれば、ブラケット50による保護対象となり得る。
【0043】
・エンジンルーム2内における内燃機関10の配置は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、クランクシャフトが車両1の左右に延びるように、内燃機関10を配置してもよい。
【0044】
・モータジェネレータ3及びバッテリ7がエンジンルーム2内に位置していてもよい。
・車両1は、駆動源としてモータジェネレータ3を有さず、駆動源として内燃機関10のみを有していてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10…内燃機関 11…シリンダブロック 12…シリンダヘッド 13…ヘッドカバー 19…排気管 21…状態検出センサ 32…中継管 33…デリバリパイプ 34…インジェクタ 50…ブラケット 51…基部 52…主壁部 53…延長部 70…配線 71…配線本体 72…コネクタ
図1
図2
図3