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特許7708326変速機、及びそれを備えた車両用駆動伝達装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】変速機、及びそれを備えた車両用駆動伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/54 20060101AFI20250708BHJP
   F16H 3/66 20060101ALI20250708BHJP
【FI】
F16H3/54
F16H3/66 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024549772
(86)(22)【出願日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 JP2023026241
(87)【国際公開番号】W WO2024070143
(87)【国際公開日】2024-04-04
【審査請求日】2024-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2022153925
(32)【優先日】2022-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】磯野 宏
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-108619(JP,A)
【文献】特開2013-200012(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0404536(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102020112624(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/54
F16H 3/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の駆動源に駆動連結される入力要素、車輪に駆動連結される出力要素、第1固定要素、及び第2固定要素を備えた遊星歯車機構と、
前記第1固定要素を非回転部材に選択的に固定する第1固定装置と、
前記第2固定要素を前記非回転部材に選択的に固定する第2固定装置と、を備えた変速機であって、
前記第1固定装置は、前記第1固定要素と一体的に回転するように連結された第1被固定ギヤと、前記第1被固定ギヤに噛み合う第1固定ギヤと、前記第1固定ギヤを前記非回転部材に選択的に係合させる第1摩擦係合装置と、を備え、
前記第2固定装置は、前記第2固定要素と一体的に回転するように連結された第2被固定ギヤと、前記第2被固定ギヤに噛み合う第2固定ギヤと、前記第2固定ギヤを前記非回転部材に選択的に係合させる第2摩擦係合装置と、を備え、
前記第1摩擦係合装置は、前記第1固定ギヤと同軸上に配置され、
前記第2摩擦係合装置は、前記第2固定ギヤと同軸上に配置され、
前記第1固定ギヤの回転軸心と前記第2固定ギヤの回転軸心とが、互いに平行に配置され、
前記第1固定ギヤの回転軸心及び前記第2固定ギヤの回転軸心に沿う方向を軸方向として、
前記第1摩擦係合装置と前記第2摩擦係合装置とは、前記軸方向に沿う軸方向視で、互いに重複しないように配置されている、変速機。
【請求項2】
前記第1摩擦係合装置は、前記第1固定ギヤと同軸上に配置された第1摩擦部材と、前記第1固定ギヤと同軸上であって前記第1摩擦部材と前記軸方向に対向するように配置された第2摩擦部材と、前記第1固定ギヤと一体的に回転するように連結され、前記第1摩擦部材の相対回転を規制した状態で前記第1摩擦部材を支持する第1支持部材と、前記非回転部材に固定され、前記第2摩擦部材の相対回転を規制した状態で前記第2摩擦部材を支持する第2支持部材と、前記第1摩擦部材及び前記第2摩擦部材を前記軸方向に押圧する第1押圧装置と、を備え、
前記第2摩擦係合装置は、前記第2固定ギヤと同軸上に配置された第3摩擦部材と、前記第2固定ギヤと同軸上であって前記第3摩擦部材と前記軸方向に対向するように配置された第4摩擦部材と、前記第2固定ギヤと一体的に回転するように連結され、前記第3摩擦部材の相対回転を規制した状態で前記第3摩擦部材を支持する第3支持部材と、前記非回転部材に固定され、前記第4摩擦部材の相対回転を規制した状態で前記第4摩擦部材を支持する第4支持部材と、前記第3摩擦部材及び前記第4摩擦部材を前記軸方向に押圧する第2押圧装置と、を備え、
前記第1固定ギヤの回転軸心に直交する方向を第1径方向とし、前記第2固定ギヤの回転軸心に直交する方向を第2径方向として、
前記第1押圧装置は、前記第1摩擦部材及び前記第2摩擦部材に押圧力を作用させる第1押圧部材と、第1駆動モータと、前記第1駆動モータの回転駆動力を前記軸方向の駆動力に変換して前記第1押圧部材に伝達するねじ式の第1直動変換機構と、を備え、
前記第1直動変換機構は、前記第1摩擦部材及び前記第2摩擦部材に対して前記第1径方向の内側であって、前記第1径方向に沿う第1径方向視で前記第1摩擦部材及び前記第2摩擦部材と重複する位置に配置され、
前記第2押圧装置は、前記第3摩擦部材及び前記第4摩擦部材に押圧力を作用させる第2押圧部材と、第2駆動モータと、前記第2駆動モータの回転駆動力を前記軸方向の駆動力に変換して前記第2押圧部材に伝達するねじ式の第2直動変換機構と、を備え、
前記第2直動変換機構は、前記第3摩擦部材及び前記第4摩擦部材に対して前記第2径方向の内側であって、前記第2径方向に沿う第2径方向視で前記第3摩擦部材及び前記第4摩擦部材と重複する位置に配置されている、請求項1に記載の変速機。
【請求項3】
前記駆動源は、ロータを備えた回転電機であり、
前記ロータと一体的に回転するロータ軸と、
前記車輪である第1車輪に駆動連結される第1出力部材と、
前記車輪であって前記第1車輪とは異なる第2車輪に駆動連結される第2出力部材と、
前記ロータ軸と一体的に回転するように連結された差動入力要素、第1差動出力要素、及び第2差動出力要素を備え、前記ロータ軸から前記差動入力要素に伝達されたトルクを前記第1差動出力要素と前記第2差動出力要素とに分配する差動歯車機構と、
請求項1に記載の変速機である第1変速機と、
請求項1に記載の変速機であって前記第1変速機とは異なる第2変速機と、を備えた車両用駆動伝達装置であって、
前記第1変速機の前記入力要素は、前記第1差動出力要素と一体的に回転するように連結され、
前記第1変速機の前記出力要素は、前記第1出力部材と一体的に回転するように連結され、
前記第2変速機の前記入力要素は、前記第2差動出力要素と一体的に回転するように連結され、
前記第2変速機の前記出力要素は、前記第2出力部材と一体的に回転するように連結され、
前記第1変速機の前記第1被固定ギヤと前記第2変速機の前記第1被固定ギヤとが同軸上に配置され、
前記第1変速機の前記第1固定ギヤと前記第2変速機の前記第1固定ギヤとが、同軸上に配置されていると共に、互いに一体的に回転するように連結され、
前記第1変速機の前記第2被固定ギヤと前記第2変速機の前記第2被固定ギヤとが同軸上に配置され、
前記第1変速機の前記第2固定ギヤと前記第2変速機の前記第2固定ギヤとが、同軸上に配置されていると共に、互いに一体的に回転するように連結され、
前記第1変速機の前記第1摩擦係合装置と前記第2変速機の前記第1摩擦係合装置とが共通であり、
前記第1変速機の前記第2摩擦係合装置と前記第2変速機の前記第2摩擦係合装置とが共通である、車両用駆動伝達装置。
【請求項4】
前記駆動源は、ロータを備えた回転電機であり、
前記ロータと一体的に回転するロータ軸と、
前記車輪である第1車輪に駆動連結される第1出力部材と、
前記車輪であって前記第1車輪とは異なる第2車輪に駆動連結される第2出力部材と、
請求項1に記載の変速機と、
差動入力要素、第1差動出力要素、及び第2差動出力要素を備え、前記変速機から前記差動入力要素に伝達されたトルクを前記第1差動出力要素と前記第2差動出力要素とに分配する差動歯車機構と、を備えた車両用駆動伝達装置であって、
前記変速機の前記入力要素は、前記ロータ軸と一体的に回転するように連結され、
前記変速機の前記出力要素は、外歯の駆動ギヤと一体的に回転するように連結され、
前記差動入力要素は、前記駆動ギヤに噛み合う外歯の被駆動ギヤと一体的に回転するように連結され、
前記第1差動出力要素は、前記第1出力部材と一体的に回転するように連結され、
前記第2差動出力要素は、前記第2出力部材と一体的に回転するように連結され、
前記ロータ軸及び前記変速機の前記遊星歯車機構が配置された軸を第1軸とし、前記変速機の前記第1固定ギヤが配置された軸を第2軸とし、前記変速機の前記第2固定ギヤが配置された軸を第3軸とし、前記差動歯車機構が配置された軸を第4軸として、
前記第1軸、前記第2軸、前記第3軸、及び前記第4軸が、互いに平行に配置され、
前記第2軸、前記第3軸、及び前記第4軸が、前記第1軸の周囲を囲むように配置されている、車両用駆動伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪の駆動源に駆動連結される入力要素、車輪に駆動連結される出力要素、第1固定要素、及び第2固定要素を備えた遊星歯車機構と、第1固定要素を非回転部材に選択的に固定する第1固定装置と、第2固定要素を非回転部材に選択的に固定する第2固定装置と、を備えた変速機、及びそれを備えた車両用駆動伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような技術の一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、背景技術の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1の変速機では、遊星歯車機構(5)は、互いに一体的に回転する大径ピニオンギヤ(52a)及び小径ピニオンギヤ(52b)を回転自在に支持するキャリヤ(53)と、回転電機(3)のロータ(32)と一体的に回転し、大径ピニオンギヤ(52a)に噛み合うサンギヤ(51)と、大径ピニオンギヤ(52a)に噛み合う第1リングギヤ(54a)と、小径ピニオンギヤ(52b)に噛み合う第2リングギヤ(55a)と、を備えている。
【0004】
そして、第1固定装置は、第1リングギヤ(54a)を非回転部材としてのケース(2)に選択的に固定するように構成されている。また、第2固定装置は、第2リングギヤ(55a)を非回転部材としてのケース(2)に選択的に固定するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-200012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の変速機では、第1固定装置を構成する第1摩擦係合装置(61)と、第2固定装置を構成する第2摩擦係合装置(62)とが、軸方向(特許文献1の図1における左右方向)に並んで配置されている。そのため、変速機が軸方向に大型化し易い。
【0007】
更に、第1摩擦係合装置(61)と第2摩擦係合装置(62)とが、遊星歯車機構(5)に対して径方向の外側(特許文献1の図1における上側)に配置されている。そのため、変速機が径方向に大型化し易い。
【0008】
そこで、一対の摩擦係合装置を備えた構成において、変速機の小型化を図り易い技術の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記に鑑みた、変速機の特徴構成は、
車輪の駆動源に駆動連結される入力要素、車輪に駆動連結される出力要素、第1固定要素、及び第2固定要素を備えた遊星歯車機構と、
前記第1固定要素を非回転部材に選択的に固定する第1固定装置と、
前記第2固定要素を前記非回転部材に選択的に固定する第2固定装置と、を備えた変速機であって、
前記第1固定装置は、前記第1固定要素と一体的に回転するように連結された第1被固定ギヤと、前記第1被固定ギヤに噛み合う第1固定ギヤと、前記第1固定ギヤを前記非回転部材に選択的に係合させる第1摩擦係合装置と、を備え、
前記第2固定装置は、前記第2固定要素と一体的に回転するように連結された第2被固定ギヤと、前記第2被固定ギヤに噛み合う第2固定ギヤと、前記第2固定ギヤを前記非回転部材に選択的に係合させる第2摩擦係合装置と、を備え、
前記第1摩擦係合装置は、前記第1固定ギヤと同軸上に配置され、
前記第2摩擦係合装置は、前記第2固定ギヤと同軸上に配置され、
前記第1固定ギヤの回転軸心と前記第2固定ギヤの回転軸心とが、互いに平行に配置され、
前記第1固定ギヤの回転軸心及び前記第2固定ギヤの回転軸心に沿う方向を軸方向として、
前記第1摩擦係合装置と前記第2摩擦係合装置とは、前記軸方向に沿う軸方向視で、互いに重複しないように配置されている点にある。
【0010】
この特徴構成によれば、第1固定装置が、遊星歯車機構の第1固定要素と一体的に回転するように連結された第1被固定ギヤと、当該第1被固定ギヤに噛み合う第1固定ギヤと、当該第1固定ギヤを非回転部材に選択的に係合させる第1摩擦係合装置と、を備えている。そして、第1摩擦係合装置が、第1固定ギヤと同軸上に配置されている。また、第2固定装置が、遊星歯車機構の第2固定要素と一体的に回転するように連結された第2被固定ギヤと、当該第2被固定ギヤに噛み合う第2固定ギヤと、当該第2固定ギヤを非回転部材に選択的に係合させる第2摩擦係合装置と、を備えている。そして、第2摩擦係合装置が、第2固定ギヤと同軸上に配置されている。これにより、第1摩擦係合装置と第2摩擦係合装置とを、互いに別軸に配置することが容易となっている。そのため、それらが同軸上に配置された構成と比べて、変速機の軸方向の寸法を小さく抑え易い。
また、本特徴構成によれば、第1固定装置において第1被固定ギヤに対する第1固定ギヤの径を小さく設定することにより、遊星歯車機構の第1固定要素を非回転部材に固定するために必要なトルクを小さく抑えることができる。これにより、第1摩擦係合装置の小径化を図り易い。また、第2固定装置についても同様に、第2摩擦係合装置の小径化を図り易い。
以上のように、本特徴構成によれば、一対の摩擦係合装置を備えた構成において、変速機の小型化を図り易い。
【0011】
上記に鑑みた、車両用駆動伝達装置の特徴構成は、
前記駆動源は、ロータを備えた回転電機であり、
前記ロータと一体的に回転するロータ軸と、
前記車輪である第1車輪に駆動連結される第1出力部材と、
前記車輪であって前記第1車輪とは異なる第2車輪に駆動連結される第2出力部材と、
前記ロータ軸と一体的に回転するように連結された差動入力要素、第1差動出力要素、及び第2差動出力要素を備え、前記ロータ軸から前記差動入力要素に伝達されたトルクを前記第1差動出力要素と前記第2差動出力要素とに分配する差動歯車機構と、
請求項1に記載の変速機である第1変速機と、
請求項1に記載の変速機であって前記第1変速機とは異なる第2変速機と、を備えた車両用駆動伝達装置であって、
前記第1変速機の前記入力要素は、前記第1差動出力要素と一体的に回転するように連結され、
前記第1変速機の前記出力要素は、前記第1出力部材と一体的に回転するように連結され、
前記第2変速機の前記入力要素は、前記第2差動出力要素と一体的に回転するように連結され、
前記第2変速機の前記出力要素は、前記第2出力部材と一体的に回転するように連結され、
前記第1変速機の前記第1被固定ギヤと前記第2変速機の前記第1被固定ギヤとが同軸上に配置され、
前記第1変速機の前記第1固定ギヤと前記第2変速機の前記第1固定ギヤとが、同軸上に配置されていると共に、互いに一体的に回転するように連結され、
前記第1変速機の前記第2被固定ギヤと前記第2変速機の前記第2被固定ギヤとが同軸上に配置され、
前記第1変速機の前記第2固定ギヤと前記第2変速機の前記第2固定ギヤとが、同軸上に配置されていると共に、互いに一体的に回転するように連結され、
前記第1変速機の前記第1摩擦係合装置と前記第2変速機の前記第1摩擦係合装置とが共通であり、
前記第1変速機の前記第2摩擦係合装置と前記第2変速機の前記第2摩擦係合装置とが共通である点にある。
【0012】
この特徴構成によれば、差動歯車機構と第1出力部材とを結ぶ動力伝達経路、及び差動歯車機構と第2出力部材とを結ぶ動力伝達経路のそれぞれに変速機が設けられた構成において、一対の変速機の第1固定装置を構成する第1固定ギヤが、同軸上に配置されていると共に、互いに一体的に回転するように連結されている。また、一対の変速機の第2固定装置を構成する第2固定ギヤが、同軸上に配置されていると共に、互いに一体的に回転するように連結されている。これにより、一対の第1固定ギヤを1つの第1摩擦係合装置により非回転部材に選択的に係合させることができると共に、一対の第2固定ギヤを1つの第2摩擦係合装置により非回転部材に選択的に係合させることができる。
したがって、一対の変速機を備えた構成において、一対の第1固定装置及び一対の第2固定装置の小型化、延いては車両用駆動伝達装置の小型化を図り易い。
【0013】
上記に鑑みた、車両用駆動伝達装置の特徴構成は、
前記駆動源は、ロータを備えた回転電機であり、
前記ロータと一体的に回転するロータ軸と、
前記車輪である第1車輪に駆動連結される第1出力部材と、
前記車輪であって前記第1車輪とは異なる第2車輪に駆動連結される第2出力部材と、
請求項1に記載の変速機と、
差動入力要素、第1差動出力要素、及び第2差動出力要素を備え、前記変速機から前記差動入力要素に伝達されたトルクを前記第1差動出力要素と前記第2差動出力要素とに分配する差動歯車機構と、を備えた車両用駆動伝達装置であって、
前記変速機の前記入力要素は、前記ロータ軸と一体的に回転するように連結され、
前記変速機の前記出力要素は、外歯の駆動ギヤと一体的に回転するように連結され、
前記差動入力要素は、前記駆動ギヤに噛み合う外歯の被駆動ギヤと一体的に回転するように連結され、
前記第1差動出力要素は、前記第1出力部材と一体的に回転するように連結され、
前記第2差動出力要素は、前記第2出力部材と一体的に回転するように連結され、
前記ロータ軸及び前記変速機の前記遊星歯車機構が配置された軸を第1軸とし、前記変速機の前記第1固定ギヤが配置された軸を第2軸とし、前記変速機の前記第2固定ギヤが配置された軸を第3軸とし、前記差動歯車機構が配置された軸を第4軸として、
前記第1軸、前記第2軸、前記第3軸、及び前記第4軸が、互いに平行に配置され、
前記第2軸、前記第3軸、及び前記第4軸が、前記第1軸の周囲を囲むように配置されている点にある。
【0014】
この特徴構成によれば、変速機の遊星歯車機構がロータ軸と同軸上に配置され、差動歯車機構がロータ軸とは別軸上に配置された構成において、変速機の第1固定ギヤが配置された第2軸と、変速機の第2固定ギヤが配置された第3軸と、差動歯車機構が配置された第4軸とが、ロータ軸及び変速機の遊星歯車機構が配置された第1軸の周囲を囲むように配置されている。したがって、車両用駆動伝達装置の第1軸に対する径方向の寸法を小さく抑え易い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係る車両用駆動伝達装置の軸方向に沿う断面図
図2】第1の実施形態に係る車両用駆動伝達装置のスケルトン図
図3】第1の実施形態に係る車両用駆動伝達装置の第1摩擦係合装置の断面図
図4】第1の実施形態に係る車両用駆動伝達装置の第2摩擦係合装置の断面図
図5図8におけるV-V断面図
図6図8におけるVI-VI断面図
図7】第2の実施形態に係る車両用駆動伝達装置のスケルトン図
図8】第2の実施形態に係る車両用駆動伝達装置における軸方向視での各要素の位置関係を示す図
図9】第3の実施形態に係る車両用駆動伝達装置のスケルトン図
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.第1の実施形態
以下では、第1の実施形態に係る車両用駆動伝達装置100について、図1から図4を参照して説明する。
【0017】
図1及び図2に示すように、車両用駆動伝達装置100は、変速機10を備えている。本実施形態では、車両用駆動伝達装置100は、一対の変速機10を備えている。変速機10は、遊星歯車機構1と、第1固定装置2と、第2固定装置3と、を備えている。
【0018】
遊星歯車機構1は、車輪W(図2参照)の駆動源Dに駆動連結される入力要素11と、車輪Wに駆動連結される出力要素12と、第1固定要素13と、第2固定要素14と、を備えている。
【0019】
ここで、本願において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等が含まれていても良い。ただし、遊星歯車機構の各回転要素について「駆動連結」という場合には、互いに他の回転要素を介することなく連結されている状態を指すものとする。
【0020】
本実施形態では、ステータST及びロータRTを備えた回転電機MGが駆動源Dに相当する。なお、本願において「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
【0021】
本実施形態では、遊星歯車機構1は、回転電機MGのロータRTの回転軸心である第1軸X1上に配置されている。
【0022】
本実施形態では、入力要素11は、サンギヤS1である。そして、出力要素12は、キャリヤC1である。また、本実施形態では、第1固定要素13は、環状に形成された第1環状部A11と、当該第1環状部A11の内周面に設けられた内歯の第1リングギヤR11と、を備えている。そして、第2固定要素14は、環状に形成された第2環状部A12と、当該第2環状部A12の内周面に設けられた内歯の第2リングギヤR12と、を備えている。
【0023】
本実施形態では、キャリヤC1は、互いに一体的に回転する大径ピニオンギヤP11と小径ピニオンギヤP12とを回転自在に支持している。大径ピニオンギヤP11及び小径ピニオンギヤP12のそれぞれは、自己の軸心回りに回転(自転)すると共に、キャリヤC1と共にサンギヤS1を中心として回転(公転)する。大径ピニオンギヤP11及び小径ピニオンギヤP12のそれぞれは、自己の公転軌跡に沿って、互いに間隔を空けて複数設けられている。
【0024】
大径ピニオンギヤP11は、サンギヤS1及び第2リングギヤR12の双方に噛み合っている。本実施形態では、大径ピニオンギヤP11は、サンギヤS1よりも大径に形成されている。小径ピニオンギヤP12は、第1リングギヤR11に噛み合っている。小径ピニオンギヤP12は、大径ピニオンギヤP11よりも小径に形成されている。
【0025】
第1固定装置2は、遊星歯車機構1の第1固定要素13を非回転部材NRに選択的に固定する装置である。また、第2固定装置3は、遊星歯車機構1の第2固定要素14を非回転部材NRに選択的に固定する装置である。本実施形態では、非回転部材NRは、変速機10を含む、車両用駆動伝達装置100の構成要素を収容するケース9である。
【0026】
第1固定装置2は、第1被固定ギヤ21と、第1固定ギヤ22と、第1摩擦係合装置4と、を備えている。
【0027】
第1被固定ギヤ21は、遊星歯車機構1の第1固定要素13と一体的に回転するように連結されている。第1固定ギヤ22は、第1被固定ギヤ21に噛み合うように配置されている。本実施形態では、第1被固定ギヤ21は、第1環状部A11の外周面に設けられた外歯のギヤである。また、本実施形態では、第1被固定ギヤ21は、大径ピニオンギヤP11よりも大径に形成されている。そして、第1固定ギヤ22は、第1被固定ギヤ21よりも小径に形成されている。また、本実施形態では、第1被固定ギヤ21は、第1軸X1上に配置されている。そして、第1固定ギヤ22は、第1軸X1とは異なる第2軸X2上に配置されている。
【0028】
第1摩擦係合装置4は、第1固定ギヤ22を非回転部材NRに選択的に係合させる装置である。第1摩擦係合装置4の詳細な構成については後述する。
【0029】
第2固定装置3は、第2被固定ギヤ31と、第2固定ギヤ32と、第2摩擦係合装置5と、を備えている。
【0030】
第2被固定ギヤ31は、遊星歯車機構1の第2固定要素14と一体的に回転するように連結されている。第2固定ギヤ32は、第2被固定ギヤ31に噛み合うように配置されている。本実施形態では、第2被固定ギヤ31は、第2環状部A12の外周面に設けられた外歯のギヤである。また、本実施形態では、第2被固定ギヤ31は、大径ピニオンギヤP11よりも大径に形成されている。そして、第2被固定ギヤ31は、第1被固定ギヤ21と同径に形成されている。また、第2固定ギヤ32は、第2被固定ギヤ31よりも小径に形成されている。本実施形態では、第2被固定ギヤ31は、第1軸X1上に配置されている。そして、第2固定ギヤ32は、第1軸X1及び第2軸X2とは異なる第3軸X3上に配置されている。
【0031】
第2摩擦係合装置5は、第2固定ギヤ32を非回転部材NRに選択的に係合させる装置である。第2摩擦係合装置5の詳細な構成については後述する。
【0032】
第1固定ギヤ22の回転軸心(ここでは、第2軸X2)と、第2固定ギヤ32の回転軸心(ここでは、第3軸X3)とは、互いに平行に配置されている。本実施形態では、第1軸X1と第2軸X2と第3軸X3が、互いに平行に配置されている。以下の説明では、第1固定ギヤ22の回転軸心(ここでは、第2軸X2)及び第2固定ギヤ32の回転軸心(ここでは、第3軸X3)に沿う方向を「軸方向L」とする。そして、軸方向Lの一方側を「軸方向第1側L1」とし、軸方向Lの他方側を「軸方向第2側L2」とする。
【0033】
また、第1固定ギヤ22の回転軸心(ここでは、第2軸X2)に直交する方向を「第1径方向RA」とする。そして、第2固定ギヤ32の回転軸心(ここでは、第3軸X3)に直交する方向を「第2径方向RB」とする。なお、以下では、第1径方向RA及び第2径方向RBを含め、任意の回転部材の回転軸心に直交する方向を「径方向R」とする。つまり、径方向Rは、第1固定ギヤ22及び第2固定ギヤ32等の回転部材の回転軸心を基準として定義される。なお、どの回転軸心を基準とするかを区別する必要がない場合やどの回転軸心を基準とするかが明らかである場合には、単に「径方向R」と記す場合がある。
【0034】
図3に示すように、第1摩擦係合装置4は、第1摩擦部材41と、第2摩擦部材42と、第1支持部材43と、第2支持部材44と、第1押圧装置45と、を備えている。
【0035】
第1摩擦部材41と第2摩擦部材42とは、第2軸X2上に配置されている。つまり、第1摩擦部材41と第2摩擦部材42とは、第1固定ギヤ22と同軸上に配置されている。第1摩擦部材41と第2摩擦部材42とは、互いに軸方向Lに対向するように配置されている。本実施形態では、第1摩擦部材41及び第2摩擦部材42は、複数枚ずつ設けられており、これらが軸方向Lに沿って交互に配置されている。第1摩擦部材41及び第2摩擦部材42は、いずれか一方をフリクションプレートとし、他方をセパレートプレートとすることができる。
【0036】
第1支持部材43は、第1摩擦部材41の相対回転を規制した状態で、第1摩擦部材41を支持する部材である。第1支持部材43は、第1固定ギヤ22と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1支持部材43は、軸方向Lに沿って延在する筒状に形成されている。そして、第1支持部材43は、第1摩擦部材41の外周部を支持している。
【0037】
第2支持部材44は、第2摩擦部材42の相対回転を規制した状態で、第2摩擦部材42を支持する部材である。第2支持部材44は、非回転部材NRに固定されている。本実施形態では、第2支持部材44は、軸方向Lに沿って延在する筒状に形成されている。そして、第2支持部材44は、第2摩擦部材42の内周部を支持している。また、本実施形態では、第2支持部材44は、非回転部材NRとしてのケース9が備える第1支持壁部91に固定されている。第1支持壁部91は、第1径方向RAに沿って延在するように形成されている。そして、第1支持壁部91は、第1摩擦部材41及び第2摩擦部材42を軸方向第1側L1から覆うように配置されている。図3に示す例では、第2支持部材44は、第1支持壁部91から軸方向第2側L2に突出するように、第1支持壁部91と一体的に形成されている。
【0038】
第1押圧装置45は、第1摩擦部材41及び第2摩擦部材42を軸方向Lに押圧する装置である。本実施形態では、第1押圧装置45は、第1摩擦部材41及び第2摩擦部材42に押圧力を作用させる第1押圧部材46と、第1駆動モータ47と、当該第1駆動モータ47の回転駆動力を軸方向Lの駆動力に変換して第1押圧部材46に伝達するねじ式の第1直動変換機構48と、を備えている。
【0039】
第1押圧部材46は、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1摩擦部材41及び第2摩擦部材42と重複する位置に配置されている。本実施形態では、第1押圧部材46は、第1径方向RAに沿って延在する板状に形成されている。ここで、2つの要素の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線と直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの要素の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。
【0040】
第1駆動モータ47は、第1押圧部材46を駆動するための回転駆動力を発生させるモータである。本実施形態では、第1駆動モータ47は、第1支持部材43に対して第1径方向RAの外側であって、第1径方向RAに沿う第1径方向視で第1支持部材43と重複する位置に配置されている。また、本実施形態では、第1駆動モータ47は、軸方向Lに沿う軸方向視で、遊星歯車機構1と重複する位置に配置されている。
【0041】
本実施形態では、第1直動変換機構48は、第1ねじ軸部材481と、第1ナット部材482と、第1連結部材483と、第1被支持部材484と、第1減速機構49と、を備えている。
【0042】
第1ねじ軸部材481は、軸方向Lに沿って延在するように形成されている。第1ナット部材482は、第1ねじ軸部材481を第1径方向RAの外側から覆う環状に形成されている。第1ねじ軸部材481と第1ナット部材482とは、互いに螺合するように構成されている。具体的には、第1ねじ軸部材481の外周部には、雄ねじが形成され、第1ナット部材482の内周部には、第1ねじ軸部材481の雄ねじに螺合する雌ねじが形成されている。そのため、第1ナット部材482は、第1ねじ軸部材481が回転することにより、当該回転方向と雄ねじ及び雌ねじの向きとに応じて軸方向Lに沿う直線運動を行う。
【0043】
第1ナット部材482は、非回転部材NRに対して相対回転不能であって軸方向Lに移動自在に支持されている。本実施形態では、第1ナット部材482は、非回転部材NRに固定された第2支持部材44に対して第1径方向RAの内側に配置されている。そして、第1ナット部材482は、当該第1ナット部材482と第2支持部材44との第1径方向RAの間に配置された環状の第1回り止め部材48aを介して、第2支持部材44に対して相対回転不能であって軸方向Lに相対移動自在に連結されている。図3に示す例では、第1ナット部材482の外周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン歯が周方向に分散して形成されている。そして、第1回り止め部材48aの内周部には、第1ナット部材482の外周部に形成された複数のスプライン歯に係合する複数のスプライン歯が、軸方向Lに延在するように周方向に分散して形成されている。また、第2支持部材44の内周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン歯が周方向に分散して形成されている。そして、第1回り止め部材48aの外周部には、第2支持部材44の内周部に形成された複数のスプライン歯に係合する複数のスプライン歯が、軸方向Lに延在するように周方向に分散して形成されている。
【0044】
また、第1ナット部材482は、第1押圧部材46と一体的に軸方向Lに移動するように連結されている。図3に示す例では、第1ナット部材482は、第1押圧部材46と一体的に形成されている。そのため、第1ねじ軸部材481の回転に伴い、第1ナット部材482を介して第1押圧部材46が軸方向Lに移動する。
【0045】
第1連結部材483は、第1ねじ軸部材481と第1減速機構49とを連結している。本実施形態では、第1連結部材483は、第1ねじ軸部材481から軸方向第1側L1に延在する筒状に形成されている。
【0046】
第1被支持部材484は、非回転部材NRに対して軸方向Lに支持されている。本実施形態では、第1被支持部材484は、第1連結部材483から第1径方向RAの外側に突出するように形成されている。そして、第1被支持部材484は、非回転部材NRに固定された第2支持部材44から第1径方向RAの内側に突出するように形成された支持部44aに、第1スラスト軸受B1を介して軸方向第2側L2から支持されている。
【0047】
第1減速機構49は、第1駆動モータ47の回転を減速するように構成されている。本実施形態では、第1減速機構49は、第1ギヤ491と、第2ギヤ492と、第3ギヤ493と、第4ギヤ494と、を備えている。
【0048】
第1ギヤ491は、第1駆動モータ47の出力軸と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1ギヤ491は、第1駆動モータ47に対して軸方向第1側L1に配置されている。
【0049】
第2ギヤ492は、第1ギヤ491に噛み合っている。第2ギヤ492は、第1ギヤ491よりも大径に形成されている。
【0050】
第3ギヤ493は、第2ギヤ492と一体的に回転するように連結されている。第3ギヤ493は、第2ギヤ492よりも小径に形成されている。本実施形態では、第3ギヤ493は、第2ギヤ492に対して軸方向第2側L2に配置されている。
【0051】
第4ギヤ494は、第3ギヤ493に噛み合っている。第4ギヤ494は、第3ギヤ493よりも大径に形成されている。本実施形態では、第4ギヤ494は、第2軸X2上に配置されている。
【0052】
第2ギヤ492の歯数は、第1ギヤ491の歯数よりも多い。そして、第4ギヤ494の歯数は、第2ギヤ492と一体的に回転する第3ギヤ493の歯数よりも多い。そのため、第1駆動モータ47から第1ギヤ491に伝達された回転は、第1ギヤ491と第2ギヤ492との間で減速されて、第3ギヤ493に伝達される。そして、第3ギヤ493の回転は、第3ギヤ493と第4ギヤ494との間で減速される。
【0053】
本実施形態では、第1連結部材483は、第1ねじ軸部材481と第4ギヤ494とを連結している。具体的には、第4ギヤ494から軸方向第2側L2に延在するギヤ連結部495が、第1連結部材483に対して第1径方向RAの内側に配置された状態で、第1連結部材483と一体的に回転するように連結されている。図3に示す例では、第1連結部材483の内周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン歯が周方向に分散して形成されている。そして、ギヤ連結部495の外周部には、第1連結部材483の内周部に形成された複数のスプライン歯に係合する複数のスプライン歯が、軸方向Lに延在するように周方向に分散して形成されている。
【0054】
本実施形態では、第1直動変換機構48は、第1摩擦部材41及び第2摩擦部材42に対して第1径方向RAの内側であって、第1径方向RAに沿う第1径方向視で第1摩擦部材41及び第2摩擦部材42と重複する位置に配置されている。図3に示す例では、第1直動変換機構48の第1ねじ軸部材481、第1ナット部材482、第1連結部材483、及び第1被支持部材484が、第1摩擦部材41及び第2摩擦部材42に対して第1径方向RAの内側であって、第1径方向RAに沿う第1径方向視で第1摩擦部材41及び第2摩擦部材42と重複する位置に配置されている。
【0055】
第1摩擦係合装置4において、第1押圧部材46が軸方向第1側L1へ移動して第1摩擦部材41及び第2摩擦部材42を押圧した場合、非回転部材NRとしてのケース9の第1支持壁部91により、第1摩擦部材41及び第2摩擦部材42の軸方向第1側L1への移動が規制される。その結果、第1摩擦部材41と第2摩擦部材42とが互いに相対回転不能に連結され、第1摩擦係合装置4が係合状態となる。そのため、第1摩擦係合装置4が係合状態となった場合、第1摩擦部材41を支持する第1支持部材43は、非回転部材NRに固定された第2支持部材44に対して固定された状態となる。このとき、第1支持部材43に連結された第1固定ギヤ22が、非回転部材NRに対して固定された状態となる。そのため、第1固定ギヤ22に噛み合う第1被固定ギヤ21と一体的に回転するように連結された第1固定要素13が、非回転部材NRに対して固定された状態となる。
【0056】
一方、第1押圧部材46が軸方向第2側L2へ移動して第1押圧部材46による第1摩擦部材41及び第2摩擦部材42の押圧が解除されると、第1摩擦部材41と第2摩擦部材42とが、互いに相対回転可能な状態となって、第1摩擦係合装置4が解放状態となる。第1摩擦係合装置4が解放状態となった場合、第1摩擦部材41を支持する第1支持部材43は、非回転部材NRに固定された第2支持部材44に対して相対回転可能な状態となる。このとき、第1支持部材43に連結された第1固定ギヤ22が、非回転部材NRに対して相対回転可能な状態となる。そのため、第1固定ギヤ22に噛み合う第1被固定ギヤ21と一体的に回転するように連結された第1固定要素13が、非回転部材NRに対して固定されていない状態となる。
【0057】
図4に示すように、第2摩擦係合装置5は、第3摩擦部材51と、第4摩擦部材52と、第3支持部材53と、第4支持部材54と、第2押圧装置55と、を備えている。
【0058】
第3摩擦部材51と第4摩擦部材52とは、第3軸X3上に配置されている。つまり、第3摩擦部材51と第4摩擦部材52とは、第2固定ギヤ32と同軸上に配置されている。第3摩擦部材51と第4摩擦部材52とは、互いに軸方向Lに対向するように配置されている。本実施形態では、第3摩擦部材51及び第4摩擦部材52は、複数枚ずつ設けられており、これらが軸方向Lに沿って交互に配置されている。第3摩擦部材51及び第4摩擦部材52は、いずれか一方をフリクションプレートとし、他方をセパレートプレートとすることができる。
【0059】
第3支持部材53は、第3摩擦部材51の相対回転を規制した状態で、第3摩擦部材51を支持する部材である。第3支持部材53は、第2固定ギヤ32と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第3支持部材53は、軸方向Lに沿って延在する筒状に形成されている。そして、第3支持部材53は、第3摩擦部材51の外周部を支持している。
【0060】
第4支持部材54は、第4摩擦部材52の相対回転を規制した状態で、第4摩擦部材52を支持する部材である。第4支持部材54は、非回転部材NRに固定されている。本実施形態では、第4支持部材54は、軸方向Lに沿って延在する筒状に形成されている。そして、第4支持部材54は、第4摩擦部材52の内周部を支持している。また、本実施形態では、第4支持部材54は、非回転部材NRとしてのケース9が備える第2支持壁部92に固定されている。第2支持壁部92は、第2径方向RBに沿って延在するように形成されている。そして、第2支持壁部92は、第3摩擦部材51及び第4摩擦部材52を軸方向第1側L1から覆うように配置されている。図4に示す例では、第4支持部材54は、第2支持壁部92から軸方向第2側L2に突出するように、第2支持壁部92と一体的に形成されている。
【0061】
第2押圧装置55は、第3摩擦部材51及び第4摩擦部材52を軸方向Lに押圧する装置である。本実施形態では、第2押圧装置55は、第3摩擦部材51及び第4摩擦部材52に押圧力を作用させる第2押圧部材56と、第2駆動モータ57と、当該第2駆動モータ57の回転駆動力を軸方向Lの駆動力に変換して第2押圧部材56に伝達するねじ式の第2直動変換機構58と、を備えている。
【0062】
第2押圧部材56は、軸方向Lに沿う軸方向視で、第3摩擦部材51及び第4摩擦部材52と重複する位置に配置されている。本実施形態では、第2押圧部材56は、第2径方向RBに沿って延在する板状に形成されている。
【0063】
第2駆動モータ57は、第2押圧部材56を駆動するための回転駆動力を発生させるモータである。本実施形態では、第2駆動モータ57は、第3支持部材53に対して第2径方向RBの外側であって、第2径方向RBに沿う第2径方向視で第3支持部材53と重複する位置に配置されている。また、本実施形態では、第2駆動モータ57は、軸方向Lに沿う軸方向視で、遊星歯車機構1と重複する位置に配置されている。
【0064】
本実施形態では、第2直動変換機構58は、第2ねじ軸部材581と、第2ナット部材582と、第2連結部材583と、第2被支持部材584と、第2減速機構59と、を備えている。
【0065】
第2ねじ軸部材581は、軸方向Lに沿って延在するように形成されている。第2ナット部材582は、第2ねじ軸部材581を第2径方向RBの外側から覆う環状に形成されている。第2ねじ軸部材581と第2ナット部材582とは、互いに螺合するように構成されている。具体的には、第2ねじ軸部材581の外周部には、雄ねじが形成され、第2ナット部材582の内周部には、第2ねじ軸部材581の雄ねじに螺合する雌ねじが形成されている。そのため、第2ナット部材582は、第2ねじ軸部材581が回転することにより、当該回転方向と雄ねじ及び雌ねじの向きとに応じて軸方向Lに沿う直線運動を行う。
【0066】
第2ナット部材582は、非回転部材NRに対して相対回転不能であって軸方向Lに移動自在に支持されている。本実施形態では、第2ナット部材582は、非回転部材NRに固定された第4支持部材54に対して第2径方向RBの内側に配置されている。そして、第2ナット部材582は、当該第2ナット部材582と第4支持部材54との第2径方向RBの間に配置された環状の第2回り止め部材58aを介して、第4支持部材54に対して相対回転不能であって軸方向Lに相対移動自在に連結されている。図4に示す例では、第2ナット部材582の外周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン歯が周方向に分散して形成されている。そして、第2回り止め部材58aの内周部には、第2ナット部材582の外周部に形成された複数のスプライン歯に係合する複数のスプライン歯が、軸方向Lに延在するように周方向に分散して形成されている。また、第4支持部材54の内周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン歯が周方向に分散して形成されている。そして、第2回り止め部材58aの外周部には、第4支持部材54の内周部に形成された複数のスプライン歯に係合する複数のスプライン歯が、軸方向Lに延在するように周方向に分散して形成されている。
【0067】
また、第2ナット部材582は、第2押圧部材56と一体的に軸方向Lに移動するように連結されている。図4に示す例では、第2ナット部材582は、第2押圧部材56と一体的に形成されている。そのため、第2ねじ軸部材581の回転に伴い、第2ナット部材582を介して第2押圧部材56が軸方向Lに移動する。
【0068】
第2連結部材583は、第2ねじ軸部材581と第2減速機構59とを連結している。本実施形態では、第2連結部材583は、第2ねじ軸部材581から軸方向第1側L1に延在する筒状に形成されている。
【0069】
第2被支持部材584は、非回転部材NRに対して軸方向Lに支持されている。本実施形態では、第2被支持部材584は、第2連結部材583から第2径方向RBの外側に突出するように形成されている。そして、第2被支持部材584は、非回転部材NRに固定された第4支持部材54から第2径方向RBの内側に突出するように形成された支持部54aに、第2スラスト軸受B2を介して軸方向第2側L2から支持されている。
【0070】
第2減速機構59は、第2駆動モータ57の回転を減速するように構成されている。本実施形態では、第2減速機構59は、第5ギヤ591と、第6ギヤ592と、第7ギヤ593と、第8ギヤ594と、を備えている。
【0071】
第5ギヤ591は、第2駆動モータ57の出力軸と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第5ギヤ591は、第2駆動モータ57に対して軸方向第1側L1に配置されている。
【0072】
第6ギヤ592は、第5ギヤ591に噛み合っている。第6ギヤ592は、第5ギヤ591よりも大径に形成されている。
【0073】
第7ギヤ593は、第6ギヤ592と一体的に回転するように連結されている。第7ギヤ593は、第6ギヤ592よりも小径に形成されている。本実施形態では、第7ギヤ593は、第6ギヤ592に対して軸方向第2側L2に配置されている。
【0074】
第8ギヤ594は、第7ギヤ593に噛み合っている。第8ギヤ594は、第7ギヤ593よりも大径に形成されている。本実施形態では、第8ギヤ594は、第3軸X3上に配置されている。
【0075】
第6ギヤ592の歯数は、第5ギヤ591の歯数よりも多い。そして、第8ギヤ594の歯数は、第6ギヤ592と一体的に回転する第7ギヤ593の歯数よりも多い。そのため、第2駆動モータ57から第5ギヤ591に伝達された回転は、第5ギヤ591と第6ギヤ592との間で減速されて、第7ギヤ593に伝達される。そして、第7ギヤ593の回転は、第7ギヤ593と第8ギヤ594との間で減速される。
【0076】
本実施形態では、第2連結部材583は、第2ねじ軸部材581と第8ギヤ594とを連結している。具体的には、第8ギヤ594から軸方向第2側L2に延在するギヤ連結部595が、第2連結部材583に対して第2径方向RBの内側に配置された状態で、第2連結部材583と一体的に回転するように連結されている。図4に示す例では、第2連結部材583の内周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン歯が周方向に分散して形成されている。そして、ギヤ連結部595の外周部には、第2連結部材583の内周部に形成された複数のスプライン歯に係合する複数のスプライン歯が、軸方向Lに延在するように周方向に分散して形成されている。
【0077】
本実施形態では、第2直動変換機構58は、第3摩擦部材51及び第4摩擦部材52に対して第2径方向RBの内側であって、第2径方向RBに沿う第2径方向視で第3摩擦部材51及び第4摩擦部材52と重複する位置に配置されている。図4に示す例では、第2直動変換機構58の第2ねじ軸部材581、第2ナット部材582、第2連結部材583、及び第2被支持部材584が、第3摩擦部材51及び第4摩擦部材52に対して第2径方向RBの内側であって、第2径方向RBに沿う第2径方向視で第3摩擦部材51及び第4摩擦部材52と重複する位置に配置されている。
【0078】
第2摩擦係合装置5において、第2押圧部材56が軸方向第1側L1へ移動して第3摩擦部材51及び第4摩擦部材52を押圧した場合、非回転部材NRとしてのケース9の第2支持壁部92により、第3摩擦部材51及び第4摩擦部材52の軸方向第1側L1への移動が規制される。その結果、第3摩擦部材51と第4摩擦部材52とが互いに相対回転不能に連結され、第2摩擦係合装置5が係合状態となる。そのため、第2摩擦係合装置5が係合状態となった場合、第3摩擦部材51を支持する第3支持部材53は、非回転部材NRに固定された第4支持部材54に対して固定された状態となる。このとき、第3支持部材53に連結された第2固定ギヤ32が、非回転部材NRに対して固定された状態となる。そのため、第2固定ギヤ32に噛み合う第2被固定ギヤ31と一体的に回転するように連結された第2固定要素14が、非回転部材NRに対して固定された状態となる。
【0079】
一方、第2押圧部材56が軸方向第2側L2へ移動して第2押圧部材56による第3摩擦部材51及び第4摩擦部材52の押圧が解除されると、第3摩擦部材51と第4摩擦部材52とが、互いに相対回転可能な状態となって、第2摩擦係合装置5が解放状態となる。第2摩擦係合装置5が解放状態となった場合、第3摩擦部材51を支持する第3支持部材53は、非回転部材NRに固定された第4支持部材54に対して相対回転可能な状態となる。このとき、第3支持部材53に連結された第2固定ギヤ32が、非回転部材NRに対して相対回転可能な状態となる。そのため、第2固定ギヤ32に噛み合う第2被固定ギヤ31と一体的に回転するように連結された第2固定要素14が、非回転部材NRに対して固定されていない状態となる。
【0080】
図1及び図2に示すように、本実施形態では、第1摩擦係合装置4が係合状態となった場合、小径ピニオンギヤP12に噛み合う、比較的径が小さい第1リングギヤR11が、非回転部材NRに対して固定された状態となる。また、第2摩擦係合装置5が係合状態となった場合、大径ピニオンギヤP11に噛み合う、比較的径が大きい第2リングギヤR12が、非回転部材NRに対して固定された状態となる。
【0081】
そのため、本実施形態では、第1摩擦係合装置4を係合状態とし、かつ、第2摩擦係合装置5を解放状態とした場合、比較的変速比の大きい変速段(低速段)が形成される。また、第1摩擦係合装置4を解放状態とし、かつ、第2摩擦係合装置5を係合状態とした場合、比較的変速比の小さい変速段(高速段)が形成される。
【0082】
また、第1摩擦係合装置4及び第2摩擦係合装置5の双方を係合状態とした場合、出力要素12としてのキャリヤC1が非回転部材NRに対して固定される。その結果、出力要素12に駆動連結された車輪Wがロックされる。このように、第1摩擦係合装置4及び第2摩擦係合装置5は、パーキングブレーキとして機能する。
【0083】
また、第1摩擦係合装置4及び第2摩擦係合装置5の双方を解放状態とした場合、第1固定要素13の第1リングギヤR11と、第2固定要素14の第2リングギヤR12とが、非回転部材NRに対して固定されていない状態となる。その結果、駆動源Dの駆動力が車輪Wに伝達不能な状態(ニュートラル状態)となる。
【0084】
以上のように、変速機10は、
車輪Wの駆動源Dに駆動連結される入力要素11、車輪Wに駆動連結される出力要素12、第1固定要素13、及び第2固定要素14を備えた遊星歯車機構1と、
第1固定要素13を非回転部材NRに選択的に固定する第1固定装置2と、
第2固定要素14を非回転部材NRに選択的に固定する第2固定装置3と、を備えた変速機10であって、
第1固定装置2は、第1固定要素13と一体的に回転するように連結された第1被固定ギヤ21と、当該第1被固定ギヤ21に噛み合う第1固定ギヤ22と、当該第1固定ギヤ22を非回転部材NRに選択的に係合させる第1摩擦係合装置4と、を備え、
第2固定装置3は、第2固定要素14と一体的に回転するように連結された第2被固定ギヤ31と、当該第2被固定ギヤ31に噛み合う第2固定ギヤ32と、当該第2固定ギヤ32を非回転部材NRに選択的に係合させる第2摩擦係合装置5と、を備え、
第1摩擦係合装置4は、第1固定ギヤ22と同軸上に配置され、
第2摩擦係合装置5は、第2固定ギヤ32と同軸上に配置され、
第1固定ギヤ22の回転軸心と第2固定ギヤ32の回転軸心とが、互いに平行に配置され、
第1摩擦係合装置4と第2摩擦係合装置5とは、軸方向Lに沿う軸方向視で、互いに重複しないように配置されている。
【0085】
この構成によれば、第1固定装置2が、遊星歯車機構1の第1固定要素13と一体的に回転するように連結された第1被固定ギヤ21と、当該第1被固定ギヤ21に噛み合う第1固定ギヤ22と、当該第1固定ギヤ22を非回転部材NRに選択的に係合させる第1摩擦係合装置4と、を備えている。そして、第1摩擦係合装置4が、第1固定ギヤ22と同軸上に配置されている。また、第2固定装置3が、遊星歯車機構1の第2固定要素14と一体的に回転するように連結された第2被固定ギヤ31と、当該第2被固定ギヤ31に噛み合う第2固定ギヤ32と、当該第2固定ギヤ32を非回転部材NRに選択的に係合させる第2摩擦係合装置5と、を備えている。そして、第2摩擦係合装置5が、第2固定ギヤ32と同軸上に配置されている。これにより、第1摩擦係合装置4と第2摩擦係合装置5とを、互いに別軸に配置することが容易となっている。そのため、それらが同軸上に配置された構成と比べて、変速機10の軸方向Lの寸法を小さく抑え易い。
また、本構成によれば、第1固定装置2において第1被固定ギヤ21に対する第1固定ギヤ22の径を小さく設定することにより、遊星歯車機構1の第1固定要素13を非回転部材NRに固定するために必要なトルクを小さく抑えることができる。これにより、第1摩擦係合装置4の小径化を図り易い。また、第2固定装置3についても同様に、第2摩擦係合装置5の小径化を図り易い。
以上のように、本構成によれば、一対の摩擦係合装置4,5を備えた構成において、変速機10の小型化を図り易い。
【0086】
上述したように、本実施形態では、第1摩擦係合装置4は、第1固定ギヤ22と同軸上に配置された第1摩擦部材41と、第1固定ギヤ22と同軸上であって第1摩擦部材41と軸方向Lに対向するように配置された第2摩擦部材42と、第1固定ギヤ22と一体的に回転するように連結され、第1摩擦部材41の相対回転を規制した状態で第1摩擦部材41を支持する第1支持部材43と、非回転部材NRに固定され、第2摩擦部材42の相対回転を規制した状態で第2摩擦部材42を支持する第2支持部材44と、第1摩擦部材41及び第2摩擦部材42を軸方向Lに押圧する第1押圧装置45と、を備え、
第2摩擦係合装置5は、第2固定ギヤ32と同軸上に配置された第3摩擦部材51と、第2固定ギヤ32と同軸上であって第3摩擦部材51と軸方向Lに対向するように配置された第4摩擦部材52と、第2固定ギヤ32と一体的に回転するように連結され、第3摩擦部材51の相対回転を規制した状態で第3摩擦部材51を支持する第3支持部材53と、非回転部材NRに固定され、第4摩擦部材52の相対回転を規制した状態で第4摩擦部材52を支持する第4支持部材54と、第3摩擦部材51及び第4摩擦部材52を軸方向Lに押圧する第2押圧装置55と、を備え、
第1押圧装置45は、第1摩擦部材41及び第2摩擦部材42に押圧力を作用させる第1押圧部材46と、第1駆動モータ47と、当該第1駆動モータ47の回転駆動力を軸方向Lの駆動力に変換して第1押圧部材46に伝達するねじ式の第1直動変換機構48と、を備え、
第1直動変換機構48は、第1摩擦部材41及び第2摩擦部材42に対して第1径方向RAの内側であって、第1径方向RAに沿う第1径方向視で第1摩擦部材41及び第2摩擦部材42と重複する位置に配置され、
第2押圧装置55は、第3摩擦部材51及び第4摩擦部材52に押圧力を作用させる第2押圧部材56と、第2駆動モータ57と、当該第2駆動モータ57の回転駆動力を第2軸方向の駆動力に変換して第2押圧部材56に伝達するねじ式の第2直動変換機構58と、を備え、
第2直動変換機構58は、第3摩擦部材51及び第4摩擦部材52に対して第2径方向RBの内側であって、第2径方向RBに沿う第2径方向視で第3摩擦部材51及び第4摩擦部材52と重複する位置に配置されている。
【0087】
この構成によれば、第1摩擦係合装置4が、第1固定ギヤ22と同軸上に配置された、第1摩擦部材41、第2摩擦部材42、及び第1支持部材43を備えた構成となっている。そのため、第1摩擦部材41、第2摩擦部材42、及び第1支持部材43が、遊星歯車機構1の第1固定要素13と同軸上に配置された構成に比べて、第1摩擦係合装置4の径方向Rの寸法を小さく抑え易い。また、第2固定装置3についても同様に、第3摩擦部材51、第4摩擦部材52、及び第3支持部材53が、遊星歯車機構1の第2固定要素14と同軸上に配置された構成に比べて、第2摩擦係合装置5の径方向Rの寸法を小さく抑え易い。
また、本構成によれば、第1押圧装置45の第1直動変換機構48が、第1摩擦部材41及び第2摩擦部材42に対して第1径方向RAの内側の空間を利用して配置され、第2押圧装置55の第2直動変換機構58が、第3摩擦部材51及び第4摩擦部材52に対して第2径方向RBの内側の空間を利用して配置されている。したがって、第1押圧装置45を含む第1摩擦係合装置4、及び第2押圧装置55を含む第2摩擦係合装置5の小型化、延いては変速機10の小型化を図り易い。
また、本構成によれば、第1押圧部材46がねじ式の第1直動変換機構48により軸方向Lに動作し、第2押圧部材56がねじ式の第2直動変換機構58により軸方向Lに動作する。これにより、第1駆動モータ47及び第2駆動モータ57の駆動力がない状態であっても第1押圧部材46及び第2押圧部材56の位置を保持することができる。そのため、変速機10に電力が供給されていない状態でも、第1摩擦係合装置4及び第2摩擦係合装置5の双方を係合状態として、遊星歯車機構1の出力要素12が回転しないようにロックすることができる。したがって、別途パーキングブレーキを設ける必要をなくすことができる。
【0088】
また、上述したように、本実施形態では、第1固定要素13は、環状に形成された第1環状部A11と、当該第1環状部A11の内周面に設けられた内歯の第1リングギヤR11と、を備え、
第2固定要素14は、環状に形成された第2環状部A12と、当該第2環状部A12の内周面に設けられた内歯の第2リングギヤR12と、を備え、
第1被固定ギヤ21は、第1環状部A11の外周面に設けられた外歯のギヤであり、
第2被固定ギヤ31は、第2環状部A12の外周面に設けられた外歯のギヤである。
【0089】
この構成によれば、第1被固定ギヤ21及び第2被固定ギヤ31を、遊星歯車機構1に対して径方向Rの外側領域に配置し易い。したがって、第1被固定ギヤ21と第1固定ギヤ22とが噛み合うと共に、第2被固定ギヤ31と第2固定ギヤ32とが噛み合う構成において、変速機10の小型化を図り易い。
【0090】
上記の通り、本実施形態では、車両用駆動伝達装置100は、一対の変速機10を備えている。以下の説明では、一対の変速機10のうちの一方を「第1変速機10A」とし、他方を「第2変速機10B」とする。
【0091】
図1及び図2に示すように、本実施形態では、車両用駆動伝達装置100は、第1変速機10A及び第2変速機10Bに加えて、ロータ軸6と、差動歯車機構7と、第1出力部材81及び第2出力部材82と、を備えている。
【0092】
ロータ軸6は、回転電機MGのロータRTと一体的に回転する軸部材である。本実施形態では、ロータ軸6は、第1軸X1上に配置されている。また、ロータ軸6は、軸方向Lに沿って延在する筒状に形成されている。そして、ロータ軸6は、ロータRTを径方向Rの内側から支持するように配置されている。
【0093】
差動歯車機構7は、差動入力要素71と、第1差動出力要素72と、第2差動出力要素73と、を備えている。本実施形態では、差動歯車機構7は、ロータ軸6から差動入力要素71に伝達されたトルクを第1差動出力要素72と第2差動出力要素73とに分配する。また、本実施形態では、差動歯車機構7は、第1軸X1上に配置されている。
【0094】
差動入力要素71は、差動歯車機構7の入力要素である。本実施形態では、差動入力要素71は、ロータ軸6と一体的に回転するように連結されている。第1差動出力要素72及び第2差動出力要素73は、差動歯車機構7の出力要素である。
【0095】
また、本実施形態では、差動歯車機構7は、差動用サンギヤS2、差動用キャリヤC2、及び差動用リングギヤR2を備えた遊星歯車式の差動歯車機構である。ここでは、差動歯車機構7は、ダブルピニオン型の遊星歯車機構である。そのため、差動用キャリヤC2は、差動用サンギヤS2に噛み合う内側ピニオンギヤP21と、当該内側ピニオンギヤP21及び差動用リングギヤR2に噛み合う外側ピニオンギヤP22とを回転自在に支持している。
【0096】
本実施形態では、差動用リングギヤR2は、ロータ軸6と一体的に回転するように連結されている。つまり、本実施形態では、差動用リングギヤR2が差動入力要素71として機能する。図1に示す例では、ロータ軸6の軸方向第1側L1の端部が、ロータRTの軸方向第1側L1の端面に沿って径方向Rの外側に延在し、差動用リングギヤR2に連結されている。
【0097】
本実施形態では、差動用キャリヤC2が第1差動出力要素72として機能する。そして、差動用サンギヤS2が第2差動出力要素73として機能する。
【0098】
第1出力部材81は、上記の車輪Wである第1車輪W1(図2参照)に駆動連結されている。第2出力部材82は、上記の車輪Wであって第1車輪W1とは異なる第2車輪W2(図2参照)に駆動連結されている。本実施形態では、第1出力部材81は、第1ドライブシャフトDS1(図2参照)を介して、第1車輪W1と一体的に回転するように連結されている。また、第2出力部材82は、第2ドライブシャフトDS2(図2参照)を介して、第2車輪W2と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1出力部材81と第2出力部材82とは、第1軸X1上に配置されている。なお、第1車輪W1及び第2車輪W2は、左右一対の車輪(例えば、左右一対の前輪、又は左右一対の後輪)である。
【0099】
本実施形態では、第1軸X1上において、軸方向第1側L1から軸方向第2側L2に向けて、第1変速機10Aの遊星歯車機構1、差動歯車機構7、回転電機MG、及び第2変速機10Bの遊星歯車機構1が、記載の順に配置されている。つまり、本実施形態では、第1変速機10Aの遊星歯車機構1と第2変速機10Bの遊星歯車機構1とが、回転電機MG及び差動歯車機構7に対して軸方向Lの両側に分かれて配置されている。
【0100】
第1変速機10Aの入力要素11は、第1差動出力要素72と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1変速機10Aの入力要素11としてのサンギヤS1は、第1連結軸J1を介して、第1差動出力要素72としての差動用キャリヤC2と一体的に回転するように連結されている。第1連結軸J1は、第1変速機10AのサンギヤS1と差動用キャリヤC2とを連結するように、軸方向Lに沿って延在する軸部材である。
【0101】
第1変速機10Aの出力要素12は、第1出力部材81と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1変速機10Aの出力要素12としてのキャリヤC1は、第1出力部材81と一体的に形成されている。
【0102】
第2変速機10Bの入力要素11は、第2差動出力要素73と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第2変速機10Bの入力要素11としてのサンギヤS1は、第2連結軸J2を介して、第2差動出力要素73としての差動用サンギヤS2と一体的に回転するように連結されている。第2連結軸J2は、第2変速機10BのサンギヤS1と差動用サンギヤS2とを連結するように、軸方向Lに沿って延在する軸部材である。本実施形態では、第2連結軸J2は、ロータ軸6に対して径方向Rの内側を軸方向Lに貫通するように配置されている。
【0103】
第2変速機10Bの出力要素12は、第2出力部材82と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第2変速機10Bの出力要素12としてのキャリヤC1は、第2出力部材82と一体的に形成されている。
【0104】
第1変速機10Aの第1被固定ギヤ21と第2変速機10Bの第1被固定ギヤ21とは、第1軸X1上に配置されている。つまり、第1変速機10Aの第1被固定ギヤ21と第2変速機10Bの第1被固定ギヤ21とが、同軸上に配置されている。
【0105】
第1変速機10Aの第2被固定ギヤ31と第2変速機10Bの第2被固定ギヤ31とは、第1軸X1上に配置されている。つまり、第1変速機10Aの第2被固定ギヤ31と第2変速機10Bの第2被固定ギヤ31とが、同軸上に配置されている。
【0106】
第1変速機10Aの第1固定ギヤ22と第2変速機10Bの第1固定ギヤ22とは、第2軸X2上に配置されている。つまり、第1変速機10Aの第1固定ギヤ22と第2変速機10Bの第1固定ギヤ22とが、同軸上に配置されている。また、第1変速機10Aの第1固定ギヤ22と第2変速機10Bの第1固定ギヤ22とは、互いに一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1変速機10Aの第1固定ギヤ22と第2変速機10Bの第1固定ギヤ22とは、第1固定ギヤ連結部材221を介して、互いに一体的に回転するように連結されている。第1固定ギヤ連結部材221は、軸方向Lに沿って延在するように形成された軸部材である。
【0107】
第1変速機10Aの第2固定ギヤ32と第2変速機10Bの第2固定ギヤ32とは、第3軸X3上に配置されている。つまり、第1変速機10Aの第2固定ギヤ32と第2変速機10Bの第2固定ギヤ32とが、同軸上に配置されている。また、第1変速機10Aの第2固定ギヤ32と第2変速機10Bの第2固定ギヤ32とは、互いに一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1変速機10Aの第2固定ギヤ32と第2変速機10Bの第2固定ギヤ32とは、第2固定ギヤ連結部材321を介して、互いに一体的に回転するように連結されている。第2固定ギヤ連結部材321は、軸方向Lに沿って延在するように形成された軸部材である。
【0108】
本実施形態では、第1変速機10Aの第1固定ギヤ22と第2変速機10Bの第1固定ギヤ22とが、第1固定ギヤ連結部材221を介して、第1摩擦係合装置4の第1支持部材43と一体的に回転するように連結されている。そのため、第1摩擦係合装置4が係合状態となった場合、第1変速機10Aの第1固定ギヤ22と第2変速機10Bの第1固定ギヤ22とが、非回転部材NRに対して固定された状態となる。一方、第1摩擦係合装置4が解放状態となった場合、第1変速機10Aの第1固定ギヤ22と第2変速機10Bの第1固定ギヤ22とが、非回転部材NRに対して相対回転可能な状態となる。このように、本実施形態では、第1変速機10Aと第2変速機10Bとが、1つの第1摩擦係合装置4を共用している。つまり、本実施形態では、第1変速機10Aの第1摩擦係合装置4と第2変速機10Bの第1摩擦係合装置4とが共通である。
【0109】
本実施形態では、第1変速機10Aの第2固定ギヤ32と第2変速機10Bの第2固定ギヤ32とが、第2固定ギヤ連結部材321を介して、第2摩擦係合装置5の第3支持部材53と一体的に回転するように連結されている。そのため、第2摩擦係合装置5が係合状態となった場合、第1変速機10Aの第2固定ギヤ32と第2変速機10Bの第2固定ギヤ32とが、非回転部材NRに対して固定された状態となる。一方、第2摩擦係合装置5が解放状態となった場合、第1変速機10Aの第2固定ギヤ32と第2変速機10Bの第2固定ギヤ32とが、非回転部材NRに対して相対回転可能な状態となる。このように、本実施形態では、第1変速機10Aと第2変速機10Bとが、1つの第2摩擦係合装置5を共用している。つまり、本実施形態では、第1変速機10Aの第2摩擦係合装置5と第2変速機10Bの第2摩擦係合装置5とが共通である。
【0110】
以上のように、本実施形態では、駆動源Dは、ロータRTを備えた回転電機MGであり、
車両用駆動伝達装置100は、
ロータRTと一体的に回転するロータ軸6と、
車輪Wである第1車輪W1に駆動連結される第1出力部材81と、
車輪Wであって第1車輪W1とは異なる第2車輪W2に駆動連結される第2出力部材82と、
ロータ軸6と一体的に回転するように連結された差動入力要素71、第1差動出力要素72、及び第2差動出力要素73を備え、ロータ軸6から差動入力要素71に伝達されたトルクを第1差動出力要素72と第2差動出力要素73とに分配する差動歯車機構7と、
上記の変速機10である第1変速機10Aと、
上記の変速機10であって第1変速機10Aとは異なる第2変速機10Bと、を備えた車両用駆動伝達装置100であって、
第1変速機10Aの入力要素11は、第1差動出力要素72と一体的に回転するように連結され、
第1変速機10Aの出力要素12は、第1出力部材81と一体的に回転するように連結され、
第2変速機10Bの入力要素11は、第2差動出力要素73と一体的に回転するように連結され、
第2変速機10Bの出力要素12は、第2出力部材82と一体的に回転するように連結され、
第1変速機10Aの第1被固定ギヤ21と第2変速機10Bの第1被固定ギヤ21とが同軸上に配置され、
第1変速機10Aの第1固定ギヤ22と第2変速機10Bの第1固定ギヤ22とが、同軸上に配置されていると共に、互いに一体的に回転するように連結され、
第1変速機10Aの第2被固定ギヤ31と第2変速機10Bの第2被固定ギヤ31とが同軸上に配置され、
第1変速機10Aの第2固定ギヤ32と第2変速機10Bの第2固定ギヤ32とが、同軸上に配置されていると共に、互いに一体的に回転するように連結され、
第1変速機10Aの第1摩擦係合装置4と第2変速機10Bの第1摩擦係合装置4とが共通であり、
第1変速機10Aの第2摩擦係合装置5と第2変速機10Bの第2摩擦係合装置5とが共通である。
【0111】
この構成によれば、差動歯車機構7と第1出力部材81とを結ぶ動力伝達経路、及び差動歯車機構7と第2出力部材82とを結ぶ動力伝達経路のそれぞれに変速機10が設けられた構成において、一対の変速機10の第1固定装置2を構成する第1固定ギヤ22が、同軸上に配置されていると共に、互いに一体的に回転するように連結されている。また、一対の変速機10の第2固定装置3を構成する第2固定ギヤ32が、同軸上に配置されていると共に、互いに一体的に回転するように連結されている。これにより、一対の第1固定ギヤ22を1つの第1摩擦係合装置4により非回転部材NRに選択的に係合させることができると共に、一対の第2固定ギヤ32を1つの第2摩擦係合装置5により非回転部材NRに選択的に係合させることができる。
したがって、一対の変速機10を備えた構成において、一対の第1固定装置2及び一対の第2固定装置3の小型化、延いては車両用駆動伝達装置100の小型化を図り易い。
【0112】
本実施形態では、第1摩擦係合装置4と第2摩擦係合装置5とは、それらの軸方向Lの配置領域が互いに重なるように配置されている。そして、第1摩擦係合装置4と第2摩擦係合装置5とは、軸方向Lに沿う軸方向視で重複しないように配置されている。なお、第1摩擦係合装置4と第2摩擦係合装置5とが、互いに軸方向Lに離間して配置されていても良い。この場合、例えば、第1摩擦係合装置4と第2摩擦係合装置5とが、回転電機MG及び一対の変速機10の遊星歯車機構1に対して軸方向Lの両側に分かれて配置されていても良い。また、第1摩擦係合装置4と第2摩擦係合装置5とが、軸方向Lに沿う軸方向視で重複するように配置されていても良い。
【0113】
2.第2の実施形態
以下では、第2の実施形態に係る車両用駆動伝達装置100について、図5から図8を参照して説明する。本実施形態では、車両用駆動伝達装置100が備える変速機10が1つであり、駆動源Dと第1出力部材81及び第2出力部材82とを結ぶ動力伝達経路における変速機10の位置が、上記第1の実施形態のものとは異なっている。以下では、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
【0114】
図5から図7に示すように、本実施形態では、変速機10の入力要素11は、互いに一体的に回転する第1サンギヤS11及び第2サンギヤS12である。第1サンギヤS11は、小径ピニオンギヤP12に噛み合っている。第2サンギヤS12は、大径ピニオンギヤP11に噛み合っている。第2サンギヤS12は、第1サンギヤS11よりも小径に形成されている。本実施形態では、大径ピニオンギヤP11と小径ピニオンギヤP12とは、互いに相対回転自在に支持されている。また、本実施形態では、大径ピニオンギヤP11に噛み合う第2リングギヤR12と、小径ピニオンギヤP12に噛み合う第1リングギヤR11とが、互いに同径に形成されている。また、本実施形態では、第1リングギヤR11と一体的に回転する第1被固定ギヤ21は、第2リングギヤR12と一体的に回転する第2被固定ギヤ31よりも小径に形成されている。
【0115】
また、本実施形態では、変速機10の入力要素11は、ロータ軸6と一体的に回転するように連結されている。ここでは、入力要素11としての第1サンギヤS11及び第2サンギヤS12は、ロータ軸6と一体的に回転するように連結された入力軸15に形成されている。図示の例では、第2サンギヤS12は、第1サンギヤS11よりも軸方向第2側L2に配置されている。
【0116】
また、本実施形態では、変速機10の出力要素12は、外歯の駆動ギヤ16と一体的に回転するように連結されている。駆動ギヤ16は、第1軸X1上に配置されている。本実施形態では、駆動ギヤ16は、変速機10の遊星歯車機構1に対して軸方向第2側L2に配置されている。そして、駆動ギヤ16は、入力軸15に対して径方向Rの外側に配置されている。
【0117】
本実施形態では、差動歯車機構7は、第1軸X1上に配置されておらず、第1軸X1、第2軸X2、及び第3軸X3とは異なる第4軸X4上に配置されている。
【0118】
本実施形態では、差動歯車機構7の差動入力要素71は、駆動ギヤ16に噛み合う外歯の被駆動ギヤ74と一体的に回転するように連結されている。被駆動ギヤ74は、第4軸X4上に配置されている。本実施形態では、被駆動ギヤ74は、差動入力要素71としての差動用リングギヤR2に対して径方向Rの外側であって、径方向Rに沿う径方向視で差動用リングギヤR2と重複する位置に配置されている。
【0119】
また、本実施形態では、差動歯車機構7の第1差動出力要素72は、第1出力部材81と一体的に回転するように連結されている。そして、差動歯車機構7の第2差動出力要素73は、第2出力部材82と一体的に回転するように連結されている。図5に示す例では、第1出力部材81は、第1差動出力要素72としての差動用キャリヤC2から軸方向第2側L2に延在するように形成されている。そして、第2出力部材82は、第2差動出力要素73としての差動用サンギヤS2から軸方向第1側L1に延在するように形成されている。
【0120】
このように、本実施形態では、差動歯車機構7は、変速機10から差動入力要素71に伝達されたトルクを第1差動出力要素72と第2差動出力要素73とに分配する。
【0121】
図5から図7に示すように、本実施形態では、第1軸X1、第2軸X2、第3軸X3、及び第4軸X4が、互いに平行に配置されている。また、図8に示すように、本実施形態では、第2軸X2、第3軸X3、及び第4軸X4が、第1軸X1の周囲を囲むように配置されている。具体的には、軸方向Lに沿う軸方向視で、第2軸X2、第3軸X3、及び第4軸X4を頂点とする三角形(ここでは、鋭角三角形)の内部に、第1軸X1が配置されている。
【0122】
以上のように、本実施形態では、駆動源Dは、ロータRTを備えた回転電機MGであり、
車両用駆動伝達装置100は、
ロータRTと一体的に回転するロータ軸6と、
車輪Wである第1車輪W1に駆動連結される第1出力部材81と、
車輪Wであって第1車輪W1とは異なる第2車輪W2に駆動連結される第2出力部材82と、
上記の変速機10と、
差動入力要素71、第1差動出力要素72、及び第2差動出力要素73を備え、変速機10から差動入力要素71に伝達されたトルクを第1差動出力要素72と第2差動出力要素73とに分配する差動歯車機構7と、を備えた車両用駆動伝達装置100であって、
変速機10の入力要素11は、ロータ軸6と一体的に回転するように連結され、
変速機10の出力要素12は、外歯の駆動ギヤ16と一体的に回転するように連結され、
差動入力要素71は、駆動ギヤ16に噛み合う外歯の被駆動ギヤ74と一体的に回転するように連結され、
第1差動出力要素72は、第1出力部材81と一体的に回転するように連結され、
第2差動出力要素73は、第2出力部材82と一体的に回転するように連結され、
ロータ軸6及び変速機10の遊星歯車機構1が配置された軸を第1軸X1とし、変速機10の第1固定ギヤ22が配置された軸を第2軸X2とし、変速機10の第2固定ギヤ32が配置された軸を第3軸X3とし、差動歯車機構7が配置された軸を第4軸X4として、
第1軸X1、第2軸X2、第3軸X3、及び第4軸X4が、互いに平行に配置され、
第2軸X2、第3軸X3、及び第4軸X4が、第1軸X1の周囲を囲むように配置されている。
【0123】
この構成によれば、変速機10の遊星歯車機構1がロータ軸6と同軸上に配置され、差動歯車機構7がロータ軸6とは別軸上に配置された構成において、変速機10の第1固定ギヤ22が配置された第2軸X2と、変速機10の第2固定ギヤ32が配置された第3軸X3と、差動歯車機構7が配置された第4軸X4とが、ロータ軸6及び変速機10の遊星歯車機構1が配置された第1軸X1の周囲を囲むように配置されている。したがって、車両用駆動伝達装置100の第1軸X1に対する径方向Rの寸法を小さく抑え易い。
【0124】
3.第3の実施形態
以下では、第3の実施形態に係る車両用駆動伝達装置100について、図9を参照して説明する。本実施形態では、変速機10の構成が上記第2の実施形態のものとは異なっている。以下では、上記第2の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第2の実施形態と同様とする。
【0125】
図9に示すように、本実施形態では、変速機10の入力要素11は、サンギヤS1である。そして、変速機10の出力要素12は、第2リングギヤR12である。また、第1固定要素13は、第1リングギヤR11である。そして、第2固定要素14は、キャリヤC1である。
【0126】
本実施形態では、キャリヤC1は、互いに一体的に回転する大径ピニオンギヤP11と小径ピニオンギヤP12とを回転自在に支持している。大径ピニオンギヤP11は、サンギヤS1及び第2リングギヤR12の双方に噛み合っている。本実施形態では、大径ピニオンギヤP11は、サンギヤS1よりも小径に形成されている。小径ピニオンギヤP12は、第1リングギヤR11に噛み合っている。
【0127】
本実施形態では、第2被固定ギヤ31は、第2固定要素14としてのキャリヤC1と一体的に回転するように連結されている。そして、第2被固定ギヤ31は、遊星歯車機構1に対して軸方向第2側L2に配置されている。
【0128】
また、本実施形態では、駆動ギヤ16は、出力要素12としての第2リングギヤR12と一体的に回転するように連結されている。そして、駆動ギヤ16は、遊星歯車機構1に対して軸方向第1側L1に配置されている。
【0129】
4.その他の実施形態
(1)上記の実施形態では、第1押圧装置45及び第2押圧装置55のそれぞれが、駆動モータの回転駆動力を、ねじ式の直動変換機構により軸方向Lの駆動力に変換して、押圧部材に伝達する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1押圧装置45及び第2押圧装置55のそれぞれが、ソレノイド等の電磁アクチュエータにより押圧部材を駆動するように構成されていても良い。或いは、第1押圧装置45及び第2押圧装置55のそれぞれが、油圧により押圧部材を駆動するように構成されていても良い。
【0130】
(2)上記の実施形態では、第1摩擦係合装置4の第1支持部材43が第1摩擦部材41の外周部を支持し、第2支持部材44が第2摩擦部材42の内周部を支持する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1支持部材43が第1摩擦部材41の内周部を支持し、第2支持部材44が第2摩擦部材42の外周部を支持する構成としても良い。また、上記の実施形態では、第2摩擦係合装置5の第3支持部材53が第3摩擦部材51の外周部を支持し、第4支持部材54が第4摩擦部材52の内周部を支持する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第3支持部材53が第3摩擦部材51の内周部を支持し、第4支持部材54が第4摩擦部材52の外周部を支持する構成としても良い。
【0131】
(3)上記の実施形態では、第1被固定ギヤ21が、第1環状部A11の外周面に設けられた外歯のギヤである構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1被固定ギヤ21が、第1環状部A11とは異なる環状部の内周面に設けられた内歯のギヤである構成としても良い。この構成では、第1被固定ギヤ21が設けられた環状部と、第1リングギヤR11が設けられた第1環状部A11とを連結するための部材を設けると好適である。
【0132】
(4)上記の実施形態では、差動歯車機構7がダブルピニオン型の遊星歯車機構である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、差動歯車機構7がラビニヨ型の遊星歯車機構であっても良い。或いは、差動歯車機構7が遊星歯車式の差動歯車機構ではなく、傘歯車式の差動歯車機構であっても良い。
【0133】
(5)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0134】
〔本実施形態のまとめ〕
以下では、上記において説明した変速機(10)及び車両用駆動伝達装置(100)の概要について説明する。
【0135】
変速機(10)は、
車輪(W)の駆動源(D)に駆動連結される入力要素(11)、車輪(W)に駆動連結される出力要素(12)、第1固定要素(13)、及び第2固定要素(14)を備えた遊星歯車機構(1)と、
前記第1固定要素(13)を非回転部材(NR)に選択的に固定する第1固定装置(2)と、
前記第2固定要素(14)を前記非回転部材(NR)に選択的に固定する第2固定装置(3)と、を備えた変速機(10)であって、
前記第1固定装置(2)は、前記第1固定要素(13)と一体的に回転するように連結された第1被固定ギヤ(21)と、前記第1被固定ギヤ(21)に噛み合う第1固定ギヤ(22)と、前記第1固定ギヤ(22)を前記非回転部材(NR)に選択的に係合させる第1摩擦係合装置(4)と、を備え、
前記第2固定装置(3)は、前記第2固定要素(14)と一体的に回転するように連結された第2被固定ギヤ(31)と、前記第2被固定ギヤ(31)に噛み合う第2固定ギヤ(32)と、前記第2固定ギヤ(32)を前記非回転部材(NR)に選択的に係合させる第2摩擦係合装置(5)と、を備え、
前記第1摩擦係合装置(4)は、前記第1固定ギヤ(22)と同軸上に配置され、
前記第2摩擦係合装置(5)は、前記第2固定ギヤ(32)と同軸上に配置され、
前記第1固定ギヤ(22)の回転軸心と前記第2固定ギヤ(32)の回転軸心とが、互いに平行に配置され、
前記第1固定ギヤ(22)の回転軸心及び前記第2固定ギヤ(32)の回転軸心に沿う方向を軸方向(L)として、
前記第1摩擦係合装置(4)と前記第2摩擦係合装置(5)とは、前記軸方向(L)に沿う軸方向視で、互いに重複しないように配置されている。
【0136】
この構成によれば、第1固定装置(2)が、遊星歯車機構(1)の第1固定要素(13)と一体的に回転するように連結された第1被固定ギヤ(21)と、当該第1被固定ギヤ(21)に噛み合う第1固定ギヤ(22)と、当該第1固定ギヤ(22)を非回転部材(NR)に選択的に係合させる第1摩擦係合装置(4)と、を備えている。そして、第1摩擦係合装置(4)が、第1固定ギヤ(22)と同軸上に配置されている。また、第2固定装置(3)が、遊星歯車機構(1)の第2固定要素(14)と一体的に回転するように連結された第2被固定ギヤ(31)と、当該第2被固定ギヤ(31)に噛み合う第2固定ギヤ(32)と、当該第2固定ギヤ(32)を非回転部材(NR)に選択的に係合させる第2摩擦係合装置(5)と、を備えている。そして、第2摩擦係合装置(5)が、第2固定ギヤ(32)と同軸上に配置されている。これにより、第1摩擦係合装置(4)と第2摩擦係合装置(5)とを、互いに別軸に配置することが容易となっている。そのため、それらが同軸上に配置された構成と比べて、変速機(10)の軸方向(L)の寸法を小さく抑え易い。
また、本構成によれば、第1固定装置(2)において第1被固定ギヤ(21)に対する第1固定ギヤ(22)の径を小さく設定することにより、遊星歯車機構(1)の第1固定要素(13)を非回転部材(NR)に固定するために必要なトルクを小さく抑えることができる。これにより、第1摩擦係合装置(4)の小径化を図り易い。また、第2固定装置(3)についても同様に、第2摩擦係合装置(5)の小径化を図り易い。
以上のように、本構成によれば、一対の摩擦係合装置(4,5)を備えた構成において、変速機(10)の小型化を図り易い。
【0137】
ここで、前記第1摩擦係合装置(4)は、前記第1固定ギヤ(22)と同軸上に配置された第1摩擦部材(41)と、前記第1固定ギヤ(22)と同軸上であって前記第1摩擦部材(41)と前記軸方向(L)に対向するように配置された第2摩擦部材(42)と、前記第1固定ギヤ(22)と一体的に回転するように連結され、前記第1摩擦部材(41)の相対回転を規制した状態で前記第1摩擦部材(41)を支持する第1支持部材(43)と、前記非回転部材(NR)に固定され、前記第2摩擦部材(42)の相対回転を規制した状態で前記第2摩擦部材(42)を支持する第2支持部材(44)と、前記第1摩擦部材(41)及び前記第2摩擦部材(42)を前記軸方向(L)に押圧する第1押圧装置(45)と、を備え、
前記第2摩擦係合装置(5)は、前記第2固定ギヤ(32)と同軸上に配置された第3摩擦部材(51)と、前記第2固定ギヤ(32)と同軸上であって前記第3摩擦部材(51)と前記軸方向(L)に対向するように配置された第4摩擦部材(52)と、前記第2固定ギヤ(32)と一体的に回転するように連結され、前記第3摩擦部材(51)の相対回転を規制した状態で前記第3摩擦部材(51)を支持する第3支持部材(53)と、前記非回転部材(NR)に固定され、前記第4摩擦部材(52)の相対回転を規制した状態で前記第4摩擦部材(52)を支持する第4支持部材(54)と、前記第3摩擦部材(51)及び前記第4摩擦部材(52)を前記軸方向(L)に押圧する第2押圧装置(55)と、を備え、
前記第1固定ギヤ(22)の回転軸心に直交する方向を第1径方向(RA)とし、前記第2固定ギヤ(32)の回転軸心に直交する方向を第2径方向(RB)として、
前記第1押圧装置(45)は、前記第1摩擦部材(41)及び前記第2摩擦部材(42)に押圧力を作用させる第1押圧部材(46)と、第1駆動モータ(47)と、前記第1駆動モータ(47)の回転駆動力を前記軸方向(L)の駆動力に変換して前記第1押圧部材(46)に伝達するねじ式の第1直動変換機構(48)と、を備え、
前記第1直動変換機構(48)は、前記第1摩擦部材(41)及び前記第2摩擦部材(42)に対して前記第1径方向(RA)の内側であって、前記第1径方向(RA)に沿う第1径方向視で前記第1摩擦部材(41)及び前記第2摩擦部材(42)と重複する位置に配置され、
前記第2押圧装置(55)は、前記第3摩擦部材(51)及び前記第4摩擦部材(52)に押圧力を作用させる第2押圧部材(56)と、第2駆動モータ(57)と、前記第2駆動モータ(57)の回転駆動力を前記軸方向(L)の駆動力に変換して前記第2押圧部材(56)に伝達するねじ式の第2直動変換機構(58)と、を備え、
前記第2直動変換機構(58)は、前記第3摩擦部材(51)及び前記第4摩擦部材(52)に対して前記第2径方向(RB)の内側であって、前記第2径方向(RB)に沿う第2径方向視で前記第3摩擦部材(51)及び前記第4摩擦部材(52)と重複する位置に配置されていると好適である。
【0138】
この構成によれば、第1摩擦係合装置(4)が、第1固定ギヤ(22)と同軸上に配置された、第1摩擦部材(41)、第2摩擦部材(42)、及び第1支持部材(43)を備えた構成となっている。そのため、第1摩擦部材(41)、第2摩擦部材(42)、及び第1支持部材(43)が、遊星歯車機構(1)の第1固定要素(13)と同軸上に配置された構成に比べて、第1摩擦係合装置(4)の径方向(R)の寸法を小さく抑え易い。また、第2固定装置(3)についても同様に、第3摩擦部材(51)、第4摩擦部材(52)、及び第3支持部材(53)が、遊星歯車機構(1)の第2固定要素(14)と同軸上に配置された構成に比べて、第2摩擦係合装置(5)の径方向(R)の寸法を小さく抑え易い。
また、本構成によれば、第1押圧装置(45)の第1直動変換機構(48)が、第1摩擦部材(41)及び第2摩擦部材(42)に対して第1径方向(RA)の内側の空間を利用して配置され、第2押圧装置(55)の第2直動変換機構(58)が、第3摩擦部材(51)及び第4摩擦部材(52)に対して第2径方向(RB)の内側の空間を利用して配置されている。したがって、第1押圧装置(45)を含む第1摩擦係合装置(4)、及び第2押圧装置(55)を含む第2摩擦係合装置(5)の小型化、延いては変速機(10)の小型化を図り易い。
また、本構成によれば、第1押圧部材(46)がねじ式の第1直動変換機構(48)により軸方向(L)に動作し、第2押圧部材(56)がねじ式の第2直動変換機構(58)により軸方向(L)に動作する。これにより、第1駆動モータ(47)及び第2駆動モータ(57)の駆動力がない状態であっても第1押圧部材(46)及び第2押圧部材(56)の位置を保持することができる。そのため、変速機(10)に電力が供給されていない状態でも、第1摩擦係合装置(4)及び第2摩擦係合装置(5)の双方を係合状態として、遊星歯車機構(1)の出力要素(12)が回転しないようにロックすることができる。したがって、別途パーキングブレーキを設ける必要をなくすことができる。
【0139】
また、前記駆動源(D)は、ロータ(RT)を備えた回転電機(MG)であり、
車両用駆動伝達装置(100)は、
前記ロータ(RT)と一体的に回転するロータ軸(6)と、
前記車輪(W)である第1車輪(W1)に駆動連結される第1出力部材(81)と、
前記車輪(W)であって前記第1車輪(W1)とは異なる第2車輪(W2)に駆動連結される第2出力部材(82)と、
前記ロータ軸(6)と一体的に回転するように連結された差動入力要素(71)、第1差動出力要素(72)、及び第2差動出力要素(73)を備え、前記ロータ軸(6)から前記差動入力要素(71)に伝達されたトルクを前記第1差動出力要素(72)と前記第2差動出力要素(73)とに分配する差動歯車機構(7)と、
上記の変速機(10)である第1変速機(10A)と、
上記の変速機(10)であって前記第1変速機(10A)とは異なる第2変速機(10B)と、を備えた車両用駆動伝達装置(100)であって、
前記第1変速機(10A)の前記入力要素(11)は、前記第1差動出力要素(72)と一体的に回転するように連結され、
前記第1変速機(10A)の前記出力要素(12)は、前記第1出力部材(81)と一体的に回転するように連結され、
前記第2変速機(10B)の前記入力要素(11)は、前記第2差動出力要素(73)と一体的に回転するように連結され、
前記第2変速機(10B)の前記出力要素(12)は、前記第2出力部材(82)と一体的に回転するように連結され、
前記第1変速機(10A)の前記第1被固定ギヤ(21)と前記第2変速機(10B)の前記第1被固定ギヤ(21)とが同軸上に配置され、
前記第1変速機(10A)の前記第1固定ギヤ(22)と前記第2変速機(10B)の前記第1固定ギヤ(22)とが、同軸上に配置されていると共に、互いに一体的に回転するように連結され、
前記第1変速機(10A)の前記第2被固定ギヤ(31)と前記第2変速機(10B)の前記第2被固定ギヤ(31)とが同軸上に配置され、
前記第1変速機(10A)の前記第2固定ギヤ(32)と前記第2変速機(10B)の前記第2固定ギヤ(32)とが、同軸上に配置されていると共に、互いに一体的に回転するように連結され、
前記第1変速機(10A)の前記第1摩擦係合装置(4)と前記第2変速機(10B)の前記第1摩擦係合装置(4)とが共通であり、
前記第1変速機(10A)の前記第2摩擦係合装置(5)と前記第2変速機(10B)の前記第2摩擦係合装置(5)とが共通であると好適である。
【0140】
この構成によれば、差動歯車機構(7)と第1出力部材(81)とを結ぶ動力伝達経路、及び差動歯車機構(7)と第2出力部材(82)とを結ぶ動力伝達経路のそれぞれに変速機(10)が設けられた構成において、一対の変速機(10)の第1固定装置(2)を構成する第1固定ギヤ(22)が、同軸上に配置されていると共に、互いに一体的に回転するように連結されている。また、一対の変速機(10)の第2固定装置(3)を構成する第2固定ギヤ(32)が、同軸上に配置されていると共に、互いに一体的に回転するように連結されている。これにより、一対の第1固定ギヤ(22)を1つの第1摩擦係合装置(4)により非回転部材(NR)に選択的に係合させることができると共に、一対の第2固定ギヤ(32)を1つの第2摩擦係合装置(5)により非回転部材(NR)に選択的に係合させることができる。
したがって、一対の変速機(10)を備えた構成において、一対の第1固定装置(2)及び一対の第2固定装置(3)の小型化、延いては車両用駆動伝達装置(100)の小型化を図り易い。
【0141】
また、前記駆動源(D)は、ロータ(RT)を備えた回転電機(MG)であり、
車両用駆動伝達装置(100)は、
前記ロータ(RT)と一体的に回転するロータ軸(6)と、
前記車輪(W)である第1車輪(W1)に駆動連結される第1出力部材(81)と、
前記車輪(W)であって前記第1車輪(W1)とは異なる第2車輪(W2)に駆動連結される第2出力部材(82)と、
上記の変速機(10)と、
差動入力要素(71)、第1差動出力要素(72)、及び第2差動出力要素(73)を備え、前記変速機(10)から前記差動入力要素(71)に伝達されたトルクを前記第1差動出力要素(72)と前記第2差動出力要素(73)とに分配する差動歯車機構(7)と、を備えた車両用駆動伝達装置(100)であって、
前記変速機(10)の前記入力要素(11)は、前記ロータ軸(6)と一体的に回転するように連結され、
前記変速機(10)の前記出力要素(12)は、外歯の駆動ギヤ(16)と一体的に回転するように連結され、
前記差動入力要素(71)は、前記駆動ギヤ(16)に噛み合う外歯の被駆動ギヤ(74)と一体的に回転するように連結され、
前記第1差動出力要素(72)は、前記第1出力部材(81)と一体的に回転するように連結され、
前記第2差動出力要素(73)は、前記第2出力部材(82)と一体的に回転するように連結され、
前記ロータ軸(6)及び前記変速機(10)の前記遊星歯車機構(1)が配置された軸を第1軸(X1)とし、前記変速機(10)の前記第1固定ギヤ(22)が配置された軸を第2軸(X2)とし、前記変速機(10)の前記第2固定ギヤ(32)が配置された軸を第3軸(X3)とし、前記差動歯車機構(7)が配置された軸を第4軸(X4)として、
前記第1軸(X1)、前記第2軸(X2)、前記第3軸(X3)、及び前記第4軸(X4)が、互いに平行に配置され、
前記第2軸(X2)、前記第3軸(X3)、及び前記第4軸(X4)が、前記第1軸(X1)の周囲を囲むように配置されていると好適である。
【0142】
この構成によれば、変速機(10)の遊星歯車機構(1)がロータ軸(6)と同軸上に配置され、差動歯車機構(7)がロータ軸(6)とは別軸上に配置された構成において、変速機(10)の第1固定ギヤ(22)が配置された第2軸(X2)と、変速機(10)の第2固定ギヤ(32)が配置された第3軸(X3)と、差動歯車機構(7)が配置された第4軸(X4)とが、ロータ軸(6)及び変速機(10)の遊星歯車機構(1)が配置された第1軸(X1)の周囲を囲むように配置されている。したがって、車両用駆動伝達装置(100)の第1軸(X1)に対する径方向(R)の寸法を小さく抑え易い。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本開示に係る技術は、車輪の駆動源に駆動連結される入力要素、車輪に駆動連結される出力要素、第1固定要素、及び第2固定要素を備えた遊星歯車機構と、第1固定要素を非回転部材に選択的に固定する第1固定装置と、第2固定要素を非回転部材に選択的に固定する第2固定装置と、を備えた変速機、及びそれを備えた車両用駆動伝達装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0144】
100:車両用駆動伝達装置、10:変速機、10A:第1変速機、10B:第2変速機、1:遊星歯車機構、11:入力要素、12:出力要素、13:第1固定要素、14:第2固定要素、16:駆動ギヤ、2:第1固定装置、21:第1被固定ギヤ、22:第1固定ギヤ、3:第2固定装置、31:第2被固定ギヤ、32:第2固定ギヤ、4:第1摩擦係合装置、41:第1摩擦部材、42:第2摩擦部材、43:第1支持部材、44:第2支持部材、45:第1押圧装置、46:第1押圧部材、47:第1駆動モータ、48:第1直動変換機構、5:第2摩擦係合装置、51:第3摩擦部材、52:第4摩擦部材、53:第3支持部材、54:第4支持部材、55:第2押圧装置、56:第2押圧部材、57:第2駆動モータ、58:第2直動変換機構、6:ロータ軸、7:差動歯車機構、71:差動入力要素、72:第1差動出力要素、73:第2差動出力要素、74:被駆動ギヤ、81:第1出力部材、82:第2出力部材、D:駆動源、MG:回転電機、ST:ステータ、RT:ロータ、A11:第1環状部、A12:第2環状部、R11:第1リングギヤ、R12:第2リングギヤ、NR:非回転部材、W:車輪、W1:第1車輪、W2:第2車輪、L:軸方向、RA:第1径方向、RB:第2径方向、X1:第1軸、X2:第2軸、X3:第3軸、X4:第4軸
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図9