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  • 特許-二軸延伸ポリアミドフィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】二軸延伸ポリアミドフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20250708BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20250708BHJP
【FI】
B32B27/34
B65D65/40 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022512031
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2021012304
(87)【国際公開番号】W WO2021200489
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-11-20
(31)【優先権主張番号】P 2020060681
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020097913
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020122061
(32)【優先日】2020-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上田 和茂
(72)【発明者】
【氏名】後藤 考道
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 卓郎
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/033133(WO,A1)
【文献】特開2010-253711(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065161(WO,A1)
【文献】特表2017-507042(JP,A)
【文献】特開2007-112999(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131752(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
B65D65/00- 65/46
B29C55/00- 55/30
C08J 5/12- 5/22
C08L 1/00-101/14
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層(A層)の少なくとも片面に機能層(B層)が積層された二軸延伸ポリアミドフィルムであって、二軸延伸ポリアミドフィルムの厚みが5~100μmであり、基材層(A層)の厚みが、基材層(A層)と機能層(B層)の合計厚みの50~93%であり、基材層(A層)は少なくとも(a)ポリアミド6樹脂70~99質量%、および(b)脂肪族または芳香族脂肪族ポリエステル樹脂1~20質量%を含み、前記(b)脂肪族または芳香族脂肪族ポリエステル樹脂が、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、及びポリブチレンアジペートテレフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のポリエステル樹脂であり、機能層(B層)は少なくともポリアミド6樹脂70質量%以上を含み、ポリアミドMXD6樹脂を1~10質量%含み、シリカ微粒子を含み、更に脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドを含み、耐屈曲ピンホール性を改質する材料を含まないことを特徴とする二軸延伸ポリアミドフィルム。
【請求項2】
前記基材層(A層)が、少なくとも原料の一部がバイオマス由来であるポリアミド樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載の二軸延伸ポリアミドフィルム。
【請求項3】
少なくとも原料の一部がバイオマス由来であるポリアミド樹脂が、ポリアミド11、ポリアミド410、ポリアミド610、及びポリアミド1010からなる群から選ばれる少なくとも1種以上のポリアミド樹脂であることを特徴とする請求項に記載の二軸延伸ポリアミドフィルム。
【請求項4】
二軸延伸ポリアミドフィルムが下記の(a)~(c)を満足することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の二軸延伸ポリアミドフィルム。
(a)ゲルボフレックステスターを用いた屈曲試験を温度1℃で1000回実施した時の屈曲疲労ピンホール数が5個以下
(b)耐摩擦ピンホールテストでピンホール発生までの距離が2900cm以上
(c)フィルムの突き刺し強度が0.67N/μm以上
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の二軸延伸ポリアミドフィルムの少なくとも片面に、固形分として0.01~3g/m のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂及びアクリルグラフト共重合ポリエステル樹脂からなる群より選ばれる1種以上の樹脂を含む塗布層を有する二軸延伸ポリアミドフィルム。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の二軸延伸ポリアミドフィルムの少なくとも片面に、無機薄膜層を有するポリアミドフィルム。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の二軸延伸ポリアミドフィルムにシーラントフィルムを積層した積層フィルム。
【請求項8】
請求項に記載の積層フィルムを用いた包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃性及び耐屈曲ピンホール性と耐摩擦ピンホール性に優れる二軸延伸ポリアミドフィルムに関するものである。本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、食品包装用フィルムなどに好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリアミド6に代表される脂肪族ポリアミドからなる二軸延伸フィルムは、耐衝撃性と耐屈曲ピンホール性に優れており、各種の包装材料フィルムとして広く使用されている。
【0003】
また、スープ、調味料等の液体充填包装向けに、耐屈曲ピンホール性、耐衝撃性をさらに向上させるため、脂肪族ポリアミドに各種エラストマー(ゴム成分)を混合し、より柔軟化して耐屈曲ピンホール性を向上した二軸延伸ポリアミドフィルムが使用されている。
【0004】
上記の耐屈曲ピンホール性を向上させる手段として脂肪族ポリアミドにポリアミド系エラストマーを混合したフィルムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このフィルムは、低温環境下での耐屈曲ピンホール性、耐衝撃性が良好であり、低温環境下でも屈曲疲労によるピンホールが発生にくい。しかし、脂肪族ポリアミドにポリアミド系エラストマーを混合したフィルムの場合、フィルム製造時に添加したポリアミド系エラストマーが熱劣化するために、ダイスのリップ出口に目ヤニと呼ばれる劣化物を生成しやすい。劣化物はそれ自体が落下することで不良製品を生み、フィルム連続生産時の生産効率を低下させる問題があった。
【0005】
ピンホールは、屈曲によって発生する他に摩擦(擦れ)によっても発生する。屈曲によるピンホールと摩擦によるピンホールの改善方法は相反する場合が多い。例えば、フィルムの柔軟性を高くすると、屈曲ピンホールは発生しにくくなるが、柔らかくなった分だけ摩擦によるピンホールが生じ易くなる傾向がある。これに対して二軸延伸ポリアミドフィルムの外面に表面コート剤を設けることによって、屈曲や摩擦によるピンホールの発生を改善する包装用の積層体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、この方法では摩擦ピンホールの発生防止効果が少ない。また、コーティング工程が必要となる。
【0006】
さらには、例えば特許文献3及び4ではポリエステル系熱可塑性エラストマーを1~10質量%含有するポリアミド系樹脂組成物からなる延伸フィルムが開示されている。かかる技術によれば、低温環境においても耐屈曲性に優れいうものであるが、これら技術においても、耐熱性の低いエラストマー成分が表層に存在するために、ダイスのリップ出口に目ヤニと呼ばれる劣化物を生成しやすいという問題については、未だ改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-254615号公報
【文献】特開2001-205761号公報
【文献】国際公開2019/131752号公報
【文献】特開2019-147964号公報
【文献】特開平10-29264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み創案されたものである。本発明の目的は、屈曲による耐ピンホール性及び繰り返し接触による耐ピンホール性に優れ、且つ、耐突刺し性に優れ、さらには、製膜中の異物の発生を抑制することのできる二軸延伸ポリアミドフィルムを提供することである。更に上記に加えシーラントフィルムとの耐水接着強度にも優れ、さらには、製膜中の異物の発生を抑制することのできる易接着性ポリアミドフィルム、またはガスバリア性に優れた二軸延伸ポリアミドフィムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の構成よりなる。
〔1〕 基材層(A層)の少なくとも片面に機能層(B層)が積層された二軸延伸ポリアミドフィルムであって、基材層(A層)は少なくとも(a)ポリアミド6樹脂70~99質量%、および(b)脂肪族または芳香族脂肪族ポリエステル樹脂1~20質量%を含み、機能層(B層)は少なくともポリアミド6樹脂70質量%以上を含むことを特徴とする二軸延伸ポリアミドフィルム。
〔2〕 前記(b)脂肪族または芳香族脂肪族ポリエステル樹脂が、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、及びポリブチレンアジペートテレフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のポリエステル樹脂であることを特徴とする〔1〕に記載の二軸延伸ポリアミドフィルム。
〔3〕 前記基材層(A層)が、少なくとも原料の一部がバイオマス由来であるポリアミド樹脂を含有することを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の二軸延伸ポリアミドフィルム。
〔4〕 少なくとも原料の一部がバイオマス由来であるポリアミド樹脂が、ポリアミド11、ポリアミド410、ポリアミド610、及びポリアミド1010からなる群から選ばれる少なくとも1種以上のポリアミド樹脂であることを特徴とする〔3〕に記載の二軸延伸ポリアミドフィルム。
〔5〕 二軸延伸ポリアミドフィルムが下記の(a)~(c)を満足することを特徴とする〔1〕~〔4〕いずれかにに記載の二軸延伸ポリアミドフィルム
(a)ゲルボフレックステスターを用いた屈曲試験を温度1℃で1000回実施した時の屈曲疲労ピンホール数が5個以下
(b)耐摩擦ピンホールテストでピンホール発生までの距離が2900cm以上
(c)フィルムの突き刺し強度が0.67N/μm以上
〔6〕 〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の二軸延伸ポリアミドフィルムの少なくとも片面に、固形分として0.01~3g/m2 のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂及びアクリルグラフト共重合ポリエステル樹脂からなる群より選ばれる1種以上の樹脂を含む塗布層を有する二軸延伸ポリアミドフィルム。
〔7〕 〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の二軸延伸ポリアミドフィルムの少なくとも片面に、無機薄膜層を有するポリアミドフィルム。
〔8〕 〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の二軸延伸ポリアミドフィルムにシーラントフィルムを積層した積層フィルム。
〔9〕 〔8〕に記載の積層フィルムを用いた包装袋。
【発明の効果】
【0010】
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、ポリアミド6樹脂を主成分とし、特定のポリエステル系樹脂をブレンドした層をフィルムの内層に配することにより、耐衝撃性、耐屈曲ピンホール性、耐摩擦ピンホール性に優れる。
【0011】
加えて、フィルムの製膜工程におけるダイス内部でエラストマー成分が劣化することがないので、長時間にわたり、ダイス内面への劣化物の付着やダイスリップ出口への目ヤニの付着を抑制できる。ダイス内面やダイスリップ出口へ劣化物が付着することにより生じるフィルムの厚み斑を抑制することができる。また、生産を止めてダイスのリップを掃除する回数を低減することができるため、本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、長時間の連続生産を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】耐摩擦ピンホール性評価装置の概略図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムを詳細に説明する。
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、A層(基材層)の少なくとも片面に機能層(B)が積層された二軸延伸ポリアミドフィルムである。以下、各層の詳細について説明する。
【0014】
[A層(基材層)]
基材層(A層)は、少なくとも(a)ポリアミド6樹脂70~99質量%、および(b)脂肪族または芳香族脂肪族ポリエステル樹脂1~20質量%を含む樹脂組成物からなる。
【0015】
基材層(A層)は、ポリアミド6樹脂を70質量%以上含むことで優れた衝撃強度などの機械的強度や酸素などのガスバリア性を持った二軸延伸ポリアミドフィルム得られる。基材層(A層)に使用するポリアミド6は、通常、ε-カプロラクタムの開環重合によって製造される。開環重合で得られたポリアミド6は、通常、熱水でラクタムモノマーを除去した後、乾燥してから押出し機で溶融押出しされる。
【0016】
ポリアミド6の相対粘度は、1.8~4.5であることが好ましく、より好ましくは、2.6~3.2である。相対粘度が1.8より小さい場合は、フィルムの衝撃強度が不足する。4.5より大きい場合は、押出機の負荷が大きくなり延伸前の未延伸フィルムを得るのが困難になる。
【0017】
基材層(A層)は、脂肪族または芳香族脂肪族ポリエステル樹脂1~20質量%を含むことにより、耐屈曲ピンホール性に優れた二軸延伸ポリアミドフィルムが得られる。基材層(A層)に含まれる脂肪族または芳香族脂肪族ポリエステル樹脂としてはガラス転移温度(Tg)をマイナス30℃以下にもつものが好ましい。ガラス転移温度をマイナス30℃以下に持つポリエステル共重合体を用いることによって、冷凍環境下でも優れた耐ピンホール性を発現することができる。中でも好ましい脂肪族ポリエステル樹脂としてはポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペートが、芳香族脂肪族ポリエステル樹脂としては、ポリブチレンアジペートテレフタレートが、柔軟な特性を有する点で好ましい。
【0018】
基材層(A層)に含まれる脂肪族または芳香族脂肪族ポリエステル樹脂の下限は1質量%が好ましく、2質量%がさらに好ましく、3質量%が最も好ましい。基材層(A層)に含まれる脂肪族または芳香族脂肪族ポリエステル樹脂の添加量が1質量%より小さいと、耐屈曲ピンホール性の改善効果が得られない。基材層(A層)に含まれる脂肪族または芳香族脂肪族ポリエステル樹脂の上限は20質量%が好ましく、15質量%がより好ましい。基材層(A層)に含まれる脂肪族または芳香族脂肪族ポリエステル樹脂の添加量が20質量%を超えると、フィルムが柔らかくなりすぎ、突刺し強度や衝撃強度が低下するばかりか、フィルムが伸びやすくなるために、印刷などの加工時にピッチずれなどが起きやすくなる。
【0019】
基材層(A層)は、さらに、バイオマス由来の原料を含む特定のポリアミド樹脂を含有することで、耐屈曲ピンホール性さらに向上させることができる。基材層(A層)に含まれる少なくとも原料の一部がバイオマス由来であるポリアミド樹脂の含有量の上限は、30質量%が好ましく、20質量%がより好ましい。少なくとも原料の一部がバイオマス由来であるポリアミド樹脂の含有量が30質量%を超えると、溶融フィルムをキャスティングする時に溶融フィルムが安定しなくなり、均質な未延伸フィルムを得るのが難しくなる。
【0020】
基材層(A層)に使用することができる少なくとも原料の一部がバイオマス由来であるポリアミド樹脂としては、ポリアミド11、ポリアミド610、ポリアミド1010およびポリアミド410が、入手性の点で好ましい。
【0021】
前記ポリアミド11は、炭素原子数11である単量体がアミド結合を介して結合された構造を有するポリアミド樹脂である。通常、ポリアミド11は、アミノウンデカン酸又はウンデカンラクタムを単量体として用いて得られる。とりわけアミノウンデカン酸は、ヒマシ油から得られる単量体であるため、環境保護の観点(特にカーボンニュートラルの観点)から望ましい。これらの炭素原子数が11である単量体に由来する構成単位は、ポリアミド11内において全構成単位のうちの50%以上であることが好ましく、100%であってもよい。前記ポリアミド11としては通常、前述したウンデカンラクタムの開環重合によって製造される。開環重合で得られたポリアミド11は、通常、熱水でラクタムモノマーを除去した後、乾燥してから押出し機で溶融押出しされる。ポリアミド11の相対粘度は、1.8~4.5であることが好ましく、より好ましくは、2.4~3.2である。相対粘度が1.8より小さい場合は、フィルムの衝撃強度が不足する。4.5より大きい場合は、押出機の負荷が大きくなり延伸前の未延伸フィルムを得るのが困難になる。
【0022】
前記ポリアミド610は、炭素原子数6である単量体と、炭素原子数10である単量体と、がアミド結合を介して結合された構造を有するポリアミド樹脂である。通常、ポリアミド610はジアミンとジカルボン酸との共重合により得られ、各々ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸が利用される。このうちセバシン酸は、ヒマシ油から得られる単量体であるため、環境保護の観点(特にカーボンニュートラルの観点)から望ましい。これらの炭素原子数6である単量体に由来する構成単位と、炭素原子数10である単量体に由来する構成単位とは、ポリアミド610内においてその合計が、全構成単位のうちの50%以上であることが好ましく、100%であってもよい。
【0023】
上記ポリアミド1010は、炭素原子数10であるジアミンと、炭素原子数10であるジカルボン酸と、が共重合された構造を有するポリアミド樹脂である。通常、ポリアミド1010には、1,10-デカンジアミン(デカメチレンジアミン)とセバシン酸とが利用される。デカメチレンジアミン及びセバシン酸は、ヒマシ油から得られる単量体であるため、環境保護の観点(特にカーボンニュートラルの観点)から望ましい。これらの炭素原子数10であるジアミンに由来する構成単位と、炭素原子数10であるジカルボン酸に由来する構成単位とは、ポリアミド1010内においてその合計が、全構成単位のうちの50%以上であることが好ましく、100%であってもよい。
【0024】
上記ポリアミド410は、炭素数4である単量体と炭素原子数10であるジアミンとが共重合された構造を有するポリアミド樹脂である。通常ポリアミド410には、セバシン酸とテトラメチレンジアミンとが利用される。セバシン酸としては、環境面から植物油由来のヒマシ油を原料とするものが好ましい。ここで用いるセバシン酸としては、ヒマシ油から得られるものが環境保護の観点(特にカーボンニュートラルの観点)から望ましい。
【0025】
基材層(A層)には、他の熱可塑性樹脂、滑剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤や防曇剤、紫外線吸収剤、染料、顔料等の各種の添加剤を必要に応じて含有させることができる。
【0026】
基材層(A層)には、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリアミド6樹脂以外の熱可塑性樹脂を含むことができる。例えば、ポリアミド12樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド6・12共重合樹脂、ポリアミド6・66共重合樹脂、ポリアミドMXD6樹脂、ポリアミドMXD10樹脂、ポリアミド11・6T共重合樹脂などのポリアミド系樹脂が挙げられる。
必要に応じてポリアミド系以外の熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート等のポリエステル系重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系重合体等を含有させてもよい。
【0027】
[機能層(B層)]
機能層(B層)は、ポリアミド6樹脂を70~100質量%以上含むことを特徴とする。
機能層(B層)は、ポリアミド6樹脂を70質量%以上含むことで優れた衝撃強度などの機械的強度や酸素などのガスバリア性を持った二軸延伸ポリアミドフィルム得られる。ポリアミド6樹脂としては、前記の基材層(A層)で使用するポリアミド6樹脂と同様のものを使用できる。
【0028】
機能層(B層)には、他の熱可塑性樹脂、滑剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤や防曇剤、紫外線吸収剤、染料、顔料等の各種の添加剤を機能層(B層)の表面に持たせる機能に応じて含有させることができる。機能層(B層)を包装袋の外側に用いる場合は、耐摩擦ピンホール性が必要なので、ポリアミド系エラストマーやポリオレフィン系エラストマーのような軟らかい樹脂やボイドを多量に発生させる物質を含有させることは好ましくない。
【0029】
機能層(B層)には、本発明の目的を損なわない範囲で、前記ポリアミド6樹脂の他に熱可塑性樹脂を含むことができる。例えば、ポリアミドMXD6樹脂、ポリアミド11樹脂、ポリアミド12樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド6・12共重合樹脂、ポリアミド6・66共重合樹脂などのポリアミド系樹脂が挙げられる。必要に応じてポリアミド系以外の熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート等のポリエステル系重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系重合体等を含有させてもよい。
【0030】
機能層(B層)には、フィルム滑り性を良くするために、滑剤として微粒子や有機潤滑剤などを含有させることが好ましい。滑り性を良くすることで、フィルムの取扱い性が向上するとともに、擦れによる包装袋の破袋を減少させる。
【0031】
前記の微粒子としては、シリカ、カオリン、ゼオライト等の無機微粒子、アクリル系、ポリスチレン系等の高分子系有機微粒子等の中から適宜選択して使用することができる。なお、透明性と滑り性の面から、シリカ微粒子を用いることが好ましい。
【0032】
前記の微粒子の好ましい平均粒子径は0.5~5.0μmであり、より好ましくは1.0~3.0μmである。平均粒子径が0.5μm未満であると、良好な滑り性を得るのに多量の添加量が要求される。一方、5.0μmを超えると、フィルムの表面粗さが大きくなりすぎて外観が悪くなる傾向がある。
【0033】
前記のシリカ微粒子を使用する場合、シリカの細孔容積の範囲は、0.5~2.0ml/gであると好ましく、0.8~1.6ml/gであるとより好ましい。細孔容積が0.5ml/g未満であると、ボイドが発生し易くなりフィルムの透明性が悪化する。細孔容積が2.0ml/gを超えると、微粒子による表面の突起ができにくくなる傾向がある。
【0034】
前記の有機潤滑剤としては、脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドを含有させることができる。脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドとしては、エルカ酸アマイド、ステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイドなどが挙げられる。機能層(B層)に添加する脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドの含有量は、好ましくは0.01~0.40質量%であり、さらに好ましくは0.05~0.30質量%である。脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドの含有量が上記範囲未満となると、滑り性が悪くなる傾向がある。一方、上記範囲を越えると、濡れ性が悪くなる傾向がある。
【0035】
機能層(B層)には、フィルムの滑り性を良くする目的でポリアミド6以外のポリアミド系樹脂、例えば、ポリアミドMXD6樹脂、ポリアミド11、ポリアミド12樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド6・12共重合樹脂、ポリアミド6・66共重合樹脂などを添加することができる。特にポリアミドMXD6樹脂が好ましく、1~10質量%添加することが好ましい。1質量%未満ではフィルムの滑り性改善効果が少ない。10質量%より多い場合は、フィルムの滑り性改善効果が飽和する。
【0036】
ポリアミドMXD6樹脂はメタキシリレンジアミンとアジピン酸の重縮合で製造される。ポリアミドMXD6の相対粘度は、1.8~4.5であることが好ましく、より好ましくは、2.0~3.2である。相対粘度が1.8より小さい場合や4.5より大きい場合は、押出機でポリアミド樹脂との混練がしにくい場合がある。
【0037】
また、機能層(B層)には接着性を良くする目的でポリアミド6以外のポリアミド系樹脂を添加することもできる。この場合、ポリアミド6・12共重合樹脂、ポリアミド6・66共重合樹脂などの共重合ポリアミド樹脂が好ましい。
【0038】
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムの基材層(A層)及び機能層(B層)に、滑剤、酸化防止剤などの副材料や添加剤を添加する方法としては、樹脂重合時や押出し機での溶融押出し時に添加できる。高濃度のマスターバッチを作製してマスターバッチをフィルム生産時にポリアミド樹脂に添加してもよい。こうした公知の方法により行うことができる。
【0039】
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムの厚みは、特に制限されるものではないが、包装材料として使用する場合、通常100μm以下であり、一般には5~50μmの厚みのものが使用され、特に8~30μmのものが使用される。
【0040】
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムの基材層(A層)及び機能層(B層)の厚み構成において、機能層(B層)の厚みがフィルム総厚みの大部分を占めた場合、耐屈曲ピンホール性が低下する。従って、本発明において、基材層(A層)の厚みを、基材層(A層)と機能層(B層)の合計厚みの50~93%、特に60~93%とすることが好ましい。
【0041】
本発明における二軸延伸ポリアミドフィルムに少なくとも原料の一部がバイオマス由来であるポリアミド樹脂を用いる場合は、上放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が、ポリアミドフィルム中の全炭素に対して1~15%含まれることが好ましい。
【0042】
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、実施例に記載した測定方法によるゲルボフレックステスターを用いたひねり屈曲試験を温度1℃で1000回実施した時のピンホール欠点数が5個以下である。より好ましくは3個以下である。屈曲試験後のピンホール欠点数が少ないほど耐屈曲ピンホール性が優れており、ピンホール数が5個以下であれば、輸送時などに包装袋に負荷がかかってもピンホールが発生しにくい包装袋が得られる。
【0043】
更に、本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、実施例に記載した測定方法による耐摩擦ピンホールテストで、ピンホール発生までの距離が2900cm以上である。より好ましくは3100cm以上、更に好ましくは3300cm以上である。ピンホールが発生する距離が長いほど耐摩擦ピンホール性に優れており、ピンホールが発生する距離が2900cm以上であれば、輸送時などに包装袋が段ボール箱などと擦れてもピンホールが発生しにくい包装袋が得られる。
【0044】
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、上記の耐屈曲ピンホール性と耐摩擦ピンホール性の両方の特性が優れていることに特徴がある。これらの特性を持った本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、輸送時にピンホールが発生しにくいので包装用フィルムとして極めて有用である。
【0045】
本発明のフィルムは、160℃、10分での熱収縮率が流れ方向(以下MD方向と略記する)及び幅方向(以下TD方向と略記する)ともに0.6~3.0%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、0.6~2.5%である。熱収縮率が、3.0%を超える場合には、ラミネートや印刷など、次工程で熱がかかる場合にカールや収縮が発生する場合がある。また、シーラントフィルムとのラミネート強度が弱くなる場合がある。熱収縮率を0.6%未満とすることは可能ではあるが、力学的に脆くなる場合がある。また、生産性が悪化する場合ある。
【0046】
耐衝撃性に優れることが二軸延伸ポリアミドフィルムの特長であるので、本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムの衝撃強度は、0.7J/15μm以上が好ましい。より好ましい衝撃強度は、0.9J/15μm以上である。
【0047】
本発明のフィルムの突き刺し強度は0.67N/μm以上であることが好ましい。突き刺し強度を0.67N/μm以上とすることで、固形の内容物などを充填した際でも、内容物が袋に突き刺さることによって袋に穴が開いたり、輸送時に外的因子によって袋に穴が開くことを抑制することができる。
【0048】
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムのヘイズ値は、10%以下であることが好ましい。より好ましくは7%以下、更に好ましくは5%以下である。ヘイズ値が小さいと透明性や光沢が良いので、包装袋に使用した場合、きれいな印刷ができ商品価値を高める。フィルムの滑り性を良くするために微粒子を添加するとヘイズ値が大きくなるので、微粒子は表面層の機能層(B層)のみに入れる方が、ヘイズ値を小さくできる。
【0049】
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、実施例に記載のポリエチレン系シーラントフィルムと貼り合わせた後のラミネート強度は、4.0N/15mm以上であることが好ましい。二軸延伸ポリアミドフィルムは、通常シーラントフィルムとラミネートしてから包装袋に加工される。上記のラミネート強度が4.0N/15mm以上であれば、各種の積層構成で本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムを使用して包装袋を作製した場合に、シール部の強度が十分に得られ、破れにくい包装袋が得られる。ラミネート強度を4.0N/15mm以上にするために、本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、コロナ処理、コーティング処理、火炎処理等を施すことができる。
【0050】
[二軸延伸ポリアミドフィルムの作製方法]
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、公知の製造方法により製造することができる。例えば、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法が挙げられる。逐次二軸延伸法は、製膜速度が上げられるので、製造コスト的に有利であるので好ましい。
【0051】
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムの作製方法について説明する。
まず、押出機を用いて原料樹脂を溶融押出しし、Tダイからフィルム状に押出し、冷却ロール上にキャストして冷却し、未延伸フィルムを得る。本発明では基材層(A層)と機能層(B層)を積層した未延伸フィルムを得るため、フィードブロックやマルチマニホールドなどを使用した共押出法が好ましい。共押出法以外に、ドライラミネート法、押出ラミネート法等を選ぶこともできる。共押出法で積層する場合、基材層(A層)及び機能層(B層)に使用するポリアミド樹脂組成物は、基材層(A層)及び機能層(B層)の溶融粘度の差が少なくなるようにすることが望ましい。
【0052】
樹脂の溶融温度は好ましくは220~350℃である。上記未満であると未溶融物などが発生し、欠点などの外観不良が発生することがあり、上記を超えると樹脂の劣化などが観察され、分子量低下、外観低下が発生することがある。ダイ温度は250~350℃が好ましい。冷却ロール温度は、-30~80℃が好ましく、更に好ましくは0~50℃である。Tダイから押出されたフィルム状溶融物を回転冷却ドラムにキャストし冷却して未延伸フィルムを得るには、例えば、エアナイフを使用する方法や静電荷を印荷する静電密着法等が好ましく適用できる。特に後者が好ましく使用される。また、キャストした未延伸フィルムの冷却ロールの反対面も冷却することが好ましい。例えば、未延伸フィルムの冷却ロールの反対面に、槽内の冷却用液体を接触させる方法、スプレーノズルで蒸散する液体を塗布する方法、高速流体を吹き付けて冷却する方法等を併用することが好ましい。このようにして得られた未延伸フィルムを二軸方向に延伸して本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムを得る。
【0053】
延伸方法としては同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法のいずれでもよい。逐次二軸延伸法は、製膜速度が上げられるので、製造コスト的に有利であるので好ましい。いずれの場合においても、MD方向の延伸方法としては一段延伸又は二段延伸等の多段延伸が使用できる。後述するように、一段での延伸ではなく、二段延伸などの多段のMD方向の延伸が物性面およびMD方向及びTD方向の物性の均一さ(等方性)の面では好ましい。逐次二軸延伸法におけるMD方向の延伸は、ロール延伸が好ましい。
【0054】
MD方向の延伸温度の下限は好ましくは50℃であり、より好ましくは55℃であり、さらに好ましくは60℃である。50℃未満であると樹脂が軟化せず、延伸が困難となることがある。 MD方向の延伸温度の上限は好ましくは120℃であり、より好ましくは115℃であり、さらに好ましくは110℃である。120℃を超えると樹脂が軟らかくなりすぎ安定した延伸ができないことがある。
【0055】
MD方向の延伸倍率(多段で延伸する場合は、それぞれの倍率を乗じた全延伸倍率)の下限は好ましくは2.2倍であり、より好ましくは2.5倍であり、さらに好ましくは2.8倍である。2.2倍未満であるとMD方向の厚み精度が低下するほか、結晶化度が低くなりすぎて衝撃強度が低下することがある。MD方向の延伸倍率の上限は好ましくは5.0倍であり、より好ましくは4.5倍であり、最も好ましくは4.0倍である。5.0倍を超えると後続の延伸が困難となることがある。
【0056】
また、MD方向の延伸を多段で行う場合には、それぞれの延伸で上述のような延伸が可能であるが、倍率については、全MD方向の延伸倍率の積は5.0以下となるよう、延伸倍率を調整することが必要である。例えば、二段延伸の場合であれば、一段目の延伸を1.5~2.1倍、二段目の延伸を1.5~1.8倍が好ましい。
【0057】
MD方向に延伸したフィルムは、テンターでTD方向に延伸し、熱固定し、リラックス処理(緩和処理ともいう)する。TD方向の延伸温度の下限は好ましくは50℃であり、より好ましくは55℃であり、さらに好ましくは60℃である。50℃未満であると樹脂が軟化せず、延伸が困難となることがある。TD方向の延伸温度の上限は好ましくは190℃であり、より好ましくは185℃であり、さらに好ましくは180℃である。190℃を超えると結晶化してしまい、延伸が困難となることがある。
【0058】
TD方向の延伸倍率(多段で延伸する場合は、それぞれの倍率を乗じた全延伸倍率)の下限は好ましくは2.8であり、より好ましくは3.2倍であり、さらに好ましくは3.5倍であり、特に好ましくは3.8倍である。2.8未満であるとTD方向の厚み精度が低下するほか、結晶化度が低くなりすぎて衝撃強度が低下することがある。TD方向の延伸倍率の上限は好ましくは5.5倍であり、より好ましくは5.0倍であり、さらに好ましくは4.7であり、特に好ましくは4.5であり、最も好ましくは4.3倍である。5.5倍を超えると著しく生産性が低下することがある。
【0059】
熱固定温度の選択は本発明において重要な要素である、熱固定温度を高くするに従い、フィルムの結晶化および配向緩和が進み、衝撃強度を向上させ、熱収縮率を低減させることができる。一方、熱固定温度が低い場合には結晶化および配向緩和が不十分で熱収縮率を十分に低減させることができない。)また、熱固定温度が高くなりすぎると、樹脂の劣化が進み、急速に衝撃強度などフィルムの強靱性が失われる。
【0060】
熱固定温度の下限は好ましくは210℃であり、より好ましくは212℃である。熱固定温度が低いと熱収縮率が大きくなりすぎてラミネート後の外観が低下する、ラミネート強度が低下する傾向がある。熱固定温度の上限は好ましくは220℃であり、より好ましくは218℃である。熱固定温度が高すぎると、衝撃強度が低下する傾向がある。熱固定の時間は0.5~20秒であることが好ましい。さらには1~15秒である。熱固定時間は熱固定温度や熱固定ゾーンでの風速とのかね合いで適正時間とすることができる。熱固定条件が弱すぎると、結晶化及び配向緩和が不十分となり上記問題が起こる。熱固定条件が強すぎるとフィルム強靱性が低下する。
【0061】
熱固定処理した後にリラックス処理をすることは熱収縮率の制御に有効である。リラックス処理する温度は熱固定処理温度から樹脂のTgまでの範囲で選べるが、好ましくは熱固定処理温度-10℃~Tg+10℃が好ましい。リラックス温度が高すぎると、収縮速度が速すぎて歪みなどの原因となるため好ましくない。逆にリラックス温度が低すぎるとリラックス処理とならず、単に弛むだけとなり熱収縮率が下がらず、寸法安定性が悪くなる。リラックス処理のリラックス率の下限は、好ましくは0.5%であり、より好ましくは1%である。0.5%未満であると熱収縮率が十分に下がらないことがある。リラックス率の上限は好ましくは20%であり、より好ましくは15%であり、さらに好ましくは10%である。20%を超えるとテンター内でたるみが発生し、生産が困難になることがある。
【0062】
さらに、本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、用途に応じて寸法安定性を良くするために熱処理や調湿処理を施すことも可能である。加えて、フィルム表面の接着性を良好にするためにコロナ処理、コーティング処理や火炎処理等を施したり、印刷加工、金属物や無機酸化物等の蒸着加工を施したりすることも可能である。
【0063】
[塗布層(C)]
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムの別の態様は、フィルムの易接着性を付与するため、二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、塗布層(C)を有するフィルムである。前記塗布層(C)は、固形分として0.01~3g/m2 のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂及びアクリルグラフト共重合ポリエステル樹脂からなる群より選ばれる1種以上の樹脂を含むことができる。前記塗布層(C)は、フィルム製造工程でフィルムをミルロールとして巻き取る前に塗布液を塗布・乾燥して設けられることが好ましい。塗布液の塗布は、未延伸フィルム、1軸延伸フィルム、及び/又は2軸延伸フィルムに行うことができる。フィルムを逐次2軸延伸法で製造する場合は、通常、1軸延伸フィルムに塗布液を塗布し乾燥する。フィルムを同時2軸延伸で製造する場合は、通常、未軸延伸フィルムに塗布液を塗布し乾燥する。
【0064】
本発明おける塗布層(C)はフィルム製造工程でフィルムをミルロールとして巻き取る前に塗布液を塗布・乾燥して塗布膜を設けるので、塗布液は製造における安全性と衛生性を確保するために、樹脂の水系分散体を用いることが好ましい。
【0065】
<塗布層(C)に用いるポリエステル樹脂>
塗布層(C)としてポリエステル樹脂を用いる場合、ポリエステル樹脂としては共重合ポリエステル系樹脂を選ぶことができる。共重合ポリエステル系樹脂とはジカルボン酸成分とジオール成分およびその他のエステル形成成分の重縮合物である。共重合ポリエステル系樹脂に構成成分として含有されるジカルボン酸成分としては、たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニレンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、
マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸などの不飽和ジカルボン酸などを挙げることができる。
【0066】
上記ジカルボン酸成分の他に、水分散性を付与するため、5-スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4-スルホイソフタル酸、4-スルホナフタレン-2,6-ジカルボン酸、5(4-スルホフェノキシ)イソフタル酸の塩類を用いることができる。なかでも、5-ナトリウムスルホイソフタル酸を1~10モル%の範囲で使用するのが好ましい。
【0067】
共重合ポリエステル系樹脂に含有されるジオール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、ポリエチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタールなどの脂環族ジオール、4,4’-ビス(ヒドロキシエチル)ビスフェノールAなどの芳香族ジオール、さらにビス(ポリオキシエチレングリコール)ビスフェノールエーテルなどを挙げることができる。
【0068】
<塗布層に用いるポリウレタン樹脂>
塗布層(C)としてポリウレタン樹脂を用いる場合、ポリウレタン樹脂としては、例えば、活性水素を2個以上有するポリオール類と有機ポリイソシアネートとを反応させて得られるものが挙げられる。
ポリオール類としては、たとえば、飽和ポリエステルポリオール類;ポリエーテルポリオール類(たとえばポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど);アミノアルコール類(たとえばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなど);不飽和ポリエステルポリオール類(たとえば不飽和多価カルボン酸単独あるいはこれと飽和多価カルボン酸との混合物と、飽和多価アルコール類と不飽和多価アルコール類との混合物とを重縮合させて得られるもの)、ポリブタジエンポリオール類(たとえば1,2-ポリブタジエンポリオール、1,4-ポリブタジエンポリオールなど)、アクリルポリオール類(各種アクリル系モノマーとヒドロキシル基を有するアクリル酸系モノマーとを共重合させて得られるヒドロキシル基を側鎖に有するアクリルポリオール類)などの不飽和二重結合を有するポリオール類を挙げることができる。
有機ポリイソシアネートとしては、たとえば、芳香族ポリイソシアネート類(たとえばジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネートなど)、脂肪族ポリイソシアネート類(たとえばへキサメチレンジイソシアネートなど)、脂環族ポリイソシアネート類(たとえばイソホロンジイソシアネートなど)、芳香族・脂肪族ポリイソシアネート類(たとえばキリレンジイソシアネート)、さらにこれらのイソシアネート類と低分子量ポリオールとを予め反応させて得られるポリイソシアネート類を挙げることができる。
【0069】
<塗布層に用いるポリアクリル樹脂>
塗布層(C)としてポリアクリル樹脂を用いる場合、ポリアクリル樹脂としては、アクリル酸またはメタクリル酸、またはその塩類やエステル類を重合して得られるアクリル重合体が挙げられる。
アクリル酸エステル系およびメタクリル酸エステル系単量体としては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジルなどを挙げることができる。アクリル酸およびメタクリル酸の塩類としては、たとえば、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸カリウム、アクリル酸アンモニウム、メタクリル酸アンモニウムなどが挙げられる。
これらの必須成分の他に、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノメチル、N-メチロールアクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミドなどのアクリル酸系単量体を添加してもよい。
【0070】
ポリアクリル樹脂には、この他に塩化ビニル、酢酸ビニル、スチレン、ビニルエーテル、ブタジエン、イソプレン、ビニルスルホン酸ソーダなどの単量体を共重合成分として用いることもできる。なお、アクリル重合体には、アクリル酸塩成分、メタクリル酸塩成分、アクリル酸成分、アクリルアミド成分、アクリル酸2-ヒドロキシエチル成分、N-メチロールアクリルアミド成分などの親水性成分が共重合成分として含まれることが塗膜の機能性を高めるために好ましい。また分子側鎖に官能基を有する共重合体であってもよい。また、このアクリル系重合体は、メタクリル酸メチルやメタクリル酸エチルのような硬質成分を主成分として用い、共重合成分として、アクリル酸エステルのような軟質成分を共重合して得ることもできる。
【0071】
<塗布層に用いるアクリルグラフト共重合ポリエステル樹脂>
塗布層(C)としてアクリルグラフト共重合ポリエステル樹脂を用いることができ、本発明ではアクリルグラフト共重合ポリエステル水系分散体が好ましい一例として挙げられる。グラフト化ポリエステルの粒子と、水、水系溶媒または有機溶媒とを含み、半透明から乳白色の外観を呈する。このグラフト化ポリエステルは、ポリエステルからなる主鎖と、親水性基を有するラジカル重合性単量体を含むラジカル重合性単量体の重合体により形成されるグラフト部分(側鎖)とを有する。
【0072】
アクリルグラフト共重合ポリエステル水系分散体中のグラフト化ポリエステル粒子のレーザー光散乱法により測定される平均粒子径は、500nm以下、好ましくは10nm~500nm、さらに好ましくは10nm~300nmである。平均粒子径が500nmを超えると、塗布後の塗膜強度が低下する。
【0073】
アクリルグラフト共重合ポリエステル水系分散体中のアクリルグラフト共重合ポリエステル粒子の含有量は、通常、1質量%~50質量%、好ましくは3質量%~30質量%である。
本発明に用いられ得るアクリルグラフト共重合ポリエステル水系分散体中の粒子は、水性分散媒体中においてポリエステル主鎖をコアとするコア-シェル構造をとり得る。
【0074】
上記アクリルグラフト共重合ポリエステル水系分散体から得られる塗布膜は、ポリアミドフィルムとの接着性が非常に優れている。さらに、耐ブロッキング性が非常に優れているため、ガラス転移点の比較的低いフィルム基材においても問題なく使用し得る。また積層体とする場合、印刷インキやシーラント層を積層するときに使用する接着剤との接着性も非常に良好である。得られる積層フィルム(ラミネートフィルムともいう)は、レトルト処理や沸水処理における耐久性が著しく向上され得る。さらに共重合ポリエステル水系分散体中のグラフト化ポリエステルのガラス転移温度が、30℃以下、好ましくは10℃以下であるような柔軟なグラフト化ポリエステルを使用すると、さらに積層体の耐久性が向上する。
【0075】
(アクリルグラフト共重合ポリエステルのポリエステル主鎖)
本発明においてグラフト化ポリエステルの主鎖として用い得るポリエステルは、好適には少なくともジカルボン酸成分とジオール成分とから合成される飽和または不飽和ポリエステルであり、得られるポリエステルは、1種の重合体または2種以上の重合体の混合物であり得る。そして、本来それ自身では水に分散または溶解しないポリエステルが好ましい。本発明に用い得るポリエステルの重量平均分子量は、5000~l00000、好ましくは5000~50000である。重量平均分子量が5000未満であると乾燥塗膜の後加工性等の塗膜物性が低下する。さらに重量平均分子量が5000未満であると、主鎖となるポリエステル自身が水溶化し易いため、形成されるグラフト化ポリエステルが後述するコア-シェル構造を形成し得ない。ポリエステルの重量平均分子量が100000を超えると水分散化が困難となる。水分散化の観点からは100000以下が好ましい。 ガラス転移点は、30℃以下、好ましくは10℃以下である。
【0076】
前記ジカルボン酸成分としては、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸、少なくとも1種の脂肪族および/または脂環族ジカルボン酸、および少なくとも1種のラジカル重合性不飽和二重結合を有するジカルボン酸を含む、ジカルボン酸混合物であることが好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等が用いられ得る。さらに、必要に応じて5-スルホイソフタル酸ナトリウムも用い得る。
脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、これらの酸無水物等を用い得る。
脂環族ジカルボン酸としては、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロへキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、これらの酸無水物等を用い得る。
ラジカル重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸としては、α,β-不飽和ジカルボン酸類としてフマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、不飽和二重結合を含有する脂環族ジカルボン酸として2,5-ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸等を用い得る。これらの内で、フマル酸、マレイン酸および2,5-ノルボルネンジカルボン酸(エンド-ビシクロ-(2,2,1)-5-へプテン-2,3-ジカルボン酸)が好ましい。
【0077】
上記ジオール成分は、炭素数2~10の脂肪族グリコール、炭素数6~12の脂環族グリコール、およびエーテル結合含有グリコールのうちの少なくとも1種よりなる。
炭素数2~10の脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-へキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオール等を用い得る。
炭素数6~12の脂環族グリコールとしては、1,4-シクロヘキサンジメタノール等を用い得る。
エーテル結合含有グリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらにビスフェノール類の2つのフェノール性水酸基にエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドをそれぞれ1~数モル付加して得られるグリコール類、たとえば2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用い得る。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールも必要に応じて用い得る。
【0078】
上記ジカルボン酸成分およびジオール成分の他に、3官能性以上のポリカルボン酸および/またはポリオールを共重合し得る。
3官能以上のポリカルボン酸としては、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングルコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)等を用い得る。
3官能性以上のポリオールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を用い得る。
3官能性以上のポリカルボン酸および/またはポリオールは、上記ジカルボン酸成分を含む全ポリカルボン酸成分あるいは上記ジオール成分を含む全ポリオール成分に対し0~5モル%、好ましくは、0~3モル%の範囲で使用し得る。
【0079】
(アクリルグラフト共重合ポリエステルのグラフト部分)
本発明に用い得るグラフト化ポリエステルのグラフト部分は、親水性基を有するか、または後で親水性基に変化させることができる基を有するラジカル重合性単量体を少なくとも1種含む単量体混合物由来の重合体であり得る。
【0080】
グラフト部分を構成する重合体の重量平均分子量は500~50000、好ましくは4000~50000である。重量平均分子量が500未満の場合には、グラフト化率が低下するのでポリエステルヘの親水性の付与が十分に行なわれなくなり、かつ一般にグラフト部分の重量平均分子量を500未満にコントロールすることは困難である。グラフト部分は分散粒子の水和層を形成する。粒子に十分な厚みの水和層をもたせ、安定な分散体を得るためにはラジカル重合性単量体由来のグラフト部分の、重量平均分子は500以上であることが望ましい。ラジカル重合性単量体のグラフト部分の重量平均分子量の上限は溶液重合における重合性の点で上記のように50000が好ましい。この範囲内での分子量のコントロールは、重合開始剤量、モノマー滴下時間、重合時間、反応溶媒、およびモノマー組成を適切に選択し、必要に応じて連鎖移動剤や重合禁止剤を適宜組み合わせることにより行ない得る。 ガラス転移点は、30℃以下、好ましくは10℃以下である。
【0081】
ラジカル重合性単量体が有する親水性基としては、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、アミド基、第4級アンモニウム塩、リン酸基等を用い得る。親水性基に変化させ得る基としては、酸無水物、グリシジル、クロル等を用い得る。グラフト化によりポリエステルに導入される親水性基によってグラフト化ポリエステルの水への分散性をコントロールし得る。上記親水性基の中で、カルボキシル基は、そのグラフト化ポリエステルへの導入量を当該技術分野で公知の酸価を用いて正確に決定し得るため、グラフト化ポリエステルの水への分散性をコントロールする上で好ましい。
【0082】
カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等があり、さらに水/アミンに接して容易にカルボン酸を発生するマレイン酸無水物、イタコン酸無水物、メタクリル酸無水物等が用いられ得る。好ましいカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体はアクリル酸無水物、メタクリル酸無水物およびマレイン酸無水物である。
【0083】
上記親水性基含有ラジカル重合性単量体の他に、少なくとも1種の親水性基を含有しないラジカル重合性単量体を共重合することが好ましい。親水性基含有単量体のみの場合、ポリエステル主鎖に対するグラフト化が円滑に起こらず、良好な共重合ポリエステル水系分散体を得ることが難しい。少なくとも1種の親水性基を含有しないラジカル重合性単量体を共重合することによってはじめて効率の高いグラフト化が行なわれ得る。
【0084】
親水性基を含有しないラジカル重合性単量体としては、エチレン性不飽和結合を有しかつ上記のような親水性基を含有しない単量体の1種またはそれ以上の組み合わせが使用される。このような単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキプロピル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシルプロピル等のメタクリル酸エステル;アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアクリル酸またはメタクリル酸誘導体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;N-ビニルピロール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール、N-ビニルピロリドン等のN-ビニル化合物;塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタリン類等の芳香族ビニル化合物;を挙げることができる。これらのモノマーは単独もしくは2つ以上組み合わせて用いられ得る。
【0085】
親水性基含有単量体と親水性基を含有しない単量体の使用比率は、グラフト化ポリエステルに導入する親水性基の量を考慮して決定されるが、通常、質量比(親水性基含有単量体:親水性基を含有しない単量体)として、95:5~5:95、好ましくは90:10~10:90、さらに好ましくは80:20~40:60の範囲である。
【0086】
親水性基含有単量体として、カルボキシル基含有単量体を用いる場合、グラフト化ポリエステルの総酸価は、600~4000eq./10 g、好ましくは700~3000eq./10 g、最も好ましくは800~2500eq./10 gである。酸価が600eq./10 g以下の場合、グラフト化ポリエステルを水に分散したときに粒子径の小さい共重合ポリエステル水系分散体が得にくく、さらに共重合ポリエステル水系分散体の分散安定性が低下する。酸価が4000eq./10 g以上の場合、共重合ポリエステル水系分散体から形成される易接着層の耐水性が低くなる。
【0087】
アクリルグラフト共重合ポリエステルにおけるポリエステル主鎖とグラフト部分との質量比(ポリエステル:ラジカル重合性単量体)は、40:60~95:5、好ましくは55:45~93:7、さらに好ましくは60:40~90:10の範囲である。
【0088】
ポリエステル主鎖の質量比率が40質量%以下である場合、すでに説明した母体ポリエステルの優れた性能すなわち高い加工性、優れた耐水性、各種基材への優れた密着性を十分に発揮することができず、逆にアクリル樹脂の望ましくない性能、すなわち低い加工性、光沢、耐水性等を付加してしまう。ポリエステルの質量比率が95質量%以上である場合、グラフト化ポリエステルに親水性を付与するグラフト部分の親水性基量が不足して、良好な水性分散体を得ることができない。
【0089】
<塗布液に添加する架橋剤>
上記塗布液は、そのままで塗布層を形成する塗布剤として使用し得るが、さらに架橋剤(硬化用樹脂)を配合して硬化を行なうことにより、塗布層に高度の耐水性を付与することができる。
架橋剤としては、アルキル化フェノール類、クレゾール類等とホルムアルデヒドとの縮合物のフェノールホルムアルデヒド樹脂;尿素、メラミン、ベンゾグアナミン等とホルムアルデヒドとの付加物、この付加物と炭素原子数が1~6のアルコールからなるアルキルエーテル化合物等のアミノ樹脂;多官能性エポキシ化合物;多官能性イソシアネート化合物;ブロックイソシアネート化合物;多官能性アジリジン化合物;オキサゾリン化合物等を用い得る。
【0090】
本発明に用いる塗布層には、さらに本発明の効果を損なわない範囲で、帯電防止性、滑り性を付与するために、帯電防止剤、無機滑剤、有機滑剤等の添加剤を含有させることができる。帯電防止剤、無機滑剤、有機滑剤等をフィルム表面に塗布する場合、これらの添加剤の脱離を防止するため塗布層に含有させることが好ましい。
【0091】
塗布層を形成するために、塗布剤をポリアミドフィルム基材に塗布する方法としては、グラビア方式、リバース方式、ダイ方式、バー方式、ディップ方式等公知の塗布方式を用い得る。
【0092】
塗布剤の塗布量は、2軸延伸後のポリアミドフィルムに対して固形分として0.01~3g/m である。好ましくは、0.04~0.5g/m になるように塗布する。塗布量が0.01g/m 以下になると、塗布層と他層との十分な接着強度が得られない。3g/m 以上になるとブロッキングが発生し、実用上問題がある。
【0093】
塗布層は、二軸延伸ポリアミドフィルム基材に塗布剤を塗布するか、未延伸あるいは一軸延伸後のポリアミドフィルム基材に塗布剤を塗布した後、乾燥し、必要に応じて、さらに一軸延伸あるいは二軸延伸後熱固定を行って調製し得る。塗布剤塗布後の乾燥温度としては、150℃以上、好ましくは200℃以上で乾燥および熱固定を行うことにより塗膜が強固になり、易接着層とポリアミドフィルム基材との接着性が向上する。
【0094】
塗布後に延伸を行う場合、塗布後の乾燥は、塗布フィルムの延伸性を損なわないために塗布フィルムの水分率を0.1~2%の範囲に制御する必要がある。延伸後は200℃以上で乾燥および熱固定することによリ、塗膜が強固になリ塗布層とポリアミドフィルム基材との接着性が飛躍的に向上する。
【0095】
[無機薄膜層(D)]
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、フィルムの少なくとも片面に無機薄膜層を設けることによって、ガスバリア性を付与することができる。
【0096】
本発明の実施態様に係る無機薄膜層及びその形成方法を説明する。
無機薄膜層は金属または無機酸化物からなる薄膜である。無機薄膜層を形成する材料は、薄膜にできるものなら特に制限はないが、透明性とガスバリア性の観点から、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合物等の無機酸化物が好ましく挙げられる。特に、無機薄膜層の柔軟性と緻密性を両立できる点からは、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの複合酸化物が好ましい。この複合酸化物において、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合比は、金属分の質量比でAlが20~70質量%の範囲であることが好ましい。Al濃度が20質量%未満であると、水蒸気バリア性が低くなる場合がある。一方、70質量%を超えると、無機薄膜層が硬くなる傾向があり、印刷やラミネートといった二次加工の際に膜が破壊されてガスバリア性が低下することがある。なお、ここでいう酸化ケイ素とはSiOやSiO等の各種珪素酸化物又はそれらの混合物であり、酸化アルミニウムとは、AlOやA1等の各種アルミニウム酸化物又はそれらの混合物である。
【0097】
無機薄膜層の膜厚は、通常1~100nm、好ましくは5~50nmである。無機薄膜層の膜厚が1nm未満であると、満足のいくガスバリア性が得られ難くなる場合があり、一方、100nmを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性の向上効果は得られず、耐屈曲性や製造コストの点でかえって不利となる。
【0098】
無機薄膜層を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD法)、あるいは化学蒸着法(CVD法)等、公知の蒸着法を適宜採用すればよい。以下、無機薄膜層を形成する典型的な方法を、酸化ケイ素・酸化アルミニウム系薄膜を例に説明する。例えば、真空蒸着法を採用する場合は、蒸着原料としてSiOとA1の混合物、あるいはSiOとAlの混合物等が好ましく用いられる。これら蒸着原料としては通常粒子が用いられるが、その際、各粒子の大きさは蒸着時の圧力が変化しない程度の大きさであることが望ましく、好ましい粒子径は1mm~5mmである。加熱には、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱、レーザー加熱などの方式を採用することができる。また、反応ガスとして酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気等の導入、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を採用することも可能である。さらに、被蒸着体(蒸着に供する積層フィルム)にバイアスを印加する、被蒸着体を加熱もしくは冷却するなど、成膜条件も任意に変更することができる。このような蒸着材料、反応ガス、被蒸着体のバイアス、加熱・冷却等は、スパッタリング法やCVD法を採用する場合にも同様に変更可能である。
【0099】
[シーラントフィルムを積層した積層フィルム]
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、シーラントフィルムなどを積層した積層フィルムに加工され、その後包装袋に加工される。シーラントフィルムとしては、未延伸線状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、未延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)フィルムなどが挙げられる。
【0100】
本発明の積層フィルムの層構成の例としては、例えば、ONY/接着剤/LLDPE、ONY/接着剤/CPP、ONY/接着剤/Al/接着剤/CPP、ONY/接着剤/Al/接着剤/LLDPE、ONY/PE/Al/接着剤/LLDPE、ONY/接着剤/Al/PE/LLDPE、PET/接着剤/ONY/接着剤/LLDPE、PET/接着剤/ONY/PE/LLDPE、PET/接着剤/ONY/接着剤/Al/接着剤/LLDPE、PET/接着剤/Al/接着剤/ONY/接着剤/LLDPE、PET/接着剤/Al/接着剤/ONY/PE/LLDPE、PET/PE/Al/PE/ONY/PE/LLDPE、PET/接着剤/ONY/接着剤/CPP、PET/接着剤/ONY/接着剤/Al/接着剤/CPP、PET/接着剤/Al/接着剤/ONY/接着剤/CPP、ONY/接着剤/PET/接着剤/LLDPE、ONY/接着剤/PET/PE/LLDPE、ONY/接着剤/PET/接着剤/CPP、ONY/接着剤/Al/接着剤/PET/接着剤/LLDPE、ONY/接着剤/Al/接着剤/PET/PE/LLDPE、ONY/PE/LLDPE、ONY/PE/CPP、ONY/PE/Al/PE、ONY/PE/Al/PE/LLDPE、OPP/接着剤/ONY/接着剤/LLDPE、ONY/接着剤/EVOH/接着剤/LLDPE、ONY/接着剤/EVOH/接着剤/CPP、ONY/接着剤/アルミ蒸着PET/接着剤/LLDPE、ONY/接着剤/アルミ蒸着PET/接着剤/ONY/接着剤/LLDPE、ONY/接着剤/アルミ蒸着PET/PE/LLDPE、ONY/PE/アルミ蒸着PET/PE/LLDPE、ONY/接/アルミ蒸着PET/接着剤/CPP、PET/接着剤/アルミ蒸着PET/接着剤/ONY/接着剤/LLDPE、CPP/接着剤/ONY/接着剤/LLDPE、ONY/接着剤/アルミ蒸着LLDPE、ONY/接着剤/アルミ蒸着CPPなどが挙げられる。
なお上記層構成に用いた各略称は以下の通りである。
/ :層の境界を表わす。
ONY:二軸延伸ポリアミドフィルム、又は塗布層を有する二軸延伸ポリエステルフィルム
PET:延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム
LLDPE:未延伸線状低密度ポリエチレンフィルム
CPP:未延伸ポリプロピレンフィルム
OPP:延伸ポリプロピレンフィルム
PE:押出しラミネート又は未延伸の低密度ポリエチレンフィルム
Al:アルミニウム箔
EVOH:エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂
接着剤:フィルム同士を接着させる接着剤層
アルミ蒸着:アルミニウムが蒸着されていることを表わす。
【0101】
本発明の無機薄膜層(D)を有する二軸延伸ポリアミドフィルムを使用した積層フィルムの層構成の例としては、例えば、ONY/無機薄膜層/接着剤/CPP、PET/接着剤/ONY/無機薄膜層/接着剤/LLDPE、PET/接着剤/ONY/無機薄膜層/PE/LLDPE、PET/接着剤/ONY/無機薄膜層/接着剤/CPP、ONY/無機薄膜層/接着剤/PET/接着剤/LLDPE、ONY/無機薄膜層/接着剤/PET/PE/LLDPE、ONY/無機薄膜層/接着剤/PET/接着剤/CPP、ONY/無機薄膜層/PE/LLDPE、ONY/無機薄膜層/PE/CPP、OPP/接着剤/ONY/無機薄膜層/接着剤/LLDPE、ONY/無機薄膜層/接着剤/EVOH/接着剤/LLDPE、ONY/無機薄膜層/接着剤/EVOH/接着剤/CPP、CPP/接着剤/ONY/無機薄膜層/接着剤/LLDPE、などが挙げられる。
なお上記層構成に用いた各略称は以下の通りである。
/ :層の境界を表わす
ONY/無機薄膜層:無機薄膜層(D)を有する二軸延伸ポリアミドフィルム
PET:延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム
LLDPE:未延伸線状低密度ポリエチレンフィルム
CPP:未延伸ポリプロピレンフィルム
OPP:延伸ポリプロピレンフィルム
PE:押出しラミネート又は未延伸の低密度ポリエチレンフィルム
EVOH:エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂
接着剤:フィルム同士を接着させる接着剤層
【実施例
【0102】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、フィルムの評価は次の測定法によって行った。特に記載しない場合は、測定は23℃、相対湿度65%の環境の測定室で行った。
【0103】
(1)フィルムのヘイズ値
(株)東洋精機製作所社製の直読ヘイズメーターを使用し、JIS-K-7105に準拠し測定した。
【0104】
(2)フィルムの厚み
フィルムのTD方向に10等分して(幅が狭いフィルムについては厚みを測定できる幅が確保できる幅になるよう当分する)、MD方向に100mmのフィルムを10枚重ねで切り出し、温度23℃、相対湿度65%の環境下で2時間以上コンディショニングする。テスター産業製厚み測定器で、それぞれのサンプルの中央の厚み測定し、その平均値を厚みとした。
【0105】
(3)フィルムのバイオマス度測定
得られたフィルムバイオマス度は、ASTM D6866-16 Method B (AMS)に示された放射性炭素(C14)測定により行った。
(4)フィルムの熱収縮率
試験温度160℃、加熱時間10分間とした以外は、JIS C2318に記載の寸法変化試験法に準じて下記式によって熱収縮率を測定した。
熱収縮率=[(処理前の長さ-処理後の長さ)/処理前の長さ]×100(%)
(5)フィルムの衝撃強度
(株)東洋精機製作所製のフィルムインパクトテスターを使用し測定した。測定値は、厚み15μm当たりに換算してJ(ジュール)/15μmで表した。
(6)フィルムの動摩擦係数
JIS-C2151に準拠し、下記条件によりフィルム巻外面同士の動摩擦係数を評価した。なお、試験片の大きさは、幅130mm、長さ250mm、試験速度は150mm/分で行った。
(7)フィルムの突刺し強度
食品衛生法における「食品、添加物等の規格基準 第3:器具及び容器包装」(昭和57年厚生省告示第20号)の「2.強度等試験法」に準拠して測定した。先端部直径0.7mmの針を、突刺速度50mm/分でフィルムに突刺、針がフィルムを貫通する際の強度を測定して、突刺強度とした。測定は常温(23℃)で行い、得られたフィルムの突き刺し強度(単位はN)をフィルムの実厚みで除した数値を突き刺し強度(単位N/μm)とした。
【0106】
(8)フィルムの面配向度
サンプルはフィルムの幅方向の中央位置から取得した。サンプルについてJIS K 7142-1996 A法により、ナトリウムD線を光源としてアッベ屈折計によりフィルム長手方向の屈折率(nx)、幅方向の屈折率(ny)を測定し、式(1)の計算式により面配向係数を算出した。
面配向係数(ΔP)=(nx+ny)/2-nz (1)
(9)フィルムの弾性率
得られた二軸延伸ポリアミドフィルムを23度、50%RHに調整した室内で2時間静置したのち、フィルムのMD、TDの測定方向に150mm(標点間距離100mm)、測定方向に対して垂直方向に15mmの短冊状に裁断してサンプルを得た。1kNのロードセルとサンプル着とを取り付けた引っ張り試験機(島津製作所製AG-1)を用いて、試験速度200mm/minにて引っ張り試験を実施した。得られた荷重―伸び曲線の勾配から弾性率を算出した。サンプル数3で測定を行い、それぞれの平均値を算出した。
【0107】
(10)フィルムの耐屈曲ピンホール性
理学工業社製のゲルボフレックステスターを使用し、下記の方法により屈曲疲労ピンホール数を測定した。
実施例で作製したフィルムにポリエステル系接着剤を塗布後、厚み40μmの線状低密度ポリエチレンフィルム(L-LDPEフィルム:東洋紡株式会社製、L4102)をドライラミネートし、40℃の環境下で3日間エージングを行いラミネートフィルムとした。得られたラミネートフィルムを12インチ×8インチに裁断し、直径3.5インチの円筒状にし、円筒状フィルムの一方の端をゲルボフレックステスターの固定ヘッド側に、他方の端を可動ヘッド側に固定し、初期の把持間隔を7インチとした。ストロークの最初の3.5インチで440度のひねりを与え、その後2.5インチは直線水平運動で全ストロークを終えるような屈曲疲労を、40回/分の速さで1000回行い、ラミネートフィルムに発生したピンホール数を数えた。なお、測定は1℃の環境下で行った。テストフィルムのL-LDPEフィルム側を下面にしてろ紙(アドバンテック、No.50)の上に置き、4隅をセロテープ(登録商標)で固定した。インク(パイロット製インキ(品番INK-350-ブルー)を純水で5倍希釈したもの)をテストフィルム上に塗布し、ゴムローラーを用いて一面に延展させた。不要なインクをふき取った後、テストフィルムを取り除き、ろ紙に付いたインクの点の数を計測した。
【0108】
(11)フィルムの耐摩擦ピンホール性
堅牢度試験機(東洋精機製作所)を使用し、下記の方法により摩擦試験を行い、ピンホール発生距離を測定した。
上記耐屈曲ピンホール性評価で作製したものと同様のラミネートフィルムを、四つ折りにして角を尖らせたテストサンプルを作製し、堅牢度試験機にて、振幅:25cm、振幅速度:30回/分、加重:100g重で、段ボール内面に擦りつけた。段ボールは、K280×P180×K210(AF)=(表材ライナー×中芯材×裏材ライナー(フルートの種類))を使用した。
ピンホール発生距離は、以下の手順に従い算出した。ピンホール発生距離が長いほど、耐摩擦ピンホール性が優れている。
まず、振幅100回距離2500cmで摩擦テストを行った。ピンホールが開かなかった場合は振幅回数20回距離500cm増やして摩擦テストを行った。またピンホールが開かなかった場合は更に振幅回数20回距離500cm増やして摩擦テストを行った。こそれを繰り返しピンホールが開いた距離に×をつけて水準1とした。振幅100回距離2500cmでピンホールが開いた場合は振幅回数20回距離500cm減らして摩擦テストを行った。またピンホールが開いた場合は更に振幅回数20回距離500cm減らして摩擦テストを行った。これを繰り返しピンホールが開かなかった距離に○をつけて水準1とした。
次に水準2として、水準1で最後が○だった場合は、振幅回数を20回増やして摩擦テストを行い、ピンホールが開かなかったら○、ピンホールが開いたら×を付けた。水準1で最後が×だった場合は、振幅回数を20回減らして摩擦テストを行い、ピンホールが開かなかったら○、ピンホールが開いたら×を付けた。
更に水準3~20として、前の水準で○だった場合は、振幅回数を20回増やして摩擦テストを行い、ピンホールが開かなかったら○、ピンホールが開いたら×を付ける。前の水準で×だった場合は、振幅回数を20回減らして摩擦テストを行い、ピンホールが開かなかったら○、ピンホールが開いたら×を付ける。これを繰り返し、水準3~20に○又は×をつける。
例えば、表1のような結果が得られた。表1を例にしてピンホール発生距離の求め方を説明する。
各距離の○と×の試験数を数える。
最もテスト回数の多かった距離を中央値とし、係数をゼロとする。それより距離が長い場合は、500cmごとに係数を+1、+2、+3・・・、距離が短い場合は、500cmごとに係数を-1、-2、-3・・・とした。
水準1~20までの全ての試験で、穴が開かなかった試験数と穴が開いた試験数を比較して、次のA及びBの場合についてそれぞれの式で摩擦ピンホール発生距離を算出した。
A;全ての試験で、穴が開かなかった試験数が穴が開いた試験数以上の場合
摩擦ピンホール発生距離=中央値+500×(Σ(係数×穴が開かなかった試験数)/穴が開かなかった試験数)+1/2)
B:全ての試験で、穴が開かなかった試験数が穴が開いた試験数未満の場合
摩擦ピンホール発生距離=中央値+500×(Σ(係数×穴が開いた試験数)/穴が開いた試験数)-1/2)
【0109】
【表1】
【0110】
(12)ポリエチレン系シーラントとのラミネート強度
耐屈曲ピンホール性評価の説明に記載した方法と同様にして作製したラミネートフィルムを幅15mm×長さ200mmの短冊状に切断し、ラミネートフィルムの一端を二軸延伸ポリアミドフィルムと線状低密度ポリエチレンフィルムとの界面で剥離し、(株式会社島津製作所製、オートグラフ)を用い、温度23℃、相対湿度50%、引張り速度200mm/分、剥離角度90°の条件下でラミネート強度をMD方向とTD方向にそれぞれ3回測定しその平均値で評価した。
【0111】
(13)耐水ラミネート強度(水付着条件下でのラミネート強度)
(12)のラミネート強度を測定する際に、上記短冊状ラミネートフィルムの剥離界面に水をスポイトで垂らしながらラミネート強度を測定した。MD方向とTD方向にそれぞれ3回測定し平均値で評価した。
(13)ダイリップ出口に生成する熱劣化物の発生周期
ダイスのリップの掃除を行ってからフィルムの製膜を開始し、ダイスのリップに熱劣化物が発生するまでの時間を観察した。
A:36時間以上の製膜でも熱劣化物の発生が無く、フィルムへの異物付着がない。
B:24~36時間の間でダイスのリップに熱劣化物が付着する。
C:24時間以内にダイスのリップに熱劣化物が付着し、フィルムに異物が発生する。
【0112】
(14)原料ポリアミドの相対粘度
0.25gのポリアミドを25mlのメスフラスコ中で1.0g/dlの濃度になるように96%硫酸で溶解したポリアミド溶液を20℃にて相対粘度を測定した。
(15)原料ポリアミドの融点
JIS K7121に準じてセイコーインスルメンツ社製、SSC5200型示差走査熱量測定器を用いて、窒素雰囲気中で、試料重量:10mg、昇温開始温度:30℃、昇温速度:20℃/分で測定し、吸熱ピーク温度(Tmp)を融点として求めた。
【0113】
[実施例1-1]
押出機2台と380mm巾の共押出Tダイよりなる装置を使用し、フィードブロック法で機能層(B層)/基材層(A層)/機能層(B層)の構成で積層してTダイから下記樹脂組成物の溶融樹脂をフィルム状に押出し、20℃に温調した冷却ロールにキャストし静電密着させて厚み200μmの未延伸フィルムを得た。
基材層(A層)と機能層(B層)の樹脂組成物は以下のとおりである。
基材層(A層)を構成する樹脂組成物:ポリアミド6(東洋紡株式会社製、相対粘度2.8、融点220℃)89.5質量部、及びポリブチレンテレフタレートアジペート(BASF社製 商品名「エコフレックス」)、ガラス転移温度-31.3℃、融点120℃)10.5質量部からなるポリアミド樹脂組成物。
機能層(B層)を構成する樹脂組成物:ポリアミド6(東洋紡株式会社製、相対粘度2.8、融点220℃)95質量部、及びポリアミドMXD6(三菱瓦斯化学株式会社製、相対粘度2.1、融点237℃)5.0質量部、多孔質シリカ微粒子(富士シリシア化学株式会社製、平均粒子径2.0μm、細孔容積1.6ml/g)0.54質量部及び脂肪酸ビスアマイド(共栄社化学株式会社製エチエンビスステアリン酸アミド)0.15質量部からなる樹脂組成物。
なお、二軸延伸ポリアミドフィルムの合計厚みが15μm、基材層(A層)の厚みが9μm、機能層(B層)の厚みが表裏それぞれ3μmずつになるように、フィードブロックの構成と押出機の吐出量を調整した。
【0114】
得られた未延伸フィルムを、ロール式延伸機に導き、ロールの周速差を利用して、80℃でMD方向に1.73倍延伸した後、70℃でさらに1.85倍延伸した。引き続き、この一軸延伸フィルムを連続的にテンター式延伸機に導き、110℃で予熱した後、TD方向に120℃で1.2倍、130℃で1.7倍、160℃で2.0倍延伸して、218℃で熱固定処理した後、218℃で7%緩和処理を行い、ついで線状低密度ポリエチレンフィルムとドライラミネートする側の表面をコロナ放電処理して二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの評価結果を表2に示す。
【0115】
[実施例1-2~1-11]
基材層(A層)と機能層(B層)の樹脂組成物、熱固定温度などの製膜条件を表2のように変更し、実施例1と同様の方法で二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの評価結果を表2に示す。
【0116】
なお、脂肪族または芳香族脂肪族ポリエステル樹脂はそれぞれ下記のものを用いた。
・PBAT:ポリブチレンアジペートテレフタレート(BASF社製、エコフレックス)
・PBS:ポリブチレンサクシネート(昭和高分子(株)製、ビオノーレ1001)
・PBSA:ポリブチレンサクシネートアジペート(昭和高分子(株)製、ビオノーレ3001)
・PAE:ポリアミドエラストマー(アルケマ社製、ナイロン12/ポリテトラメチレングリコール共重合体、Pebax SA01)
・PEE:無水マレイン酸変性ポリエステルエラストマー(三菱ケミカル(株)製、テファブロック )
【0117】
また、少なくとも原料の一部がバイオマス由来であるポリアミド樹脂はそれぞれ下記のものを用いた。
・ポリアミド11:(集盛社製、相対粘度2.5、融点186℃、バイオマス度100%)
・ポリアミド410:(DSM社製、ECOPaXX Q150-E、融点250℃、バイオマス度70%)
・ポリアミド610:(アルケマ社製、RilsanS SMNO、融点222℃、バイオマス度63%)
・ポリアミド1010:(アルケマ社製、RilsanT TMNO、融点202℃、バイオマス度100%)
【0118】
【表2A】
【0119】
【表2B】
【0120】
表2に示すとおり、実施例のフィルムは耐屈曲ピンホール性と耐摩擦ピンホール性の両方が良好なフィルムが得られた。また、ヘイズが低く透明性が良好で、衝撃強度、突き刺し強度も強く、シーラントフィルムとのラミネート強度も高く、包装用フィルムとして優れていた。また長時間の製膜においても、ダイスのリップに劣化物が付着することなく、安定したフィルムの製膜が可能であった。
【0121】
[比較例1]
表3に示す樹脂組成物及び条件にしたがって、実施例1-1と同様の方法で、二軸延伸ポリアミドフィルムを作製した。樹脂組成物に使用した原料は実施例1と同一である。なお、比較例1-5については以下の方法により二軸延伸ポリアミドフィルムを作製した。
【0122】
[比較例1-5]
押出機1台と380mm巾の単層Tダイよりなる装置を使用し、Tダイから下記樹脂組成物の溶融樹脂をフィルム状に押出し、20℃に温調した冷却ロールにキャストし、静電密着させて厚み180μmの未延伸フィルムを得た。
層を構成する樹脂組成物:ポリアミド6(東洋紡株式会社製、相対粘度2.8、融点220℃)97質量部、及び無水マレイン酸変性ポリエステルエラストマー(三菱ケミカル社製、プリマロイAP GQ131)3.0質量部からなるポリアミド樹脂組成物。多孔質シリカ微粒子(富士シリシア化学株式会社製、平均粒子径2.0μm、細孔容積1.6ml/g)0.09質量部。エチレンビスステアリン酸アミドを300ppm。
次いで、得られた未延伸フィルムを65℃のロール延伸機により3.0倍に縦延伸し、次いで110℃の雰囲気のテンター延伸機により4.0倍に横延伸し、さらに同テンターにより210℃の雰囲気中で熱処理して厚さ15μmの単層のポリアミド系フィルムを調製した。
【0123】
比較例1で作製した二軸延伸ポリアミドフィルムの物性および各種評価結果を表3に示す。
【0124】
【表3】
【0125】
表3に示すとおり、比較例1-1の耐屈曲ピンホール性を改質する材料を含まない二軸延伸ポリアミドフィルムは、耐屈曲ピンホール性が劣っていた。比較例1-2は耐屈曲ピンホール性を改質する材料が多すぎるため、耐屈曲ピンホール性は優れるものの、フィルムのヘイズ値が高く、またフィルム衝撃強度や突き刺し強度、耐摩擦ピンホール性が劣っていた。比較例1-3、1-4および1-5は表層側にも耐屈曲ピンホール性を改質する材料を含むため、摩擦ピンホール性に劣っていた。また、押し出し工程でのダイスのリップへの劣化物付着が発生した。
【0126】
[実施例2]
実施例1-1で作製した二軸延伸ポリアミドフィルムを使用して以下の(1)~(9)の構成の積層体を作製し、(1)~(9)の積層体を使用して三方シールタイプ及びピロータイプの包装袋を作製した。外観が良好で落下衝撃テストで破れにくい包装袋を作製できた。
(1)二軸延伸ポリアミドフィルム層/印刷層/ポリウレタン系接着剤層/直鎖状低密度ポリエチレンフィルムシーラント層。
(2)二軸延伸ポリアミドフィルム層/印刷層/ポリウレタン系接着剤層/無延伸ポリプロピレンフィルムシーラント層。
(3)二軸延伸PETフィルム層/印刷層/ポリウレタン系接着剤層/二軸延伸ポリアミドフィルム層/ポリウレタン系接着剤層/無延伸ポリプロピレンフィルムシーラント層
(4)二軸延伸PETフィルム層/印刷層/ポリウレタン系接着剤層/二軸延伸ポリアミドフィルム層/ポリウレタン系接着剤層/直鎖状低密度ポリエチレンフィルムシーラント層
(5)二軸延伸ポリアミドフィルム層/アンカーコート層/無機薄膜層/無機薄膜保護層/印刷層/ポリウレタン系接着剤層/直鎖状低密度ポリエチレンフィルムシーラント層
(6)直鎖状低密度ポリエチレンフィルムシーラント層/ポリウレタン系接着剤層/二軸延伸ポリアミドフィルム層/アンカーコート層/無機薄膜層/ポリウレタン系接着剤層/直鎖状低密度ポリエチレンフィルムシーラント層
(7)直鎖状低密度ポリエチレンフィルム層/ポリウレタン系接着剤層/二軸延伸ポリアミドフィルム層/アンカーコート層/無機薄膜層/ポリウレタン系接着剤層/直鎖状低密度ポリエチレンフィルム層/低密度ポリエチレン/紙/低密度ポリエチレン/直鎖状低密度ポリエチレンフィルムシーラント層
(8)二軸延伸ポリアミドフィルム層/アンカーコート層/無機薄膜層/無機薄膜保護層/印刷層/ポリウレタン系接着剤層/無延伸ポリプロピレンフィルムシーラント層
(9)二軸延伸PETフィルム層/無機薄膜層/無機薄膜保護層/印刷層/ポリウレタン系接着剤層/二軸延伸ポリアミドフィルム層/ポリウレタン系接着剤層/イージーピールタイプ無延伸ポリプロピレンフィルムシーラント層
【0127】
[実施例3](塗布層を有する二軸延伸ポリアミドフィルム)
押出機2台と380mm巾の共押出Tダイよりなる装置を使用し、表4に示す樹脂組成物について、フィードブロック法で機能層(B層)/基材層(A層)/機能層(B層)の構成で積層してTダイから溶融樹脂をフィルム状に押出し、20℃に温調した冷却ロールにキャストし静電密着させて厚み200μmの未延伸フィルムを得た。樹脂組成物に使用した原料は実施例1及び比較例1と同一である。
【0128】
得られた未延伸フィルムを、ロール式延伸機に導き、ロールの周速差を利用して、80℃でMD方向に1.73倍延伸した後、70℃でさらに1.85倍延伸した。引き続き、この一軸延伸フィルムにロールコーターで下記の塗布液(A)を塗布した後、70℃の温風で乾燥させた。連続的にこの一軸延伸フィルムをテンター式延伸機に導き、110℃で予熱した後、TD方向に120℃で1.2倍、130℃で1.7倍、160℃で2.0倍延伸して、218℃で熱固定処理した後、218℃で7%緩和処理を行った。次いで線状低密度ポリエチレンフィルムとドライラミネートする側の表面をコロナ放電処理して二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。ただし、実施例3-4においては、塗布液として下記の塗布液(B):ポリウレタン樹脂の水系分散体を用いた。
【0129】
実施例3で作製した二軸延伸ポリアミドフィルムの物性および各種評価結果を表4に示す。
【0130】
【表4A】
【0131】
【表4B】
【0132】
表4に示すとおり、実施例のフィルムは耐屈曲ピンホール性と耐摩擦ピンホール性の両方が良好なフィルムが得られた。また、ヘイズが低く透明性が良好で、衝撃強度、突刺し強度も強く、シーラントフィルムとの耐水ラミネート強度も高く、包装用フィルムとして優れていた。また長時間の製膜においても、ダイスのリップに劣化物が付着することなく、安定したフィルムの製膜が可能であった。
【0133】
[比較例3]
表5に示す樹脂組成物及び条件にしたがって、実施例3と同様の方法で、塗布層を有する二軸延伸ポリアミドフィルムを作製した。
【0134】
なお、比較例3-5については以下の方法により二軸延伸ポリアミドフィルムを作製した。
押出機1台と380mm巾の単層Tダイよりなる装置を使用し、Tダイから表5に記載の樹脂組成物の溶融樹脂をフィルム状に押出し、20℃に温調した冷却ロールにキャストし、静電密着させて厚み180μmの未延伸フィルムを得た。次いで、得られた未延伸フィルムを、65℃のロール式延伸機によりMD方向に3.0倍に縦延伸した。引き続き、この一軸延伸フィルムにロールコーターで下記の塗布液(A)を塗布した後、70℃の温風で乾燥させた。連続的にこの一軸延伸フィルムをテンター式延伸機に導き、110℃の雰囲気のテンター延伸機により4.0倍に横延伸し、さらに同テンターにより210℃の雰囲気中で熱処理して、厚さ15μmの単層のポリアミド系フィルムを作製した。
【0135】
塗布液(A):アクリルグラフト共重合ポリエステルの水系分散体
攪拌機、温度計および部分還流式冷却器を具備したステンレススチール製オートクレーブにジメチルテレフタレート466質量部、ジメチルイソフタレート466質量部、ネオペンチルグリコール401質量部、エチレングリコール443質量部、およびテトラ-n-ブチルチタネート0.52質量部を仕込み、160~220℃で4時間かけてエステル交換反応を行った。次いでフマル酸23質量部を加えて200℃から220℃まで1時間かけて昇温し、エステル化反応を行った。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧したのち0.2mmHgの減圧下で1時間30分攪拌しながら反応させてポリエステルを得た。得られたポリエステルは淡黄色透明で、ガラス転移温度60℃、重量平均分子量は12000であった。NMR測定等により得られた組成は次の通りであった。
・ジカルボン酸成分
テレフタル酸 48モル%
イソフタル酸 48モル%
フマル酸 4モル%
・ジオール成分
ネオペンチルグリコール 50モル%
エチレングリコール 50モル%
【0136】
攪拌器、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応器に、上記ポリエステル樹脂75質量部とメチルエチルケトン56質量部とイソプロピルアルコール19質量部とを入れ65℃で加熱、攪拌し樹脂を溶解した。樹脂が完溶した後、メタクリル酸17.5質量部とアクリル酸エチル7.5質量部の混合物と、アゾビスジメチルバレロニトリル1.2質量部とを25質量部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を0.2ml/分でポリエステル溶液中に滴下し、滴下終了後さらに2時間攪拌を続けた。反応溶液から分析用のサンプリング(5g)を行った後、水300質量部とトリエチルアミン25質量部を反応溶液に加え、1時間攪拌してグラフト化ポリエステルの分散体を調整した。その後、得られた分散体の温度を100℃に上げ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のトリエチルアミンを蒸留により溜去して共重合ポリエステル水系分散体を得た。
【0137】
得られた分散体は、白色で平均粒子径300nm、25℃におけるB型粘度は50センチポワズであった。この分散体5gに重水1.25gを添加して固形分濃度を20質量%とした後、DSSを加えて、125MHz13C-NMRを測定した。ポリエステル主鎖のカルボニル炭素のシグナル(160-175ppm)の半値幅は∞(シグナルが検出されない)であり、グラフト部分のメタクリル酸のカルボニル炭素のシグナル(181-186ppm)の半値幅は110Hzであった。グラフト化反応終了時点でサンプリングした溶液を100℃で8時間、真空下で乾燥を行い、その固形分について酸価の測定、ポリエステルのグラフト効率の測定(NMRの測定)、および加水分解によるグラフト部分の分子量の測定を行った。固形分の酸価は2300eq./10 gであった。H-NMRの測定では、フマル酸由来のシグナル(δ=6.8-6.9ppm、doublet)が全く検出されなかったことから、ポリエステルのグラフト効率は100%であることを確認した。グラフト部分の分子量は、重量平均分子量10000であった。
しかる後、上記の如く得られた水系分散体を、固形分濃度5質量%になるように水で希釈して塗布液(A)を得た。
【0138】
塗布液(B):ポリウレタン樹脂の水系分散体
ポリウレタンおよび水系分散液の調製;ジカルボン酸成分としてアジピン酸を;そしてグリコール成分として1、4-ブタンジオール60モル%(グリコール成分の)、およびビスフェノールAのプロピレンオキサイド(1モル)付加物40モル%を用いて、Tgが-5℃のポリエステル(ポリエステルポリオール)を得た。このポリエステルにトルエンジイソシアネートを作用させてウレタンポリマーを得た。これをプレポリマーとし、1、6-ヘキサンジオールを作用させて鎖延長すると共にアミノカルボン酸塩を末端に反応させ、水不溶性でかつ水分散性のポリウレタンを得た。これを撹拌しながら熱水中に分散させ、25%水系分散液を得た。
上記ポリウレタンの水系分散液を固形分が5質量%になるように、イオン交換水およびイソプロピルアルコールの等量混合液中に加え希釈して塗布液(B)を得た。
【0139】
比較例3で作製した二軸延伸ポリアミドフィルムの物性および各種評価結果を表5に示す。
【0140】
【表5】
【0141】
表5に示すとおり、比較例3-1の耐屈曲ピンホール性を改質する材料を含まない二軸延伸ポリアミドフィルムは、耐屈曲ピンホール性が劣っていた。比較例3-2は耐屈曲ピンホール性を改質する材料が多すぎるため、耐屈曲ピンホール性は優れるものの、フィルムのヘイズ値が高く、またフィルム衝撃強度や突刺し強度、耐摩擦ピンホール性が劣っていた。比較例3-3、3-4および3-5は表層側にも耐屈曲ピンホール性を改質する材料を含むため、摩擦ピンホール性に劣っていた。また、押し出し工程でのダイスのリップへの劣化物付着が発生した。
【0142】
[実施例4](無機薄膜層を有する二軸延伸ポリアミドフィルム)
基材層(A層)と機能層(B層)の樹脂組成物、熱固定温度などの製膜条件を表6のように変更し、実施例1-1と同様の方法で二軸延伸フィルムを得た。樹脂組成物に使用した原料は実施例1及び比較例1と同一である。
【0143】
次に得られた二軸延伸ポリアミドフィルムのコロナ処理を行った面に以下の方法で二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物薄膜層を形成した。
<二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物(SiO/A1)無機薄膜層の形成>
得られた二軸延伸ポリアミドフィルムのコロナ処理を行った面に二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物の無機薄膜層を電子ビーム蒸着法で形成した。蒸着する方法は、フィルムを連続式真空蒸着機の巻出し側にセットし、冷却金属ドラムを介して走行させフィルムを巻き取る。この時、連続式真空蒸着機を10-4Torr以下に減圧し、冷却ドラムの下部よりアルミナ製るつぼに蒸着源として、3mm~5mm程度の粒子状SiO(純度99.9%)とA1(純度99.9%)とを用いた。得られた無機薄膜層(SiO/A1複合酸化物層)の膜厚は13nmであった。またこの複合酸化物層の組成は、SiO/A1(質量比)=60/40であった。
【0144】
ただし、実施例4-5においては、無機薄膜層として以下の方法で酸化アルミニウムの無機薄膜層を形成した。
<酸化アルミニウム(A1)無機薄膜層の形成>
得られた二軸延伸ポリアミドフィルムのコロナ処理を行った面に酸化アルミニウムの無機薄膜層を電子ビーム蒸着法で形成した。酸化アルミニウムを蒸着する方法は、フィルムを連続式真空蒸着機の巻出し側にセットし、冷却金属ドラムを介して走行させフィルムを巻き取る。この時、連続式真空蒸着機を10-4Torr以下に減圧し、冷却ドラムの下部よりアルミナ製るつぼに純度99.99%の金属アルミニウムを装填し、金属アルミニウムを加熱蒸発させ、その蒸気中に酸素を供給し酸化反応させながらフィルム上に付着堆積させ、厚さ30nmの酸化アルミニウム膜を形成した。
【0145】
実施例4で作製した二軸延伸ポリアミドフィルムの物性および各種評価結果を表6に示す。
【0146】
【表6A】
【0147】
【表6B】
【0148】
【表6C】
【0149】
表6に示すとおり、実施例のフィルムは耐屈曲ピンホール性と耐摩擦ピンホール性の両方が良好なフィルムが得られた。また、ヘイズが低く透明性が良好でガスバリア性の高いフィルムが得られた。また、衝撃強度、突刺し強度も強く、包装用フィルムとして優れていた。また長時間の製膜においても、ダイスのリップに劣化物が付着することなく、安定したフィルムの製膜が可能であった。
【0150】
[比較例4]
基材層(A層)と機能層(B層)の樹脂組成物、熱固定温度などの製膜条件を表7のように変更し、比較例1と同様の方法で二軸延伸フィルムを得た。次に得られた二軸延伸ポリアミドフィルムのコロナ処理を行った面に、前記の二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物薄膜層を形成した。なお、参考例4-3においては、無機薄膜層の形成をしなかった。
【0151】
比較例4で作製した二軸延伸ポリアミドフィルムの物性および各種評価結果を表7に示す。
【0152】
【表7】
【0153】
表7に示すとおり、比較例4-1の耐屈曲ピンホール性を改質する材料を含まない二軸延伸ポリアミドフィルムは、耐屈曲ピンホール性が劣っていた。比較例4-2では耐屈曲ピンホール性を改質する材料が少なすぎるためフィルムの耐屈曲ピンホール性が劣っていた。参考例4-3では無機薄膜層の形成をしなかったので、酸素透過度が大きくガスバリア性フィルムとしては適さなかった。比較例4-4では耐屈曲ピンホール性を改質する材料が多すぎるため、耐屈曲ピンホール性は優れるものの、フィルムの衝撃強度、突刺し強度、耐摩擦ピンホール性が劣っていた。比較例4-5では表層となる機能層が耐屈曲ピンホール性を改質する材料を含むため、耐摩擦ピンホール性に劣っていた。また、押し出し工程でのダイスのリップへの劣化物付着が発生した。比較例4-6及び4-7では耐屈曲ピンホール性を改質する材料として従来使用されているポリアミドエラストマー及びポリエステルエラストマーを使用したため、耐屈曲ピンホール性は優れるものの、フィルムの衝撃強度、突刺し強度、耐摩擦ピンホール性が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、耐衝撃性及び耐屈曲ピンホール性と耐摩擦ピンホール性が同時に優れていることから、食品包装等の包装材料の用途に好適に用いることができる。さらに、ダイス内部でエラストマー成分が劣化することがないので、長時間にわたり、ダイス内面への劣化物の付着やダイスリップ出口への目ヤニの付着を抑制でき、生産を止めてダイスのリップを掃除する頻度を低減でき、長時間の連続生産を可能にすることができる。
【符号の説明】
【0155】
1:堅牢度試験機のヘッド部
2:段ボール板
3:サンプル保持用の台紙
4:4つ折りしたフィルムサンプル
5:擦る振幅方向


図1