(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60L 58/27 20190101AFI20250708BHJP
H01M 10/6571 20140101ALI20250708BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20250708BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20250708BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20250708BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20250708BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20250708BHJP
【FI】
B60L58/27
H01M10/6571
H01M10/633
H01M10/625
H01M10/6556
H01M10/6568
H01M10/615
(21)【出願番号】P 2023084611
(22)【出願日】2023-05-23
【審査請求日】2024-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】道家 理雄
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-156234(JP,A)
【文献】特開2020-166946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 -13/00
B60L 15/00 -58/40
H01M 10/613-10/6571
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電システムを備える車両であって、
前記蓄電システムは、
蓄電装置と、
電力を用いて前記蓄電装置を加熱可能に構成される第1ヒータおよび第2ヒータと、
制御装置とを備え
、
前記車両は、
第1熱媒体が流れる第1流路と、
前記第1熱媒体との熱交換により前記車両の内部の空調を行う空調装置と、
前記蓄電装置と熱交換を行う第2熱媒体が流れる第2流路と、
前記第1熱媒体と前記第2熱媒体との間における熱伝達を行う熱伝達機構と、
をさらに備え、
前記第1ヒータは、前記第1流路に設けられており、
前記第2ヒータは、前記第2流路に設けられており、
前記制御装置は、
前記第1ヒータおよび前記第2ヒータの両方を用いて前記蓄電装置を加熱する第1加熱制御と、
前記第1ヒータおよび前記第2ヒータのうち前記第2ヒータのみを用いて前記蓄電装置を加熱する第2加熱制御と、
を実行可能に構成され、
前記制御装置は、前記蓄電装置の充電開始時に所定の加熱条件が成立する場合に前記第1加熱制御を実行し、前記蓄電装置の充電中かつ前記第1加熱制御の実行中に所定の切替条件が成立すると、前記第1加熱制御に代えて前記第2加熱制御を実行
し、
前記蓄電装置の充電は、車両外部の給電設備から供給される電力による前記蓄電装置の充電であり、
前記制御装置は、前記給電設備を用いた前記蓄電装置の充電開始時に、前記給電設備の出力性能と、前記第2熱媒体の温度とを用いて、前記所定の加熱条件が成立するか否かを判断する、車両。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1加熱制御の実行中に、前記蓄電装置の温度に基づいて前記第1ヒータによる加熱量を制御し、
前記所定の切替条件は、前記第1加熱制御を開始してから所定時間が経過したときに成立する、請求項1に記載の
車両。
【請求項3】
前記蓄電装置は、複数のセルが接続されて構成される組電池であり、
前記蓄電システムは、前記組電池に含まれる前記複数のセルの各々のセル温度を検出するセル温度センサをさらに備え、
前記所定の切替条件は、前記蓄電装置の充電中かつ前記第1加熱制御の実行中に前記組電池において最も低い前記セル温度が所定温度以上になると成立する、請求項1に記載の
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電システム、および蓄電システムが搭載された車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-113383号公報(特許文献1)には、蓄電池の周辺に設けられた電気ヒータによって蓄電池を加熱する蓄電システム(詳しくは、蓄電池の充電システム)が開示されている。この蓄電システムでは、蓄電池の周辺に設けられた充電器が通電によって発熱することを利用して、電気ヒータだけでなく充電器によっても蓄電池を加熱する。特許文献1に記載される蓄電システムでは、電動車両の始動時または充電時において、電動車両の蓄電池の有効容量を増やすために蓄電池を加熱している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術では、充電器の発熱を利用することで、蓄電装置の加熱のために使用する電気ヒータの数を増やすことなく、蓄電装置を加熱するための熱量(加熱量)を増やしている。こうした技術では、蓄電装置の周辺に設けられた電気ヒータおよび充電器を用いて蓄電装置を加熱するため、エネルギー損失は少ないかもしれない。しかしながら、電気ヒータによる加熱量と比べて充電器による加熱量は小さい。このため、必ずしも十分な加熱量が得られるとは限らない。
【0005】
例えば、蓄電装置の充電開始時に蓄電装置が低温状態になっていると、蓄電装置の受入れ可能な電流が低下することに起因して充電電力が制限され、蓄電装置の充電時間(すなわち、蓄電装置の充電が完了するまでにかかる時間)が長くなるという問題が生じ得る。蓄電装置の充電時間を短縮するためには、蓄電装置の充電開始時に低温状態の蓄電装置を早期に十分な温度まで昇温させることが求められる。上記特許文献1に記載された技術によって、蓄電装置の充電開始時に低温状態の蓄電装置を早期に十分な温度まで昇温させることは難しい。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、エネルギー効率の低下を抑制しつつ、蓄電装置の充電開始時に蓄電装置を早期に十分な温度まで昇温させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る蓄電システムは、蓄電装置と、電力を用いて蓄電装置を加熱可能に構成される第1ヒータおよび第2ヒータと、制御装置とを備える。第1ヒータは、第2ヒータよりも蓄電装置から離れて配置されている。制御装置は、第1ヒータおよび第2ヒータの両方を用いて蓄電装置を加熱する第1加熱制御と、第1ヒータおよび第2ヒータのうち第2ヒータのみを用いて蓄電装置を加熱する第2加熱制御とを実行可能に構成される。制御装置は、蓄電装置の充電開始時に所定の加熱条件が成立する場合に第1加熱制御を実行する。そして、制御装置は、蓄電装置の充電中かつ第1加熱制御の実行中に所定の切替条件が成立すると、第1加熱制御に代えて第2加熱制御を実行する。
【0008】
蓄電システムにおいて、蓄電装置の周辺に複数の電気ヒータが配置されることは少ない。しかしながら、蓄電装置の近くに1つの電気ヒータが配置され、蓄電装置から離れた位置に別の電気ヒータが配置されている蓄電システムは多い。そこで、上記構成では、複数の電気ヒータ(第1および第2ヒータ)を用いて蓄電装置を加熱する。ただし、蓄電装置の昇温のために消費されるエネルギーは、蓄電装置の近くに存在する電気ヒータ(第2ヒータ)よりも、蓄電装置から離れた位置に存在する電気ヒータ(第1ヒータ)のほうが多くなる傾向がある。蓄電装置から離れた位置で発せられるエネルギー(熱)の一部は蓄電装置に伝達されるまでに失われる。このため、第1ヒータによる蓄電装置の加熱よりも、第2ヒータによる蓄電装置の加熱のほうが、エネルギー効率が高いと考えられる。
【0009】
この点、上記制御装置は、蓄電装置の充電開始時に所定の加熱条件が成立する場合に、第1加熱制御を実行する。こうした制御によれば、蓄電装置の充電開始時に必要に応じて第1加熱制御を実行し、第1および第2ヒータによって蓄電装置を早期に十分な温度まで昇温させることが可能になる。上記所定の加熱条件は、第2ヒータだけでは加熱量が足りない場合に成立してもよい。
【0010】
さらに、上記制御装置は、所定の切替条件が成立すると、第1加熱制御から第2加熱制御に切り替える。こうした制御によれば、第1加熱制御によって蓄電装置が十分な温度まで昇温した後、第2加熱制御によって蓄電装置の温度を調整すること(例えば、保温)が可能になる。上記所定の切替条件は、第2ヒータだけで十分な加熱量を確保できるようになった場合に成立してもよい。第1加熱制御から第2加熱制御に切り替わることで、相対的にエネルギー効率が低い第1ヒータによる蓄電装置の加熱が停止され、相対的にエネルギー効率が高い第2ヒータによる蓄電装置の加熱のみが継続される。これにより、エネルギー効率の低下が抑制される。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、エネルギー効率の低下を抑制しつつ、蓄電装置の充電開始時に蓄電装置を早期に十分な温度まで昇温させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施の形態に係る車両の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1に示した蓄電装置の周辺の構成を示す図である。
【
図3】本開示の実施の形態に係る充電制御を示すフローチャートである。
【
図4】本開示の実施の形態に係る蓄電システムの第1および第2ヒータ制御、ならびに第1動作例について説明するための図である。
【
図5】本開示の実施の形態に係る蓄電システムの第2動作例を示す図である。
【
図6】
図4に示した処理の変形例および第3動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0014】
図1は、この実施の形態に係る車両の概略構成を示す図である。
図1に示すように、車両1は、この実施の形態に係る蓄電システムが搭載された電動車(xEV)である。車両1は、例えば4輪のBEV(電気自動車)である。ただし、車両1は、例えばプラグインハイブリッド車のような他の電動車であってもよい。また、車両1は非接触充電可能に構成されてもよい。車輪の数も任意であり、3輪でも5輪以上でもよい。
【0015】
車両1は、熱管理回路100と、ECU(Electronic Control Unit)500とを備える。ECU500は、プロセッサ501とRAM(Random Access Memory)502と記憶装置503とを含む。プロセッサ501としては、例えばCPU(Central Processing Unit)を採用できる。記憶装置503は、格納された情報を保存可能に構成される。記憶装置503には、プログラムのほか、プログラムで使用される情報(マップ、数式、各種パラメータなど)が記憶されている。この実施の形態では、記憶装置503に記憶されているプログラムをプロセッサ501が実行することで、ECU500における各種制御(例えば、
図3,
図4参照)が実行される。ただし、ECU500における各種制御は、ソフトウェアではなくハードウェア(電子回路)によって実行されてもよい。
【0016】
熱管理回路100は、熱媒体を用いて車両1の熱管理を行うように構成される。熱管理回路100は、第1回路110と第2回路120と第3回路130とを含む。また、熱管理回路100は、コンデンサ140と、冷凍サイクル150と、チラー160と、五方弁310と、リザーバタンク(R/T)320とを備える。五方弁310およびリザーバタンク320は、第2回路120と第3回路130とで共用される。また、コンデンサ140、冷凍サイクル150、およびチラー160は、第1回路110と第2回路120との間に配置され、本開示に係る「熱伝達機構」の一例として機能する。
【0017】
第1回路110は、第1熱媒体が流れる第1流路を含む。第1回路110は、ポンプ111と、電気ヒータ112(第1ヒータ)と、三方弁113と、ヒータコア114と、リザーバタンク(R/T)115と、ラジエータ118とを含む。三方弁113は第1熱媒体の経路を切り替える。ポンプ111は第1回路110に第1熱媒体を循環させる。具体的には、ポンプ111は、リザーバタンク115から吸い上げた第1熱媒体を、コンデンサ140、電気ヒータ112、三方弁113によって接続されたヒータコア114またはラジエータ118の順に通過させた後、リザーバタンク115に戻す。第1熱媒体は通過の際に各機器と熱交換を行う。ポンプ111、電気ヒータ112、および三方弁113は、ECU500によって制御される。ラジエータ118は熱交換器として機能する。ラジエータ118により、第1回路110を流れる第1熱媒体と外気とが熱交換する。
【0018】
五方弁310は第2熱媒体の経路を切り替える。五方弁310は5つのポートP1~P5を備える。ECU500は、以下に説明する第1~第5接続パターンのいずれかになるように五方弁310を制御する。以下では、ポートP1、P2、P3、P4、P5をそれぞれ、単に「P1」、「P2」、「P3」、「P4」、「P5」と表記する場合がある。
【0019】
第1接続パターンでは、P1とP2が接続され、かつ、P3とP4が接続され、かつ、P5が非接続状態になる。第2接続パターンでは、P1とP2が接続され、かつ、P4とP5が接続され、かつ、P3が非接続状態になる。第3接続パターンでは、P1とP5が接続され、かつ、P3とP4が接続され、かつ、P2が非接続状態になる。第4接続パターンでは、P2とP4が接続され、かつ、P1とP3が接続され、かつ、P5が非接続状態になる。第5接続パターンでは、P2とP4が接続され、かつ、P1とP5が接続され、かつ、P3が非接続状態になる。
【0020】
五方弁310のポートP1、P2にはそれぞれ流路120a、120bが接続されている。流路120aは、ポートP1とリザーバタンク320とをつなぐ流路である。流路120bは、ポートP2とリザーバタンク320とをつなぐ流路である。五方弁310のP1とP2が接続されることで(例えば、第1,第2接続パターン)、流路120aおよび120bを含む第2回路120が形成される。
【0021】
流路120aには、ポンプ121と、後述するチラー160とが配置されている。流路120bには、バッテリ200と、電気ヒータ220(第2ヒータ)とが配置されている。ポンプ121は第2回路120に第2熱媒体を循環させる。具体的には、ポンプ121は、リザーバタンク320から吸い上げた第2熱媒体を、チラー160、五方弁310、電気ヒータ220、バッテリ200の順に通過させた後、リザーバタンク320に戻す。第2熱媒体は通過の際に各機器と熱交換を行う。流路120bには、バッテリ200と熱交換を行う第2熱媒体が流れる。ポンプ121および電気ヒータ220は、ECU500によって制御される。バッテリ200には、バッテリ200の状態を監視するBMS(Battery Management System)210が設けられている。
【0022】
五方弁310のポートP3、P4にはそれぞれ流路130b、130aが接続されている。流路130b、130aは、それぞれポートP3、P4とリザーバタンク320とをつなぐ流路である。五方弁310のP3とP4が接続されることで(例えば、第1,第3接続パターン)、流路130aおよび130bを含む第3回路130が形成される。
【0023】
この実施の形態では、第2回路120を循環する熱媒体と同種の熱媒体(第2熱媒体)が第3回路130を循環する。なお、第1回路110を循環する第1熱媒体は、第2熱媒体とは異なる種類の熱媒体である。また、後述する冷凍サイクル150で使用される第3熱媒体も、第1および第2熱媒体とは異なる種類の熱媒体である。例えば、第1熱媒体は暖房用の公知の熱媒体であってもよい。第2熱媒体は絶縁油または不凍液であってもよい。第3熱媒体は冷凍サイクル用の公知の熱媒体であってもよい。ただしこれに限られず、第1~第3熱媒体の各々は適宜変更可能である。
【0024】
流路130aには、ポンプ131と、SPU(Smart Power Unit)132と、フロントモータ用PCU(Fr-PCU)133と、リアモータ用PCU(Rr-PCU)134と、オイルクーラ(O/C)135,136とが配置されている。ポンプ131は第3回路130に第2熱媒体を循環させる。具体的には、ポンプ131は、リザーバタンク320から吸い上げた第2熱媒体を、SPU132、Fr-PCU133、Rr-PCU134、オイルクーラ135、オイルクーラ136、五方弁310の順に通過させた後、リザーバタンク320に戻す。第2熱媒体は通過の際に各機器と熱交換を行う。SPU132はバッテリ200の車載充放電器(充電器および放電器)として機能する。ただし、車両1が外部給電機能(例えばV2H機能)を有することは必須ではない。SPU132は、例えば電力変換回路を含む。PCUは「Power Control Unit」を意味する。Fr-PCU133およびRr-PCU134の各々は、バッテリ200から供給される電力を用いて、図示しないMG(モータジェネレータ)を駆動する。MGが出力するトルクはトランスアスクル(T/A)を介して車両1の駆動輪を回転させる。バッテリ200は走行用蓄電装置として機能する。各PCUは双方向インバータを含んでもよい。SPU132および各PCUは、ECU500によって制御される。T/Aは動力伝達機構として機能する。オイルクーラ135,136の各々は、電動オイルポンプ(EOP)によって車両1のT/Aに供給されるオイルを冷却する。オイルクーラ135,136を流れる第2熱媒体は、T/A用のオイルと熱交換を行う。流路130aを流れる第2熱媒体の温度を検出する1つ以上の温度センサが所定部位(例えば、各PCUの近傍)に設けられてもよい。
【0025】
五方弁310のポートP5には流路170aが接続されている。流路170aは、ポートP5とリザーバタンク320とをつなぐ流路である。流路170aにはラジエータ170が設けられている。ラジエータ170は熱交換器として機能する。ラジエータ170により、流路170aを流れる熱媒体と外気とが熱交換する。ECU500は、五方弁310により流路120aまたは130aを流路170aと接続することによって、ラジエータ170における熱交換によって第2熱媒体を冷却することができる。
【0026】
冷凍サイクル150には第3熱媒体が循環する。冷凍サイクル150は、コンプレッサ151と、電気式膨張弁152と、エバポレータ153と、蒸発圧力調整弁(EPR:Evaporative Pressure Regulator)154と、電気式膨張弁155とを含む。コンデンサ140は、第1回路110と冷凍サイクル150との両方に接続され、熱交換器として機能する。コンデンサ140により、第1回路110を流れる第1熱媒体と冷凍サイクル150を循環する第3熱媒体とが熱交換する。チラー160は、冷凍サイクル150と流路120aとの両方に接続され、熱交換器として機能する。五方弁310が第1または第2接続パターンであるときには、チラー160により、冷凍サイクル150を循環する第3熱媒体と第2回路120を流れる第2熱媒体とが熱交換する。このように、コンデンサ140、冷凍サイクル150、およびチラー160は、第1回路110を流れる第1熱媒体と第2回路120を流れる第2熱媒体との間における熱伝達を行うように構成される。冷凍サイクル150(コンプレッサ151および各種弁を含む)は、ECU500によって制御される。冷凍サイクル150を流れる第3熱媒体の圧力および温度をそれぞれ検出する1つ以上の圧力センサおよび1つ以上の温度センサが所定部位に設けられてもよい。
【0027】
図2は、バッテリ200およびBMS210の構成を示す図である。
図2を参照して、バッテリ200は、N個のセル2-1~2-Nが接続されて構成される組電池である。Nは、2以上の自然数であり、2以上100未満でも100以上でもよい。セル2-1~2-Nは直列に接続されている。しかし、組電池におけるセルの接続態様は、直列に限られず、並列接続を含んでもよい。電気ヒータ220は、バッテリ200の近傍に配置され、流路120bを流れる第2熱媒体を加熱するように構成される。
【0028】
BMS210は、バッテリ200(組電池)を流れる電流を検出する電流センサ211と、セル2-1~2-Nにそれぞれ対応する電圧センサ212-1~212-Nおよび温度センサ213-1~213-Nと、バッテリ200の雰囲気温度を検出する温度センサ215とを備える。温度センサ215は、流路120bを流れる第2熱媒体の温度をバッテリ200の近傍で検出する。各センサによる検出結果は、ECU500に入力される。
【0029】
ECU500は、各センサからの信号に基づき、バッテリ200の電流と、バッテリ200の雰囲気温度と、バッテリ200のセルごとの電圧および温度とを取得できる。また、ECU500は、各センサによる検出結果からセルごとのSOC(State Of Charge)を算出できる。SOCは、満充電状態の蓄電量に対する現在の蓄電量の割合を、例えば0~100%で表わしたものである。なお、BMS210の構成は適宜変更可能である。
【0030】
車両1は、インレット250を備える。インレット250は充電口として機能する。EVSE(Electric Vehicle Supply Equipment)800は、EVSE800の本体から外側に向かって延びる充電ケーブル810を備える。インレット250は、充電ケーブル810のコネクタ820(先端部)が着脱可能に構成される。EVSE800の本体につながる充電ケーブル810のコネクタ820が駐車状態の車両1のインレット250に接続されることで、車両1はEVSE800と電気的に接続された状態(プラグイン状態)になる。EVSE800と電力系統PGとは電気的に接続されている。このため、プラグイン状態の車両1は電力系統PGと電気的に接続される。電力系統PGは、送配電設備によって構築される電力網である。電力系統PGには、複数の発電所が接続されている。
【0031】
プラグイン状態の車両1が外部充電(車両外部からの電力によるバッテリ200の充電)を行う場合には、電力系統PGから供給される電力がEVSE800を介してインレット250に入力される。SPU132は、インレット250に入力された電力を用いて、ECU500からの指示に従う充電電力を生成して、生成された充電電力をバッテリ200に入力する。EVSE800は、例えば交流電力をインレット250に供給する。SPU132は、充電電力を生成するためにAC/DC変換および変圧を行ってもよい。ただし、EVSE800の給電方式はAC方式に限られずDC方式であってもよい。
【0032】
車両1に搭載された空調装置2は、第1回路110および冷凍サイクル150を用いて車両1の内部の空調(暖房および冷房)を行う。電気ヒータ112は、ECU500からの指令に従って、第1回路110における第1熱媒体を加熱する。ヒータコア114は、第1熱媒体との熱交換により車室内の空気を暖める。また、冷凍サイクル150のエバポレータ153が車室内の空気を冷却する。
【0033】
バッテリ200は、
図1に示した熱管理回路100に含まれる各種機器に電力を供給する。バッテリ200は、図示しない第1電力変換回路(例えばDC/DCコンバータ)を介して電気ヒータ112に電力を供給してもよい。バッテリ200は、図示しない第2電力変換回路(例えばDC/DCコンバータ)を介して電気ヒータ220に電力を供給してもよい。この実施の形態では、電気ヒータ112の駆動電圧が電気ヒータ220の駆動電圧よりも高い。電気ヒータ220よりも電気ヒータ112のほうが最大発熱量が大きい。電気ヒータ220よりも電気ヒータ112のほうが最大発熱時のエネルギー消費量が大きい。なお、熱管理回路100に含まれる各種機器の少なくとも1つは、バッテリ200以外の車載バッテリ(例えば、図示しない補機バッテリ)から電力の供給を受けてもよい。
【0034】
図3は、ECU500によって実行される充電制御に係る処理を示すフローチャートである。フローチャート中の各ステップは、「S」と表記される。このフローチャートに示される処理は、例えば上記外部充電(プラグイン充電)の開始条件が成立したときに開始される。具体的には、車両1がプラグイン状態(
図2参照)になったときに、外部充電の開始条件が成立するとともに、以下に示す処理フロー(S11~S19)が開始されてもよい。ただし、ECU500による故障診断の結果、熱管理回路100の故障が発見された場合には、外部充電の開始条件が成立しないようにしてもよい。
【0035】
図3を参照して、S11では、ECU500が、車両1に接続された給電設備(例えば、EVSE800)の仕様を示すEVSE情報と、現在のバッテリ200の温度を示すバッテリ温度情報とを取得する。EVSE情報は、給電設備の出力性能(例えば、定格出力)を示す情報を含む。定格出力は、仕様で定められた給電設備が出力可能な最大電力値(kW)に相当する。ECU500は、車両1に接続された給電設備と通信することにより、給電設備からEVSE情報を受信してもよい。バッテリ温度情報は、BMS210によって検出されたバッテリ200の雰囲気温度(第2熱媒体の温度)を含む。以下、S11で取得された給電設備の定格出力を、「EVSE出力」とも称する。また、S11で取得されたバッテリ200の雰囲気温度を、「バッテリ温度」とも称する。
【0036】
S12では、ECU500が、S11で取得した情報に基づいて初期のヒータ制御条件を決定する。詳しくは、記憶装置503はマップM1を予め記憶している。マップM1は、EVSE出力とバッテリ温度とが入力されると、入力された値に応じたヒータ制御条件を出力する。ヒータ制御条件は、駆動されるヒータの識別情報と、ヒータの駆動量(発熱量)と、ヒータ制御で使用される目標温度とを含む。バッテリ200の外部充電中に駆動されるヒータは、電気ヒータ112および220の少なくとも一方である。詳しくは、ECU500は、バッテリ200の外部充電中に、電気ヒータ112および220の両方を用いてバッテリ200を加熱する第1加熱制御(マップM1中には「加熱A」と表記する)と、電気ヒータ112および220のうち電気ヒータ220のみを用いてバッテリ200を加熱する第2加熱制御(マップM1中には「加熱B」と表記する)とのいずれか一方を、必要に応じて実行する。また、ECU500は、バッテリ200の外部充電中に「ヒータ駆動なし」を採用する(すなわち、電気ヒータ112および220のいずれも駆動しない)こともある(マップM1中には「-」と表記する)。以下では、初期のヒータ制御条件を、単に「初期条件」と称する場合がある。
【0037】
図3に示すマップM1は、EVSE出力が3.3kW、7kW、11kWである場合に適した初期条件をそれぞれ規定している。EVSE出力11kW,7kWの各々に関しては、バッテリ温度が第1閾値以上である場合は「ヒータ駆動なし」が、バッテリ温度が第2閾値以上第1閾値未満である場合は第2加熱制御が、バッテリ温度が第2閾値未満である場合は第1加熱制御が、初期条件として定められる。ただし、EVSE出力11kWにおける第1閾値(例えば5℃)および第2閾値(例えば-10℃)は、それぞれEVSE出力7kWにおける第1閾値(例えば0℃)および第2閾値(例えば-15℃)よりも高い。また、定格出力3.3kWに関しては、バッテリ温度が所定値(例えば-5℃)以上である場合は「ヒータ駆動なし」が、バッテリ温度が上記所定値未満である場合は第2加熱制御が、初期条件として定められる。
【0038】
初期条件における電気ヒータ220の発熱量は、EVSE出力11kW、7kW、3.3kWのいずれにおいても同じ(例えば700W)である。初期条件における電気ヒータ112の発熱量に関しては、EVSE出力11kWの値(例えば7000W)がEVSE出力7kWの値(例えば5000W)よりも高い。第1加熱制御に関して、電気ヒータ112の発熱量は電気ヒータ220の発熱量の5倍以上に設定されてもよい。
【0039】
ヒータ制御における目標温度は、EVSE出力が大きくなるほど高くなる。第1加熱制御のための第1目標温度は、例えば、EVSE出力11kW、7kWに関してそれぞれ10℃、5℃である。第2加熱制御のための第2目標温度は、例えば、EVSE出力11kW、7kW、3.3kWに関してそれぞれ5℃、0℃、-5℃である。バッテリ200の充電可能電力の温度特性に基づいて各目標温度が予め定められてもよい。温度0℃未満の低温領域においては、バッテリ200の温度が高くなるほどバッテリ200の充電可能電力が大きくなる。この実施の形態では、第2目標温度が第1目標温度よりも低い。
【0040】
上記のように、
図3に示すマップM1によれば、EVSE出力が大きくなるほど、駆動されるヒータの数は多くなり、ヒータの駆動量は大きくなり、目標温度は高くなる。S12では、ECU500が、こうしたマップM1を用いて、S11で取得したEVSE出力およびバッテリ温度に応じた初期条件を決定する。車両1に接続された給電設備の定格出力が3.3kW、7kW、11kWのいずれにも一致しない場合には、ECU500は、最も近い定格出力(3.3kW、7kW、11kWのいずれか)に対応する初期条件を採用してもよい。
【0041】
続くS13では、ECU500が、S12で決定された初期条件に従うバッテリ200の熱管理(第1加熱制御、第2加熱制御、またはヒータ駆動なし)を実行しながら、バッテリ200の外部充電を実行する。この実施の形態では、ECU500が、五方弁310を第1接続パターンにした状態(例えば、
図5参照)でポンプ111,121,131を駆動し、S12で決定された条件で電気ヒータ112および220を制御する。例えば、第1加熱制御では、電気ヒータ112による発熱が第1熱媒体、コンデンサ140、第3熱媒体(冷凍サイクル150)、チラー160、および第2熱媒体を介してバッテリ200に伝達されるとともに、電気ヒータ220による発熱が第2熱媒体を介してバッテリ200に伝達される。これにより、バッテリ200の温度は上昇する。また、ECU500は、車両外部の給電設備から供給される電力によってバッテリ200の充電が実行されるようにSPU132を制御する。これにより、バッテリ200のSOCは上昇する。
【0042】
続くS14では、ECU500が、BMS210によって検出された現在のバッテリ200のSOCを取得する。続けて、ECU500は、S15において、充電終了条件が成立したか否かに基づいて充電を終了するか否かを判断する。充電終了条件は、例えばバッテリ200のSOCが目標値に到達した場合に成立する。目標値は100%(満充電を示すSOC値)であってもよい。なお、充電終了条件は適宜変更可能である。
【0043】
充電終了条件が成立しない場合には(S15にてNO)、処理がS16に進む。S16では、ECU500が、BMS210によって検出された現在のバッテリ200の各セルの温度を取得する。以下、S16で取得された各セルの温度のうち、最も高いセル温度を「最高セル温度」、最も低いセル温度を「最低セル温度」と称する。
【0044】
続くS17では、電気ヒータ112が作動中か否かを、ECU500が判断する。S13で第1加熱制御が実行されている場合には、S17でYESと判断され、処理がS18に進む。他方、S13で第1加熱制御が実行されていない場合には、S17でNOと判断され、処理がS19に進む。
図4は、S18およびS19について説明するための図である。第1ヒータ制御(S18)は、S181~S184を含む。第2ヒータ制御(S19)は、S191~S193を含む。
【0045】
図4を参照して、第1ヒータ制御(S18)では、S181において、最低セル温度(
図3のS16)が第1目標温度(初期条件)以上になったか否かを、ECU500が判断する。最低セル温度が第1目標温度未満である場合には(S181にてNO)、電気ヒータ112が初期条件で作動したまま、処理がS19に進む。この場合、第1加熱制御は継続される。他方、最低セル温度が第1目標温度以上である場合には(S181にてYES)、S182で、電気ヒータ112が初期条件よりも小さい発熱量で作動(弱作動)するように、ECU500が電気ヒータ112を制御する。その後、処理はS183に進む。
【0046】
S183では、ECU500が、電気ヒータ112の作動時間(作動開始からの経過時間)が所定の閾値を超えたか否かを判断する。閾値は、電気ヒータ112の部品耐久性に応じて定められた限界値(許容作動時間)であってもよい。電気ヒータ112の作動時間が上記閾値を超えない場合には(S183にてNO)、電気ヒータ112が弱作動(S182)の状態で、処理がS19に進む。この場合、第1加熱制御は継続される。他方、電気ヒータ112の作動時間が上記閾値を超えた場合には(S183にてYES)、ECU500が、S184で電気ヒータ112を停止する。これにより、第1加熱制御から第2加熱制御に切り替わる。その後、処理がS19に進む。
【0047】
第2ヒータ制御(S19)では、ECU500が、S191において、第1加熱制御と第2加熱制御とヒータ駆動なしとのいずれで熱管理が行われているかを判断する。S191で「ヒータ駆動なし」(初期条件)と判断された場合には、処理は
図3のS13に戻る。S191で「第1加熱制御」と判断された場合には、ECU500が、S192において、初期条件の発熱量(固定条件)で電気ヒータ220を制御する。その後、処理が
図3のS13に戻り、ECU500は、S18,S19で決められた条件に従う第1加熱制御とともにバッテリ200の外部充電を実行する。S191で「第2加熱制御」と判断された場合には、ECU500が、S193において、最高セル温度(
図3のS16)および第2目標温度(初期条件)に基づいて電気ヒータ220を制御する。その後、処理が
図3のS13に戻り、ECU500は、S193で決められた条件に従う第2加熱制御とともにバッテリ200の外部充電を実行する。
【0048】
図4において、タイムチャートEx1は、EVSE出力「7kW」およびバッテリ温度「-30℃」に応じた初期条件の下、上記第1および第2ヒータ制御が実行されたときの状態推移(第1動作例)を示す。タイムチャートEx1において、線L1、L2、L11、L12、L13、L20は、それぞれ第1目標温度、第2目標温度、バッテリ温度、最高セル温度、最低セル温度、SOCを示す。また、領域E1、E2、E3、E4は、給電設備から車両1に供給される電力のうち、それぞれ電気ヒータ112の駆動、電気ヒータ220の駆動、バッテリ200の充電、エネルギー損失(放熱など)で消費される電力量を示す。タイムチャート中の「t」はタイミングを意味する。
【0049】
タイムチャートEx1では、初期条件に従って第1加熱制御が実行される。その後、t11で、最低セル温度(線L13)が第1目標温度(線L1)に到達し、電気ヒータ112が弱作動状態になる。t12で、電気ヒータ112の作動時間が閾値を超え、電気ヒータ112が停止する。これにより、第1加熱制御に代えて第2加熱制御が実行される。また、第2目標温度(線L2)と比べて最高セル温度(線L12)が高いため、ECU500は電気ヒータ220を休止状態(略停止状態)にする。その後、t13で、ECU500は、最高セル温度を第2目標温度に保つために再び電気ヒータ220を作動させる。
【0050】
再び
図3を参照して、S13では、バッテリ200の熱管理および外部充電が実行される。そして、充電終了条件が成立すると(S15にてYES)、
図3に示す一連の処理は終了する。
図5は、この実施の形態に係る蓄電システムの第2動作例を示す図である。タイムチャートEx2は、EVSE出力「11kW」およびバッテリ温度「-20℃」に応じた初期条件の下、
図3および
図4に示した第1および第2ヒータ制御が実行されたときの状態推移(第2動作例)を示す。
図5に示すタイムチャートEx2中の線および領域は、
図4に示したタイムチャートEx1に準ずる。タイムチャートEx2では、初期条件に従って第1加熱制御が実行される。
図5中に示すように、ECU500は、五方弁310を第1接続パターンにした状態でバッテリ200の熱管理および外部充電(
図3のS13)を実行する。そして、第1加熱制御の実行中に、切替条件が成立することなく、充電終了条件が成立する。これにより、バッテリ200の熱管理および外部充電は終了する。
【0051】
以上説明したように、この実施の形態に係る熱管理方法は、
図3および
図4に示した各処理を含む。この実施の形態に係る蓄電システムは、蓄電装置(バッテリ200)と、電力を用いて蓄電装置を加熱可能に構成される第1ヒータ(電気ヒータ112)および第2ヒータ(電気ヒータ220)と、制御装置(ECU500)とを備える。電気ヒータ112は、電気ヒータ220よりもバッテリ200から離れて配置されている。ECU500は、バッテリ200の充電開始時に所定の加熱条件が成立する場合に第1加熱制御を実行する。ECU500は、バッテリ200の充電中かつ第1加熱制御の実行中に所定の切替条件が成立すると、第1加熱制御に代えて第2加熱制御を実行する。
【0052】
電気ヒータ112によるバッテリ200の加熱よりも、電気ヒータ220によるバッテリ200の加熱のほうが、エネルギー効率が高い。上記制御によれば、バッテリ200の充電開始時に必要に応じて第1加熱制御を実行し、電気ヒータ112および220によってバッテリ200を早期に十分な温度まで昇温させることが可能になる。さらに、上記制御によれば、第1加熱制御によってバッテリ200が十分な温度まで昇温した後、電気ヒータ112を停止し、第2加熱制御によってバッテリ200の温度を調整すること(例えば、保温)が可能になる。これにより、エネルギー効率の低下が抑制される。
【0053】
この実施の形態では、ECU500が、第1加熱制御の実行中に、バッテリ200の温度に基づいて電気ヒータ112による加熱量を制御する(
図4のS181,S182)。そして、第1加熱制御を開始してから所定時間が経過したときに(
図4のS183にてYES)、上記所定の切替条件が成立する。こうした構成によれば、第1加熱制御の実行中に電気ヒータ112による加熱量を適切な量(バッテリ200の昇温のために必要十分な量)に制御しやすくなる。また、第1加熱制御を長時間継続するとエネルギー効率が悪化する可能性がある。この点、上記構成では、第1加熱制御を開始してから所定時間が経過したタイミングで、ECU500が第1加熱制御から第2加熱制御に切り替える。これにより、エネルギー効率の低下が抑制される。
【0054】
図1および
図2に示した車両1は、第1熱媒体が流れる第1流路(第1回路110)と、第1熱媒体との熱交換により車両1の内部の空調を行う空調装置2と、バッテリ200と熱交換を行う第2熱媒体が流れる第2流路(流路120b)と、第1熱媒体と第2熱媒体との間における熱伝達を行う熱伝達機構(コンデンサ140、冷凍サイクル150、チラー160)とを備える。電気ヒータ112は第1流路に設けられている。電気ヒータ220は第2流路に設けられている。こうした構成では、第1流路(第1熱媒体)、第2流路(第2熱媒体)、および熱伝達機構によって、車両1の熱マネージメントを好適に行うことができる。また、空調装置2のための電気ヒータ112をバッテリ200の加熱に利用するため、バッテリ200の加熱のために専用の電気ヒータを追加しなくてもよい。
【0055】
また、車両1のECU500は、給電設備(例えば、EVSE800)を用いたバッテリ200の充電開始時に、給電設備の出力性能(例えば、定格出力)と、第2熱媒体の温度とを用いて、上記所定の加熱条件が成立するか否かを判断する。具体的には、
図3に示したマップM1が加熱条件を規定する。こうした構成によれば、バッテリ200の充電開始時に、第2加熱制御よりもエネルギー消費量が多くなる第1加熱制御を実行する必要があるか否かを的確に判断しやすくなる。第2熱媒体の温度は、バッテリ200の雰囲気温度に相当する。災害(例えば落雷)または発電機の異常などによって給電設備の出力性能が定格出力よりも低下している場合には、ECU500が、給電設備の最新の出力性能(例えば、最大出力値)を取得して、定格出力の代わりに最新の出力性能を用いてもよい。
【0056】
上記の加熱条件および切替条件の各々は適宜変更可能である。
図3,
図4に示した処理フローは適宜変更可能である。例えば、目的に応じて、処理の順序が変更されてもよいし、不要なステップが省かれてもよい。また、いずれかの処理の内容が変更されてもよい。
【0057】
図6は、
図4に示した処理の変形例を示す図である。
図6に示すタイムチャートEx3(第3動作例)中の線および領域は、
図4に示したタイムチャートEx1に準ずる。
図6に示すS18Aでは、
図4に示した処理におけるS182およびS183が省かれている。タイムチャートEx3では、初期条件に従って第1加熱制御が実行され、t30で、最低セル温度(線L13)が第1目標温度(線L1)に到達する(S181にてYES)。これにより、切替条件が成立し、S184において電気ヒータ112が停止する。第2加熱制御では、ECU500が最高セル温度(線L12)を第2目標温度(線L2)に近づけるように電気ヒータ220を制御する(S193)。
【0058】
上記変形例に係る蓄電システムは、バッテリ200(組電池)に含まれる複数のセルの各々のセル温度を検出するセル温度センサ(
図2に示す温度センサ213-1~213-N)を備える。そして、バッテリ200の充電中かつ第1加熱制御の実行中にバッテリ200において最も低いセル温度が所定温度以上になると(S181にてYES)、前述の切替条件が成立する。このため、組電池に含まれる全てのセルの温度を早期に所定温度(例えば、セルの充電が適切に行われる温度)まで昇温させることが可能になる。
【0059】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
1 車両、2 空調装置、2-1~2-N セル、100 熱管理回路、110 第1回路、112 電気ヒータ、120 第2回路、130 第3回路、140 コンデンサ、150 冷凍サイクル、160 チラー、200 バッテリ、220 電気ヒータ、500 ECU、800 EVSE、PG 電力系統。