(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】加熱装置及びそれを備えた温度調整装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/10 20060101AFI20250708BHJP
F24H 1/10 20220101ALI20250708BHJP
【FI】
H05B6/10 311
F24H1/10 J
(21)【出願番号】P 2024548877
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2022035954
(87)【国際公開番号】W WO2024069757
(87)【国際公開日】2024-04-04
【審査請求日】2025-03-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】392032443
【氏名又は名称】株式会社アドテックス
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【氏名又は名称】大竹 雅久
(72)【発明者】
【氏名】向山 洋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘男
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3222812(JP,U)
【文献】特開2014-229811(JP,A)
【文献】特開2001-284034(JP,A)
【文献】特開2013-58441(JP,A)
【文献】特開2008-292026(JP,A)
【文献】特開2013-57482(JP,A)
【文献】特開平7-35413(JP,A)
【文献】特開2004-214039(JP,A)
【文献】登録実用新案第3186718(JP,U)
【文献】特開2004-183999(JP,A)
【文献】特開2010-73655(JP,A)
【文献】特開2005-351515(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0126378(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/10
F24H 1/10
F16L 53/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象の温度を調整する循環液を加熱する加熱装置であって、
前記循環液が流れる管と、
前記管の外周に巻かれて交番電流が流れる一次コイルと、
前記管の前記一次コイルが巻かれた領域の内部に設けられた導電性の発熱体と、を具備し、
前記一次コイルの交番電流による誘導加熱によって前記発熱体が発熱し前記発熱体で前記循環液を加熱
し、
前記発熱体は、絶縁部材で覆われた比透磁率が1以上の導線から形成されており、
前記導線は、導電性の閉ループを構成するよう両端部が接続されていることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
制御対象の温度を調整する循環液を加熱する加熱装置であって、
前記循環液が流れる管と、
前記管の外周に巻かれて交番電流が流れる一次コイルと、
前記管の前記一次コイルが巻かれた領域の内部に設けられた導電性の発熱体と、を具備し、
前記一次コイルの交番電流による誘導加熱によって前記発熱体が発熱し前記発熱体で前記循環液を加熱
し、
前記発熱体は、コイル状に巻かれた二次コイルであり、
前記二次コイルは、コイル状に巻かれたコイル経路の両端部が接続されて導電性の閉回路を構成することを特徴とする加熱装置。
【請求項3】
前記二次コイルは、前記管の上流側と下流側とで前記コイル経路の巻き径が異なるよう巻かれた箇所を有することを特徴とする
請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記二次コイルは、鉄系材料、ニッケル合金系材料及びフェライト系ステンレス材料の少なくとも一つから形成されていることを特徴とする
請求項2に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記管は、オーステナイト系ステンレス材料から形成されていることを特徴とする
請求項4に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記管は、前記一次コイルが巻かれた領域に曲管部を有し前記一次コイルが巻かれた領域が円形状、楕円形状若しくはトラック形状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし
請求項5の何れか1項に記載の加熱装置。
【請求項7】
圧縮手段、放熱器、絞り手段及び蒸発器が順次接続され冷媒が循環する冷凍サイクル回路と、
循環ポンプ及び加熱装置が設けられ制御対象の温度を調整する循環液が循環する循環液回路と、を具備し、
前記循環液回路には、前記加熱装置の上流に、前記循環液が前記冷媒と熱交換可能に前記蒸発器を流れる開閉自在な低温経路が形成されており、
前記加熱装置は、前記循環液が流れる管と、前記管の外周に巻かれて交番電流が流れる一次コイルと、前記管の前記一次コイルが巻かれた領域の内部に設けられた導電性の発熱体と、を備え、
前記一次コイルの交番電流による誘導加熱によって前記発熱体が発熱し前記発熱体で前記循環液を加熱
し、
前記発熱体は、絶縁部材で覆われた比透磁率が1以上の導線から形成されており、
前記導線は、導電性の閉ループを構成するよう両端部が接続されていることを特徴とする温度調整装置。
【請求項8】
圧縮手段、放熱器、絞り手段及び蒸発器が順次接続され冷媒が循環する冷凍サイクル回路と、
循環ポンプ及び加熱装置が設けられ制御対象の温度を調整する循環液が循環する循環液回路と、を具備し、
前記循環液回路には、前記加熱装置の上流に、前記循環液が前記冷媒と熱交換可能に前記蒸発器を流れる開閉自在な低温経路が形成されており、
前記加熱装置は、前記循環液が流れる管と、前記管の外周に巻かれて交番電流が流れる一次コイルと、前記管の前記一次コイルが巻かれた領域の内部に設けられた導電性の発熱体と、を備え、
前記一次コイルの交番電流による誘導加熱によって前記発熱体が発熱し前記発熱体で前記循環液を加熱
し、
前記発熱体は、コイル状に巻かれた二次コイルであり、
前記二次コイルは、コイル状に巻かれたコイル経路の両端部が接続されて導電性の閉回路を構成することを特徴とする温度調整装置。
【請求項9】
前記二次コイルは、前記管の上流側と下流側とで前記コイル経路の巻き径が異なるよう巻かれた箇所があることを特徴とする
請求項8に記載の温度調整装置。
【請求項10】
前記管は、前記一次コイルが巻かれた領域に曲管部を有し前記一次コイルが巻かれた領域が円形状、楕円形状若しくはトラック形状に形成されていることを特徴とする
請求項7ないし
請求項9の何れか1項に記載の温度調整装置。
【請求項11】
前記循環液回路には、前記加熱装置の上流に、前記循環液が前記冷媒と熱交換可能に前記放熱器を流れる開閉自在な高温経路が形成されており、
前記冷媒は、二酸化炭素であり、前記放熱器において超臨界圧力で前記循環液を加熱し、
前記高温経路には、前記放熱器で前記冷媒に加熱された前記循環液を貯留する高温タンクが設けられていることを特徴とする
請求項7ないし
請求項9の何れか1項に記載の温度調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置及びそれを備えた温度調整装置に関し、特に、半導体製造装置等の各種製造装置及び各種計測装置等を所定の温度に調整するために用いられる加熱装置及びそれを備えた温度調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に半導体製造等では、製造装置によるワークの加工箇所、計測箇所等の温度が各製造プロセスに応じた所定の温度になるよう製造装置等の温度を制御する必要がある。従来、このような温度制御を行う装置として、熱媒体が循環する循環経路を有し、その循環経路を循環する熱媒体によって、温度調整が必要な制御対象を冷却または加熱する温度調整装置が知られている。この種の温度調整装置は、循環する熱媒体を冷却する蒸気圧縮式冷凍サイクルのチラー等と、冷却された熱媒体を加熱する加熱装置等と、を備えている。
【0003】
例えば特許文献1には、半導体製造装置等の各種装置、プロセス等の温度を制御するために用いられるエリア別パラメータ制御方式ハイブリッドチラーが開示されている。同文献に開示されたエリア別パラメータ制御方式ハイブリッドチラーは、冷凍サイクルによって所定温度まで冷却された循環液を制御対象に供給する循環液循環回路と、クーリングタワーで冷却された冷却水によって所定の温度まで冷却された循環液を制御対象に供給する第2の循環液循環回路と、を有する。制御対象に循環液を送る循環液供給路には、循環液を加熱するヒータが設けられている。
【0004】
このような構成により、冷凍サイクルを用いて循環液を冷却する方法と、クーリングタワーの冷却水を用いて循環液を冷却する方法と、を使い分けて、制御対象に供給される循環液の冷却が行われる。冷凍サイクルまたはクーリングタワーによって冷却された循環液は、ヒータ等の加熱装置によって所定の温度に加熱されて制御対象に供給される。
【0005】
また例えば、特許文献2には、凝縮器の中の第1冷媒をポンプ、加熱器、絞り弁及び気化器を介して凝縮器に戻すように循環させる第1循環系と、凝縮器の中に配置された熱交換器を含み第1冷媒を冷却する第2冷媒を循環させる第2循環系と、を備えた冷却装置が開示されている。
【0006】
第1循環系は、気化器において沸騰する第1冷媒の気化潜熱によって冷却対象物を冷却する。第1循環系の加熱器は、例えば電熱ヒータであり、第1冷媒が所定温度になるように第1冷媒を加熱する。第2循環系は、圧縮機、第2凝縮器、膨張弁及び熱交換器を有し、第1循環系の凝縮器の内部に設けられた熱交換器において、第2冷媒の気化潜熱を利用して第1冷媒を冷却して凝縮させる。
【0007】
また同文献には、第1循環系の加熱器として、第2冷媒の凝縮によって第1冷媒を加熱する第2熱交換器が設けられることが開示されている。第2循環系の第2冷媒は、圧縮機で加圧され第2熱交換器に送られ、第1循環系の第1冷媒を加熱する。
【0008】
また例えば、特許文献3には、プラズマエッチング装置のチャンバーに対して供給される循環流体を冷却、加熱する循環冷却加熱装置であって、循環流体を貯留するタンクと、循環流体をタンク及びチャンバーの間で循環させるポンプと、循環流体と冷却水との間で熱交換を行う熱交換器と、タンク内の循環流体を加熱する加熱手段と、を備えた循環冷却加熱装置が開示されている。同文献に開示された加熱手段は、シーズヒータから構成されている。このシーズヒータの発熱により循環流体が加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2015-59726号公報
【文献】特開2022-20088号公報
【文献】特開2014-127534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記した従来技術の加熱装置及び温度調整装置では、温度調整に要する時間を短縮して半導体製造装置等における生産プロセスの効率化を図ると共に、温度調整のためのエネルギー消費量を減らして省エネルギー化を図るために改善すべき点があった。
【0011】
具体的には、半導体製造等においては、加工プロセス、計測プロセス等に対応して製造装置等の制御対象の温度を変更する場合がある。例えば、制御対象の設定温度をマイナス40℃として温度制御していた工程から、設定温度を130℃に変更しなければならない場合もある。このような場合、従来技術の温度調整装置では、制御対象の温度を所定の設定温度に変更するために長時間を要する。このように制御対象の温度を変更するための時間は、製造工程におけるタイムロスとなる。
【0012】
即ち、従来技術の温度調整装置では、制御対象の設定温度を変更して温度を上昇させるために、シーズヒータ等の電熱ヒータから構成される加熱装置で循環液を長時間加熱する必要があった。加熱装置等で循環液を加熱して制御対象の温度を上昇させる工程は、制御対象の温度が安定した設定温度になるまで行われる。加熱装置等で循環液を加熱して制御対象の温度を上昇させる時間は、半導体製造装置等において加工プロセス、計測プロセス等を行うことができない待ち時間となっていた。
【0013】
また、従来技術のシーズヒータ等から構成される加熱装置は、加熱温度の変更に時間を要し、精密な温度調整が容易ではないという問題点があった。即ち、シーズヒータは、ニクロム線等からなる発熱体が絶縁体及び金属パイプで覆われた構成であり、発熱体の熱が直接的に加熱対象の循環液に伝達される構成ではない。そのため、発熱体の発熱量を調整してから循環液に熱を伝える金属パイプが所定の温度に加熱されるまでに時間を要し、制御対象の温度を正確な設定温度に調整するまでのタイムロスが生ずる。
【0014】
また、従来技術の温度調整装置は、循環液を冷凍サイクル回路の蒸発器で冷却した後、冷却された循環液をシーズヒータ等の加熱装置によって所定の温度まで加熱する構成である。そのため、循環液を加熱するために消費されるエネルギー、即ち加熱装置等で消費される電力量等、が大きくなってしまうという問題点があった。
【0015】
これに対して特許文献2には、蒸発潜熱を利用して第1循環系の第1冷媒を冷却する第2循環系の第2冷媒は、第2熱交換器において、凝縮潜熱を利用して第1冷媒を加熱することが開示されている。このように、制御対象に供給される循環液に相当する第1冷媒を、冷凍サイクルの冷媒である第2冷媒の凝縮潜熱を利用して加熱することにより、循環液の加熱に必要なシーズヒータ等のエネルギー消費量を削減することができる。
【0016】
しかしながら、特許文献2に開示された冷却装置のように、冷凍サイクル回路の凝縮器で凝縮する冷媒の凝縮潜熱を利用して循環液を加熱する方法では、循環液を高温に加熱することは難しい。そのため、冷媒の凝縮潜熱を利用して循環液を加熱しても、制御対象の設定温度が高く循環液を高温に加熱する必要がある場合には、シーズヒータ等の加熱装置による多くの加熱が必要であり、加熱装置の加熱量を大幅に減少できなかった。
【0017】
また、循環液の加熱に冷凍サイクル回路の凝縮器を利用する構成においても、制御対象の設定温度を変更して循環液の温度を大幅に上昇させる場合には、温度変更に時間を要し、加工工程、計測工程等を開始するまでのタイムロスが生じる。
【0018】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされた。本発明の目的は、循環液を効率良く高精度に加熱することができ、設定温度の変更時等において温度調整に要する時間を短縮して半導体製造等における生産性を向上させることができる加熱装置及びそれを用いた温度調整装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、半導体製造等におけるエネルギー消費量を減らして省エネルギー化を図ることができる温度調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の加熱装置は、制御対象の温度を調整する循環液を加熱する加熱装置であって、前記循環液が流れる管と、前記管の外周に巻かれて交番電流が流れる一次コイルと、前記管の前記一次コイルが巻かれた領域の内部に設けられた導電性の発熱体と、を具備し、前記一次コイルの交番電流による誘導加熱によって前記発熱体が発熱し前記発熱体で前記循環液を加熱し、前記発熱体は、絶縁部材で覆われた比透磁率が1以上の導線から形成されており、前記導線は、導電性の閉ループを構成するよう両端部が接続されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の加熱装置は、制御対象の温度を調整する循環液を加熱する加熱装置であって、前記循環液が流れる管と、前記管の外周に巻かれて交番電流が流れる一次コイルと、前記管の前記一次コイルが巻かれた領域の内部に設けられた導電性の発熱体と、を具備し、前記一次コイルの交番電流による誘導加熱によって前記発熱体が発熱し前記発熱体で前記循環液を加熱し、前記発熱体は、コイル状に巻かれた二次コイルであり、前記二次コイルは、コイル状に巻かれたコイル経路の両端部が接続されて導電性の閉回路を構成することを特徴とする。
【0021】
また、本発明の温度調整装置は、圧縮手段、放熱器、絞り手段及び蒸発器が順次接続され冷媒が循環する冷凍サイクル回路と、循環ポンプ及び加熱装置が設けられ制御対象の温度を調整する循環液が循環する循環液回路と、を具備し、前記循環液回路には、前記加熱装置の上流に、前記循環液が前記冷媒と熱交換可能に前記蒸発器を流れる開閉自在な低温経路が形成されており、前記加熱装置は、前記循環液が流れる管と、前記管の外周に巻かれて交番電流が流れる一次コイルと、前記管の前記一次コイルが巻かれた領域の内部に設けられた導電性の発熱体と、を備え、前記一次コイルの交番電流による誘導加熱によって前記発熱体が発熱し前記発熱体で前記循環液を加熱し、前記発熱体は、絶縁部材で覆われた比透磁率が1以上の導線から形成されており、前記導線は、導電性の閉ループを構成するよう両端部が接続されていることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の温度調整装置は、圧縮手段、放熱器、絞り手段及び蒸発器が順次接続され冷媒が循環する冷凍サイクル回路と、循環ポンプ及び加熱装置が設けられ制御対象の温度を調整する循環液が循環する循環液回路と、を具備し、前記循環液回路には、前記加熱装置の上流に、前記循環液が前記冷媒と熱交換可能に前記蒸発器を流れる開閉自在な低温経路が形成されており、前記加熱装置は、前記循環液が流れる管と、前記管の外周に巻かれて交番電流が流れる一次コイルと、前記管の前記一次コイルが巻かれた領域の内部に設けられた導電性の発熱体と、を備え、前記一次コイルの交番電流による誘導加熱によって前記発熱体が発熱し前記発熱体で前記循環液を加熱し、前記発熱体は、コイル状に巻かれた二次コイルであり、前記二次コイルは、コイル状に巻かれたコイル経路の両端部が接続されて導電性の閉回路を構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の加熱装置は、循環液が流れる導電性の管と、前記管の外周に巻かれて交番電流が流れる一次コイルと、を具備し、前記一次コイルの交番電流による誘導加熱によって前記管が発熱し前記管で前記循環液を加熱する。これにより、電磁誘導によって発熱する管の熱を直接的に循環液に伝達して、循環液を効率良く正確な温度に加熱することができる。よって、半導体製造装置等において、温度制御のための循環液の加熱に要する時間を短縮して、タイムロスの少ない高効率な加工プロセスを実行することが可能となる。
【0024】
また、本発明の加熱装置は、循環液が流れる管と、前記管の外周に巻かれて交番電流が流れる一次コイルと、前記管の前記一次コイルが巻かれた領域の内部に設けられた導電性の発熱体と、を具備し、前記一次コイルの交番電流による誘導加熱によって前記発熱体が発熱し前記発熱体で前記循環液を加熱しても良い。このような構成によって、発熱体の熱を直接的に循環液に伝達して、循環液を効率良く正確な温度に加熱することができる。よって、製造プロセスにおけるタイムロスを減らし半導体装置等の生産性を向上させることができる。また、発熱体から管外への直接的な放熱を減らし、放熱損失の少ない高効率な加熱を行うことができる。
【0025】
また、本発明の加熱装置では、前記発熱体は、絶縁部材で覆われた比透磁率が1以上の導線から形成され、前記導線は、導電性の閉ループを構成するよう両端部が接続されていても良い。これにより、高効率な電磁誘導によって導線に多くの誘導電流を流して導線を発熱させ、循環液を効率良く正確な温度に加熱することができる。また、発熱体近傍における循環液の流動抵抗を減らし、循環液を効率良く循環させることができる。
【0026】
また、本発明の加熱装置では、前記発熱体は、コイル状に巻かれた二次コイルであり、前記二次コイルは、コイル状に巻かれたコイル経路の両端部が接続されて導電性の閉回路を構成しても良い。これにより、二次コイルに誘導電流が好適に流れる高効率な誘導加熱が可能となる。また、発熱体近傍における循環液の流動抵抗を減らし、循環液の高効率な循環が実現する。
【0027】
また、本発明の加熱装置では、前記二次コイルは、前記管の上流側と下流側とで前記コイル経路の巻き径が異なるよう巻かれた箇所を有しても良い。これにより、二次コイルの周辺に循環液の好適な乱流を生じさせ、発熱体と循環液との熱交換を促進することができる。よって、二次コイルによる高効率な加熱により、循環液を短時間で効率良く正確な温度に調整することができる。
【0028】
また、本発明の加熱装置では、前記二次コイルは、鉄系材料、ニッケル合金系材料及びフェライト系ステンレス材料の少なくとも一つから形成されても良い。これにより、耐久性、安全性に優れた二次コイルが得られると共に、一次コイルによる交番磁界を高磁性の材料からなる二次コイルに集中させて二次コイルの誘導加熱の効率を高めることができる。よって、循環液を効率良く加熱することができる。
【0029】
また、本発明の加熱装置では、前記管は、オーステナイト系ステンレス材料から形成されても良い。これにより、耐食性、耐久性、安全性に優れた管が得られると共に、一次コイルの交番磁界を二次コイルに集中させて二次コイルの誘導加熱の効率を高めることができる。
【0030】
また、本発明の加熱装置では、前記管は、前記一次コイルが巻かれた領域に曲管部を有し前記一次コイルが巻かれた領域が円形状、楕円形状若しくはトラック形状に形成されても良い。これにより、一次コイルの交番電流によって発生する磁束を管の内部に集中させて管内の磁束密度を高め、二次コイルの誘導加熱の効率を高めることができる。
【0031】
また、本発明の温度調整装置は、圧縮手段、放熱器、絞り手段及び蒸発器が順次接続され冷媒が循環する冷凍サイクル回路と、循環ポンプ及び加熱装置が設けられ制御対象の温度を調整する循環液が循環する循環液回路と、を具備し、前記循環液回路には、前記加熱装置の上流に、前記循環液が前記冷媒と熱交換可能に前記蒸発器を流れる開閉自在な低温経路が形成されており、前記加熱装置は、前記循環液が流れる導電性の管と、前記管の外周に巻かれて交番電流が流れる一次コイルと、を備え、前記一次コイルの交番電流による誘導加熱によって前記管が発熱し前記管で前記循環液を加熱する。このような構成により、循環液回路を流れる循環液を冷凍サイクル回路で冷却し、冷却された循環液を加熱装置で効率良く正確な温度に加熱して、高精度な温度調整を行うことができる。
【0032】
また、本発明の温度調整装置は、圧縮手段、放熱器、絞り手段及び蒸発器が順次接続され冷媒が循環する冷凍サイクル回路と、循環ポンプ及び加熱装置が設けられ制御対象の温度を調整する循環液が循環する循環液回路と、を具備し、前記循環液回路には、前記加熱装置の上流に、前記循環液が前記冷媒と熱交換可能に前記蒸発器を流れる開閉自在な低温経路が形成されており、前記加熱装置は、前記循環液が流れる管と、前記管の外周に巻かれて交番電流が流れる一次コイルと、前記管の前記一次コイルが巻かれた領域の内部に設けられた導電性の発熱体と、を備え、前記一次コイルの交番電流による誘導加熱によって前記発熱体が発熱し前記発熱体で前記循環液を加熱しても良い。このような構成によって、冷凍サイクル回路で冷却された循環液を加熱装置で効率良く正確な温度に加熱することができ、好適な温度の循環液を制御対象に供給することができる。
【0033】
また、本発明の温度調整装置では、前記発熱体は、絶縁部材で覆われた比透磁率が1以上の導線から形成され、前記導線は、導電性の閉ループを構成するよう両端部が接続されていても良い。これにより、導線に効率良く誘導電流を流して循環液を効率良く正確な温度に加熱することができる。また、発熱体近傍における循環液の流動抵抗を減らし、循環液を効率良く循環させることができる。
【0034】
また、本発明の温度調整装置では、前記発熱体は、コイル状に巻かれた二次コイルであり、前記二次コイルは、コイル状に巻かれたコイル経路の両端部が接続されて導電性の閉回路を構成する。これにより加熱装置は、誘導電流が好適に流れる高効率な誘導加熱が可能となる。また、管内の発熱体近傍における循環液の流動抵抗を減らし、循環液を効率良く循環させることができる。
【0035】
また、本発明の温度調整装置では、前記二次コイルは、前記管の上流側と下流側とで前記コイル経路の巻き径が異なるよう巻かれた箇所があっても良い。これにより、二次コイルの周辺に循環液の好適な乱流を生じさせ、発熱体と循環永との熱交換を促進することができる。よって、二次コイルによる高効率な加熱により、循環液を短時間で効率良く正確な温度に精密調整することができる。
【0036】
また、本発明の温度調整装置では、前記管は、前記一次コイルが巻かれた領域に曲管部を有し前記一次コイルが巻かれた領域が円形状、楕円形状若しくはトラック形状に形成されても良い。これにより、一次コイルの交番電流によって発生する磁束を管の内部に集中させて管内の磁束密度を高め、二次コイルの誘導加熱の効率を高めることができる。
【0037】
また、本発明の温度調整装置では、前記循環液回路には、前記加熱装置の上流に、前記循環液が前記冷媒と熱交換可能に前記放熱器を流れる開閉自在な高温経路が形成されており、前記冷媒は、二酸化炭素であり、前記放熱器において超臨界圧力で前記循環液を加熱し、前記高温経路には、前記放熱器で前記冷媒に加熱された前記循環液を貯留する高温タンクが設けられていても良い。このような構成により、温度調整装置は、冷凍サイクル回路で発生する冷熱及び温熱の双方を利用して、排熱損失の少ない高効率な温度調整を行うことができる。
【0038】
具体的には、制御対象から戻る循環液の温度が低く、循環液を大きく温度上昇させる必要がある場合には、循環液が高温経路を流れるよう循環液回路の高温経路が開かれる。これにより温度調整装置は、冷凍サイクル回路の放熱器を流れる冷媒の放熱を利用して循環液を加熱することができる。そして、冷凍サイクル回路の放熱器で加熱された循環液は、循環液回路の加熱装置によって所定の温度に加熱され、制御対象が正確な設定温度になるよう好適な温度で制御対象に供給される。このように、冷凍サイクル回路の放熱器による放熱を利用して循環液を加熱することができるので、循環液回路の加熱装置で消費されるエネルギーを少なく抑えて、高効率な温度調整を行うことができる。
【0039】
また、冷凍サイクル回路の冷媒は、二酸化炭素であり、放熱器において超臨界圧力で循環液を加熱するので、循環液を効率良く高温度に加熱することができる。
具体的には、HFC(ハイドロフルオロカーボン)系冷媒、HFO(ハイドロフルオロオレフィン)系冷媒またはこれらの混合冷媒を利用した従来技術のチラー等の凝縮器では不可能であった高温域まで、冷凍サイクル回路の放熱器で循環液を加熱することができる。そのため、加工工程等の変更のために設定温度を例えば130℃の高温に変更するような場合等においても、循環液の温度を短時間で高温度に上昇させることができる。よって、温度調整で生ずるタイムロスを減らし、半導体装置等の生産性を向上させることができる。また、循環液回路の加熱装置による加熱量を少なくできるので、加熱装置によるエネルギー消費を削減し、省エネルギー化を図ることができる。
【0040】
また、高温経路には、放熱器で冷媒に加熱された循環液を貯留する高温タンクが設けられている。これにより、例えば、加工工程等の変更により制御対象の設定温度を変更して循環液の温度を大幅に上昇させる場合、高温タンクに貯留された高温の循環液を循環液回路に供給し、循環液回路を循環する循環液の温度を短時間で急速に所定の温度まで上昇させることができる。よって、設定温度の変更に要する時間を大幅に短縮して、加工工程、計測工程等を開始するまでの温度変更に伴うタイムロスを減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る温度調整装置を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る温度調整装置の加熱装置を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る温度調整装置の加熱装置の他の例を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る温度調整装置の加熱装置の他の例を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る温度調整装置の加熱装置の他の例を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る温度調整装置の加熱装置の他の例を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る温度調整装置の制御系統を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る温度調整装置の循環液の流れ経路を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る温度調整装置の循環液の流れ経路を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態に係る温度調整装置の循環液の流れ経路を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態に係る温度調整装置の循環液の流れ経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を適宜参照しながら本発明の実施形態に係る温度調整装置1を詳細に説明する。なお、図示された態様は本発明を限定するものではなく、あくまでも本発明の実施形態の一例を示したものである。
【0043】
図1は、本発明の実施形態に係る温度調整装置1の概略構成を示す図である。
図1を参照して、温度調整装置1は、半導体製造装置等の各種製造装置、または、半導体製造プロセス等で使用される各種計測装置等、の制御対象46を、プロセスに応じた所定の温度に調整するために用いられる装置である。
【0044】
温度調整装置1は、蒸気圧縮式冷凍サイクルを構成して冷媒で循環液を冷却または加熱する冷凍サイクル回路10と、冷凍サイクル回路10で冷却または加熱された循環液を制御対象46に送るよう循環させて制御対象46の温度を調整する循環液回路20と、を備えている。
【0045】
循環液回路20を循環する循環液は、例えば、水を含む。循環液は、冷凍サイクル回路10の冷媒によって冷却または加熱され、循環液回路20の加熱装置26によって好適な温度に加熱されて半導体製造装置等の制御対象46に供給される。これにより、制御対象46は、好適な温度に調整された循環液によって冷却または加熱され、各製造プロセス、計測プロセス等に適合する好適な温度になるよう制御される。
【0046】
先ず、冷凍サイクル回路10の構成について詳細に説明する。冷凍サイクル回路10は、圧縮手段としての圧縮機11、放熱器12、第2の放熱器13、絞り手段としての膨張弁14、及び蒸発器15が冷媒配管17を介して順次接続され形成されている。冷凍サイクル回路10は、冷媒が循環して蒸気圧縮式冷凍サイクルの運転が行われる閉回路を構成する。
【0047】
圧縮機11は、冷媒を圧縮して放熱器12に送る圧縮手段である。圧縮機11としては、ロータリー式、スクロール式、レシプロ式、スクリュー式その他各種形式の圧縮装置を採用することができる。
【0048】
特にロータリー式の圧縮機11は、冷却能力の小さいコンパクトな温度調整装置1を構成する際に好適である。また、圧縮機11は、2段圧縮式でも良い。圧縮機11として2段圧縮式を採用することは、高圧になる二酸化炭素冷媒の圧縮に適している。
【0049】
放熱器12は、圧縮機11で圧縮され高圧高温になった冷媒と、循環液回路20の循環液と、の熱交換が行われる熱交換器である。放熱器12は、例えばガスクーラである。なお、放熱器12は、冷媒が凝縮する凝縮器でも良い。放熱器12は、例えば、循環液が貯留される高温タンク39の内部に設けられ、図示を省略するが、冷媒が流れる複数のチューブを有する。チューブは、例えば鋼管等である。
【0050】
具体的には、放熱器12のチューブは、冷媒が上から下に流れるよう、入口が上方で出口が下方にあり、例えば略螺旋状の形態に巻かれ、高温タンク39の内部に設けられている。このような構成により、放熱器12を流れる冷媒は、高温タンク39内の循環液を効率良く加熱することができる。
【0051】
例えば、高温タンク39内の循環液が制御対象46に供給されていない場合、即ち、高温タンク39が設けられた循環液回路20の高温経路38に循環液が流れていない場合であっても、放熱器12を流れる冷媒で高温タンク39内の循環液を加熱することができる。
【0052】
つまり、このような構成によれば、放熱器12で循環液を加熱するために、循環液回路20の高温経路38に循環液を流す循環ポンプ等を設けることなく、高温タンク39に貯留されている循環液を放熱器12で高温に加熱することができる。
【0053】
よって、冷凍サイクル回路10が蒸発器15の蒸発潜熱を利用して循環液を冷却する運転を行っているとき、高温経路38に循環液を循環させることなく、放熱器12からの排熱を有効に利用して高温タンク39内の循環液を高温に加熱することができる。
【0054】
なお、放熱器12は、冷媒が循環液と熱交換できる構成であれば、高温タンク39の外部に設けられても良い。例えば、放熱器12として、プレート式、シェルアンドチューブ式、二重管式その他各種形式の熱交換器が採用されても良い。
【0055】
第2の放熱器13は、冷媒の熱を外部に放出する熱交換器であり、放熱器12の下流に設けられている。第2の放熱器13は、例えば、冷媒と熱交換する空気が送風ファン16によって送られる空冷式の熱交換器である。例えば第2の放熱器13は、図示を省略するが、フィンアンドチューブ式の熱交換器でも良い。即ち、第2の放熱器13は、冷媒が流れる複数の銅管等のチューブと、それぞれ平行に設けられた複数のアルミニウム製のフィンと、を有し、チューブは、フィンに形成された孔に挿入されている。
【0056】
なお、第2の放熱器13は、水冷式の熱交換器であっても良い。また、第2の放熱器13としては、プレート式、シェルアンドチューブ式、二重管式その他各種形式の熱交換器を採用することができる。特にプレート式の熱交換器は、熱交換効率が高く第2の放熱器13をコンパクトにできるので好ましい。
【0057】
第2の放熱器13は、放熱器12の下流に設けられているので、放熱器12で循環液を加熱して温度が低下した冷媒を更に低温に冷却することができる。また、高温タンク39内の循環液が高温になり、放熱器12を流れる冷媒で循環液を加熱する必要がない場合においても、放熱器12を通過した高温の冷媒を、第2の放熱器13における放熱によって低温にすることができる。これにより、高温タンク39内が高温の循環液で満たされた状態においても、冷凍サイクル回路10の冷却能力、即ち蒸発器15における冷媒の蒸発潜熱を利用して循環液を冷却する能力、が発揮される。
【0058】
膨張弁14は、放熱器12及び第2の放熱器13を通過して低温になった高圧の冷媒を減圧する絞り手段である。また、膨張弁14は、冷媒の流れを調整する機能を有する。膨張弁14としては、電子膨張弁、温度自動膨張弁、キャピラリーチューブその他各種形式の絞り手段を採用することができる。膨張弁14として電子膨張弁を採用することにより、冷凍サイクル回路10による循環液の冷却及び加熱を高性能に制御することができる。
【0059】
蒸発器15は、低圧の液冷媒が蒸発し、その蒸発潜熱によって循環液を冷却する熱交換器である。蒸発器15としては、プレート式、二重管式、チューブ接触式、シェルアンドチューブ式その他各種形式の熱交換器を採用することができる。
【0060】
特にプレート式の熱交換器は、熱交換効率が高く蒸発器15をコンパクトにできるので好ましい。また、二重管式及びチューブ接触式は、製造加工が容易で、好適な耐圧強度が容易に得られる点で優れている。
【0061】
蒸発器15の下流の冷媒配管17は、図示しないアキュームレータを介して圧縮機11に接続されている。以上の構成により、圧縮機11、放熱器12、第2の放熱器13、膨張弁14及び蒸発器15が順次接続された冷凍サイクル回路10の閉回路が形成されている。
【0062】
冷凍サイクル回路10で使用される冷媒は、例えば二酸化炭素である。そして、二酸化炭素の冷媒は、ガスクーラとしての放熱器12において、超臨界圧力で循環液を加熱する。これにより、循環液を効率良く高温度に加熱することができる。
【0063】
具体的には、HFC系冷媒、HFO系冷媒またはこれらの混合冷媒を利用した従来技術のチラー等の凝縮器では不可能であった高温域まで、冷凍サイクル回路10の放熱器12で循環液を加熱することができる。
【0064】
例えば、温度調整装置1は、加工工程等の変更のために設定温度を130℃の高温に変更する場合等においても、循環液の温度を短時間で高温度に上昇させることができる。よって、温度調整装置1は、温度調整で生ずるタイムロスを減らし、半導体装置等の生産性を向上させることができる。また、循環液回路20の加熱装置26による加熱量を少なくできるので、加熱装置26によるエネルギー消費量を削減し、半導体製造等の省エネルギー化を図ることができる。
なお、温度調整装置1は、冷凍サイクル回路10の冷媒として、HFC系冷媒、HFO系冷媒または混合冷媒等が利用されても良い。
【0065】
また、冷凍サイクル回路10には、冷媒の温度を計測する冷媒温度センサ18、冷媒の圧力を計測する圧力センサ19等、が設けられている。制御装置43(
図7参照)は、制御対象46の設定温度、計測温度情報の他、冷媒温度センサ18で計測された冷媒の温度、圧力センサ19で計測された冷媒の圧力等に基づいて、圧縮機11の回転数及び膨張弁14の開度を制御する。
【0066】
次に、循環液回路20について詳細に説明する。循環液回路20は、制御対象46を冷却、加熱する循環液が循環する閉回路を構成する。具体的には、循環液回路20は、制御対象46に接続され循環液を循環させる複数の回路モジュール21と、回路モジュール21が接続され循環液が冷媒と熱交換可能に蒸発器15を流れる低温経路31と、回路モジュール21が接続され循環液が冷媒と熱交換可能に放熱器12を流れる高温経路38と、を有する。
【0067】
回路モジュール21は、制御対象46に循環液を供給して制御対象46の温度を調整する装置である。それぞれの回路モジュール21には、循環液を循環させる基本的な閉回路となる基本循環経路22が形成されている。詳しくは、回路モジュール21には、半導体製造装置等の制御対象46に循環液を供給する送り経路23と、制御対象46を冷却、加熱した循環液が戻される戻り経路24と、が接続された閉回路である基本循環経路22が形成されている。
【0068】
それぞれの回路モジュール21の送り経路23には、循環液を制御対象46に送る循環ポンプ25と、制御対象46に供給される循環液を加熱して温度を調整する加熱装置26と、加熱装置26で加熱された循環液の温度を計測する温度センサ27と、が設けられている。
【0069】
加熱装置26は、循環液を加熱する誘導加熱式の加熱手段である。加熱装置26の詳細については、後述する。加熱装置26には、誘導加熱電源48が接続されている。
誘導加熱電源48は、加熱装置26に電力を供給する電源装置である。誘導加熱電源48からの電力によって加熱装置26に交番電流が流れ、その交番電流による誘導加熱によって循環液が加熱される。
【0070】
温度センサ27は、加熱装置26の下流の送り経路23に設けられ、加熱装置26で加熱された循環液の温度を計測する。循環ポンプ25、加熱装置26及び温度センサ27は、制御装置43に接続されている。制御装置43は、温度センサ27で計測された循環液の温度が所定の温度になるよう循環ポンプ25及び加熱装置26を制御する。これにより制御対象46の温度が設定温度になるよう制御される。具体的には、制御装置43によって誘導加熱電源48の出力、即ち加熱装置26に供給される電力、が制御され、加熱装置26による循環液の加熱が制御されている。
【0071】
また、各回路モジュール21の基本循環経路22には、送り経路23を開閉する電磁弁28が設けられている。これにより、その回路モジュール21に接続された制御対象46について温度制御が不要である場合には、電磁弁28を閉じて循環液の流れを止めることができる。
【0072】
低温経路31は、冷凍サイクル回路10によって循環液を冷却するための経路である。低温経路31は、基本循環経路22に循環液のバイパス経路を形成するよう、入口側が回路モジュール21の戻り経路24側に接続され、出口側が回路モジュール21の送り経路23側に接続されている。
【0073】
即ち、回路モジュール21の基本循環経路22を循環する循環液は、低温経路31の入口となる分岐点において、低温経路31に流入可能である。また、循環液は、低温経路31に流入せず送り経路23側に流れることも可能である。
【0074】
低温経路31の出口と、基本循環経路22と、の合流点には、混合弁30が設けられている。混合弁30は、回路モジュール21の送り経路23を経由して制御対象46に供給される循環液に対して、低温経路31を通過した循環液を混合する弁である。即ち、低温経路31は、混合弁30によって開閉自在且つ流量調整自在である。
【0075】
混合弁30の調整により、制御対象46から戻ってきた循環液に、冷凍サイクル回路10の蒸発器15で冷媒の蒸発によって冷却された循環液を混合して好適な温度とする運転を行うことができる。
【0076】
また、混合弁30の調整により、蒸発器15で冷却された循環液を制御対象46に供給しない運転を行うことも可能である。即ち、制御対象46から戻ってきた循環液のみ、または、放熱器12で加熱された循環液のみ、を送り経路23に送り、加熱装置26で加熱して制御対象46に供給して循環させる温度調整運転を行うこともできる。
【0077】
また、低温経路31には、循環液を貯留する低温タンク32と、循環液を送る低温ポンプ33と、循環液を制御対象46に送らずに低温経路31の入口側に戻す低温循環経路34と、が設けられている。
【0078】
具体的には、例えば、低温経路31の入口側に低温タンク32が設けられ、低温タンク32の下流に低温ポンプ33が設けられ、低温ポンプ33の下流に蒸発器15が設けられている。そして、低温循環経路34は、低温経路31の蒸発器15の下流に設けられた系統分岐管36と、低温経路31の入口側に設けられた低温タンク32と、を接続するよう設けられても良い。
【0079】
低温タンク32には、低温タンク32内の循環液の温度を計測する低温センサ37が設けられている。低温ポンプ33及び低温センサ37は、制御装置43に接続されている。制御装置43は、低温センサ37で計測された循環液の温度情報を演算に利用して、循環ポンプ25及び低温ポンプ33の運転並びに混合弁30の開度調整等を制御しても良い。
【0080】
上述の如く低温経路31には、低温タンク32と、循環液を送る低温ポンプ33と、循環液を低温経路31の出口側から入口側に戻す低温循環経路34と、が設けられている。そのため、低温経路31の循環液を制御対象46に供給する循環液として利用していない場合であっても、低温経路31の循環液を循環させて、蒸発器15を流れる冷媒で冷却することができる。
【0081】
そして、冷媒に冷却された循環液を低温タンク32に貯留し、貯留された低温の循環液を必要に応じて循環液回路20に供給することができる。例えば、加工工程等の変更により制御対象46の設定温度を変更して循環液の温度を大幅に低下させる場合、低温タンク32に貯留された低温の循環液を循環液回路20に供給することができる。
【0082】
これにより、循環液回路20を循環する循環液の温度を短時間で急速に所定の温度まで低下させることができる。よって、設定温度の変更に要する時間を大幅に短縮して、加工工程、計測工程等を開始するまでの温度変更に伴うタイムロスを減らすことができる。
【0083】
また、前述のとおり、低温経路31には、低温タンク32、低温ポンプ33及び低温循環経路34が設けられている。よって、低温経路31の循環液を制御対象46に供給していない場合であっても、冷凍サイクル回路10を運転して、放熱器12の冷媒で高温経路38の循環液を加熱することができる。
【0084】
高温経路38は、冷凍サイクル回路10によって循環液を加熱するための経路である。高温経路38は、基本循環経路22に循環液のバイパス経路を形成するよう、入口側が回路モジュール21の戻り経路24側に接続され、出口側が回路モジュール21の送り経路23側に接続されている。
【0085】
具体的には、循環液回路20の基本循環経路22には、低温経路31への分岐点よりも上流に三方弁29が設けられている。三方弁29は、制御対象46から戻る循環液を高温経路38に送るか否かを切り替える弁である。即ち、高温経路38は、三方弁29によって開閉自在且つ流量調整自在である。
【0086】
詳しくは、高温経路38の入口は、三方弁29に接続されている。高温経路38の出口は、基本循環経路22の三方弁29よりも下流であって低温経路31への分岐点よりも上流に接続されている。
【0087】
このような構成により、三方弁29を切り替えることにより、冷凍サイクル回路10の放熱器12で加熱された循環液を制御対象46に供給する運転と、供給しない運転と、を切り替えて実行することができる。
【0088】
高温経路38には、高温に加熱された循環液を貯留する高温タンク39と、高温タンク39内の循環液の温度を計測する高温センサ42と、が設けられている。そして、高温タンク39の内部には、冷凍サイクル回路10の放熱器12が、冷媒によって循環液を加熱することができるように設けられている。
【0089】
高温タンク39は、循環液の入口が下部に形成され、循環液の出口が上部に形成されている。これにより、高温タンク39内に貯留された高温の循環液を効率良く制御対象46に供給することができる。
【0090】
即ち、制御対象46から戻る低温の循環液は、三方弁29を介して高温経路38に流入し、高温タンク39の下部に形成された入口から高温タンク39の内部に流れ込む。そして、高温タンク39に貯留されていた高温の循環液は、高温タンク39の上部に形成された出口から基本循環経路22に送られ、制御対象46に供給される。
【0091】
このように温度調整装置1は、高温タンク39を備え、高温タンク39に貯留された高温の循環液を基本循環経路22に送ることができる。よって、例えば、加工工程等の変更により制御対象46の設定温度を変更して循環液の温度を大幅に上昇させる場合に高効率な温度変更が可能となる。
【0092】
即ち、高温タンク39に貯留された高温の循環液を循環液回路20に供給し、循環液回路20を循環する循環液の温度を短時間で急速に所定の温度まで上昇させることができる。よって、温度調整装置1は、設定温度の変更に要する時間を大幅に短縮して、加工工程、計測工程等を開始するまでの温度変更に伴うタイムロスを減らすことができる。
【0093】
なお、制御装置43は、三方弁29の開閉制御を行う演算に、高温センサ42で計測された高温タンク39内の循環液の温度情報を利用しても良い。これにより、高温タンク39に貯留されている高温の循環液の量に応じて、高温経路38の流れを制御することができる。よって、高温タンク39に貯留された高温の循環液が不足している場合に温度の低い循環液が基本循環経路22に送られて温度変更にタイムロスが生ずることを抑制することができる。
【0094】
また、低温経路31及び高温経路38には、複数の回路モジュール21を接続する系統合流管35、40及び系統分岐管36、41が設けられている。具体的には、低温経路31には、入口側に系統合流管35、出口側に系統分岐管36が設けられている。高温経路38には、入口側に系統合流管40、出口側に系統分岐管41が設けられている。
【0095】
これにより、系統合流管35、40及び系統分岐管36、41を介して、複数の回路モジュール21、例えば、2から8個またはそれ以上の回路モジュール21を、低温経路31及び高温経路38に接続することができる。
【0096】
複数の回路モジュール21は、それぞれが循環ポンプ25及び加熱装置26を有し、それぞれ別の制御対象46に循環液を循環させることができる。これにより、1つの冷凍サイクル回路10を利用して、複数の加工箇所、計測箇所等の制御対象46を高効率に冷却、加熱して、それぞれの制御対象46を好適な温度に調整することができる。
【0097】
図2は、加熱装置26の概略構成を示す図であり、管55の断面を示している。なお、
図2において、矢印は循環液の流れ方向を示している。
図2を参照して、加熱装置26は、循環液が流れる管55と、管55の外周に巻かれた一次コイル50と、を有する。
管55は、基本循環経路22(
図1参照)の送り経路23(
図1参照)に設けられており、循環液が流れる流路となる。
【0098】
一次コイル50は、交番電流によって交番磁界を発生させるものであり、絶縁材料で被覆された導線等から形成され、管55の外周に略螺旋状に巻かれている。即ち、一次コイル50は、管55の外周にコイル形状の導電経路を構成し、両端部が誘導加熱電源48(
図1参照)に接続されている。
【0099】
ここで、管55は、例えば、導電性の材料から形成されている。これにより、管55は、一次コイル50の交番電流による誘導加熱によって発熱し、管55内を流れる循環液を加熱することができる。
【0100】
即ち、一次コイル50を流れる交番電流によって磁界が発生し、この磁界を打ち消すように管55に渦電流が流れる。そして、管55には電気抵抗があるため管55を流れる渦電流によってジュール熱が発生し、管55内を流れる循環液を加熱することができる。
【0101】
このように、電磁誘導によって発熱する管55の熱を直接的に循環液に伝達して、循環液を効率良く正確な温度に加熱することができる。よって、半導体製造装置等において、温度制御のための循環液の加熱に要する時間を短縮して、タイムロスの少ない高効率な加工プロセスを実行することが可能となる。
【0102】
図3は、加熱装置26の他の例を示す図であり、管55の断面を示している。なお、
図3において、矢印は循環液の流れ方向を示している。
図3に示すように、管55の内部には、一次コイル50が巻かれた領域の内部に、導電性の材料からなる発熱体51としての発熱管52が設けられても良い。
【0103】
例えば、発熱管52は、管55と略同軸に設けられる略筒状の部材である。即ち、管55と、その内部に設けられる略筒状の発熱管52とで、略二重管状の形状が形成されている。このような発熱管52が設けられることにより、一次コイル50の交番電流による誘導加熱によって発熱管52が発熱し、高温の発熱管52で循環液を直接的に加熱することができる。
【0104】
なお、管55の内部に設けられる発熱管52は、銅、鉄、ステンレスその他金属等、導電性の材料から形成された部材であれば良い。好ましくは、発熱管52を形成する材料は、比誘導率が1以上の鉄系材料、ニッケル合金系材料、フェライト系ステンレス材料等が良い。これにより高効率な誘導加熱が行われる。また、発熱管52の形状は、筒状に限定されるものではない。
【0105】
また、発熱管52を構成する材料としては、例えば、パンチングメタル等のように、貫通孔が形成されている金属板等が使用されても良い。これにより、発熱管52に形成された孔を循環液が通過する流路として利用することができる。このような形態の発熱管52によって、循環液の流動抵抗が小さく、循環液を効率良く加熱することができる発熱体51が得られる。
【0106】
図4は、加熱装置26の更に他の例を示す図であり、管55の断面を示している。なお、
図4において、矢印は循環液の流れ方向を示している。
図4に示すように、管55の内部に設けられる発熱体51は、導線から形成された閉ループ状の形態をなす発熱ループ53でも良い。
【0107】
具体的には、発熱ループ53を形成する導線は、導電性の閉回路を構成するように、両端部が接続されている。このような形態により、発熱体51に誘導電流が効率良く流れ、発熱体51の誘導加熱の効率を高めることができる。また、発熱体51近傍における循環液の流動抵抗を減らし、循環液を効率良く循環させることができる。
【0108】
また、発熱ループ53は、比透磁率が1以上の鉄線、ニッケル合金線、フェライト系ステンレス線等の導線から形成されても良い。このような強磁性体からなる導線が用いられることにより、発熱体51に磁束を集めて高効率な誘導加熱を行うことが可能となる。また、鉄線は、発熱ループ53の製造コストを安く抑えることができるので、発熱ループ53の生産性の観点からも好適である。
【0109】
また、発熱ループ53を形成する導線は、例えば、エナメル、ガラスチューブ、樹脂材料等に覆われている。即ち、導線は、樹脂材料等によってコーティング若しくは被覆されている。これにより、誘導電流が導線の外部に漏れることが抑制され、安全で高効率な誘導加熱が行われる。
【0110】
図5は、加熱装置26の更に他の例を示す図であり、管55の断面を示している。なお、
図5において、矢印は循環液の流れ方向を示している。
図5に示すように、管55の内部には、発熱体51として、導電性材料からなる二次コイル54が設けられても良い。具体的には、二次コイル54は、導電性の線材等がコイル状に巻かれた部材である。
【0111】
このような構成によって、一次コイル50の交番電流による誘導加熱によって発熱体51である二次コイル54が発熱し、高温になった二次コイル54の熱を直接的に循環液に伝達して、循環液を効率良く正確な温度に加熱することができる。よって、製造プロセスにおけるタイムロスを減らし半導体装置等の生産性を向上させることができる。
【0112】
なお、発熱管52(
図3参照)、発熱ループ53(
図4参照)及び二次コイル54等の発熱体51は、例えば、絶縁性の図示しない支持部材によって管55の内周に固定されている。即ち、二次コイル54等の発熱体51は、交番電流が流れる一次コイル50に対して非接触であり、循環液が流れる管55内に設けられている。よって、発熱体51である二次コイル54等から管55外への直接的な放熱を減らし、放熱損失の少ない高効率な加熱を行うことができる。
【0113】
また、加熱装置26は、二次コイル54等の発熱体51が、誘導加熱電源48(
図1参照)が接続され交流電力が供給される一次コイル50に対して非接触に設けられる構成であるので、漏電、電気配線損傷等に対する安全性、信頼性の観点からも優れている。
また、このようにコイル状に巻かれた発熱体51を採用することにより、発熱体51における循環液の流動抵抗を減らし、循環液の高効率な循環が可能となる。
【0114】
また、発熱体51としての二次コイル54は、コイル状に巻かれたコイル経路の両端部が接続されて導電性の閉回路を構成している。これにより、誘導電流が好適に流れる高効率な誘導加熱が可能となる。
【0115】
また、二次コイル54は、管55の上流側と下流側とでコイル経路の巻き径が異なるよう巻かれた箇所を有しても良い。具体的には、二次コイル54には、コイル経路の巻き径が大きい大径巻き部と、コイル経路の巻き径が小さい小径巻き部と、が形成されていても良い。
【0116】
このように巻き径が異なる大径巻き部、小径巻き部等が形成されることにより、二次コイル54の周辺に循環液の好適な乱流を生じさせ、発熱体51と循環液との熱交換を促進することができる。よって、二次コイル54による高効率な加熱により、循環液を短時間で効率良く正確な温度に調整することができる。
【0117】
詳しくは、二次コイル54は、コイルの巻き径が徐々に小さくなるよう略円錐状若しくは略カップ状に巻かれていても良い。このような形態により、管55内を流れる循環液が発熱体51としての二次コイル54から離れた位置を通過することが抑制され、循環液は、二次コイル54の発熱部に接近して二次コイル54を通過することになる。
【0118】
即ち、循環液が二次コイル54に加熱されずに低温のまま二次コイル54を通過することが抑えられ、二次コイル54を通過する循環液は、二次コイル54に接近して好適に加熱されるようになる。よって、二次コイル54によって、循環液を効率良く正確な温度に加熱できるようになる。
【0119】
なお、略円錐螺旋状に巻かれた二次コイル54は、
図5に示す如く巻き径が小さい小径巻き部が循環液の流れの上流側に、巻き径が大きい大径巻き部が下流側に、なるよう設けられても良い。また、その逆に、二次コイル54は、図示を省略するが、巻き径が大きい大径巻き部が管55の上流側に、巻き径が小さい小径巻き部が下流側に、なるよう設けられても良い。
【0120】
また、二次コイル54は、前述の発熱ループ53と同様に比透磁率が1以上、好ましくは1よりもはるかに大きい強磁性体の材料から形成されても良い。例えば、二次コイル54は、フェライト系ステンレス材料、鉄系材料、ニッケル合金系材料等の少なくとも一つから形成されても良い。
【0121】
フェライト系ステンレス材料は、耐食性、耐久性、安全性に優れた二次コイル54が得られると共に、一次コイル50による交番磁界を高磁性の材料からなる二次コイル54に集中させて二次コイル54の誘導加熱の効率を高めることができる。よって、循環液を効率良く加熱することができる。また、鉄系材料は、誘導加熱の高効率化を図ることができることに加えて、二次コイル54の生産コストを削減できるという利点もある。また、二次コイル54は、前述の発熱ループ53と同様に、絶縁部材で覆われていても良い。
【0122】
また、管55は、非磁性の材料である、例えば、オーステナイト系ステンレス材料から形成されても良い。これにより、耐食性、耐久性、安全性に優れた管55が得られると共に、一次コイル50の交番磁界を二次コイル54に集中させて二次コイル54の誘導加熱の効率を高めることができる。
【0123】
図6は、加熱装置26の概略構成を示す図であり、管55及び一次コイル50の概略形態の一例を示している。
図6に示すように、加熱装置26を構成する管55は、一次コイル50が巻かれた領域に曲管部56を有し、一次コイル50が巻かれた領域が略円形状、略楕円形状若しくは略トラック形状に形成されても良い。これにより、一次コイル50の交番電流によって発生する磁束を管55の内部に集中させて管55内の磁束密度を高めることができる。
【0124】
即ち、管55に曲管部56が形成されることにより、管55の一次コイル50が巻かれた領域の一方の端部と、他方の端部と、が接近した状態となる。これにより、管55の外部に発生する磁束は、接近している一方の端部近傍と、他方の端部近傍と、をつなぐように近距離で発生する。よって、管55の外周に沿った磁束を少なくして管55の内部に交番磁束を集中させることができる。そして、発熱管52(
図3参照)、発熱ループ53(
図4参照)及び二次コイル54(
図5参照)等の発熱体51に発生する渦電流を増やして誘導加熱の効率を高めることができる。
【0125】
図7は、温度調整装置1の制御系統を示すブロック図である。
図7に示すように、温度調整装置1は、各構成機器を制御する制御装置43を備えている。制御装置43は、マイクロプロセッサを備えた制御手段であり、所定の演算を実行して制御対象46(
図1参照)の温度を制御する。
【0126】
制御装置43の入力には、冷媒の温度を検出する冷媒温度センサ18、冷媒の圧力を検出する圧力センサ19、制御対象46に供給される循環液の温度を検出する温度センサ27、低温経路31の循環液の温度を検出する低温センサ37、高温経路38の循環液の温度を検出する高温センサ42、制御対象46の温度を検出する温度センサ47等のセンサ類が接続されている。
【0127】
制御装置43の出力には、冷凍サイクル回路10の圧縮機11、膨張弁14及び送風ファン16、並びに循環液回路20の循環ポンプ25、加熱装置26、電磁弁28、三方弁29、混合弁30及び低温ポンプ33等が接続されている。
【0128】
また、制御装置43には、制御対象46の設定温度その他の運転情報を入力する入力装置44、各部の温度情報その他の制御情報を表示する表示装置45が設けられている。
なお、制御装置43には、その他の図示しないセンサ類、情報入力機器、表示装置、制御対象機器、記録装置等が接続されても良い。
【0129】
制御装置43は、冷媒温度センサ18、圧力センサ19、温度センサ27、低温センサ37、高温センサ42、温度センサ47及び入力装置44等の入力に基づき所定の演算を実行し、圧縮機11、膨張弁14、送風ファン16、循環ポンプ25、加熱装置26、電磁弁28、三方弁29、混合弁30及び低温ポンプ33等を制御する。
【0130】
次に、
図8から
図11を参照して、温度調整装置1による温度調整方法について詳細に説明する。
図8は、循環液の流れ経路を示す図であり、冷凍サイクル回路10で冷却または加熱された循環液を利用しない例を示している。なお、
図8から
図11において、循環液が流れる経路を太線で示し、循環液の流れ方向を矢印で示している。
【0131】
図8に示すように、三方弁29で高温経路38を閉じ、混合弁30で低温経路31を閉じることにより、蒸発器15で冷却された循環液及び放熱器12で加熱された循環液を制御対象46に供給しないこともできる。即ち、循環液は、低温経路31及び高温経路38を経由せず、基本循環経路22を循環する。このように、低温経路31若しくは高温経路38を流れる循環液を送り経路23に送らず、制御対象46から戻ってきた循環液のみを直接的に送り経路23に送り、加熱装置26で加熱し制御対象46に送って循環させる温度調整運転を行うこともできる。
【0132】
図9は、冷凍サイクル回路10で冷却された循環液を利用して温度調整運転を行う場合の循環液の流れ経路を示す図である。
図9に示すように、制御対象46の冷却が必要な場合には、制御装置43(
図7参照)によって混合弁30が制御され循環液が低温経路31を流れるように循環液回路20の低温経路31が開かれる。
【0133】
そうすると、制御対象46から戻った循環液の一部は、低温経路31を流れ、冷凍サイクル回路10の蒸発器15で蒸発する冷媒の潜熱を利用して冷却される。そして、冷凍サイクル回路10で冷却された循環液は、低温経路31を流れなかった基本循環経路22の循環液と合流し、加熱装置26によって所定の温度に加熱され、制御対象46が設定温度になるよう好適な温度で制御対象46に供給される。
【0134】
図10は、冷凍サイクル回路10で冷却された循環液を利用する他の例を示す図である。
図10に示すように、混合弁30は、低温経路31を100%開くよう制御されても良い。即ち、制御対象46から戻る循環液は、直接的には混合弁30を通過せず、全てが低温経路31を経由する。そして、冷凍サイクル回路10で冷媒に冷却された循環液のみが混合弁30通過して送り経路23に送られる。
【0135】
このような流れ経路により、冷凍サイクル回路10で低温に冷却され低温タンク32に貯留されている大量の循環液を循環液回路20に送り、制御対象46に供給される循環液の温度を急速に低下させることができる。よって、設定温度を変更する工程等におけるタイムロスを減らすことができ、半導体装置等の生産性を向上させることができる。
【0136】
図11は、冷凍サイクル回路10で加熱された循環液を利用して温度調整運転を行う場合の循環液の流れ経路を示す図である。
図11を参照して、制御対象46から戻る循環液の温度が低く、循環液を大きく温度上昇させる必要がある場合には、制御装置43(
図7参照)によって三方弁29が制御され循環液回路20の高温経路38が開かれる。これにより制御対象46から戻る循環液は、高温経路38を流れる。そして、冷凍サイクル回路10の放熱器12を流れる冷媒の放熱を利用して高温になった高温タンク39内の循環液は、基本循環経路22に送られる。
【0137】
そして、冷凍サイクル回路10で加熱された循環液は、混合弁30を介して送り経路23に送られ、加熱装置26によって所定の温度に加熱され、制御対象46が正確な設定温度になるよう好適な温度で制御対象46に供給される。
【0138】
このように、冷凍サイクル回路10の放熱器12による放熱を利用して循環液を加熱して高温タンク39に貯留し、高温タンク39に貯留された高温の循環液を基本循環経路22に供給して、基本循環経路22を流れる循環液を短時間で高温に変更することができる。よって、循環液回路20の加熱装置26で消費されるエネルギーを少なく抑えて、高効率な温度調整を行うことができる。
【0139】
制御装置43が三方弁29を開くと、高温タンク39に貯留されていた高温の循環液が基本循環経路22に送られる。そして、基本循環経路22を循環する循環液の温度が短時間で所定の温度まで上昇した後には、
図8、
図9及び
図10に示すように、制御装置43によって三方弁29が閉じられ循環液が高温経路38を流れない通常の温度調整運転が行われても良い。
【0140】
即ち、
図8に示すように、冷凍サイクル回路10を利用せず、基本循環経路22を循環する循環液を加熱装置26のみで加熱して温度を調整する運転が行われても良い。また、
図9に示すように、基本循環経路22を循環する循環液に低温経路31を流れる低温の
循環液を混合して温度を調整する運転が行われても良い。また、
図10に示すように、混合弁30で低温経路31が100%開かれ、基本循環経路22を循環する全ての循環液が低温経路31を経由して送り経路23に送られる温度調整運転が行われても良い。
【0141】
つまり、
図11に示すように、加工プロセス等の変更による高温度差の温度変更が行われた後には、
図8、
図9及び
図10に示すように、制御対象46における放熱量、吸熱量に対応する程度の小さい冷却能力、加熱能力を利用して温度調整を行うことができる。
【0142】
このように温度調整装置1は、制御対象46の状況に応じて好適な経路に循環液を循環させて、短時間で効率良く設定温度を変更することができ、制御対象46の温度を効率良く少ないエネルギー消費量で調整することができる。
【0143】
以上説明の如く、本実施形態に係る温度調整装置1は、半導体製造装置等の制御対象46に対して、冷凍サイクル回路10で発生する冷熱及び温熱の双方を利用して、排熱損失の少ない高効率な温度調整を行うことができる。
【0144】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0145】
1 温度調整装置
10 冷凍サイクル回路
11 圧縮機
12 放熱器
13 第2の放熱器
14 膨張弁
15 蒸発器
16 送風ファン
17 冷媒配管
18 冷媒温度センサ
19 圧力センサ
20 循環液回路
21 回路モジュール
22 基本循環経路
23 送り経路
24 戻り経路
25 循環ポンプ
26 加熱装置
27 温度センサ
28 電磁弁
29 三方弁
30 混合弁
31 低温経路
32 低温タンク
33 低温ポンプ
34 低温循環経路
35 系統合流管
36 系統分岐管
37 低温センサ
38 高温経路
39 高温タンク
40 系統合流管
41 系統分岐管
42 高温センサ
43 制御装置
44 入力装置
45 表示装置
46 制御対象
47 温度センサ
48 誘導加熱電源
50 一次コイル
51 発熱体
52 発熱管
53 発熱ループ
54 二次コイル
55 管
56 曲管部