(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】車両挙動評価装置、車両挙動評価方法及び車両挙動評価用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20250708BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20250708BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20250708BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20250708BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G16Y40/20
G16Y20/20
G16Y10/40
(21)【出願番号】P 2023030155
(22)【出願日】2023-02-28
【審査請求日】2024-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】熊崎 健太
【審査官】山田 嘉彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-054982(JP,A)
【文献】特開2020-144091(JP,A)
【文献】特開2013-069251(JP,A)
【文献】特開2023-018693(JP,A)
【文献】特開2021-033742(JP,A)
【文献】特開2004-306770(JP,A)
【文献】特開2014-135061(JP,A)
【文献】特開2013-149154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
B60K 25/00 - 28/16
G16Y 40/20
G16Y 20/20
G16Y 10/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の道路区間を車両が走行したときの車両の挙動を表
し、かつ、前記車両に搭載されたカメラにより生成された前記車両の周囲を表す画像を含む車両挙動情報に基づいて、前記車両の加減速度、前記車両の加減速度の単位時間あたり変化
量、前記車両の進行方向の変化量及び前記車両の進行方向の
変化量の単位時間あたり変化量のうちの少なくとも一つを含む挙動指標値の分布のバラツキ度及びその挙動指標値の最大値のうちの少なくとも何れか一方を算出する算出部と、
前記挙動指標値の分布のバラツキ度及び前記挙動指標値の最大値のうちの算出された方の値が大きいほど、前記車両挙動情報に対して小さい評価値を設定する評価値設定部と、
前記評価値が所定値以上となる前記車両挙動情報を教師データとして利用することで、前記画像が入力されることで前記車両の走行を制御するための制御情報を出力する制御モデルを学習する学習部と、
を有する車両挙動評価装置。
【請求項2】
コンピュータが、所定の道路区間を車両が走行したときの車両の挙動を表
し、かつ、前記車両に搭載されたカメラにより生成された前記車両の周囲を表す画像を含む車両挙動情報に基づいて、前記車両の加減速度、前記車両の加減速度の単位時間あたり変化量、前記車両の進行方向の変化量及び前記車両の進行方向の
変化量の単位時間あたり変化量のうちの少なくとも一つを含む挙動指標値の分布のバラツキ度及びその挙動指標値の最大値のうちの少なくとも何れか一方を算出し、
前記コンピュータが、前記挙動指標値の分布のバラツキ度及び前記挙動指標値の最大値のうちの算出された方の値が大きいほど、前記車両挙動情報に対して小さい評価値を設定
し、
前記コンピュータが、前記評価値が所定値以上となる前記車両挙動情報を教師データとして利用することで、前記画像が入力されることで前記車両の走行を制御するための制御情報を出力する制御モデルを学習する
ことを含む車両挙動評価方法。
【請求項3】
所定の道路区間を車両が走行したときの車両の挙動を表
し、かつ、前記車両に搭載されたカメラにより生成された前記車両の周囲を表す画像を含む車両挙動情報に基づいて、前記車両の加減速度、前記車両の加減速度の単位時間あたり変化量、前記車両の進行方向の変化量及び前記車両の進行方向の
変化量の単位時間あたり変化量のうちの少なくとも一つを含む挙動指標値の分布のバラツキ度及びその挙動指標値の最大値のうちの少なくとも何れか一方を算出し、
前記挙動指標値の分布のバラツキ度及び前記挙動指標値の最大値のうちの算出された方の値が大きいほど、前記車両挙動情報に対して小さい評価値を設定
し、
前記評価値が所定値以上となる前記車両挙動情報を教師データとして利用することで、前記画像が入力されることで前記車両の走行を制御するための制御情報を出力する制御モデルを学習する
ことをコンピュータに実行させるための車両挙動評価用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の挙動を評価する車両挙動評価装置、車両挙動評価方法及び車両挙動評価用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ドライバによる手動運転時の車両の挙動に基づいて、車両の自動運転制御において車両の制御情報を決定するためのモデルを学習することが提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示された運転支援方法は、運転者の手動運転における運転特性を学習し、この学習結果を自動運転制御の運転特性に反映させる。その際、この運転支援方法は、自動運転車両が走行する地域の運転特性を検出し、検出された地域の運転特性に応じて学習結果を調整し、調整された学習結果に基づいて自動運転制御を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モデルが適切な制御情報を出力できるようにモデルを学習するためには、適切な運転がなされたときの車両の挙動を表す車両挙動情報がそのモデルの学習に用いられることが好ましい。しかし、複数の車両が同じ道路区間を走行する場合でも、ドライバによって、あるいは、その走行時の各車両の周囲の状況によって個々の車両の挙動は異なる。そのため、車両挙動情報に表される車両の挙動が、必ずしもモデルの学習に利用するのに適した挙動とならないことがある。一方、個々の車両挙動情報を手作業で評価しようとすると、非常に大きな工数が必要となってしまう。そのため、個々の車両挙動情報について、モデルの学習において適している度合いを自動的に評価することが求められる。
【0006】
そこで、本発明は、車両の挙動を適切に評価することが可能な車両挙動評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施形態によれば、車両挙動評価装置が提供される。この車両挙動評価装置は、所定の道路区間を車両が走行したときの車両の挙動を表す車両挙動情報に基づいて、車両の加減速度、車両の加減速度の単位時間あたり変化量、車両の進行方向の変化量及び車両の進行方向の単位時間あたり変化量のうちの少なくとも一つを含む挙動指標値の分布のバラツキ度及びその挙動指標値の最大値のうちの少なくとも何れか一方を算出する算出部と、挙動指標値の分布のバラツキ度及びその挙動指標値の最大値のうちの算出された方の値が大きいほど、車両挙動情報に対して小さい評価値を設定する評価値設定部と、を有する。
【0008】
他の実施形態によれば、車両挙動評価方法が提供される。この車両挙動評価方法は、所定の道路区間を車両が走行したときの車両の挙動を表す車両挙動情報に基づいて、車両の加減速度、車両の加減速度の単位時間あたり変化量、車両の進行方向の変化量及び車両の進行方向の単位時間あたり変化量のうちの少なくとも一つを含む挙動指標値の分布のバラツキ度及びその挙動指標値の最大値のうちの少なくとも何れか一方を算出し、挙動指標値の分布のバラツキ度及びその挙動指標値の最大値のうちの算出された方の値が大きいほど、車両挙動情報に対して小さい評価値を設定する、ことを含む。
【0009】
さらに他の実施形態によれば、車両挙動評価用コンピュータプログラムが提供される。この車両挙動評価用コンピュータプログラムは、所定の道路区間を車両が走行したときの車両の挙動を表す車両挙動情報に基づいて、車両の加減速度、車両の加減速度の単位時間あたり変化量、車両の進行方向の変化量及び車両の進行方向の単位時間あたり変化量のうちの少なくとも一つを含む挙動指標値の分布のバラツキ度及びその挙動指標値の最大値のうちの少なくとも何れか一方を算出し、挙動指標値の分布のバラツキ度及びその挙動指標値の最大値のうちの算出された方の値が大きいほど、車両挙動情報に対して小さい評価値を設定する、ことをコンピュータに実行させるための命令を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る車両挙動評価装置は、車両の挙動を適切に評価することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】車両挙動評価装置が実装される車両挙動評価システムの概略構成図である。
【
図2】車両挙動評価装置の一例であるサーバのハードウェア構成図である。
【
図3】車両挙動評価処理に関連するプロセッサの機能ブロック図である。
【
図4】(a)及び(b)は、それぞれ、挙動指標値の分布と評価値の関係を説明する図である。
【
図5】車両挙動評価処理の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を参照しつつ、車両挙動評価装置、及び、車両挙動評価装置にて実行される車両挙動評価方法ならびに車両挙動評価用コンピュータプログラムについて説明する。この車両挙動評価装置は、所定の道路区間を車両が走行したときの車両の挙動を表す車両挙動情報に対する評価値を設定する。その際、この車両挙動評価装置は、車両挙動情報に基づいて、挙動指標値の分布のバラツキ度及びその挙動指標値の最大値の少なくとも何れか一方を算出する。そしてこの車両挙動評価装置は、挙動指標値の分布のバラツキ度が大きいほど、あるいは挙動指標値の最大値が大きいほど、車両挙動情報に対して小さい評価値を設定する。なお、挙動指標値は、車両の走行挙動を表す指標の値であり、車両の加減速度、加減速度の単位時間あたり変化量、車両の進行方向の変化量及び車両の進行方向の単位時間あたり変化量のうちの少なくとも一つを含む。
【0013】
車両挙動情報は、例えば、車両の自動運転制御において用いられる制御モデルを学習する際の教師データとして利用される。このような制御モデルは、例えば、いわゆるディープニューラルネットワーク(DNN)として構成される。そして制御モデルは、地図に表された、対象となる道路区間の情報(曲率半径、車線幅、制限車速etc.)あるいはその道路区間を車載のカメラで撮影することで得られる画像が入力されることで、車両の走行予定軌跡あるいは車両の制御情報を出力する。そのため、車両挙動情報に対して設定される評価値は、例えば、車両挙動情報を上記の制御モデルの教師データとして利用する際の有用度合いを表すものとなる。したがって、例えば、評価値が一定以上となる車両挙動情報のみが教師データとして使用される。そして、車両挙動情報に含まれる、アクセル開度、ブレーキ踏力及びステアリングの操舵角、あるいは、車両の走行軌跡等の情報が、制御モデルの学習の際に利用される。
【0014】
図1は、車両挙動評価装置が実装される車両挙動評価システムの概略構成図である。本実施形態では、車両挙動評価システム1は、少なくとも一つの車両2と、車両挙動評価装置の一例であるサーバ3とを有する。各車両2は、例えば、サーバ3が接続される通信ネットワーク4とゲートウェイ(図示せず)などを介して接続される無線基地局5にアクセスすることで、無線基地局5及び通信ネットワーク4を介してサーバ3と接続される。なお、
図1では、簡単化のため、一つの車両2のみが図示されているが、車両挙動評価システム1は、複数の車両2を有していてもよい。同様に、
図1では、一つの無線基地局5のみが図示されているが、複数の無線基地局5が通信ネットワーク4に接続されていてもよい。
【0015】
車両2は、少なくとも一つの車両挙動センサと、GPS受信機と、車両挙動記録装置と、無線通信端末とを有する。
【0016】
車両挙動センサは、車両2の挙動を検知するためのセンサであり、例えば、速度センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、アクセル開度を検知するためのセンサ、ブレーキ踏力を検知するためのセンサ、及び、ステアリングの操舵角を検知するためのセンサの少なくとも一つを含む。そして車両挙動センサは、車両2の挙動を表す挙動センサ信号を生成する度に、生成した挙動センサ信号を車両挙動記録装置へ出力する。挙動センサ信号は、速度、進行方向の加減速度(以下、前後Gと呼ぶことがある)、進行方向と直交する方向の加減速度(以下、左右Gと呼ぶことがある)、ヨー方向の角速度、アクセル開度、ブレーキ踏力、及び操舵角の少なくとも一つを表す。
【0017】
GPS受信機は、所定の周期ごとにGPS衛星からのGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて車両2の自己位置を測位する。そしてGPS受信機は、所定の周期ごとに、GPS信号に基づく車両2の自己位置の測位結果を表す測位情報を、車内ネットワークを介して車両挙動記録装置へ出力する。なお、車両2はGPS受信機以外の衛星測位システムに準拠した受信機を有していてもよい。この場合、その受信機が車両2の自己位置を測位すればよい。
【0018】
車両挙動記録装置は、例えば、プロセッサとメモリとを有する。そして車両挙動記録装置のプロセッサは、車両挙動センサから挙動センサ信号を取得する度に、その挙動センサ信号に、その挙動センサ信号の取得時刻に最も近い時刻に得られたGPS受信機から取得した測位情報で表される車両2の位置を関連付ける。そしてプロセッサは、車両2の位置が関連付けられた個々の挙動センサ信号を、その取得時刻順に並べることで、車両挙動情報を生成し、生成した車両挙動情報を車両挙動記録装置のメモリに保存する。したがって、生成された車両挙動情報には、取得時刻順に並べられた挙動センサ信号とともに、車両2の走行軌跡も含まれることになる。車両挙動記録装置は、車両挙動情報に、車両2の識別情報を含めてもよい。
【0019】
なお、車両2は、車両2の周辺領域を撮影するためのカメラを有していてもよい。カメラは、所定の周期ごとに、車両2の周辺領域を表す画像を生成し、生成した画像を、車内ネットワークを介して車両挙動記録装置へ出力してもよい。また、車両挙動装置のメモリには、車線区画線または道路標識といった道路上または道路の周囲に存在する所定の地物を表す地図が記憶されていてもよい。この場合、車両挙動記録装置のプロセッサは、カメラから受け取った画像と地図とを照合することで、車両2のより正確な位置を推定し、その推定した位置を、挙動センサ信号と関連付けてもよい。
【0020】
そのために、プロセッサは、所定の地物を検出するように予め学習された識別器に画像を入力することで、画像に表された所定の地物を検出する。そしてプロセッサは、カメラの撮影方向、焦点距離及び車両2に対する設置位置といったパラメータを参照して、仮定した車両2の位置及び進行方向に基づいて、検出した地物を地図上に投影し、投影された地物と地図に表された地物との一致度合を算出する。プロセッサは、仮定する車両2の位置及び進行方向を様々に変化させながら、地物の投影及び一致度の算出を繰り返し、一致度が最大となるときの車両2の位置及び進行方向を、画像の生成時における、実際の車両2の位置及び進行方向であると推定すればよい。プロセッサは個々の画像の生成時の車両2の位置に基づいて、個々の挙動センサ信号の取得時における車両2の位置を推定すればよい。
【0021】
さらに、プロセッサは、個々の画像と、個々の画像の生成時における、車両2の位置及び進行方向とを、車両挙動情報に含めてもよい。
【0022】
車両挙動記録装置は、所定のタイミングになると、生成した車両挙動情報を無線通信端末へ出力する。なお、所定のタイミングは、例えば、車両2のイグニッションスイッチがオフにされたタイミング、あるいは、車両2のイグニッションスイッチがオンにされてから一定の時間(例えば、30分~1時間)を経過する度のタイミングとすることができる。あるいは、車両挙動情報の収集対象となる領域を表す収集領域情報がサーバ3から通信ネットワーク4及び無線基地局5を介して車両2に予め通知されていてもよい。この場合には、車両挙動記録装置は、収集領域情報及び測位情報を参照して、車両2が収集対象となる領域外へ移動したタイミングを、所定のタイミングとしてもよい。
【0023】
無線通信端末は、所定の無線通信規格に準拠した無線通信処理を実行する機器であり、例えば、無線基地局5にアクセスすることで、無線基地局5及び通信ネットワーク4を介してサーバ3と接続される。そして無線通信端末は、車両挙動記録装置から受け取った車両挙動情報を含むアップリンクの無線信号を生成する。そして無線通信端末は、そのアップリンクの無線信号を無線基地局5へ送信することで、車両挙動情報をサーバ3へ送信する。また、無線通信端末は、無線基地局5からダウンリンクの無線信号を受信して、その無線信号に含まれる、サーバ3からの収集領域情報を車両挙動記録装置へわたす。
【0024】
次に、車両挙動評価装置の一例であるサーバ3について説明する。
図2は、車両挙動評価装置の一例であるサーバ3のハードウェア構成図である。サーバ3は、通信インターフェース11と、ストレージ装置12と、メモリ13と、プロセッサ14とを有する。通信インターフェース11、ストレージ装置12及びメモリ13は、プロセッサ14と信号線を介して接続されている。サーバ3は、キーボード及びマウスといった入力装置と、液晶ディスプレイといった表示装置とをさらに有してもよい。
【0025】
通信インターフェース11は、通信部の一例であり、サーバ3を通信ネットワーク4に接続するためのインターフェース回路を有する。そして通信インターフェース11は、車両2と、通信ネットワーク4及び無線基地局5を介して通信可能に構成される。すなわち、通信インターフェース11は、車両2から無線基地局5及び通信ネットワーク4を介して受信した車両挙動情報をプロセッサ14へわたす。また、通信インターフェース11は、プロセッサ14から受け取った収集領域情報を、通信ネットワーク4及び無線基地局5を介して車両2へ送信する。
【0026】
ストレージ装置12は、記憶部の一例であり、例えば、ハードディスク装置または光記録媒体及びそのアクセス装置を有する。そしてストレージ装置12は、車両挙動評価処理において使用される各種のデータ及び情報を記憶する。例えば、ストレージ装置12は、各車両2から受信した車両挙動情報を記憶する。また、ストレージ装置12は、地図、及び、車両挙動評価処理の対象となる所定の道路区間を特定するための情報を記憶する。その所定の道路区間を特定するための情報は、例えば、地図に表される、その道路区間を識別するリンクID、あるいは、その道路区間の両端の位置情報を含む。さらに、ストレージ装置12は、プロセッサ14上で実行される、車両挙動評価処理を実行するためのコンピュータプログラムを記憶してもよい。
【0027】
メモリ13は、記憶部の他の一例であり、例えば、不揮発性の半導体メモリ及び揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリ13は、車両挙動評価処理を実行中に生成される各種データなどを一時的に記憶する。
【0028】
プロセッサ14は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ14は、論理演算ユニットあるいは数値演算ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ14は、車両2の何れかから車両挙動情報を受信する度に、受信した車両挙動情報をストレージ装置12に保存する。さらに、プロセッサ14は、車両挙動評価処理を実行する。さらにまた、プロセッサ14は、入力装置を介して入力された、収集対象領域を指定する情報に基づいて、収集領域情報を生成し、生成した収集領域情報を、通信インターフェース11を介して各車両2へ配信する。
【0029】
図3は、車両挙動評価処理に関連するプロセッサ14の機能ブロック図である。プロセッサ14は、選択部21と、算出部22と、評価値設定部23とを有する。プロセッサ14が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ14上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、プロセッサ14が有するこれらの各部は、プロセッサ14に設けられる、専用の演算回路であってもよい。
【0030】
選択部21は、各車両2から収集され、かつ、ストレージ装置12に記憶された車両挙動情報のなかから、車両挙動評価処理の対象となる所定の道路区間を車両2が走行したときの車両挙動情報を選択する。なお、所定の道路区間は、例えば、入力機器、あるいはサーバ3と通信回線を介して接続される他の機器から入力され、ストレージ装置12に記憶されたその道路区間を特定するための情報を参照することで特定される。
【0031】
選択部21は、ストレージ装置12から、所定の道路区間を特定するための情報を読み込む。そして選択部21は、その情報を参照して、各車両挙動情報について、その車両挙動情報に含まれる個々の挙動センサ信号の取得時における車両2の位置のうちの何れかが、所定の道路区間に含まれるか否か判定する。選択部21は、何れかの挙動センサ信号の取得時における車両2の位置が所定の道路区間に含まれる車両挙動情報を選択する。さらに、選択部21は、選択した個々の車両挙動情報から、さらに、所定の道路区間内に含まれる個々の車両2の位置及びその位置に関連付けられた挙動センサ信号の組を、車両2が所定の道路区間を走行したときの車両挙動情報として選択する。
【0032】
選択部21は、車両2が所定の道路区間を走行したときの車両挙動情報を、算出部22及び評価値設定部23へ通知する。
【0033】
算出部22は、選択部21から通知された車両2が所定の道路区間を走行したときの車両挙動情報に基づいて、挙動指標値の分布のバラツキ度及び挙動指標値の最大値の少なくとも何れか一方を算出する。上記のように、挙動指標値は、車両2の加減速度、加減速度の単位時間あたり変化量、車両2の進行方向の変化量及び車両2の進行方向の単位時間あたり変化量のうちの少なくとも一つを含む。算出部22は、挙動指標値のバラツキ度として、例えば、挙動指標値の標準偏差または分散を算出する。また、挙動指標値に、上記の加減速度などの要素のうちの二つ以上の要素が含まれている場合には、算出部22は、要素ごとの標準偏差または分散の平均値あるいは最大値を、挙動指標値のバラツキ度として算出する。あらに、算出部22は、要素ごとにその要素の最大値を算出すればよい。
【0034】
算出部22は、車両挙動情報に含まれる前後Gのバラツキ度あるいは左右Gのバラツキ度を、車両2の加減速度のバラツキ度として算出する。また、算出部22は、車両挙動情報に含まれる前後Gの最大値あるいは左右Gの最大値を、車両2の加減速度の最大値として算出する。あるいは、算出部22は、車両挙動情報に含まれるアクセル開度またはブレーキ踏力のバラツキ度を、車両2の加減速度のバラツキ度として算出してもよい。さらに、算出部22は、車両挙動情報に含まれるアクセル開度またはブレーキ踏力の最大値を、車両2の加減速度の最大値として算出してもよい。
【0035】
また、算出部22は、車両挙動情報に含まれる、時間的に連続する二つの前後Gの値の組ごとに、その値の差、あるいは、その値の差を挙動センサ信号の取得間隔で除すことで正規化される値を、それぞれ、前後Gの時間あたり変化量として算出してもよい。そして算出部22は、前後Gの時間あたり変化量のバラツキ度及び最大値を、加減速度の単位時間あたり変化量のバラツキ度及び最大値として算出すればよい。同様に、算出部22は、左右G、アクセル開度またはブレーキ踏力について、車両挙動情報に含まれる、時間的に連続する二つの値の組ごとに、その値の差、あるいは、その値の差を挙動センサ信号の取得間隔で除すことで正規化される値を、それぞれ、加減速度の単位時間あたり変化量として算出してもよい。そして算出部22は、その加減速度の単位時間あたり変化量のバラツキ度及び最大値を算出すればよい。
【0036】
さらに、算出部22は、車両挙動情報に含まれる操舵角あるいはヨー方向の角速度のバラツキ度及び最大値を、車両2の進行方向の変化量のバラツキ度及び最大値として算出すればよい。
【0037】
さらにまた、算出部22は、操舵角あるいはヨー方向の角速度について、車両挙動情報に含まれる、時間的に連続する二つの値の組ごとに、その値の差、あるいは、その値の差を、挙動センサ信号の取得間隔で除すことで正規化される値を、それぞれ、車両2の進行方向の単位時間あたり変化量として算出してもよい。そして算出部22は、その車両2の進行方向の単位時間あたり変化量のバラツキ度及び最大値を算出すればよい。
【0038】
算出部22は、車両挙動情報について算出した、挙動指標値の分布のバラツキ度及び挙動指標値の最大値の少なくとも一方を、評価値設定部23へ通知する。
【0039】
評価値設定部23は、選択部21から通知された車両2が所定の道路区間を走行したときの車両挙動情報に対して評価値を設定する。本実施形態では、評価値設定部23は、その車両挙動情報について算出された挙動指標値の分布のバラツキ度が大きいほど、あるいは、挙動指標値の最大値が大きいほど、評価値が小さい値となるように評価値を設定する。その際、評価値設定部23は、挙動指標値の分布のバラツキ度及び挙動指標値の最大値のうちの算出された方と評価値との関係を表す参照テーブルを参照することで、算出されたバラツキ度または最大値に対応する評価値を決定する。なお、バラツキ度と最大値の両方が算出されている場合には、参照テーブルは、バラツキ度と最大値の両方と評価値との関係を表すように予め作成される。さらに、挙動指標値に複数の要素が含まれ、かつ、要素ごとに最大値が算出されている場合には、参照テーブルは、要素ごとの最大値と評価値との関係を表すように予め作成されればよい。あるいは、評価値設定部23は、挙動指標値の分布のバラツキ度及び挙動指標値の最大値のうちの算出された方と評価値との関係を表す関係式に、算出されたバラツキ度または最大値を入力することで、評価値を決定してもよい。なお、バラツキ度と最大値の両方が算出されている場合には、関係式は、バラツキ度と最大値の両方と評価値との関係を表すように予め作成される。さらに、挙動指標値に複数の要素が含まれ、かつ、要素ごとに最大値が算出されている場合には、関係式は、要素ごとの最大値と評価値との関係を表すように予め作成されればよい。そのような参照テーブルまたは関係式は、ストレージ装置12に予め記憶されていればよい。
【0040】
評価値設定部23は、車両挙動情報に対して設定した評価値をその車両挙動情報に関連付けてストレージ装置12に保存する。あるいは、評価値設定部23は、設定した評価値と車両挙動情報とを、通信インターフェース11を介して他の機器へ出力してもよい。その際、評価値設定部23は、評価値が所定の閾値以上となる車両挙動情報については通信インターフェース11を介して他の機器へ出力し、評価値が所定の閾値未満となる車両挙動情報を、ストレージ装置12から消去してもよい。
【0041】
図4(a)及び
図4(b)は、それぞれ、挙動指標値の分布と評価値の関係を説明する図である。
図4(a)及び
図4(b)において、横軸は挙動指標値を表し、縦軸は挙動指標値ごとの頻度を表す。
【0042】
図4(a)に示される挙動指標値の分布400は、相対的に小さい値に集中しており、その結果としてバラツキ度が小さく、かつ、挙動指標値の最大値も相対的に低く抑えられている。このように、挙動指標値の分布のバラツキ度が小さく、かつ、挙動指標値の最大値が小さいとき、車両2は、過度に加減速し、あるいは、急激にその進行方向を変えるといった不安定な挙動をしなかったことが想定される。すなわち、車両2のドライバは、無理な運転をしていないと想定される。そこで、このような挙動指標値の分布となる車両挙動情報に対して、相対的に大きい評価値が設定される。
【0043】
これに対して、
図4(b)に示される挙動指標値の分布410は、小さい値から大きい値まで相対的に分散されており、その結果としてバラツキ度が大きく、かつ、挙動指標値の最大値は相対的に高くなっている。このように、挙動指標値の分布のバラツキ度が大きいか、あるいは、挙動指標値の最大値が高いとき、車両2は、不安定な挙動を行ったことが想定される。そのため、このような挙動指標値の分布となる車両挙動情報に対して、相対的に小さい評価値が設定される。
【0044】
図5は、サーバ3における、車両挙動評価処理の動作フローチャートである。サーバ3のプロセッサ14は、以下に示される動作フローチャートに従って車両挙動評価処理を実行すればよい。
【0045】
プロセッサ14の選択部21は、ストレージ装置12に記憶された車両挙動情報のなかから、車両挙動評価処理の対象となる所定の道路区間を車両2が走行したときの車両挙動情報を選択する(ステップS101)。
【0046】
また、プロセッサ14の算出部22は、選択された車両挙動情報に基づいて、挙動指標値の分布のバラツキ度及び挙動指標値の最大値の少なくとも何れか一方を算出する(ステップS102)。
【0047】
プロセッサ14の評価値設定部23は、選択された車両挙動情報について算出された挙動指標値の分布のバラツキ度が大きいほど、あるいは、挙動指標値の最大値が大きいほど、評価値が小さい値となるように、その車両挙動情報に対する評価値を設定する(ステップS103)。そしてプロセッサ14は、車両挙動評価処理を終了する。
【0048】
以上に説明してきたように、この車両挙動評価装置は、車両挙動情報に含まれる挙動指標値の分布のバラツキ度及びその挙動指標値の最大値の少なくとも何れか一方を算出する。そしてこの車両挙動評価装置は、挙動指標値の分布のバラツキ度が大きいほど、あるいは挙動指標値の最大値が大きいほど、車両挙動情報に対して小さい評価値を設定する。そのため、この車両挙動評価装置は、車両の挙動を適切に評価した評価値を、車両挙動情報に対して設定することができる。
【0049】
なお、プロセッサ14は、評価値が設定された個々の車両挙動情報に基づいて、上記のように車両の自動運転制御において用いられる制御モデルを学習してもよい。すなわち、プロセッサ14は、評価値が一定以上となる車両挙動情報のみを教師データとして用いて、誤差逆伝搬法といった所定の教師付き学習アルゴリズムにしたがって制御モデルを学習すればよい。そしてプロセッサ14は、学習が終了した制御モデルを、通信インターフェース11を介して各車両2または他の機器へ配信してもよい。
【0050】
上記の各実施形態または変形例による車両挙動評価装置のプロセッサが有する各部の機能をコンピュータに実現させるコンピュータプログラムは、コンピュータによって読取り可能な記録媒体に記憶された形で提供されてもよい。なお、コンピュータによって読取り可能な記録媒体は、例えば、磁気記録媒体、光記録媒体、又は半導体メモリとすることができる。
【0051】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0052】
1 車両挙動評価システム
2 車両
3 サーバ
11 通信インターフェース
12 ストレージ装置
13 メモリ
14 プロセッサ
21 選択部
22 算出部
23 評価値設定部
4 通信ネットワーク
5 無線基地局