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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】変更操作支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/10 20120101AFI20250708BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20250708BHJP
【FI】
B60W50/10
B60W50/14
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024031914
(22)【出願日】2024-03-04
(62)【分割の表示】P 2023032536の分割
【原出願日】2019-10-18
(65)【公開番号】P2024059946
(43)【公開日】2024-05-01
【審査請求日】2024-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平塚 有恒
(72)【発明者】
【氏名】川上 優
(72)【発明者】
【氏名】田中 一馬
(72)【発明者】
【氏名】樋口 佐和
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-012100(JP,A)
【文献】特開2017-117117(JP,A)
【文献】特開平08-314493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 60/00
B60T 7/12 - 8/1769
8/32 - 8/96
B62D 6/00 - 6/10
F02D 29/00 - 29/06
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転支援制御を当該運転支援制御が提供する支援の制御パラメータの値に応じて実行するように構成された制御装置を含む変更操作支援装置において、
前記制御装置は、
操作装置から情報を取得し、
乗員による発話を認識する音声認識処理を実行し、
前記音声認識処理を介して、前記乗員の発話を通じて前記乗員が前記制御パラメータの値を変更させることを要求する変更要求が行われたか判定し、
前記変更要求が行われたと判定された場合に前記操作装置に対する所定の操作を承認操作として決定し、前記操作装置に対する前記承認操作が行われたとき前記変更要求に従って前記制御パラメータの値を変更させる、
ように構成された変更操作支援装置において、
前記制御装置は、
前記承認操作を決定したとき、前記決定した承認操作に使用される操作装置の第1機能とは異なる第2機能を無効化する、
ように構成された変更操作支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の変更操作支援装置において、
前記制御装置は、
前記決定した承認操作が行われたとき前記第2機能の無効化を解除する、
ように構成された変更操作支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の変更操作支援装置において、
前記制御装置は、
前記承認操作を決定してから前記承認操作が実行されることなく所定時間が経過した場合、前記乗員に通知を行い、前記第2機能の無効化を解除する、
ように構成された変更操作支援装置。
【請求項4】
請求項1に記載の変更操作支援装置において、
前記第2機能は、前記運転支援制御をオフ状態に変更するキャンセル機能を含まない、
更操作支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援制御の設定状態を運転者が変更することを支援する変更操作支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の運転を支援するための運転支援制御を実行するように構成された車両が知られている。運転支援制御は、例えば、定速走行制御、先行車追従制御、車線維持制御(LTA:Lane Tracing Assist Control)、及び、自動運転制御等である。
【0003】
更に、運転支援制御の設定状態(例えば、定速走行制御における目標速度)を運転者が変更することを支援する変更操作支援装置が知られている。例えば、従来の変更操作支援装置の一つ(以降、「従来装置」と称呼する。)は、速度に関する運転者の発話を音声認識し、当該音声認識された速度を定速走行制御の目標速度として設定する(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-000882号公報
【発明の概要】
【0005】
しかし、従来装置は、音声の誤認識に起因して、運転支援制御の設定状態を、運転者の意図とは異なる設定状態に変更する虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされた。即ち、本発明の目的の一つは、運転者が運転支援制御の設定状態を変更するための発話を行った場合において、運転支援制御の設定状態が誤って設定されることを回避することができる変更操作支援装置を提供することである。
【0007】
本発明の一態様に係る変更操作支援装置(以下、「本態様装置」と称呼される場合がある。)は、
車両(VA)の運転支援制御(ACC、LTA)に係る設定状態に応じて前記運転支援制御を実行するように構成された制御装置(10)と、
前記車両の運転者によって操作される操作装置であって、前記運転支援制御の前記設定状態を変更するための操作に用いられる操作装置(50)と、
前記運転者に対して情報を報知するように構成された報知装置(42、43)と
を備える。
前記制御装置は、
前記運転者による発話を認識する音声認識処理を実行し(ステップ802)、
前記発話を通じて前記運転支援制御の前記設定状態の変更を要求する設定変更要求が行われたか否かを判定し(ステップ803)、
前記音声認識処理を介して前記設定変更要求が行われたと判定した場合(ステップ803:Yes)、前記設定変更要求の内容に関する情報と、前記設定変更要求に対して予め定められた承認操作に関する情報とを含む確認情報を前記報知装置に報知させ(ステップ904)、
前記運転者が、前記承認操作に関する前記情報に応じた操作を前記操作装置を用いて行った場合(ステップ905:Yes)、前記運転支援制御の前記設定状態を前記設定変更要求に従って変更する(ステップ906)
ように構成されている。
【0008】
例えば、運転者の発話の誤認識に起因して、運転者の意図とは異なる設定変更要求が行われる場合がある。このような場合、本態様装置によれば、確認情報が、運転者自身が発話した内容と一致していないので、運転者は、発話が誤認識されたことを認識することができる。従って、運転者は、承認操作を行わない。運転者が承認操作を行わない場合、本態様装置は、設定変更要求に従って運転支援制御の設定状態を変更しない。従って、運転者の発話の誤認識に起因して運転者の意図とは異なる設定変更要求が行われた場合において、運転支援制御の設定状態が誤って設定されるのを回避することができる。
【0009】
本態様装置の一の形態において、前記操作装置は、複数の操作部(51、52、53、54、55、56、57)を含む。前記設定変更要求は、複数の種類の要求を含む。前記承認操作は、前記複数の操作部のうちの一つに対する操作である。更に、前記制御装置は、前記設定変更要求の種類に応じて、前記運転者が前記承認操作を行う際に操作すべき操作部を変更するように構成されている。
【0010】
本態様によれば、設定変更要求の種類に応じて運転者が承認操作を行う際に操作すべき操作部が異なるので、運転者の意志をより正確に確認することができる。
【0011】
本態様装置の一の形態において、前記制御装置は、
前記設定状態としての作動状態がオン状態である場合に前記運転支援制御を実行し、
前記作動状態がオフ状態である場合に前記運転支援制御を停止する
ように構成されている。
前記操作装置は、前記作動状態を前記オフ状態から前記オン状態へと変更するために操作される第1操作部(51)と、前記作動状態を前記オン状態から前記オフ状態へと変更するために操作される第2操作部(52)と、を含む。
前記設定変更要求は、前記作動状態を前記オフ状態から前記オン状態へと変更することを要求するオン要求及び前記作動状態を前記オン状態から前記オフ状態へと変更することを要求するオフ要求を含む。
前記制御装置は、前記音声認識処理を介して前記オン要求が行われたと判定した場合、
前記第1操作部に対する操作を前記承認操作として決定し(ステップ902)、
前記第1操作部に対する前記操作が行われたとき(ステップ905:Yes)、前記作動状態を前記オフ状態から前記オン状態へと変更する(ステップ906)
ように構成されている。
更に、前記制御装置は、前記音声認識処理を介して前記オフ要求が行われたと判定した場合、
前記第2操作部に対する操作を前記承認操作として決定し(ステップ902)、
前記第2操作部に対する前記操作が行われたとき(ステップ905:Yes)、前記作動状態を前記オン状態から前記オフ状態へと変更する(ステップ906)
ように構成されている。
【0012】
本態様によれば、運転者の発話の誤認識に起因して運転者の意図とは異なる設定変更要求(オン要求又はオフ要求)が行われた場合において、運転支援制御の作動状態が誤って設定されるのを回避することができる。
【0013】
本態様装置の一の形態において、前記制御装置は、前記設定状態として、前記運転支援制御が提供する支援の制御パラメータ(Vset、Ttgt)の値を設定し、前記制御パラメータの値に応じて前記運転支援制御を実行するように構成されている。
前記操作装置は、前記制御パラメータの値を増加させるために操作される第3操作部(55、57)と、前記制御パラメータの値を減少させるために操作される第4操作部(56、57)と、を含む。
前記設定変更要求は、前記制御パラメータの値を増加させることを要求する増加要求及び前記制御パラメータの値を減少させることを要求する減少要求を含む。
前記制御装置は、前記音声認識処理を介して前記増加要求が行われたと判定した場合、
前記第3操作部に対する操作を前記承認操作として決定し(ステップ902)、
前記第3操作部に対する前記操作が行われたとき(ステップ905:Yes)、前記増加要求に従って前記制御パラメータの値を増加させる(ステップ906)
ように構成されている。
更に、前記制御装置は、前記音声認識処理を介して前記減少要求が行われたと判定した場合、
前記第4操作部に対する操作を前記承認操作として決定し(ステップ902)、
前記第4操作部に対する前記操作が行われたとき(ステップ905:Yes)、前記減少要求に従って前記制御パラメータの値を減少させる(ステップ906)
ように構成されている。
【0014】
本態様によれば、運転者の発話の誤認識に起因して運転者の意図とは異なる設定変更要求(増加要求又は減少要求)が行われた場合において、制御パラメータの値が誤って設定されるのを回避することができる。
【0015】
本態様装置の一の形態において、
前記制御装置は、前記音声認識処理を介して前記オフ要求以外の要求が行われたと判定した場合であっても、
前記運転者が前記オフ要求以外の前記要求に対する前記承認操作を行う前に前記第2操作部に対する操作を行ったとき、前記作動状態を前記オン状態から前記オフ状態へと変更するように構成されている。
【0016】
第2操作部に対する操作が行われた場合、運転者が自身により運転操作を行う意志がある。本態様によれば、運転者が承認操作を行う前に第2操作部に対する操作を行ったとき、運転支援制御の作動状態をオフ状態に変更する運転者の意志を即座に反映することができる。
【0017】
本態様装置の一の形態において、前記制御装置は、前記音声認識処理を介して前記設定変更要求として複数の要求が行われたと判定した場合、前記複数の操作部のうちの一つに対する操作を前記承認操作として決定するように構成されている。
【0018】
本態様によれば、設定変更要求として複数の要求が行われた場合でも、運転者は、複数の操作部のうちの一つに対して操作を行うことにより、それら複数の要求を承認することができる。運転者が複数の操作部を操作する必要がないので、運転者が煩わしさを感じる可能性を低減できる。
【0019】
本態様装置の一の形態において、前記制御装置は、
前記設定状態としての作動状態がオン状態である場合に前記運転支援制御を実行し、
前記作動状態がオフ状態である場合に前記運転支援制御を停止する
ように構成されている。
前記操作装置は、前記作動状態を前記オフ状態から前記オン状態へと変更するために操作される第1操作部(51)と、前記作動状態を前記オン状態から前記オフ状態へと変更するために操作される第2操作部(52)と、を含む。
前記設定変更要求は、前記作動状態を前記オフ状態から前記オン状態へと変更することを要求するオン要求及び前記作動状態を前記オン状態から前記オフ状態へと変更することを要求するオフ要求を含む。
前記制御装置は、前記音声認識処理を介して前記オン要求が行われたと判定した場合、
前記第1操作部に対する操作を前記承認操作として決定し(ステップ902)、
前記第1操作部に対する前記操作が行われたとき(ステップ905:Yes)、前記作動状態を前記オフ状態から前記オン状態へと変更する(ステップ906)
ように構成されている。
更に、前記制御装置は、前記音声認識処理を介して前記オフ要求が行われたと判定した場合(ステップ1001:Yes)、
前記承認操作を前記運転者に対して要求することなく、前記作動状態を前記オン状態から前記オフ状態へと変更する(ステップ906)
ように構成されている。
【0020】
オフ要求が行われた場合、運転者が、可能な限り早く自身により運転操作を行いたい場合が多い。このような場合、運転者が承認操作を要求されると、運転者が煩わしさを感じる可能性がある。本態様によれば、オフ要求が行われた場合、承認操作を運転者に対して要求することなく運転支援制御の作動状態をオフ状態へ変更する。従って、運転者が煩わしさを感じる可能性を低減できる。
【0021】
上記説明においては、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いた名称及び/又は符号を括弧書きで添えている。しかしながら、本発明の各構成要素は、前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る変更操作支援装置の概略構成図である。
図2】実施形態に係るワードテーブルを示した図である。
図3】実施形態に係る承認操作テーブルを示した図である。
図4】ACCオン要求が行われた際にディスプレイに表示される確認情報を示した図である。
図5】ACCオフ要求が行われた際にディスプレイに表示される確認情報を示した図である。
図6】増速要求が行われた際にディスプレイに表示される確認情報を示した図である。
図7】減速要求が行われた際にディスプレイに表示される確認情報を示した図である。
図8】実施形態に係る運転支援ECUのCPUが実行する「要求判定ルーチン」を示したフローチャートである。
図9】実施形態に係る運転支援ECUのCPUが実行する「要求承認ルーチン」を示したフローチャートである。
図10】変形例に係る運転支援ECUのCPUが実行する「要求承認ルーチン」を示したフローチャートである。
図11】変形例に係る承認操作テーブルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態に係る変更操作支援装置(以下、「本実施装置」と称呼される場合がある。)は、図1に示したように、車両VAに適用される。本実施装置は、運転支援ECU10、エンジンECU20、及び、ブレーキECU30を備えている。これらのECUは、マイクロコンピュータを主要部として備える電気制御装置(Electric Control Unit)であり、図示しないCAN(Controller Area Network)を介して相互に情報を送信可能及び受信可能に接続されている。
【0024】
本明細書において、マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ及びインターフェース(I/F)等を含む。例えば、運転支援ECU10は、CPU101、ROM102、RAM103、不揮発性メモリ104及びインターフェース105等を含む。CPU101は、ROM102に格納されたインストラクション(プログラム、ルーチン)を実行することにより各種機能を実現するようになっている。
【0025】
運転支援ECU10は、以下に列挙するセンサと接続されていて、それらのセンサの検出信号又は出力信号を受信するようになっている。なお、各センサは、運転支援ECU10以外のECUに接続されていてもよい。その場合、運転支援ECU10は、センサが接続されたECUからCANを介してそのセンサの検出信号又は出力信号を受信する。
【0026】
アクセルペダル操作量センサ11は、アクセルペダル11aの操作量(アクセル開度)を検出し、アクセルペダル操作量APを表す信号を出力するようになっている。
ブレーキペダル操作量センサ12は、ブレーキペダル12aの操作量を検出し、ブレーキペダル操作量BPを表す信号を出力するようになっている。
車速センサ13は、車両VAの走行速度(車速)を検出し、車速SPDを表す信号を出力するようになっている。
【0027】
周囲センサ14は、車両VAの周囲の道路(例えば、車両VAが走行している走行レーン)に関する情報、及び、その道路に存在する立体物に関する情報を取得するようになっている。立体物は、例えば、自動車(他車両)、歩行者及び自転車などの移動物、並びに、ガードレール及びフェンスなどの固定物を表す。以下、これらの立体物は「物標」と称呼される場合がある。周囲センサ14は、レーダセンサ14a及びカメラセンサ14bを備えている。
【0028】
周囲センサ14は、物標の有無について判定するとともに、車両VAと物標との相対関係を示す情報を算出するようになっている。車両VAと物標との相対関係を示す情報は、車両VAと物標との距離、車両VAに対する物標の方位(又は位置)、及び、車両VAと物標との相対速度等を含む。周囲センサ14から得られた情報(車両VAと物標との相対関係を示す情報を含む。)は「物標情報」と称呼される。周囲センサ14は、物標情報を運転支援ECU10に出力するようになっている。
【0029】
エンジンECU20は、エンジンアクチュエータ21に接続されている。エンジンアクチュエータ21は、内燃機関22のスロットル弁の開度を変更するスロットル弁アクチュエータを含む。エンジンECU20は、エンジンアクチュエータ21を駆動することによって、内燃機関22が発生するトルクを変更することができる。内燃機関22が発生するトルクは、図示しない変速機を介して駆動輪に伝達されるようになっている。従って、エンジンECU20は、エンジンアクチュエータ21を制御することによって、車両VAの駆動力を制御し加速状態(加速度)を変更することができる。
【0030】
なお、車両VAが、ハイブリッド車両である場合、エンジンECU20は、車両駆動源としての「内燃機関及び電動機」の何れか一方又は両方によって発生する駆動力を制御することができる。更に、車両VAが電気自動車である場合、エンジンECU20は、車両駆動源としての電動機によって発生する駆動力を制御することができる。
【0031】
ブレーキECU30は、ブレーキ機構32の油圧制御アクチュエータであるブレーキアクチュエータ31に接続されている。ブレーキアクチュエータ31は、ブレーキペダル12aの踏力によって作動油を加圧するマスタシリンダと、左右前後輪に設けられるブレーキ機構32との間の図示しない油圧回路に設けられている。ブレーキアクチュエータ31は、ブレーキECU30からの指示に応じて、ブレーキ機構32のブレーキキャリパ32bに内蔵されたホイールシリンダに供給する油圧を調整する。その油圧によりホイールシリンダが作動することによりブレーキパッドがブレーキディスク32aに押し付けられて摩擦制動力が発生する。従って、ブレーキECU30は、ブレーキアクチュエータ31を制御することによって、車両VAの制動力を制御し加速状態(減速度、即ち、負の加速度)を変更することができる。
【0032】
運転支援ECU10は、マイク41、ディスプレイ42、及び、スピーカ43に接続されている。マイク41は、車両VAの乗員(例えば、運転者)により発話された音声を取得し、その音声のデータ(音声データ)を運転支援ECU10に出力するようになっている。ディスプレイ42は、運転席の正面に設けられたマルチインフォーメーションディスプレイである。なお、ディスプレイ42として、ヘッドアップディスプレイが採用されてもよい。スピーカ43は、運転支援ECU10からの発話指令を受信した場合、その発話指令に応じた音声を発生させる。なお、「ディスプレイ42及びスピーカ43」は、まとめて「報知装置」と称呼される場合がある。
【0033】
車両VAの図示しないステアリングホイールは、運転者に対向する側であって運転者によって操作可能となる位置に、追従車間距離制御に関する操作装置50を備えている。追従車間距離制御は、「アダプティブ・クルーズ・コントロール(Adaptive Cruise Control)」と称呼される場合がある。以降において、追従車間距離制御を単に「ACC」と称呼する。
【0034】
運転支援ECU10は、操作装置50における以下のスイッチ(操作部)と接続されていて、それらのスイッチの出力信号を受信するようになっている。操作装置50は、メインスイッチ51、キャンセルスイッチ52、リジュームスイッチ53、セットスイッチ54、増速スイッチ55、減速スイッチ56、及び、車間時間設定スイッチ57を含んでいる。これらのスイッチ51乃至57の詳細な操作方法については後述される。
【0035】
(ACCの概要)
運転支援ECU10は、運転支援制御としてACCを実行できるようになっている。ACC自体は周知である(例えば、特開2014-148293号公報、特開2006-315491号公報、及び、特許第4172434号明細書等を参照。)。
【0036】
ACCは、定速走行制御と先行車追従制御の2種類の制御を含む。定速走行制御は、アクセルペダル11a及びブレーキペダル12aの操作を要することなく、車両VAの走行速度を目標速度(設定速度)Vsetと一致させるように車両VAの加速度を調整する制御である。先行車追従制御は、車両VAの直前を走行している先行車と車両VAとの車間距離を目標車間距離に維持しながら先行車に対して車両VAを追従させる制御である。
【0037】
ACCが開始されると(後述するようにメインスイッチ51がオン状態になると)、運転支援ECU10は、周囲センサ14により取得した物標情報に基いて、車両VAの前方(直前)を走行し且つ車両VAが追従するべき車両(即ち、追従対象車両)が存在しているか否かを判定する。例えば、運転支援ECU10は、検出した物標(n)が、予め定められた追従対象車両エリア内に存在するか否かを判定する。
【0038】
運転支援ECU10は、物標(n)が追従対象車両エリア内に存在しない場合、追従対象車両が存在しないと判定する。この場合、運転支援ECU10は、定速走行制御を実行する。なお、ACCの開始時において、目標速度Vsetは、その時点での車速SPDに設定されてもよい。運転支援ECU10は、車両VAの車速SPDが目標速度Vsetに一致するように、目標加速度Gtgtを決定する。運転支援ECU10は、車両VAの加速度が目標加速度Gtgtに一致するように、エンジンECU20を用いてエンジンアクチュエータ21を制御して駆動力を制御するとともに、必要に応じてブレーキECU30を用いてブレーキアクチュエータ31を制御して制動力を制御する。
【0039】
これに対し、運転支援ECU10は、物標(n)が追従対象車両エリア内に所定時間以上に渡って存在する場合、その物標(n)を追従対象車両(a)として選択する。そして、運転支援ECU10は、先行車追従制御を実行する。具体的には、運転支援ECU10は、「追従対象車両(a)までの車間距離と目標車間距離Dsetとの偏差」及び「追従対象車両(a)の車両VAに対する相対速度」等に基いて目標加速度Gtgtを決定する。なお、目標車間距離Dsetは、車間時間設定スイッチ57を用いて設定される目標車間時間Ttgtに車両VAの車速SPDを乗じることにより算出される(即ち、Dset=Ttgt・SPD)。運転支援ECU10は、車両VAの加速度が目標加速度Gtgtに一致するように、前述のようにエンジンアクチュエータ21を制御するとともに、必要に応じてブレーキアクチュエータ31を制御する。
【0040】
(操作装置のスイッチの操作方法)
次に、操作装置50のスイッチ51乃至57の操作方法について説明する。メインスイッチ51は、ACCを開始/停止させるときに運転者によって操作されるスイッチである。メインスイッチ51が押下される度に、メインスイッチ51の状態がオン状態とオフ状態との間で交互に入れ替わる。メインスイッチ51がオフ状態からオン状態に切り替えられると、運転支援ECU10は、ACCの作動状態をオフ状態からオン状態へと切り替える(即ち、ACCを開始する)。一方、メインスイッチ51がオン状態からオフ状態に切り替えられると、運転支援ECU10は、ACCの作動状態をオン状態からオフ状態へと切り替える(即ち、ACCを停止する。)。
【0041】
キャンセルスイッチ52は、ACCをキャンセルする(一時的にオフ状態にする)ときに運転者によって操作されるスイッチである。キャンセルスイッチ52が押下される度に、キャンセルスイッチ52の状態がオン状態とオフ状態との間で交互に入れ替わる。メインスイッチ51がオン状態であるとき(ACCの実行中)にキャンセルスイッチ52がオン状態になると、運転支援ECU10は、ACCの作動状態をオン状態から一時的なオフ状態(以降、「キャンセル状態」と称呼する。)へと切り替え、これにより、ACCを停止する。
【0042】
リジュームスイッチ53は、ACCの作動状態がキャンセル状態に切り換えられた後にACCを再開させるときに運転者によって操作されるスイッチである。リジュームスイッチ53は、運転者により押圧操作されているときにオン状態となり、運転者により押圧操作されていないときにオフ状態となる。メインスイッチ51がオン状態であり且つキャンセルスイッチ52がオン状態である(即ち、ACCの作動状態がキャンセル状態である)状況にてリジュームスイッチ53がオフ状態からオン状態へと変更されると、運転支援ECU10は、ACCの作動状態をオン状態へと切り替える(即ち、ACCを再開する)。ACCが再開されると、運転支援ECU10は、キャンセルスイッチ52の状態をオフ状態へと変更する。更に、運転支援ECU10は、ACCの作動状態がキャンセル状態に切り替えられた時点における目標速度Vsetを用いて定速走行制御を再開する。
【0043】
セットスイッチ54は、目標速度Vsetを設定するときに運転者によって操作されるスイッチである。セットスイッチ54は、運転者により押圧操作されているときにオン状態となり、運転者により押圧操作されていないときにオフ状態となる。ACCが開始された後、セットスイッチ54がオフ状態からオン状態へと変更されると、運転支援ECU10は、目標速度Vsetを「セットスイッチ54がオン状態となった時点(即ち、運転者がセットスイッチ54を押下した時点)における車速SPD」に設定する。
【0044】
増速スイッチ55は、目標速度Vsetを増加させるときに運転者によって操作されるスイッチである。増速スイッチ55は、運転者により押圧操作されているときにオン状態となり、運転者により押圧操作されていないときにオフ状態となる。なお、増速スイッチ55とリジュームスイッチ53が1つのスイッチとして統合されてもよい。
【0045】
増速スイッチ55のオン状態が所定の第1長押し時間Tlp1以上に渡って継続(維持)される操作は、「増速スイッチ55の長押し操作」と称呼される。ACCの作動状態がオン状態である状況において増速スイッチ55の長押し操作が行われると、運転支援ECU10は、第1長押し時間Tlp1が経過した時点以降において増速スイッチ55のオン状態が継続している間、第1間隔時間Tin1が経過する毎に、目標速度Vsetを第1増加量Vi1ずつ段階的に増加させる。
【0046】
一方、「増速スイッチ55をオフ状態からオン状態へと変更した後、第1長押し時間Tlp1が経過する前にそのオン状態がオフ状態に戻される操作」は、「増速スイッチ55の短押し操作」と称呼される。ACCの作動状態がオン状態である状況において増速スイッチ55の短押し操作が行われると、運転支援ECU10は、目標速度Vsetを第2増加量Vi2だけ増加させる。
【0047】
減速スイッチ56は、目標速度Vsetを減少させるときに運転者によって操作されるスイッチである。減速スイッチ56は、運転者により押圧操作されているときにオン状態となり、運転者により押圧操作されていないときにオフ状態となる。
【0048】
減速スイッチ56のオン状態が所定の第2長押し時間Tlp2以上に渡って継続(維持)される操作は、「減速スイッチ56の長押し操作」と称呼される。ACCの作動状態がオン状態である状況において減速スイッチ56の長押し操作が行われると、運転支援ECU10は、第2長押し時間Tlp2が経過した時点以降において減速スイッチ56のオン状態が継続している間、第2間隔時間Tin2が経過する毎に、目標速度Vsetを第1減少量Vd1ずつ段階的に減少させる。
【0049】
一方、「減速スイッチ56をオフ状態からオン状態へと変更した後、第2長押し時間Tlp2が経過する前にそのオン状態がオフ状態に戻される操作」は、「減速スイッチ56の短押し操作」と称呼される。ACCの作動状態がオン状態である状況において減速スイッチ56の短押し操作が行われると、運転支援ECU10は、目標速度Vsetを第2減少量Vd2だけ減少させる。
【0050】
なお、第1長押し時間Tlp1及び第2長押し時間Tlp2は、同じ値に設定されてもよい。第1増加量Vi1及び第1減少量Vd1は、互いに同じ量に設定されてもよい。第2増加量Vi2及び第2減少量Vd2は、互いに同じ量に設定されてもよい。第1間隔時間Tin1及び第2間隔時間Tin2は、互いに同じ量に設定されてもよい。
【0051】
車間時間設定スイッチ57は、先行車追従制御における目標車間時間Ttgtを設定する際に運転者によって操作されるスイッチである。ACCの作動状態がオン状態である状況において車間時間設定スイッチ57が押下される度に、目標車間時間Ttgtが変更される。運転者は、目標車間時間Ttgtとして3段階(長、中、短)の時間のうちの一つを選択することができる。
【0052】
なお、運転支援ECU10は、後述する特定の状況下(図9のルーチンの実行時)において、スイッチ51乃至57のそれぞれの機能を無効化にすることができる。例えば、運転支援ECU10がメインスイッチ51の機能を無効化にした場合、運転者がメインスイッチ51を操作したとしても、メインスイッチ51の状態が変更されない。
【0053】
(音声認識処理)
運転支援ECU10は、マイク41から取得した音声データに対して音声認識処理を実行し、音声認識結果をテキストデータとしてRAM103に記憶する。運転支援ECU10は、所定期間に渡り音声認識結果をRAM103に保持する。運転支援ECU10のROM102には、音響モデルと認識辞書とが格納されている。運転支援ECU10は、取得した音声データと音響モデルとを比較して特徴を抽出し、抽出した特徴を認識辞書とマッチングさせることにより音声認識を行う。このような音声認識処理は周知である(例えば、特開2012-063537号公報及びWO2007/091462等を参照。)。
【0054】
運転支援ECU10は、音声認識結果、ACCの作動状態、及び、車両VAの走行状態(車速SPD)等に基いて、ACCの設定状態の変更を要求する設定変更要求が行われたか否かを判定するようになっている。
【0055】
設定変更要求は、複数の種類の要求を含む。具体的には、設定変更要求は、ACCオン要求、ACCオフ要求(キャンセル要求)、増速要求、及び、減速要求を含む。ACCオン要求は、ACCの作動状態をオフ状態からオン状態へと変更する要求である。ACCオフ要求は、ACCの作動状態をオン状態からキャンセル状態(一時的なオフ状態)へと変更する要求である。増速要求は、定速走行制御の制御パラメータである目標速度Vsetの値を増加させる要求である。減速要求は、目標速度Vsetの値を減少させる要求である。
【0056】
1.ACCオン要求
運転支援ECU10は、以下に述べる総ての条件が成立すると、ACCオン要求が行われたと判定する。
(条件A1)音声認識結果に「ACCに関連するワード」及び「オン状態に関連するワード」が含まれる。
(条件A2)ACCの作動状態が現時点にてオフ状態又はキャンセル状態である。
【0057】
なお、運転支援ECU10は、図2に示すワードテーブル200を参照することにより、条件A1が成立するか否かを判定できる。ワードテーブル200は、ROM102に格納されている。ワードテーブル200には、ACCに関連するワードの集合、オン状態に関連するワードの集合、及び、オフ状態に関連するワードの集合等が定義されている。例えば、音声認識結果が「ACCをスタートして」である場合、音声認識結果の中に「ACCに関連するワード(=ACC)」及び「オン状態に関連するワード(=スタート)」が含まれる。従って、運転支援ECU10は、条件A1が成立すると判定する。
【0058】
2.ACCオフ要求
運転支援ECU10は、以下に述べる総ての条件が成立すると、ACCオフ要求が行われたと判定する。
(条件B1)音声認識結果に「ACCに関連するワード」及び「オフ状態に関連するワード」が含まれる。
(条件B2)ACCの作動状態が現時点にてオン状態である。
【0059】
前述のように、運転支援ECU10は、ワードテーブル200を参照することにより、条件B1が成立するか否かを判定できる。例えば、音声認識結果が「クルーズ・コントロールをキャンセルして」である場合、音声認識結果の中に「ACCに関連するワード(=クルーズ・コントロール)」及び「オフ状態に関連するワード(=キャンセル)」が含まれる。従って、運転支援ECU10は、条件B1が成立すると判定する。
【0060】
3.増速要求
運転支援ECU10は、以下に述べる総ての条件が成立すると、増速要求が行われたと判定する。
(条件C1)音声認識結果に「目標速度に関連するワード」及び「車速に関連する数値」が含まれる。なお、「車速に関連する数値」は、単なる数値、及び、数値と所定の単位の組み合わせ(例えば、~キロ、~マイル)等を含む。
(条件C2)ACCの作動状態がオン状態であり、且つ、現時点にて定速走行制御が実行されている。
(条件C3)現時点の車速SPD<音声認識結果における「車速に関連する数値」
(条件C4)Vth1<音声認識結果における「車速に関連する数値」<Vth2
なお、Vth1は、目標速度Vsetとして設定できる車速の下限値であり、Vth2は、目標速度Vsetとして設定できる車速の上限値である。
【0061】
前述のように、運転支援ECU10は、ワードテーブル200を参照することにより、条件C1が成立するか否かを判定できる。例えば、音声認識結果が「目標速度を80キロに設定して」である場合、音声認識結果の中に「目標速度に関連するワード(=目標速度)」及び「車速に関連する数値(=80キロ)」が含まれる。従って、運転支援ECU10は、条件C1が成立すると判定する。
【0062】
4.減速要求
運転支援ECU10は、以下に述べる総ての条件が成立すると、減速要求が行われたと判定する。
(条件D1)音声認識結果に「目標速度に関連するワード」及び「車速に関連する数値」が含まれる。
(条件D2)ACCの作動状態がオン状態であり、且つ、現時点にて定速走行制御が実行されている。
(条件D3)現時点の車速SPD>音声認識結果における「車速に関連する数値」
(条件D4)Vth1<音声認識結果における「車速に関連する数値」<Vth2
【0063】
前述のように、運転支援ECU10は、ワードテーブル200を参照することにより、条件D1が成立するか否かを判定できる。
【0064】
(設定変更確認処理)
運転支援ECU10は、設定変更要求が行われたと判定した場合、その設定変更要求の内容を運転者に確認させるための「設定変更確認処理」を実行する。具体的には、運転支援ECU10は、図3に示す承認操作テーブル300を参照することにより、設定変更要求の種類に応じて承認操作を決定する。承認操作は、運転者の発話を通じて行われた設定変更要求の内容を承認する際に運転者が行うべき操作である。本例において、承認操作は、スイッチ51乃至57のうちの一つに対する操作である。承認操作テーブル300は、ROM102に格納されている。承認操作テーブル300では、設定変更要求の種類と承認操作との関係が定義されている。
【0065】
運転支援ECU10は、設定変更要求の内容を運転者に確認させるための確認情報を報知装置(ディスプレイ42及びスピーカ43)を用いて運転者に対して報知する。本例において、確認情報は、音声認識処理を介して判定された設定変更要求の内容についての情報、及び、承認操作テーブル300を参照することにより決定された承認操作についての情報を含む。
【0066】
確認情報における「設定変更要求の内容」が、運転者が意図した要求(即ち、運転者が発話した内容)と一致している場合、運転者は、確認情報により報知された承認操作を行う。承認操作が行われた場合、運転支援ECU10は、設定変更要求に従ってACCの設定状態を変更する。
【0067】
これに対し、確認情報における「設定変更要求の内容」が、運転者が意図した要求と一致していない場合、運転者は、発話が誤認識されたことを認識することができる。従って、運転者は、承認操作を行わない。この場合、運転支援ECU10は、設定変更要求に従ってACCの設定状態を変更しない。このように、運転者の発話の誤認識に起因して運転者の意図と異なる設定変更要求が行われた場合でも、ACCの設定状態が誤って設定されるのを回避することができる。以下に、ACCオン要求、ACCオフ要求、増速要求及び減速要求のそれぞれについての設定変更確認処理を順に説明する。
【0068】
1.設定変更確認処理-ACCオン要求
運転支援ECU10は、ACCオン要求が行われたと判定した場合、承認操作テーブル300を参照することにより、「メインスイッチ51の押下操作」を承認操作として決定する。そして、運転支援ECU10は、報知装置(42及び43)を用いて、確認情報の報知処理を実行する。具体的には、運転支援ECU10は、図4に示すような確認情報400をディスプレイ42に表示する。確認情報400は、ACCオン要求を受け付けた旨を示す情報401、及び、ACCオン要求の承認操作に関する情報402を含む。更に、運転支援ECU10は、これらの情報401及び402をスピーカ43に発話させる。
【0069】
情報401が、運転者自身が発話した内容と一致している場合、運転者は、承認操作としてメインスイッチ51の押下操作を行う。上述した報知処理が行われた時点から所定の時間閾値Tth以内にメインスイッチ51の押下操作が行われた場合、運転支援ECU10は、ACCの作動状態をオン状態へ変更する。
【0070】
2.設定変更確認処理-ACCオフ要求
運転支援ECU10は、ACCオフ要求が行われたと判定した場合、承認操作テーブル300を参照することにより、「キャンセルスイッチ52の押下操作」を承認操作として決定する。そして、運転支援ECU10は、図5に示すような確認情報500をディスプレイ42に表示する。確認情報500は、ACCオフ要求を受け付けた旨を示す情報501、及び、ACCオフ要求の承認操作に関する情報502を含む。更に、運転支援ECU10は、これらの情報501及び502をスピーカ43に発話させる。
【0071】
情報501が、運転者自身が発話した内容と一致している場合、運転者は、承認操作としてキャンセルスイッチ52の押下操作を行う。報知処理が行われた時点から時間閾値Tth以内にキャンセルスイッチ52の押下操作が行われた場合、運転支援ECU10は、ACCの作動状態をキャンセル状態(一時的なオフ状態)へ変更する。
【0072】
3.設定変更確認処理-増速要求
運転支援ECU10は、増速要求が行われたと判定した場合、承認操作テーブル300を参照することにより、「増速スイッチ55の長押し操作」を承認操作として決定する。そして、運転支援ECU10は、図6に示すような確認情報600をディスプレイ42に表示する。確認情報600は、増速要求を受け付けた旨を示す情報601、及び、増速要求の承認操作に関する情報602を含む。更に、運転支援ECU10は、これらの情報601及び602をスピーカ43に発話させる。
【0073】
情報601が、運転者自身が発話した内容と一致している場合、運転者は、承認操作として増速スイッチ55の長押し操作を行う。報知処理が行われた時点から時間閾値Tth以内に増速スイッチ55の長押し操作が行われた場合、運転支援ECU10は、増速要求(即ち、情報601の内容)に従って目標速度Vsetを設定する。
【0074】
4.設定変更確認処理-減速要求
運転支援ECU10は、減速要求が行われたと判定した場合、承認操作テーブル300を参照することにより、「減速スイッチ56の長押し操作」を承認操作として決定する。そして、運転支援ECU10は、図7に示すような確認情報700をディスプレイ42に表示する。確認情報700は、減速要求を受け付けた旨を示す情報701、及び、減速要求の承認操作に関する情報702を含む。更に、運転支援ECU10は、これらの情報701及び702をスピーカ43に発話させる。
【0075】
情報701が、運転者自身が発話した内容と一致している場合、運転者は、承認操作として減速スイッチ56の長押し操作を行う。報知処理が行われた時点から時間閾値Tth以内に減速スイッチ56の長押し操作が行われた場合、運転支援ECU10は、減速要求(即ち、情報701の内容)に従って目標速度Vsetを設定する。
【0076】
(具体的作動)
運転支援ECU10のCPU101(以下、単に「CPU」と称呼する。)は、所定時間(便宜上、「第1時間」と称呼する。)が経過する毎に、図8に示したルーチンを実行するようになっている。
【0077】
更に、CPUは、図示しないルーチンを第1時間が経過する毎に実行することにより、マイク41から音声データを取得するようになっている。加えて、CPUは、図示しないルーチンを第1時間が経過する毎に実行することにより、各種センサ11~14及び各種スイッチ51~57から検出信号又は出力信号を取得するようになっている。
【0078】
所定のタイミングになると、CPUは、図8のステップ800から処理を開始してステップ801に進み、設定変更要求フラグFr(以下、単に「要求フラグFr」と称呼する。)の値が「0」であるか否かを判定する。要求フラグFrの値は、運転者の発話を通じて設定変更要求が行われたと判定されたときに「1」に設定される(後述するステップ804を参照。)。要求フラグFrの値は、図示しないイグニッションスイッチがOFF位置からON位置へと変更されたときにCPUにより実行されるイニシャライズルーチンにおいて「0」に設定される。更に、要求フラグFrの値は、後述する図9のルーチンのステップ907においても「0」に設定される。
【0079】
要求フラグFrの値が「0」でない場合、CPUは、ステップ801にて「No」と判定してステップ895に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0080】
いま、要求フラグFrの値が「0」であると仮定すると、CPUは、ステップ801にて「Yes」と判定してステップ802に進み、マイク41により取得された音声データに対して前述のように音声認識処理を実行する。次に、ステップ803にて、CPUは、設定変更要求(即ち、ACCオン要求、ACCオフ要求、増速要求及び減速要求の何れか)が行われたか否かを判定する。
【0081】
設定変更要求が行われたと仮定すると、CPUは、ステップ803にて「Yes」と判定してステップ804に進み、要求フラグFrの値を「1」に設定する。その後、CPUは、ステップ895に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0082】
これに対し、設定変更要求が行われていない場合、CPUは、CPUはステップ803にて「No」と判定してステップ895に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0083】
更に、CPUは、「第1時間と等しいか又は第1時間よりも長い第2時間」が経過する毎に、図9に示したルーチンを実行するようになっている。
【0084】
所定のタイミングになると、CPUは、図9のステップ900から処理を開始してステップ901に進み、要求フラグFrの値が「1」であるか否かを判定する。要求フラグFrの値が「1」でない場合、CPUは、ステップ901にて「No」と判定してステップ995に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0085】
いま、運転者の発話を通じて設定変更要求が行われたことから、要求フラグFrの値が「1」である(ステップ804を参照。)と仮定する。この場合、CPUは、ステップ901にて「Yes」と判定して、以下に述べるステップ902乃至904の処理を順に実行する。その後、CPUは、ステップ905に進む。
【0086】
ステップ902:CPUは、図3に示す承認操作テーブル300を参照することにより、設定変更要求の種類に応じて承認操作を決定する。
ステップ903:CPUは、ステップ902にて決定された承認操作に用いられるスイッチ以外のスイッチの機能を無効化にする。例えば、ACCオン要求が行われた場合、CPUは、「メインスイッチ51」以外のスイッチ(52、53、54、55、56及び57)の機能を無効化にする。
ステップ904:CPUは、前述のように報知装置(ディスプレイ42及びスピーカ43)を用いて、確認情報(400、500、600又は700)の報知処理を実行する。
【0087】
CPUは、ステップ905に進むと、承認操作(ステップ902にて決定された操作)が行われたか否かを判定する。承認操作が行われた場合、CPUは、ステップ905にて「Yes」と判定して、以下に述べるステップ906乃至908の処理を順に実行する。その後、CPUは、ステップ995に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0088】
ステップ906:CPUは、設定変更要求に従ってACCの設定状態を変更する。
ステップ907:CPUは、要求フラグFrの値を「0」に設定する。
ステップ908:CPUは、ステップ903にて無効化したスイッチの機能を有効化する。
【0089】
これに対し、承認操作が行われない場合、CPUは、ステップ905にて「No」と判定してステップ909に進む。ステップ909にて、CPUは、ステップ904にて報知処理が行われた時点からの経過時間Taが時間閾値Tthより大きいか否かを判定する。経過時間Taが時間閾値Tth以下である場合、CPUは、ステップ909にて「No」と判定してステップ905の処理に戻り、承認操作が行われたか否かを判定する。
【0090】
承認操作が行われることなく経過時間Taが時間閾値Tthより大きくなると、CPUは、ステップ909にて「No」と判定してステップ910に進み、通知処理を実行する。具体的には、CPUは、報知装置を用いて、承認操作が行われなかった旨を運転者に対して報知する。次に、CPUは、前述のようにステップ907及びステップ908の処理を順に実行する。その後、CPUは、ステップ995に進み、本ルーチンを一旦終了する。この場合、設定変更要求が運転者によって承認されなかったので、ACCの設定状態が変更されない。
【0091】
本実施装置は、設定変更要求が行われたと判定した場合、設定変更要求の内容及び承認操作に関する情報を含む確認情報(400、500、600又は700)を、報知装置を用いて運転者に対して報知する。運転者が、確認情報における「承認操作に関する情報(402、502、602又は702)」に応じた操作を行った場合、本実施装置は、ACCの設定状態を設定変更要求に従って変更する。
【0092】
例えば、運転者の発話の誤認識に起因して、運転者の意図とは異なる設定変更要求が行われたと判定される場合がある。このような場合、確認情報における設定変更要求の内容が、運転者が意図した要求と一致していないので、運転者は、発話が誤認識されたことを認識することができる。この場合、運転者は、承認操作を行わない。運転者が承認操作を行わない場合、本実施装置は、設定変更要求に従ってACCの設定状態を変更しない。従って、運転者の発話の誤認識に起因して運転者の意図とは異なる設定変更要求が行われた場合において、ACCの設定状態が誤って設定されるのを回避することができる。
【0093】
更に、本実施装置は、承認操作テーブル300を参照することにより、設定変更要求の種類に応じて、運転者が承認操作を行う際に操作すべき操作装置50のスイッチ(51、52、55、56)を変更する。承認操作として操作すべきスイッチは、設定変更要求の内容と一致するように設定される。例えば、ACCオン要求が行なわれた場合、承認操作は、メインスイッチ51の押下操作である。このように、設定変更要求の種類に応じて承認操作を行う際に操作すべきスイッチが異なるので、運転者の意志をより正確に確認することができる。
【0094】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【0095】
(変形例1)
承認操作を行う際に操作すべきスイッチとして、設定変更要求の種類に関係なく、スイッチ51~57のうちの特定のスイッチのみが用いられてもよい。例えば、承認操作は、設定変更要求の種類に関係なく、メインスイッチ51の押下操作であってもよい。なお、承認操作用のスイッチとして、図示しない他のスイッチが用いられてもよい。
【0096】
(変形例2)
設定変更要求のうちの特定の要求に対して、承認操作が要求されなくてもよい。そのような要求の一例として、ACCオフ要求が挙げられる。ACCオフ要求が行われた場合、運転者が、可能な限り早く自身により運転操作(加速操作又は減速操作)を行いたいと考えている場合が多い。このような場合、運転者が承認操作を要求されると、運転者が煩わしさを感じる可能性がある。従って、承認操作を運転者に対して要求することなくACCの作動状態をキャンセル状態(一時的なオフ状態)へ変更することにより、運転者が煩わしさを感じる可能性を低減できる。なお、仮に運転者の発話が誤認識されてACCオフ要求が行われた場合でも、ACCの作動状態がオフ状態に変更されるだけであり、車両VAが急に加速したり減速することがない。従って、車両VAに走行状態への影響が小さい。
【0097】
本変形例に係る運転支援ECU10のCPUは、図9に示したルーチンに代えて、図10に示したルーチンを実行するようになっている。図10に示したルーチンは、図9のルーチンにステップ1001を追加したルーチンである。
【0098】
CPUは、図10のルーチンをステップ1000から開始してステップ901にて「Yes」と判定すると、ステップ1001にて、設定変更要求がACCオフ要求であるか否かを判定する。設定変更要求がACCオフ要求である場合、CPUは、ステップ1001にて「Yes」と判定して、前述のようにステップ906乃至ステップ908の処理を順に実行する。その後、CPUは、ステップ1095に進み、本ルーチンを一旦終了する。このように、設定変更要求がACCオフ要求である場合、CPUは、承認操作を運転者に対して要求することなくACCの作動状態をキャンセル状態へ変更する。
【0099】
(変形例3)
設定変更要求は、上述の例に限定されない。設定変更要求は、先行車追従制御の制御パラメータである目標車間時間Ttgtの増加又は減少を要求する車間時間設定要求を含んでもよい。この場合、図11に示すように、車間時間設定要求に対する承認操作は、車間時間設定スイッチ57の押下操作であってもよい。
【0100】
更に、設定変更要求は、ACC以外の運転支援制御の設定状態を変更する要求を含んでもよい。運転支援ECU10は、ACCが実行されている状況下において、車線維持制御(LTA)を実行できるように構成されてもよい。この構成において、設定変更要求は、車線維持制御(LTA)の作動状態をオフ状態からオン状態へと変更するLTAオン要求、及び、車線維持制御(LTA)の作動状態をオン状態からオフ状態へと変更するLTAオフ要求を含んでもよい。
【0101】
(変形例4)
運転支援ECU10は、複数の設定変更要求を同時に受け付け、それら複数の設定変更要求に対して1つの承認操作を決定してもよい。
【0102】
例えば、運転支援ECU10は、以下に述べる総ての条件が成立すると、ACCオン要求と速度設定要求が同時に行われたと判定する。速度設定要求は、ACC開始時点での目標速度Vsetを設定する要求である。
(条件E1)音声認識結果の中に、「ACCに関連するワード」、「オン状態に関連するワード」及び「車速に関連する数値」が含まれる。
(条件E2)ACCの作動状態が現時点にてオフ状態又はキャンセル状態である。
【0103】
例えば、音声認識結果が「ACCを開始して速度を80キロに設定して」である場合、音声認識結果の中に「ACCに関連するワード(=ACC)」、「オン状態に関連するワード(=開始)」及び「車速に関連する数値(=80キロ)」が含まれる。従って、運転支援ECU10は、条件E1が成立すると判定する。
【0104】
図11に示すように、ACCオン要求及び速度設定要求に対する承認操作は、増速スイッチ55の長押し操作である。増速スイッチ55の長押し操作が行われた場合、運転支援ECU10は、ACCの作動状態をオン状態へ変更し、且つ、目標速度Vsetを80キロに設定する。本変形例によれば、複数の設定変更要求が行われた場合に、運転支援ECU10は、複数のスイッチ51~57のうちの1つ(増速スイッチ55)に対する操作を承認操作として決定する。従って、操作性が向上する。運転者が複数のスイッチを操作する必要がないので、運転者が煩わしさを感じる可能性を低減できる。
【0105】
更に、複数の設定変更要求が1つのワードに関連付けられてもよい。ACCオン要求及びLTAオン要求が「高速道路モード」というワードに関連付けられてもよい。この構成において、運転支援ECU10は、以下に述べる総ての条件が成立すると、ACCオン要求とLTAオン要求が同時に行われたと判定する。
(条件F1)音声認識結果の中に、「高速道路モード」及び「オン状態に関連するワード」が含まれる。
(条件F2)ACCの作動状態が現時点にてオフ状態又はキャンセル状態であり、且つ、LTAの作動状態が現時点にてオフ状態である。
【0106】
例えば、音声認識結果が「高速道路モードを開始して」である場合、音声認識結果の中に「高速道路モード」及び「オン状態に関連するワード(=開始)」が含まれる。従って、運転支援ECU10は、条件F1が成立すると判定する。
【0107】
図11に示すように、ACCオン要求及びLTAオン要求に対する承認操作は、メインスイッチ51の押下操作である。メインスイッチ51の押下操作が行われた場合、運転支援ECU10は、ACCの作動状態をオン状態へ変更し、且つ、LTAの作動状態をオン状態へ変更する。
【0108】
(変形例5)
図9のルーチンのステップ903において、CPUは、承認操作用のスイッチに加えて、特定のスイッチの機能を有効な状態で維持してもよい。そのようなスイッチの一例として、キャンセルスイッチ52が挙げられる。キャンセルスイッチ52の押下操作が行われた場合、運転者が自身により運転操作(加速操作又は減速操作)を行う意志がある。従って、運転操作を運転者に直ちに移行することが好ましい。
【0109】
例えば、ステップ903にて、CPUは、承認操作用のスイッチ及びキャンセルスイッチ52以外のスイッチの機能を無効化にしてもよい。この場合、CPUが図9のルーチンを実行している間、キャンセルスイッチ52の機能は常に有効な状態に維持される。ACCオフ要求以外の要求(例えば、増速要求又は減速要求)が行われたと判定された場合において(ステップ803:Yes)、運転者がその要求に対する承認操作を行う前にキャンセルスイッチ52に対する操作を行う。この操作に応じて、CPUは、ACCの作動状態をオフ状態へと変更する。本変形例によれば、図9のルーチンにおいてステップ905より前に運転者がキャンセルスイッチ52の押下操作を行ったとき、ACCの作動状態をオフ状態に変更する運転者の意志を即座に反映することができる。
【符号の説明】
【0110】
10…運転支援ECU、20…エンジンECU、30…ブレーキECU、41…マイク、42…ディスプレイ、43…スピーカ、50…操作装置、51…メインスイッチ、52…キャンセルスイッチ、55…増速スイッチ、56…減速スイッチ。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11