(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】充電装置および充電方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/04 20060101AFI20250708BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20250708BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20250708BHJP
【FI】
H02J7/04 C
H02J7/04 A
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2022551209
(86)(22)【出願日】2021-08-24
(86)【国際出願番号】 JP2021030892
(87)【国際公開番号】W WO2022064928
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2020159777
(32)【優先日】2020-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤木 貴文
(72)【発明者】
【氏名】上野 勉
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-014474(JP,A)
【文献】特開2007-068264(JP,A)
【文献】特開2015-037346(JP,A)
【文献】特開2016-015813(JP,A)
【文献】特開2020-119320(JP,A)
【文献】特開2011-234526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/04
H01M 10/44
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組電池を充電するために直流の充電電圧および充電電流を出力する、直列接続された複数のコンバータと、
前記コンバータと通信可能に接続される管理ユニットと、を備え、
前記管理ユニットは、
充電開始前の前記組電池の電圧値を取得し、
取得した電圧値に基づき前記組電池に大電流が流れない程度の、
充電開始前の前記組電池の電圧値より大きい第1電圧値に前記充電電圧を設定して前記複数のコンバータに前記組電池の充電を開始させ、
充電開始後に前記充電電圧を前記第1電圧値より高い第2電圧値に上昇させて前記複数のコンバータに前記組電池の充電を行わせ、
前記充電電流を充電開始時の第1電流値から充電開始後に上昇させる、充電装置。
【請求項2】
組電池を充電するために直流の充電電圧および充電電流を出力する、直列接続された複数のコンバータと、
前記コンバータと通信可能に接続される管理ユニットと、を備え、
前記管理ユニットは、
充電開始前の前記組電池の電圧値を取得し、
取得した電圧値に基づき前記組電池に大電流が流れない程度の第1電圧値に前記充電電圧を設定して前記複数のコンバータに前記組電池の充電を開始させ、
充電開始後に前記充電電圧を前記第1電圧値より高い第2電圧値に上昇させて前記複数のコンバータに前記組電池の充電を行わせ、
前記充電電流を充電開始時の第1電流値から充電開始後に上昇させ、
前記コンバータは、それぞれ、上限電流値を超える出力電流が流れると出力電圧を低下させる保護機能を有する、充電装置。
【請求項3】
前記
複数のコンバータは、出力電圧が一定値に設定される
ベースコンバータと、出力電圧および出力電流が調整される
調整コンバータとを有し
、
前記充電電圧は、前記ベースコンバータの出力電圧と前記調整コンバータの出力電圧の合計電圧である、請求項1又は請求項2に記載の充電装置。
【請求項4】
前記管理ユニットは、前記充電電流が前記第1電流値より高い第2電流値に到達した後、定電圧充電モードに切り替わるまでは前記第2電流値の充電電流で前記複数のコンバータに前記組電池の充電を行わせる、請求項1~請求項3のいずれかに記載の充電装置。
【請求項5】
前記管理ユニットは、前記充電装置に入力される交流電源の電圧に応じて、前記第2電流値を変更する、請求項4に記載の充電装置。
【請求項6】
表示部を更に備え、
前記組電池の電圧値又は前記電圧値に相当する前記組電池の充電状態(SOC)を前記表示部に表示する、請求項1~請求項5のいずれかに記載の充電装置。
【請求項7】
充電を終了する前記組電池の目標電圧値又は目標SOC値又は充電時間の入力を受け付ける、請求項1~請求項6のいずれかに記載の充電装置。
【請求項8】
前記管理ユニットは、充電開始前の前記組電池の電圧値を通信で取得する、請求項1~請求項7のいずれかに記載の充電装置。
【請求項9】
組電池を充電するために直流の充電電圧および充電電流を出力する、直列接続された複数のコンバータと、
前記コンバータと通信可能に接続される管理ユニットと、を備え、
前記複数のコンバータは、出力電圧が一定値に設定されるベースコンバータと、出力電圧および出力電流が調整される調整コンバータとを有し、
前記充電電圧は、前記ベースコンバータの出力電圧と前記調整コンバータの出力電圧の合計電圧であり、
前記管理ユニットは、
充電開始前の前記組電池の電圧値を取得し、
取得した電圧値に基づき前記組電池に大電流が流れない程度の第1電圧値に前記充電電圧を設定して前記複数のコンバータに前記組電池の充電を開始させ、
充電開始後に、前記調整コンバータの出力電圧を調整することで前記充電電圧を前記第1電圧値より高い第2電圧値に上昇させて、前記ベースコンバータおよび調整コンバータに前記組電池の充電を行わせる、充電装置。
【請求項10】
組電池を充電するために直流の充電電圧および充電電流を出力する、直列接続された複数のコンバータと、前記コンバータと通信可能に接続される管理ユニットと、を備える充電装置を用いて組電池を充電する充電方法であって、
充電開始前の前記組電池の電圧値を前記管理ユニットにより取得し、
取得した電圧値に基づき前記組電池に大電流が流れない程度の、
充電開始前の前記組電池の電圧値より大きい第1電圧値に前記充電電圧を設定して前記複数のコンバータによる前記組電池の充電を開始し、
充電開始後に前記充電電圧を前記第1電圧値より高い第2電圧値に上昇させて前記複数のコンバータによる前記組電池の充電を行い、
前記充電電流を充電開始時の第1電流値から充電開始後に上昇させる、充電方法。
【請求項11】
組電池を充電するために直流の充電電圧および充電電流を出力する、直列接続されたベースコンバータおよび調整コンバータと、前記コンバータと通信可能に接続される管理ユニットと、を備える充電装置を用いて組電池を充電する充電方法であって、
前記充電電圧は、前記ベースコンバータの出力電圧と前記調整コンバータの出力電圧の合計電圧であり、
充電開始前の前記組電池の電圧値を前記管理ユニットにより取得し、
取得した電圧値に基づき前記組電池に大電流が流れない程度の第1電圧値に前記充電電圧を設定して前記複数のコンバータによる前記組電池の充電を開始し、
充電開始後に、前記調整コンバータの出力電圧を調整することで前記充電電圧を前記第1電圧値より高い第2電圧値に上昇させて、前記ベースコンバータおよび調整コンバータによる前記組電池の充電を行う、充電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電源からの電力を直流に変換して蓄電モジュールなどの組電池を充電する充電装置および充電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、鉛蓄電池の充電に適した蓄電池の充電方法及び充電器を開示している(特許文献1、段落0001参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、リチウムイオン電池が、自動車用途に加え、産業用途にも適用されている。従来用いられている鉛蓄電池用の充電器は、リチウムイオン電池の充電には適さない場合が多い。
【0005】
リチウムイオン電池セルを複数組み合わせて、蓄電モジュールが作製される。蓄電モジュールを複数組み合わせて、蓄電パックが作製されることもある。蓄電モジュールや蓄電パック(以下、これらを「組電池」とも称する。)は、輸送時には充電状態(SOC)を低く維持されて、システム(蓄電システム、機械駆動システム、移動体など)への設置時または設置後に、充電装置により充電される。
【0006】
また、蓄電システム、機械駆動システム、又は移動体(例えば、大型AGV)を、安定的に運用するために、取替え用の(予備の)組電池を、それらシステムの近くに備蓄する必要性が生じている。そうした取替え用の組電池を、オンサイトで充電するための充電装置が求められている。
【0007】
本発明の一態様は、交流電源からの電力を直流に変換して蓄電モジュールなどの組電池を充電する充電装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る充電装置は、
組電池を充電するために直流の充電電圧および充電電流を出力する、直列接続された複数のコンバータと、
前記コンバータと通信可能に接続される管理ユニットと、を備え、
前記管理ユニットは、
充電開始前の前記組電池の電圧値を取得し、
取得した電圧値に基づき前記組電池に大電流が流れない程度の第1電圧値に前記充電電圧を設定して前記複数のコンバータに前記組電池の充電を開始させ、
充電開始後に前記充電電圧を前記第1電圧値より高い第2電圧値に上昇させて前記複数のコンバータに前記組電池の充電を行わせ、
前記充電電流を充電開始時の第1電流値から充電開始後に上昇させる。
【発明の効果】
【0009】
充電装置の管理ユニットを上記態様のように動作させることで、必要な充電電圧を得るべく複数のコンバータを直列接続して用いつつ、安定的に組電池を充電できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】充電装置による充電初期の充電電圧および充電電流の推移を示す図である。
【
図4】充電装置における初期制御を説明するフローチャートである。
【
図5】比較例における充電電圧および充電電流の推移を示す図である。
【
図6】充電装置の充電電圧および充電電流の推移を示す図である。
【
図7】タッチパネルの画面の表示例を示す図である。
【
図8】タッチパネルの画面の表示例を示す図である。
【
図9】タッチパネルの画面の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
充電装置は、組電池を充電するために直流の充電電圧および充電電流を出力する、直列接続された複数のコンバータと、前記コンバータと通信可能に接続される管理ユニットと、を備え、前記管理ユニットは、充電開始前の前記組電池の電圧値を取得し、取得した電圧値に基づき前記組電池に大電流が流れない程度の第1電圧値に前記充電電圧を設定して前記複数のコンバータに前記組電池の充電を開始させ、充電開始後に前記充電電圧を前記第1電圧値より高い第2電圧値に上昇させて前記複数のコンバータに前記組電池の充電を行わせ、前記充電電流を充電開始時の第1電流値から充電開始後に上昇させる。
充電電流を、充電開始時の第1電流値から充電開始後に徐々に上昇させてもよいが、その形態に限定はされない。
充電電流が前記第1電流値より高い第2電流値に到達した後は第2電流値の充電電流で複数のコンバータに組電池の充電を行わせてもよい。
【0012】
上記構成により、必要な充電電圧を得るべく複数のコンバータを直列接続して用いつつ、安定的に組電池を充電できる。管理ユニットは、充電開始前の組電池の電圧値に基づき、充電開始時の充電電圧を設定する。管理ユニットは、低い電流値(第1電流値)から充電電流を上昇させる。そのため、組電池に突入電流などの大電流が流れることを防止できる。
【0013】
前記コンバータは、それぞれ、上限電流値を超える出力電流が流れると出力電圧を低下させる保護機能を有してもよい。
【0014】
直列接続されたコンバータがそれぞれ、上限電流値を超える出力電流が流れると自律的に出力電圧を低下させる保護機能を有していると、出力のハンチングが生じやすい。管理ユニットを上述のように動作させることで(すなわち、充電電圧を第1電圧値から第2電圧値へ上昇させ、並行して充電電流を第1電流値から上昇させることで)、組電池に大電流が流れることを防止して出力のハンチングを防止できる。
【0015】
前記コンバータは、出力電圧が一定値に設定されるコンバータと、出力電圧および出力電流が調整されるコンバータとを有してもよい。
【0016】
一部のコンバータを、出力電圧が一定のコンバータ(以下、「ベースコンバータ」と称する。)とすることで、ベースコンバータの制御のための通信負荷を減らすことができる。充電装置の通信能力を他のコンバータに対する通信や組電池に対する通信に割り当てて、安定的に組電池を充電できる。
【0017】
前記管理ユニットは、前記充電電流が前記第1電流値より高い第2電流値に到達した後、定電圧充電モード(CV充電モード)に切り替わるまでは、すなわち定電流充電モード(CC充電モード)の間は、前記第2電流値の充電電流で前記複数のコンバータに前記組電池の充電を行わせてもよい。
更に、前記管理ユニットは、前記充電装置に入力される交流電源の電圧に応じて、前記第2電流値を変更してもよい。
【0018】
上記構成により、組電池の充電を迅速に行える。また、例えば電源が交流200Vである場合と電源が交流100Vである場合のいずれにも、問題なく充電装置を用いることができ、充電装置の汎用性が向上する。電源は、交流20Vや交流100V以外の電圧帯であってもよい。
【0019】
充電装置は、表示部を更に備えてもよく、前記組電池の電圧値又は前記電圧値に相当する前記組電池の充電状態(SOC)を前記表示部に表示してもよい。
【0020】
上記構成により、ユーザは、充電しようとしている組電池の状態を理解したうえで充電を開始できる。
【0021】
充電装置は、充電を終了する前記組電池の目標電圧値又は目標SOC値又は充電時間の入力を受け付けもよい。
【0022】
状況に応じ、組電池を必ず満充電に充電するとは限らない。上記構成により、ニーズに応じた状態、或いは、組電池が設置される各システムに適合した状態(電圧値、SOC値)に組電池を充電でき、充電装置の汎用性が向上する。
【0023】
以下、図面を参照しながら充電装置の実施形態を説明する。
【0024】
図1(A)に示すように、充電装置10は筐体11を有する。筐体11は、金属板により形成されてもよい。筐体11は、前面11aと、後面11bと、一対の側面11cとを有し、概略直方体の形状を呈している。筐体11は、後述する管理ユニットや、複数のコンバータを内蔵している。
【0025】
前面11aは、斜め上方を向く傾斜面と、傾斜面の下端に連なり充電装置10の設置面に対して縦方向に延びる垂直面とを有する。前面11aの傾斜面に、表示部でありかつ受付部(ユーザインタフェース)であるタッチパネル20が設けられている。傾斜面に設けられたタッチパネル20は、斜め上方からユーザが視認しやすく操作もしやすい。
後面11bは、交流電源が接続される接続端子18を有する。
側面11cは、充電装置10内部を冷却するための開口11eを有する。
【0026】
充電装置10は、可搬タイプであり、その上面に一対の取っ手12を有している。取っ手12は、
図1(A)に破線で示すように、上面に平行な姿勢に折り畳めるようになっている。
充電装置10は、その底面に複数の(本実施形態では4個の)脚部11dを有している。
【0027】
図1(B)に示すように、前面11aの傾斜面に、充電装置10のパワースイッチ14と、後述する組電池との通信インタフェースである第1通信チャンネル15a、第2通信チャンネル15bが設けられている。本実施形態では、傾斜面に更に、CAN通信用の第3通信チャンネル15cが設けられている。
前面11aの垂直面に、組電池のプラス端子とマイナス端子に接続される、充電装置10の充電端子(本実施形態では、充放電用の充放電端子)16が設けられている。
【0028】
図2に示すように、充電装置10は、タッチパネル20と電気的に接続された管理ユニット30と、管理ユニット30と通信可能に接続された第1コンバータ(以下、「調整コンバータ」と称する。)40aと、調整コンバータ40aと通信可能に接続された第2コンバータ(ベースコンバータ)40bとを有する。管理ユニット30は、調整コンバータ40a、ベースコンバータ40bの双方と直接通信可能であってもよい。管理ユニット30は、電池管理ユニット(BMU)であってもよい。
なお、
図2において、破線は通信経路を示す。
【0029】
充電装置10の後面の接続端子18に入力された交流電力は、前述のパワースイッチ14に連動するブレーカ14aを介して、調整コンバータ40aとベースコンバータ40bに供給される。交流電力はまた、降圧した電力を管理ユニット30に供給するための電源32に入力される。
【0030】
ベースコンバータ40bと調整コンバータ40aは、直列接続されている。ベースコンバータ40bのマイナス出力端子は、遮断スイッチ(例えば、リレー)34と電流センサ36を介して、充電装置10の前面の充電端子16に接続されている。ベースコンバータ40bのプラス出力端子は、調整コンバータ40aのマイナス出力端子に接続されている。調整コンバータ40aのプラス出力端子は、充電端子16に接続されている。
充電端子16は、充電ケーブルにより、オンサイトで蓄電モジュール50などの組電池のプラス端子とマイナス端子に接続される。
【0031】
コンバータ40a、40bはそれぞれ、上限電流値(出力制限値)を超える出力電流が流れると自律的に出力電圧を低下させる保護機能を有している。
【0032】
本実施形態は、筐体内に、蓄電モジュール50などの組電池を放電させる放電用回路60が設けられて、単なる充電装置としてではなく、充放電装置として構成されている。放電用回路60は、耐熱性が高いホーロー抵抗を有してもよい。
代替的に、放電用回路を備えずに、単なる充電装置として構成されてもよい。
【0033】
本実施形態における蓄電モジュール50は、直列接続された複数のリチウムイオン電池セル55aと、監視ユニット52とを備える。蓄電モジュール50は、蓄電システム、機械駆動システム、又は移動体といったシステムの近くに備蓄されたものであってもよい。
【0034】
監視ユニット52は、電圧センサを用いて、各電池セル55aの電圧値を検出し、充電装置10の管理ユニット30に通信で送信する。監視ユニット52は、各電池セル55aの電圧値の総和を、蓄電モジュール50の電圧値として、管理ユニット30に送信する。
代替的に、管理ユニット30において各電池セル55aの電圧値の総和を求め、蓄電モジュール50の電圧値として認識してもよい。
管理ユニット30は、充電端子16、16の電圧を測定する電圧センサ(図示せず)を介して、蓄電モジュール50の電圧値を取得してもよい。この構成は、蓄電モジュールが監視ユニット52を有しない場合に好適である。
【0035】
監視ユニット52は更に、温度センサを用いて、蓄電モジュール50の温度を検出し、充電装置10の管理ユニット30に通信で送信する。
本実施形態のように、管理ユニット30が蓄電モジュール50と通信可能に接続される場合(例えば、監視ユニット52と通信可能に接続される場合)、管理ユニット30が、蓄電モジュール50の状態(例えば、電圧)を詳細に把握できる。管理ユニット30が、蓄電モジュール50の各電池セル55aの電圧を把握して、蓄電モジュール50が異常な(例えば、内部短絡が生じている)セル55aを含むか否かを判定してもよい。
【0036】
図3を参照しながら、充電装置10による蓄電モジュール50の充電動作(充電初期制御)を説明する。
図3(A)は、充電装置10から出力される(直列接続されたコンバータ40a、40bから出力される)充電電圧と充電電流の出力制限値を示す。実線は充電電流の出力制限値、破線は充電電圧の出力制限値を示す。
図3(B)は管理ユニット30から調整コンバータ40aへの出力電流の指示値(実線)と出力電圧(破線)の指示値を示し、
図3(C)は管理ユニット30からベースコンバータ40bへの出力電流(実線)の指示値と出力電圧(破線)の指示値を示す。
【0037】
図3(A)に示す、充電装置10における充電開始時の充電電圧(第1電圧値。この例では、50Vを下回る電圧であり、48.0ボルト[V]など)は、後述するように、管理ユニット30が蓄電モジュール50の電圧値を取得して決定される。
充電装置10は充電開始後に、充電電圧を第2電圧値(68Vなど)に上昇させて、コンバータ40a、40bによる蓄電モジュール50の充電を行わせる。
【0038】
図3(A)に示すように、充電装置10における充電開始時の充電電流は、10アンペア[A]以下の低い値(第1電流値。例えば、1A~6A)に設定される。充電装置10は充電開始後に、充電電流を徐々に上昇させ、第2電流値(30Aなど)に到達した後は、その電流値の充電電流で、コンバータ40a、40bによる蓄電モジュール50の充電を行う。
【0039】
図3(B)に示すように、調整コンバータ40aでは、充電開始後に、出力電圧が上昇するとともに、出力電流が徐々に(階段状に)上昇する。
図3(C)に示すように、ベースコンバータ40bでは、出力電圧は一定であり、出力電流は例えば当該コンバータの上限電流値(例えば、33A)で一定である。
【0040】
調整コンバータ40aとベースコンバータ40bの出力電圧の合計が、
図3(A)に示す充電装置10の充電電圧となる。
図3(A)における充電装置10の到達電流値である第2電流値(30A)は、各コンバータの上限電流値(33A)より低い値に設定されている。
【0041】
図3に示した充電初期制御を、
図4のフローチャートを用いて説明する。
先ず、管理ユニット30は、充電開始前の蓄電モジュール50の電圧値を通信で取得する(S10)。
【0042】
管理ユニット30は、取得した電圧値に基づき蓄電モジュール50に突入電流などの大電流が流れない程度の第1電圧値に充電装置10の充電電圧を設定する(S20)。例えば、充電開始前の蓄電モジュール50の電圧値が47.5Vである場合、それに0.5Vを加えた、48.0Vに充電装置10の充電電圧を設定する(S20)。充電電圧設定のために、充電開始前の蓄電モジュール50の電圧値に加算する所定値は、0.5Vに限定はされない。
【0043】
例えば管理ユニット30は、ベースコンバータ40bの出力電圧を34.0Vに設定にし、調整コンバータ40aの出力電圧を14.0Vに設定して、充電装置10の充電開始時の充電電圧を48.0Vにする。
これにより、蓄電モジュール50に突入電流が流れ込むことを防止でき、遮断スイッチ34(
図2参照)へのダメージも抑制できる。
【0044】
次に、管理ユニット30は、充電装置10の充電開始時の充電電流を第1電流値(例えば、1A)に設定し、コンバータ40a、40bによる蓄電モジュール50の充電を開始させる(S30)。第1電流値は予め設定されていてもよく、S30では充電電流の設定を行わずに充電を開始してもよい。
【0045】
図5に、比較例における充電電圧(破線)および充電電流(実線)の推移を示す。この比較例では、充電電圧の出力制限値が67V~68Vで一定に設定され、充電電流の出力制限値が30Aで一定に設定されている。
このような設定で、直列接続されたコンバータ40a、40bによる蓄電モジュール50の充電を開始させると、コンバータ40a、40bにおいて出力のハンチングが生じる可能性がある。
【0046】
より具体的に説明する。充電電圧が67V~68Vであって、充電開始前の蓄電モジュール50の電圧値が47.5Vである場合、電圧差が大きいため、コンバータ40a、40bから蓄電モジュール50に向けて突入電流が流れる可能性がある。
上述のように、各コンバータ40a、40bは、上限電流値(例えば33A)を超える出力電流が流れると自律的に出力電圧を低下させる保護機能を有している。突入電流が流れると、各コンバータ40a、40bは、自律的に出力電圧を低下させる。それらコンバータ40a、40bの保護機能は、独立して作動し、必ずしも同期して(同じタイミングで)作動しない。そのため、一方のコンバータが出力電圧を低下させて一時的に出力電流が低下したことを契機に、他方のコンバータが出力電圧を上昇させて出力電流を上昇させようとすることがある。こうした事象が連続して、出力のハンチングに至る。
【0047】
図4に戻り、本実施形態では管理ユニット30が、蓄電モジュール50に突入電流が流れない程度の第1電圧値に充電装置10の充電電圧を設定し(S20)、充電電流を第1電流値(例えば、1A)に設定して、コンバータ40a、40bによる充電を開始させる(S30)。
これにより、蓄電モジュール50に突入電流が流れ込むことを防止し、かつコンバータ出力のハンチングを防止できる。
【0048】
次に管理ユニット30は、充電電圧を、第1電圧値から第2電圧値に上昇させる(S40)。
【0049】
本実施形態では、
図3(A)に示すように、充電開始後すぐに(例えば1秒後に)、充電電圧を第1電圧値(48.0V)から、第2電圧値(68.0V)にステップ状に上昇させている。
各コンバータ40a、40bにおいて、電圧制御より電流制御が優先される設定になっていれば、上述のように電圧を上昇させても、電流が第1電流値(1A)で制限されるため、大電流が流れることはない。
その後充電電圧は、第2電圧値(68.0V)に維持されて、コンバータ40a、40bによる蓄電モジュール50の充電が行われる。
【0050】
次に管理ユニット30は、充電電流を第1電流値(1A)から徐々に上昇させ(例えば、1秒毎に1Aずつ増加させ)、充電電流が第2電流値(30A)に到達した後は、第2電流値の充電電流を維持してコンバータ40a、40bに蓄電モジュール50の充電を行わせる(S50)。
これにより、充電開始後も蓄電モジュール50に突入電流が流れ込むことを防止し、コンバータ出力のハンチングを防止できる。
【0051】
図6(A)は、充電装置10から蓄電モジュール50への充電電圧(破線)および充電電流(実線)の波形を示し、
図6(B)は、充電装置10の充電電圧(破線)および充電電流(実線)の出力制限値を示す。
図6(A)に示すように、蓄電モジュール50は、全体としてはCCCV(定電流定電圧)充電により満充電にまで充電される。
図4に示した充電の初期制御は、
図6(A)に示すように、蓄電モジュール50の充電の初期に行われる。
【0052】
以下、タッチパネル20の画面の表示例を説明する。充電装置10に入力される交流電源の電圧に応じて、充電電流の最大値(第2電流値)がタッチパネル20に表示されてもよい。充電装置10は、入力される交流電源が100Vであるか200Vであるかを自律的に判断する。
図7の例では、充電装置10に入力される交流電源が100Vであるため第2電流値を15Aに制限する旨を表示している。代替的に、充電装置10は、タッチパネル20への表示を行うことなく、入力される交流電源が100Vの場合に第2電流値を自律的に15Aに制限してもよい。充電装置10は、入力される電源が200Vの場合、タッチパネル20に何らかの表示を行ってもよいし、タッチパネル20への表示を行うことなく充電電流の最大値をデフォルト値(30A)に設定してもよい。
【0053】
図8に示すように、充電装置10は、組電池に対して充電を行うか、放電を行うかの入力を受け付ける画面をタッチパネル20に表示してもよい。
【0054】
図8に示すように、充電装置10は、充電を行うか、放電を行うかの受け付けとともに、充放電の停止方法の選択を受け付ける画面をタッチパネル20に表示してもよい。
図8の例では、充放電の停止方法として、SOC設定によるもの、電圧設定によるもの、タイマ設定によるもの、という複数の選択肢を提示している。
【0055】
図8の画面で、充電モードが選択され、停止方法としてSOC設定が選択された場合、
図9に示す画面に遷移する。
【0056】
図9の例では、画面に、充電モードが選択されたことを示す表示とともに、充電装置10に入力される交流電源が200Vであることを示す表示(AC200V)がなされている。目標SOCの欄に、ユーザが数値を入力できるようになっている。矢印ボタンの操作によりユーザが数値を上下させてもよい。目標SOCの欄の下に、充電装置10に接続されている組電池の充電開始前の状態(電圧、SOC、電流、温度)を示す欄が表示されている。ユーザが目標SOCの欄に数値を入力し、充電開始ボタンを押すと、充電装置10による組電池の充電が開始される。
【0057】
充電開始後に、組電池の状態を示す欄の数値(電圧、SOC、電流、温度)が充電の進行に伴ってリアルタイムに変化することが好ましい。充電装置10の管理ユニット30が、蓄電モジュール50の監視ユニット52と通信を行うことで、このような表示が可能となる。
【0058】
図8の画面で、充電モードが選択され、停止方法として電圧設定が選択された場合、
図9の画面における「目標SOC」が「目標電圧」に置換される。ユーザは、目標電圧の数値を入力する。
図8の画面で、充電モードが選択され、停止方法としてタイマ設定が選択された場合、
図9の画面における「目標SOC」が、「充電電圧」および「充電時間」に置換される。ユーザは、充電電圧および充電時間の数値を入力する。
【0059】
本発明は、上述した実施形態に限定はされない。実施形態では、直列接続された2個のコンバータ40a、40bを用いる例を説明した。代替的に、コンバータの数は3個以上であってもよい。
【0060】
管理ユニット30が、充電開始後は充電装置10の充電電圧を、第1電圧値から第2電圧値にステップ状に上昇させる例を説明した。代替的に、管理ユニット30は、充電装置10の充電電圧を、徐々に増加させてもよいし、充電電圧の上昇の休止期間を含む2段ステップ状に増加させてもよい。
【0061】
管理ユニット30が、充電開始後は充電装置10の充電電流を、第1電流値(1A)から、1秒毎に1Aずつ増加させる例を説明した。代替的に、管理ユニット30は、充電装置10の充電電流を、数秒毎に数Aずつ(例えば、5Aずつ)増加させてもよいし、1秒毎に0.5Aずつ増加させてもよい。
【0062】
充電装置は、次のように構成されてもよい。
組電池を充電するために直流の充電電圧および充電電流を出力する、直列接続された複数のコンバータと、
前記コンバータと通信可能に接続される管理ユニットと、を備え、
前記複数のコンバータは、出力電圧が一定値に設定されるコンバータと、出力電圧および出力電流が調整されるコンバータとを有し、
前記管理ユニットは、
充電開始前の前記組電池の電圧値を取得し、
取得した電圧値に基づき前記組電池に大電流が流れない程度の第1電圧値に前記充電電圧を設定して前記複数のコンバータに前記組電池の充電を開始させ、
充電開始後に前記充電電圧を前記第1電圧値より高い第2電圧値に上昇させて前記複数のコンバータに前記組電池の充電を行わせる、充電装置。
【0063】
上記構成によれば、複数のコンバータを直列接続して用いて安定的に組電池を充電できる。また、出力電圧が一定のコンバータ(ベースコンバータ)の制御のための、通信負荷を減らすことができる。
【符号の説明】
【0064】
10 充電装置
20 タッチパネル(表示部)
30 管理ユニット
40a、40b コンバータ
50 組電池