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  • 特許-情報処理装置およびシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】情報処理装置およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G06F 8/70 20180101AFI20250708BHJP
【FI】
G06F8/70
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022183339
(22)【出願日】2022-11-16
(65)【公開番号】P2024072495
(43)【公開日】2024-05-28
【審査請求日】2024-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 正貴
(72)【発明者】
【氏名】角谷 昌俊
(72)【発明者】
【氏名】吉田 薫
(72)【発明者】
【氏名】栗山 奏
(72)【発明者】
【氏名】篠原 俊樹
【審査官】今川 悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-009428(JP,A)
【文献】特許第6861916(JP,B1)
【文献】特開2019-160059(JP,A)
【文献】国際公開第2022/224754(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/001512(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第115131967(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108418902(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 8/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスから受信するデータに基づいて仮想空間上に現実空間と時刻同期した交通デジタルツインを構築する情報処理装置であって、
アプリケーションからサービスの提供に関する情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記情報に基づいて、前記交通デジタルツインの更新を行う更新周期を設定する設定部と、
前記設定部が設定した前記更新周期に従って前記複数のデバイスから前記データを受信する通信部と、を備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記複数のデバイスから受信する前記データに基づいて前記交通デジタルツインを更新する更新部と、
前記交通デジタルツインの完成度を判定する判定部と、をさらに備え、
前記設定部は、前記取得部が取得した前記情報と前記判定部で判定された前記交通デジタルツインの完成度とに基づいて、前記更新周期を設定する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記更新部は、前記複数のデバイスから受信した現在の前記データに基づいて前記交通デジタルツインを更新した後、次の前記データを受信するまでの間は、前記現在のデータから予測される未来の値を用いて前記交通デジタルツインを補正する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記情報は、前記アプリケーションが前記サービスを提供することが可能となる前記交通デジタルツインの完成度の範囲に関する情報を含む、請求項2または3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記サービスの提供に関する情報は、前記デバイスの外部からの制御が可能な前記交通デジタルツインの完成度の範囲、前記デバイスのユーザーの行動変化の契機となる危険通知が可能な前記交通デジタルツインの完成度の範囲、および前記デバイスのユーザーに対して状況の通知が可能な前記交通デジタルツインの完成度の範囲、の少なくともいずれかに関する情報を含む、請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記周期は、前記交通デジタルツインを形成する要素ごとに定められる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
複数のデバイスと、前記複数のデバイスから受信するデータに基づいて仮想空間上に現実空間と時刻同期した交通デジタルツインを構築する情報処理装置と、を備えるシステムであって、
前記情報処理装置は、
アプリケーションからサービスの提供に関する通知を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記通知に基づいて、前記交通デジタルツインの更新を行う更新周期を設定する設定部と、
前記設定部が設定した前記更新周期に従って前記複数のデバイスから前記データを受信する通信部と、を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の車両と通信を行う情報処理装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、クラウド上に設けられるサーバーが、車両の状態及び車両の挙動を記述したデジタルデータ(車両データ)を複数の車両から受信し、この受信した車両データに基づいて、サーバー内に構築する交通デジタルツインを更新するシステムが、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-013557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
交通デジタルツインの完成度(精度)を向上させるためには、車両などのデバイスからデータを受信する周期を短くして(受信頻度を上げて)、交通デジタルツインの更新を早くする必要がある。しかしながら、交通デジタルツインの更新周期を単に短くするだけであると、デバイスとサーバーとの間の通信帯域の圧迫や通信量の増加などによって、交通デジタルツインを用いたサービスの提供に影響が及ぶおそれがある。
【0005】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、サービスの提供に関する情報に基づいて交通デジタルツインの更新周期を変更することができる通信処理装置などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示技術の一態様は、複数のデバイスから受信するデータに基づいて仮想空間上に現実空間と時刻同期した交通デジタルツインを構築する情報処理装置であって、アプリケーションからサービスの提供に関する情報を取得する取得部と、取得部が取得した情報に基づいて、交通デジタルツインの更新を行う更新周期を設定する設定部と、設定部が設定した更新周期に従って複数のデバイスからデータを受信する通信部と、を備える、情報処理装置である。
【発明の効果】
【0007】
上記本開示の情報処理装置などによれば、サービス提供に関する情報に基づいて、複数のデバイスからのデータの受信周期と交通デジタルツインの更新周期とを動的に変更する。これにより、通信処理装置とデバイスとの間の通信帯域の圧迫や通信量の増加などを抑制しつつ、アプリケーションによるデバイスへのサービス提供の中断などを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係る情報処理装置を含むシステムの概略構成図
図2】情報処理装置が保持する更新周期テーブルの一例
図3】情報処理装置が実行する交通デジタルツインの更新周期制御の処理フローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の情報処理装置は、アプリケーションがデバイスに提供するサービスを実現するために必要な交通デジタルツインの完成度を確保すべく、デバイスからデータを収集する周期および交通デジタルツインを更新する周期を変更する。これによって、アプリケーションによるデバイスへのサービス提供の中断などを回避する。
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
<実施形態>
[構成]
図1は、本開示の一実施形態に係る情報処理装置100と、アプリケーションサーバー200と、複数のデバイス300と、を含むシステム10の概略構成図である。このシステム10は、情報処理装置100、アプリケーションサーバー200、および複数のデバイス300が、それぞれ相互に通信可能に接続されている。
【0011】
(1)デバイス
複数のデバイス300は、情報処理装置100やアプリケーションサーバー200との間で通信を実行する、例えば車両などのモビリティやIoTデバイスである。情報処理装置100および/またはアプリケーションサーバー200が通信可能なデバイス300の数は、図1に示した数に限られるものではない。複数のデバイス300の1つまたは複数は、アプリケーションサーバー200に要求することで、アプリケーションサーバー200に実装されるアプリケーション(App)によって提供される所定のサービスを受けることが可能な構成である。
【0012】
また、複数のデバイス300は、自己の状態に関する情報や情報処理装置100において後述する交通デジタルツイン160を構築するために必要なデータなどを、情報処理装置100に提供することができる。複数のデバイス300が情報やデータを提供する周期は、情報処理装置100の要求(指示)に基づいて行われる。自己の状態に関するデータには、デバイス300の位置、速度、および移動方向などのデータが含まれる。交通デジタルツイン160を構築するために必要なデータには、デバイス300の周囲に存在する動的物体(モビリティ、人物など)や静的物体(障害物、落下物など)に関するデータが含まれる。これらのデータの取得には、車両に搭載された各種のセンサ(図示せず)を用いることができる。
【0013】
(2)アプリケーションサーバー
アプリケーションサーバー200は、複数のデバイス300との間で通信を実行し、複数のデバイス300の少なくとも1つに対して所定のサービス(機能や価値)を提供することが可能な構成である。このアプリケーションサーバー200は、サービスの提供を実現するために必要なアプリケーション(App)を1つ以上実装している。アプリケーションによって実現されるサービスとしては、例えばモビリティのデバイス300に対しては、運動(走る、止まる、曲がる)を遠隔制御するサービスや、周囲の情報を通知(危険通知/状況通知)するサービスなど、交通デジタルツイン160に要求される内容(期待値)が異なる様々なサービスを例示することができる。
【0014】
また、アプリケーションサーバー200は、情報処理装置100との間で通信を実行し、アプリケーション(App)によるサービスの提供に関する情報を、情報処理装置100に送信する。サービスの提供に関する情報は、典型的には、アプリケーションによって制御することが可能な交通デジタルツイン160の完成度の範囲(制御可能範囲)に関する情報である。より具体的には、サービスの提供に関する情報として、デバイス300の外部からの遠隔制御(以下「外部コントロール」という)が可能となる交通デジタルツイン160の完成度の範囲、デバイス300のユーザーの行動変化の契機となる危険通知(以下「行動変容コーション」という)が可能となる交通デジタルツイン160の完成度の範囲、およびデバイス300のユーザーに対してデバイス300の状況の通知(以下「状況インフォメーション」という)が可能となる交通デジタルツイン160の完成度の範囲を、例示できる。
【0015】
なお、本実施形態では、アプリケーションサーバー200は、情報処理装置100とは別の構成として説明しているが、情報処理装置100が備える構成であってもよい。
【0016】
(3)情報処理装置
情報処理装置100は、アプリケーションサーバー200によるデバイス300に対するサービスの提供を実現させるために必要な制御を行うための構成である。情報処理装置100は、通信部110と、取得部120と、設定部130と、生成更新部140と、判定部150と、交通デジタルツイン160と、を備えている。この情報処理装置100は、例えばクラウド上(クラウドサーバーなど)に構成され得る。
【0017】
交通デジタルツイン160は、複数のデバイス300が存在する現実世界(現実空間)を、現実世界と時刻同期させてクラウドコンピューター上に再現した仮想世界(仮想空間)である。交通デジタルツイン160は、複数のデバイス300から取得(収集)された現在および過去のデバイス状態に関するデータなどに基づいて生成される。この交通デジタルツイン160では、複数のデバイス300を含むシステム10に参加する様々なデバイスが移動可能な場所(道路など)において移動経路上にある物体(動的物体や静的物体など)や交通状況(工事など)が全て複製される。交通デジタルツイン160を生成するためのデータに含まれる情報としては、デバイス情報(VINなど)、他デバイスの交通(自転車、歩行者などを含む)に関する情報、地図情報、時刻情報(タイムスタンプ)、位置情報(GPS緯度/経度)、および移動軌道であるトラジェクトリ情報(移動速度、移動の向きなど)などを、例示できる。また、この交通デジタルツイン160では、複数のデバイス300からデータを取得(収集)できない間(データ未取得期間)は、取得済みのデータから予測される未来値に基づいてデータ未取得期間における仮想世界が推定される。
【0018】
判定部150は、交通デジタルツイン160の完成度を判定する。この交通デジタルツイン160の完成度としては、典型的には0%~100%の値が付与される。判定部150は、例えば、生成更新部140によってクラウド上に交通デジタルツイン160として再現された仮想世界が、複数のデバイス300が存在する現実世界と一致する割合などに応じて判定することができる。また、判定部150は、判定した交通デジタルツイン160の完成度が所定の目標値に到達したか否かを判断する。所定の目標値は、サービスの提供に関する情報に基づいて設定することができる。
【0019】
通信部110は、アプリケーションサーバー200や複数のデバイス300との間で通信を実行する。そして、通信部110は、デバイス300の状態に関する情報(位置、速度、移動方向など)や交通デジタルツイン160の生成に関わる情報(デバイス300の周囲に関する情報および通信品質に関わる情報など)などを含むデータを、複数のデバイス300から受信する。また、通信部110は、設定部130が設定した交通デジタルツイン160の更新周期に従って定まるデータ送信周期を、複数のデバイス300に送信する。
【0020】
取得部120は、通信部110を介して、アプリケーションサーバー200からサービスの提供に関する情報を取得する。サービスの提供に関する情報は、例えば、上述した外部コントロールの情報、行動変容コーションの情報、および状況インフォメーションなどの情報である。また、取得部120は、生成更新部140によって生成(および更新)された交通デジタルツイン160の完成度を取得する。
【0021】
設定部130は、取得部120が取得したサービスの提供に関する情報および交通デジタルツイン160の完成度に基づいて、生成更新部140によって行われる交通デジタルツイン160の更新周期を設定する。この設定部130が行う更新周期の設定手法の一例を、図2を用いて説明する。図2は、情報処理装置100が保持する更新周期テーブルの一例を示す図である。
【0022】
図2に例示する更新周期テーブルは、交通デジタルツイン160の完成度に応じて、その完成度を実現するために複数のデバイス300からの実データに基づいて交通デジタルツイン160の情報を更新すべき目標の周期を、交通デジタルツイン160を形成する要素ごとに予め定めたものである。交通デジタルツイン160を構成する要素には、動的物体(モビリティ)、動的物体(人物)、静的物体(障害物/落下物)、工事、および道路マップによる区分が定義されている。また、交通デジタルツイン160の完成度には、「30%未満」、「30%以上かつ60%未満」、「60%以上かつ80%未満」、および「80%以上」による区分が定義されている。
【0023】
この更新周期テーブルにおいて、例えば、交通デジタルツイン160を「80%以上」の完成度に維持したい場合は、短時間で変化が起き得ると考えられる動的物体情報(モビリティ)については10ミリ秒~100ミリ秒の周期で頻繁な更新が望ましいことが示され、その一方で状況に短時間な変化が生じるものではない道路マップ情報については、5日~10日の周期による更新で足りることが示されている。また、更新周期テーブルでは、例えば、交通デジタルツイン160が「30%以上かつ60%未満」の完成度でよい場合には、「60%以上かつ80%未満」の完成度や「80%以上」の完成度における周期と比較して、各要素の情報更新の周期を長期化してもよいことが示されている。
【0024】
本実施形態において、アプリケーションサーバー200が情報処理装置100に送信するサービスの提供に関する情報である外部コントロール、行動変容コーション、および状況インフォメーションには、デバイス300に対するサービス提供を実現するために必要な交通デジタルツイン160の完成度の範囲(または下限値)が、それぞれ予め設定されている。図2の例では、デバイス300を制御する外部コントロールについては、交通デジタルツイン160の完成度として「80%以上」が要求され、デバイス300の制御ではないがデバイス300に影響を与える可能性が高い行動変容コーションについては、交通デジタルツイン160の完成度として「60%以上」が要求され、デバイス300の制御ではなく影響を与える可能性も低い状況インフォメーションについては、交通デジタルツイン160の完成度として「30%以上」が要求される、ことを示している。
【0025】
設定部130は、上記更新周期テーブルを参照して、アプリケーションサーバー200から通知されるサービスの提供に関する情報および交通デジタルツイン160の完成度に基づいて、交通デジタルツイン160の更新周期を次のようなルールに従って設定する。例えば、アプリケーションサーバー200のアプリケーション(App)からサービスの提供に関する情報として外部コントロールの情報を受信した場合、外部コントロールのサービス提供に必要な交通デジタルツイン160の完成度は「80%以上」であるため、設定部130は、交通デジタルツイン160の更新周期を10ミリ秒~100ミリ秒のいずれかの周期に設定する。また、例えば、アプリケーションサーバー200の第1アプリケーションから行動変容コーションの情報を受信し、かつ第2アプリケーションから状況インフォメーションの情報を受信した場合、設定部130は、これらの情報のうち交通デジタルツイン160のより高い完成度を必要とする第1アプリケーションの情報を選択し(調停機能)、行動変容コーションのサービス提供に必要な交通デジタルツイン160の完成度「60%以上」に対応する10ミリ秒~1秒のいずれかの周期に交通デジタルツイン160の更新周期を設定する。
【0026】
なお、上述の例では、交通デジタルツイン160の更新周期として、交通デジタルツイン160を構成する全ての要素(動的物体(モビリティ)、動的物体(人物)、静的物体(障害物/落下物)、工事、および道路マップ)を対象として、1つの更新周期を設定する場合を説明した。しかしながら、交通デジタルツイン160を構成する要素ごとに、それぞれ交通デジタルツイン160の更新周期を設定してもよい。上記アプリケーション(App)から外部コントロールの情報を受信した例の場合には、交通デジタルツイン160上の動的物体情報(モビリティ)については10ミリ秒~100ミリ秒の範囲で更新周期が設定され、動的物体情報(人物)については100ミリ秒~1秒の範囲で更新周期が設定され、静的物体情報(障害物/落下物)については10秒~1分の範囲で更新周期が設定され、工事情報については12時間~1日の範囲で更新周期が設定され、および道路マップ情報については5日~10日の範囲で更新周期が設定される。
【0027】
設定部130は、このようにして設定した交通デジタルツイン160の更新周期に基づいて、情報処理装置100がデバイス300の状態に関する情報や交通デジタルツイン160の生成に関わる情報などを含むデータを複数のデバイス300から収集したい周期、すなわち複数のデバイス300から情報処理装置100へのデータの送信を要求する周期を、データ送信周期として複数のデバイス300に送信する。この複数のデバイス300のデータ送信周期は、交通デジタルツイン160の更新周期と同一であってもよいし、交通デジタルツイン160の更新周期よりも短くてもよい。例えば、動的物体情報(人物)について1秒の更新周期が設定されていても、100ミリ秒のデータ送信周期が複数のデバイス300に送信されてもよい。
【0028】
生成更新部140は、通信部110を介して、複数のデバイス300から受信したデバイス300の状態に関する情報や交通デジタルツイン160の生成に関わる情報などを含むデータに基づいて、交通デジタルツイン160を生成する。また、生成更新部140は、生成した交通デジタルツイン160を、設定部130が設定した更新周期に従って更新する。交通デジタルツイン160は、常に生成されてもよいし、アプリケーションサーバー200のいずれかのアプリケーション(App)が起動している間(デバイス300にサービスが提供されている間)のみ生成されてもよい。
【0029】
上述した情報処理装置100の一部または全部の構成は、典型的にはCPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)などの読み書き可能な記憶装置と、を備えたユニットとして構成され得る。このユニットは、CPUが記憶装置から読み出したプログラムを、RAMを作業領域として用いて実行することにより、上述した様々な機能を実現する。
【0030】
[制御]
次に、図3をさらに参照して、本実施形態に係る情報処理装置100が実行する処理を説明する。図3は、情報処理装置100が実行する交通デジタルツイン160の更新周期制御の処理手順を説明するフローチャートである。この図3に例示する交通デジタルツイン160の更新周期制御は、交通デジタルツイン160が生成される(起動する)と開始され、交通デジタルツイン160の生成の必要がなくなる(起動が終了する)まで、繰り返し実行される。
【0031】
(ステップS301)
情報処理装置100の取得部120は、アプリケーションサーバー200の1つまたは複数のアプリケーション(App)から、サービスの提供に関する情報としてサービスの制御可能範囲を取得したか否かを判断する。サービスの制御可能範囲は、上述した外部コントロール、行動変容コーション、および状況インフォメーションなどである。取得部120は、アプリケーションからサービスの制御可能範囲を取得した場合に(ステップS301、はい)、処理をステップS302に進める。
【0032】
(ステップS302)
情報処理装置100の設定部130は、取得部120が取得したサービスの制御可能範囲と交通デジタルツイン160の完成度とに基づいて、交通デジタルツイン160の更新周期を設定する。更新周期の設定は、上述したルールに従って行われる。なお、すでに短い更新周期が設定されている状態で、長い更新周期を許容するサービスの制御可能範囲のみがアプリケーション(App)から通知された場合には、短い更新周期の設定をそのまま継続してもよいし、新たに長い更新周期を設定してもよい。前者の場合には、交通デジタルツイン160の完成度の更なる向上が期待でき、後者の場合には、情報処理装置100とデバイス300との間の通信資源(通信帯域、通信コスト)を有効に活用することができる。設定部130によって交通デジタルツイン160の更新周期が設定されると、ステップS303に処理が進む。
【0033】
(ステップS303)
情報処理装置100の設定部130は、設定した交通デジタルツイン160の更新周期に基づいてデバイス300からデータを収集する周期を決定し、この決定した周期をデータ送信周期として複数のデバイス300に送信する。データ送信周期の送信先となる複数のデバイス300は、システム10に接続される(参加する)全てのデバイス300である。設定部130によってデータ送信周期が複数のデバイス300に送信されると、ステップS304に処理が進む。
【0034】
(ステップS304)
情報処理装置100の生成更新部140は、複数のデバイス300から受信したデバイス300の状態に関する情報や交通デジタルツイン160の生成に関わる情報などを含むデータを用いて、更新周期に従って交通デジタルツイン160を更新する。交通デジタルツイン160の更新手法については、周知の技術を適用することができる。生成更新部140によって複数のデバイス300から受信したデータを用いて更新周期に従って交通デジタルツイン160が更新されると、ステップS305に処理が進む。
【0035】
(ステップS305)
情報処理装置100の判定部150は、生成更新部140が更新した交通デジタルツイン160の完成度を判定し、この判定した完成度が所定の目標値に到達したか否かを判断する。この判断は、サービスの制御可能範囲に基づいて設定した新たな交通デジタルツイン160の更新周期に応じて、交通デジタルツイン160の完成度が変化しているか否かを判断するために行われる。例えば、アプリケーションサーバー200からの外部コントロールの通知に基づいて交通デジタルツイン160の更新周期が設定された場合には、目標値が80%以上の値を設定することができる。なお、目標値への到達とは、交通デジタルツイン160の完成度が上昇して目標値に到達する場合も、交通デジタルツイン160の完成度が下降して目標値に到達する場合も含む。
【0036】
判定部150が、交通デジタルツイン160の完成度が目標値に到達したと判断した場合は(ステップS305、はい)、ステップS301に処理が進む。一方、判定部150が、交通デジタルツイン160の完成度がまだ目標値に到達していないと判断した場合は(ステップS305、いいえ)、ステップS306に処理が進む。
【0037】
(ステップS306)
情報処理装置100の設定部130は、現在設定している交通デジタルツイン160の更新周期を再度設定する。更新周期は、交通デジタルツイン160の完成度が目標値に近づく方向に制御されるように再設定する。具体的には、現在の交通デジタルツイン160の完成度が目標値よりも小さければ、交通デジタルツイン160の更新周期を短くする方向に再設定され、現在の交通デジタルツイン160の完成度が目標値よりも大きければ、交通デジタルツイン160の更新周期を長くする方向に再設定される。設定部130によって交通デジタルツイン160の更新周期が再設定されると、ステップS305に処理が進む。
【0038】
このように交通デジタルツイン160の更新周期の設定を繰り返すことによって、アプリケーションが提供しようとするサービスに適した完成度の交通デジタルツイン160を作成することができる。
【0039】
<作用・効果>
以上のように、本開示の一実施形態に係る情報処理装置100によれば、アプリケーションサーバー200から送信されるサービスの提供に関する情報に基づいて、アプリケーションがそのサービスをデバイス300に提供するための制御を適切に実行可能な交通デジタルツイン160が作成できるように、交通デジタルツイン160の更新周期を動的に変更する。また、交通デジタルツイン160の更新周期に基づいて、情報処理装置100が複数のデバイス300から収集するデータの周期を変更する。
【0040】
この処理によって、交通デジタルツイン160の完成度をアプリケーションが実現したいサービスに最適なものとすることができ、アプリケーションによるデバイス300へのサービス提供が不可能となったり中断されたりといった事象の発生を回避することができる。また、情報処理装置100とデバイス300との間の通信帯域の圧迫や通信量の増加などを抑制することができる。
【0041】
以上、本開示の一実施形態を説明したが、本開示は、情報処理装置だけでなく、プロセッサとメモリとを備えた情報処理装置が実行する方法、この方法を実行するためのプログラム、プログラムを記憶したコンピューター読み取り可能な非一時的記憶媒体、および情報処理装置と車両などのデバイスとを備えたシステム、として捉えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本開示の情報処理装置は、クラウド上に構築される交通デジタルツインの更新周期を、デバイスに提供されるサービスの内容に応じて好適に制御したい場合などに有用である。
【符号の説明】
【0043】
10 システム
100 情報処理装置
110 通信部
120 取得部
130 設定部
140 生成更新部
150 判定部
160 交通デジタルツイン
200 アプリケーションサーバー
300 デバイス
図1
図2
図3