(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】衣類
(51)【国際特許分類】
A41D 27/00 20060101AFI20250708BHJP
A41H 43/04 20060101ALI20250708BHJP
【FI】
A41D27/00 C
A41H43/04 Z
(21)【出願番号】P 2025502363
(86)(22)【出願日】2025-01-09
(86)【国際出願番号】 JP2025000475
【審査請求日】2025-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2024009261
(32)【優先日】2024-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大塚 亜津希
(72)【発明者】
【氏名】木戸 達也
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-131711(JP,A)
【文献】特開2017-222969(JP,A)
【文献】国際公開第2020/245955(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D27/00
A41H43/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の人体部位に保持させる緊締部を有する衣類であって、
前記緊締部は、身頃生地と重ね合わせ生地とを少なくとも含む重ね合わせ部を有し、
前記重ね合わせ生地は、緊締力が働く方向と平行に3列以上の複列状に付設された接着剤により身頃生地に固着されており、
前記重ね合わせ生地に付設された前記接着剤の列のうち、緊締力が働く方向と平行な生地の各端部に最も近い接着剤の列は、前記生地端部から2.0mm以内に線状に付設され、
前記重ね合わせ生地に付設された前記接着剤の列のうち、中央部の接着剤の列は、ドット状に付設され、
前記重ね合わせ部を100℃で熱した際の熱間剥離強さが5.0N/2.54cm以上であり、
前記接着剤が線状に付設された部位の前記線状の線方向と平行な方向における伸長率が50%以上、伸長回復率が85%以上であり、接着剤が線状に付設された部位とドット状に付設された部位の前記線状の線方向と平行な方向の伸長回復率の差が10%以内である衣類。
【請求項2】
前記3列以上の複列状に付設された接着剤のうち、線状部分の接着剤が反応型樹脂である請求項1に記載の衣類。
【請求項3】
前記緊締部における30%伸長時の応力が3.5~6.0N/2.54cmである請求項1または2に記載の衣類。
【請求項4】
前記重ね合わせ部の身頃生地または重ね合わせ生地の少なくともいずれかの目付が80~140g/m
2であり、
前記重ね合わせ部の断面において、身頃生地と重ね合わせ生地のうち相対的に低目付の生地もしくは同目付の身頃生地である生地a側の樹脂浸透層Aの厚み(A
t)と、相対的に高目付の生地もしくは同目付の重ね合わせ生地である生地b側の樹脂浸透層Bの厚み(B
t)と、接着剤による樹脂層Cの厚み(C
t)の合計を100%としたとき、A
tが20%~30%、B
tが20%~40%、C
tが30%~60%であり、
前記樹脂浸透層Aの厚み(A
t)の生地a厚み(a
t)に対する比(A
t/a
t)が0.2~0.6である、
請求項1または2に記載の衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接着を利用した緊締部を有する衣類において、緊締部を構成する技術として、バンド状のゴムを接着する方法や生地を二枚合わせでドット状やテープ、フィルム状で接着する方法、また端部処理が不要な生地を使用して何も接合しない方法などが種々検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ドット状の接着などにより、接合部とそれに平行する部分の50%伸長時の応力差を小さくした衣類が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、熱可塑性樹脂接着フィルム即ちホットメルトテープなどにより、ストレッチ性を有する経編地帯状体を衣類に接着することで、カット作業が容易になる衣料品が提案されている。
【0005】
また、特許文献3には、伸縮性を有する生地に対して、ジグザグ状などの非連続状での接着剤を用いて貼り合わせることにより伸縮性の乏しい樹脂を使用しても生地に追従する関連技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開2021/177172号
【文献】特開2010-65337号公報
【文献】国際公開2014/109318号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、熱可塑性樹脂すなわちホットメルト樹脂で緊締部を接着した衣類では、ドット状やテープ、フィルム状で接着した部位が、使用していると剥がれやすい問題が生じることがわかった。この原因を検討したところ、特に洗濯耐久性に課題があること、特に高温洗濯耐久性に課題があることがわかった。
【0008】
また、ドット状の接着の場合、緊締部の応力が弱くなり、テープ、フィルム状の接着の場合は応力が強すぎることで、着心地が悪くなるという課題もあった。ジグザグ状の接着をした場合は、生地の伸度特性は極力変えないように調整することができるが、緊締部に対して弾性を付与することが難しく、応力を強くした場合は着衣しづらく、応力を弱くすると緊締性が悪くなる。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高温洗濯耐久性に優れ、着心地の良い衣類を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明に係る衣類は、下記の構成を有する。
【0011】
(1)着用者の人体部位に保持させる緊締部を有する衣類であって、
前記緊締部は、身頃生地と重ね合わせ生地とを少なくとも含む重ね合わせ部を有し、
前記重ね合わせ生地は、緊締力が働く方向と平行に3列以上の複列状に付設された接着剤により身頃生地に固着されており、
前記重ね合わせ生地に付設された前記接着剤の列のうち、緊締力が働く方向と平行な生地の各端部に最も近い接着剤の列は、前記生地端部から2.0mm以内に線状に付設され、
前記重ね合わせ生地に付設された前記接着剤の列のうち、中央部の接着剤の列は、ドット状に付設され、
前記重ね合わせ部を100℃で熱した際の熱間剥離強さが5.0N/2.54cm以上であり、
前記接着剤が線状に付設された部位の前記線状の線方向と平行な方向における伸長率が50%以上、伸長回復率が85%以上であり、接着剤が線状に付設された部位とドット状に付設された部位の前記線状の線方向と平行な方向の伸長回復率の差が10%以内である衣類。
(2) 前記3列以上の複列状に付設された接着剤のうち、線状部分の接着剤が反応型樹脂である(1)に記載の衣類。
(3)前記緊締部における30%伸長時の応力が3.5~6.0N/2.54cmである(1)または(2)に記載の衣類。
(4)前記重ね合わせ部の身頃生地または重ね合わせ生地の少なくともいずれかの目付が80~140g/m2であり、
前記重ね合わせ部の断面において、身頃生地と重ね合わせ生地のうち相対的に低目付の生地もしくは同目付の身頃生地である生地a側の樹脂浸透層Aの厚み(At)と、相対的に高目付の生地もしくは同目付の重ね合わせ生地である生地b側の樹脂浸透層Bの厚み(Bt)と、接着剤による樹脂層Cの厚み(Ct)の合計を100%としたとき、Atが20%~30%、Btが20%~40%、Ctが30%~60%であり、
前記樹脂浸透層Aの厚み(At)の生地a厚み(at)に対する比(At/at)が0.2~0.6である、
(1)~(3)のいずれかに記載の衣類。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、高温洗濯耐久性に優れ、着心地の良い衣類を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る衣類の外観を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す衣類の緊締部の重ね合わせ部および接着剤が付設された様子を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す衣類の緊締部の重ね合わせ部の断面図である。
【
図4】
図4は、実施の形態2に係る衣類の外観を示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態3に係る衣類の外観を示す図である。
【
図6】
図6は、比較例1の衣類の緊締部の重ね合わせ部および接着剤が付設された様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。なお、図面はあくまでも模式的なものであり、図面に限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
本発明の衣類は、着用者の人体部位に保持させる緊締部 を有する衣類であって、前記緊締部は、身頃生地と重ね合わせ生地とを少なくとも含む重ね合わせ部を有している。
【0016】
図1は、実施の形態1に係る衣類の構成を示す図である。同図に示す衣類1は、男性用下着の一例であり、腰保持させる緊締部2を有する。また、足を保持させる緊締部3があっても良い。
【0017】
本発明において、緊締部とは、緊締力の強い部分をいう。本発明において、緊締力とは、着用した際もしくは着用想定の伸長を行った際の伸長応力を意味する。
【0018】
衣類1の身頃生地4は、伸縮性を有する生地からなる。本発明で規定する衣類が得られる限り特に限定はない。たとえば、一般の衣料用素材として提供される編物素材であれば、限定されるものではないが、丸編や経編の素材が本発明の実施に特に適した伸縮性があり好ましい。また、織物素材であっても、衣料用に伸縮性を持つ素材は本発明に好適である。また、一般的な肌着や下着、カップ付きインナーの他、Tシャツやカットソーなどのアウターウェアの素材に用いられる生地も適用することができ、限定されるものではない。
【0019】
衣類1の重ね合わせ生地5は、伸縮性を有する生地からなる。本発明で規定する衣類が得られる限り特に限定はない。たとえば、一般の衣料用素材として提供される編物素材であれば、限定されるものではないが、丸編や経編の素材が本発明の実施に特に適した伸縮性があり好ましい。また、織物素材であっても、衣料用に伸縮性を持つ素材は本発明に好適である。また、一般的な肌着や下着、カップ付きインナーの他、Tシャツやカットソーなどのアウターウェアの素材に用いられる生地も適用することができ、限定されるものではない。
【0020】
本発明において、身頃生地4および重ね合わせ生地5に用いる伸縮性を有する生地に適用する糸の素材は特に限定されるものではなく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系合成繊維、ナイロンなどのポリアミド系合成繊維、ポリアクリルニトリル、ポリプロピレンなどの合成繊維、レーヨン、ポリノジック、キュプラなどの再生繊維、アセテート、トリアセテートなどの半合成繊維、綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維、ポリウレタン弾性繊維、ポリエーテル・エステル弾性繊維、ポリアミド弾性繊維、ポリオレフィン弾性繊維、もしくは、天然ゴム、合成ゴム、半合成ゴムからなる糸状のいわゆるゴム糸、合成繊維をゴムにカバーリングした特殊繊維などの弾性繊維などを使用することができ、これらを要求特性に合わせて1種または2種以上で使用すれば良い。また、前述した繊維に酸化チタン等の添加物を含ませたものを使用してもよいし、機能性付与のためにポリマー改質した繊維も使用してもよい。例えば、上記ポリエステル系合成繊維、ナイロンなどのポリアミド系合成繊維、弾性繊維などに、上記ポリアクリルニトリル、ポリプロピレンなどの合成繊維、再生繊維、半合成繊維、天然繊維などを併用することも異なる繊維同士の性質を複合的に発現できる点で好ましい。
【0021】
また、単繊維単位の断面形状も規定されるものではなく、丸形、三角形、八葉形、扁平形、Y形に代表される様々な異形断面糸も使用することができる。さらに、粘度が異なるポリマーからなる芯鞘型またはサイドバイサイド型の複合糸を使用することもできる。
【0022】
また、これらの繊維を原糸として仮撚加工を施した仮撚加工糸を用いても良い。
【0023】
さらには、用途に応じて最適な素材を適宜選定すれば良い。
【0024】
本発明において、前記重ね合わせ生地は、緊締力が働く方向と平行に3列以上の複列状に付設された接着剤により身頃生地に固着されている。
【0025】
図2は、
図1に示す衣類の緊締部の重ね合わせ部および接着剤が付設された様子を模式的に示す図である。より具体的には、実施の形態1に係る衣類1の緊締部2および接着剤10が付設された様子を模式的に示す図であり、衣類を構成する腰を保持させる緊締部2の形状と同じ形状で略帯状の重ね合わせ生地5を上から重ね合わせている。接着剤が付設された様子を示すため重ね合わせ生地5の一部を除いて示している。
図2では、接着剤10は5列の複列状で付設され、重ね合わせ生地5の端部に沿った各1列(以下、上下1列と表す)は線状に付設された接着剤10A、中央部にはドット状に付設された接着剤10Bが付設された列が3列設けられている。線状の列数、ドット状に付設された列の列数や線状、ドット状の配置は、本発明に規定する範囲を満たす限り特に制限はないが、後述する接着剤10の構成パターンのような態様であることが好ましい。
【0026】
本発明において重ね合わせ部の幅は緊締部の圧力を分散もしくは集中させないために10~100mmであることが好ましく、30mm~40mmの範囲がより好ましい。
図2においては、重ね合わせ部の幅は30mmで構成されている。なお、重ね合わせ部の幅とは、緊締力を及ぼす方向に対して直角方向の寸法、例えば
図1中緊締部2における着丈方向の寸法、言い換えれば腰の周囲に対して直角方向の寸法を指す。
【0027】
本発明において重ね合わせとは、衣類を構成する身頃生地を二つ折りにした状態でも良いし、他のパーツを緊締部上に重ね合わせることで構成しても良い。他のパーツを重ね合わせる場合は、身頃と同じ生地を使用しても良いし、他の生地を使用しても良い。本発明において、重ね合わせ部とは、上記重ね合わせた部分をいい、その端部とは、身頃生地を二つ折りにして重ね合わせ部を形成する場合は、一端が折り山を形成する端部、他の一端が折り返した端部が重ね合わせ部の端部に相当する。また、他のパーツである重ね合わせ生地を重ね合わせるときは、この重ね合わせ生地を重ね合わせた場合は、緊締力が働く方向(
図1中緊締部2における腰の周方向)に沿った二つの端部に相当する。なお、
図2では、身頃生地4の上側の端部と、重ね合わせ生地の端部はずれているが、一致していても構わない。緊締力を働かせたい位置に設ければよい。
【0028】
本発明において、前記重ね合わせ生地5に付設された前記接着剤の列のうち、緊締力が働く方向と平行な生地の各端部に最も近い接着剤の列は、前記生地端部から2.0mm以内に線状に付設され、前記重ね合わせ生地に付設された前記接着剤の列のうち、中央部の接着剤の列は、ドット状に付設されている。
【0029】
本発明において線状の列数は、上下1列以上であり、圧力を分散させるために2列以上であることがより好ましい。緊締力のバランスの点から上下の線状の列数は同じであることが好ましいが、求められる緊締力の態様に応じて適宜変更してもよい。
【0030】
線状に付設された接着剤(以下線状接着剤)の幅(緊締力を及ぼす方向に対して直角方向の寸法)は0.5~10.0mmであることが好ましく、接着力を維持しつつ、強すぎない緊締力にコントロールするために0.7~2.0mmであることが好ましい。例えば
図2においては上下1列の線状接着剤10Aは幅1.0mmで構成されている。
【0031】
図2に示すように、緊締部2の重ね合わせ生地5の端部に沿って接着剤10が、上下1列以上が線状、中央部列がドット状に配置されている。重ね合わせ生地5の端部と最上下列の接着剤10との距離d1が大きくなると、重ね合わせたとき生地の端部が自由端となって反り返る不具合が出やすい。したがって、生地の端部から接着剤の列までの距離d1は、2.0mm以内であり、好ましくは0.5~1.0mm以内である。
【0032】
前述のとおり緊締部2における接着剤10の構成パターンは、緊締部2の長手方向(緊締力が働く方向)に対して、最上下列は線状、中央部はドット状になっている。線状とは、破線、点線を除く、実線状に接着剤10Aが繋がったことを表している。線形状としては、本発明で規定する範囲を満たす限り、直線状、波線状、ジグザグ状などで構成されても良いが、接着剤10Aの弾性を効率的に付与するためには、緊締部2の長手方向(重ね合わせ部の生地端に沿う方向、であり、例えば
図1においては腰部の周方向)に沿う直線状が好ましい。また、上下列の列数としては、それぞれ1列以上であれば限定されるものではなく、例えば全12列中の上6列、下5列が線状となっており、下から6列目がドット状に付設されていても構わない。
【0033】
本発明において、中央部とは上下線状接着剤間において厳密に中央部である必要はなく、最上下列の線状接着剤または最上下列とそれらに隣接して存在する1列以上の線状接着剤で挟まれる領域を意味し、その領域内にドット状に付設された接着剤が存在すれば、中央部にドット状に付設する接着剤が存在するとみなしてよい。本発明で規定する範囲を満たすことができれば、各列数の制限はなく、求める緊締力に応じて適宜決めればよい。
【0034】
また、接着剤10の構成パターンとして、列と列の間隔d3は均等であることが好ましい。より具体的には、厳密に均等である必要はなく、緊締部2の中で接着剤が付設された列と列の間隔d3が最も大きい間隔に対して、最も小さい間隔との差が10%以内であれば均等とみなす。
【0035】
本発明において、中央部のドット状に付設された接着剤(以下ドット状接着剤)の列は、複数のドットを不規則に付設して帯状の列にしても良いし、ドットを点線状の1列に規則的に並べても良い。生産効率の観点から点線状の1列に規則的に並べる方が好ましい。
【0036】
中央部のドット状接着剤は直径0.5~10.0mmであることが好ましい。なかでも、生地の伸度を十分に活かす観点から、直径2.0mm以下であることが好ましいが、より好ましくは1.0mm以下である。なお、ここでいう直径は、ドット状の形状が非円形の場合は、円換算直径を意味する。例えば
図2においては、ドット状接着剤10Bは直径1.0mmで構成されている。
【0037】
ドット状接着剤1列の場合におけるドット間の間隔d2は、0.1~50.0mmであることが好ましく、長手方向、すなわち前記線状の線方向と平行な方向に均等であることが好ましい。より具体的には、厳密に均等である必要はなく、隣接されたドットとドットの間隔d2が最も大きい間隔に対して、最も小さい間隔との差が10%以内であれば均等とみなす。ドット間の間隔は、ドットの中央部から隣接するドットの中央部までの距離をいう。例えば
図2においては、同じ列内の隣接する二つのドット状接着剤10Bの間隔は2.0mmで構成されている。また、ドット状接着剤10Bの直径に対し、間隔d2が広すぎると着用した際の凹凸感がより際立ち着用感が低下しやすくなったり、外観が低下しやすくなったりするため、ドット状の接着剤10Bの直径Rの場合、1.5×R≦d2<4×Rが好ましい。
【0038】
ドット状に付設された接着剤10Bは、実施の形態1において丸の形状であるが、本発明で規定する範囲を満たす限りこれに限定されるものではない。接着剤の間隔を変化させられるよう、接着剤が分離した状態で繰り返し付設させられる形状であれば良く、破線状のものや幾何学的な形状のものでも良いし、それらを組み合わせた形状であっても良い。
【0039】
本発明において、重ね合わせ部を100℃で熱した際の熱間剥離強さが5.0N/2.54cm以上である。
【0040】
接着剤10を構成する樹脂は、従来の課題であった消費者の使用中に剥離する問題が、主に洗濯やタンブル乾燥などの繰り返し高温処理による加熱中の揉み、剥がし力が原因であることを見出したため、解決する手段として、重ね合わせ部を100℃で熱した際の熱間剥離強さが5.0N/2.54cm以上である。5.0N/2.54cm未満の場合、ヨーロッパなどで行われている90℃程度の高温洗濯やタンブル乾燥時に剥離を起こしてしまう問題が生じ、5.0N/2.54cm以上であれば、90℃程度の高温処理を行っても、剥離を抑えることができる。剥離強さを高くするためには樹脂の硬度を高くする方法が考えられるが、硬度を高くしすぎると伸長率に影響を及ぼしてしまう点から好ましくは6.0~40.0N/2.54cmである。
【0041】
熱間剥離強さの測定方法は、引張試験機および恒温槽、例えば島津製作所の卓上精密万能試験機AGS-5kNXと恒温槽TCE-N300Aを使用し、100℃で加熱しながら「JIS L1086:2020 接着芯地及び接着布試験方法」に記載の方法に準じて試験を実施する。100℃で加熱しながら測定する方法は恒温槽内の温度が100℃で安定した後、恒温槽内にある引張試験機に試験片をセットし、恒温槽を閉めた後、再度100℃で安定した後(試験片セットから約2分後)、測定を実施するものとする。なお、本発明において評価対象となる部分は、線状およびドット状の接着となっているため、剥離強さの換算幅は実接着幅に換算する。例えば、試験片の幅が2.54cmで0.1cm幅の線状接着が2列、直径0.1cmのドット状接着が8列であって、測定された熱間剥離強さが10Nであるとき、測定した試験片の熱間剥離強さとしては10N/2.54cmであるが、実際の接着幅は1.0cmのため、10N/1.0cm=25.4N/2.54cmと換算する。複数のドットを不規則に付設して帯状の列となっている場合の実際の接着幅の測定方法としては、試験片幅方向に占める接着剤の実寸幅を無作為に5か所で測定し、その平均を求め、それに基づいて換算する。
【0042】
上記90℃程度の高温洗濯の方法としては、「JIS L1930:2014 A形試験方法(ドラム式)」の9N(液温92℃)の条件を用い、洗濯5回を実施する。5回洗濯後は「JIS L 1096:2020 織物及び編物の生地試験方法 8.39.6乾燥方法」に記載の高温タンブル乾燥の条件にて乾燥を行い、剥離の有無の確認を実施するものとする。
【0043】
本発明においては接着剤が線状に付設された部位の前記線状の線方向と平行な方向における伸長率が50%以上、伸長回復率が85%以上であり、接着剤が線状に付設された部位とドット状に付設された部位の前記線状の線方向と平行な方向の伸長回復率の差が10%以内である。
【0044】
接着剤が線状に付設された部位の伸長率が50%以上、伸長回復率が85%以上であることにより、着脱性、着心地に優れる。なかでも接着剤が線状に付設された部位の伸長率は70%以上であることが着脱性に特に優れる点から好ましい。上限としては着用のしやすさを考慮して200%以内が好ましい。
【0045】
また接着剤が線状に付設された部位の伸長回復率は85%以上であるが、90%以上であることが好ましい。これにより繰り返し着用を行った際でも伸び垂れすることなく、優れた着心地を持続させることができる。上限としては100%であるが、現実的には99%以下である。
【0046】
接着剤が線状に付設された部位の伸長率および伸長回復率の測定方法は、「JIS L1096:2020 織物及び編物の生地試験方法」に記載の織編物に対する伸長弾性率及び残留ひずみ率試験B-1法に沿った試験の方法に準じて伸長率の測定を行い、1回伸長後、同速度で回復させたヒステリシス曲線を出し、最大応力14.7N時の伸長率および最小応力0N時の「伸長回復率=1-残留ひずみ量/最大応力14.7N時の伸長量」を測定する。試験片の幅は規定の幅ではなく、線状に付設された接着剤の部分の幅のみで試験を実施する。上下列の各列数が違う場合は、上列と下列をそれぞれ測定し、その平均値をそれぞれ伸長率、伸長回復率という。試験片の採取方法としては、接着剤が線状に付設された部位において、端部側の線状接着剤は重ね合わせ生地端部から前記距離d1の位置に付設されるので、端部側は重ね合わせ生地端部を試験片端部とするように、もう一方の試験片端部はドットに隣接する線状接着剤から前記距離d1と同じとなるように、ドット状に敷設した部位が近すぎてその距離がとれない場合は、隣接するドット状列との中間が試験片端部となるようにカットして試験片を採取する。
【0047】
緊締部2において、接着剤10が線状に付設されたる部位とドット状に付設された部位とで構成されているため、長手方向の伸長回復率の差が大きいと、着脱を繰り返すことで、緊締部2に波打ちなどの外観不良や着用感悪化に繋がるため、接着剤10が線状に付設された部位とドット状に付設された部位との伸長回復率差は10%以内であり、好ましくは5%以内である。好ましい下限としては0%であるが、現実的には2%以上である。
【0048】
接着剤10が線状に付設された部位とドット状に付設された部位との伸長回復率差の測定方法は、「JIS L1096:2020 織物及び編物の生地試験方法」に記載の織編物に対する伸長弾性率及び残留ひずみ率試験A法に沿った試験を行い、繰り返し回数は3回までとする。試験片の幅が規定と異なるため、接着剤10が線状に付設された部位とドット状に付設された部位との試験片幅を合わせて試験を行う。例えば、線状に付設された部位が10mmの場合は、ドット状に付設された部位も10mm幅の試験片とし、線状に付設された部位の伸長回復率B1(%)とドット状に付設された部位の伸長回復率B2(%)を測定し、B2-B1=B0の計算式にて線状に付設された部位とドット状に付設された部位との伸長回復率差B0(%)を算出する。
【0049】
本発明において、前記3列以上の複列状に付設された接着剤のうち、線状部分の接着剤である接着剤10Aを構成する接着剤には、本発明で規定する伸長率や伸長回復率を達成でき、かつ上記熱間剥離強さを達成できる、弾性と耐熱性を有する樹脂を使用する。接着剤が弾性を有することにより、固着後の生地に伸縮性を付与することができる。樹脂の種類としては、天然樹脂よりも合成樹脂の方が好ましく、その中でも反応型樹脂がより好ましい。この中でも、弾性を持つ反応型ポリウレタン樹脂(反応型PU)もしくは反応型シリコーンゴムを使用することが好ましい。このような反応型樹脂は市販品から選択することができ、例えば新発源自動化科技有限公司製ND5011を用いることができる。
【0050】
また、接着剤10Bを構成する樹脂は、上記熱間剥離強さを達成できる、耐熱性を有する樹脂を使用する。樹脂の種類としては、天然樹脂よりも合成樹脂の方が好ましく、その中でも反応型樹脂もしくは軟化点温度110℃以上の高い熱可塑性樹脂がより好ましく、反応型樹脂がさらに好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリフェニレンスルファイド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミド、シリコンなどの他、高分子化合物からなるものや、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、硫化ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ化ビニリデンコポリマーなどが挙げられ、接着剤10Aと同じ接着剤を使用しても構わない。接着剤10Aとして好ましく用いられる反応型樹脂は、接着剤10Bとしても好ましく用いられる接着剤である。なお、通常のホットメルト接着剤として用いられる熱可塑性ポリウレタン樹脂(熱可塑性PU)は耐熱性に劣るが、本発明の熱間剥離強さを満たす耐熱性を有するものであれば、接着剤10A、10Bに対して使用は可能である。
【0051】
緊締部2において、着用時のズレを少なくするために人体寸法に対して緊締部2の寸法が30%前後小さいことが好ましく、着用時相当の30%伸長時の緊締部2の応力が3.5~6.0N/2.54cmになるように、コントロールすることも好ましい。30%伸長時の伸長応力が6.0N/2.54cm以下とすることで、着用時に圧迫感を強く感じることによる不快感を与えてしまうことがなく、3.5N/2.54cm以上とすることで、着用時にズレてしまう問題が生じにくくなるため、上記範囲内に伸長応力を抑えることが好ましい。
【0052】
伸長応力の測定方法は、「JIS L1096:2020 織物及び編物の生地試験方法」に記載の織編物に対する伸長弾性率及び残留ひずみ率試験A法に沿った試験の方法に準じて伸長率の測定を行い、1回伸長/回復のみのヒステリシス曲線を出し、その時の減荷時の30%伸長時点での伸長応力を測定した。試験片の幅が規定と異なるため、緊締部の重ね合わせ部の幅に合わせて試験を実施した後、「測定した30%伸長時の応力÷試験片幅(cm)×2.54(cm)」の計算を行い、2.54cm幅での応力を算出した。
【0053】
本発明において、前記重ね合わせ部の身頃生地または重ね合わせ生地の少なくともいずれかの目付が80~140g/m2であることが好ましい。
【0054】
生地の目付の測定方法は、「JIS L 1096:2020 織物および編物の生地試験方法 8.3.2標準状態における単位面積当たりの質量」に準じた方法で測定するものとする。
【0055】
前記身頃生地または重ね合わせ生地の目付については、男性用肌着においては、特に夏場において蒸れ感が気になることがあり、蒸れ感を解消するために目付がより低いものを使用することが好ましく、少なくともそれらのいずれかにおいて80~140g/m2の目付を有する生地を使用することがより好ましく、さらに90~130g/m2の目付を有するものが特に好ましい。身頃生地、重ね合わせ生地のいずれもが上記目付を有することはさらに好ましい態様である。
【0056】
前記目付がより低い生地を身頃生地または重ね合わせ生地に用いる場合、緊締部における緊締力をより高めるために他方の生地の目付は、同等以上とすることが好ましく、80~180g/m2の目付を有する生地としても構わない。
【0057】
熱間剥離強さをよりいっそう高くするためには接着剤の浸透具合を以下のようにすることが好ましい。すなわち、重ね合わせ部の断面において、身頃生地と重ね合わせ生地のうち相対的に低目付の生地もしくは同目付の身頃生地である生地a側の樹脂浸透層Aの厚み(At)と、相対的に高目付の生地もしくは同目付の重ね合わせ生地である生地b側の樹脂浸透層Bの厚み(Bt)と、接着剤による樹脂層Cの厚み(Ct)の合計を100%としたとき、Atが20%~30%、Btが20%~40%、Ctが30%~60%であることが好ましい。なかでもAtが25%~30%、Btが30%~35%、Ctが35%~45%であることがより好ましい。
【0058】
また、樹脂浸透層Aの厚み(At)の生地a厚み(at)に対する比(At/at)が0.2~0.6であることが好ましく、より好ましくは樹脂浸透層Aの厚みと生地aの厚みの比(At/at)が0.4~0.6である。
【0059】
上記厚みを測定する方法として、重ね合わせ部の断面をカットし、デジタルマイクロスコープ(例えば、KEYENCE社製デジタルマイクロスコープVHX-Fシリーズ)を使用して100倍率にて撮像を実施し、各層の厚み(長さ)を測定し、算出を行う。厚みの測定方法としては、生地内部に樹脂が染み込んでいる部分の厚みの平均値(最も浸透している部分と最も浸透していない部分の平均)を樹脂浸透層厚みとし、樹脂層に関しては、層の中で最も厚い部分と薄い部分の平均値を樹脂層厚みとした。なお、試料を採取する際は、他の部材と接合されている部分は除く。
【0060】
図3は、
図1に示す衣類の緊締部の重ね合わせ部の断面図である。相対的に低目付の生地もしくは同目付の身頃生地aと相対的に高目付の生地もしくは同目付の重ね合わせ生地bが接着剤で接着されており、その界面では、生地a側の樹脂浸透層A、生地b側の樹脂浸透層Bの間に接着剤による樹脂層Cが観察できる。
【0061】
接着を行う際の処理方法としては、シリンダー式のプレス機を使用し、加熱・加圧する方法でも、マングルローラーを用いて、加熱・加圧する方法でも良く、限定されるものではない。圧力の制御方法としては、エアー制御によるものや、クリアランス制御によるもの、更にはマングルの材質を変更することで対象物にかかる圧力をコントロールする方法などが挙げられ、限定されるものではない。
【0062】
上述したように緊締部2が身頃生地4と重ね合わせ生地5とを少なくとも含む重ね合わせ部に、本発明で規定する熱間剥離強さと、伸長率、伸長回復率達成し得る接着剤を使用し、線状接着10Aとドット状接着10Bを組み合わせることで、例えば目付の低いメッシュ等の素材を使用した場合でも着心地良く、かつ見栄えも良い衣類を提供することが可能となる。
【0063】
(実施の形態2)
図4は、実施の形態2に係る衣類の構成を示す図である。同図に示す衣類11は、上着上衣の一例であり、手首を保持させる緊締部12および/または腰を保持させる緊締部13を有する。実施の形態2においても、実施の形態1と同様の考え方で本発明の効果を得ることができることはいうまでもない。
(実施の形態3)
図5は、実施の形態3に係る衣類の構成を示す図である。同図に示す衣類21は、下衣の一例であり、腰を保持させる緊締部22および/または足首を保持させる緊締部23を有する。実施の形態3においても、実施の形態1と同様の考え方で本発明の効果を得ることができることはいうまでもない。
【実施例】
【0064】
(実施例1)
実施例1は、
図1に示すような一般的な男性用下着のデザインにおいて、身頃生地は、伸縮性を有するウェール数55/2.54cm、コース数55/2.54cm、目付130g/m
2の経編メッシュ生地(ナイロン6 87質量%、ポリウレタン 13質量%)を使用し、重ね合わせ生地は、ウェール数75/2.54cm、コース数65/2.54cm、目付150g/m
2の経編デンビー生地(ナイロン6 71質量%、ポリウレタン 29質量%)を使用し、身頃生地、重ね合わせ生地のいずれも生地タテ方向を製品の幅方向として裁断し、重ね合わせ生地をウエスト形状に沿った3.5cm幅のウエストパーツとし、弾性を有する反応型ホットメルトポリウレタン樹脂(新発源自動化科技有限公司製ND5011)を使用し、上下各2列をウエストの周方向に沿った0.1cm幅の直線状とし、最も生地端に近い直線状の接着剤は各生地端から2.0mmの位置に配置されるよう塗布し、中央部分を直径0.1cmの20列のドット間隔0.2cm、各列間は均等配列として接着を行った。相対的に低目付である身頃生地の樹脂浸透層Aの厚み(A
t)と、相対的に高目付である重ね合わせ生地側の樹脂浸透層Bの厚み(B
t)と、接着剤による樹脂層Cの厚み(C
t)の比率がA
t:B
t:C
t=30%:30%:40%となるように接着プレスを行った。樹脂浸透層Aの厚み(A
t)と身頃生地厚み(a
t)の比(A
t/a
t)が0.4となる実施例1の衣類を得た。実施例1の評価を行った結果、緊締部であるウエストにおける30%伸長時の応力が4.0N/2.54cmとなっており、0.3cm幅の2列線状接着部分と0.3cm幅の2列ドット状接着部分の伸長回復率差は5.0%となり、100℃加熱時の熱間剥離強さは7.0N/2.54cmとなった。実施例1の構成および評価について表1に示す。
【0065】
(実施例2)
実施例2は、
図1に示すような一般的な男性用下着のデザインにおいて、身頃生地は、伸縮性を有するウェール数55/2.54cm、コース数55/2.54cm、目付130g/m
2の経編メッシュ生地(ナイロン6 87質量%、ポリウレタン 13質量%)を使用し、重ね合わせ生地は、身頃生地と同じ経編メッシュ生地を使用し、生地タテ方向を製品の幅方向として裁断し、ウエスト部位を3.5cm幅の折り返し構造とし、弾性を有する反応型ホットメルトポリウレタン樹脂(新発源自動化科技有限公司製ND5011)を使用し、上下各3列をウエストの周方向に沿った0.1cm幅の直線状とし、最も生地端に近い直線状の接着剤は各生地端から2.0mmの位置に配置されるよう塗布し、中央部分を直径0.1cmの18列のドット間隔0.2cm、各列間は均等配列として接着を行った。身頃生地の樹脂浸透層Aの厚み(A
t)と、重ね合わせ生地側の樹脂浸透層Bの厚み(B
t)と、接着剤による樹脂層Cの厚み(C
t)の比率がA
t:B
t:C
t=30%:40%:30%となるように接着プレスを行った。樹脂浸透層Aの厚み(A
t)と身頃生地厚み(a
t)の比(A
t/a
t)が0.4となる実施例2の衣類を得た。実施例1と同様に構成および評価について表1に示す。
【0066】
(実施例3)
実施例3は、
図4に示すような一般的な上着上衣のデザインにおいて、身頃生地は、伸縮性を有するウェール数65/2.54cm、コース数65/2.54cm、目付105g/m
2のヨコ編天竺生地(ナイロン6 88質量%、ポリウレタン 12質量%)を使用し、重ね合わせ生地は、ウェール数75/2.54cm、コース数65/2.54cm、目付150g/m
2の経編デンビー生地(ナイロン6 71質量%、ポリウレタン 29質量%)を使用し、身頃生地、重ね合わせ生地のいずれも生地タテ方向を製品の着丈方向として裁断し、重ね合わせ生地を袖口形状に沿った1.0cm幅の袖口パーツとし、弾性を有する反応型ホットメルトポリウレタン樹脂(新発源自動化科技有限公司製ND5011)を使用し、上下各1列を袖口の周方向に沿った0.1cm幅の直線状とし、直線状の接着剤は各生地端から2.0mmの位置に配置されるよう塗布し、中央部分を直径0.1cmの2列のドット間隔0.2cmで、各列間は均等配列として接着を行った。相対的に低目付である身頃生地の樹脂浸透層Aの厚み(A
t)と、相対的に高目付である重ね合わせ生地側の樹脂浸透層Bの厚み(B
t)と、接着剤による樹脂層Cの厚み(C
t)の比率がA
t:B
t:C
t=30%:40%:30%となるように接着プレスを行った。樹脂浸透層Aの厚み(A
t)と身頃生地厚み(a
t)の比(A
t/a
t)が0.5となる実施例3の衣類を得た。実施例1と同様に構成および評価について表1に示す。
【0067】
(比較例1)
比較例1は、
図1に示すような一般的な男性用下着のデザインにおいて、身頃生地は、伸縮性を有するウェール数55/2.54cm、コース数55/2.54cm、目付130g/m
2の経編メッシュ生地(ナイロン6 87質量%、ポリウレタン 13質量%)を使用し、重ね合わせ生地は、ウェール数75/2.54cm、コース数65/2.54cm、目付150g/m
2の経編デンビー生地(ナイロン6 71質量%、ポリウレタン 29質量%)を使用し、身頃生地、重ね合わせ生地のいずれも生地タテ方向を製品の幅方向として裁断し、重ね合わせ生地をウエスト形状に沿った3.5cm幅のウエストパーツとし、弾性を有する反応型ホットメルトポリウレタン樹脂(新発源自動化科技有限公司製ND5011)を使用し、
図6に示すようなドット配列で、全22列をウエストの周方向に沿った形で直径0.1cmのドット間隔0.2cmで、最生地端側の接着剤は生地端から4mmの位置に塗布し、各列間は均等配列として接着を行った。相対的に低目付である身頃生地の樹脂浸透層Aの厚み(A
t)と、相対的に高目付である重ね合わせ生地側の樹脂浸透層Bの厚み(B
t)と、接着剤による樹脂層C(C
t)の厚みの比率がA
t:B
t:C
t=30%:30%:40%となるように接着プレスを行った。樹脂浸透層Aの厚み(A
t)と身頃生地厚み(a
t)の比(A
t/a
t)が0.4となる比較例1の衣類を得た。比較例1の評価を行った結果、緊締部であるウエストにおける30%伸長時の応力が3.0N/2.54cmとなっており、100℃加熱時の熱間剥離強さは7.0N/2.54cmとなった。比較例1の構成および評価について表1に示す。
【0068】
(比較例2)
比較例2は、
図1に示すような一般的な男性用下着のデザインにおいて、身頃生地は、伸縮性を有するウェール数55/2.54cm、コース数55/2.54cm、目付130g/m
2の経編メッシュ生地(ナイロン6 87質量%、ポリウレタン 13質量%)を使用し、重ね合わせ生地は、ウェール数75/2.54cm、コース数65/2.54cm、目付150g/m
2の経編デンビー生地(ナイロン6 71質量%、ポリウレタン 29質量%)を使用し、身頃生地、重ね合わせ生地のいずれも生地タテ方向を製品の幅方向として裁断し、重ね合わせ生地をウエスト形状に沿った3.5cm幅のウエストパーツとし、弾性を有する反応型ホットメルトポリウレタン樹脂(新発源自動化科技有限公司製ND5011)を使用し、
図6に示すようなドット配列で、全22列をウエストの周方向に沿った形で0.1cm幅の直線状で最生地端側の接着剤は生地端から2.0mmの位置に塗布し、各列間は均等配列として接着を行った。相対的に低目付である身頃生地の樹脂浸透層Aの厚み(A
t)と、相対的に高目付である重ね合わせ生地側の樹脂浸透層Bの厚み(B
t)と、接着剤による樹脂層Cの厚み(C
t)の比率がA
t:B
t:C
t=30%:30%:40%となるように接着プレスを行った。樹脂浸透層Aの厚み(A
t)と身頃生地厚み(a
t)の比(A
t/a
t)が0.4となる比較例2の衣類を得た。比較例2の評価を行った結果、緊締部であるウエストにおける30%伸長時の応力が7.0N/2.54cmとなっており、100℃加熱時の熱間剥離強さは7.0N/2.54cmとなった。比較例2の構成および評価について表1に示す。
【0069】
(比較例3)
比較例3は、
図1に示すような一般的な男性用下着のデザインにおいて、身頃生地は、伸縮性を有するウェール数55/2.54cm、コース数55/2.54cm、目付130g/m
2の経編メッシュ生地(ナイロン6 87質量%、ポリウレタン 13質量%)を使用し、重ね合わせ生地は、ウェール数75/2.54cm、コース数65/2.54cm、目付150g/m
2の経編デンビー生地(ナイロン6 71質量%、ポリウレタン 29質量%)を使用し、身頃生地、重ね合わせ生地のいずれも生地タテ方向を製品の幅方向として裁断し、重ね合わせ生地をウエスト形状に沿った3.5cm幅のウエストパーツとし、熱可塑性ホットメルトポリウレタン樹脂(H.B.Fuller社製EH2000)を使用し、上下2列をウエストの周方向に沿った0.1cm幅の直線状とし、最も生地端に近い直線状の接着剤は各生地端から2.0mmの位置に塗布し、中央部分を直径0.1cmの20列のドット間隔0.2cm、各列間は均等配列として接着を行った。相対的に低目付である身頃生地の樹脂浸透層Aの厚み(A
t)と、相対的に高目付である重ね合わせ生地側の樹脂浸透層Bの厚み(B
t)と、接着剤による樹脂層Cの厚み(C
t)の比率がA
t:B
t:C
t=30%:30%:40%となるように接着プレスを行った。樹脂浸透層Aの厚み(A
t)と身頃生地厚み(a
t)の比(A
t/a
t)が0.4となる比較例3の衣類を得た。比較例3の評価を行った結果、緊締部であるウエストにおける30%伸長時の応力が5.5N/2.54cmとなっており、0.3cm幅の2列線状接着部分と0.3cm幅の2列ドット状接着部分の伸長回復率差は11.0%となり、100℃加熱時の熱間剥離強さは4.0N/2.54cmとなった。比較例3の構成および評価について表1に示す。
【0070】
(比較例4)
比較例4は、
図1に示すような一般的な男性用下着のデザインにおいて、身頃生地は、伸縮性を有するウェール数55/2.54cm、コース数55/2.54cm、目付130g/m
2の経編メッシュ生地(ナイロン6 87質量%、ポリウレタン 13質量%)を使用し、重ね合わせ生地は、ウェール数75/2.54cm、コース数65/2.54cm、目付150g/m
2の経編デンビー生地(ナイロン6 71質量%、ポリウレタン 29質量%)を使用し、身頃生地、重ね合わせ生地のいずれも生地タテ方向を製品の幅方向として裁断し、重ね合わせ生地をウエスト形状に沿った3.5cm幅のウエストパーツとし、弾性を有する反応型ホットメルトポリウレタン樹脂(新発源自動化科技有限公司製ND5011)を使用し、上下各2列をウエストの周方向に沿った0.1cm幅の直線状とし、最も生地端に近い直線状の接着剤は各生地端から2.0mmの位置に塗布し、中央部分を直径0.1cmの20列のドット間隔0.2cmで、各列間は均等配列として接着を行った。相対的に低目付である身頃生地の樹脂浸透層Aの厚み(A
t)と、相対的に高目付である重ね合わせ生地側の樹脂浸透層Bの厚み(B
t)と、接着剤による樹脂層Cの厚み(C
t)の比率がA
t:B
t:C
t=40%:10%:50%となるように接着プレスを行った。樹脂浸透層Aの厚み(A
t)と身頃生地厚み(a
t)の比(A
t/a
t)が0.7となる比較例4の衣類を得た。比較例4の評価を行った結果、緊締部であるウエストにおける30%伸長時の応力が4.0N/2.54cmとなっており、0.3cm幅の2列線状接着部分と0.3cm幅の2列ドット状接着部分の伸長回復率差は4.0%となり、100℃加熱時の熱間剥離強さは3.5N/2.54cmとなった。比較例4の構成および評価について表1に示す。
【0071】
【符号の説明】
【0072】
1 衣類
2 緊締部
3 緊締部
4 身頃生地
5 重ね合わせ生地
10 接着剤
10A 接着剤
10B 接着剤
d1 距離
d2 間隔
d3 間隔
R 直径
A 生地a側の樹脂浸透層
B 生地b側の樹脂浸透層
C 接着剤による樹脂層
a 相対的に低目付の生地もしくは同目付の身頃生地
b 相対的に高目付の生地もしくは同目付の重ね合わせ生地
11 衣類
12 緊締部
13 緊締部
21 衣類
22 緊締部
23 緊締部
【要約】
高温洗濯耐久性に優れ、着心地の良い衣類を提供するために、本発明の衣類は、着用者の人体部位に保持させる緊締部を有する衣類であって、
緊締部は、身頃生地と重ね合わせ生地とを少なくとも含む重ね合わせ部を有し、
重ね合わせ生地は、緊締力が働く方向と平行に3列以上の複列状に付設された接着剤で身頃生地に固着され、
重ね合わせ生地に付設された接着剤の列のうち、緊締力が働く方向と平行な生地の各端部に最も近い接着剤の列は、生地端部から2.0mm以内に線状に付設され、
中央部の接着剤の列は、ドット状に付設され、
前記重ね合わせ部を100℃で熱した際の熱間剥離強さが5.0N/2.54cm以上、
接着剤が線状に付設された部位の線状の線方向と平行方向における伸長率が50%以上、伸長回復率が85%以上、接着剤が線状に付設された部位とドット状に付設された部位の線状の線方向と平行方向の伸長回復率差が10%以内である。