IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社M3の特許一覧

特許7708404塩水を電気分解して水素ガスを生成させる水素生成装置
<>
  • 特許-塩水を電気分解して水素ガスを生成させる水素生成装置 図1
  • 特許-塩水を電気分解して水素ガスを生成させる水素生成装置 図2
  • 特許-塩水を電気分解して水素ガスを生成させる水素生成装置 図3
  • 特許-塩水を電気分解して水素ガスを生成させる水素生成装置 図4
  • 特許-塩水を電気分解して水素ガスを生成させる水素生成装置 図5
  • 特許-塩水を電気分解して水素ガスを生成させる水素生成装置 図6
  • 特許-塩水を電気分解して水素ガスを生成させる水素生成装置 図7
  • 特許-塩水を電気分解して水素ガスを生成させる水素生成装置 図8
  • 特許-塩水を電気分解して水素ガスを生成させる水素生成装置 図9
  • 特許-塩水を電気分解して水素ガスを生成させる水素生成装置 図10
  • 特許-塩水を電気分解して水素ガスを生成させる水素生成装置 図11
  • 特許-塩水を電気分解して水素ガスを生成させる水素生成装置 図12
  • 特許-塩水を電気分解して水素ガスを生成させる水素生成装置 図13
  • 特許-塩水を電気分解して水素ガスを生成させる水素生成装置 図14
  • 特許-塩水を電気分解して水素ガスを生成させる水素生成装置 図15
  • 特許-塩水を電気分解して水素ガスを生成させる水素生成装置 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】塩水を電気分解して水素ガスを生成させる水素生成装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/34 20060101AFI20250708BHJP
   C01B 3/08 20060101ALI20250708BHJP
   C01B 3/02 20060101ALI20250708BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20250708BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20250708BHJP
   C25B 1/46 20060101ALI20250708BHJP
   C25B 15/00 20060101ALI20250708BHJP
   C25B 9/60 20210101ALI20250708BHJP
   C25B 15/04 20060101ALI20250708BHJP
   C25B 9/19 20210101ALN20250708BHJP
【FI】
C25B1/34
C01B3/08 Z
C01B3/02 H
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B1/46
C25B9/00 D
C25B9/00 E
C25B15/00 302Z
C25B9/60
C25B15/04
C25B9/19
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024225722
(22)【出願日】2024-12-20
【審査請求日】2024-12-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】322014392
【氏名又は名称】株式会社M3
(72)【発明者】
【氏名】神谷 浩
(72)【発明者】
【氏名】町田 哲男
(72)【発明者】
【氏名】神谷 江美
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-047835(JP,A)
【文献】特開2014-015648(JP,A)
【文献】特表2015-529740(JP,A)
【文献】特表2017-524815(JP,A)
【文献】特表2020-512481(JP,A)
【文献】特開2020-117815(JP,A)
【文献】特開2021-070850(JP,A)
【文献】特許第7433694(JP,B1)
【文献】国際公開第2011/088515(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1073451(KR,B1)
【文献】中国実用新案第214881848(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00 - 9/77
C25B 13/00 - 15/08
C25B 11/02
C25B 11/04
C01B 3/08
C01B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩水を電気分解して水素ガスを生成させる水素生成装置であって、
上記塩水を貯めるための容器と、
前記容器に貯められた前記塩水中に挿入して、電気を通電して電気分解するためのプラス電極、及びマイナス電極と、
前記塩水中に、少なくとも前記プラス電極、又は前記マイナス電極のいずれか一方の電極と、所定距離だけ隔離して配置された金属部材と、を備え、
前記金属部材は、前記電気分解により生じた塩酸と化学反応して、水素ガスを生成するように構成されていることを特徴とする水素生成装置。
【請求項2】
前記金属部材は、前記塩酸との前記化学反応により金属塩化物を生成し、
前記化学反応により消失した金属部材を補うために、前記金属部材を前記容器の外部から連続的に塩水中に供給するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の水素生成装置。
【請求項3】
前記容器中の前記金属部材の表面に光を照射して、前記金属部材の表面から電子を放出させるための光照射装置を、更に備え、
前記プラス電極、及び前記マイナス電極に電気を通電して電気分解するときに、前記光照射装置により、前記金属部材の表面に光を照射させるように構成されており、
前記光照射装置から放出される光の波長が、前記金属部材の表面から電子を放出させるために必要な仕事関数以上のエネルギーに相当する波長であることを特徴とする請求項1に記載の水素生成装置。
【請求項4】
前記金属部材が板状又は棒状の形状を有し、
前記金属部材の表面が前記容器の内壁面に密着すると共に、前記表面と対向する裏面が、前記塩水中に露出して配置されており、
前記金属部材の前記表面に光を照射させることを特徴とする請求項3に記載の水素生成装置。
【請求項5】
前記金属部材は、前記容器の内壁面に密着しながら移動可能に取り付けられており、
前記化学反応により消失した金属部材を補うために、前記金属部材を前記容器の外部から連続的に塩水中に供給するように構成したことを特徴とする請求項4に記載の水素生成装置。
【請求項6】
塩水を電気分解して水素ガスを生成させる水素生成方法であって、
上記塩水を貯めるための容器と、
前記容器に貯められた前記塩水中に挿入して、電気を通電して電気分解するためのプラス電極、及びマイナス電極と、
前記塩水中に、少なくとも前記プラス電極、又は前記マイナス電極のいずれか一方の電極と、所定距離だけ隔離して配置された金属部材と、を備え、
前記金属部材は、前記電気分解により生じた塩酸と化学反応して、水素ガスを生成するように構成されていることを特徴とする水素生成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩水を電気分解して水素ガスを生成させる水素生成に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、脱炭素が叫ばれる時代になってきており、従来とは異なるエネルギー方式が考案されてきている。その中の一つに水素エネルギーがあり、水素ステーションなども社会に広まりつつある。
【0003】
水素生成の方法の一例として、化石燃料改質があり、この方式は、石油精製工場などで導入されているが、生成プロセスでCO2を排出するという課題があり、また、他の水素生成の方法として、副生水素があるが、副生する水素の量が限られているという課題がある。
【0004】
更にまた、他の水素生成の方法として、水の電気分解による水素生成があるが、水素生成のために多大な電力を使うため、水素の生成コストが高くなってしまい、加えて、昨今では、水溶液の電気分解のエリアに超電導磁石による磁界をかけて水素の生成量を増やすというソリューションも提供され始めているが、超電導磁石を利用する場合には、更に、電力コストや設備コストが高くなるという課題がある。
【0005】
そして、海水などの塩水を電気分解する際には、水素生成に伴い発生する塩酸が環境に影響を与えてしまうという課題もある。
【0006】
更に、地球上には、水が約71%存在し、その水の約97%が海水であり、この豊富な海水を水素生成の原料として有効に利用しきれていないという課題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-64080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1では、生成の容易な陽極を用い、海水等の塩水を淡水化、純水化せずに供給して電気分解しても、塩素等の有害な副生成物を生じない、水素発生装置を提供するが、より多く水素を発生させる方法が無いという課題がある。
【0009】
本発明は、塩水を電気分解して水素ガスを生成させる水素生成装置であって、
上記塩水を貯めるための容器と、
前記容器に貯められた前記塩水中に挿入して、電気を通電して電気分解するためのプラス電極、及びマイナス電極と、
前記塩水中に、少なくとも前記プラス電極、又は前記マイナス電極のいずれか一方の電極と、所定距離だけ隔離して配置された金属部材と、を備え、
前記金属部材は、前記電気分解により生じた塩酸と化学反応して、水素ガスを生成するように構成されていることを特徴とする水素生成装置であることによって、水素をより多く生成することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
塩水を電気分解して水素ガスを生成させる水素生成装置であって、
上記塩水を貯めるための容器と、
前記容器に貯められた前記塩水中に挿入して、電気を通電して電気分解するためのプラス電極、及びマイナス電極と、
前記塩水中に、少なくとも前記プラス電極、又は前記マイナス電極のいずれか一方の電極と、所定距離だけ隔離して配置された金属部材と、を備え、
前記金属部材は、前記電気分解により生じた塩酸と化学反応して、水素ガスを生成するように構成されていることを特徴とする水素生成装置であることによって、水素をより多く生成することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
塩水を電気分解して水素ガスを生成させる水素生成装置であって、
上記塩水を貯めるための容器と、
前記容器に貯められた前記塩水中に挿入して、電気を通電して電気分解するためのプラス電極、及びマイナス電極と、
前記塩水中に、少なくとも前記プラス電極、又は前記マイナス電極のいずれか一方の電極と、所定距離だけ隔離して配置された金属部材と、を備え、
前記金属部材は、前記電気分解により生じた塩酸と化学反応して、水素ガスを生成するように構成されていることを特徴とする水素生成装置であることによって、水素をより多く生成することが可能となる。
【0012】
上記目的のために、本発明は、塩水を貯めるための容器と、
前記容器に貯められた前記塩水中に挿入して、電気を通電して電気分解するためのプラス電極、及びマイナス電極と、
前記塩水中に、少なくとも前記プラス電極、又は前記マイナス電極のいずれか一方の電極と、所定距離だけ隔離して配置された金属部材と、を備え、
前記金属部材は、前記電気分解により生じた塩酸と化学反応して、水素ガスを生成するように構成されていることを特徴とする水素生成装置であることによって、水素をより多く生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の1実施例における構成図
図2】本発明の1実施例における上面図
図3】本発明の1実施例における構成図
図4】本発明のアルミ板の位置を示す上面図
図5】塩水の磁気処理にて利用するネオジム磁石の事例
図6】塩水の磁気処理にて利用するネオジム磁石4つの吸着事例
図7】磁石吸着防止のためのプラスチックスペーサ
図8】ネオジム磁石4つの上にプラスチックスペーサを2つ載せた状態
図9】塩水の磁気処理にて利用するネオジム磁石8つの搭載事例
図10】塩水の磁気処理にて利用するネオジム磁石16個の搭載事例
図11】本発明の1実施例における構成図
図12】本発明のフィルター部を有する1実施例の構成図
図13】本発明のイオン交換膜を有する1実施例における構成図
図14】本発明の温水化処理部を有する1実施例の構成図
図15】本発明のアルミ板供給部を有する1実施例における構成図
図16】本発明のアルミ板供給部を有する1実施例における構成図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、実施形態を説明する。
【0015】
尚、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複の説明を省略する。また、図面は理解することを目的としており、実際の寸法比率は実際のものと必ずしも一致しない。
【0016】
また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることも有り得る。
【0017】
更に、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置などを下記のものに特定するものでない。
【0018】
ここで、図1は、本発明の1実施例における構成図である。
【0019】
次に、図2は、本発明の1実施例における上面図である。
【0020】
電気分解部1において、プラス電極2とマイナス電極3とアルミニウムで出来たアルミ板4を有しており、また、電気分解部1には、塩水5が含まれており、電気分解部の形状は、直方体となっている。
【0021】
ここで、塩水5の例として、20℃の水100ccを溶媒とし、塩化ナトリウム20gを溶質として塩水5、すなわち塩化ナトリウム水溶液を生成し、塩水5とし、アルミ板4は、プラス電極2とマイナス電極3に接触させないように設置する。
【0022】
またここで、比較用として、電気分解部1にアルミ板4を含まないものも考慮する。
【0023】
この時、アルミ板4を含む電気分解をサンプル1とし、アルミ板4を含まない電気分解をサンプル2とする。
【0024】
更に、電気分解においては、電極として白金電極を利用し、電圧は6Vを印加する。
【0025】
その際の、電気分解について考慮するとサンプル1の場合では、塩化ナトリウム水溶液で、次のような変化が起こる。
【0026】
ここでは、
2NaCl + 2HO → 2NaOH + Cl + H
のように電気分解部1のプラス電極2では塩素イオンが酸化されて塩素ガスが発生し、マイナス電極3では水が還元されて水素ガスが発生する。
【0027】
また、マイナス電極3付近には水酸化物イオンが生成されるが、ナトリウムイオンは、マイナス電極3付近に引き付けられるため、マイナス電極3付近の水溶液は、電気分解が進行するに従って、水酸化ナトリウム水溶液となる。
【0028】
この時、マイナス電極3で水素ガスを生成することができているが、プラス電極2で発生した塩素ガスは水と反応し、塩酸と次亜塩素酸を生成する。
【0029】
ここで発生した塩酸は環境上問題となっているが、アルミ板4と反応し、
2Al + 6HCl → 2AlCl + 3H
のように、塩化アルミニウムと水素が生成されることになり、アルミニウムと塩酸との反応によって、より多くの水素を生成することが可能となり、更に、環境上問題となっている塩酸を除去することができる。
【0030】
また、アルミニウムは水と常温で反応して水酸化アルミニウムと水素を生成するが、アルミニウムは通常、表面が酸化アルミニウムに覆われているため、そのままでは水との反応は起こらない。
【0031】
ここでは更に、アルミ板の表面に酸化アルミニウムが存在する場合には塩酸との反応で、
Al + 6HCl → 2AlCl + 3H
のように、塩化アルミニウムと水が生成される。
【0032】
また、今回の実験では、アルミ板4は、プラス電極2とマイナス電極3に接触させないように設置しているが、電極から発生する気体の気泡と、アルミ板から発生する気体の気泡がぶつかることなどによる水素生成の効率低下を防ぐために、アルミ板4は、プラス電極2とマイナス電極3から、5mm以上の距離を取ることが望ましい。
【0033】
更にまた、アルミ板4はプラス電極2あるいは、マイナス電極3に接触することで異種金属接触腐食が発生する可能性がある一方で、アルミ板は、塩酸などで溶解してしまうため、異種金属接触腐食は大きな問題にならないと考えられ、また、アルミ板4は、プラス電極2あるいは、マイナス電極3に接触させることも可能であるが、アルミ板4やプラス電極2やマイナス電極3から発生する気泡がぶつかる可能性があることを考慮する必要がある。
【0034】
以上のように、塩酸とアルミ板との反応で、塩化アルミニウムと水素が生成されることになるため、電気分解により発生する水素に加えて、より多くの水素を生成することが可能となり、更に、塩酸を除去することができる。
【0035】
更に、マイナス電極3付近には水酸化物イオンが生成されるが、ナトリウムイオンは、マイナス電極3付近に引き付けられるため、マイナス電極3付近の水溶液は、電気分解が進行するに従って、水酸化ナトリウム水溶液となり、水酸化ナトリウムとアルミ板4が反応し、
2Al+6HO+2NaOH → 2Na[Al(OH)]+3H
のように、水素を更に発生し、この反応の場合には塩酸に関連する塩化物は生成しない。
【0036】
次に、アルミ板4を含まない電気分解であるサンプル2の場合において、電極として白金電極を利用し、電圧は6Vを印加してみる。
【0037】
その際の、電気分解について考慮するとサンプル2の場合では、塩化ナトリウム水溶液で、次のような変化が起こる。
【0038】
ここでは、
2NaCl + 2HO → 2NaOH + Cl + H
のように電気分解部1のプラス電極2では塩素イオンが酸化されて塩素ガスが発生し、マイナス電極3では水が還元されて水素ガスが発生する。
【0039】
また、マイナス電極3付近には水酸化物イオンが生成されるが、ナトリウムイオンは、マイナス電極3付近に引き付けられるため、マイナス電極3付近の水溶液は、電気分解が進行するに従って、水酸化ナトリウム水溶液となる。
【0040】
この時、ここで、マイナス電極3で水素ガスを生成しているが、プラス電極2で発生した塩素ガスは水と反応し、塩酸と次亜塩素酸を生成する。
【0041】
ここで、サンプル1とサンプル2を比較すると、サンプル2ではアルミ板4が存在することによって、水素を生成し、かつ、塩酸を効果的に除去できており、サンプル1においては、塩酸を除去できていない。
【0042】
また、サンプル1とサンプル2を比較すると、サンプル2に比べてサンプル1では、20℃の環境下において、水素の生成量は、5%以上、より多く生成できることが実験により確認できた。
【0043】
更にこの時、電気分解部において、電気分解部の上部に水素貯蔵タンクを設置することで、水素を効果的に貯蔵することが可能となる。
【0044】
またこの時、電気分解部のプラス電極側、マイナス電極側、あるいはプラス電極とマイナス電極の間などにアルミ板を複数有するように設置することも可能である。
【0045】
更にまた、電気分解部のプラス電極側、マイナス電極側、あるいはプラス電極とマイナス電極の間などにアルミ板以外の塩酸や水酸化ナトリウムなどに溶解する金属を設置することも可能であり、アルミ板を設置した上で、更に加えて塩酸や水酸化ナトリウムに溶解する他金属も設置することも可能である。
【0046】
ここで例えば、アルミ板の代わりに、亜鉛で出来た亜鉛板を設置すると、亜鉛板と塩酸との反応は、
Zn + 2HCl → ZnCl + H
のように、塩化亜鉛と水素が生成されることになり、亜鉛と塩酸との反応によって、より多くの水素を生成することが可能となり、更に、環境上問題となっている塩酸を除去することができる。
【0047】
また、亜鉛と水酸化ナトリウムとの反応は、
Zn + 2NaOH + 2HO → 2Na[Zn(OH)] +H
のように、テトラヒドロキソ亜鉛酸ナトリウムと水素が生成されることになり、亜鉛と水酸化ナトリウムとの反応によって、より多くの水素を生成することが可能となる。
【0048】
次に、図3は、本発明の1実施例における構成図である。
【0049】
図3において、電気分解部1において、プラス電極2とマイナス電極3とアルミニウムで出来たアルミ板4を有しており、また、電気分解部1には、塩水5が含まれており、更に、電気分解部1の外部に、紫外線照射装置6を有しており、紫外線照射装置6からは、電気分解部1を透過してアルミ板4に紫外線が照射される。
【0050】
ここで光電効果について考慮すると、仕事関数として物質から電子を取り出すための波長は、アルミニウムの場合、330nm以下となる。
【0051】
今回は、アルミ板4を考慮しているが、アルミニウムではなく、マグネシウムから電子を取り出す場合のエネルギーは420nm以下となり、銀では310nm以下であり、鉛では290nm以下であり、錫や亜鉛では275nm以下であり、銅や鉄では270nm以下となる。
【0052】
また、電気分解部1の外部から光照射装置である紫外線照射装置6によって330nm以下の波長の紫外線をアルミ板4に照射する場合に、電気分解部1において紫外線が透過する部分には、紫外線透過ガラスなどを適用することで、紫外線の透過を高めることができる。
【0053】
この時、紫外線照射装置6によって、電気分解部を透過した紫外線をアルミ板4に照射し、アルミ板4において光電効果により電子を発生させ、電気分解を実施するが、このときの電気分解をサンプル3とする。
【0054】
ここで、塩水5の例として、20℃の水100ccを溶媒とし、塩化ナトリウム20gを溶質として塩水、すなわち塩化ナトリウム水溶液を生成し、塩水5として、アルミ板4は、プラス電極2とマイナス電極3に接触させないように設置する。
【0055】
更に、電気分解においては、電極として白金電極を利用し、電圧は6Vを印加する。
【0056】
この時、サンプル3からは、水素が得られるが、サンプル1と比較すると、サンプル1に比べてサンプル3では、20℃の環境下において、水素の生成量は、7%以上、より多く生成できることが実験により確認できたが、アルミ板の紫外線が照射される部分のサイズや紫外線の強度を変えることで、水素の生成量を増加させることが可能である。
【0057】
次に、図4は、本発明のアルミ板の位置を示す上面図を示している。
【0058】
図4において、アルミ板4は、電気分解部1の左側面の内側に設置されており、また、紫外線照射装置6は、電気分解部1の左側面の外側に設置されており、電気分解部1の左側面部を透過してアルミ板4に紫外線を照射する機能を有している。
【0059】
更にこの時、電気分解部1において紫外線が透過する左側面部には、紫外線透過ガラスなどを適用することで、紫外線の透過を高めることができる。
【0060】
尚、紫外線透過ガラスには、酸化鉄などの不純物の混入を0.01パーセント以下に抑え、紫外線の透過率を高めたガラスなどが効果的であり、電気分解部1の全面あるいは、紫外線が透過する左側面部の全体、あるいは紫外線が透過する左側面部の特定部位に適用することが可能である。
【0061】
また、アルミ板4を、電気分解部1の左側面の内側に吸着させている場合には、紫外線は電気分解部1の左側面部を透過し、塩水を透過することなく、アルミ板に照射され、紫外線が照射されたアルミ面における光電効果により発生した電子に関して、紫外線が照射されたアルミ面と反対側の面を含む多方面から電子を発生することが可能となる。
【0062】
ここでは、アルミ板4を、電気分解部1の左側面の内側に設置した例を説明しているが、アルミ板4を、電気分解部1の右側面の内側、正面の内側、裏面の内側、あるいは底面の内側に設置し、紫外線照射装置を前記アルミ板4に照射することも可能であり、また、電気分解部の形状が直方体でなく、上面から見た形状が円形の場合には、電気分解部の円形部の内側に設置することも可能である。
【0063】
また、今回はアルミニウムを利用した例を示しているが、アルミニウムではなく、マグネシウム、銀、鉛、錫、亜鉛、銅や鉄などの他の金属を利用し、光電効果に対応する紫外線、X線、ガンマ線などを照射することで電子を発生させ、水素の生成を増加させることが可能となる。
【0064】
更に、今回は、塩水を利用した例を示しているが、塩水以外の液体を利用した電気分解において、光電効果によって電子が発生することにより、水素の生成量を増やすことも可能となる。
【0065】
更に、紫外線は3種類に分類でき、波長によって紫外線A(UVA)で波長315nm~400nmのもの、紫外線B(UVB)で波長280nm~315nmのものと、紫外線C(UVC)で波長200nm~280nmのものの3種類に分類されるが、紫外線を照射する対象物が、アルミニウムでなく、他金属である場合には、その金属の光電効果の特性に応じて、紫外線A、紫外線B、紫外線Cを選択することが可能となり、あるいは、特定の波長の紫外線を選択することが可能である。
【0066】
更にこの時、紫外線よりも、波長が短い電磁波であるX線やガンマ線なども利用可能であり、紫外線照射装置の代替えとして光照射装置として、X線照射装置や、ガンマ線照射装置の利用も可能である。
【0067】
更にまた、屋外での電気分解を考慮すると、紫外線、X線やガンマ線などを含む太陽光を利用することも可能となり、太陽光の熱による加熱の効果も追加で得られる。
【0068】
また、図3では、電気分解部1の外部に紫外線照射装置6を有しているが、紫外線照射装置6は、電気分解部1の内部に有しても良い。
【0069】
更に、紫外線照射装置は、電気分解部1の外部のみに1個または複数設置しても良く、電気分解部1の内部のみに1個または複数設置しても良く、あるいはまた、電気分解部1の外部と内部に1個または複数設置しても良い。
【0070】
この時、複数の紫外線照射装置を設置する際には、放射される紫外線の波長が異なる、それぞれの紫外線照射装置を選択することも可能であり、紫外線よりも、波長が短い電磁波であるX線やガンマ線なども選択可能である。
【0071】
ここで、塩水の磁気処理について説明をする。今回の評価では、比較サンプルとして磁気処理をしていない20℃の水100ccを溶媒とし、塩化ナトリウム20gを溶質として塩水、すなわち塩化ナトリウム水溶液を生成する。
【0072】
また、一方で、いま説明した比較サンプルとして磁気処理をしていない20℃の水100ccを溶媒とし、塩化ナトリウム20gを溶質として塩水、すなわち塩化ナトリウム水溶液を生成したものに関して、磁気処理を行う手段について事例を交えて説明をする。
【0073】
図5は、本件で塩水を磁気処理する際に利用するネオジム磁石7である。物理寸法は、長辺からそれぞれ、50mm、10mmとなっており、厚みは、3mmであり、N40材のものとなっている。
【0074】
尚、このネオジム磁石7の表面を塩水が通過することになるため、ネオジム磁石表面の汚れを防ぐために、磁気を通しやすい薄膜などで、ネオジム磁石の表面を覆うことで、ネオジム磁石の直接の表面の汚れを防ぐことも可能となる。
【0075】
このネオジム磁石7を、図6のように、10mmの辺と3mmの辺からなる面の方向に磁力で引き合う方向に4つ並べ、各ネオジム磁石4つを磁力にて吸着させる。
【0076】
このとき、一方の端に位置するネオジム磁石は上面がS極で下面がN極とすると、その隣接するネオジム磁石は上面がN極で下面がS極となっており、更に隣接するネオジム磁石は上面がS極で下面がN極となっており、更に隣接する他方の端に位置するネオジム磁石は上面がN極で下面がS極となっている。
【0077】
さらに、図7のような磁石間の吸着防止のためのプラスチックスペーサを準備し、このプラスチックスペーサの物理寸法は、長辺からそれぞれ、40mm、5mmとなっており、厚みは、1mmとなっている。
【0078】
次に、図7のプラスチックスペーサ2つを、図6の吸着している4つのネオジム磁石の表面に設置する。この際、2つのプラスチックスペーサの長辺と、4つのそれぞれのネオジム磁石の長辺が、直角の向きになるように、更には、2つのプラスチックスペーサを、4つのネオジム磁石の両端の部分に設置し、井桁となるように搭載した状態を、図8に示す。
【0079】
さらに、図6と同一の状態のネオジム磁石を4つ吸着させたものを準備する。
【0080】
図8のプラスチックスペーサ2つの表面上に、ここで新たに準備したネオジム磁石4つを吸着させたものを、下部のネオジム磁石4つを吸着させたものと吸着が最も強くなるZ軸方向にて設置する。
【0081】
また、下部のネオジム磁石4つの長辺と、上部のネオジム磁石4つの長辺が平行となるように搭載する。
【0082】
このとき、プラスチックスペーサ2つは、下部のネオジム磁石4つと、上部のネオジム磁石4つの、両端に位置していることになる。この状態の、塩水の磁気処理にて利用するネオジム磁石8つの搭載事例が図9である。
【0083】
このとき、下側の4つのネオジム磁石のうち一方の端に位置するネオジム磁石は上面がS極で下面がN極とすると、その隣接するネオジム磁石は上面がN極で下面がS極となっており、更に隣接するネオジム磁石は上面がS極で下面がN極となっており、更に隣接する他方の端に位置するネオジム磁石は上面がN極で下面がS極となっている。
【0084】
そして、上側の4つのネオジム磁石のうち、下側の4つのネオジム磁石のうち一方の端に位置するネオジム磁石に相対する、上側の4つのネオジム磁石のうち一方の端に位置するネオジム磁石は上面がS極で下面がN極となっており、その隣接するネオジム磁石は上面がN極で下面がS極となっており、更に隣接するネオジム磁石は上面がS極で下面がN極となっており、更に隣接する他方の端に位置するネオジム磁石は上面がN極で下面がS極となっている。
【0085】
さらに、これまで述べてきた内容と同等の方法にて、ネオジム磁石16個を搭載した状態図を、図10に示す。このネオジム磁石16個を搭載した状態においては、プラスチックスペーサが6個使われており、Z方向の同じ高さ位置において、対となっているプラスチックスペーサは3組ある。その3組のプラスチックスペーサとネオジム磁石との間には、合計3か所の空間9が存在する。
【0086】
ここで、塩水の磁化処理を実施していく事例について説明を進める。
【0087】
ここで、プラスチックスペーサ間の3か所の空間9において、均等な塩水の流量になるように配慮し、先ほど説明した、磁気処理をしていない20℃の水100ccを溶媒とし、塩化ナトリウム20gを溶質として生成した塩水、すなわち塩化ナトリウム水溶液を60秒かけて通過させ、その塩水を採取する。
【0088】
その採取した塩水を、さらに同様の方法でプラスチックスペーサ間の3か所の空間9を、均等な塩水の流量になるように配慮し、60秒かけて通過させて再度採取する。
【0089】
この同様の手法を合計10回繰り返すことで、塩水の磁気処理を実施し、磁気処理した塩水を得ることができる。
【0090】
また、このネオジム磁石の磁力を強くすることで、あるいは、ネオジム磁石の量を増やすことなどの方法により、塩水の通過の条件を緩和することも可能となる。
【0091】
例えば、図10で説明したネオジム磁石16個を、直列方向に10個ならべ、そこに存在する3か所の空間に関して、塩水を通過させる場合には、塩水の通過の回数を、10分の1などに緩和することなども可能である。
【0092】
尚、ここで、塩水の磁化処理の際に、3か所の空間9において、均等な塩水の流量になるように配慮し、塩水を60秒かけて通過させているが、これは定量的なデータ採取のためであり、水素の生成量を増加させる観点からは、必ずしも、均等な塩水の流量にする必要は無く、また、必ずしも、塩水を60秒かけて通過させる必要は無く、その回数も10回である必要は無い。
【0093】
以上で説明した、磁気処理をしていない塩水と、磁気処理をした塩水が得られたが、これらの塩水を使ってそれぞれ電気分解を実施し、生成される水素の量を比較した。
【0094】
電気分解においては、電極として白金電極を利用し、電圧は6Vを印加した。
【0095】
その結果として、磁気処理をした塩水を使って電気分解により生成された水素の量は、磁気処理をしていない塩水を使って電気分解により生成された水素の量に比べて、10%以上、より多く生成できることが実験により確認できた。
【0096】
尚、別実験の方式において、電気分解部にてネオジム磁石を複数設置し、磁気処理をしていない塩水を利用し電気分解を実施したが、ネオジム磁石を電気分解部に設置したときの電気分解による水素の生成量は、ネオジム磁石を電気分解部に設置しないときに比べて明らかな優位性は見られなかった。
【0097】
但し、この場合においては、電気分解部にネオジム磁石を設置して実験評価を実施したが、より大きな磁界をかけることで水素の生成量を増加させられる可能性は残されている。
【0098】
また一方で、電気分解部に、非常に高価な超電導磁石のようなものを設けて水素の生成量を増加させるという方式もあるが、超電導磁石を導入することは、磁力生成のため多くの電力を必要とし、また設置のコストも膨大になるという課題もある。
【0099】
そのため、これまで説明してきた、市販レベルのネオジム磁石により、安価に磁気処理をした塩水を利用する水素生成システムは、水素生成量を増加させることができ、かつ、コスト的なメリットも大きい。
【0100】
次に、図11は、本発明の1実施例における構成図である。
【0101】
ここで、水素発生時に、電気分解部1において、電気分解部の底面10に勾配をつけて傾斜をつけ、重力を利用することで、電気分解による沈殿物を収集することを容易にすることも可能である。
【0102】
この時、塩化アルミニウムなどは、温度に依存して、水への溶解度が決まっているので、溶解できない沈殿したものなどは収集可能であり、勾配を50°以上にすると沈殿物を収集する効果が大きくなる。
【0103】
次に、図12は、本発明のフィルター部を有する1実施例の構成図であり、電気分解部の前段にフィルター部を有している。
【0104】
本発明では、海水などの塩水を、電気分解する際に、アルミ板を加えることで、水素生成の増加させる方式を提供しているが、海水には様々な夾雑物が含まれているため、実際に海水を利用する際には、ろ過が必要となる。
【0105】
また一方で、海水は腐食性が強く、様々な生物が含まれていることもあることから、厳しい環境において対応できるろ過装置の選定が必要となる。
【0106】
そのような状況に対応できるろ過装置としては、海水用のオートストレーナや、砂ろ過や、ディスクフィルターなどが適用可能となる。
【0107】
このようなろ過機能を具備するフィルター部を、電気分解部の前段に設けることで、塩水の電気分解を行う前に、フィルター部のろ過によって、海水などから様々な夾雑物を効果的に除去することが可能となる。
【0108】
次に、図13は、本発明のイオン交換膜を有する1実施例における構成図である。
【0109】
電気分解部1は、プラス電極側の液体と、マイナス電極側の液体を仕切る形で、イオン交換膜12を有しており、アルミ板4はプラス電極側に設置されている事例を示している。
【0110】
もし仮に、このイオン交換膜12が、陽イオン交換膜である場合には、プラス電極2とマイナス電極3との間を、陽イオンしか通さない陽イオン交換膜で仕切ることになり、ナトリウムイオンなどの陽イオンを移動させることができ、陰イオンは移動させないようにすることができる。
【0111】
また、もし仮に、このイオン交換膜12が、陰イオン交換膜である場合には、プラス電極2とマイナス電極3との間を、陰イオンしか通さない陰イオン交換膜で仕切ることになり、陰イオンを移動させることができ、陽イオンは移動させないようにすることもできる。
【0112】
この時、プラス電極とマイナス電極との間を、陽イオンしか通さない、陽イオン交換膜で仕切る場合で、かつ、アルミ板4を、プラス電極側に設置する場合で、かつ、プラス電極側には、塩化ナトリウム水溶液を加え、マイナス電極側には、希釈した水酸化ナトリウム水溶液を加える場合を考える。
【0113】
この場合には、電気分解の際に、マイナス電極3付近には水酸化物イオンが生成されるが、ナトリウムイオンは、マイナス電極3付近に引き付けられるため、マイナス電極3付近の水溶液は、電気分解が進行するに従って、水酸化ナトリウム水溶液となる。
【0114】
更に、電気分解部に設置された陽イオン交換膜によって、プラス電極側からマイナス電極側へ、ナトリウムイオンなどの陽イオンを移動させることができ、マイナス電極3付近で生成された水酸化物イオンと結合し、水酸化ナトリウムを更に生成することが可能となる。
【0115】
またこの時、プラス電極側にアルミニウムイオンなどの陽イオンがあると、プラス電極側からマイナス電極側へ、陽イオン交換膜によって、アルミニウムイオンなどの陽イオンが移動し、水酸化ナトリウムと反応することがあるが、この際には、
Al3+ + 3NaOH → 3Na + Al(OH)
のように、水酸化アルミニウムを生じることになる。
【0116】
更に、水酸化ナトリウムを電気分解部のマイナス電極側に過剰に加える場合には、水酸化アルミニウムの沈殿は溶解して無色の水溶液となり、テトラヒドロキソアルミン酸イオンを生じるが、水酸化ナトリウムを過剰に加えなければ水酸化アルミニウムは溶解しない。
【0117】
このように、陽イオン交換膜を電気分解部に有する場合には、水酸化ナトリウムを更に生成できるという効果も得ることができる。
【0118】
また、この事例では、アルミ板4をプラス電極側に設置しているが、アルミ板4をマイナス電極側に設置することも可能であり、更にまた、アルミ板4をプラス電極側とマイナス電極側の両方に設置することも可能である。
【0119】
更にまた、ここでは、陽イオン交換膜を1つ設置した事例を説明しているが、陽イオン交換膜と、陰イオン交換膜を電気分解部に両方同時に設置することも可能である。
【0120】
次に、図14は、本発明の温水化処理部を有する1実施例の構成図であり、電気分解部の前段に、温水化処理部を有している。
【0121】
ここで、温水化処理の事例について説明する。
【0122】
実験では、塩水における、温度の違いによる水素の生成状況を確認したが、ここでは、塩水が20℃、30℃、40℃の場合で、電気分解による水素の生成量を実験評価した事例について説明する。
【0123】
電気分解においては、電極として白金電極を利用し、電圧は6Vを印加した。
【0124】
結果として、20℃の常温の塩水を使って電気分解により生成される水素の量に比べて、塩水が30℃の場合は、電気分解により生成される水素の量は、約50%多く生成できることが確認できた。
【0125】
また、20℃の常温の塩水を使って電気分解により生成される水素の量に比べて、塩水が40℃の場合は、電気分解により生成される水素の量は、約80%多く生成できることが確認できた。
【0126】
以上のことにより、塩水を加熱することにより、電気分解による水素生成量を増加させることが可能となる。
【0127】
また、加熱温度に関しても、ここでは、20℃、30℃、40℃の実験結果を示しているが、更に高い温度など、他の温度への加熱も機構上可能である。
【0128】
更にまた、温水化処理として、ヒータなどによる加熱が可能であり、また、塩水として海水を利用する場合などは、自然界に存在する日中の太陽光による温水化処理の構成も可能であり、太陽光によって加熱する場合などは、ヒータなどの電気料金は不要となり安価なシステムが構築可能である。
【0129】
このように、ヒータや太陽光などによる加熱機能を具備する温水化処理部を、電気分解部の前段、あるいは、電気分解部の内部に設けることで、塩水の電気分解を行う前あるいは電気分解時に、塩水を加熱することが可能となり、二酸化炭素を排出せず、水素をより多く生成することが可能となる。
【0130】
次に、液体撹拌の有用性と注意事項について説明する。
【0131】
電気分解部において、1例として、プロペラ式などの自動撹拌器を設け、当該自動撹拌器にて撹拌を行い、塩水の濃度や温度などを均一化し、その後、撹拌をした塩水を電気分解することで、二酸化炭素を排出せず、水素をより多く生成することが可能となる。
【0132】
但し、電気分解部において、塩水の撹拌機能を具備する攪拌部を設けることで、二酸化炭素を排出せず、水素をより多く生成することが可能となるが、塩化アルミニウムなどの沈殿物が拡散してしまう可能性があるため適用時には注意が必要である。
【0133】
次に、図15は、本発明のアルミ板供給部を有する1実施例の構成図であり、電気分解部の右側面に、アルミ板供給部14を有している。
【0134】
この時、アルミ板供給部14は、電気分解部の内部の液体を電気分解部の外部に漏らさない機能を有し、更にまたアルミ板4を電気分解部1に供給する機能を持つ。
【0135】
この時、塩水が電気分解されることを考えると、
2NaCl + 2HO → 2NaOH + Cl + H
のように電気分解部1のプラス電極2では塩素イオンが酸化されて塩素ガスが発生し、マイナス電極3では水が還元されて水素ガスが発生する。
【0136】
また、マイナス電極3付近には水酸化物イオンが生成されるが、ナトリウムイオンは、マイナス電極3付近に引き付けられるため、マイナス電極3付近の水溶液は、電気分解が進行するに従って、水酸化ナトリウム水溶液となる。
【0137】
この時、ここで、マイナス電極3で水素ガスを生成しているが、プラス電極2で発生した塩素ガスは水と反応し、塩酸と次亜塩素酸を生成する。
【0138】
ここで発生した塩酸は、アルミ板4と反応し、
2Al + 6HCl → 2AlCl + 3H
のように、塩化アルミニウムと水素が生成されることになり、より多くの水素を生成することが可能となり、更に、塩酸を除去することができる。
【0139】
ここで、発生した塩酸の量を除去しうる、アルミ板の必要分量を、アルミ板供給部14から、電気分解部1に供給することにより、発生した塩酸を効果的に除去することができる。
【0140】
また、塩酸以外にも、電気分解により発生した物質とアルミ板を反応させることを考慮して計算の上、アルミ板供給部14から供給されるアルミ板の反応のための必要分量を調整することも可能である。
【0141】
ここでは、アルミ板供給部14は、電気分解部の右側面に設置した例を説明しているが、アルミ板供給部14を、電気分解部1の左側面、正面、裏面など設置することも可能であり、また、電気分解部の形状が直方体でなく、上面形状が円形の場合にも、アルミ板供給部を設置することも可能である。
【0142】
更に、アルミ板の供給において、水平方向での供給、下斜め方向からの供給、上斜め方向からの供給、右斜め方向からの供給、あるいは左斜め方向からの供給などにより、アルミ板の供給は可能である。
【0143】
また、ここではアルミ板を供給しているが、円形棒状のアルミニウム、楕円棒状のアルミニウムやアルミ箔なども供給可能である。
【0144】
更にまた、アルミ板の表面積を大きくし塩酸などとの反応をより活性化させるために、アルミ板の表面に、凹凸などを設けることも効果的である。
【0145】
更にこの時、アルミ板供給部14は、一か所となっているが、2つ以上の複数個所からの供給も可能である。
【0146】
そして今回の場合、アルミ板供給部からはアルミ板を供給しているが、アルミ板以外の金属を代替えしての供給も可能であり、アルミ板に追加して、アルミ板以外の金属の供給も可能である。
【0147】
次に、図16は、本発明のアルミ板供給部を有する1実施例の構成図であり、電気分解部の正面の左側面の側に、アルミ板供給部14を有しており、左側面の外部に、紫外線照射装置6を有している。
【0148】
この時、アルミ板供給部14は、電気分解部の内部の液体を電気分解部の外部に漏らさない機能を有し、更にまたアルミ板4を電気分解部1に供給する機能を持つ。
【0149】
また、紫外線照射装置6は、電気分解部1にアルミ板供給部14から供給されたアルミ板4の左側面に向けて、電気分解部1の左側面を透過させ紫外線を照射する機能を持つ。
【0150】
ここで光電効果について考慮すると、仕事関数として物質から電子を取り出すための波長は、アルミニウムの場合、330nm以下となる。
【0151】
今回は、アルミ板4を考慮しているが、アルミニウムではなく、マグネシウムから電子を取り出す場合のエネルギーは420nm以下となり、銀では310nm以下であり、鉛では290nm以下であり、錫や亜鉛では275nm以下であり、銅や鉄では270nm以下となる。
【0152】
また、電気分解部1の外部から紫外線照射装置6によって330nm以下の波長の紫外線をアルミ板4に照射する場合に、電気分解部1において紫外線が透過する部分には、紫外線透過ガラスなどを適用することで、紫外線の透過を高めることができる。
【0153】
この時、紫外線照射装置6によって、電気分解部1の左側面を透過した紫外線をアルミ板4に照射し、アルミ板4において光電効果により電子を発生させ、電気分解を実施することができる。
【0154】
更にこの時、紫外線照射装置6は、電気分解部1にアルミ板供給部14から供給されたアルミ板4の左側面に向けて、電気分解部1の左側面を透過させ紫外線を照射した事例を説明したが、紫外線を、アルミ板4の左側面の、電気分解部1に入っていない部分に向けて照射することによっても、光電効果によりアルミ板の様々な部位から電子は発生し、電気分解には有効となる。
【0155】
以上説明したように、本発明の、塩水を電気分解して水素ガスを生成させる水素生成装置においては、
塩水を貯めるための容器と、
前記容器に貯められた前記塩水中に挿入して、電気を通電して電気分解するためのプラス電極、及びマイナス電極と、
前記塩水中に、少なくとも前記プラス電極、又は前記マイナス電極のいずれか一方の電極と、所定距離だけ隔離して配置された金属部材と、を備え、
前記金属部材は、前記電気分解により生じた塩酸と化学反応して、水素ガスを生成するように構成されていることを特徴とする水素生成装置であることによって、水素をより多く生成することが可能となり、豊富な海水を水素生成の原料とすることも可能であり、また、塩酸を除去するという効果もあり、将来に向けたグリーンエネルギー社会、水素社会の発展に寄与することができる技術である。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明の、塩水を電気分解して水素ガスを生成させる水素生成装置においては、水素をより多く生成することが可能となり、豊富な海水を水素生成の原料とすることも可能であり、また、塩酸を除去するという効果もあり、将来に向けたグリーンエネルギー社会、水素社会の発展に寄与することができる技術である。
【符号の説明】
【0157】
1・・・電気分解部
2・・・プラス電極
3・・・マイナス電極
4・・・アルミ板
5・・・塩水
6・・・紫外線照射装置
7・・・ネオジム磁石
8・・・プラスチックスペーサ
9・・・3か所の空間
10・・・電気分解部の底面
11・・・フィルター部
12・・・イオン交換膜
13・・・温水化処理部
14・・・アルミ板供給部


【要約】      (修正有)
【課題】昨今、グリーン社会に向けて水素エネルギーが必要とされてきているが、化石燃料改質による水素生成では、CO2を排出し、副生水素による水素生成では、生成量が少なく、水電解方式では、コストが高く、塩水の電気分解では、環境に悪影響を与える塩酸が生成される課題などがある。
【解決手段】塩水を貯めるための容器と、電気分解するためのプラス電極、マイナス電極と、少なくとも前記プラス電極、又は前記マイナス電極のいずれか一方の電極と、所定距離だけ隔離して配置された金属部材と、を備え、前記金属部材は、前記電気分解により生じた塩酸と化学反応して、水素ガスを生成するように構成されていることにより、水素をより多く生成することが可能となり、豊富な海水を水素生成の原料とすることも可能であり、また、塩酸を除去するという効果もあり、将来に向けたグリーンエネルギー社会、水素社会の発展に寄与することができる。
【選択図】図16
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16