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  • 特許-負極活物質層 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】負極活物質層
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/133 20100101AFI20250708BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20250708BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/587
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023067816
(22)【出願日】2023-04-18
(65)【公開番号】P2024154149
(43)【公開日】2024-10-30
【審査請求日】2024-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】松原 伸典
【審査官】山本 佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/084506(WO,A1)
【文献】特表2012-519124(JP,A)
【文献】特開2009-187939(JP,A)
【文献】国際公開第2020/213628(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0186996(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0331354(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第4439729(EP,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0079864(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 - 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素質負極活物質を含む負極活物質層であって、
前記炭素質負極活物質層のX線回折によって測定した配向度I004/I110が、1.00以上、2.00以下であり、かつ
ラマンマッピング測定で得られる、Dバンドのピーク強度の、Gバンドのピーク強度に対する比である、前記炭素質負極活物質のD/Gの度数分布において、最頻値が0.50以上、0.80以下であり、最頻値を有するピークの半値幅が0.3以上、0.6以下である、
負極活物質層。
【請求項2】
レーザー回折法により測定した、前記炭素質負極活物質のD50粒子径が、17.0μm以下である、請求項1に記載の負極活物質層。
【請求項3】
前記炭素質負極活物質が、黒鉛である、請求項1又は2に記載の負極活物質層。
【請求項4】
密度が1.2g/cc以上1.6g/cc以下である、請求項1又は2に記載の負極活物質層。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の負極活物質層、セパレーター、及び正極活物質層を少なくとも有する、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、負極活物質層に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池、特にリチウムイオン二次電池の負極活物質として、黒鉛等の炭素材料が一般的に用いられている。中でも、黒鉛は、炭素原子の六角網面が規則正しく積層されている構造を有している。この積層されている網面の端部からのリチウムイオンの挿入脱離反応により、充放電が行われる。特に、黒鉛の活物質としての性能を確認するため、ラマンマッピングにおいて、「Gバンド」及び「Dバンド」の値の比を評価することが行われている。「Gバンド」は、波長1580cm-1のピーク強度を示しており、「Dバンド」は、波長1360cm-1のピーク強度を示している。
【0003】
特許文献1では、G/Dの最頻値が0.87~0.96であり、G/Dが小さい側からの頻度の累積が50%のときのR値が0.88~0.92である負極材用の炭素質粒子が開示されている。
【0004】
特許文献2では、G/D比が0.21以上である負極活物質について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2019/159367号
【文献】国際公開第2014/128814号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、改善された抵抗を有する、負極活物質層を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本開示を完成させた。すなわち、本開示は、下記のとおりである:
〈態様1〉炭素質負極活物質を含む負極活物質層であって、
前記炭素質負極活物質層のX線回折によって測定した配向度I004/I110が、1.00以上、2.00以下であり、かつ
ラマンマッピング測定で得られる、Dバンドのピーク強度の、Gバンドのピーク強度に対する比である、前記炭素質負極活物質のD/Gの度数分布において、最頻値が0.50以上、0.80以下であり、最頻値を有するピークの半値幅が0.3以上、0.6以下である、
負極活物質層。
〈態様2〉レーザー回折法により測定した、前記炭素質負極活物質のD50粒子径が、17.0μm以下である、態様1に記載の負極活物質層。
〈態様3〉前記炭素質負極活物質が、黒鉛である、態様1又は2に記載の負極活物質層。
〈態様4〉密度が1.2g/cc以上1.6g/cc以下である、態様1~3のいずれか一項に記載の負極活物質層。
〈態様5〉態様1~4のいずれか一項に記載の負極活物質層、セパレーター、及び正極活物質層を少なくとも有する、二次電池。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、改善された抵抗を有する、負極活物質層を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の二次電池の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
《負極活物質層》
本開示の負極活物質層は、炭素質負極活物質を含み、
前記負極活物質層のX線回折によって測定した配向度I004/I110が、1.00以上、2.00以下であり、かつ
ラマンマッピング測定で得られるラマンマッピング測定で得られる、Dバンドのピーク強度の、Gバンドのピーク強度に対する比である、前記炭素質負極活物質のD/Gの度数分布において、最頻値が0.5以上、0.8以下であり、最頻値を有するピークの半値幅が0.3以上、0.6以下である。
【0011】
本開示の負極活物質層によれば、負極活物質層が適切な配向度を有して、リチウムイオンの拡散方向に対して炭素質負極活物質の反応面が最適にマッチすることとなる。また、炭素質負極活物質が適切なD/G値の度数分布(最頻値及び半値幅)を有し、それによって、適切なリチウムイオン挿入サイトを提供する。これらの結果として、ことによって、リチウムイオン電池において用いたときに抵抗が小さくなると考えられる。
【0012】
負極活物質層のX線回折(XRD)によって測定した配向度I004/I110は、1.00以上、1.10以上、又は1.20以上であってよく、また2.00以下、1.90以下、1.80以下、1.70以下、1.60以下、1.50以下、又は1.40以下であってよい。この値が大きくなるほど配向性が高くなることを示している。負極活物質層の密度を上昇させることにより、上記の配向度を上昇させることができる。ここで、本開示において、配向度は、X線回折(XRD)によって測定した、負極活物質層を構成する結晶の、(004)面のピーク強度I004の、(110)面のピーク強度I110に対する比を意味している。
【0013】
上記の配向度を得る観点から、負極活物質層の密度は、1.1g/cc以上、1.2g/cc以上、又は1.3g/cc以上であり、かつ1.7g/cc以下、1.6g/cc以下、又は1.5g/cc以下であることが好ましい。
【0014】
負極活物質層は、随意の他の成分を含有していてよい。他の成分としては、例えば導電助剤及びバインダー等が挙げられる。
【0015】
以下では、本開示の各構成要素について説明する。
【0016】
〈炭素質負極活物質〉
本開示の炭素質負極活物質は、ラマンマッピング測定で得られる、Dバンドのピーク強度の、Gバンドのピーク強度に対する比である、前記炭素質負極活物質のD/Gの度数分布において、最頻値が0.5以上、0.8以下であり、最頻値を有するピークの半値幅が0.3以上、0.6以下である。
【0017】
ここで、本明細書において、「Dバンド」とは、波長1360cm-1のピーク強度を示しており、「Gバンド」とは、波長1580cm-1のピーク強度を示している。
【0018】
また、ラマンマッピングの測定は、以下の条件で行うことができる。
対物レンズの倍率:50倍
露光時間:2秒
積算回数:4回
サンプリング範囲:100μm×100μm
測定間隔:2μm
【0019】
上記のD/Gの最頻値は、0.50以上、0.55以上、0.60以上、0.65以上、又は0.70以上であってよく、また0.80以下、又は0.75以下であってよい。炭素質負極活物質の結晶性を高くすると、D/Gの最頻値が低減する。炭素質負極活物質の粉砕処理を行うこと、すなわち粒子径を小さくすること、又は炭素質負極活物質にコーティングを施すことにより、炭素質負極活物質の結晶性を高くし、それによって、D/Gの最頻値を低減させることができる。
【0020】
この最頻値は、G/Dに換算すると、2.00以下、1.82以下、1.67以下、1.54以下、又は1.43以下であり、かつ1.25以上、又は1.33以上に相当する。
【0021】
上記の半値幅は、0.30以上、0.35以上、0.40以上、又は0.45以上であってよく、また0.60以下、0.55以下、又は0.50以下であってよい。
【0022】
また、本開示の炭素質負極活物質のラマンマッピングにおいては、D/Gの値が0.5以上0.8以下である領域Aが一様に分布していることができる。また、D/Gの値がこの範囲外である領域Bが存在する場合には、領域Aと領域Bとの位置関係は、領域Aを海、領域Bを島とする海島構造のような位置関係であることができる。
【0023】
上記の度数分布特性を有する炭素質負極活物質としては、イオンを吸蔵放出する電位(充放電電位)が上記の正極活物質と比べて卑な電位である種々の物質を用いることができる。例えば、黒鉛、グラファイトやハードカーボン等の炭素系活物質等を用いることができる。炭素質負極活物質は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0024】
特に、炭素質負極活物質が黒鉛である場合には、黒鉛のD50粒子径は、20.0μm以下、18.0μm以下、17.0μm以下、16.5μm以下、16.0μm以下、又は15.7μm以下であってよく、また5.0μm以上、6.0μm以上、7.0μm以上、8.0μm以上、9.0μm以上、10.0μm以上、11.0μm以上、12.0μm以上、13.0μm以上、又は14.0μm以上であってよい。ここで、本開示において、D50粒子径は、レーザー回折法において体積基準により算出されたメジアン径(D50)の値を意味している。
【0025】
〈バインダー〉
負極活物質層に任意に含まれるバインダーとしては、二次電池において使用されるバインダーとして公知のものが用いられてよい。例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)系バインダー、カルボキシメチルセルロース(CMC)系バインダー、アクリロニトリルブタジエンゴム(ABR)系バインダー、ブタジエンゴム(BR)系バインダー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)系バインダー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系バインダー等が用いられてよい。バインダーは1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上の組合せが用いられてもよい。負極活物質層に含まれるバインダーの量は、特に限定されない。
【0026】
〈導電助剤〉
負極活物質層に任意に含まれる導電助剤としては、二次電池において使用される導電助剤として公知のものが用いられてよい。具体的には、炭素材料、例えばケッチェンブラック(KB)、気相法炭素繊維(VGCF)、アセチレンブラック(AB)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)、カーボンブラック、コークス、黒鉛等が用いられてよい。或いは、電池の使用時の環境に耐えることが可能な金属材料も用いられてよい。導電助剤としては、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上の組合せが用いられてもよい。導電助剤の形状は、粉末状、繊維状等の種々の形状であってよい。負極活物質層に含まれる導電助剤の量は、特に限定されない。
【0027】
《二次電池》
本開示の二次電池は、上記の負極活物質層、セパレーター、及び正極活物質層を少なくとも有する。
【0028】
図1は、本開示の第1の実施形態に従う二次電池100の構成を概略的に示している。図1に示されるように、二次電池100は、正極10とセパレータ20と負極30とを備えるものであってもよい。また、正極10は、正極活物質層11と正極集電体層12とを備えるものであってもよく、負極30は、負極活物質層31と負極集電体層32とを備えるものであってもよい。この場合、正極活物質層11が上記の正極活物質を含み得る。また、電解質は、図示していないが、例えば電解液の形態で、正極活物質層11及び負極活物質層31に含まれていてよい。
【0029】
〈負極集電体層〉
負極集電体層は、二次電池の負極集電体として使用可能な公知の金属等によって構成されていてよい。そのような金属としては、例えばCu、Ni、Al、V、Au、Pt、Mg、Fe、Ti、Pb、Co、Cr、Zn、Ge、In、Sn、Zrからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む金属材料であってよい。負極集電体層の形態は、特に限定されるものではなく、箔状、メッシュ状、多孔質状等の種々の形態であってよい。負極集電体層は、随意の材料で構成されている基材の表面に、上記の金属をめっき又は蒸着したものであってもよい。また、負極集電体層の表面は、炭素材料等で被覆されていてもよい。
【0030】
〈セパレータ〉
セパレータとしては、二次電池において使用されるセパレータとして公知のものが用いられてよい。例えば、セパレータは、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル及びポリアミド等の樹脂で構成されていてよい。セパレータは、単層構造であってもよく、又は複層構造であってもよい。複層構造のセパレータとしては、例えば上記の樹脂から構成される複層構造のセパレータ、例えばPE/PPの2層構造のセパレータ、又は、PP/PE/PP若しくはPE/PP/PEの3層構造のセパレータ等を用いることができる。セパレータは、セルロース不織布、樹脂不織布、ガラス繊維不織布といった不織布で構成されていてもよい。セパレータの厚みは特に限定されるものではなく、例えば、5μm以上1mm以下であってもよい。
【0031】
〈正極活物質層〉
正極活物質層は、正極活物質を含有している。また、正極活物質層は、随意の他の成分を含有していてよい。他の成分としては、例えば導電助剤及びバインダー等が挙げられる。
【0032】
(正極活物質)
正極活物質としては、二次電池の形態に応じて随意の正極活物質を用いることができ、特に限定されない。例えば、二次電池がリチウムイオン二次電池である場合には、正極活物質としては、例えばリチウム含有酸化物を用いることができる。
【0033】
正極活物質としてのリチウム含有酸化物は、特に限定されず、例えば少なくともLiと、Co、Ni及びMnから選ばれる少なくとも1つの遷移金属元素と、Oとを含むものであってよい。このようなリチウム含有酸化物としては、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMn)、又は、これらの一部元素が他の元素に置換されたニッケル・コバルト・マンガン系酸化物(NCM)を用いることができる。NCMは、概してLiMnNiCo2±δ(0<a≦1.5、0≦x≦1.5、0≦y≦1.5、0≦z≦1.5、0<δ(=x+y+z)<1.5)の一般式で示される。正極活物質としてのリチウム含有酸化物は、例えば、O型構造を有するものであってもよいし、O型構造を有するものであってもよいし、これら以外の結晶構造を有するものであってもよい。正極活物質としては、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0034】
〈正極集電体層〉
正極集電体層は、二次電池の正極集電体として使用可能な公知の金属等によって構成されていてよい。そのような金属としては、Cu、Ni、Al、V、Au、Pt、Mg、Fe、Ti、Pb、Co、Cr、Zn、Ge、In、Sn、Zrからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む金属材料であってよい。正極集電体層の形態は、特に限定されるものではなく、箔状、メッシュ状、多孔質状等の種々の形態であってよい。負極集電体層は、随意の材料で構成されている基材の表面に、上記の金属をめっき又は蒸着したものであってもよい。
【0035】
〈電解液〉
電解液は、溶媒及び電解質を含有している。電解液は、キャリアイオンとしてのアルカリ金属イオン、例えばリチウムイオンを含有していてよい。
【0036】
(溶媒)
溶媒としては、水及び有機溶媒を用いることができる。
【0037】
有機溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)等のカーボネート系溶媒を用いることができる。これらの有機溶媒は、単独で用いられていてもよく、又は混合して用いられていてもよい。
【0038】
(電解質)
電解質は、二次電池の形態に応じて選択される。例えば、二次電池がリチウムイオン二次電池である場合には、例えばリチウム塩であってよい。リチウム塩としては、例えばLiPF等を用いることができる。
【実施例
【0039】
実施例及び比較例により本開示を具体的に説明するが、本開示は、これらに限定されるものではない。
【0040】
《二次電池の作製》
〈実施例1〉
正極活物質としての92質量部のLiNiCoMnO、導電助剤としての5質量部のアセチレンブラック、及びバインダーとしての3質量部のポリフッ化ビニリデンを混合させ、正極活物質層用スラリーを作製した。
【0041】
次いで、正極集電体層としての厚さ15μmのAl箔に、得られた正極活物質層用スラリーを塗布し、これを所定の厚みにプレスして、正極を得た。
【0042】
炭素質負極活物質としての98質量部の黒鉛(炭素質負極活物質C、D50粒子径16.5μm)、並びにバインダーとしての1質量部のカルボキシメチルセルロース及び1質量部のスチレンブタジエンゴムを混合させ、負極活物質層用スラリーを作製した。
【0043】
次いで、負極集電体層としての厚さ10μmのCu箔に、得られた負極活物質層スラリーを塗布し、負極活物質層の密度が1.4g/ccとなるようにして、塗布した負極活物質層用スラリーをプレスして、負極を得た。
【0044】
得られた負極活物質層の配向度I004/I110を、X線回折により測定した。
【0045】
セパレータとしての厚さ24μmのポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン三層シートを介して、得られた正極及び負極を巻回して、電極群を作製した。
【0046】
電極群の両端に蓋付の集電板を溶接し、これをケースに挿入し、蓋板とケースとを溶接した。次いで、注液孔から所定の量の電解液を注液し、注液孔に封止用のネジを締め付け、注液後、これを適当な時間放置して電解液を含浸させ、充電した後60℃にてエージングを実施して、実施例1の二次電池を得た。電解液の溶媒としては、3質量部のエチレンカーボネート、3質量部のジメチルカーボネート、及び4質量部のエチルメチルカーボネートを用いた。電解質としては、LiPFを、1mol/Lの濃度で用いた。
【0047】
また、用いた炭素質負極活物質のラマンマッピングを、以下の条件で測定し、それによって、D/Gの最頻値及び最頻値を有するピークの半値幅を得た。
対物レンズの倍率:50倍
露光時間:2秒
積算回数:4回
サンプリング範囲:100μm×100μm
測定間隔:2μm
【0048】
〈実施例2~6及び比較例1~7〉
炭素質負極活物質として、表1に示す種類の炭素質負極活物質を用い、負極活物質層の密度を表1に示すように調節したことを除き、実施例1と同様にして、実施例2~6及び比較例1~7の二次電池を作製した。
【0049】
表1に示す炭素質負極活物質の詳細は以下のとおりである。
炭素質負極活物質A:D50粒子径15.5μmの黒鉛
炭素質負極活物質B:D50粒子径15.8μmの黒鉛
炭素質負極活物質D:D50粒子径14.7μmの黒鉛
炭素質負極活物質E:D50粒子径15.5μmの黒鉛
炭素質負極活物質F:D50粒子径15.6μmの黒鉛
炭素質負極活物質G:D50粒子径16.9μmの黒鉛
炭素質負極活物質H:D50粒子径16.7μmの黒鉛
炭素質負極活物質I:D50粒子径15.8μmの黒鉛
【0050】
《抵抗の測定》
-10℃に制御された雰囲気において、SOC60%の状態から、2Cで10分間通電した。充電後電圧と充電前電圧との差及び電流値から、抵抗を測定した。
【0051】
実施例及び比較例の構成及び評価結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1から、配向度I004/I110が、1.00以上、2.00以下であり、かつラマンマッピング測定で得られる、Dバンドのピーク強度の、Gバンドのピーク強度に対する比である、炭素質負極活物質のD/Gの度数分布において、最頻値が0.50以上、0.80以下であり、最頻値を有するピークの半値幅が0.3以上、0.6以下である、実施例の負極活物質層を有する二次電池は、低い抵抗が実現できていることが理解できよう。
【0054】
また、図示していないが、実施例3の炭素質負極活物質のラマンマッピングでは、D/Gの値が0.5以上0.8以下である領域Aが一様に分布していた領域Aと、D/Gの値がこの範囲外である領域Bとの位置関係は、領域Aを海、領域Bを島とする海島構造のような位置関係であった。
【符号の説明】
【0055】
10 正極
11 正極活物質層
12 正極集電体
20 セパレータ
30 負極
31 負極活物質層
32 負極集電体
100 二次電池
図1