(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】電極体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20250708BHJP
H01M 50/46 20210101ALI20250708BHJP
H01M 50/466 20210101ALI20250708BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/46
H01M50/466
(21)【出願番号】P 2023086242
(22)【出願日】2023-05-25
【審査請求日】2024-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和仁
(72)【発明者】
【氏名】後藤 孝章
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 正宜
(72)【発明者】
【氏名】船戸 峰洋
(72)【発明者】
【氏名】金子 剛
(72)【発明者】
【氏名】横井 友香
【審査官】寺坂 一也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/171547(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0015282(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00-10/39
H01M 50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の正極ユニットであって、各前記正極ユニットが、第1樹脂部と、第2樹脂部と、前記第1樹脂部と前記第2樹脂部との間に配置された正極電極と、開口を有する袋状に形成されており、前記第1樹脂部、前記第2樹脂部及び前記正極電極を収容する袋セパレータと、を含む前記正極ユニットと、複数の負極電極と、を交互に積層する積層工程と、
前記正極ユニットと前記負極電極との積層方向に並ぶように配置された前記複数の第1樹脂部を前記積層方向に沿って前記袋セパレータとともに切断する第1切断工程と、
前記積層方向に並ぶように配置された前記複数の第2樹脂部を前記積層方向に沿って前記袋セパレータとともに切断する第2切断工程と、
前記複数の第1樹脂部のうち前記積層方向に互いに隣接する一対の第1樹脂部同士を溶着する第1溶着工程と、
前記複数の第2樹脂部のうち前記積層方向に互いに隣接する一対の第2樹脂部同士を溶着する第2溶着工程と、を備える、電極体の製造方法。
【請求項2】
前記第1溶着工程では、前記第1樹脂部が前記負極電極に接触するように前記一対の第1樹脂部同士が溶着され、
前記第2溶着工程では、前記第2樹脂部が前記負極電極に接触するように前記一対の第2樹脂部同士が溶着される、請求項1に記載の電極体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2018/021263号には、負極シートの両面に第1セパレータ及び第2セパレータが接着された積層体と、正極シートと、を交互に積層することによって電極体を形成する電極体の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
国際公開第2018/021263号に記載される電極体の製造方法では、電極体の形成後、積層体と正極シートとが積層方向と直交する方向に互いにずれる場合がある。
【0005】
本開示の目的は、正極電極と負極電極とが積層方向と直交する方向に互いにずれるのを抑制することが可能な電極体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面に従った電極体の製造方法は、複数の正極ユニットであって、各前記正極ユニットが、第1樹脂部と、第2樹脂部と、前記第1樹脂部と前記第2樹脂部との間に配置された正極電極と、開口を有する袋状に形成されており、前記第1樹脂部、前記第2樹脂部及び前記正極電極を収容する袋セパレータと、を含む前記正極ユニットと、複数の負極電極と、を交互に積層することによって積層電極体を形成する積層工程と、前記正極ユニットと前記負極電極との積層方向に並ぶように配置された前記複数の第1樹脂部を前記積層方向に沿って前記袋セパレータとともに切断する第1切断工程と、前記積層方向に並ぶように配置された前記複数の第2樹脂部を前記積層方向に沿って前記袋セパレータとともに切断する第2切断工程と、前記複数の第1樹脂部のうち前記積層方向に互いに隣接する一対の第1樹脂部同士を溶着する第1溶着工程と、前記複数の第2樹脂部のうち前記積層方向に互いに隣接する一対の第2樹脂部同士を溶着する第2溶着工程と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、正極電極と負極電極とが積層方向と直交する方向に互いにずれるのを抑制することが可能な電極体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態における蓄電セルを概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0010】
図1は、本開示の一実施形態における蓄電セルを概略的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示される蓄電セルの断面図である。
【0011】
図1及び
図2に示されるように、蓄電セル1は、電極体100と、セルケース200と、一対の外部端子300と、一対の連結部材400と、絶縁部材500と、を備えている。
【0012】
電極体100は、複数の電極110,120(
図3~
図5を参照)と、セパレータ130と、を備えている。
【0013】
複数の電極110,120は、一方向(
図2において紙面と直交する方向)に並ぶように配置されている。複数の電極110,120は、複数の正極電極110と、複数の負極電極120と、を有している。
【0014】
各正極電極110は、幅方向(一方向及び上下方向の双方と直交する方向)に長い長方形形状に形成されている。各正極電極110は、正極集電箔と、正極集電箔の両面に設けられた正極活物質層と、を有している。
図2に示されるように、正極集電箔は、正極活物質層が設けられていない正極タブ112pを有している。正極タブ112pは、幅方向における一方側に向かって突出している。
【0015】
各負極電極120は、幅方向に長い長方形形状に形成されている。各負極電極120は、負極集電箔と、負極集電箔の両面に設けられた負極活物質層と、を有している。
図2に示されるように、負極集電箔は、負極活物質層が設けられていない負極タブ122nを有している。負極タブ122nは、幅方向における他方側に向かって突出している。
【0016】
セパレータ130は、正極電極110及び負極電極120間を絶縁している。セパレータ130は、絶縁材料からなり、イオンの透過を許容する微小な空隙を有している。
【0017】
セルケース200は、電極体100を収容している。セルケース200には、図示略の電解液が収容されている。セルケース200は、密封されている。セルケース200は、ケース本体210と、蓋220と、を有している。
【0018】
ケース本体210は、上向きに開口する開口部を有している。ケース本体210は、アルミニウム等の金属からなる。
図2に示されるように、ケース本体210は、底壁212と、周壁214と、を有している。底壁212は、矩形かつ平板状に形成されている。周壁214は、底壁212から起立している。周壁214は、四角筒状に形成されている。幅方向における周壁214の長さは、厚さ方向における周壁214の長さよりも長い。高さ方向における周壁214の長さは、厚さ方向における周壁214の長さよりも長い。
【0019】
蓋220は、ケース本体210の開口部を閉塞している。蓋220は、溶接等によって開口部に接続されている。蓋220は、平板状に形成されている。蓋220は、アルミニウム等の金属からなる。蓋220は、圧力解放弁222と、封止部材224と、を有している。
【0020】
圧力解放弁222は、蓋220の中央部に形成されている。圧力解放弁222は、セルケース200の内圧が所定圧以上となると破断するように形成されている。圧力解放弁222が破断することで、セルケース200内のガスが当該圧力解放弁222を通じてセルケース200外に放出されるため、セルケース200の内圧が低下する。
【0021】
封止部材224は、蓋220に形成された注液口hを封止している。注液口hは、蓄電セル1の製造過程において、セルケース200内に電解液を注入するための貫通孔である。注液口hは、当該注液口hを通じてケース本体210に電解液が注入された後、封止部材224によって封止される。
【0022】
一対の外部端子300は、セルケース200上に固定されている。一対の外部端子300の一方は、正極の外部端子であり、他方は、負極の外部端子である。各外部端子300は、後述の上絶縁部510を介して蓋220の上面に固定されている。各外部端子300は、アルミニウム等の金属からなる。各外部端子300は、例えば、直方体形状に形成される。各外部端子300には、図示略のバスバーが溶接等によって接続される。
【0023】
一対の連結部材400は、複数の電極タブ112p,122nと外部端子300とを連結している。一方の連結部材400は、複数の正極タブ112pと正極の外部端子300とを連結しており、他方の連結部材400は、複数の負極タブ122nと負極の外部端子300とを連結している。一対の連結部材400の各々は、実質的に互いに同じ構造を有しているため、以下では一方の連結部材400について説明する。
【0024】
連結部材400は、集電タブ410と、サブタブ420と、連結ピン430と、を有している。
【0025】
集電タブ410は、側方部412と、上方部414と、を有している。側方部412は、幅方向における電極体100の側方に位置している。上方部414は、電極体100の上方に位置している。上方部414は、側方部412の上端から幅方向における内側に向かって延びている。
【0026】
サブタブ420は、複数の正極タブ112pを集電タブ410に接続している。サブタブ420の一端部422は、溶接等によって複数の正極タブ112pに接続されており、サブタブ420の他端部424は、溶接等によって集電タブ410の側方部412に接続されている。
【0027】
連結ピン430は、集電タブ410と外部端子300とを連結している。連結ピン430は、上方部414と外部端子300とを連結している。具体的に、連結ピン430の下端部は、上方部414設けられた貫通孔に挿入された状態で上方部414に溶接等によって接続されており、連結ピン430の上端部は、外部端子300に設けられた貫通孔に挿入された状態で溶接やカシメ等によって外部端子300に接続されている。
【0028】
絶縁部材500は、セルケース200と連結部材400との間を絶縁している。絶縁部材500は、上絶縁部510と、下絶縁部520と、インシュレータ530と、絶縁板540と、を有している。
【0029】
上絶縁部510は、蓋220の上面に固定されている。上絶縁部510は、蓋220と外部端子300との間に配置されている。上絶縁部510には、連結ピン430を挿通させる挿通孔が設けられている。
【0030】
下絶縁部520は、蓋220の下面に固定されている。下絶縁部520は、蓋220と、上方部414及び連結ピン430の下部と、の間に配置されている。下絶縁部520には、連結ピン430を挿通させる挿通孔が設けられている。
【0031】
インシュレータ530は、連結ピン430と蓋220との間に配置されている。インシュレータ530は、筒状に形成されており、連結ピン430を包囲している。
【0032】
絶縁板540は、上方部414の下面に固定されている。絶縁板540は、電極体100の上方に配置されている。絶縁板540のうち圧力解放弁222の下方に位置する部位、及び、注液口hの下方に位置する部位には、貫通孔が設けられている。
【0033】
次に、
図3~
図5等を参照しながら、電極体100の製造工程について説明する。電極体100の製造方法は、積層工程と、第1切断工程と、第2切断工程と、第1溶着工程と、第2溶着工程と、を含んでいる。
【0034】
積層工程では、複数の正極ユニット111と、複数の負極電極120と、が交互に積層される。
図3に示されるように、各正極ユニット111は、第1樹脂部11と、第2樹脂部12と、正極電極110と、袋セパレータ131と、を含んでいる。なお、
図3は、積層工程後の状態を示している。
【0035】
第1樹脂部11及び第2樹脂部12は、互いに同じ樹脂で形成されてもよいし、互いに異なる樹脂で形成されてもよい。第1樹脂部11と第2樹脂部12との並び方向(
図3における左右方向)における各樹脂部11,12の長さは、並び方向における正極電極110の長さよりも短い。各樹脂部11,12の厚みは、正極電極110の厚みと同じかそれよりも小さい。
【0036】
正極電極110は、第1樹脂部11と第2樹脂部12との間に配置されている。並び方向における正極電極110の端部は、各樹脂部11,12に接触していてもよいし、各樹脂部11,12から離間していてもよい。
【0037】
袋セパレータ131は、開口132を有する袋状に形成されている。袋セパレータ131は、第1樹脂部11と第2樹脂部12との間に正極電極110が配置されるように第1樹脂部11、第2樹脂部12及び正極電極110を収容している。第2樹脂部12は、袋セパレータ131に対する当該第2樹脂部12の位置決めが行われるように袋セパレータ131の折返し部に接触していることが好ましい。
【0038】
第1切断工程では、正極ユニット111と負極電極120との積層方向に並ぶように配置された複数の第1樹脂部11が積層方向に沿って袋セパレータ131とともに切断される。なお、
図3には、第1切断工程で切断される部位が一点鎖線L1で示されている。
【0039】
第2切断工程では、積層方向に並ぶように配置された複数の第2樹脂部12が積層方向に沿って袋セパレータ131とともに切断される。なお、
図3には、第2切断工程で切断される部位が一点鎖線L2で示されている。
図4は、第1切断工程及び第2切断工程後の状態を示している。セパレータ130は、袋セパレータ131が第1切断工程及び第2切断工程を経ることにより形成される。
【0040】
第1溶着工程では、複数の第1樹脂部11のうち積層方向に互いに隣接する一対の第1樹脂部11同士が溶着される。第1溶着工程では、加熱手段(図示略)によって一対の第1樹脂部11が加熱される。これにより、溶融した第1樹脂部11同士が溶着される。第1溶着工程では、第1樹脂部11が一対の第1樹脂部11間に位置する負極電極120に接触するように一対の第1樹脂部11同士が溶着される。
【0041】
第2溶着工程では、複数の第2樹脂部12のうち積層方向に互いに隣接する一対の第2樹脂部12同士が溶着される。第2溶着工程では、第1溶着工程と同様に第2樹脂部12が加熱される。第2溶着工程では、第2樹脂部12が一対の第2樹脂部12間に位置する負極電極120に接触するように一対の第2樹脂部12同士が溶着される。なお、
図5は、第1溶着工程及び第2溶着工程後の状態を示している。
【0042】
以上に説明したように、本実施形態における電極体100の製造方法では、袋セパレータ131が用いられることによって第1樹脂部11、正極電極110及び第2樹脂部12が有効に位置決めされ、さらに、積層方向に負極電極120を挟むように配置された一対の第1樹脂部11同士及び一対の第2樹脂部12同士が溶着されるため、正極電極110と負極電極120とが積層方向と直交する方向に互いにずれるのが抑制される。
【0043】
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0044】
[態様1]
複数の正極ユニットであって、各前記正極ユニットが、第1樹脂部と、第2樹脂部と、前記第1樹脂部と前記第2樹脂部との間に配置された正極電極と、開口を有する袋状に形成されており、前記第1樹脂部、前記第2樹脂部及び前記正極電極を収容する袋セパレータと、を含む前記正極ユニットと、複数の負極電極と、を交互に積層する積層工程と、
前記正極ユニットと前記負極電極との積層方向に並ぶように配置された前記複数の第1樹脂部を前記積層方向に沿って前記袋セパレータとともに切断する第1切断工程と、
前記積層方向に並ぶように配置された前記複数の第2樹脂部を前記積層方向に沿って前記袋セパレータとともに切断する第2切断工程と、
前記複数の第1樹脂部のうち前記積層方向に互いに隣接する一対の第1樹脂部同士を溶着する第1溶着工程と、
前記複数の第2樹脂部のうち前記積層方向に互いに隣接する一対の第2樹脂部同士を溶着する第2溶着工程と、を備える、電極体の製造方法。
【0045】
この電極体の製造方法では、袋セパレータが用いられることによって第1樹脂部、正極電極及び第2樹脂部が有効に位置決めされ、さらに、積層方向に負極電極を挟むように配置された一対の第1樹脂部同士及び一対の第2樹脂部同士が溶着されるため、正極電極と負極電極とが積層方向と直交する方向に互いにずれるのが抑制される。
【0046】
[態様2]
前記第1溶着工程では、前記第1樹脂部が前記負極電極に接触するように前記一対の第1樹脂部同士が溶着され、
前記第2溶着工程では、前記第2樹脂部が前記負極電極に接触するように前記一対の第2樹脂部同士が溶着される、態様1に記載の電極体の製造方法。
【0047】
この態様では、正極電極と負極電極とが積層方向と直交する方向に互いにずれるのがより確実に抑制される。
【0048】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1 蓄電セル、11 第1樹脂部、12 第2樹脂部、100 電極体、110 正極電極、111 正極ユニット、112 正極集電箔、112p 正極タブ、114 正極活物質層、120 負極電極、122 負極集電箔、122n 負極タブ、130 セパレータ、131 袋セパレータ、132 開口、200 セルケース、210 ケース本体、220 蓋、300 外部端子、400 連結部材、410 集電タブ、420 サブタブ、430 連結ピン、500 絶縁部材、510 上絶縁部、520 下絶縁部、530 インシュレータ、540 絶縁板。