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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】バッテリーセルの診断方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/389 20190101AFI20250708BHJP
【FI】
G01R31/389
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024505428
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(86)【国際出願番号】 KR2022018432
(87)【国際公開番号】W WO2023106689
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2024-01-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0174607
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】チュルミン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ボムジン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ・ソン・ユン
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-50257(JP,A)
【文献】特開2021-77570(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0123978(US,A1)
【文献】特開2018-159586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/00
G01R 27/00
G01R 31/36
H01M 10/00
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーセルの診断方法であって、
活性化工程で前記バッテリーセルに所定周波数を有する活性化波形を印加する段階、
前記活性化工程の充電段階で電気化学インピーダンス分光(EIS)測定を行う段階、
前記電気化学インピーダンス分光(EIS)測定に基づいて、所定範囲の電圧区間で前記バッテリーセルのリアクタンスの傾斜を計算する段階、および
前記傾斜に基づいて前記バッテリーセルを診断する段階、を含み、
前記バッテリーセルを診断する段階は、前記傾斜が臨界値以下である場合に前記バッテリーセルを不良セルと診断する段階を含み、
前記臨界値は-8.2または-8であり、
前記所定周波数は13.4Hz以上25Hz以下である、診断方法。
【請求項2】
前記電圧区間は3.5Vと3.8Vとの間の区間を含む、請求項に記載の診断方法。
【請求項3】
バッテリーセルの診断装置であって、
活性化工程で前記バッテリーセルに所定周波数を有する活性化波形を印加する充放電器、
前記活性化工程の充電段階で電気化学インピーダンス分光(EIS)測定を行うEIS測定器、および
前記電気化学インピーダンス分光(EIS)測定に基づいて、所定範囲の電圧区間で前記バッテリーセルのリアクタンスの傾斜を計算し、前記傾斜に基づいて前記バッテリーセルを診断するプロセッサー、を含み、
前記プロセッサーは、前記傾斜が臨界値以下である場合に前記バッテリーセルを不良セルと診断し、
前記臨界値は-8.2または-8であり、
前記所定周波数は13.4Hz以上25Hz以下である、診断装置。
【請求項4】
前記電圧区間は3.5Vと3.8Vとの間の区間を含む、請求項に記載の診断装置。
【請求項5】
周波数別に正常セルのリアクタンス傾斜に対する情報および不良セルのリアクタンス傾斜に対する情報を保存するメモリをさらに含み、
前記プロセッサーは、
前記メモリから前記所定周波数に対応する正常セルのリアクタンス傾斜に対する情報および不良セルのリアクタンス傾斜に対する情報を取得し、
前記所定範囲の電圧区間での前記リアクタンスの傾斜が前記正常セルのリアクタンス傾斜に含まれると前記バッテリーセルを正常セルに診断し、
前記所定範囲の電圧区間での前記リアクタンスの傾斜が前記不良セルのリアクタンス傾斜に含まれると前記バッテリーセルを不良セルと診断する、請求項3または4に記載の診断装置。
【請求項6】
コンピューティング装置により実行され、記録媒体に保存されているコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータプログラムは、前記コンピューティング装置に、
バッテリーセルに所定周波数を有する活性化波形を印加する活性化工程の充電段階で行われた電気化学インピーダンス分光(electrochemical impedance spectroscopy、EIS)測定に基づいて、所定範囲の電圧区間で前記バッテリーセルのリアクタンスの傾斜を計算する段階、および
前記傾斜に基づいて前記バッテリーセルを診断する段階、を実行させ、
前記バッテリーセルを診断する段階は、前記傾斜が臨界値以下である場合に前記バッテリーセルを不良セルと診断する段階を含み、
前記臨界値は-8.2または-8であり、
前記所定周波数は13.4Hz以上25Hz以下である、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月8日付韓国特許出願第10-2021-0174607号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、バッテリーセルの診断方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
電気自動車またはハイブリッド自動車は、主にバッテリーを電源として利用してモータを駆動することによって動力を得る自動車として、内燃自動車の公害およびエネルギー問題を解決できる代案であるという点から研究が活発に行われている。また、充電が可能なバッテリーは電気自動車以外に多様な外部装置で使用されている。
【0004】
バッテリーのうち、酸化還元反応にリチウムイオンを利用するリチウムバッテリーの場合、充電と放電の使用環境により電極にリチウムが析出されることがある。リチウム析出は、バッテリーの発火問題の直接的な原因の一つであるため、リチウム析出を検出する診断方法が必要である。特に、バッテリーを製造して販売した後にリチウム析出を検出することは難しいため、バッテリーの生産過程でリチウム析出を検出する診断方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明のある実施形態は、活性化工程でリチウム析出を検出することができるバッテリーセルの診断方法および装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、バッテリーセルの診断方法が提供され得る。前記診断方法は、活性化工程で前記バッテリーセルに所定周波数を有する活性化波形を印加する段階、前記活性化工程の充電段階で電気化学インピーダンス分光(electrochemical impedance spectroscopy、EIS)測定を行う段階、前記EIS測定に基づいて、所定範囲の電圧区間で前記バッテリーセルのリアクタンスの傾斜を計算する段階、および前記傾斜に基づいて前記バッテリーセルを診断する段階を含むことができる。
【0007】
本発明の他の一実施形態によれば、バッテリーセルの診断装置が提供され得る。前記診断装置は、充放電器、EIS測定器およびプロセッサーを含むことができる。前記充放電器は、活性化工程で前記バッテリーセルに所定周波数を有する活性化波形を印加し、前記EIS測定器は、前記活性化工程の充電段階でEIS測定を行うことができる。前記プロセッサーは、前記EIS測定に基づいて、所定範囲の電圧区間で前記バッテリーセルのリアクタンスの傾斜を計算し、前記傾斜に基づいて前記バッテリーセルを診断することができる。
【0008】
ある実施形態において、診断装置は、周波数別に正常セルのリアクタンス傾斜に対する情報および不良セルのリアクタンス傾斜に対する情報を保存するメモリをさらに含むことができる。前記プロセッサーは、前記メモリから前記所定周波数に対応する正常セルのリアクタンス傾斜に対する情報および不良セルのリアクタンス傾斜に対する情報を取得し、前記所定範囲の電圧区間での前記リアクタンスの傾斜が前記正常セルのリアクタンス傾斜に含まれると前記バッテリーセルを正常セルに診断し、前記所定範囲の電圧区間での前記リアクタンスの傾斜が前記不良セルのリアクタンス傾斜に含まれると前記バッテリーセルを不良セルと診断することができる。
【0009】
本発明のまた他の一実施形態によれば、コンピューティング装置により実行され、記録媒体に保存されているコンピュータプログラムが提供され得る。前記コンピュータプログラムは前記コンピューティング装置が、バッテリーセルに所定周波数を有する活性化波形を印加する活性化工程の充電段階で行われたEIS測定に基づいて、所定範囲の電圧区間で前記バッテリーセルのリアクタンスの傾斜を計算する段階、および前記傾斜に基づいて前記バッテリーセルを診断する段階を実行するようにすることができる。
【0010】
ある実施形態において、前記バッテリーセルを診断する段階は、前記傾斜が臨界値以下である場合に前記バッテリーセルを不良セルと診断する段階を含むことができる。
【0011】
ある実施形態において、前記臨界値は-8.2であり得る。
【0012】
ある実施形態において、前記臨界値は-8であり得る。
【0013】
ある実施形態において、前記所定周波数は25Hz以下であり得る。
【0014】
ある実施形態において、前記所定周波数は1Hz以上25Hz以下であり得る。
【0015】
ある実施形態において、前記電圧区間は3.5Vと3.8Vとの間の区間を含むことができる。
【発明の効果】
【0016】
ある実施形態によれば、リアクタンス傾斜に基づいてリチウム析出が発生した不良セルを診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態によるバッテリー診断装置の一例を示す図面である。
図2】活性化波形の周波数を変更しながら活性化工程の充電段階で測定されたバッテリーセルの電圧とリアクタンスを分析した結果を示す図面である。
図3】活性化波形の周波数を変更しながら活性化工程の充電段階で測定されたバッテリーセルの電圧とリアクタンスを分析した結果を示す図面である。
図4】活性化波形の周波数を変更しながら活性化工程の充電段階で測定されたバッテリーセルの電圧とリアクタンスを分析した結果を示す図面である。
図5】活性化波形の周波数を変更しながら活性化工程の充電段階で測定されたバッテリーセルの電圧とリアクタンスを分析した結果を示す図面である。
図6】活性化波形の周波数を変更しながら活性化工程の充電段階で測定されたバッテリーセルの電圧とリアクタンスを分析した結果を示す図面である。
図7】活性化波形の周波数を変更しながら活性化工程の充電段階で測定されたバッテリーセルの電圧とリアクタンスを分析した結果を示す図面である。
図8】活性化波形の周波数を変更しながら活性化工程の充電段階で測定されたバッテリーセルの電圧とリアクタンスを分析した結果を示す図面である。
図9】活性化波形の周波数を変更しながら活性化工程の充電段階で測定されたバッテリーセルの電圧とリアクタンスを分析した結果を示す図面である。
図10】活性化波形の周波数を変更しながら活性化工程の充電段階で測定されたバッテリーセルの電圧とリアクタンスを分析した結果を示す図面である。
図11】活性化波形の周波数を変更しながら活性化工程の充電段階で測定されたバッテリーセルの電圧とリアクタンスを分析した結果を示す図面である。
図12】活性化波形の周波数を変更しながら活性化工程の充電段階で測定されたバッテリーセルの電圧とリアクタンスを分析した結果を示す図面である。
図13】活性化波形の周波数を変更しながら活性化工程の充電段階で測定されたバッテリーセルの電圧とリアクタンスを分析した結果を示す図面である。
図14】活性化波形の周波数を変更しながら活性化工程の充電段階で測定されたバッテリーセルの電圧とリアクタンスを分析した結果を示す図面である。
図15】活性化波形の周波数を変更しながら活性化工程の充電段階で測定されたバッテリーセルの電圧とリアクタンスを分析した結果を示す図面である。
図16】活性化波形の周波数を変更しながら活性化工程の充電段階で測定されたバッテリーセルの電圧とリアクタンスを分析した結果を示す図面である。
図17】活性化波形の周波数を変更しながら活性化工程の充電段階で測定されたバッテリーセルの電圧とリアクタンスを分析した結果を示す図面である。
図18】活性化波形の周波数を変更しながら活性化工程の充電段階で測定されたバッテリーセルの電圧とリアクタンスを分析した結果を示す図面である。
図19】活性化波形の周波数を変更しながら活性化工程の充電段階で測定されたバッテリーセルの電圧とリアクタンスを分析した結果を示す図面である。
図20】本発明の一実施形態によるバッテリー診断装置の診断方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳しく説明する。しかし、本発明は、多様な異なる形態に実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。また、図面において、本発明を明確に説明するために、説明上不要な部分は省略し、明細書全体にわたって類似の部分については類似の図面符号を付した。
【0019】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」いると言及された時には、その他の構成要素に直接的に連結されていることもできるが、中間に他の構成要素が存在することもできると理解されたい。反面、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されて」いると言及された時には、中間に他の構成要素が存在しないと理解されたい。
【0020】
以下の説明で単数で記載された表現は、「一つ」または「単一」などの明示的な表現を使用しない以上、単数または複数に解釈され得る。
【0021】
図面を参照して説明したフローチャートにおいて、動作順序は変更されてもよく、多くの動作が併合されたり、ある動作が分割されたりしてもよく、特定の動作は行われなくてもよい。
【0022】
図1は本発明の一実施形態によるバッテリー診断装置の一例を示す図面である。
【0023】
バッテリー診断装置100は、バッテリーセル10に連結され、バッテリーセル10のうちリチウム析出が発生する不良セルを診断する。ある実施形態において、バッテリー診断装置100は、複数のバッテリーセル10に連結されて複数のバッテリーセル10を診断することができる。ある実施形態において、バッテリーセル10は、例えばリチウムイオン電池またはリチウムイオンポリマー電池のようなリチウム電池であり得る。
【0024】
バッテリー診断装置100は、充放電器110、電気化学インピーダンス分光(electrochemical impedance spectroscopy、EIS)測定器120およびプロセッサー130を含む。ある実施形態において、プロセッサー130は、コンピューティング装置で提供され得る。
【0025】
ある実施形態において、バッテリーセル10は、負極、正極および分離膜を含む電極組立体に電解液が注入されて製造され得る。このようなバッテリーセル10は、充放電を通じた活性化によりバッテリーとして機能することができ、このような工程を活性化工程という。充放電器110は、活性化工程でバッテリーセル10に活性化波形を印加してバッテリーセル10を充電または放電することができる。活性化波形は、所定周波数を有する交流電位であり得る。ある実施形態において、充放電器110は、バッテリーセル10の負極端子を接地端に連結した状態でバッテリーセル10の正極端子に活性化波形を印加することができる。ある実施形態において、充放電器110は、複数のバッテリーセル10がそれぞれ連結される複数のチャンネルを有し、複数のチャンネルにそれぞれ活性化波形を印加して複数のバッテリーセル10を充電または放電することができる。
【0026】
EIS測定器120は、バッテリーセル10が充電または放電される間にバッテリーセル10に対してEIS測定を行う。ある実施形態において、EIS測定器120は、インサイチュ(in‐situ、その場)EIS測定を行うことができる。EIS測定器120は、活性化波形を印加しながらバッテリーセル10の応答を測定し、活性化波形とバッテリーセル10の応答に基づいてバッテリーセル10のインピーダンスの虚数成分、つまり、リアクタンス(reactance)を測定する。ある実施形態において、EIS測定器120は、活性化波形(交流電位)を印加しながらバッテリーセル10の交流電流応答(つまり、出力電流)を測定し、交流電位と出力電流に基づいてバッテリーセル10のリアクタンスを測定することができる。ある実施形態において、EIS測定器120は、交流電流応答に基づいて出力電流の位相シフトと振幅変化を判断してバッテリーセル10のリアクタンスを測定することができる。また、EIS測定器120は、活性化波形を印加しながらバッテリーセル10の充電段階でのバッテリーセル10の電圧(つまり、充電電圧)を測定することができる。
【0027】
プロセッサー130は、EIS測定器120の測定結果に基づいて所定範囲の電圧区間でのリアクタンスの傾斜(変化)を計算し、リアクタンスの傾斜に基づいてバッテリーセル10が不良セルであるかまたは正常セルであるかを診断する。ある実施形態において、プロセッサー130は、充電段階のバッテリーセル10の電圧のうち、所定範囲の電圧区間でバッテリーセル10の電圧によるバッテリーセル10のリアクタンスの傾斜に基づいて当該バッテリーセル10が不良セルであるかまたは正常セルであるかを診断することができる。ある実施形態において、プロセッサー130は、所定範囲の電圧区間でバッテリーセル10の電圧増加によるバッテリーセル10のリアクタンスの傾斜が臨界値以下である場合、当該バッテリーセル10を不良セルと診断することができる。
【0028】
次に、本発明の一実施形態によるバッテリー診断装置に使用される所定周波数と所定範囲の電圧区間に対して図2乃至図19を参照して説明する。
【0029】
図2図3図4図5図6図7図8図9図10図11図12図13図14図15図16図17図18および図19は、活性化波形の周波数を変更しながら活性化工程の充電段階で測定されたバッテリーセルの電圧とリアクタンスを分析した結果を示す図面である。図2乃至図19で横軸は電圧(mV)を、縦軸はリアクタンス(mΩ)を示す。
【0030】
図2は周波数が55.3Hzである場合、図3は周波数が43.9Hzである場合、図4は周波数が34.3Hzである場合、図5は周波数が26.7Hzである場合、図6は周波数が24.8Hzである場合、図7は周波数が22.9Hzである場合、図8は周波数が21.0Hzである場合、図9は周波数が19.1Hzである場合、図10は周波数が17.2Hzである場合、図11は周波数が15.3Hzである場合、図12は周波数が13.4Hzである場合、図13は周波数が11.4Hzである場合、図14は周波数が9.5Hzである場合、図15は周波数が7.6Hzである場合、図16は周波数が5.7Hzである場合、図17は周波数が3.8Hzである場合、図18は周波数が1.9Hzである場合、図19は周波数が1.0Hzである場合を示す。
【0031】
図2乃至図19のそれぞれで、第1グループAは、複数の正常セルのそれぞれに対するリアクタンスグラフのグループであり、第2グループBは、複数の不良セルのそれぞれに対するリアクタンスグラフのグループである。図2乃至図19のそれぞれで、複数の正常セルおよび複数の不良セルのそれぞれに対するリアクタンスグラフは、一部の区間で互いに重なっている。つまり、一部の区間でグラフは互いに区別し難いこともある。しかし、第1グループAは浅い灰色で、第2グループBは黒色で区別され得る。一方、一部の電圧区間で第1グループAおよび第2グループB間の境界が不明確なことがあり得るが、本発明で必要なデータは下記表1に開示されている。
【0032】
実施形態により、図2乃至図19に示された3.5Vと3.8Vとの間の充電電圧区間で、所定のバッテリーセル10に対するリアクタンス傾斜は、3.5Vに対応する第1リアクタンス値と3.8Vに対応する第2リアクタンス値との差に基づいて算出され得る。つまり、3.5Vと3.8Vとの間の充電電圧区間でリアクタンスの値が第1リアクタンス値または第2リアクタンス値より上昇または下降するグラフ形態を示す場合でも、リアクタンス傾斜は第1リアクタンス値および第2リアクタンス値に基づいて算出され得る。しかし、これに限定されるのではなく、多様な実施形態により、3.5Vと3.8Vとの間の充電電圧区間でリアクタンス傾斜が算出され得る。
【0033】
図2を参照すると、「SL_1」は正常セルに対するリアクタンス傾斜であり、「SL_2」は不良セルに対するリアクタンス傾斜であり得る。また、リアクタンス傾斜SL_1、SL_2は、第1グループAまたは第2グループBに対応する複数のリアクタンス傾斜のうち、最大値に対応するグラフであり得る。しかし、これに限定されるのではなく、リアクタンス傾斜SL_1、SL_2は、第1グループAまたは第2グループBに対応する複数のリアクタンス傾斜のうち、最小値または平均値を表示することができる。
【0034】
図2乃至図19を参照すると、不良セルの場合、所定範囲の電圧区間で充電電圧の増加によりリアクタンスが急激に減少することが分かる。特に、所定周波数を有する活性化波形を使用する時、不良セルの充電電圧の増加によるリアクタンス傾斜が正常セルのリアクタンス傾斜と区別されることが分かる。
【0035】
図2乃至図19に示したように、充電電圧が3.5V以上であり、3.8V以下である区間でのリアクタンス傾斜の大きさ(絶対値)が他の充電電圧区間でのリアクタンス傾斜の大きさより大きいことが分かる。また、図6乃至図19に示したように、1Hz以上25Hz以下の周波数を有する活性化波形を使用する場合、不良セルのリアクタンス傾斜の大きさが正常セルのリアクタンス傾斜の大きさより区別できる程度に大きいことが分かる。
【0036】
反面、図2乃至図5図19に示したように、25Hzより高い周波数を有する活性化波形を使用する場合、不良セルのリアクタンス傾斜の大きさと正常セルのリアクタンス傾斜の大きさとの比較が難しいことが分かる。
【0037】
具体的に、図2乃至図19に示された3.5Vと3.8Vとの間の充電電圧区間でのリアクタンス傾斜を数値化すれば表1のように与えられる。表1に示すような周波数別の正常セルのリアクタンス傾斜に対する情報および不良セルのリアクタンス傾斜に対する情報はバッテリー診断装置(図1の100)のメモリ(図示せず)に保存され得る。
【0038】
バッテリーセルの状態によりバッテリーセルのリアクタンス傾斜が変わり得るため、表1ではリアクタンス傾斜の最大値、最小値および平均値が表示されている。具体的に、活性化波形の周波数ごとに、第1グループAに属する複数のリアクタンス傾斜のうち、最大値、最小値および平均値が表1に表示されている。また、活性化波形の周波数ごとに、第2グループBのそれぞれに属する複数のリアクタンス傾斜のうち、最大値、最小値および平均値が表1に表示されている。この時、第1グループAは複数の正常セルのそれぞれに対するリアクタンスグラフのグループであり、第2グループBは複数の不良セルのそれぞれに対するリアクタンスグラフのグループである。
【0039】
表1を参照すると、活性化波形の周波数が25Hzより大きい場合、不良セルのリアクタンス傾斜の区間と正常セルのリアクタンス傾斜の区間とが一部重なるため、不良セルと正常セルのリアクタンス傾斜の区別が難しいこともある。例えば、活性化波形の周波数が55.3Hzである場合、不良セルのリアクタンス傾斜は-6.03と-5.00との間の値を有し、正常セルのリアクタンス傾斜は-6.85と-3.26との間の値を有する。したがって、あるバッテリーセルのリアクタンス傾斜が-6.00に測定される場合、当該バッテリーセルが正常セルであるかまたは不良セルであるかを区別することができない。同様に、活性化波形の周波数が26.7Hzである場合、不良セルのリアクタンス傾斜は-9.40と-7.51との間の値を有し、正常セルのリアクタンス傾斜は-7.54と-2.40との間の値を有する。したがって、あるバッテリーセルのリアクタンス傾斜が-7.52に測定される場合、当該バッテリーセルが正常セルであるかまたは不良セルであるかを区別することができない。
【0040】
しかし、活性化波形の周波数が25Hz以下である場合、不良セルのリアクタンス傾斜の区間と正常セルのリアクタンス傾斜の区間とが重ならないため、不良セルと正常セルのリアクタンス傾斜を区別することができる。例えば、活性化波形の周波数が24.8Hzである場合、不良セルのリアクタンス傾斜は-10.86と-8.20との間の値を有し、正常セルのリアクタンス傾斜は-6.91と-2.45との間の値を有するため、あるバッテリーセルのリアクタンス傾斜が-8.20以下の値に測定される場合、当該バッテリーセルは不良セルと判断され得る。同様に、活性化波形の周波数が1.0Hz、1.9Hz、3.6Hz、5.7Hz、7.6Hz、9.5Hz、11.4Hz、13.4Hz、15.3Hz、17.2Hz、19.1Hz、21Hzまたは22.9Hzである場合、不良セルのリアクタンス傾斜の区間と正常セルのリアクタンス傾斜の区間とが重ならないため、リアクタンス傾斜で正常セルと不良セルを区別することができる。
【0041】
【表1】
【0042】
以上で説明したように、活性化波形の周波数が25Hz以下である場合に、3.5Vと3.8Vとの間の充電電圧区間でのリアクタンス傾斜で正常セルと不良セルを区別することができる。特に、表1に表示されたように、活性化波形の周波数が25Hz以下である場合に、3.5Vと3.8Vとの間の充電電圧区間でのリアクタンス傾斜の最大値のうちで最も小さい値が-8.2であるため、ある実施形態でリアクタンス傾斜が-8.2、つまり、臨界値以下である放電セルを不良セルと判断することができる。リアクタンス傾斜の最大値のうちで最も小さい値を臨界値に設定することによって、正常セルが不良セルと判断されることを防止することができる。
【0043】
ある実施形態において、24.8Hzで正常セルのリアクタンス傾斜の最小値が-6.91であるため、測定誤差を考慮して臨界値を-8.2より大きい-8に設定することもできる。
【0044】
図20は本発明の一実施形態によるバッテリー診断装置の診断方法の一例を示すフローチャートである。
【0045】
図20を参照すると、バッテリー診断装置は、所定周波数を有する活性化波形をバッテリーセルに印加して活性化工程を行う(S210)。ある実施形態において、所定周波数は25Hz以下であり得る。ある実施形態において、所定周波数は1Hz以上25Hz以下であり得る。バッテリー診断装置は、活性化工程の充電段階でバッテリーセルに対してEIS測定を行ってバッテリーセルのリアクタンスと充電電圧を測定する(S220)。
【0046】
バッテリー診断装置は、所定範囲の充電電圧区間でバッテリーセルの電圧によるバッテリーセルのリアクタンス傾斜を計算する(S230)。ある実施形態において、所定範囲の充電電圧区間は-3.5V以上-3.8以下であり得る。バッテリー診断装置は、リアクタンス傾斜を臨界値と比較し(S240)、リアクタンス傾斜が臨界値以下である場合に該当バッテリーセルを不良セルと診断する(S250)。ある実施形態において、バッテリー診断装置は、当該バッテリーセルをリチウム析出が発生した不良セルと診断することができる。リアクタンス傾斜が臨界値より大きい場合に、バッテリー診断装置は当該バッテリーセルを正常セルに診断する(S260)。ある実施形態において、臨界値は-8であり得る。ある実施形態において、臨界値は-8.2であり得る。
【0047】
ある実施形態において、バッテリー診断装置は、メモリから所定周波数に対応する正常セルのリアクタンス傾斜に対する情報および不良セルのリアクタンス傾斜に対する情報を取得し、計算したリアクタンス傾斜をメモリから取得したリアクタンス傾斜と比較することができる(S240)。バッテリー診断装置は、計算したリアクタンス傾斜が不良セルのリアクタンス傾斜に含まれる場合、バッテリーセルを不良セルと診断することができる(S250)。バッテリー診断装置は、計算したリアクタンス傾斜が正常セルのリアクタンス傾斜に含まれる場合、バッテリーセルを正常セルに診断することができる(S260)。
【0048】
以上で説明一実施形態によれば、リアクタンス傾斜に基づいてリチウム析出が発生した不良セルを診断することができる。
【0049】
ある実施形態において、コンピューティング装置(またはプロセッサー)は、前述した診断方法を実行するためのコンピュータプログラムに対する演算を行うことができる。診断方法を実行するためのコンピュータプログラムがメモリにロードされ得る。コンピュータプログラムは、メモリにロードされる時、コンピューティング装置が診断方法を行うようにする命令語を含むことができる。ある実施形態において、コンピュータプログラムは、コンピューティング装置がバッテリーセルに所定周波数を有する活性化波形を印加する活性化工程の充電段階で行われたEIS測定に基づいて、所定範囲の電圧区間でバッテリーセルのリアクタンスの傾斜を計算する段階、および傾斜に基づいてバッテリーセルを診断する段階を実行するようにすることができる。
【0050】
以上で本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるのではなく、特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の多様な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
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