(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】トナーおよびそれを含む二成分現像剤
(51)【国際特許分類】
G03G 9/087 20060101AFI20250708BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20250708BHJP
【FI】
G03G9/087 331
G03G9/097 365
G03G9/087 325
G03G9/087
(21)【出願番号】P 2021151374
(22)【出願日】2021-09-16
【審査請求日】2024-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】平野 雄基
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-098515(JP,A)
【文献】特開2014-106489(JP,A)
【文献】特開平02-137854(JP,A)
【文献】特開平06-051559(JP,A)
【文献】特開平02-251971(JP,A)
【文献】特開平06-043688(JP,A)
【文献】特開平07-140712(JP,A)
【文献】特開2017-193172(JP,A)
【文献】米国特許第04973539(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂および離型剤を少なくとも含み、前記結着樹脂が、側鎖に液晶性発現部位を有する側鎖型液晶性ポリエステル系樹脂を含み、
前記側鎖型液晶性ポリエステル系樹脂が、GPC測定において8,000以上15,000以下のピークトップ分子量Mpを有し、
前記側鎖型液晶性ポリエステル系樹脂が、液晶性発現部位として下記構造式:
【化1】
で表される6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸およびビフェニルから選択されるいずれかを基本骨格とする側鎖を有する
ことを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記側鎖型液晶性ポリエステル系樹脂が、50℃以上70℃以下のガラス転移温度Tgを有する請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記側鎖型液晶性ポリエステル系樹脂が、シロキサン、アクリルおよびメタクリルから選択されるいずれかを主鎖骨格に有する請求項1
または2に記載のトナー。
【請求項4】
前記側鎖型液晶性ポリエステル系樹脂が、液晶相としてネマチック相を有する請求項1~
3のいずれか1つに記載のトナー。
【請求項5】
前記側鎖型液晶性ポリエステル系樹脂が、前記トナー中に50質量%以上85質量%以下の割合で含まれる請求項1~
4のいずれか1つに記載のトナー。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1つに記載のトナーと、キャリアとを含むことを特徴とする二成分現像剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温定着性と耐熱保存性とを両立し得るトナーおよびそれを含む二成分現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、OA機器の目覚しい発達に伴い、電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置が広く普及し、様々な画像形成の方法が提案され、実用化されている。
例えば、トナーを加熱溶融してトナー像を記録紙に定着させる加熱定着方法では、省エネルギー化を達成するため、できるだけ低い温度でトナー像を定着させる必要があり、低温定着性の良好なトナーが要求される。
トナーの低温定着性を向上させるために、例えば、結着樹脂として非晶性ポリエステルに結晶性ポリエステルを微量添加する技術が提案されている。結晶性ポリエステルを添加することにより、トナーの粘度をシャープに低下させることができ、溶融温度を低下させることができる。しかしながら、結晶性ポリエステルの添加量の増加に伴い、トナー中の結晶化度が増加し、結晶性ポリエステルのシャープメルトなドメイン径が増大し、これによりトナーの耐熱保存性や高温側の定着特性が悪化する。そのため、結晶性ポリエステルの添加量には限度があり、低温定着領域の拡大が困難であった。
【0003】
上記のようなトナーの課題を改善するための様々な技術が提案されている。
例えば、特公平6-56503号公報(特許文献1)には、熱互変液晶性ポリカーボネート、コポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエステルおよびコポリエステルからなる群から選ばれた樹脂粒子と顔料樹脂とからなるトナー組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のトナー用樹脂組成物は、主成分として主鎖に液晶性発現部位を配置するサーモトロピック液晶ポリマーを含有し、軟化点が高く、トナー用の結着樹脂として使用することは困難である。
【0006】
そこで、本発明は、低温定着性と耐熱保存性とを両立し得るトナーおよびそれを含む二成分現像剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、結着樹脂として側鎖に液晶性発現部位を有する液晶性ポリエステルを用いることにより、トナーのシャープメルトなドメイン径の増大を抑制し、耐熱保存性を維持することができ、相転移温度前後での急激な粘度低下により、定着可能領域の低温側を拡大することができ、側鎖側の液晶性発現部位の数により軟化点のコントロール、つまり樹脂の低融点化が容易で、低温定着の樹脂設計が容易であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
かくして、本発明によれば、結着樹脂および離型剤を少なくとも含み、前記結着樹脂が、側鎖に液晶性発現部位を有する側鎖型液晶性ポリエステル系樹脂を含むことを特徴とするトナーが提供される。
【0009】
また、本発明によれば、上記のトナーと、キャリアとを含むことを特徴とする二成分現像剤が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低温定着性と耐熱保存性とを両立し得るトナーおよびそれを含む二成分現像剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)トナー
本発明のトナーは、結着樹脂および離型剤を少なくとも含み、結着樹脂が、側鎖に液晶性発現部位を有する側鎖型液晶性ポリエステル系樹脂を含むことを特徴とする。
側鎖型液晶性ポリエステル系樹脂は、温度変化によりその結晶性が変化し、低温では液晶性発現部位が配向し、結晶性ポリエステル系樹脂のような性質を示し、温度の閾値、すなわち液晶等方相転移温度Tniを超えると分子の配向が崩壊し、粘度がシャープに低下して、結晶性ポリエステル系樹脂と同様の効果が得られる。
一方で、側鎖型液晶性ポリエステル系樹脂は、その結晶性ドメインが分子レベルで分散しているため、添加量の増加に伴うドメイン径の増大が起こらず、耐熱保存性や高温側での定着特性が悪化しない。そのため、従来のように高分子量・低分子量のポリエステル系樹脂を組み合わせて用いることなく、結着樹脂を全て液晶性ポリエステル系樹脂に置換することも可能である。
以下、本発明のトナーの特徴部分の結着樹脂について説明し、トナーの基本であるトナー(「トナー母粒子」ともいう)、トナーの製造方法およびトナーを含む二成分現像剤について説明する。
【0012】
(1-1)結着樹脂
本発明のトナーに、結着樹脂として含まれる側鎖型液晶性ポリエステル系樹脂は、通常のポリエステル系樹脂と異なり、温度上昇に伴いガラス状態・液晶相状態・等方相状態をとる。ガラス転移温度Tg未満では、通常のポリエステル系樹脂と同様に、ガラス状態となり流動性を示さない。一方、ガラス転移温度Tg以上になると、ガラス状態から液晶相状態へと相転移し、液晶性ポリエステル系樹脂のフレキシブルな部位が分子運動をはじめ、わずかに流動性を示すが、分子が結晶性ポリエステル系樹脂のように配向しており、耐ブロッキング性、耐オフセット性を有する。また、液晶等方相転移温度Tni以上になると等方相状態へと相転移し、通常のポリエステル系樹脂と同様に、溶融状態となり、定着が可能になる。本発明では、このような特定の温度領域の液晶性ポリエステルを用いることにより、低温定着を実現しつつ、十分な熱物性を維持することができる。
【0013】
(ガラス転移温度Tg)
本発明の実施形態によれば、側鎖型液晶性ポリエステル系樹脂は、50℃以上70℃以下のガラス転移温度Tgを有することが好ましい。
ガラス転移温度Tgが50℃未満では、耐熱保存性や定着の高温領域側が悪化することがある。一方、ガラス転移温度Tgが70℃を超えると、低温定着性が悪化することがある。
より好ましいガラス転移温度Tgは、60℃以上70℃以下である。
ガラス転移温度Tgの測定方法を実施例において説明する。
【0014】
(液晶等方相転移温度Tni)
本発明の実施形態によれば、側鎖型液晶性ポリエステル系樹脂は、100℃以上140℃以下の液晶等方相転移温度Tniを有することが好ましい。
液晶等方相転移温度Tniは、分子が配向した液晶相から分子が配向していない等方相へと相転移する温度を意味する。
液晶等方相転移温度Tniが100℃未満では、耐熱保存性や定着の高温領域側が悪化することがある。一方、液晶等方相転移温度Tniが140℃を超えると、低温定着性が悪化することがある。
より好ましい液晶等方相転移温度Tniは、120℃以上130℃以下である。
液晶等方相転移温度Tniの測定方法を実施例において説明する。
【0015】
(ピークトップ分子量Mp)
本発明の実施形態によれば、側鎖型液晶性ポリエステル系樹脂は、GPC測定において4,000以上15,000以下のピークトップ分子量Mpを有することが好ましい。
ピークトップ分子量Mpが4,000未満では、耐熱保存性や定着の高温領域側が悪化することがある。一方、ピークトップ分子量Mpが15,000を超えると、低温定着性が悪化することがある。
より好ましいピークトップ分子量Mpは、8,000以上15,000以下である。
ピークトップ分子量Mpの測定方法を実施例において説明する。
【0016】
(樹脂構造)
側鎖型液晶性ポリエステル系樹脂は、側鎖型液晶高分子であり、主鎖に高分子骨格、側鎖に液晶性発現部位を有する。
側鎖型液晶性ポリエステル系樹脂は、主鎖型液晶性ポリエステル系樹脂と比較して、ガラス転移温度Tgおよび液晶等方相転移温度Tniを低温側に示し、主鎖骨格および導入する側鎖の種類や導入率によっても熱物性をコントロール可能であることから好ましい。
【0017】
本発明の実施形態によれば、側鎖型液晶性ポリエステル系樹脂は、シロキサン、アクリルおよびメタクリルから選択されるいずれかを主鎖骨格に有することが好ましい。
これらの主鎖骨格は、一般に液晶性ポリエステルに用いられており、側鎖の導入が容易であることに加えて、主鎖骨格の選択によりガラス転移温度Tgの調節が可能であることから好ましい。
【0018】
また、本発明の実施形態によれば、側鎖型液晶性ポリエステル系樹脂は、液晶性発現部位として下記構造式:
【化1】
で表されるp-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸およびビフェニルから選択されるいずれかを基本骨格とする側鎖を有することが好ましい。
これらの骨格構造は、一般に用いられているものであることに加え、融点を低温側に示し、高温状態での粘度が低く、低温定着に適している。
【0019】
(液晶相)
液晶相は配向した分子配向の秩序によって呼称が異なり、ネマチック相、スメクチック相、コレステリック相などがあり、本発明のトナーでは、いずれの相形態であってもよい。
これらの相形態の中でも、ネマチック相は最も低秩序であり、分子配向の崩壊・形成も速やかに行われ、昇温に伴う粘度低下がその他の相に比べてシャープであるため、結晶性ポリエステル系樹脂と同等の効果を得ることができる。また、粘度についてもネマチック相はその他の相より低粘度である。これらのことから、ネマチック相を形成する液晶性ポリエステル系樹脂を用いることで、トナーの低温定着性を向上させることができる。
したがって、本発明の実施形態によれば、側鎖型液晶性ポリエステル系樹脂は、液晶相としてネマチック相を有することが好ましい。
【0020】
(含有量)
本発明の実施形態によれば、側鎖型液晶性ポリエステル系樹脂は、トナー中に50質量%以上85質量%以下の割合で含まれることが好ましい。
側鎖型液晶性ポリエステル系樹脂のトナー中の含有量が50質量%未満では、トナー中の側鎖型液晶性ポリエステル樹脂の液晶性が発現しないことがある。一方、トナー中の含有量が85質量%を超えると、トナー中の樹脂比が多くなり、添加剤の比率が低下してしまうためトナーの性質が著しく悪化することがある。
より好ましい側鎖型液晶性ポリエステル系樹脂のトナー中の含有量は、70質量%以上85質量%以下である。
【0021】
(他の結着樹脂)
本発明のトナーは、本発明の効果を阻害しない範囲で、結着樹脂として、上記の側鎖型液晶性ポリエステル系樹脂以外に、当該技術分野で常用される結晶性および非晶性のポリエステル系樹脂を含んでいてもよく、側鎖型液晶性ポリエステル系樹脂との併用においては非晶性のポリエステル系樹脂が好ましい。
好ましい非晶性のポリエステル系樹脂のトナー中の含有量は、0質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは、0質量%以上15質量%以下である。
【0022】
(1-2)離型剤
本発明のトナーに含まれる離型剤は、トナーを記録媒体に定着させるときに、トナーに離型性を付与する機能を有し、当該技術分野で常用される離型剤を用いることができる。
離型剤としては、例えば、パラフィンワックスおよびマイクロクリスタリンワックスならびにそれらの誘導体などの石油系ワックス;フィッシャートロプシュワックス、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど)、低分子量ポリプロピリンワックスおよびポリオレフィン系重合体ワックス(低分子量ポリエチレンワックスなど)ならびにそれらの誘導体などの炭化水素系合成ワックス;カルナバワックス、ライスワックスおよびキャンデリラワックスならびにそれらの誘導体、木蝋などの植物系ワックス;蜜蝋、鯨蝋などの動物系ワックス;脂肪酸アミドおよびフェノール脂肪酸エステルなどの油脂系合成ワックス;長鎖カルボン酸およびその誘導体;長鎖アルコールおよびその誘導体;シリコーン系重合体;高級脂肪酸などが挙げられ、これらの中でも、炭化水素系のワックスが好ましい。
上記の誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとワックスとのブロック共重合物、ビニル系モノマーとワックスとのグラフト変性物などが含まれる。
本発明においては、上記の離型剤の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
本発明のトナー中の離型剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.5~5質量%であり、より好ましくは2~4質量%である。
離型剤の含有量が上記の範囲内であれば、トナーの各種物性を損なうことなしに、低温定着性と耐熱保存性とを両立し得るトナーを得ることができる。
また、トナー中での離型剤の分散性を向上させるために、スチレンアクリル共重合体樹脂などの離型剤分散剤を併用してもよい。
【0024】
(1-3)着色剤
本発明のトナーは、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、着色剤を含んでいてもよく、当該技術分野で常用される有機系および無機系の様々な種類および色の顔料および染料を用いることができ、例えば、黒色、白色、黄色、橙色、赤色、紫色、青色および緑色の着色剤が挙げられる。
【0025】
黒色の着色剤としては、例えば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライトおよびマグネタイトなどが挙げられる。
白色の着色剤としては、例えば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などが挙げられる。
【0026】
黄色の着色剤としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138などが挙げられる。
【0027】
橙色の着色剤としては、例えば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43などが挙げられる。
【0028】
赤色の着色剤としては、例えば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222などが挙げられる。
【0029】
紫色の着色剤としては、例えば、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどが挙げられる。
青色の着色剤としては、例えば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60などが挙げられる。
緑色の着色剤としては、例えば、クロムグリーン、酸化クロム、ピクメントグリーンB、マイカライトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG、C.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。
【0030】
本発明のトナーにおいては、上記の着色剤の1種を単独でまたは2種を組み合わせて用いることができ、それらの組み合わせは異色であっても同色であってもよい。
また、2種以上の着色剤を複合粒子化して用いてもよい。複合粒子は、例えば、2種以上の着色剤に適量の水、低級アルコールなどを添加し、ハイスピードミルなどの一般的な造粒機で造粒し、乾燥させることによって製造できる。さらに、結着樹脂中に着色剤を均一に分散させるために、マスターバッチ化して用いてもよい。複合粒子およびマスターバッチは、乾式混合の際にトナー組成物に混入される。
【0031】
本発明のトナー中の着色剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは2~10質量%であり、より好ましくは3~10質量%である。
着色剤の含有量が上記の範囲内であれば、トナーの各種物性を損なうことなしに、低温定着性と耐熱保存性とを両立し得るトナーを得ることができる。
【0032】
(1-4)帯電制御剤(電荷制御剤)
本発明のトナーは、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、帯電制御剤を含んでいてもよく、当該技術分野で常用される正電荷制御用および負電荷制御用の帯電制御剤を用いることができる。
正電荷制御用の電荷制御剤としては、例えば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩などが挙げられる。
負電荷制御用の電荷制御剤としては、例えば、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸などが挙げられる。
本発明のトナーにおいては、上記の電荷制御剤の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のトナーにおいては、上記の電荷制御剤の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
本発明のトナー中の帯電制御剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.5~5質量%であり、より好ましくは1~4質量%である。
帯電制御剤の含有量が、上記の範囲内であれば、トナーの各種物性を損なうことなしに、低温定着性と耐熱保存性とを両立し得るトナーを得ることができる。
【0034】
(1-5)外添剤
トナーは、その搬送性および帯電性ならびに二成分現像剤におけるキャリアとの撹拌性などを向上させるために外添剤を含んでいてもよい。
外添剤としては、当該技術分野で常用される外添剤を用いることができ、例えば、シリカ、酸化チタンなどの無機微粒子が挙げられ、シリコーン樹脂、シランカップリング剤などにより表面処理(疎水化処理)されているものが好ましく、トナーに帯電性を付与するという点で、シリカ粒子が特に好ましい。
また、外添剤は、6~200nmの平均一次粒子径を有する無機微粒子が好ましい。
外添剤の添加量は特に限定されないが、トナー100質量部に対して、好ましくは0.2~5.0質量部であり、より好ましくは0.5~2.5質量部である。
【0035】
(1-6)トナーの製造方法
本発明で用いられるトナーは、当該技術分野で常用される公知の装置を用いて公知の方法、例えば、少なくとも結着樹脂および離型剤を含む材料を混合・混錬する混合・混錬工程、得られた溶融混練物を粗粉砕して粗粉砕品を得る粗粉砕工程、得られた粗粉砕品を微粉砕して微粉砕品を得る微粉砕工程、得られた微粉砕品を分級してトナー母粒子を得る分級工程、およびトナー母粒子に外添剤を加え、混合して外添トナーを得る外添工程により製造することができる。
湿式法と比較して工程数が少なく、設備コストが掛からないなどの点で乾式法が好ましく、中でも粉砕法が特に好ましい。
下記の各工程における条件は、対象とする材料および所望の物性により適宜設定すればよい。
【0036】
(2)二成分現像剤
本発明の二成分現像剤は、本発明のトナーと、キャリアとを含むことを特徴とする。
(キャリア)
本発明のトナーは、一成分現像剤、二成分現像剤のいずれの形態でも使用することができ、二成分現像剤として使用する場合には、外添剤以外にさらにキャリアを含有する。
キャリアとしては、当該技術分野で常用されるキャリアを用いることができ、例えば、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、クロムなどからなる単独または複合フェライトおよびキャリア芯粒子を公知の被覆物質で表面被覆したものなどが挙げられる。
キャリアの平均粒径は、10~100μmが好ましく、20~50μmがより好ましい。
キャリアの含有量は特に限定されないが、現像剤全量に対して、好ましくは85~97質量%であり、より好ましくは90~95質量%である。
【実施例】
【0037】
以下に、合成例、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例において、各物性値を以下に示す方法により測定した。
【0038】
[液晶性ポリエステルのTgとTniの測定]
示差走査熱量計(セイコー電子工業株式会社(現 株式会社日立ハイテクサイエンス)製、型式:DSC220)を用いて、トナーの試料1gを昇温速度10℃/分で温度200℃まで加熱した後、温度200℃で2分間保持し、降温速度10℃/分で30℃まで冷却させて、DSC曲線を測定する。得られたDSC曲線の昇温時の低温側の吸熱ピーク温度(ガラス転移温度)Tg(℃)と、高温側の吸熱ピーク温度(液晶等方相転移温度)Tni(℃)を求める。
【0039】
[非晶性ポリエステルのTgとTmの測定]
上記のDSC測定と同様にして、非晶性ポリエステルのDSC曲線を測定する。得られたDSC曲線の昇温時の低温側の吸熱ピーク温度(ガラス転移温度)Tg(℃)と、高温側の吸熱ピーク温度(溶融温度)Tm(℃)を求める。
【0040】
[トナーの流出開始温度及び軟化温度の測定]
流動特性評価装置(株式会社島津製作所製、フローテスター、型番:CFT-100C)を用いて、試料1gを開始温度の40℃から昇温速度6℃/分で加熱しながら、荷重20kgf/cm2(9.8×105Pa)を与え、ダイ(ノズル口径1mm、長さ1mm)から試料を流出させた。試料が流出し始めた温度を流出開始温度「Ti」、試料の半分量が流出したときの温度を軟化温度「Tm」とした。
【0041】
[GPC測定(ピークトップ分子量:Mp)]
結着樹脂とトナーのピークトップ分子量(Mp)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下の条件で測定する。
ピークトップ分子量とは、GPC測定により得られるクロマトグラムにおいて最大のピーク高さを示す分子量を指す。
分子量の測定では、ポリエステル樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、不溶解分をグラスフィルターで濾別したものを試料溶液として使用する。
(装置および条件)
装置 :東ソー株式会社製、型式:HLC-8120
カラム :東ソー株式会社製、TSK GEL GMH6 2本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25質量%のTHF溶液
溶液注入量:100μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :東ソー株式会社製、標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量500、1050、2800、5970、9100、18100、37900、96400、190000、355000、1090000および2890000)
【0042】
(合成例1:液晶性ポリエステルAの合成]
撹拌装置、還流器および滴下ロートを備えた、容量300mLのガラス製フラスコにメタノール90mLを加え、p-ヒドロキシ安息香酸27.7gを溶解させた。水酸化カリウム34.2gをメタノール220mLに溶解させ、これをp-ヒドロキシ安息香酸溶液に滴下し、室温(25℃)で2時間撹拌した。得られた溶液に塩化アリル26mLを加え、温度70℃で6時間撹拌した。その後、溶媒を減圧留去し、得られた反応生成物を水160mL、ジエチルエーテル160mLで洗浄した。その後、得られた水溶液に塩酸を加えて中和し、析出した沈殿物をイソプロパノールで再結晶させて、化合物Aを得た。
【0043】
撹拌装置を備えた、容量300mLのガラス製フラスコに、化合物A4.93gおよび塩化チオニル70mLを加えて2時間撹拌した。その後、溶媒を減圧留去し、ジクロロメタン30mLを加えて、化合物A溶液を調製した。
ジクロロメタン17mLに、p-メトキシフェノール5.21gおよびトリエチルアミン8.66mLを加え、氷浴下で化合物A溶液に滴下した後、6時間撹拌した。その後、溶媒を減圧留去し、得られた反応生成物を酢酸エチルおよび水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、エタノールで再結晶させ、液晶発現部位であるメソゲンを得た。
【0044】
撹拌装置および還流器を備えた、容量50mLのガラス製フラスコに、メソゲン0.501g、ポリメチルシロキサン0.139gおよびトルエン5mLを加え、フラスコ内を窒素雰囲気にした。その後、ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物を触媒量加え、温度110℃で24時間反応させた。溶媒を減圧留去し、得られた反応生成物を、貧溶媒としてメタノール、良溶媒としてトルエンを用いて再沈殿法により精製し、側鎖型液晶性ポリエステル系樹脂として液晶性ポリエステルA(樹脂A)0.309gを得た。
NMR分析により、得られた樹脂が主鎖骨格にシロキサン、側鎖骨格にp-ヒドロキシ安息香酸を有する樹脂Aであること、偏光顕微鏡観察により得られた樹脂が液晶相としてネマチック相を有する液晶状態にあることを確認した。
また、上記の測定方法により、樹脂Aのガラス転移温度Tg、液晶等方相転移温度Tniおよびピークトップ分子量Mpを測定した。
【0045】
(合成例2~10:液晶性ポリエステルB~Jの合成]
主鎖骨格のシロキサンおよび側鎖骨格のp-ヒドロキシ安息香酸の代わりに、それぞれ表1に示すアクリルまたはメタクリル、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸またはビフェニルを用い、合成例1と同様にして、側鎖型液晶性ポリエステル系樹脂として液晶性ポリエステルB~J(樹脂B~J)を得た。
【0046】
(合成例11:非晶性ポリエステルKの合成)
容量5Lの反応槽中に、テレフタル酸440g(2.7モル)、イソフタル酸235g(1.4モル)、アジピン酸7g(0.05モル)、エチレングリコール554g(8.9モル)および重合触媒としてテトラブトキシチタネート0.5gを入れ、210℃、窒素気流下で生成する水とエチレングリコールを留去しながら5時間反応させた。その後、5~20mmHgの減圧下で1時間反応させた。
次いで、無水トリメリット酸103g(0.54モル)を加え、常圧下で1時間反応させた後、20~40mmHgの減圧下で反応させ、所定の軟化点で樹脂を取出した。回収されたエチレングリコールは219g(3.5モル)であった。得られた樹脂を室温まで冷却した後、粉砕により粒子化し、これを非晶性ポリエステル樹脂Kとした。
非晶性ポリエステル樹脂Kは、Tmが145℃、ピークトップ分子量Mpが12,000であった。
【0047】
(合成例12:非晶性ポリエステルLの合成)
合成例11と同様にして所定の軟化点を有する非晶性ポリエステルLを得た。
【0048】
(実施例1)
<材料混合・混錬・粉砕・分級工程>
結着樹脂:樹脂A(ガラス転移温度Tg50℃、液晶等方相転移温度Tni140℃、ピークトップ分子量Mp15,000、合成例1参照) 84質量%
着色剤:カーボンブラック(キャボット株式会社製、製品名:Regal1330)
6質量%
離型剤:エステル系ワックス(日油株式会社製、製品名:WEP8) 3質量%
離型剤分散剤:スチレンアクリル共重合体樹脂(三井化学株式会社製、製品名:SA800) 5重量%
帯電制御剤:サリチル酸系化合物(オリエント化学工業株式会社、製品名:ボントロンE-84) 2質量%
【0049】
気流混合機(ヘンシェルミキサ、三井鉱山株式会社(現 日本コークス工業株式会社)製、型式:FM20C)を用いて、上記の材料を5分間、前混合した後、二軸押出機(池貝社製、型式:PCM30型)を用い、シリンダ設定温度110℃、バレル回転数300rpm、原料供給速度20kg/時間の条件で溶融混練して溶融混錬物を得た[混合・混錬工程]。
得られた溶融混練物を、冷却ベルトで冷却させた後、カッティングミル(オリエント株式会社製、型式:VM-16)を用いて粗粉砕して粗粉砕品を得た[粗粉砕工程]。
次いで、得られた粗粉砕品を、ジェット式粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製、型式:IDS-2)を用いて微粉砕し、微粉砕品を得た[微粉砕工程]。
得られた微粉砕品を、風力分級機(日鉄鉱業株式会社製、型式:EJ-LABO)を用いて分級して、平均一次粒子径6.5μmのトナー母粒子を得た[分級工程]。
【0050】
<外添工程>
得られたトナー母粒子100質量部に、市販のシリカ微粒子(平均一次粒子径7nm、アエロジル社製、製品名:R976S)1.0質量部を加え、得られた混合物を気流混合機(ヘンシェルミキサ、三井鉱山株式会社(現 日本コークス工業株式会社)製、型式:FM20C)を用い、撹拌羽根の先端速度40m/秒の設定条件で2分間混合して外添トナーを得た[外添工程]。
【0051】
<樹脂被覆キャリアの製造工程>
コート樹脂(1)(シリコーン系、商品名:KR240、信越化学工業株式会社製)0.375重量部、及びコート樹脂(2)(商品名:KR251、信越化学工業株式会社製)0.375重量部をトルエン12重量部に溶解し、そこに導電性粒子(商品名:VULCAN XC-72、キャボット株式会社製)0.0375重量部、及びカップリング剤(商品名:AY43-059、東レ・ダウコーニング株式会社製)0.0225重量部を添加し、分散させることでコート樹脂液を調製した。浸漬法によって、前記コート樹脂液12.8重量部を用いて体積平均径40μmのフェライトキャリア芯材100重量部の表面を被覆した。その後、キュア温度200℃、キュア時間1時間の硬化過程を経て、目開き150μmのふるいにかけることでキャリアを作製した。
【0052】
<現像剤の製造工程>
得られた外添トナーと、樹脂被覆キャリアとを、二成分現像剤全量に対する外添トナー濃度が7質量%となるように、V型混合機(株式会社徳寿工作所製、商品名:V-5)に投入し、30分間混合して、トナー濃度7%の二成分現像剤を得た。
【0053】
(実施例2~12)
表1に示される結着樹脂を用いること以外は、実施例1と同様にして、外添トナーおよび現像剤を得た。
実施例5の結着樹脂には、液晶性ポリエステル系樹脂の樹脂Bの50質量%と、非晶性ポリエステル系樹脂の樹脂Kの34質量%を用いた。
樹脂Kには、芳香族系アルコール成分としてPO-BPA(プロポキシ化ビスフェノールA)とEO-BPA(エトキシ化ビスフェノールA)と酸成分としてフマル酸と無水メリット酸とを用いて合成された、フローテスター測定における流出開始温度Tiが105℃、溶融温度Tmが145℃、ピークトップ分子量Mpが12,000である非晶性ポリエステル系樹脂を用いた。
【0054】
また、実施例6の結着樹脂には、液晶性ポリエステル系樹脂の樹脂Bの45質量%と、非晶性ポリエステル系樹脂の樹脂Lの39質量%を用いた。
樹脂Lには、芳香族系アルコール成分としてPO-BPAとEO-BPAと酸成分としてフマル酸と無水メリット酸とを用いて合成された、フローテスター測定における流出開始温度Tiが104℃、溶融温度Tmが112℃、ピークトップ分子量Mpが5,500である非晶性ポリエステル系樹脂を用いた。
【0055】
(比較例1~2)
表1に示される結着樹脂を用いること以外は、実施例1と同様にして、外添トナーおよび現像剤を得た。
比較例1の結着樹脂には、液晶性ポリエステル系樹脂の代わりに、非晶性ポリエステル系樹脂の樹脂Lの84質量%を用いた。
【0056】
比較例2の結着樹脂には、液晶性ポリエステル系樹脂の代わりに、主鎖型液晶性ポリエステル系樹脂の樹脂Mの84質量%を用いた。
樹脂Mには、p-ヒドロキシ安息香酸を基本骨格とする主鎖を有する、ガラス転移温度Tgが45℃、液晶等方相転移温度Tniが210℃、ピークトップ分子量Mpが10,000である市販の主鎖型液晶性ポリエステル系樹脂を用いた。
【0057】
[評価]
下記の項目について、実施例1~12および比較例1~2において作製したトナーおよび二成分現像剤を評価し、それらの結果に基づいて総合評価した。得られた結果を表2に示す。
【0058】
[評価1:定着性(低温定着性および高温定着性)]
評価用に改造した市販複写機(シャープ株式会社製、型式:MX-M5100FN)を用いて、二成分現像剤の定着性を評価した。
まず、記録用紙(シャープ株式会社製、PPC用紙、型式:SF-4AM3)に、ベタ画像(縦20mm、横50mmの長方形)を含むサンプル画像を未定着画像として形成した。この際、ベタ画像におけるトナーの記録用紙への付着量が0.5mg/cm2になるよう調整した。
次に、ハードローラ定着装置を用いて定着画像を作製した。定着プロセス速度を120mm/秒とし、定着ローラの温度を110℃から5℃刻みで上げ、低温オフセットおよび高温オフセットがそれぞれ起こらない最低温度および最高温度を求めた。
「低温オフセット」および「高温オフセット」とは、定着時にトナーが記録用紙に定着せずに、定着ベルトに付着したまま定着ベルトが一周した後に記録用紙に付着することと定義する。
【0059】
得られた結果から「低温定着性」を次の基準により判定した。
A:最低温度が110℃未満
B:最低温度が110℃以上120℃未満
C:最低温度が120℃以上125℃未満
D:最低温度が125℃以上130℃未満
E:最低温度が130℃以上
また、得られた結果から「高温定着性」を次の基準により判定した。
A:最高温度が195℃以上)
B:最高温度が185℃以上195℃未満)
C:最高温度が180℃以上185℃未満)
D:最高温度が175℃以上180℃未満)
E:最高温度が175℃未満)
【0060】
[評価2:耐熱保存性]
高温保存後の凝集物の有無により耐熱保存安定性を評価した。
作製した外添トナー5gを秤量し(トナー全重量:g)、容量50mLのポリ容器に入れて密閉し、温度50℃で48時間放置した。その後、トナーを取り出し、200メッシュの篩で分級し、篩上に残存するトナーを秤量した(トナー篩上重量:g)。
予め秤量しておいたトナー全重量に対するトナー篩上重量の割合を残存量(%)として求め、下記の評価基準で耐熱保存性を評価した。
A:残存量が0.5%未満
B:残存量が0.5%以上7%未満
C:残存量が7%以上10%未満
D:残存量が10%以上12%未満
E:残存量が12%以上)
残存量の数値が低いほど、トナーがブロッキングを起こさず、トナー母粒子が被覆層で充分に被覆されていることを意味する。
【0061】
[総合判定]
上記の評価結果に基づいて、下記の基準で総合判定した。
A:すべての評価項目がAである(使用可能)
B:1つの評価項目にでもBがある(使用可能)
C:1つの評価項目にでもCがある(使用可能)
D:1つの評価項目にでもDがある(使用可能)
E:1つの評価項目にでもEがある(使用不可)
【0062】
【0063】
【0064】
表1および2から次のことがわかる。
(1)本発明の要件を備えたトナーを含む二成分現像剤(実施例1~12)は、低温定着性と耐熱保存性とを両立し得ること
(2)一方、本発明の要件を備えないトナーを含む二成分現像剤(比較例1および2)は、低温定着性と耐熱保存性とを両立し得ないこと
(3)ガラス転移温度Tgが低い樹脂を用いたトナーを含む二成分現像剤(実施例9)は、低温定着性に優れているものの高温定着性に劣っており、ガラス転移温度Tgが高い樹脂を用いたトナーを含む二成分現像剤(実施例10)は、高温定着性に優れているものの低温定着性に劣っている。このことから、ガラス転移温度Tgの好適領域内では高温・低温定着性を一定以上の水準で保てるが、より最適領域にガラス転移温度Tgを調整することで高温・低温定着性を必要十分以上の水準にできること
(4)側鎖型液晶性ポリエステルと非晶性ポリエステルを混合したトナーを含む二成分現像剤(実施例5および6)は、どちらも高温・低温定着性が劣っている。このことから、側鎖型液晶性ポリエステルを単体で用いることが好ましく、非晶性ポリエステルを添加することで側鎖型液晶性ポリエステルの特性の発現を阻害する可能性があること