(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】車両用空調装置及び車両用空調方法
(51)【国際特許分類】
B60H 1/08 20060101AFI20250708BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20250708BHJP
【FI】
B60H1/08 621Z
B60H1/00 101E
B60H1/00 101L
B60H1/00 101F
(21)【出願番号】P 2022178122
(22)【出願日】2022-11-07
【審査請求日】2024-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大尭
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-098991(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056806(WO,A1)
【文献】特開2017-185918(JP,A)
【文献】特開2020-199870(JP,A)
【文献】特開2020-097407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/08
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取り込まれた空気の温度を調整する
、エアコンユニットのヒータコアと、
前記
ヒータコアを制御する制御部と、
備え、
前記制御部は、前記
ヒータコアの内部を流れる冷却水の基準温度である媒体基準温度を取得し、前記媒体基準温度
と、取り込まれた空気の温度と外気温度との差分に基づいて算出された補正値との差分を前記
ヒータコアの設定温度とすると共に、取り込まれた空気の温度が高くなるにつれて前記補正値を大きくし、取り込まれた空気の温度が低くなるにつれて前記補正値を小さくする、
車両用空調装置。
【請求項2】
前記制御部は、取り込まれた空気が通過するエバポレータの温度に基づいて前記取り込まれた空気の温度を推定する請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記制御部は、車室内の空気の温度、外気温度、及び取り込まれた空気における前記車室内の空気と外気との割合に基づいて前記取り込まれた空気の温度を推定する請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
取り込まれた空気の温度を調整する
、エアコンユニットのヒータコアを制御することで空調を行う車両用空調方法であって、
前記
ヒータコアの内部を流れる冷却水の基準温度である媒体基準温度を取得し、
前記媒体基準温度と
、取り込まれた空気の温度と外気温度との差分に基づいて算出された補正値との差分を前記
ヒータコアの設定温度とすると共に、取り込まれた空気の温度が高くなるにつれて前記補正値を大きくする、
車両用空調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置及び車両用空調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ヒートポンプサイクルと、加熱部と、低温側熱媒体回路と、放熱量調整制御部とを有する空調装置が開示されている。この特許文献1では、放熱量調整制御部は、暖房用熱交換器で加熱された送風空気の温度が目標温度に近づくように放熱量を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、加熱後に放熱して温度調整する構造では、取り込んだ空気の温度が高い場合、空気を加熱するために余分なエネルギーが消費される。また逆に、消費エネルギー(消費電力)を低減させるために加熱量が少なくすれば、乗員が設定した温度まで空気を加熱できず快適性を損なう虞がある。
【0005】
本発明は、快適性を維持しつつ、消費電力を低減可能な車両用空調装置及び車両用空調方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る車両用空調装置は、取り込まれた空気の温度を調整する、エアコンユニットのヒータコアと、前記ヒータコアを制御する制御部と、備え、前記制御部は、前記ヒータコアの内部を流れる冷却水の基準温度である媒体基準温度を取得し、前記媒体基準温度と、取り込まれた空気の温度と外気温度との差分に基づいて算出された補正値との差分を前記ヒータコアの設定温度とすると共に、取り込まれた空気の温度が高くなるにつれて前記補正値を大きくし、取り込まれた空気の温度が低くなるにつれて前記補正値を小さくする。
【0007】
請求項1に係る車両用空調装置では、ヒータコアが制御部によって制御されるように構成されており、取り込まれた空気の温度をヒータコアが調整することで車室内に温度調整された空気を送風できる。ここで、制御部は、ヒータコアの媒体基準温度を取得する。また、制御部は、媒体基準温度と補正値との差分をヒータコアの設定温度とする。さらに、制御部は、取り込まれた空気の温度が高くなるにつれて補正値を大きくする。これにより、取り込まれた温度が外気温度よりも高い場合のように、媒体の温度を高く設定しなくてよい状況では、不必要にヒータコアの媒体設定温度が上がらずに済み、消費電力を低減できる。
【0008】
また、制御部は、取り込まれた空気の温度が低くなるにつれて設定温度を上げる。これにより、内気循環モードから外気導入モードへ切り替えた場合のように、低温の空気が取り込まれる状態であっても、乗員にとって快適な温度まで空気を加熱できる。
【0010】
さらに、取り込まれた空気の温度と外気温度との差分に基づいてヒータコアの設定温度を補正することで、特に外気導入時において余分なエネルギーを消費せずに空気を加熱できる。
【0011】
請求項2に係る車両用空調装置は、請求項1において、前記制御部は、取り込まれた空気が通過するエバポレータの温度に基づいて前記取り込まれた空気の温度を推定する。
【0012】
請求項2に係る車両用空調装置では、取り込まれた空気がエバポレータを通過するため、エバポレータの温度に基づいて取り込まれた空気の温度を推定すれば、専用のサーミスタなどを設ける必要がない。
【0013】
請求項3に係る車両用空調装置は、請求項1において、前記制御部は、車室内の空気の温度、外気温度、及び取り込まれた空気における前記車室内の空気と外気との割合に基づいて前記取り込まれた空気の温度を推定する。
【0014】
請求項3に係る車両用空調装置では、特に、外気導入モードにおいて、エバポレータを通過する空気に温度分布がある場合であっても、精度良く取り込まれた空気の温度を推定できる。
【0015】
請求項4に係る車両用空調方法は、取り込まれた空気の温度を調整する、エアコンユニットのヒータコアを制御することで空調を行う車両用空調方法であって、前記ヒータコアの内部を流れる冷却水の基準温度である媒体基準温度を取得し、前記媒体基準温度と、取り込まれた空気の温度と外気温度との差分に基づいて算出された補正値との差分を前記ヒータコアの設定温度とすると共に、取り込まれた空気の温度が高くなるにつれて前記補正値を大きくする。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係る車両用空調装置及び車両用空調方法によれば、快適性を維持しつつ、消費電力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る車両用空調装置の全体構成を示す概略図である。
【
図2】実施形態に係る車両用空調装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る車両用空調装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】目標吹出温度と、媒体基準温度との関係を示すグラフである。
【
図5】吸込温度を推定する方法の一例を説明するための概略図である。
【
図6】吸込温度を推定する方法の他の例を説明するための概略図である。
【
図7】吸込温度及び外気温度と、補正値との関係を示すグラフである。
【
図8】実施形態における空調処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施形態に係る車両用空調装置10について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、車両用空調装置10は、電動車両に搭載されており、コンプレッサ(圧縮機)12、コンデンサ(凝縮器)14、エキスパンションバルブ(膨張弁)16A、16B及びエバポレータ(蒸発器)18A、18Bを含んでおり、これらが配管を介して接続されて冷凍サイクルが形成されている。なお、本実施形態の車両用空調装置10は、電動車両の一例としてのBEV(Battery Electric Vehicle)に搭載された例について説明するが、エンジン(内燃機関)を備えたHEV(Hybrid Electric Vehicle)に搭載されてもよい。
【0019】
車両用空調装置10は、コンプレッサ12が回転駆動されることにより冷媒が圧縮される。圧縮された冷媒は、コンデンサ14を通過することで液化され、エキスパンションバルブ16Aによって霧状にされてエバポレータ18Aへ送り込まれる。同様に、コンデンサ14を通過することで液化された冷媒は、エキスパンションバルブ16Bによって霧状にされてエバポレータ18Bへ送り込まれる。
【0020】
また、車両用空調装置10は、図示しないインストルメントパネル内に設けられて取り込まれた空気の温度を調整する温度調整部としてのエアコンユニット20と、電動車両の電池22の冷却を担う電池冷却ユニット21とを備えている。
【0021】
電池冷却ユニット21は、図示しない電池温度センサによって検出された電池22の温度が所定値以上の場合に、エキスパンションバルブ16Bが開くことで、エバポレータ18Bによって電池22を冷却する。エバポレータ18Bによる電池22の冷却は空冷方式でもよく、液冷方式でもよい。
【0022】
エアコンユニット20には、空気の導入口として、車室内に向けて開口された内気導入口24と、車外へ向けて開口された外気導入口26と、が形成され、内気導入口24及び外気導入口26を選択的に開閉する開閉ドア28、及び、送風手段であるブロワファン30が設けられている。
【0023】
車両用空調装置10は、空調風の生成に用いる空気の導入モードとして、車室内の空気を導入する内気循環モードまたは車外の空気を導入する外気導入モードの設定が可能となっている。そして、設定された空気導入モードに応じて開閉ドア28が作動される。また、ブロワモータ32によってブロワファン30が回転駆動されることにより、内気または外気がエバポレータ18へ送られる。
【0024】
また、車両用空調装置10には、デフロスタ吹出し口34、レジスタ吹出し口36及び足元吹出し口38が設けられている。デフロスタ吹出し口34は、例えば、フロントウインドシールドガラスへ向けて開口されている。レジスタ吹出し口36は、例えば、車室内の乗員へ向けて開口されている。足元吹出し口38は、例えば、乗員の足元へ向けて開口されている。そして、デフロスタ吹出し口34、レジスタ吹出し口36及び足元吹出し口38を介してエアコンユニット20内と車室内とが連通されている。
【0025】
エアコンユニット20には、デフロスタ吹出し口34、レジスタ吹出し口36及び足元吹出し口38を選択的に開閉するモード切換ドア40が設けられている。
【0026】
ここで、エアコンユニット20は、ヒータコア42及びエアミックスドア44を備えている。ヒータコア42は、エバポレータ18Aよりも空調風の下流側に配置されており、ヒータコア42を通過する空気を加熱する。なお、電動車両がBEVの場合、ヒータコア42を流れる冷却水を電気ヒータなどで加熱することでヒータコアを加熱する。また、電動車両がエンジンを備えたHEVなどである場合、エンジンとヒータコア42との間で冷却水が循環されて熱交換が行われることでヒータコア42を加熱させてもよい。
【0027】
エアミックスドア44は、エバポレータ18Aを通過した空気を、ヒータコア42を通過する空気と、ヒータコア42をバイパスする空気とに分ける。具体的には、エアコンユニット20では、設定された空調温度に応じてエアミックスドア44の開度が制御されることにより、ヒータコア42を通過した空気とヒータコア42をバイパスした空気とが混合されて空調風が生成される。
【0028】
(車両用空調装置10のハードウェア構成)
図2は、車両用空調装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。この
図2に示されるように、車両用空調装置10は、エアコンユニット20を制御する制御部としてのエアコンECU(Electronic Control Unit)46を備えている。
【0029】
エアコンECU46は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)50、ROM(Read Only Memory)52、RAM(Random Access Memory)54、ストレージ56、通信I/F(通信インタフェース)58及び入出力I/F(入出力インタフェース)60を含んで構成されている。各構成は、バス62を介して相互に通信可能に接続されている。
【0030】
CPU50は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU50は、ROM52又はストレージ56からプログラムを読み出し、RAM54を作業領域としてプログラムを実行する。CPU50は、ROM52又はストレージ56に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。
【0031】
ROM52は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM54は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ56は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。本実施形態では、ROM52又はストレージ56には、空調を行うための空調プログラム及び各種データなどが格納されている。
【0032】
通信I/F58は、エアコンECU46が他の機器と通信するためのインタフェースであり、たとえば、CAN(Controller Area Network)、イーサネット(登録商標)、LTE(Long Term Evolution)、FDDI(Fiber Distributed Data Interface)、Wi-Fi(登録商標)などの規格が用いられる。
【0033】
入出力I/F60は、周辺機器と電気的に接続されており、本実施形態の入出力I/F60は一例として、コンプレッサ12、エキスパンションバルブ16、開閉ドア28、モード切換ドア40、ブロワファン30、外気温度センサ64及びエバポレータ温度センサ66と電気的に接続されている。
【0034】
コンプレッサ12は、エンジンまたはモータの駆動力で回転駆動されており、コンプレッサ12の冷媒吐出圧が制御されることで冷房能力が制御される。エキスパンションバルブ16は、エアコンユニット20側のエキスパンションバルブ16Aと、電池冷却ユニット21側のエキスパンションバルブ16Bとを含んでいる。
【0035】
開閉ドア28は、設定された空気導入モードに応じて開閉することで、内気循環モードと外気導入モードとを切換える。また、開閉ドア28は、車室内の空気と車外の空気の両方を導入するように制御されてもよい。なお、実際には、エアコンECU46は、開閉ドア28を開閉させるアクチュエータを制御する。
【0036】
モード切換ドア40は、設定されたモードに応じて開閉することで、デフロスタ吹出し口34から空調風を吹き出すモード、レジスタ吹出し口36から空調風を吹き出すモード、足元吹出し口38から空調風を吹き出すモードなどが設定可能とされている。なお、実際には、エアコンECU46は、モード切換ドア40を開閉させるアクチュエータを制御する。
【0037】
外気温度センサ64は、車両の外部の温度を検出してエアコンECU46へ送信する。エバポレータ温度センサ66は、エバポレータ18Aに設けられており、エバポレータ18Aの温度を検出してエアコンECU46へ送信する。
【0038】
(車両用空調装置10の機能構成)
車両用空調装置10は、
図2に示されたハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。車両用空調装置10が実現する機能構成について
図3を参照して説明する。
【0039】
図3に示されるように、車両用空調装置10は、機能構成として、設定基準温度取得部72、吸込温度推定部74及びヒータコア調整部76を含んで構成されている。なお、各機能構成は、CPU50がROM52又はストレージ56に記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0040】
設定基準温度取得部72は、エアコンユニット20の設定基準温度を取得する。具体的には、設定基準温度取得部72は、乗員によって設定された空調温度に基づいて目標吹出温度TAOを算出し、さらに目標吹出温度TAOから算出される媒体基準温度TWO_baseをエアコンユニット20の設定基準温度として取得する。ここで、目標吹出温度TAOと媒体基準温度TWO_baseとの関係について
図4のグラフを用いて説明する。
【0041】
図4の横軸は、目標吹出温度TAOであり、縦軸は媒体基準温度TWO_baseである。そして、目標吹出温度TAOは、上述したように、乗員によって設定された空調温度に基づいて算出される。
【0042】
図4のグラフに示されるように、目標吹出温度TAOが閾値T1以下の領域では、媒体基準温度TWO_baseが一定となっている。これは、例えば、媒体の設定温度の下限に対応する。また、目標吹出温度TAOが閾値T2以上の領域では、媒体基準温度TWO_baseが一定となっている。これは、例えば、媒体の設定温度の上限に対応する。
【0043】
目標吹出温度TAOが閾値T1と閾値T2との間の領域では、目標吹出温度TAOが大きくなるにつれて媒体基準温度TWO_baseが大きくなるように、媒体基準温度TWO_baseが設定される。なお、本実施形態では一例として、ヒータコア42の内部を流れる冷却水が過熱媒体となるため、媒体基準温度TWO_baseは、冷却水の基準水温となる。
【0044】
図3に示される吸込温度推定部74は、ヒータコア42へ取り込む空気の温度(吸込温度)を推定する。換言すれば、吸込温度推定部74は、エバポレータ18Aを通過した空気の温度を推定する。本実施形態では、吸込温度推定部74は一例として、2つの方法の少なくとも一方の方法によって吸込温度を推定する。以下、2つの方法について説明する。
【0045】
図5は、吸込温度推定部74が吸込温度を推定する方法の一例を説明するための概略図である。
図5に示される方法では、エバポレータ18A内に設けられたエバポレータ温度センサ66を用いて吸込温度を推定する。
【0046】
具体的には、取り込まれた空気は、エバポレータ18Aを通過するため、このエバポレータ18Aの温度に基づいて取り込まれた空気の吸込温度を推定する。すなわち、エバポレータ18Aを通過することで、空気とエバポレータ18Aとの間で熱交換が行われるため、エバポレータ温度センサ66が検知したエバポレータ18Aの温度をヒータコア42へ取り込む空気の温度として推定する。
【0047】
図6は、吸込温度推定部74が吸込温度を推定する方法の他の例を説明するための概略図である。
図6に示される方法では、エバポレータ温度センサ66を用いずに、他の方法でヒータコア42へ取り込む空気の温度を推定する。特に、この
図6の方法では、開閉ドア28によって車室内の空気と車外の空気の両方が導入されている状態で高精度に吸込温度を推定できる。
【0048】
具体的には、
図6に示される方法では、外気導入口26(
図1参照)から導入された空気F1と、内気導入口24(
図1参照)から導入された空気F2とがエバポレータ18Aを通過している状態において、外気の空気F1と内気の空気F2との割合を推定する。例えば、開閉ドア28の開度及び車両の走行状態などから空気F1の割合が推定できる。
【0049】
また、外気温度センサ64から取得された外気温度は、空気F1と同じ温度であるとし、車室内の温度が空気F2と同じ温度として、空気F1と空気F2とが混合された空気F3の温度を算出する。空気F1の割合をX(%)とし、空気F1の温度を外気温度TAMとし、空気F2の温度をTRとした場合、空気F3の温度TMは、TM=TAM×X+TR×(100-X)で算出される。
【0050】
吸込温度推定部74は、算出された空気F3の温度TMをヒータコア42へ取り込む空気の温度として推定してもよい。
【0051】
図3に示されるヒータコア調整部76は、吸込温度推定部74によって推定された空気の温度に基づいてヒータコア42の温度を制御する。具体的には、ヒータコア調整部76は、媒体基準温度TWO_baseと補正値との差分をヒータコア42(温度調整部)の設定温度とすると共に、取り込まれた空気の温度が高くなるにつれて補正値が大きくするように制御する。このヒータコア42の温度設定方法について、
図7を用いて説明する。
【0052】
図7は、吸込温度及び外気温度TAMと、補正値との関係を示すグラフである。
図7の横軸は、吸込温度推定部74によって推定された、ヒータコア42へ取り込む空気の温度(吸込温度)と、外気温度TAMとの差分である。
図7の縦軸は、ヒータコア42の設定温度の補正値である。
【0053】
図7のグラフに示されるように、吸込温度と外気温度TAMとの差分が閾値T3以下の領域では、補正値が0で一定となっている。これにより、補正値がマイナスとなるのを抑制している。また、吸込温度と外気温度TAMとの差分が閾値T4以上の領域では、一定の補正値となっている。これにより、補正値が過度に大きくなるのを抑制している。
【0054】
吸込温度と外気温度TAMとの差分が閾値T3と閾値T4との間の領域では、吸込温度と外気温度TAMとの差分が大きくなるにつれて補正値が大きくなっている。換言すれば、吸込温度と外気温度TAMとの差が大きくなるほど、補正値が大きくなるように設定されている。そして、ヒータコア調整部76は、
図7の補正値と、設定基準温度取得部72によって取得された媒体基準温度TWO_baseとを用いた以下の数式により媒体設定温度TWOを算出する。
【0055】
(数1)
TWO=TWO_base-補正値 ・・・(1)
【0056】
なお、ヒータコア調整部76は、媒体基準温度TWO_baseと補正値との差分が所定の下限値αよりも小さくなる場合、下限値αを媒体設定温度TWOとすることで、媒体設定温度TWOが異常値となることを抑制する。
【0057】
上記の数式により、吸込温度と外気温度TAMとの差分が大きい場合、内気循環などで吸込温度が高くなっていると判断できるため、ヒータコア調整部76は、媒体基準温度TWO_baseよりも媒体設定温度TWOを低くする。
【0058】
(作用)
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0059】
(空調処理)
車両用空調装置10による空調処理の流れの一例について、
図8に示されているフローチャートを用いて説明する。なお、本処理は、CPU50がROM52又はストレージ56に記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0060】
CPU50は、ステップS102で媒体基準温度TWO_baseを取得する。具体的には、CPU50は、設定基準温度取得部72の機能により、乗員が設定した空調温度に基づいて目標吹出温度TAOを算出し、さらに目標吹出温度TAOから算出される媒体基準温度TWO_baseをエアコンユニット20の設定基準温度として取得する。
【0061】
CPU50は、ステップS104で吸込温度、すなわち、ヒータコア42へ取り込む空気の温度を推定する。具体的には、CPU50は、吸込温度推定部74の機能によってエバポレータ18Aを通過した空気の温度を推定する。吸込温度を推定する方法としては、
図5に示した方法と
図6に示した方法のうち、車両状態や空調モードなどに応じて一方の方法で吸込温度を推定してもよく、両方の方法で吸込温度を推定してもよい。
【0062】
CPU50は、ステップS106で吸込温度と外気温度との差分が小さいか否かについて判定する。具体的には、CPU50は、
図7のグラフにおいて、吸込温度と外気温度TAMとの差分が閾値T3以下であれば、差分が小さいと判定し、ステップS108の処理へ移行する。
【0063】
CPU50は、ステップS108で媒体設定温度TWOの補正を行わずに次の処理であるステップS112へ移行する。
【0064】
一方、
図7のグラフにおいて、吸込温度と外気温度TAMとの差分が閾値T3よりも大きければ、CPU50は、ステップS110の処理へ移行する。CPU50は、ステップS110で差分に応じて媒体設定温度TWOを補正する。具体的には、上述した数式に従って、TWO_baseと補正値との差分を媒体設定温度TWOとする。
【0065】
CPU50は、ステップS112で媒体設定温度TWOが下限値よりも小さいか否かについて判定する。CPU50は、媒体設定温度TWOが下限値よりも小さい場合、ステップS114の処理へ移行し、媒体設定温度TWOを下限値に設定して空調処理を終了する。
【0066】
一方、媒体設定温度TWOが下限値以上の場合、CPU50は、ステップS114の処理を行わず、ステップS108又はステップS110で設定された媒体設定温度TWOのまま空調処理を終了する。
【0067】
以上のように、本実施形態に係る車両用空調装置10によれば、温度調整部であるエアコンユニット20がエアコンECU46によって制御されるように構成されており、取り込まれた空気の温度をエアコンユニット20(特に、ヒータコア42)が調整することで車室内に温度調整された空気を送風できる。
【0068】
ここで、エアコンECU46は、ヒータコア42の媒体基準温度TWO_baseを取得する。また、エアコンECU46は、媒体基準温度TWO_baseと補正値との差分を温度調整部の媒体設定温度TWOとする。ここで、エアコンECU46は、取り込まれた空気の温度が高くなるにつれて補正値を大きくする。これにより、取り込まれた温度が外気温度よりも高い場合のように、媒体の温度を高く設定しなくてよい状況には、不必要に温度調整部の媒体設定温度TWOが上がらずに済み、消費電力を低減できる。
【0069】
また、エアコンECU46は、取り込まれた空気の温度が低くなるにつれて設定温度を上げる。これにより、内気循環モードから外気導入モードへ切り替えた場合のように、低温の空気が取り込まれる状態であっても、乗員にとって快適な温度まで空気を加熱できる。
【0070】
さらに、本実施形態では、取り込まれた空気の温度と外気温度TAMとの差分に基づいてヒータコア42の媒体設定温度TWOを補正することで、特に外気導入時において余分なエネルギーを消費せずに空気を加熱できる。
【0071】
さらにまた、本実施形態では、取り込まれた空気がエバポレータ18Aを通過するため、エバポレータ18Aの温度に基づいて取り込まれた空気の温度を推定すれば、エバポレータ温度センサ66のみを用いて吸込温度を推定でき、専用のサーミスタなどを設ける必要がない。
【0072】
また、本実施形態において、車室内の空気と外気との割合に基づいて吸込温度を推定する場合、外気導入モードにおいてエバポレータ18Aを通過する空気に温度分布がある場合であっても、精度良く取り込まれた空気の温度を推定できる。
【0073】
以上、実施形態に係る車両用空調装置10について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、
図1を参照して車両用空調装置10の全体構成を説明したが、この構成に限定されず、他の構成が採用された空調装置に適用してもよい。例えば、ヒータコア42に代えて、他の加熱手段を備えた構成としてもよい。
【0074】
また、上記実施形態でCPU50がプログラムを読み込んで実行した処理を、CPU50以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、上記処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせで実行してもよく、例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0075】
また、上記実施形態では、ストレージ56に種々のデータを記憶させる構成としたが、これに限定されない。例えば、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的記録媒体を記憶部としてもよい。この場合、これらの記録媒体に各種プログラム及びデータなどが格納されることとなる。
【符号の説明】
【0076】
10 車両用空調装置
18A エバポレータ
20 エアコンユニット(温度調整部)
46 エアコンECU(制御部)