(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】荷電したイオンチャンネル遮断薬および使用方法
(51)【国際特許分類】
C07D 295/088 20060101AFI20250708BHJP
C07D 213/20 20060101ALI20250708BHJP
A61K 31/55 20060101ALI20250708BHJP
A61K 31/395 20060101ALI20250708BHJP
A61K 31/5375 20060101ALI20250708BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20250708BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20250708BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20250708BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20250708BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20250708BHJP
A61P 11/14 20060101ALI20250708BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250708BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20250708BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20250708BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20250708BHJP
A61K 31/40 20060101ALI20250708BHJP
A61K 31/553 20060101ALI20250708BHJP
C07D 295/15 20060101ALI20250708BHJP
A61K 31/4425 20060101ALI20250708BHJP
【FI】
C07D295/088 CSP
C07D213/20
A61K31/55
A61K31/395
A61K31/5375
A61P1/16
A61P13/12
A61P17/00
A61P17/04
A61P25/02
A61P11/14
A61P29/00
A61P15/00
A61P31/00
A61K9/08
A61K31/40
A61K31/553
C07D295/15
A61K31/4425
(21)【出願番号】P 2022554607
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(86)【国際出願番号】 US2021021697
(87)【国際公開番号】W WO2021183639
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2024-03-06
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522175864
【氏名又は名称】ノシオン セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】コール,ブリジット,マッカーシー
(72)【発明者】
【氏名】エリス,ジェームズ,ラモンド
【審査官】土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第00924961(GB,A)
【文献】特開昭55-133358(JP,A)
【文献】特表2008-529965(JP,A)
【文献】仏国特許発明第01549152(FR,A)
【文献】米国特許第05212183(US,A)
【文献】特開昭56-061335(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0258774(US,A1)
【文献】国際公開第2020/185830(WO,A1)
【文献】R. K. Joshi, L. Krasnec, I. Lacko,Studies on Solubilization. (Part I). Note on the synthesis of some quaternary N-(ω-aryloxyalkyl) piperidinium, pyridinium, benzyl-dimethyl-ammonium, and trimethyl-ammonium bromides,HelvChimAct.,1971年,54,112-117
【文献】Rubinstein, K.; Elming, N.; Fakstorp, J.; Hermansen, K.; Pedersen, J. G. A.; Jacobsen, T. Natvig,Antispasmodic ortho-substituted phenoxyalkylamines,Journal of Medicinal Chemistry ,1966年,9(6),804-9
【文献】Huifeng Yue, Chen Zhu, Li Shen, Qiuyang Geng, Katharina J. Hock, Tingting Yuan, Luigi Cavallo, Magnus Rueping,Nickel-catalyzed C-N bond activation: activated primary amines as alkylating reagents in reductive cross-coupling,Chemical Science,2019年,10,p.4430, Supporting Information
【文献】Johansson, John G., et al.,Cyclizing compounds. II. Tertiary N-[2-(2,6-dimethylphenoxy)ethyl]-N-haloalkylamines with local anesthetic action,Acta Pharmaceutica Suecica ,1973年,10(3),199-208
【文献】Pesson, Marcel; Schmitt, Henri; Rajzman, P.,β-Phenoxyisopropylamines. II. New derivatives substituted on the nitrogen,Archives Internationales de Pharmacodynamie et de Therapie,1956年,108,153-69
【文献】Schmitt, Henri; Gonnard, Pierre; Glikman, Gabriel,Inhibiting action of some β-phenoxyisopropylamines on amine oxidase,Bulletin de la Societe de Chimie Biologique,1955年,37,147-54
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、
Y
-は薬学的に許容され得るアニオンであり;
R
A、R
BおよびR
Cはそれぞれ独立して、H、D、ハロゲン、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、OR
I、CN、CF
3、NR
JR
K、NR
LC(O)R
M、S(O)R
N、S(O)
2R
N
、SO
2NR
QR
R、SO
3R
S、CO
2R
T;C(O)R
UおよびC(O)NR
VR
Wから選択され;
R
I、R
J、R
K、R
L、R
M、R
N
、R
Q、R
R、R
S、R
T、R
U、R
VおよびR
Wのそれぞれは独立して、H、D、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキルから選択され;R
JおよびR
KまたはR
VおよびR
WまたはR
QおよびR
Rはまた、それらが結合する窒素と一緒になって、置換または非置換の5、6、7または8員の環を形成し得るか;あるいは
R
A、R
Bおよび/またはR
Cは、それらが結合するフェニル環と一緒になって、縮合二環式または三環式の環
系を形成し得;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6は独立して、水素、C
1-C
4アルキル、シクロアルキル、C
1-C
4ヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリー
ルから選択されるか;
あるいはR
1、R
2、R
3、R
4、R
5および/またはR
6は、それらが結合する
1つまたは複数の炭
素と一緒になって、置換もしくは非置換シクロアルキ
ルまたは置換もしくは非置換複素
環を形成し;
nは0、1、2、3、4または5であり;
R
FおよびR
Gは、N
+と一緒になって
:
【化2】
(式中R
7
は水素または置換もしくは非置換アルキルである)
から選択される置換または非置換の環から選択される環を形成し;
R
Hは、
ベンジルまたは置換ベンジルである)
により表される化合物。
【請求項2】
R
Aが、H、メチル、ハ
ロ、CF
3、CN、CO
2R
TまたはOR
I
から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R
Bが、Hおよびメチ
ルから選択される、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
R
Cが、H、メチル、ハ
ロ、CF
3、CN、CO
2R
TまたはOR
I
から選択される、請求項1~3いずれか記載の化合物。
【請求項5】
各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5および/またはR
6が水素である、請求項1~4いずれか記載の化合物。
【請求項6】
R
1がメチルまたはエチルであり、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6が水素である、請求項1~4いずれか記載の化合物。
【請求項7】
R
3がメチルまたはエチルであり、R
1、R
2、R
4、R
5およびR
6が水素である、請求項1~4いずれか記載の化合物。
【請求項8】
nが0である、請求項1~7いずれか記載の化合物。
【請求項9】
nが1である、請求項1~7いずれか記載の化合物。
【請求項10】
nが3である、請求項1~7いずれか記載の化合物。
【請求項11】
R
F
およびR
G
により形成される環が非置換である、請求項
1記載の化合物。
【請求項12】
式(I
I):
【化3】
(式中:
Y
-は薬学的に許容され得るアニオンであり;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6は独立して、水素、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4ヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリー
ルから選択され;
nは0、1、2、3、4または5であり;
qは
3である)
により表される化合物。
【請求項13】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6が水素である、請求項
12記載の化合物。
【請求項14】
R
1がメチルであり、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6が水素である、請求項
12記載の化合物。
【請求項15】
R
3がメチルであり、R
1、R
2、R
4、R
5およびR
6が水素である、請求項
12記載の化合物。
【請求項16】
nが0である、請求項
12~15いずれか記載の化合物。
【請求項17】
nが1である、請求項
12~15いずれか記載の化合物。
【請求項18】
nが2である、請求項
12~15いずれか記載の化合物。
【請求項19】
nが3である、請求項
12~15いずれか記載の化合物。
【請求項20】
nが4である、請求項
12~15いずれか記載の化合物。
【請求項21】
nが5である、請求項
12~15いずれか記載の化合物。
【請求項22】
Y-が臭化物または塩化物である、請求項1~
21いずれか記載の化合物。
【請求項23】
請求項1~
22いずれか記載の化合物および薬学的に許容され得る賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項24】
前記組成物が局所または皮膚投与のために製剤化される、請求項
23記載の組成物。
【請求項25】
患者においてかゆみ、疼痛、咳または神経性炎症性障害を治療するための請求項
23または
24記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記かゆみが、そう痒、腕橈骨筋そう痒、慢性特発性そう痒、生殖器/肛門そう痒、背部感覚異常、頭皮そう痒、アレルギー性皮膚炎、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、手の湿疹、ツタウルシ、感染、寄生生物、昆虫の噛み傷、妊娠、代謝障害、肝臓または腎臓の不全、薬物反応、アレルギー反応、湿疹、生殖器および肛門のかゆみ、痔のかゆみおよび癌のためのかゆみからなる群より選択される、請求項
25記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2020年3月11日に出願された米国出願第16/815,426号の一部継続である。上記出願の全内容は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
本発明は一般的に、疼痛、咳およびかゆみ知覚ニューロン(侵害受容器、咳受容器およびそう痒受容器(pruriceptor))の選択的阻害剤としてならびに神経性炎症の治療に有用な第4級アンモニア化合物、医薬組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
本発明は、感覚ニューロンの選択的阻害および非侵害受容ニューロンまたは他の種類の細胞に対する効果を最小にしながら、小分子薬物を用いて侵害受容器を標的化することによるかゆみおよび/または神経性炎症の治療のための化合物、組成物および方法を特徴とする。本発明の方法によると、小さなカチオン性薬物分子は、他の種類のニューロンまたは他の種類の組織内にはより低い程度で存在するかまたは全くないが、かゆみ知覚ニューロンに存在する大孔型受容体(large pore receptor)/イオンチャンネルを通る進入を介して感覚ニューロンの細胞内区画へのアクセスを獲得する。
【0004】
リドカイン、アルチカインおよびプラモカインなどの局所麻酔剤は、ニューロン内で電位依存性ナトリウムチャンネルを阻害することにより働く。これらの麻酔剤はナトリウムチャンネル、およびそれにより疼痛知覚ニューロン(侵害受容器)だけではない全てのニューロンの興奮性を遮断する。したがって、局所または領域的な麻酔の目的は、侵害受容器内のシグナルの伝達を遮断して、疼痛を防ぐことであるが、局所麻酔剤の投与はまた、低閾値圧および触覚受容体(touch receptor)の遮断による一般的なしびれ、運動軸索の遮断による運動の欠損および/または麻痺ならびに自律神経線維の遮断による他の合併症などの望ましくないかまたは有害な効果を生じる。局所麻酔は、細胞膜を通って拡散することにより、ナトリウムチャンネル上のそれらの遮断部位へのアクセスを獲得する比較的疎水性の分子である。膜透過性ではないこれらの化合物の荷電した誘導体は、神経膜の外表面に適用される場合にニューロン性ナトリウムチャンネルに対して効果を有さないが、例えば単離されたニューロンからの細胞全体電気生理学的記録のために使用されるマイクロピペットからの拡散によりどうにかして細胞内部に導入されると、ナトリウムチャンネルを遮断し得る。疼痛、咳およびかゆみを知覚するニューロンは、痛い熱により、またはチリペッパー中の刺激のある成分であるカプサイシンにより活性化されるTRPV1受容体/チャンネルを(ほとんどの場合に)発現する点で他の種類のニューロンとは異なる。種々の疼痛を知覚、咳を知覚およびかゆみを知覚(そう痒受容器)するニューロン中で選択的に発現される他の種類のチャンネルとしては、限定されないが、TRPV2-4、TRPA1、TRPM8、ASICおよびP2X(2/3)チャンネルが挙げられる。QX-314などのいくつかのカチオン性小分子は、TRPV1などの活性化された大孔型チャンネルを通過することを介して細胞に進入し得ることが十分に確立される。
【0005】
ニューロパシー性、炎症性および侵害受容性の疼痛は、その病因、病態生理学、診断および治療において異なる。侵害受容性の疼痛は、激しいかまたは有害な刺激による高閾値末梢感覚ニューロンである侵害受容器の特定のサブセットの活性化に応答して起こる。これは一般的に、急性で、自己限定的であり、潜在的または進行性の組織損傷の警告として働くことにより防護的な生物学的機能に役立つ。これは典型的に、良好に局在化される。侵害受容性の疼痛の例としては、限定されないが、外傷性または外科的手術の疼痛、分娩の疼痛、捻挫、骨折、熱傷、衝突、挫傷、注射、歯科的処置、皮膚生検および閉塞が挙げられる。
【0006】
炎症性疼痛は、術後を含む組織の損傷または炎症の存在下で生じる疼痛(すなわち組織外傷(例えば外科的切開、解剖、熱傷)または直接的な神経損傷(例えば神経の離断、伸びまたは圧縮)により引き起こされる炎症により生じる急性の手術時の疼痛に関連する疼痛)、外傷後の疼痛、関節炎性疼痛(リウマチ様;または変形性関節症(すなわち関節軟骨の漸進的な悪化のための関節の疼痛および剛性;リスク因子としては加齢、損傷および肥満が挙げられ;一般的に罹患した関節は、手、手首、頸部、膝、臀部および脊椎である)、疼痛ならびに軸性腰痛(axial low back pain)の場合のような関節、筋肉および腱に対する損傷に関連する疼痛(すなわち背部の下部が罹患する一般に存在する(prevalent)痛い状態;一般的な原因としては筋肉の緊張、脊椎骨折、腫脹したまたは断裂した椎間板(disc)および関節炎が挙げられる)であり、重度の侵害受容性疼痛は、関連する組織損傷がある場合、炎症性疼痛に移行し得る。
【0007】
ニューロパシー性の疼痛は、末梢または中枢神経系の損傷または機能不全の結果であり、防護的な生物学的機能に役立たない、一般的な種類の慢性、非悪性の疼痛である。米国の人口中1,600,000人より多くが罹患すると推定される。ニューロパシー性の疼痛は、多くの異なる病因を有し、例えば外傷、外科手術、椎間円板のヘルニア形成、脊髄損傷、糖尿病、帯状疱疹(herpes zoster)(帯状ヘルペス(shingles))による感染、HIV/AIDS、後期の癌、切断(乳房切除を含む)、手根管症候群、慢性的なアルコールの使用、放射線への曝露のために、ならびに特定の抗HIVおよび化学療法薬などの神経毒性治療剤の意図されない副作用として起こり得る。末梢ニューロパシーは、身体の対応する領域においてしびれおよび疼痛を引き起こす損傷、外傷、延長された圧力または炎症からの末梢神経への損傷により引き起こされる。
【0008】
ニューロパシー性の疼痛は、自然には、頻繁に「焼けるような(burning)」、「びりびりする(electric)」、「ヒリヒリする(tingling)」または「ずきずきする(shooting)」と記載される。これはしばしば、慢性の動的な異痛(軽く触れることなどの通常は痛い応答を誘発しない動きの刺激により生じる疼痛として定義される)および痛覚過敏(通常の痛い刺激に対する増加した感受性として定義される)を特徴とし、任意の損傷した組織の眼に見える治癒を超えて数カ月または数年間持続し得る。
【0009】
疼痛は、癌を有する患者中で起こり得、複数の原因;炎症、圧縮、侵入、骨または他の組織への転移性の拡散のためであり得る。
【0010】
機能不全性疼痛と称される、疼痛が、有害な刺激、組織損傷または神経系に対する病変の非存在下で起こるいくつかの状態があり、これらとしては、限定されないが、線維筋痛症、緊張型頭痛および過敏性腸障害が挙げられる。
【0011】
片頭痛は、脳の髄膜に神経を分布する感覚線維の活性化に関連する頭痛である。
【0012】
かゆみ(そう痒)は、局在化および一般化され得る皮膚科学的状態であり、皮膚の病変(発疹、アトピー湿疹、膨疹)に関連し得る。かゆみは、限定されないが、ストレス、不安、太陽からのUV照射、代謝性および内分泌性の障害(例えば肝臓または腎臓疾患、甲状腺機能亢進症)、癌(例えばリンパ腫)、薬物または食物に対する反応、寄生生物および真菌の感染、アレルギー反応、血液の疾患(例えば真正赤血球増加症)ならびに皮膚科学的状態を含む多くの状態を伴う。かゆみは、小さい直径の原発性感覚ニューロンのサブセットであるそう痒受容器により媒介され、該ニューロンは限定されないが、TRPV1チャンネルおよび他の大孔型チャンネル(例えばTRPV2-4、TRPA1、TRPM8、ASICおよびP2X(2/3)の発現を含む侵害受容器ニューロンの多くの特徴を共有する。エイコサノイド、ヒスタミン、ブラジキニン、ATPおよび種々の神経栄養物質などの特定のかゆみメディエーターは、エンドバニロイド(endovanilloid)機能を有する。局所的なカプサイシンは、ヒスタミン誘導性のかゆみを抑制する。そのため侵害受容器のようなそう痒受容器は、イオンチャンネル遮断薬を送達するこの方法の適切な標的である。
【0013】
咳は、異物から気道を保護し、管腔残骸の除去を補助するように設計される防御的反射である。しかしながらこの反射は、いくつかの疾患において異常になり得、過剰なまたは異型の咳(hyper- or allo-tussive)状態が存在する非増殖性(non-productive)の乾燥した咳をもたらす。過剰なおよび異型の咳状態はしばしば、自然には慢性であり、3か月よりも長く持続し、喘息、COPD、喘息-COPDオーバーラップ症候群(asthma-COPD overlap syndrome)(ACOS)、間質性肺線維症(IPF)および肺癌を含む多くの気道疾患状態において発現され得る。また、不適切な咳反射は、ウイルス感染後に急性的および慢性的に発現され得る。さらに、慢性の咳は、未知の病因を伴って、自然には特発性であり得る。
【0014】
神経性炎症は、感覚ニューロンの遠心性(運動)機能により媒介される炎症の形態であり、ここで疼痛知覚ニューロン(侵害受容器)により末梢に放出される前炎症性メディエーター分子は、免疫細胞において種々の炎症経路を活性化し、また血流および毛細管透過性を変化させるために脈管系に対して作用する。
【0015】
神経性炎症は、種々の組織において組織損傷、自己免疫疾患、感染、アレルギー、刺激物への曝露により誘起される末梢の炎症の一因となり、多くの障害(例えばアレルギー性炎症、炎症性腸疾患、間質性膀胱炎、アトピー性皮膚炎、喘息、結膜炎、関節炎、大腸炎、接触皮膚炎、糖尿病、湿疹、膀胱炎、胃炎、片頭痛、乾癬、鼻炎、酒さ、日焼け、膵臓炎、慢性の咳、慢性鼻副鼻腔炎、外傷性脳損傷、多菌性(polymicrobial)敗血症、腱障害(tendinopathy)、慢性蕁麻疹、リウマチ病、急性肺損傷、刺激物への曝露、刺激物、汚染物質または化学兵器剤(chemical warfare agents)の吸入)の病因において重要な役割を果たすと考えられる。神経性炎症を低減するための1つの方法は、侵害受容器において興奮性を遮断し、それにより侵害受容器末梢末端の活性化および前炎症性メディエーターの放出を防ぐことである。
【0016】
疼痛、かゆみおよび神経性炎症のための種々の治療の開発に関わらず、さらなる薬剤の必要性がある。
【発明の概要】
【0017】
発明の概要
本発明は、かゆみ、疼痛、咳および神経性炎症を治療または予防するために使用され得る式(I):
【化1】
により表される化合物を提供し、
式中:
Y
-は薬学的に許容され得るアニオンであり;
R
A、R
BおよびR
Cはそれぞれ独立して、H、D、ハロゲン、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、OR
I、CN、CF
3、NR
JR
K、NR
LC(O)R
M、S(O)R
N、S(O)
2R
N、SO
2R
OR
P、SO
2NR
QR
R、SO
3R
S、CO
2R
T;C(O)R
UおよびC(O)NR
VR
Wから選択され;
R
I、R
J、R
K、R
L、R
M、R
N、R
O、R
P、R
Q、R
R、R
S、R
T、R
U、R
VおよびR
Wのそれぞれは独立して、H、D、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換アルキニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキルから選択されるか;またはR
JおよびR
KもしくはR
VおよびR
WもしくはR
QおよびR
Rはまた、それらが結合する窒素と一緒になって、置換もしくは非置換の5、6、7もしくは8員の環を形成し得;
R
A、R
Bおよび/またはR
Cは、それらが結合するフェニル環と一緒になって、縮合二環式または三環式の環系、例えばナフチル、ジヒドロインデニル、テトラヒドロナフチル、キノリニル、インドリル等を形成し得;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6は独立して、水素、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4ヘテロアルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール、好ましくは水素、メチルまたはエチルから選択され;
nは0、1、2、3、4および5であり;
あるいはR
1、R
2、R
3、R
4、R
5および/またはR
6は、それらが結合する炭素(1つまたは複数)と一緒になって、置換もしくは非置換シクロアルキル(例えばC
3-C
6シクロアルキル)または置換もしくは非置換複素環式(例えば3-~15-員の複素環式環)を形成し;
R
FおよびR
Gは、N
+と一緒になって、N
+に加えて0、1またはそれ以上のヘテロ原子を有する任意に置換される複素環式環、例えば限定されないがヘテロアリール環を形成し;例えばR
E、R
FおよびR
Gの2つは、N
+と一緒になって、N
+に加えて0、1またはそれ以上のヘテロ原子を有する複素環式環を形成し;
R
Hは、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換アルキニル、例えば-CH
2-シクロアルキル、-C
2H
4-シクロアルキル、置換もしくは非置換-CH
2-C
5-C
10アリール、置換もしくは非置換-C
2H
4-C
5-C
10アリール、置換もしくは非置換-CH
2-C
5-C
10ヘテロアリール、置換もしくは非置換-C
2H
4-C
5-C
10ヘテロアリール、-CH
2OC(O)R
T、-CH
2CO
2R
T、-CH
2C(O)NR
VR
W、-C
2H
4OCOR
T、-C
2H
4OR
Iから選択されるか、または
R
F、R
GおよびR
Hは、N
+と一緒になって、置換もしくは非置換ヘテロアリール環(例えばピリジニルまたはフェニル-ピリジニル)または架橋複素環式環を形成する。
【0018】
本発明は、該化合物が、かゆみの治療に特に活性であるという驚くべき発見を含む。該化合物は驚くべき高い能力および優れた局所局在化を有し、化合物を、皮膚適用に驚くほど適切なものにする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図面の簡単な説明
【
図1】
図1A、1Bおよび1Cは、代表的な化合物が、局所投与後8時間までにクロロキン誘導かゆみを有意に低減することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
本発明は、上記の式(I)により表される化合物またはその薬学的に許容され得る塩、立体異性体、溶媒和物、水和物または組合せを提供する。本発明はまた、式(I)を有する化合物またはその薬学的に許容され得る塩を含む組成物、例えば式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩の有効量および薬学的に許容され得る賦形剤を含む組成物を提供する。本発明の組成物はさらに、本発明の化合物および生物学的活性剤を含み得る。組成物は、経口、静脈内、筋内、直腸、皮膚、皮下、局所、経皮、舌下、鼻腔、吸入、膣、鞘内、硬膜外または眼内の投与のために製剤化され得る。しかしながら、好ましい組成物は、局所または皮膚投与のために製剤化され得る。
【0021】
本発明はさらに、患者に式(I)を有する化合物を含む組成物を投与する工程を含む、患者においてかゆみ、そう痒(pruritis)、乾癬またはアトピー性皮膚炎を治療するための方法を提供する。
【0022】
本明細書で使用する場合、用語「a」および「an」は、そうではないと特定されない限り1つ以上を含むことを意味する。
【0023】
「生物学的に活性」は、核酸、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質などの生物学的分子を含む分子が、タンパク質、酵素、受容体、リガンド、抗原、それ自体または他の分子に対して生物学的、物理的または化学的な効果活性を発揮することを意味する。例えば、「生物学的に活性」な分子は、例えば酵素活性、タンパク質結合活性または薬理学的活性を有し得る。
【0024】
本明細書に記載される方法およびキットにおいて使用され得る生物学的に活性な薬剤としては、限定されることなく、TRPA1受容体アゴニスト、TRPV1-4受容体アゴニスト、ASICアゴニスト、TRPM8アゴニスト、P2X受容体アゴニスト、NSAID、グルココルチコイド、麻酔薬、抗増殖性および免疫調節剤、抗体または抗体断片、抗生物質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、抗癌剤、成長因子およびワクチンが挙げられる。
【0025】
用語「かゆみ」は、最も広い意味で本明細書において使用され、急性断続的および持続的の局在化され、一般化されたかゆいおよび刺されるような感覚をいう。かゆみは、肝臓、腎臓の疾患または癌のために特発性、アレルギー性、代謝性、感染性、薬物誘導性であり得る。「そう痒」は重度のかゆみである。
【0026】
「炎症」は、免疫系(免疫媒介性炎症)により、および神経系(神経性炎症)により引き起こされるものなどの任意の種類の炎症、ならびに赤み、熱、腫脹、疼痛および/または機能の喪失などの炎症の任意の症状を意味する。皮膚の炎症が好ましい。
【0027】
「神経性炎症」は、ニューロン(例えば侵害受容器)または中枢もしくは末梢神経系の任意の他の構成要素により媒介または寄与される任意の種類の炎症を意味する。皮膚の神経性炎症が好ましい。
【0028】
用語「疼痛」は、本明細書において最も広い意味で使用され、急性および慢性の疼痛、例えば侵害受容性疼痛、例えば肉体の疼痛および内臓の疼痛;炎症性疼痛、機能異常性疼痛、特発性疼痛、ニューロパシー疼痛、例えば中心に生じる疼痛および末梢に生じる疼痛、片頭痛および癌の疼痛などの全ての種類の疼痛をいう。皮膚の疼痛が好ましい。
【0029】
用語「侵害受容性疼痛」は、限定されることなく、例えば切り傷、挫傷、骨折、押し潰された損傷、熱傷等による、身体組織を脅かすまたは実際に傷つける有害な刺激により引き起こされる全ての疼痛を含むために使用される。組織損傷のための疼痛受容体(侵害受容器)は、ほとんどが、皮膚、筋骨格系または内部臓器、好ましくは皮膚または真皮に位置する。
【0030】
用語「肉体の疼痛」は、骨、関節、筋肉、皮膚または結合組織、好ましくは皮膚および皮膚に隣接する組織から生じる疼痛をいうために使用される。この種類の疼痛は典型的に、十分に局在化される。
【0031】
用語「内臓の疼痛」は、呼吸器、胃腸管および膵臓、尿路および生殖臓器などの内臓臓器から生じる疼痛をいうために本明細書において使用される。内臓の疼痛としては、臓器被膜の腫瘍巻き込み(tumor involvement)により引き起こされる疼痛が挙げられる。典型的に中空の内臓の閉塞により引き起こされる別の種類の内臓疼痛は、断続的な痙攣および不十分に局在化した疼痛を特徴とする。内臓の疼痛は、膀胱炎または逆流性食道炎におけるものなどの炎症に関連し得る。
【0032】
用語「炎症性疼痛」は、外傷、外科手術、感染および自己免疫疾患により引き起こされ得る活性な炎症に関連する疼痛を含む。
【0033】
用語「ニューロパシー疼痛」は、末梢または中枢の神経系に対する病変の結果として生じるこれらの系による感覚入力の異常な処理により生じる疼痛をいうために本明細書において使用される。
【0034】
用語「処置による疼痛(procedural pain)」は、医学的、歯科的または外科的処置から生じる疼痛をいい、ここで該処置は通常、急性外傷により計画されるかまたは関連する。
【0035】
「患者」は任意の動物を意味する。一態様において、患者はヒトである。本発明の方法、組成物およびキットを使用して治療され得る他の動物としては、限定されないが、非ヒト霊長類(例えばサル、ゴリラ、チンパンジー)、家畜化された動物(例えばウマ、ブタ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、畜牛、ラマ)およびコンパニオン動物(例えばモルモット、ラット、マウス、トカゲ、ヘビ、イヌ、ネコ、魚、ハムスターおよびトリ)が挙げられる。
【0036】
本発明において有用な化合物としては、限定されないがそのジアステレオマーおよびエナンチオマーなどの異性体、塩、エステル、アミド、チオエステル、溶媒和物および多型、ならびに本明細書に記載される化合物のラセミ混合物および純粋な異性体などの、それらの薬学的に許容され得る形態のいずれかの本明細書に記載されるものが挙げられる。
【0037】
用語「薬学的に許容され得るアニオン」は、本明細書で使用する場合、薬学的に許容され得る酸の共役塩基をいう。かかる酸は、Stahl, P.H. and Wermuth, C.G. (eds.), Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection and Use, Wiley VCH (2008)に記載される。薬学的に許容され得る酸としては、限定されないが、酢酸、ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、L-アスコルビン酸、L-アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、4-アセトアミド安息香酸、安息香酸、p-ブロモフェニルスルホン酸、(+)-ショウノウ酸、(+)-ショウノウ-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、桂皮酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、硫酸、ホウ酸、クエン酸、蟻酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、D-グルコヘプトン酸、D-グルコン酸、D-グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2-オキソグルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、イソ酪酸、DL-乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、(-)-L-リンゴ酸、マロン酸、DL-マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、(-)-L-ピログルタミン酸、サリチル酸(salicyclic acid)、4-アミノサリチル酸(aminosalicyclic acid)、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、(+)-L-酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸およびウンデシレン酸が挙げられる。薬学的に許容され得るアニオンとしては上述の任意の酸の共役塩基が挙げられる。
【0038】
用語「薬学的に許容され得る塩」は、過度な毒性、刺激性、アレルギー応答等がなくヒトおよび下等動物の組織との接触における使用に適切な、妥当な医学的判断の範囲内にあり、妥当な利益/リスク比で釣り合う塩を表す。塩は、本発明の化合物の最終的な単離および精製の間にインサイチュで、または遊離塩基官能基を適切な有機酸と反応させることにより別々に調製され得る。代表的な酸付加塩としては、限定されないが、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩(pectinate)、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩等が挙げられる。
【0039】
「D」は重水素である。
【0040】
本明細書で使用する場合、用語「アルキル」および接頭辞「アルキ-(alk-)」は、直鎖および分岐鎖の基の両方ならびに環式基、すなわちシクロアルキルを含む。環式基は、単環式または多環式であり得、好ましくは3~6個の環炭素原子を、両端を含めて有し得る。例示的な環式基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシル基が挙げられる。「C
1-*アルキル」は、1~*個の炭素原子を有する分岐、非分岐または環式の炭化水素基を意味し、ここで*は、例えば2、3、4、5、6、7、8、10、12またはそれ以上の整数である。アルキル基は、置換され得るかまたは非置換であり得る。例示的な置換基としては、アルコキシ、アリールオキシ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、ハロゲン化物(F、Cl、BrまたはI)、ヒドロキシル、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、オキソ、アミノ、アルキルアミノ、二置換アミノ、第4級アミノ、アミド、エステル、アルキルカルボキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、アリール、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分が挙げられる。特定の局面において、アルキルはC
1-C
6アルキルである。C
1-6アルキルとしては、限定されることなく、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、シクロプロピルメチル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、シクロブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシルおよびシクロヘキシルが挙げられる。置換されるアルキルの別の特定の例は:
【化2】
などのホモダイマーまたはヘテロダイマーを形成する部分である。
【0041】
置換されるアルキルの別の例はヘテロアルキルである。「ヘテロアルキル」は、N、O、SおよびPからなる群より独立して選択される1、2、3または4個のヘテロ原子に加えて1~7またはそれ以上の炭素原子を有する、分岐または非分岐のアルキル、シクロアルキル、アルケニルまたはアルキニル基を意味する。ヘテロアルキルとしては、限定されないが、第3級アミン、第2級アミン、エーテル、チオエーテル、アミド、チオアミド、カルバメート、チオカルバメート、ヒドラゾン、イミン、ホスホジエステル、ホスホロアミデート、スルホンアミドおよびジスルフィドが挙げられ得る。ヘテロアルキルとしては任意に、それぞれの環が望ましくは3~6員を有する単環式、二環式または三環式の環が挙げられ得る。ヘテロアルキル基は、置換され得るかまたは非置換であり得る。例示的な置換基としては、アルキル、アルコキシ、アリールオキシ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、ハロゲン化物(F、Cl、BrまたはI)、ヒドロキシル、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、オキソ、アミノ、アルキルアミノ、二置換アミノ、第4級アミノ、アミド、エステル、アルキルカルボキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルフォナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、アリール、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分が挙げられる。C1-7ヘテロアルキルの例としては、限定されないがメトキシメチルおよびエトキシエチルが挙げられる。
【0042】
アルケニルは、1つ以上の二重結合を含む分岐または非分岐の炭化水素基である。例えば、「C2-6アルケニル」または「C2-C6アルケニル」は、1つ以上の二重結合を含み、2~6個の炭素原子を有する分岐または非分岐の炭化水素基を意味する。アルケニルとしては任意に、それぞれの環が望ましくは3~6員を有する単環式または多環式の環が挙げられ得る。アルケニル基は、置換され得るかまたは非置換であり得る。例示的な置換基としては、アルキルについて上記されるものが挙げられ、具体的には、アルコキシ、アリールオキシ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、ハロゲン化物、ヒドロキシル、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、二置換アミノ、第4級アミノ、アルキルカルボキシおよびカルボキシル基が挙げられる。C2-6アルケニルとしては、限定されないが、ビニル、アリル、2-シクロプロピル-1-エテニル、1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-メチル-1-プロペニルおよび2-メチル-2-プロペニルが挙げられる。
【0043】
アルキニルは、1つ以上の三重結合を含む分岐または非分岐の炭化水素基である。例えば、「C2-6アルキニル」または「C2-C6アルキニル」は、1つ以上の三重結合を含み、2~6個の炭素原子を有する分岐または非分岐の炭化水素基を意味する。アルキニルとしては任意に、それぞれの環が望ましくは5または6員を有する単環式、二環式または三環式の環が挙げられ得る。アルキニル基は、置換され得るかまたは非置換であり得る。例示的な置換基は、アルキルについて上記されるものであり、具体的には、アルコキシ、アリールオキシ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、ハロゲン化物、ヒドロキシ、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、二置換アミノ、第4級アミノ、アルキルカルボキシおよびカルボキシル基が挙げられる。C2-6アルキニルとしては、限定されないが、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニルおよび3-ブチニルが挙げられる。
【0044】
「ヘテロシクリル」、「複素環式」または「ヘテロシクロアルキル」は、飽和されるか、部分的に不飽和であるかまたは不飽和であり(ヘテロアリールまたは芳香族を含む)、2以上の炭素原子ならびにP、N、OおよびSから独立して選択される1、2、3 4またはそれ以上のヘテロ原子からなり、先に定義される複素環式環のいずれかがベンゼン環、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルに縮合される任意の二環式または多環式の基を含む、安定な単環式または多環式(二環式または三環式を含む)の複素環式環を意味する。特定の局面において、ヘテロシクリルは、3-~15員の環系、3-~12員の環系または3-~9員の環系である。ヘテロシクリル(例えばヘテロアリール基)は、置換され得るかまたは非置換であり得る。例示的な置換基としては、置換または非置換のアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、ハロゲン化物(F、Cl、BrまたはI)、ヒドロキシル、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、オキソ、アミノ、アルキルアミノ、二置換アミノ、第4級アミノ、アミド、エステル、アルキルカルボキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、アシルアミノ(例えばアルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイド)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、アリール、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分が挙げられる。窒素および硫黄ヘテロ原子は任意に酸化され得る。複素環式環は、安定な構造を生じるヘテロ原子または炭素原子を介して共有結合され得、例えばイミダゾリニル環は、環炭素原子位置または窒素原子のいずれかで結合され得る。複素環中の窒素またはリン原子は、第4級化され得る(quaternized)。好ましくは複素環中のSおよびO原子の総数が1を超える場合、これらのヘテロ原子は互いに隣接しない。複素環としては、限定されないが、1H-インダゾール、2-ピロリドニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、2H-ピロリル、3H-インドリル、4-ピペリドニル、4aH-カルバゾール、4H-キノリジニル、6H-1,2,5-チアジアジニル、アクリジニル、アゾシニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾテトラゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイミダザロニル(benzimidazalonyl)、カルバゾリル、4aH-カルバゾリル、b-カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3-b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H-インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニルペリミジニル(perimidinyl)、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナルサジニル(phenarsazinyl)、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル(phenoxathiinyl)、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、プテリジニル、ピペリドニル、4-ピペリドニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H-キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、カルボリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、6H-1,2,5-チアジアジニル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、チアントレニル(thianthrenyl)、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、トリアジニル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,2,5-トリアゾリル、1,3,4-トリアゾリル、キサンテニルβ-ラクタム、γ-ラクタムおよびδ-ラクタムが挙げられる。好ましい5~10員複素環としては、限定されないが、ピリジニル、ピリミジニル、トリアジニル、フラニル、チエニル、チアゾリル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、テトラゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、1H-インダゾリル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、オキソインドリル(oxindolyl)、ベンゾオキサゾリニル、キノリニルおよびイソキノリニルが挙げられる。好ましい5~6員複素環としては、限定されることなく、ピリジニル、キノリニル、ピリミジニル、トリアジニル、フラニル、チエニル、チアゾリル、ピロリル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリルおよびテトラゾリルが挙げられる。好ましい置換基としては、フェニル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オキソ、クロロ、ブロモ、フルオロおよびヨードが挙げられる。
【0045】
「アリール」は、共役したπ電子を有する炭素原子で構成される環系を有する芳香族基(例えばフェニル)を意味する。「C6-C12アリール」または「C6-C10アリール」は、6~12個の炭素原子または6~10個の炭素原子のそれぞれを有するアリール基である。アリール基としては任意に、それぞれの環が望ましくは5または6員を有する単環式、二環式または三環式の環が挙げられ得る。環系は、縮合され得る(例えばナフチル)かまたは縮合され得ない(ビフェニル)。アリール基は、置換され得るかまたは非置換であり得る。例示的な置換基としては、置換または非置換のアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、ハロゲン化物(F、Cl、BrまたはI)、ヒドロキシル、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、オキソ、アミノ、アルキルアミノ、二置換アミノ、第4級アミノ、アミド、エステル、アルキルカルボキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、アシルアミノ(例えばアルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイド)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、アリール、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分が挙げられる。
【0046】
「アラルキル」は、置換または非置換のアリール(例えば(例えばベンジル、フェネチルまたは3,4-ジクロロフェネチル)を含む)により置換される置換のアルキルまたは非置換のアルキルを意味する。「ヘテロアラルキル」は、ヘテロアリール基により置換されるかまたはヘテロアリール基である置換または非置換のアルキルを意味する。
【0047】
「ハロゲン化物」または「ハロゲン」は、臭素、塩素、ヨウ素またはフッ素を意味する。
【0048】
「フルオロアルキル」は、パーフルオロアルキル基などの1つ以上のフッ素原子により置換されるアルキル基を意味する。トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチルおよびヘプタフルオロエチルが例である。
【0049】
「アルコキシ」は、式-O-R(式中、Rは、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルケニルまたは置換もしくは非置換のアルキニルである)を有する化学部分を意味する。
【0050】
「アルキルカルボキシ」は、式-(R)-COOH(式中、Rは、それぞれが任意に置換される、アルキル(例えば、C1-7アルキル、C2-7アルケニル、C2-7アルキニル)、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアルキルから選択される)を有する化学部分を意味する。
【0051】
「荷電する部分」は、生理学的pHでプロトンを獲得し、それにより正に荷電する部分(例えば、アンモニウム、グアニジニウムまたはアミジニウム)またはプロトン化されることなく正味の形式上の正の電荷を含む部分(例えば第4級アンモニウム)を意味する。荷電した部分は、永久に荷電するかまたは一時的に荷電するかのいずれかであり得る。
【0052】
「治療有効量」または「有効量」は、完全にまたは部分的に神経性炎症により引き起こされる状態、疾患または疾病(例えばアレルギー性炎症、炎症性腸疾患、間質性膀胱炎、アトピー性皮膚炎、喘息、結膜炎、関節炎、大腸炎、接触皮膚炎、糖尿病、湿疹、膀胱炎、胃炎、片頭痛、乾癬、鼻炎、酒さ、日焼け、膵臓炎、慢性の咳、慢性鼻副鼻腔炎、外傷性脳損傷、多菌性敗血症、腱障害、慢性蕁麻疹、リウマチ病、急性肺損傷、刺激物への曝露、刺激物、汚染物質または化学兵器剤の吸入)に苦しむ患者(例えばヒト)において、所望の結果、例えば疼痛、咳、かゆみまたは神経性炎症の低減または排除を生じるのに十分な量を意味する。
【0053】
「溶媒和物」は、化学量論的または非化学量論的のいずれかの量の溶媒を含む溶媒付加形態を意味する。
【0054】
化合物の塩を含む本発明の化合物は、非溶媒和形態および溶媒和形態、例えば水和形態および非水和形態で存在し得る。一般的に、溶媒和形態は、非溶媒和形態と同等であり、本発明の範囲に包含される。水和物の非限定的な例としては、一水和物、二水和物、半水和物等が挙げられる。特定の局面において、化合物は半水和物である。溶媒和物の非限定的な例としては、エタノール溶媒和物、アセトン溶媒和物等が挙げられる。
【0055】
本発明の化合物は、複数の結晶性または非晶質形態で存在し得る。一般的に、全ての物理的形態は、本発明により企図される使用について同等であり、本発明の範囲内にあることが意図される。
【0056】
式(I):
【化3】
を有する化合物が好ましく、式中:
Y
-は薬学的に許容され得るアニオンであり;
R
A、R
BおよびR
Cはそれぞれ独立して、H、D、ハロゲン、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、OR
I、CN、CF
3、NR
JR
K、NR
LC(O)R
M、S(O)R
N、S(O)
2R
N、SO
2R
OR
P、SO
2NR
QR
R、SO
3R
S、CO
2R
T;C(O)R
UおよびC(O)NR
VR
Wから選択され;
R
I、R
J、R
K、R
L、R
M、R
N、R
O、R
P、R
Q、R
R、R
S、R
T、R
U、R
VおよびR
Wのそれぞれは独立して、H、D、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキルから選択され;R
JおよびR
KまたはR
VおよびR
WまたはR
QおよびR
Rはまた、それらが結合する窒素と一緒になって、置換または非置換の5、6、7または8員の環を形成し得;
R
A、R
Bおよび/またはR
Cは、それらが結合するフェニル環と一緒になって、縮合二環式または三環式の環系、例えばナフチル、ジヒドロインデニル、テトラヒドロナフチル、キノリニル、インドリル等を形成し得る。
【0057】
好ましいRAは、H、メチル、ハロ(例えばF、ClまたはBr)、CF3、CN、CO2RTまたはORI、より好ましくはメチル、F、CF3またはCN、最も好ましくはメチルから選択される。
【0058】
好ましいRBは、Hおよびメチル、最も好ましくはメチルから選択される。
【0059】
好ましいRCは、H、メチル、ハロ(例えばF、ClまたはBr)、CF3、CN、CO2RTまたはORI、より好ましくはHまたはORI、最も好ましくはHから選択される。
【0060】
R1、R2、R3、R4、R5およびR6は独立して、水素、C1-C4アルキル、シクロアルキル、C1-C4ヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリール、好ましくは水素、メチルまたはエチルから選択され;
nは0、1、2、3、4および5であり;
あるいはR1、R2、R3、R4、R5および/またはR6は、それらが結合する炭素(1つまたは複数)と一緒になって、置換もしくは非置換シクロアルキル(例えばC3-C6シクロアルキル)または置換もしくは非置換複素環式(例えば3-~15-員の複素環式環)を形成する。
【0061】
2~7炭素の任意に置換されるアルキレニルリンカーは、エーテル酸素と第4の窒素の間で形成されることが理解される。好ましい化合物において、それぞれのR1、R2、R3、R4、R5および/またはR6は水素である(例えば直鎖アルキレニル、例えばエチレニル、プロピレニル、ブチレニルまたはペンチレニルを形成する)。好ましい化合物において、R5およびR6のそれぞれは水素である。他の化合物において、R1および/またはR2は両方水素である。他の化合物において、R3およびR4は両方水素である。代替的に、R1はメチルまたはエチルであり、R2、R3、R4、R5およびR6は水素である。代替的に、R3はメチルまたはエチルであり、R1、R2、R4、R5およびR6は水素である。
【0062】
RFおよびRGは、N+と一緒になって、N+に加えて0、1またはそれ以上のヘテロ原子を有する任意に置換される複素環式環を形成する。該環は、5、6、7、8または9個の環員を有し得る。7および8員の環が好ましい。したがって、好ましい複素環式環の例は含む:
【0063】
理解されるように、式(I)のN
+含有環としては:
【化4】
および最も好ましくは
【化5】
が挙げられる。
【0064】
複素環式環は任意に、上述のように置換され得る。例えばR7は、水素または置換もしくは非置換アルキルであり得る。好ましい置換基としては、アルキル、CF3、ハロゲン、OHおよびORIが挙げられる。
【0065】
RHは、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換アルキニル、例えば-CH2-シクロアルキル、-C2H4-シクロアルキル、置換もしくは非置換-CH2-C5-C10アリール、置換もしくは非置換-C2H4-C5-C10アリール、置換もしくは非置換-CH2-C5-C10ヘテロアリール、置換もしくは非置換-C2H4-C5-C10ヘテロアリール、-CH2OC(O)RT、-CH2CO2RT、-CH2C(O)NRVRW、-C2H4OCORT、-C2H4ORIから選択されるか、または
好ましくは、RHは、ベンジルもしくは置換ベンジルである。代替的に、RHは、非置換のアルキル、アルケニルまたはアルキニル、例えばC3、C4、C5、C6、C7またはC8アルキルである。アルキルは、直鎖または分岐鎖のアルキルであり得る。分岐鎖のアルキルの例としてsec-ブチルが挙げられる。シクロアルキルは、好ましくは3~6炭素シクロアルキル、好ましくはシクロペンチルまたはシクロヘキシルであり得る。
【0066】
代替的に、R
F、R
GおよびR
Hは、N
+と一緒になって、ヘテロアリール環または架橋複素環式環を形成する。ヘテロアリール基の例としては、置換または非置換ピリジニル(例えばフェニル-ピリジニル)が挙げられる。架橋ヘテロサイクルの好ましい例としては、
【化6】
が挙げられる。
【0067】
本発明の組成物、キットおよび方法において使用され得る好ましい化合物は、式(II):
【化7】
を有する化合物を含み、式中:
Y
-は薬学的に許容され得るアニオンであり;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6は独立して、水素、メチルまたはエチルから選択され、
qは0、1、2、3、4または5であり;
nは0、1、2、3、4または5である。
【0068】
好ましくは、Y-は、ハロゲン化アニオン、カルボキシレートまたはスルホネートである。Y-は、例えばハロゲン化物イオン、置換もしくは非置換アルキルスルホネート、置換もしくは非置換アリールスルホネート、置換もしくは非置換アルキルもしくは脂肪族カルボキシレート、置換もしくは非置換アリールカルボキシレートまたは置換もしくは非置換ヘテロシクリルカルボキシレートであり得る。
【0069】
ある態様において、Y-は、トリフルオロ酢酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、蟻酸塩、炭酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、ピルビン酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、スルホン酸塩(例えばメタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、例えばp-トルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ショウノウスルホン酸塩、2-メシチレンスルホン酸塩、またはナフタレンスルホン酸塩、例えば2-ナフタレンスルホン酸塩)、重硫酸塩、マロン酸塩、キシナホ酸塩、アスコルビン酸塩、オレイン酸塩、ニコチン酸塩、サッカリン酸塩(saccharinate)、アジピン酸塩、蟻酸塩、グリコール酸塩、L-乳酸塩、D-乳酸塩、アスパラギン酸塩、リンゴ酸塩、L-酒石酸塩、D-酒石酸塩、ステアリン酸塩、2-フロ酸塩(furoate)、3-フロ酸塩、ナパジシル酸塩(ナフタレン-1,5-ジスルホン酸塩またはナフタレン-1-(スルホン酸)-5-スルホン酸塩)、エジシル酸塩(edisylate)(エタン-1,2-二スルホン酸塩またはエタン-1-(スルホン酸)-2-スルホン酸塩)、イセチオン酸塩(2-ヒドロキシエチルスルホン酸塩)、D-マンデル酸塩、L-マンデル酸塩、プロピオン酸塩、酒石酸塩(tartarate)、フタル酸塩、塩化水素酸塩、臭化水素酸塩および硝酸塩からなる群より選択される。
【0070】
一態様において、Y-はハロゲン化アニオンである。好ましい態様において、Y-は、ハロゲン化イオンである臭化物、塩化物またはヨウ化物から選択される。
【0071】
理解されるように、qが0、1、2または3である場合、式(II)のN
+含有環は:
【化8】
のそれぞれである。好ましくは、qは3である。別の好ましい態様で、qは2である。代替的に、qは0または1である。
【0072】
式IIにおいて、R1、R2、R3、R4、R5および/またはR6はそれぞれ、水素であり得る(例えば直鎖アルキレニル、例えばエチレニル、プロピレニル、ブチレニルまたはペンチレニルを形成する)。好ましい化合物において、R5およびR6のそれぞれは水素である。他の化合物において、R1および/またはR2は両方水素である。他の化合物において、R3およびR4は両方水素である。代替的に、R1はメチルまたはエチルであり、R2、R3、R4、R5およびR6は水素である。代替的に、R3はメチルまたはエチルであり、R1、R2、R4、R5およびR6は水素である。
【0073】
例えば、qは0であり、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は水素であるか;または
qは0であり、R1はメチルであり、R2、R3、R4、R5およびR6は水素であるか;または
qは0であり、R3はメチルであり、R1、R2、R4、R5およびR6は水素であるか;または
qは1であり、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は水素であるか;または
qは1であり、R1はメチルであり、R2、R3、R4、R5およびR6は水素であるか;または
qは1であり、R3はメチルであり、R1、R2、R4、R5およびR6は水素であるか;または
qは2であり、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は水素であるか;または
qは2であり、R1はメチルであり、R2、R3、R4、R5およびR6は水素であるか;または
qは2であり、R3はメチルであり、R1、R2、R4、R5およびR6は水素であるか;または
qは3であり、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は水素であるか;または
qは3であり、R1はメチルであり、R2、R3、R4、R5およびR6は水素であるか;または
qは3であり、R3はメチルであり、R1、R2、R4、R5およびR6は水素である。
【0074】
例えば、nは0であり、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は水素であるか;または
nは0であり、R1はメチルであり、R2、R3、R4、R5およびR6は水素であるか;または
nは0であり、R3はメチルであり、R1、R2、R4、R5およびR6は水素であるか;または
nは1であり、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は水素であるか;または
nは1であり、R1はメチルであり、R2、R3、R4、R5およびR6は水素であるか;または
nは1であり、R3はメチルであり、R1、R2、R4、R5およびR6は水素であるか;または
nは2であり、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は水素であるか;または
nは2であり、R1はメチルであり、R2、R3、R4、R5およびR6は水素であるか;または
nは2であり、R3はメチルであり、R1、R2、R4、R5およびR6は水素であるか;または
nは3であり、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は水素であるか;または
nは3であり、R1はメチルであり、R2、R3、R4、R5およびR6は水素であるか;または
nは3であり、R3はメチルであり、R1、R2、R4、R5およびR6は水素である。
【0075】
上述のそれぞれの好ましい基は、1つ、いずれかまたは全ての他の好ましい基と組み合わせて採用され得る。
【0076】
好ましい化合物は:
【化9】
であり、式中Yは薬学的に許容され得るアニオン、例えば臭化物である。
【0077】
他の態様において、化合物は:
【化10】
でなく、式中Yは薬学的に許容され得るアニオン、例えば臭化物である。
【0078】
なおさらなる局面において、化合物は、以下の表Aから選択されるかまたはその薬学的に許容され得る塩であり、式中Y
-は薬学的に許容され得るアニオンである。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0079】
さらなる好ましい局面において、化合物は以下の表Bから選択されるかまたはその薬学的に許容され得る塩である:
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0080】
本発明のさらなる代表的な化合物:
【表3-1】
【表3-2】
【0081】
【0082】
Rがメチルまたはエチルである本発明の組成物は、ラセミ混合物、純粋なエナンチオマー、または他方に対する1つのエナンチオマーの過剰を含み得る。例えば、組成物は、少なくとも5、10、20、30、40、50、60、70、80または90%のエナンチオマー過剰を含み得る。一態様において、エナンチオマー過剰は少なくとも95%である。
【0083】
本発明の化合物は、絶対立体化学に関して(R)-または(S)-と定義され得る全てのエナンチオマーならびにそれらのラセミ形態および光学的に純粋な形態を含み、エナンチオマー、塩、溶媒和物、多形、溶媒和多形(solvatomorph)、水和物、無水物および他の結晶形態ならびにそれらの組合せを含むそれらの薬学的に許容され得る形態のいずれかにおいて本明細書に記載されるものに限定されない。
【0084】
好ましくは、医薬組成物は、実質的に純粋な形態のRエナンチオマーとして本発明の化合物を含むか;または医薬組成物は、実質的に純粋な形態のSエナンチオマーとして本発明の化合物を含むか;または医薬組成物は、Rエナンチオマーの過剰もしくはSエナンチオマーの過剰を含むエナンチオマー混合物として本発明の化合物を含む。医薬組成物が、実質的に純粋な光学異性体である本発明の化合物を含むことが特に好ましい。不確かさを回避するために、本発明の化合物は、所望の場合、溶媒和物の形態で使用され得る。
【0085】
式(I)を有する化合物は、実施例および以下の合成スキームに記載されるものと類似の方法を使用して調製され得る:
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【0086】
さらなる生物学的活性剤および外因性大孔型チャンネルアゴニスト
上述のように、本発明の化合物または組成物は生物学的活性剤と共に投与し得る。例えば、神経性炎症を治療するために典型的に使用されるものを含む1つ以上のさらなる生物学的活性剤は、本明細書に記載される本発明の化合物または組成物と組み合わせて使用され得る。生物学的活性剤としては、限定されないが、TRPA1受容体アゴニスト、TRPV1-4受容体アゴニスト、TRPM8アゴニスト、ASICアゴニスト、P2X受容体アゴニスト、アセトアミノフェン、NSAID、グルココルチコイド、麻酔薬、三環系抗鬱薬、アミントランスポーター阻害剤、抗痙攣薬、抗増殖および免疫調節剤、抗体または抗体断片、抗生物質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、抗癌剤、成長因子およびワクチンが挙げられる。
【0087】
本発明の方法、キットおよび組成物に使用され得るTRPV1アゴニストとしては、限定されないが、侵害受容器上のTRPV1受容体を活性化して、電位型イオンチャンネルの少なくとも1つの阻害剤(例えば本発明の化合物)の進入を可能にする任意のものが挙げられる。適切なTRPV1アゴニストは、分子のバニロイドファミリーのメンバーであるカプサイシンまたは別のカプサイシノイドである。天然に存在するカプサイシノイドは、カプサイシン自体、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシンおよびノニバミド(nonivamide)である。本発明の組成物および方法における使用についての他の適切なカプサイシノイドおよびカプサイシノイドアナログおよび誘導体としては、天然に存在するおよび合成のカプサイシン誘導体およびアナログ、例えばバニロイド(例えばN-バニリル-アルカンジエンアミド、N-バニリル-アルカンジエニルおよびN-バニリル-cis-モノ不飽和アルケンアミド)、カプシエート(capsiate)、ジヒドロカプシエート、ノルジヒドロカプシエートおよび他のカプシノイド(capsinoid)、カプシコニアート(capsiconiate)、ジヒドロカプシコニアート(dihydrocapsiconiate)および他のコニフェリルエステル、カプシコニノイド(capsiconinoid)、レシニフェラトキシン(resiniferatoxin)、チニアトキシン(tinyatoxin)、シバミド(civamide)、N-フェニルメチルアルケンアミドカプサイシン誘導体、オルバニル、N-[(4-(2-アミノエトキシ)-3-メトキシフェニル)メチル]-9Z-オクタ-デカンアミド、N-オレイル-ホモバニルアミド、トリプレニルフェノール(例えばスクチゲラール(scutigeral))、ジンゲロール、ピペリン、ショウガオール、グアヤコール、オイゲノール(eugenol)、ジンゲロン、ヌバニル(nuvanil)、NE-19550、NE-21610およびNE-28345が挙げられる。さらなるカプサイシノイド、それらの構造およびそれらの製造方法は、参照により本明細書に援用される米国特許第7,446,226号および同7,429,673号に記載される。
【0088】
さらなる適切なTRPV1アゴニストとしては、限定されないが、オイゲノール、アルバニル(arvanil)(N-アラキドノイルバニルアミン)、アナンダミド、2-アミノエトキシジフェニルホウ酸塩(2APB)、AM404、レシニフェラトキシン、ホルボール12-フェニルアセテート13-アセテート20-ホモバニリン酸塩(PPAHV)、オルバニル(NE 19550)、OLDA(N-オレオイルドーパミン)、N-アラキドニルドーパミン(arachidonyldopamine)(NADA)、6'-ヨードレシニフェラトキシン(6'-IRTX)、C18 N-アシルエタノールアミン、12-ヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸などのリポキシゲナーゼ誘導体、阻害剤システインノット(ICK)ペプチド(バニロトキシン(vanillotoxin))、ピペリン、MSK195 (N-[2-(3,4-ジメチルベンジル)-3-(ピバロイルオキシ)プロピル]-2-[4-(2-アミノエトキシ)-3-メトキシフェニル]アセトアミド)、JYL79 (N-[2-(3,4-ジメチルベンジル)-3-(ピバロイルオキシ)プロピル]-N'-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)チオウレア)、ヒドロキシ-アルファ-サンショオール、2-アミノエトキシジフェニルボレート、10-ショウガオール、オレイルジンゲロール、オレイルショウガオールおよびSU200 (N-(4-tert-ブチルベンジル)-N'-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)チオウレア)が挙げられる。さらに他のTRPV1アゴニストとしては、アミロカイン、アルチカイン、ベンゾカイン、ブピバカイン、カルボカイン(carbocaine)、カルチカイン(carticaine)、クロロプロカイン、シクロメチカイン、ジブカイン(シンコカイン(cinchocaine))、ジメトカイン(dimethocaine)(ラロカイン(larocaine))、エチドカイン、ヘキシルカイン、レボブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、メプリルカイン(meprylcaine)(オラカイン(oracaine))、メタブトキシカイン、ピペロカイン、プリロカイン、プロカイン(ノバカイン(novacaine))、プロパラカイン、プロポキシカイン、リソカイン(risocaine)、ロピバカイン、テトラカイン(アメソカイン(amethocaine))およびトリメカインが挙げられる。
【0089】
適切なTRPV2-4アゴニストとしては、限定されないが、2-APB、カンナビノール(cannabinol)、ジフェニルボロン酸無水物、インスリン様成長因子1、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルイノシトール、プロベネシド、Δ9-テトラヒドロカンナビノール(tetrahydrocannabinol)、バニリン、オイゲノール、シンナムアルデヒド、ショウノウ、カルバクロール、チモール、シトラール、ファルネシル二リン酸、テトラヒドロカンナビバリン(tetrahydrocannabivarin)、インセンソールアセテート(incensole acetate)、ジフェニルボロン酸無水物、6-tert-ブチル-m-クレゾール、ジヒドロカルベオカルベオール(dihydrocarveocarveol)、ボルネオール、(-)-メントール、GSK1016790A、4α-PDH、5,6-エポキシエイコサトリエン酸、4α-PDD、ビスアンドログラホリド(bisandrographolide)、クエン酸、ホルボール12-ミリステート13-アセテートおよびRN1747が挙げられる。
【0090】
適切なTRPM8アゴニストとしては、限定されないが、メントール、イシリン(icilin)、ユーカリ(eucalyptus)、リナロール、ゲラニオール、ヒドロキシ-シトロネラル、WS-3、WS-23、フレスコラート(Frescolat) MGA、フレスコラートML、PMD 38、CPS125、クールアクト(Coolact) P、M8-Ag、AITC、クリオシム(cryosim)-3、AX-8および清涼化剤(Cooling Agent) 10が挙げられる。
【0091】
適切なASICアゴニストとしては、限定されないが、クロロフェニルグアニジン塩酸塩、GMQ塩酸塩、テトラヒドロパパベロリン(tetrahydropapaveroline)(THP)、レチクリン、ポリアミンアグマチン、リゾホスファチジルコリン、アラキドン酸および神経ペプチドSFが挙げられる。
【0092】
本発明の方法、組成物およびキットに使用され得る他の生物学的活性剤としては、侵害受容器またはそう痒受容器上のTRPA1受容体を活性化し、電位型イオンチャンネルの少なくとも1つの阻害剤の進入を可能にする任意のものが挙げられる。適切なTRPA1アゴニストとしては、限定されないが、シンナムアルデヒド、アリル-イソチオシアネート(isothiocyanate)(カラシ油)、ジアリルジスルフィド、イシリン、桂皮油、ウィンターグリーン油、チョウジ油、アクロレイン、ヒドロキシ-アルファ-サンショオール、2-アミノエトキシジフェニルボレート、4-ヒドロキシノネナール、メチルp-ヒドロキシベンゾエートおよび3'-カルバモイルビフェニル-3-イルシクロヘキシルカルバメート(URB597)が挙げられる。
【0093】
本発明の方法、組成物およびキットに使用され得るP2Xアゴニストとしては、侵害受容器またはそう痒受容器上のP2X受容体を活性化し、電位型イオンチャンネルの少なくとも1つの阻害剤の進入を可能にする任意のものが挙げられる。適切なP2Xアゴニストとしては、限定されないが、ATP、α,β-メチレンATP、2-メチルチオ-ATP、2'および3'-O-(4-ベンゾイルベンゾイル)-ATPおよびATP5'-O-(3-チオトリホスフェート)が挙げられる。
【0094】
本発明の化合物と組み合わせて使用され得る他の生物学的活性剤としては、NSAID、グルココルチコイド、麻酔薬、三環系抗鬱剤、アミントランスポーター阻害剤、抗痙攣薬、抗増殖性および免疫調節剤、抗体または抗体断片、抗生物質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、抗癌剤、成長因子およびワクチンが挙げられる。
【0095】
神経性炎症に苦しむ患者(例えばヒト)に、本発明の組成物と合わせて投与され得る非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)としては、限定されないが、アセチルサリチル酸、アモキシプリン、ベノリラート(benorylate)、ベノリラート(benorilate)、コリンサリチル酸マグネシウム、ジフルニサル、エテンザミド、ファイスラミン(faislamine)、サリチル酸メチル、サリチル酸マグネシウム、サリチルサリチレート、サリチルアミド、ジクロフェナク、アセクロフェナク(aceclofenac)、アセメタシン、アルクロフェナク(alclofenac)、ブロムフェナク、エトドラク、インドメタシン、ナブメトン、オキサメタシン(oxametacin)、プログルメタシン、スリンダク、トルメチン(tolmetin)、イブプロフェン、アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、カルプロフェン、デキシブプロフェン、デクスケトプロフェン(dexketoprofen)、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルノキサプロフェン(flunoxaprofen)、フルルビプロフェン、イブプロキサム、インドプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラク、ロキソプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸、メフェナム酸、フルフェナム酸、メクロフェナム酸、トルフェナム酸、フェニルブタゾン、アンピロン、アザプロパゾン(azapropazone)、クロフェゾン(clofezone)、ケブゾン、メタミゾール、モフェブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェナゾン、スルフィンピラゾン、ピロキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、メロキシカム、テノキシカム、およびCOX-2阻害剤セレコキシブ、エトリコキシブ(etoricoxib)、ルミラコキシブ(lumiracoxib)、パレコキシブ、ロフェコキシブ(rofecoxib)、バルデコキシブならびにそれらの薬学的に許容され得る塩が挙げられる。
【0096】
神経性炎症に苦しむ患者(例えばヒト)に、本発明の組成物と合わせて投与され得るグルココルチコイドとしては、限定されないが、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、酢酸フルドロコルチゾン、酢酸デオキシコルチコステロン、アルドステロンおよびそれらの薬学的に許容され得る塩が挙げられる。
【0097】
神経性炎症に苦しむ患者(例えばヒト)に、本発明の組成物と合わせて投与され得る麻酔薬としては、限定されないが、トラマドール、ヒドロコドン、オキシコドン、モルヒネおよびそれらの薬学的に許容され得る塩が挙げられる。
【0098】
神経性炎症に苦しむ患者(例えばヒト)に、本発明の組成物と合わせて投与され得る抗増殖および免疫調節剤としては、限定されないが、アルキル化剤、白金剤、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼ阻害剤、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤、抗腫瘍抗生物質、抗有糸分裂剤、アロマターゼ阻害剤、チミジル酸シンターゼ阻害剤、DNAアンタゴニスト、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、ポンプ阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、リボヌクレオシドレダクターゼ阻害剤、TNF-αアゴニスト、TNF-αアンタゴニストまたはスカベンジャー、インターロイキン1(IL-1)アンタゴニストまたはスカベンジャー、エンドセリンA受容体アンタゴニスト、レチノイン酸受容体アゴニスト、ホルモン剤、抗ホルモン剤、光力学剤(photodynamic agent)およびチロシンキナーゼ阻害剤が挙げられる。
【0099】
生物学的活性剤は、治療有効である、当該技術分野で公知の任意の製剤、用量または投与を使用して、本発明の組成物の投与の前、同時またはその後に投与され得る。
【0100】
組成物の製剤化
本発明の化合物の投与は、標的領域での知覚される疼痛またはかゆみの感覚の低減を生じる任意の適切な手段によるものであり得る。本発明の化合物は、任意の適切な担体物質中に任意の適切な量で含まれ得、一般的に組成物の総重量の1~99重量%を占める量で存在する。組成物は、経口、非経口(例えば、静脈内、筋内)、直腸、皮膚、皮下、局所、経皮、舌下、鼻腔、経腟、鞘内、硬膜上もしくは眼内の投与に適した剤型で、あるいは注射、吸入または鼻腔もしくは口腔粘膜との直接の接触により提供され得る。局所または皮膚投与が好ましい。
【0101】
したがって、組成物は、例えば懸濁剤、乳化剤、液剤、ヒドロゲルなどのゲル、ペースト、軟膏、クリーム、硬膏、スプレー、エーロゾル、浸漬液、浸透性送達デバイス、坐剤、浣腸、注射剤、埋没物、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤の形態であり得る。組成物は、従来の薬学的実務に従って製剤化され得る(例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 22nd edition, 2013, ed. L.V. Allen, Pharmaceutical Press, PhiladelphiaおよびEncyclopedia of Pharmaceutical Technology, 4th Edition, ed. J. Swarbrick, 2013, CRC Press, New York参照)。
【0102】
それぞれの化合物は、当該技術分野で公知の種々の方法で製剤化され得る。例えば本明細書において定義されるように本発明の化合物および生物学的活性剤は、一緒にまたは別々に製剤化され得る。望ましくは、本発明の化合物および生物学的活性剤は、それらの同時またはほぼ同時の投与のために一緒に製剤化される。別の態様において、2つ以上の生物学的活性剤は、本発明の化合物と一緒にまたは別々に製剤化され得る。他の例としては、限定されないが、一緒に製剤化される本発明の2つ以上の化合物が挙げられ、ここで該化合物は、1つ以上の生物学的活性剤と一緒にまたはそれなしで製剤化される。
【0103】
個々にまたは別々に製剤化された薬剤は、キットとして一緒に梱包され得る。非限定的な例としては、限定されないが、例えば2つの丸薬、丸薬および散剤、バイアル中の坐剤および液剤、2つの局所クリーム等を含むキットが挙げられる。該キットは、患者への単位用量の投与を補助する任意の構成要素、例えば散剤形態を再構成するためのバイアル、注射用シリンジ、カスタマイズされたIV送達系、吸入器等を含み得る。さらに、単位用量キットは、組成物の調製および投与のための指示書を含み得る。
【0104】
キットは、1患者に対して単回使用単位用量、特定の患者に対して複数使用として製造され得る(一定用量で、または個々の化合物が、治療が進行するにつれて効力において変化し得る)か;またはキットは、複数の患者への投与に適した複数用量(「バルクパッケージング」)を含み得る。キット構成要素は、カートン、ブリスターパック、ボトル、チューブ等に集合され得る。
【0105】
局所製剤
本発明の組成物はまた、単独でまたは本明細書に記載される1つ以上の生物学的活性剤と合わせて、0.0001%~25%(w/w)またはそれ以上の有効成分(1つまたは複数)を含む局所ビヒクルにより、局所使用に適合され得る。
【0106】
好ましい組合せにおいて、有効成分は、好ましくはそれぞれ0.0001%~10%(w/w)、より好ましくは0.0005%~4%(w/w)の活性剤である。クリーム、ゲルまたは軟膏を含むが限定されない局所製剤は、毎日1~4回または必要に応じて適用され得る。本明細書に記載される方法を行う場合、本発明の組成物を含む局所ビヒクルまたは本発明の組成物を含む組合せ療法は、好ましくは患者の炎症の部位に適用される。例えば、クリームは、かゆみ、そう痒(pruritis)、乾癬またはアトピー性皮膚炎に苦しむ患者の手に適用され得る。
【0107】
該組成物は、任意の皮膚科学的に許容され得る担体を使用して製剤化され得る。例示的な担体としては、固体担体、例えばアルミナ、粘土、微結晶セルロース、シリカもしくはタルク;および/または液体担体、例えばアルコール、グリコールもしくは水-アルコール/グリコール混合体が挙げられる。治療剤はまた、治療剤を皮膚に進入させるリポソーム製剤中で投与され得る。かかるリポソーム製剤は、米国特許第5,169,637号;同5,000,958号;同5,049,388号;同4,975,282号;同5,194,266号;同5,023,087号;同5,688,525号;同5,874,104号;同5,409,704号;同5,552,155号;同5,356,633号;同5,032,582号;同4,994,213号;同8,822,537号およびPCT公開番号WO 96/40061に記載される。他の適切なビヒクルの例は、米国特許第4,877,805号、同8,822,537号および欧州公開第0586106A1号に記載される。本発明の適切なビヒクルは、鉱油、ワセリン、ポリデセン、ステアリン酸、ミリスチン酸イソプロピル、ポリオキシル40ステアレート、ステアリルアルコールまたは植物油も含み得る。
【0108】
組成物はさらに、「Percutaneous Penetration enhancers」(eds. Smith E W and Maibach H I. CRC Press 1995)に記載されるものなどの皮膚透過促進剤を含み得る。例示的な皮膚透過促進剤としては、両方が参照により本明細書に援用される特許米国特許第6,083,996号および同6,118,020号に記載されるアルキル(N,N-二置換アミノアルカン酸)エステル、例えばドデシル2-(N,Nジメチルアミノ)プロピオネート(DDAIP);水分散性酸ポリマー、例えばポリアクリル酸ポリマー、カルボマー(例えばB. F. Goodrich Company (Akron, Ohio)から入手可能なCarbopolTMまたはCarbopol 940PTM)、ポリアクリル酸のコポリマー(例えばB. F. Goodrich CompanyのPemulenTMまたはA. H. Robbins、Richmond, Va.のPolycarbophilTM;多糖ガム、例えば寒天ガム、アルギン酸塩、カラゲナンガム、ガッチガム(ghatti gum)、カラヤガム、カダヤガム(kadaya gum)、ラムサンガム(rhamsan gum)、キサンタンガムおよびガラクトマンナンガム(例えばグアールガム、カロブガムおよびローカストビーンガム)ならびに当該技術分野で公知の他のゴム(例えばIndustrial Gums: Polysaccharides & Their Derivatives, Whistler R. L., BeMiller J. N. (eds.), 3rd Ed. Academic Press (1992)およびDavidson、R. L., Handbook of Water-Soluble Gums & Resins, McGraw-Hill, Inc., N.Y. (1980)参照);またはそれらの組合せが挙げられる。
【0109】
他の適切なポリマー性皮膚透過促進剤は、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体である。さらに、所望の場合は公知の経皮透過促進剤も添加し得る。例示はジメチルスルホキシド(DMSO)およびジメチルアセトアミド(DMA)、2-ピロリドン、N,N-ジエチル-m-トルアミド(DEET)、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン(AzoneTM、Nelson Researchの登録商標)、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、チオグリコール酸カルシウムおよび他の促進剤、例えばジオキソラン、環状ケトンおよびそれらの誘導体などである。
【0110】
また、例示は、両方が参照により本明細書に援用される米国特許第4,980,378号および米国特許第5,082,866号に記載されるアルキルN,N-2-(二置換アミノ)アルカン酸塩である生分解性吸収促進剤の群、例えば:テトラデシル(N,N-ジメチルアミノ)アセテート、ドデシル(N,N-ジメチルアミノ)アセテート、デシル(N,N-ジメチルアミノ)アセテート、オクチル(N,N-ジメチルアミノ)アセテートおよびドデシル(N,N-ジエチルアミノ)アセテートである。
【0111】
特に好ましい皮膚透過促進剤としては、ミリスチン酸イソプロピル;パルミチン酸イソプロピル;ジメチルスルホキシド;デシルメチルスルホキシド;中鎖脂肪酸のジメチルアラニンアミド;米国特許第6,118,020号に記載されるドデシル2-(N,N-ジメチルアミノ)プロピオネートまたはその塩、例えばその有機(例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸および硝酸の付加塩)および無機の塩(例えば酢酸、安息香酸、サリチル酸、グリコール酸、コハク酸、ニコチン酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸、パモ酸、メタンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、ピクリン酸および乳酸の付加塩);ならびに米国特許第4,980,378号および米国特許第5,082,866号に記載されるアルキル2-(N,N-二置換アミノ)-アルカン酸が挙げられる。
【0112】
重量でのこの組成物中の皮膚透過促進剤は、0.5%~10%(w/w)の範囲である。最も好ましい範囲は1.0%~5%(w/w)である。別の態様において、皮膚透過促進剤は、組成物の0.5%~1%、1%~2%、2%~3%、3%~4%または4%~5%(w/w)を含む。
【0113】
該組成物は、任意の有用な形態で提供され得る。例えば、本発明の組成物は、組成物が使用され得る皮膚または他の組織への適用のために使用される溶液、エマルジョン(マイクロエマルジョンを含む)、懸濁物、クリーム、軟膏、泡状物、ローション、ゲル、粉末、または他の典型的な固体、半固体、または液体組成物(例えば局所スプレー)として製剤化され得る。かかる組成物は、かかる生成物において典型的に使用される他の成分、例えば着色剤、香料、濃化剤(例えばキサンタンガム、脂肪酸、脂肪酸塩またはエステル、脂肪アルコール、改質セルロース、改質鉱物材料、Krisgel 100TM、または合成ポリマー)、抗菌剤、溶媒、界面活性剤、洗浄剤、ゲル化剤、酸化防止剤、充填剤、染料、粘度調整剤、保存剤、湿潤剤、軟化薬(例えば天然もしくは合成の油、炭化水素油、ワックスまたはシリコーン)、水和剤、キレート剤、粘滑剤、可溶化賦形剤、アジュバント、分散剤、皮膚透過促進剤、可塑剤、保存剤、安定化剤、解乳化剤、湿潤剤、日焼け止め剤、乳化剤、加湿剤、収斂剤、脱臭剤を含み得、任意に麻酔薬、かゆみ止め(anti-itch active)、植物抽出物、コンディショニング剤、暗化または明化剤(darkening or lightening agent)、光沢剤(glitter)、湿潤剤、雲母、鉱物、ポリフェノール、シリコーンもしくはその誘導体、日焼け止め、ビタミンおよび植物医薬(phytomedicinal)を含む。
【0114】
該組成物はまた、さらなる利益を提供するためならびに局所製剤の感触および/または外観を向上させるために他の同様の成分を含み得る。これらの製剤において一般的に使用される添加剤の具体的な部類としては:ミリスチン酸イソプロピル、ソルビン酸NF粉末、ポリエチレングリコール、ホスファチジルコリン(ホスフォリポンGなどのホスファチジルコリンの混合物を含む)、Krisgel 100TM蒸留水、水酸化ナトリウム、デシルメチルスルホキシド(皮膚透過促進剤として)、メントール結晶、ラベンダー油、ブチル化ヒドロキシトルエン、エチルジグリコール試薬および95%パーセント(190プルーフ)エタノールが挙げられる。
【0115】
制御放出製剤
本発明のそれぞれの化合物は、本明細書に記載されるように単独でまたは1つ以上の生物学的活性剤と組み合わせて、それぞれ参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2003/0152637号および同2005/0025765号に記載されるように、制御放出(例えば持続または計量)投与のために製剤化され得る。例えば、本発明の化合物は、本明細書に記載されるように単独でまたは1つ以上の生物学的活性剤と組み合わせて、患者に投与されるパッチ、カプセル剤または錠剤に組み込まれ得る。
【0116】
本発明の化合物の持続放出を提供し得る、治療される部位(例えば痛い外科的切開、創傷または関節)への局所適用および/または注射に適した任意の薬学的に許容され得るビヒクルまたは製剤は、本明細書に記載されるように単独でまたは1つ以上の生物学的活性剤と組み合わせて、必要に応じて炎症の延長された排除または軽減を提供するように使用され得る。当該技術分野で公知の制御放出製剤としては、外科的挿入に対して特殊にコーティングされたペレット、ポリマー製剤もしくはマトリクス、または埋め込み、挿入、注入もしくは注射のために持続放出マイクロ粒子、例えばマイクロスフィアもしくはマイクロカプセルとして挙げられ、ここで活性医薬の遅延放出は、マトリクスからの持続もしくは制御拡散および/または調製物のコーティングの選択的破壊またはポリマーマトリクスの選択的破壊により引き起こされる。薬剤の患者における好ましい局在化された部位への制御、持続または即時送達のための他の製剤またはビヒクルは、例えば、懸濁液、エマルジョン、ゲル、リポソームおよび局所、経皮、皮下または筋内投与に対して許容され得る任意の他の適切な当該技術分野で公知の送達ビヒクルまたは製剤を含む。
【0117】
広範囲の生体適合性材料は、本発明の化合物の、本明細書に記載されるように単独でまたは1つ以上の生物学的活性剤と組み合わせた制御放出を提供するための制御放出担体として利用され得る。当業者に公知の任意の薬学的に許容され得る生体適合性ポリマーが使用され得る。生体適合性の制御放出材料は、約1年以内、好ましくは約3か月以内、より好ましくは約2か月以内にインビボで分解されることが好ましい。より好ましくは、制御放出材料は、1~3か月以内に有意に分解し、該材料の少なくとも50%は、身体により除去される非毒性残渣に分解し、本発明の化合物の100%は、約2週間以内、好ましくは約2日~約7日以内の時間内に放出される。分解性制御放出材料は、好ましくは表面侵食またはバルク侵食のいずれかにより、加水分解により分解するはずなので、放出は、持続されるだけでなく、所望の放出速度も提供する。しかしながら、これらの製剤の薬物動態学的放出プロフィールは、所望の時間にわたり望ましい可逆的な局所的な抗侵害受容性効果を提供するために、一次、0次、二または複数の相性(bi- or multi-phasic)であり得る。
【0118】
適切な生体適合性ポリマーは、制御放出材料として使用され得る。ポリマー性材料は、生体適合性で生分解性のポリマーを含み得、ある好ましい態様において、好ましくは乳酸とグリコール酸のコポリマーである。本発明の製剤において有用な好ましい制御放出材料は、ポリ無水物、ポリエステル、乳酸とグリコール酸のコポリマー(好ましくはここで、グリコール酸に対する乳酸の重量比は4:1以下、すなわち20重量%以上のグリコール酸に対して80重量%以下の乳酸)および触媒または分解促進化合物を含む、例えば少なくとも1重量%の無水マレイン酸などの無水物触媒を含むポリオルトエステルを含む。ポリエステルの例としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸およびポリ乳酸-ポリグリコール酸コポリマーが挙げられる。他の有用なポリマーとしては、コラーゲン、ゼラチン、フィブリンおよびフィブリノーゲンなどのタンパク質ポリマーならびにヒアルロン酸などの多糖が挙げられる。
【0119】
ポリマー性材料は、当業者に公知の任意の方法により調製され得る。例えば、ポリマー材料が乳酸とグリコール酸のコポリマーで構成される場合、このコポリマーは、参照により本明細書に援用される米国特許第4,293,539号に記載される手順により調製され得る。代替的に、乳酸とグリコール酸のコポリマーは、当業者に公知の任意の他の手順により調製され得る。他の有用なポリマーとしては、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリカプロラクトン、ポリホスファゼン(polyphosphazene)、ポリホスホエステル、多糖、蛋白様ポリマー、多糖の可溶性誘導体、蛋白様ポリマーの可溶性誘導体、ポリペプチド、ポリエステルおよびポリオルトエステルまたはこれらのいずれかの混合物もしくは混合体が挙げられる。
【0120】
本発明において有用な薬学的に許容され得るポリ無水物は、水不安定無水物結合を有する。薬物放出の速度は、使用される特定のポリ無水物ポリマーおよびその分子量により制御され得る。多糖は、ポリ-1,4-グルカン、例えばデンプングリコーゲン、アミロース、アミロペクチンおよびそれらの混合物であり得る。生分解性の親水性または疎水性のポリマーは、加水分解されたアミロペクチンなどのポリ-1,4-グルカンの水溶性誘導体、ヒドロキシエチルデンプン(HES)などの加水分解されたアミロペクチンの誘導体、ヒドロキシエチルアミロース、ジアルデヒドデンプン等であり得る。ポリ無水物ポリマーは、分岐または直鎖であり得る。
【0121】
本発明において有用なポリマーの例としては(ポリ(乳酸)および/またはポリ(グリコール酸)のホモポリマーおよびコポリマーに加えて)、ポリ[ビス(p-カルボキシフェノキシ)プロパン無水物](PCPP)、ポリ[ビス(p-カルボキシ)メタン無水物](PCPM)、オリゴマー化された不飽和脂肪酸のポリ無水物、さらなるカルボン酸を含むように改変されるアミノ酸から調製されるポリ無水物ポリマー、芳香族ポリ無水物組成物、ならびに脂肪酸終結ポリ無水物、例えば不飽和脂肪酸もしくは不飽和脂肪族系酸のダイマーおよび/またはトリマーのモノマーから重合されたポリ無水物などのポリ無水物と他の物質のコポリマーが挙げられる。ポリ無水物は、参照により本明細書に援用される米国特許第4,757,128号に記載される方法に従って調製され得る。ポリオルトエステルポリマーは、例えば参照により本明細書に援用される米国特許第4,070,347号に記載されるように調製され得る。ポリホスホエステルは、それぞれが参照により本明細書に援用される米国特許第6,008,318号、同6,153,212号、同5,952,451号、同6,051,576号、同6,103,255号、同5,176,907号および同5,194,581号に記載されるように調製および使用され得る。
【0122】
蛋白様ポリマーも使用され得る。蛋白様ポリマーおよびそれらの可溶性誘導体としては、ゲル化生分解性合成ポリペプチド、エラスチン、アルキル化コラーゲン、アルキル化エラスチン等が挙げられる。生分解性合成ポリペプチドとしては、ポリ-(N-ヒドロキシアルキル)-L-アスパラギン、ポリ-(N-ヒドロキシアルキル)-L-グルタミン、N-ヒドロキシアルキル-L-アスパラギンおよびN-ヒドロキシアルキル-L-グルタミンと他のアミノ酸のコポリマーが挙げられる。示唆されるアミノ酸としては、L-アラニン、L-リジン、L-フェニルアラニン、L-バリン、L-チロシン等が挙げられる。
【0123】
さらなる態様において、実質的に本発明の化合物のための担体として働く制御放出材料は、本明細書に記載されるように単独でまたは1つ以上の生物学的活性剤と組み合わせて、ペクチン(ポリガラクツロン酸)、ムコ多糖(ヒアルロン酸、ムチン)もしくは無毒性レクチンなどの生体接着性ポリマーをさらに含み得るか、またはポリマー自体が生体接着性、例えばポリ無水物もしくはキトサンなどの多糖であり得る。
【0124】
生分解性ポリマーがゲルを含む態様において、1つのかかる有用なポリマーは、熱ゲル化ポリマー、例えばポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド(PEO-PPO)ブロックコポリマー、例えばBASF WyandotteのPluronicTM F127である。このような場合、局所麻酔製剤は、30℃より高くで(例えば患者に注射される場合に)迅速にゲル化する自由に流れる液体として、シリンジを介して注射され得る。次いでゲル系は、本明細書に記載されるように単独または1つ以上の生物学的活性剤と組み合わせた本発明の化合物の安定な用量を、投与部位で放出する。
【0125】
経口用途のための剤型
経口用途のための製剤としては、無毒性の薬学的に許容され得る賦形剤との混合物において有効成分(1つまたは複数)を含む錠剤が挙げられる。例えば、これらの賦形剤は、不活性希釈剤または充填剤(例えばスクロース、ソルビトール、砂糖、マンニトール、微結晶セルロース、ジャガイモデンプンなどのデンプン、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム);顆粒化および崩壊剤(例えば微結晶セルロースなどのセルロース誘導体、ジャガイモデンプンなどのデンプン、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸塩またはアルギン酸);結合剤(例えばスクロース、グルコース、ソルビトール、アカシア、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、予めゼラチン化されたデンプン、微結晶セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドンまたはポリエチレングリコール);ならびに滑沢剤、滑剤および接着防止剤(antiadhesive)(例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、硬化植物油またはタルク)であり得る。他の薬学的に許容され得る賦形剤は、着色剤、矯味矯臭剤、可塑剤、湿潤剤、緩衝剤、味マスキング剤(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース)等であり得る。
【0126】
本明細書に定義されるような本発明の1つ以上の化合物および1つ以上の生物学的活性剤は、錠剤、カプセル剤もしくは他のビヒクル中に一緒に混合され得るかまたは分けられ得る。一例において、本発明の化合物は錠剤の内部に含まれ、生物学的活性剤は錠剤の外部にあり、生物学的活性剤の実質的な部分は、本発明の化合物の放出前に放出される。
【0127】
経口用途のための製剤は、咀嚼可能錠剤として、または有効成分が不活性固形希釈剤(例えばジャガイモデンプン、ラクトース、微結晶セルロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリン)と混合される硬性ゼラチンカプセルとして、または有効成分が水もしくは油状媒体、例えばラッカセイ油、流動パラフィンもしくはオリーブ油と混合される軟性ゼラチンカプセルとしても提供され得る。散剤、顆粒剤およびペレット剤は、例えば混合器、流動層装置または噴霧乾燥設備を使用して従来の様式で、錠剤およびカプセル剤の下、上述の成分を使用して調製され得る。
【0128】
口への経口投与のための製剤は、口内洗浄剤、口内スプレー、口内リンス溶液、または口内軟膏または口内ゲルとしても提供され得る。
【0129】
溶解または拡散が制御された放出は、化合物の錠剤、カプセル剤、ペレット剤もしくは顆粒製剤の適切なコーティングにより、または化合物を適切なマトリクスに組み込むことにより達成され得る。制御放出コーティングは、上述のコーティング物質および/または例えばシェラック、ミツロウ、グリコワックス、ヒマシワックス、カルナウバワックス、ステアリルアルコール、一ステアリン酸グリセリル、二ステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセロール、エチルセルロース、アクリル樹脂、dl-ポリ乳酸、酢酸酪酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリメタクリル酸塩、メタクリル酸メチル、2-ヒドロキシメタクリレート、メタクリル酸ヒドロゲル、1,3ブチレングリコール、エチレングリコールメタクリレートおよび/またはポリエチレングリコールの1つ以上を含み得る。制御放出マトリクス製剤において、マトリクス材料は、例えば水和メチルセルロース、カルナウバワックスおよびステアリルアルコール、カルボポール934、シリコーン、三ステアリン酸グリセリル、アクリル酸メチル-メタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンおよび/またはハロゲン化フルオロカーボンも含み得る。
【0130】
本発明の化合物および組成物が経口投与のために一体化され得る液体形態としては、水溶液、適切に風味をつけられたシロップ剤、水性または油性の懸濁液、および綿実油、ゴマ油、ココナッツ油またはラッカセイ油などの食用油で風味をつけられたエマルジョン、ならびにエリキシルおよび同様の医薬ビヒクルが挙げられる。
【0131】
一般的に、ヒトに投与される場合、本発明の組合せの化合物のいずれかの経口用量は、化合物の性質に応じ、当業者により容易に決定され得る。典型的に、かかる用量は通常、1日当たり約0.001mg~2000mg、望ましくは1日当たり約1mg~1000mg、およびより望ましくは1日当たり約5mg~500mgである。1日当たり200mgまでの用量が必要であり得る。
【0132】
組合せ療法におけるそれぞれの薬物の投与は、本明細書に記載されるように、独立して、1日~1年の間に1日当たり1~4回であり得、患者の一生の間でさえもあり得る。多くの場合に、慢性の長期の投与が示される。
【0133】
非経口製剤
非経口投与(例えば注射による)に適した製剤としては、化合物が溶解、懸濁またはそうでなければ(例えばリポソームまたは他のマイクロ粒子中に)提供される水性または非水性、等張性、発熱原非含有の滅菌性の液体(例えば溶液、懸濁液)が挙げられる。かかる液体は、他の薬学的に許容され得る成分、例えば酸化防止剤、緩衝剤、保存剤、安定化剤、静菌剤、懸濁剤、濃化剤、および該製剤を、意図されるレシピエントの血液(または他の関連のある体液)と等張性にする溶質をさらに含み得る。賦形剤の例としては、例えば水、アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油等が挙げられる。かかる製剤における使用のための適切な等張性担体の例としては、塩化ナトリウム注射液、リンガー液または乳酸加リンガー注射液が挙げられる。典型的に、液体中の化合物の濃度は、約1ng/ml~約10μg/ml、例えば約10ng/ml~約1μg/mlである。該製剤は、単位用量または複数用量の密封された容器、例えばアンプルおよびバイアル中に提示され得、使用の直前に滅菌液体担体、例えば注射用水の添加のみを必要とする凍結乾燥(freeze-dried)(凍結乾燥(lyophilised))された状態で貯蔵され得る。即時注射用液および懸濁液は、滅菌の散剤、顆粒剤および錠剤から調製され得る。
【0134】
眼用投与のための製剤
本発明の化合物はまた、活性化合物(1つまたは複数)の有効量を、眼の視神経部位に送達するのに十分な濃度で、眼用に許容され得る担体と共に製剤化され得る。好ましくは、眼用、治療用の溶液は、約0.0001%~約5%(体積当たり重量)およびより好ましくは約0.0005%~約0.1%(体積当たり重量)の範囲の濃度で活性化合物の1つ以上を含む。
【0135】
眼用に許容され得る担体は、目に対して有意な刺激を生じず、荷電したナトリウムチャンネル遮断薬の薬理学的活性および性質を排除しない。
【0136】
眼用に許容され得る担体は一般的に、滅菌されており、本質的に外来性粒子を含まず、一般的に5~8の範囲のpHを有する。好ましくは、pHは、可能な限り涙の流体のpH(7.4)に近い。眼用に許容され得る担体は、例えば滅菌性等張溶液、例えば等張塩化ナトリウムまたはホウ酸溶液である。かかる担体は典型的に、塩化ナトリウムまたはホウ酸を含む水溶液である。リン酸緩衝化食塩水(PBS)溶液も有用である。
【0137】
眼用製剤には種々の保存剤が使用され得る。好ましい保存剤としては、限定されないが、ベンザルコニウムカリウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀および硝酸フェニル水銀が挙げられる。同様に、種々の好ましいビヒクルが、かかる眼用製剤に使用され得る。これらのビヒクルとしては、限定されないが、ポリビニルアルコール、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポロキサマー、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。
【0138】
必要または都合の良い場合は、張度調整剤が添加され得る。それらとしては、限定されないが、塩、特に塩化ナトリウム、塩化カリウム等、マンニトールおよびグリセリン、または任意の他の適切な眼用に許容され得る張度調整剤が挙げられる。
【0139】
得られる調製物が眼用に許容され得る限り、pHを調整するための種々のバッファおよび手段が使用され得る。したがって、バッファとしては、限定されないが、酢酸バッファ、クエン酸バッファ、リン酸バッファおよびホウ酸バッファが挙げられる。必要に応じてこれらの製剤のpHを調整するために酸または塩基が使用され得る。眼用に許容され得る酸化防止剤も含まれ得る。酸化防止剤としては、限定されないが、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソールおよびブチル化ヒドロキシトルエンが挙げられる。
【0140】
鼻腔および吸入投与のための製剤
本発明の医薬組成物は、鼻腔または鼻腔内投与のために製剤化され得る。担体が固体である場合、鼻腔投与に適切な製剤は、例えば鼻腔経路を通る迅速吸入により投与される約20~500ミクロンの範囲の粒径を有する粗い粉末を含む。担体が液体、例えば鼻腔スプレーまたは点鼻薬である場合は、1つ以上の製剤が、水性または油性の溶液中で混合され得、鼻腔経路に吸入または噴霧され得る。
【0141】
吸入による投与のために、有効成分は、都合よく、適切な高圧ガス、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切な気体を使用して、加圧パックまたはネブライザーからエーロゾルスプレー提示の形態で送達され得る。加圧エーロゾルの場合、用量単位は、計量された量を送達するための弁を提供することにより決定され得、化合物およびラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末ベースの粉末混合物を含む、吸入器または吹き入れ器における使用のための例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジが製剤化され得る。
【0142】
吸入による肺への局所送達のための乾燥粉末組成物は例えば、吸入器または吹き入れ器における使用のために例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジまたは例えば薄板アルミニウム箔のブリスター中に提供され得る。粉末混合製剤は一般的に、本発明の化合物および適切な粉末ベース(担体/希釈剤/賦形剤物質)、例えば単糖、二糖または多(poly)糖(例えばラクトースまたはデンプン)の吸入のための粉末混合物を含む。ラクトースの使用が好ましい。一態様において、それぞれのカプセルまたはカートリッジは、任意に別の治療有効成分と組み合わせて、約2ug~約100mgの式(I)の化合物を含み得る。好ましい態様において、それぞれのカプセルまたはカートリッジは、任意に別の治療有効成分と組み合わせて、約10ug~約50mgの式(I)の化合物を含み得る。別の態様において、それぞれのカプセルまたはカートリッジは、任意に別の治療有効成分と組み合わせて、約20ug~約10mgの式(I)の化合物を含み得る。代替的に、本発明の化合物は、賦形剤なしで送達され得る。
【0143】
適切に、包装/医薬ディスペンサーは、レザバー乾燥粉末吸入器(RDPI)、複数用量乾燥粉末吸入器(MDPI)および計量用量吸入器(MDI)からなる群より選択される種類のものである。
【0144】
加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザーまたはネブライザーにおける使用のための溶液または懸濁液は、水性媒体、エタノール、水性エタノールまたは有効成分(1つまたは複数)を分散、可溶化もしくはその放出を延長するための適切な代替的な薬剤;溶媒として高圧ガス;および/またはトリオレイン酸ソルビタン、オレイン酸もしくはオリゴ乳酸などの界面活性剤を含むように製剤化され得る。
【0145】
鼻腔または吸入投与のために製剤化される組成物は、1つ以上の味マスキング剤、例えば矯味矯臭剤、甘味料および他の戦略、例えばスクロース、デキストロースおよびラクトース、カルボン酸、メントール、アルギニン、リジンおよびグルタミン酸モノナトリウムなどのアミノ酸もしくははアミノ酸誘導体、および/または合成香料油および矯味矯臭芳香剤および/または天然の油、植物、葉、花、果実等由来の抽出物、ならびにそれらの組合せを含み得る。これらは、桂皮油、ウィンターグリーンの油、ペパーミント油、クローバー油、ベイ油、アニス油、ユーカリ、バニラ、レモン油、オレンジ油、グレープおよびグレープフルーツ油などの柑橘油、リンゴ、桃、西洋ナシ、イチゴ、ラズベリー、チェリー、スモモ、パイナップル、アンズ等を含む果実エッセンスを含み得る。さらなる甘味料としては、スクロース、デキストロース、アスパルテーム、アセスルファム-K、スクラロースおよびサッカリン、有機酸(非限定的な例によりクエン酸およびアスパラギン酸)が挙げられる。かかる香料は、約0.05~約4重量%で存在し得、香料に対する効果の効力、香料剤(flavorant)の溶解性、溶解性または他の製剤構成要素の他の物理化学的もしくは薬物動態学的特性に対する香料剤の効果、あるいは他の要因の1つ以上の要因として、より低いまたはより高い量で存在し得る。
【0146】
適用
本発明の化合物、組成物、方法およびキットは、かゆみ、疼痛または咳を治療するために使用され得る。条件としては、三叉神経栄養障害症候群(trigeminal trophic syndrome)、先端紅痛症、背頸部疼痛(back and neck pain)、腰部疼痛(lower back pain)、癌の疼痛、婦人科学および分娩の疼痛、腹部壁の疼痛、慢性の腹部壁の疼痛、線維筋痛症、アレルギー性鼻炎、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、リウマチ学的疼痛、整形外科的疼痛、急性のヘルペス後神経痛および他のニューロパシー疼痛(末梢ニューロパシーを含む)、鎌状赤血球発症、筋肉痛、外陰痛(vulvodynia)、直腸の疼痛、肛門挙筋症候群、一過性直腸痛、肛門周囲の疼痛、痔の疼痛、胃痛、潰瘍、炎症性腸疾患、過敏性腸疾患、過敏性腸症候群、口腔粘膜炎、食道炎、間質性膀胱炎、尿道炎および他の泌尿器科学的疼痛、歯痛、熱傷痛、頭痛、眼の過敏、結膜炎(例えばアレルギー性結膜炎)、眼の赤み(eye redness)、ドライアイ、眼乾燥症候群(慢性の眼の疼痛)、複合局所疼痛症候群、急性の術後の疼痛、術後の疼痛、外科手術後の眼の疼痛、および処置による疼痛(すなわち注射、膿瘍の排液、外科的手術、歯科的処置、眼の処置、眼の刺激、結膜炎(例えばアレルギー性結膜炎)、眼の赤み、ドライアイ、関節鏡検査および他の医療機器の使用、美容外科的処置、皮膚科学的処置、骨折の硬化(setting fractures)、生検等に関連する疼痛)が挙げられる。
【0147】
侵害受容器のサブクラスはかゆみ感覚を媒介するので、本発明の化合物、組成物、方法およびキットは、そう痒(限定されないが、腕橈骨筋、慢性特発性、生殖器/肛門、背部感覚異常、および頭皮を含む)、アレルギー皮膚炎、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、ツタウルシ(poison ivy)、感染、寄生生物、昆虫の噛み傷(insect bite)、妊娠、代謝障害、肝臓または腎臓不全、薬物反応、アレルギー反応、湿疹、手の湿疹、生殖器および肛門のかゆみ、痔のかゆみ、ならびに癌などの状態を有する患者においてかゆみを治療するために特に適切である。
【0148】
侵害受容器のサブクラスは、異常な咳反射を開始させ得るので、本発明の化合物、組成物、方法およびキットは、喘息、COPD、喘息-COPDオーバーラップ症候群(ACOS)、間質性肺線維症(IPF)、特発性肺線維症、ウイルス後の咳、感染後の咳、慢性特発性の咳および肺癌などの状態を有する患者において咳を治療するためにも使用され得る。
【0149】
本発明の化合物、組成物、方法およびキットはまた、神経性炎症および神経性炎症性障害を治療するために使用され得る。炎症は、局所的な赤み、腫脹および疼痛を生じる有害な刺激に対する応答の複雑な組である。炎症は、先天的または適応性であり得、後者は、抗原により駆動され、免疫細胞により媒介される(免疫媒介性の炎症)。神経性炎症は、疼痛知覚ニューロン(侵害受容器)の遠心性の機能により生じ、ここで前炎症性メディエーターであるニューロペプチドおよび他の化学物質は、活性化された場合に侵害受容器の末梢末端から放出される。この放出プロセスは、カルシウム流入およびペプチド含有小胞のエクソサイトーシスにより媒介され、前炎症性ニューロペプチドとしては、P物質、ニューロキニンAおよびB(まとめてタキキニンとして公知)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、ならびに血管作動性腸管ポリペプチド(VIP)が挙げられる。
【0150】
末梢末端化学物質の放出は種々の炎症性応答を刺激する。第1に、P物質の放出は、血漿タンパク質が血管内区画から細胞外空間へと漏れ(血漿管外遊出)、水腫を生じるように、毛細管浸透性の増加を生じ得る。これは、ルイスの三重反応として公知の炎症応答の三つ組み-膨疹、赤い斑点および発赤-の1つの構成要素である膨疹(皮膚の堅い、隆起した腫脹)として検出され得る。第2に、CGRPの放出は、血管拡張を引き起こし、血流の増加を生じる。これは、ルイスの三重反応の別の構成要素である発赤として検出され得る。
【0151】
P物質はまた、それらのニューロキニン-1(NK1)受容体を介して免疫細胞(例えばマクロファージ、T細胞、肥満細胞および樹状細胞)に対する前炎症性作用を有する。この効果は、アレルギー性鼻炎、胃炎および大腸炎において文書で証明されており、炎症の神経性構成要素と免疫媒介性構成要素の間の界面を提示する。1つの侵害受容器から放出されるP物質は、隣接する侵害受容器上のNK1受容体に対しても作用して、それらを感作または活性化し得、活性化および求心性/遠心性の機能の拡散を引き起こす。侵害受容器のこれらの遠心性の機能は:1)末端に適用される末梢の適切な刺激(例えばつまみ)による侵害受容器末端の直接的な活性化;2)軸索反射による非刺激侵害受容器末端の間接的な逆行性の活性化、ここで末梢において収束軸索分岐点に到達する際に侵害受容器の1つの末端から入力される活動電位は、分岐点から非刺激末端の末梢末端へと移動する活動電位を生じる;および3)末梢へと移動するCNS中の侵害受容器中心末端における活性の結果としての活性化(例えばGABAにより生じる中心末端の一次性の求心性の脱分極は、「間違った道」に移動する活動電位を開始させるのに十分であり得る)により誘発され得る。
【0152】
肺に内在するILC2細胞のゲノム分析により、SP、CGRPおよびVIPなどの、感覚ニューロンにより放出されるいくつかのニューロペプチドに対する受容体の発現が明らかにされ、侵害受容器がこれらの細胞と直接的に連絡する機会が提供された。特に、VIPは、OVA曝露マウスにおいて肺の求心性部分を含むNaV1.8+結節神経節ニューロン中で発現されることが見出される。カプサイシンまたはIL5で刺激された、培養された結節神経節ニューロンもVIPを放出し、一方でOVA曝露マウス由来のBALFは、ビヒクル負荷試験マウスと比較して増加されたVIPを含んだ(Talbot et al., Neuron. 2015 July 15; 87(2): 341-354)。これらのデータは、VIPは炎症を起こした肺において放出され、本発明の荷電したナトリウムチャンネル遮断薬によるニューロンのサイレンシングにより遮断され得ることを示す。また、TH2非対称(skewing)条件下で培養したCD4+ T細胞を、組換えマウスVIPに曝露した場合、IL-13およびIL-5の転写物レベルは増加し、これはVIPが、これらのII型制御サイトカインを転写するTH2細胞の能力に寄与することを示唆する。
【0153】
Nav1.8+/TRPV1+であるものを含む侵害受容器は、乾癬および接触皮膚炎のモデルにおいて免疫応答に不可欠であることが示されている(Riol-Blanco et al., Nature 2014 June 5; 510(7503): 157-161)。イミキモド誘導乾癬に対する試験において、侵害受容器の薬理学的または遺伝的除去(ablation)により、皮膚樹状細胞(DDC)はもはやIL-23を産生しなくなった。IL-23のこの欠失は、皮膚Th17細胞の炎症性サイトカインの産生を有意に低減し、また炎症性細胞の皮膚への流入を有意に低減した。共焦点顕微鏡検査により、75%のDDCは、感覚神経と直接接触したかまたはそれに近接して近くにあったかのいずれかであった。Nav1.8+/TRPV1+侵害受容器の薬理学的除去はまた、接触皮膚炎のIL-12誘導DNFBモデルにおいて皮膚の炎症を有意に低減した(Riol-Blanco et al., Nature 2014 June 5; 510(7503): 157-161)。
【0154】
免疫細胞からの免疫メディエーター放出も、侵害受容器を活性化し得る。肥満細胞は、一次侵害受容ニューロンに近く、いくつかの文脈において侵害受容器感作に寄与することが見出される。分泌促進化合物48/80の注射は、硬膜において肥満細胞の脱顆粒を促進し、髄膜の侵害受容器の興奮を引き起こす。肥満細胞脱顆粒はまた、神経成長因子誘導熱痛覚過敏の迅速な開始に寄与する。マクロファージは、いくつかの可溶性メディエーターを放出することにより侵害受容器感作に寄与する。ケモカインであるマクロファージ炎症性タンパク質-1α(MIP-1α)ならびにその受容体CCR1およびCCR5の発現は、坐骨神経の部分的な結紮後にマクロファージおよびシュワン細胞において増加し、ニューロパシー疼痛の発生に寄与する。リンパ球は、末梢侵害受容器の感作に寄与する。T細胞は、神経損傷後に坐骨神経および後根神経節(DRG)に浸潤する。神経損傷により誘導される痛覚過敏および異痛は、T細胞を欠いたげっ歯類において顕著に弱められるかまたは排除され、免疫抑制剤ラパマイシンは、部分的にT細胞に対する効果のために、ラットにおいてニューロパシー疼痛を弱める。T細胞のサブセットのうち、1型および2型ヘルパーT細胞(TH1およびTH2細胞)は、ニューロパシー疼痛において異なる役割を有することが示されている。TH1細胞は、前炎症性サイトカイン(IL-2およびインターフェロン-γ(IFNγ))を放出することによりニューロパシー疼痛挙動を促進し、一方でTH2細胞は、抗炎症性サイトカイン(IL-4、IL-10およびIL-13)を放出することによりそれを阻害する。補体系も、炎症性痛覚過敏およびニューロパシー疼痛において役割を有する。アナフィラトキシンC5aは、補体カスケードの重要なエフェクターであり、好中球上のC5aR1受容体に結合する際に、それは強力な好中球誘引物質となる(Ren & Dubner, Nat. Med. 16:1267-1276 (2010))。
【0155】
細菌感染は、侵害受容器を直接活性化することが示されており、TLR2、MyD88、T細胞、B細胞、ならびに好中球および単球により媒介される免疫応答は、マウスにおける黄色ブドウ球菌誘導性疼痛には必要ではない(Chiu et al., Nature 501:52-57 (2013))。マウスにおける機械的および熱的痛覚過敏は、組織腫脹または免疫活性化ではなく生きた細菌の負荷に相関する。細菌は、部分的に細菌性N-ホルミル化ペプチドおよび孔形成毒素α-溶血素を介して、異なる機構を通じて、侵害受容器ニューロン中でカルシウム流動および活動電位を誘導する。侵害受容器を含むNav1.8系統ニューロンの特定の除去は、細菌感染の間に疼痛を排除したが、同時に局所的な免疫浸潤および排出リンパ節(draining lymph node)のリンパ節症を増加させた。したがって、細菌性病原体は、炎症を調節する感覚ニューロンを直接的に活性化することにより、宿主-病原体相互作用における神経系についての思いもよらない役割として、疼痛を生じる。Talbot et al., (Neuron. 2015 July 15; 87(2): 341-354.)のデータによっても、侵害受容器は、感作された動物においてアレルゲンへの曝露の間に活性化されることが示唆された。
【0156】
特定の障害において、神経性炎症は、軟部組織、皮膚、呼吸器系、関節、尿生殖器およびGI管、肝臓および脳における組織損傷、自己免疫疾患、感染および刺激原への曝露により誘発される末梢炎症の一因となる。神経性炎症性障害としては、限定されないが、本明細書に記載されるようにアレルギー性炎症、炎症性腸疾患、間質性膀胱炎、アトピー性皮膚炎、喘息、結膜炎、関節炎、大腸炎、接触皮膚炎、糖尿病、湿疹、膀胱炎、胃炎、片頭痛、乾癬、鼻炎、しゅさ、日焼け、膵炎、慢性の咳、慢性の鼻副鼻腔炎(rhinosinusistis)、外傷性脳損傷、複数細菌性敗血症、腱障害、慢性じんましん、リウマチ病、急性肺損傷、刺激物への曝露、刺激物、汚染物質または化学兵器剤の吸入が挙げられる。
【0157】
かゆみ、疼痛、咳および神経性炎症の評価
筋骨格、免疫炎症性およびニューロパシー性の障害に関連する疼痛の治療における本発明の化合物、組成物、方法およびキットのいずれかの効力を測定するために、測定指標を使用し得る。有用である指標としては、視覚アナログ尺度(VAS)、リカート尺度、絶対的疼痛尺度(categorical pain scale)、記述子(descriptor)、Lequesne指標、WOMAC指標およびAUSCAN指標が挙げられ、それらのそれぞれは当該技術分野で周知である。かかる指標は、疼痛、かゆみ、機能、剛性または他の変数を測定するために使用され得る。
【0158】
視覚アナログ尺度(VAS)は一次元の量の基準を提供する。VASは一般的に、規則的な距離間隔、例えば10 1-cm間隔で描かれたハッシュマークを有する線の写真などの距離の表示を使用する。例えば、患者は、線の一端が「疼痛無し」(0cmのスコア)または「かゆみなし」に対応し、線の他方の端が「我慢できない疼痛」または「我慢できないかゆみ」(10cmのスコア)に対応する疼痛またはかゆみの感覚に最良に対応する線上のスポットを選択することにより、疼痛またはかゆみの感覚を等級づけるように求められ得る。この手順は、患者が疼痛またはかゆみをどのように経験しているかについての定量的な情報を得るための単純で迅速なアプローチを提供する。VAS尺度およびそれらの使用は、例えば米国特許第6,709,406号および同6,432,937号に記載される。
【0159】
リカート尺度は同様に、一次元の量の基準を提供する。一般的に、リカート尺度は、低い値(例えば0、疼痛無しを意味する)から高い値(例えば7、極度の疼痛を意味する)の範囲の別々の整数の値を有する。疼痛を経験する患者は、経験される疼痛の程度を示すために低い値~高い値の間の数を選択するように求められる。リカート尺度およびその使用は、例えば米国特許第6,623,040号および同6,766,319号に記載される。
【0160】
Lequesne指標およびWestern Ontario and McMaster Universities (WOMAC)変形性関節症指標は、自分で与えた(self-administered)質問事項を使用してOA患者の膝および臀部における疼痛、機能および剛性を評価する。膝および臀部の両方はWOMACに包含され、一方で膝についての1つのLequesne質問事項および臀部について別のものがある。これらの質問事項は、VASまたはリカートと比較してより多くの情報内容を含むので、有用である。WOMAC指標およびLequesne指標の質問事項の両方は、外科的設定(例えば膝および臀部関節形成)を含むOAにおいて広範囲に検証されている。それらの測定規準特徴は大きくは異ならない。
【0161】
AUSCAN(Australian-Canadian hand arthritis)指標は、妥当で、信頼性の高い応答性の患者自身が報告した質問事項を使用する。一例において、この質問事項は、3つの次元内の15の質問(疼痛、5個の質問;剛性、1個の質問;および身体的機能、9個の質問)を含む。AUSCAN指標は、例えばリカートまたはVAS尺度を使用し得る。
【0162】
疼痛の測定のための本発明の方法、組成物およびキットにおいて有用な指標としては、疼痛記述子尺度(Pain Descriptor Scale)(PDS)、視覚アナログ尺度(VAS)、口頭記述子尺度(Verbal Descriptor Scale)(VDS)、数的疼痛強度尺度(Numeric Pain Intensity Scale)(NPIS)、ニューロパシー疼痛尺度(Neuropathic Pain Scale)(NPS)、ニューロパシー疼痛症候群調査記録(Neuropathic Pain Symptom Inventory)(NPSI)、現在の疼痛調査記録(Present Pain Inventory)(PPI)、老人用疼痛基準(Geriatric Pain Measure)(GPM)、マギル疼痛質問事項(McGill Pain Questionnaire)(MPQ)、平均疼痛強度(記述子示差的尺度(Descriptor Differential Scale))、数的疼痛尺度(numeric pain scale)(NPS)グローバル評価スコア(global evaluation score)(GES)短文式マギル疼痛質問事項(Short-Form McGill Pain Questionnaire)、ミネソタ多相個人調査記録(Minnesota Multiphasic Personality Inventory)、疼痛プロフィールおよび多元的疼痛調査記録(Pain Profile and Multidimensional Pain Inventory)、小児健康質問事項(Child Heath Questionnaire)および小児評価質問事項(Child Assessment Questionnaire)が挙げられる。
【0163】
かゆみは、主観的な基準(VAS、リカート、記述子)により測定され得る。別のアプローチは、振動変換器または運動感受性測定器を使用した、客観的なかゆみの相関物であるひっかきを測定することである。
【0164】
咳は、レスター咳質問票(Leicester Cough Questionnaire)のような標準的な質問事項および咳の頻度を測定するための検証された客観的な機器(例えばVitaloJAK)により測定され得る。
【実施例】
【0165】
実施例
以下の実施例は本発明を説明することを意図し、本発明を限定することを意図しない。
【0166】
実施例1-化合物1A'~51A'の合成
一般的な略語の定義
ACN アセトニトリル
AcOH 酢酸
aq. 水性
BBr3 三臭化ホウ素
CDCl3 D3-クロロホルム
δ 化学シフト(ppm)
DCM ジクロロメタン
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DMAP 4-ジメチルアミノピリジン
DMSO ジメチルスルホキシド
ESI 電子スプレーイオン化
Et2O ジエチルエーテル
EtOAc 酢酸エチル
h 時間
HPLC 高性能液体クロマトグラフィー
K2CO3 炭酸カリウム
LAH リチウムアルミニウムハイドライド
MeOH メタノール
mHz メガヘルツ
MS 質量分光法
m/z 質量 対 電荷比
NaCNBH3 シアノ水素化ホウ素ナトリウム
Na2SO4 硫酸ナトリウム
NMR 核磁気共鳴
Petエーテル 石油エーテル
RT 室温
TEA トリエチルアミン
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
UV 紫外線
【0167】
1-ベンジル-1-(2-(2,6-ジメチルフェノキシ)エチル)アゼパン-1-イウムブロミドの合成
【化17】
・2-(2-ブロモエトキシ)-1,3-ジメチルベンゼンの合成:
アセトニトリル(8.0mL)中の2,6-ジメチルフェノール(0.50g、4.1mmol)の撹拌した溶液に、炭酸カリウム(1.7g、12.3mmol)および1,2-ジブロモエタン(3.85g、20.5mmol)を添加した。反応の進行をTLC(移動相:petエーテル中5% EtOAc、視覚化:UV)でモニタリングしながら得られた反応混合物を90℃で16h撹拌した。反応混合物をRTに冷却して、減圧下で濃縮して、水(100mL)で希釈し、ジクロロメタン(3 X 50mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をブライン溶液(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮して、粗製物を得て、これをシリカゲルクロマトグラフィー(petエーテルで溶出)で精製して、純粋な2-(2-ブロモエトキシ)-1,3-ジメチルベンゼン(0.20g)を無色液体として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ ppm 7.00 - 7.25 (m, 2H), 6.91 - 6.95 (m, 1 H), 4.01 - 4.10 (m, 2 H), 3.65 - 3.68 (m, 2 H), 2.30 (s, 6 H).
【0168】
・中間体1-(2-(2,6-ジメチルフェノキシ)エチル)アゼパンの合成:
アセトニトリル(3.0mL)中の2-(2-ブロモエトキシ)-1,3-ジメチルベンゼン(200mg、0.87mmol)の溶液にDIPEA(0.45g、3.5mmol)およびアゼパン(0.12g、1.2mmol)を添加した。反応の進行をTLC(移動相:petエーテル中10% EtOAc、視覚化:UV)でモニタリングしながら、得られた反応混合物を90℃で16h撹拌した。反応混合物をRTに冷却して、減圧下で濃縮して、水(20mL)で希釈して、ジクロロメタン(3 X 20mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をブライン溶液(20ml)で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮して、1-(2-(2,6-ジメチルフェノキシ)エチル)アゼパン(210mg)を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 6.98 - 7.00 (m, 2 H), 6.88 - 6.92 (m, 1 H), 3.85 - 3.88 (m, 2 H), 2.93 - 2.96 (m, 2 H), 2.75 - 2.77 (m, 4 H), 2.28 (s, 6 H), 1.59-1.68 (m, 8 H).
【0169】
・1-ベンジル-1-(2-(2,6-ジメチルフェノキシ)エチル)アゼパン-1-イウムブロミドの合成:
アセトニトリル(1.5mL)中の1-(2-(2,6-ジメチルフェノキシ)エチル)アゼパン(0.1g、0.4mmol)の溶液に、ベンジルブロミド(0.072ml、0.6mmol)を添加して、反応の進行をTLC(移動相:petエーテル中50% EtOAc、視覚化:UV)でモニタリングしながら、得られた反応混合物を密封チューブ中90℃で16h撹拌した。反応混合物を室温に冷却して、減圧下で濃縮して、粗製生物を得て、これを酢酸エチル(3 X 5ml)で粉砕して、1-ベンジル-1-(2-(2,6-ジメチルフェノキシ)エチル)アゼパン-1-イウムブロミド(80.5mg)を灰白色固体として得た。MS (ESI): m/z 338.41 [M]+. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 7.63 - 7.65 (m, 2 H), 7.49-7.57 (m, 3 H), 7.04 - 7.08 (m, 2 H), 6.96 - 6.98 (m, 1 H), 4.72 (s, 2 H), 4.29 (t, 2 H), 3.52-3.69 (m, 6 H), 2.29 (s, 6 H), 1.88 - 1.92 (m, 4 H), 1.59 - 1.62 (m, 4 H).
【0170】
実施例2~5は、化合物1Aの合成について記載される手順に従って、中間体2-(2-ブロモエトキシ)-1,3-ジメチルベンゼン、適切なアザシクロアルカンおよびベンジルブロミドから調製した。
【表4】
【0171】
実施例6~13は、化合物1Aの合成について記載される手順に従って、中間体1-(2-(2,6-ジメチルフェノキシ)エチル)アゼパンおよび適切なアルキルブロミドから調製した。全ての化合物は、滴定により単離または逆相HPLCにより精製した。
【表5-1】
【表5-2】
【0172】
実施例14~16は、化合物1Aの合成について記載される手順に従って、2,6-ジメチルフェノール、適切なジブロモアルカン、アゾカンおよびベンジルブロミドから調製した。
【表6】
【0173】
実施例17~32は、化合物1Aの合成について記載される手順に従って、適切に置換されたフェノール、1,2-ジブロモエタン、アザシクロアルカン(azacyclolkane)およびベンジルブロミドから調製した。全ての化合物は滴定により単離または逆相HPLCにより精製した。
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【0174】
1-ブチル-1-(2-(2-シアノ-6-メチルフェノキシ)エチル)アゾカン-1-イウムの合成:
【化18】
・中間体2-(2-ブロモエトキシ)-3-メチルベンゾニトリルの合成:
アセトニトリル(10mL)中の2-ヒドロキシ-3-メチルベンゾニトリル(0.8g、6.0mmol)およびK
2CO
3(1.66g、12.0mmol)の撹拌した溶液に、ジブロモエタン(2.7mL、30.0mmol)を添加して、反応の進行をTLC(移動相 petエーテル中10% EtOAc、視覚化:UV)でモニタリングしながら、得られた反応物を80℃に16時間加熱した。粗製の反応混合物を減圧下で濃縮して、残渣を得て、これを水(10mL)で希釈して、EtOAc (2 X 50mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を無水Na2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮して粗製生成物を得て、これをシリカゲルクロマトグラフィー(petエーテル中10%~15%のEtOAcで溶出)で精製した。合わせた純粋な画分を減圧下で濃縮して、2-(2-ブロモエトキシ)-3-メチルベンゾニトリル(1g)を淡黄色ゴムとして得た。質量(ESI): M/z = 240.10 [M+H] + 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm: 7.44-7.40 (m, 2 H), 7.09 (t, 1 H), 4.43 (t, 2 H), 3.71 (t, 2 H), 2.36 (s, 3 H).
【0175】
・中間体2-(2-(アゾカン-1-イル)エトキシ)-3-メチルベンゾニトリルの合成:
アセトニトリル(10mL)中の2-(2-ブロモエトキシ)-3-メチルベンゾニトリル(800mg、3.3mmol)およびN-DIPEA (1.8mL、10.078mmol、3eq)の撹拌した溶液を、アゾカン(0.57g、5.0mmol)で処理し、反応の進行をTLC(移動相 petエーテル中50%酢酸エチル、視覚化:UV)でモニタリングしながら、得られた反応混合物を80℃に16時間加熱した。反応混合物を減圧下で濃縮して、粗製残渣を得て、これを水(40mL)で希釈して、EtOAc (2 X 50mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を無水Na2SO4で乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮して、粗製生成物を得て、これをシリカゲルクロマトグラフィー(petエーテル中50%~60%のEtOAcで溶出)で精製した。合わせた純粋な画分を減圧下で濃縮して、純粋な2-(2-(アゾカン-1-イル)エトキシ)-3-メチルベンゾニトリルを淡黄色油として得た(0.5g)。質量(ESI): M/z = 273.29 [M+H] + 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm: 7.42-7.37 (m, 2 H), 7.03 (t, 1 H), 4.18 (t, 2 H), 2.96 (t, 2 H), 2.68 (s, 4 H), 2.31 (s, 3 H), 1.59-1.54 (m, 10 H).
【0176】
・1-ブチル-1-(2-(2-シアノ-6-メチルフェノキシ)エチル)アゾカン-1-イウムTFA塩の合成:
アセトニトリル(10mL)中の2-(2-(アゾカン-1-イル)エトキシ)-3-メチルベンゾニトリル(0.4g、1.5mmol)の撹拌した溶液に、1-ブロモブタン(0.475mL、4.4mmol)を添加して、反応の進行をTLC(移動相:DCM中10% MeOH;視覚化:UV)でモニタリングしながら、得られた反応混合物を80℃で16時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮して、粗製生物を得て、これを逆相HPLC (カラム:X-Select CSH C18 (150X19) mm、5μ;移動相A/B:0.1% TFA (aq.)/ 1:1アセトニトリル:MeOH;フロー:18mL/min)で精製した。回収した純粋な画分を凍結乾燥して、1-ブチル-1-(2-(2-シアノ-6-メチルフェノキシ)エチル)アゾカン-1-イウムトリフルオロ酢酸塩(220mg)を得た。質量(ESI): M/z = 329.28 [M] +. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm: 7.70-7.67 (m, 1 H), 7.64-7.62 (m, 1 H), 7.28 (t, 1 H), 4.40 (t, 2 H), 3.83 (t, 2 H), 3.62-3.42 (m, 6 H), 2.33 (s, 3 H), 1.91 (br s, 4 H), 1.71-1.62 (m, 8 H), 1.35-1.30 (m, 2 H), 0.92 (t, 3 H).
【0177】
1-ベンジル-1-(2-(2,6-ジメチルフェノキシ)プロピル)アゾカン-1-イウムブロミド:
【化19】
・中間体メチル2-(2,6-ジメチルフェノキシ)プロパノエートの合成:
アセトニトリル(120mL)中の2,6-ジメチルフェノール(7g、57.3mmol)の撹拌した溶液に、K
2CO
3 (23.7g、171.8mmol)およびメチル2-ブロモプロパノエート(9.6mL、85.9mmol)を添加して、反応混合物の進行をTLC(移動相:petエーテル中20% EtOAc、視覚化:UV)でモニタリングしながら得られた反応混合物を80℃で16h撹拌した。粗製反応混合物を水(100mL)で希釈して、EtOAc (2 x 250mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を水(200mL)およびブライン(100mL)で洗浄して、Na
2SO
4で乾燥させ、減圧下で濃縮して、メチル2-(2,6-ジメチルフェノキシ)プロパノエート(9g)を黄色液体として得た。質量(ESI): 209.17 m/z [M+H] +. 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 6.99 (d, 2 H), 6.93-6.89 (m, 1 H), 4.51 (q, 1 H), 3.77 (s, 3 H), 2.27 (s, 6 H), 1.52 (d, 3 H).
【0178】
・中間体2-(2,6-ジメチルフェノキシ)プロパン-1-オールの合成:
THF(100mL)中のメチル2-(2,6-ジメチルフェノキシ)プロパノエート(5g、24.0mmol)の冷却(0℃)溶液に、THF中のLAHの1M溶液(48.016mL、48.0mml)を添加して、反応の進行をTLC(移動相:petエーテル中20% EtOAc、視覚化:UV)でモニタリングしながら、得られた反応混合物を室温で16h撹拌した。反応混合物を0℃に冷却して、飽和NaCl溶液(200mL)でクエンチして、EtOAc (2 x 300mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を水(300mL)で洗浄して、無水Na2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮して、粗製生物を得て、これをシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(petエーテル中5%~10% EtOAcで溶出)で精製した。合わせた純粋な画分を減圧下で濃縮して、2-(2,6-ジメチルフェノキシ)プロパン-1-オール(2.8g、64.7%)を黄色液体として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 7.01 (d, 2 H), 6.94-6.90 (m, 1 H), 4.26-4.22 (m, 1 H), 3.82-3.74 (m, 2 H), 2.29 (s, 6 H), 2.17-2.14 (m, 1 H), 1.17 (d, 3 H).
【0179】
・中間体2-(2,6-ジメチルフェノキシ)プロピルメタンスルホナートの合成:
DCM (10mL)中の2-(2,6-ジメチルフェノキシ)プロパン-1-オール(1g、5.55mmol)の冷却(0℃)溶液に、TEA (2.3mL、16.6mmol)およびメタンスルホニルクロライド(0.6mL、8.3mmol)を添加して、反応混合物の進行をTLC(移動相:petエーテル中20% EtOAC、視覚化:UV)でモニタリングしながら、得られた反応混合物を室温で16h撹拌した。反応混合物を水(50mL)で希釈して、DCM(2 x 100mL)で抽出して、合わせた有機抽出物を水(100mL)およびブライン(100mL)で洗浄して、無水Na2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮して、2-(2,6-ジメチルフェノキシ)プロピルメタンスルホナート(1.3g)を黄色液体として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 7.01 (d, 2 H), 6.94-6.91 (m, 1 H), 4.36-4.32 (m, 3 H), 3.02 (s, 3 H), 2.27 (s, 6 H), 1.28 (d, 3 H).
【0180】
・中間体1-(2-(2,6-ジメチルフェノキシ)プロピル)アゾカンの合成:
ACN (15mL)中の2-(2,6-ジメチルフェノキシ)プロピルメタンスルホナート(1.3g、5.0mmol、1.0)の撹拌した溶液に、K2CO3 (2g、15.0mmol)およびアゾカン(0.9mL、7.5mmol)を室温で添加して、反応混合物の進行をTLC(移動相:petエーテル中20% EtOAc、視覚化:UV)でモニタリングしながら、得られた反応混合物を80℃で16h撹拌した。反応混合物を水(100mL)で希釈して、EtOAc (2 x 200mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をブライン(200mL)で洗浄して、無水Na2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮して、粗製生物を得てこれを、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(petエーテル中5%~10%のEtOAcで溶出)で精製した。合わせた(combuined)純粋な画分を減圧下で濃縮して、1-(2-(2,6-ジメチルフェノキシ)プロピル)アゾカン(560mg)を無色液体として得た。質量(ESI): 276.37 m/z [M+H] +. 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 6.98 (d, 2 H), 6.89-6.86 (m, 1 H), 4.08-4.05 (m, 1 H), 2.87-2.83 (m, 1 H), 2.58-2.53 (m, 5 H), 2.27 (s, 6 H), 1.60-1.50 (m, 10 H), 1.27 (d, 3 H).
【0181】
・1-ベンジル-1-(2-(2,6-ジメチルフェノキシ)プロピル)アゾカン-1-イウムブロミドの合成:
アセトニトリル(10mL)中1-(2-(2,6-ジメチルフェノキシ)プロピル)アゾカン(500mg、1.8mmol)の撹拌した溶液に、ベンジルブロミド(0.43mL、3.6mmol)を添加して、反応混合物の進行をTLC(移動相:DCM中10% MeOH、視覚化:UV)でモニタリングしながら、得られた反応混合物を80℃で16h撹拌した。反応を減圧下で濃縮して、粗製生物を得て、EtOAc (50mL)で粉砕して、1-ベンジル-1-(2-(2,6-ジメチルフェノキシ)プロピル)アゾカン-1-イウムブロミド(546mg)を灰白色固体として得た。質量(ESI): 366.3 m/z [M] +. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 7.67-7.65 (m, 2 H), 7.56-7.51 (m, 3 H), 7.05 (d, 2 H), 6.97-6.93 (m, 1 H), 4.97-4.93 (m, 1 H), 4.81-4.70 (m, 2 H), 3.78-3.72 (m, 1 H), 3.65-3.50 (m, 4 H), 3.43-3.39 (m, 1 H), 2.26 (s, 6 H), 2.03-1.90 (m, 4 H), 1.75-1.50 (m, 6 H), 0.98 (d, 3 H).
【0182】
1-(2-(ベンゾイルオキシ)エチル)-1-(2-(2,6-ジメチルフェノキシ)エチル)アゼパン-1-イウムの合成:
【化20】
・中間体1-(2-(2,6-ジメチルフェノキシ)エチル)-1-(2-ヒドロキシエチル)アゼパン-1-イウムの合成:
1-(2-(2,6-ジメチルフェノキシ)エチル)アゼパン(0.718g、2.90mmol)に、ストレートの2-ブロモエタン-1-オール(0.544g、4.35mmol)を添加して、反応混合物の進行をTLC(移動相:DCM中10%メタノール、視覚化:UV)でモニタリングしながら、得られた反応混合物を密封チューブ中90℃で16時間加熱した。反応混合物をDCM(70mL)で希釈して、減圧下で濃縮して、粗製生物を得て、これをシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(DCM中7% MeOHで溶出)で精製した。合わせた画分を減圧下で濃縮して、1-(2-(2,6-ジメチルフェノキシ)エチル)-1-(2-ヒドロキシエチル)アゼパン-1-イウムブロミド(0.450g)を灰白色固体として得た。MS (ESI): m/z 292.25 [M] +. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 7.06-7.04 (m, 2 H), 6.97-6.94 (m, 1 H), 5.36 (t, 1 H), 4.16-4.11 (m, 2 H), 3.92-3.87 (m, 4 H), 3.69-3.65 (m, 4 H), 3.62-3.56 (m, 2 H), 2.27 (s, 6 H), 1.90 (br s, 4 H), 1.62 (br s, 4 H).
【0183】
・1-(2-(2,6-ジメチルフェノキシ)エチル)-1-(2-((4-フルオロベンゾイル)オキシ)エチル)アゼパン-1-イウムの合成:
ピリジン(2mL)中の1-(2-(2,6-ジメチルフェノキシ)エチル)-1-(2-ヒドロキシエチル)アゼパン-1-イウム(200mg、0.54mmol)およびDMAP (5.25mg、0.04mmol) の撹拌した溶液に、塩化ベンゾイル(377mg、2.69mmol)を0℃で添加した。反応混合物の進行をTLC(移動相:DCM中10% MeOH、視覚化:UV)でモニタリングしながら、得られた反応混合物を室温で16h撹拌した。沈殿した固体を濾過して、酢酸エチル(50mL)で洗浄し、高真空下で乾燥させ、粗製生物を得て、これをHPLC(カラム:LUNA C18 (250*21.2) mm、5u;移動相A/B: 0.1%TFA (Aq)/アセトニトリル)で精製した。合わせた純粋な画分を凍結乾燥して、1-(2-(2,6-ジメチルフェノキシ)エチル)-1-(2-((4-フルオロベンゾイル)オキシ)エチル)アゼパン-1-イウムをTFA塩として得た(91mg)。MS (ESI): M/z = 396.37 [M]+. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 8.00-7.98 (m, 2 H), 7.71-7.68 (m, 1 H), 7.54 (t, 2 H), 7.04 (d, 2 H), 6.97-6.94 (m, 1 H), 4.79 (br s, 2 H), 4.20 (t, 2 H), 4.01-4.00 (m, 4 H), 3.74-3.72 (m, 4 H), 2.25 (s, 6 H), 1.95 (br s, 4 H), 1.65 (br s, 4 H).
【0184】
実施例36および37は、化合物32Aの合成について記載された手順に従って、中間体1-(2-(2,6-ジメチルフェノキシ)エチル)-1-(2-ヒドロキシエチル)アゼパン-1-イウムおよび適切な塩化ベンゾイルから調製した。
【表8】
【0185】
1-ベンジル-1-(3-(4-ブトキシフェノキシ)プロピル)ピペリジン-1-イウムブロミドの合成:
【化21】
・中間体1-ブトキシ-4-(3-クロロプロポキシ)ベンゼンの合成:
ACN (100.0mL)中の4-ブトキシフェノール(10g、60.2mmol)の撹拌した溶液にK
2CO
3 (24.9g、180.5mmol)を添加した。10分の撹拌後、1-ブロモ-3-クロロプロパン(14.2g、90.2mmol)を室温で添加して、反応の進行をTLC(移動相:petエーテル中10%酢酸エチル、UVによる視覚化)でモニタリングしながら、得られた反応混合物を80℃で16h加熱した。反応混合物を水(150mL)で希釈して、EtOAc (2 X 150mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をブライン溶液(50mL)で洗浄して、無水Na
2SO
4で乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮した。得られた粗製物をシリカゲルクロマトグラフィー(petエーテル中10%~30%のEtOAcで溶出)で精製した。純粋な画分を合わせて、減圧下で濃縮して、1-ブトキシ-4-(3-クロロプロポキシ)ベンゼン(7g)を赤色液体として得た。質量(ESI): m/z 243.2 [M+H] +.
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 6.82 (s, 4 H), 4.05 (t, 2 H), 3.90 (t, 2 H), 3.73 (t, 2 H), 2.23-2.17 (m, 2 H), 1.77-1.70 (m, 2 H), 1.55-1.49 (m, 2 H), 0.95-0.92 (m, 3 H).
【0186】
・中間体1-(3-(4-ブトキシフェノキシ)プロピル)ピペリジンの合成:
アセトニトリル(20mL)中の1-ブトキシ-4-(3-クロロプロポキシ)ベンゼン(0.5g、2.1mmol)およびK2CO3 (0.85g、6.2mmol)の撹拌した溶液に、ピペリジン(0.26g、3.1mmol)を添加して、反応の進行をTLC(移動相:petエーテル中50% EtOAc、UVによる視覚化)でモニタリングしながら、得られた反応混合物を80℃で16h加熱した。反応混合物を室温に冷却して、氷冷水(10mL)でクエンチして、EtOAc (3 x 20mL)で抽出した。合わせた抽出物を水(2 x 20mL)で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗製生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(petエーテル中20%~30%のEtOAcで溶出)により精製した。純粋な画分を合わせて、減圧下で濃縮して、1-(3-(4-ブトキシフェノキシ)プロピル)ピペリジン(0.25g)を灰白色固体として得た。MS (ESI): m/z 292.05 [M+H] +.
【0187】
・1-ベンジル-1-(3-(4-ブトキシフェノキシ)プロピル)ピペリジン-1-イウムブロミドの合成:
アセトニトリル(10mL)中の1-(3-(4-ブトキシフェノキシ)プロピル)ピペリジン(0.2g、0.69mmol)の溶液をベンジルブロミド(0.25g、1.4mmol)で処理し、反応の進行をTLC(移動相:DCM中10% MeOH、UVによる視覚化)でモニタリングしながら、得られた反応混合物を、密封チューブ中80℃で16h加熱した。反応混合物を室温に冷却して、減圧下で濃縮した。粗製生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(DCM中3%~5%のMeOHで溶出)により精製した。純粋な画分を合わせて、減圧下で濃縮して、1-ベンジル-1-(3-(4-ブトキシフェノキシ)プロピル)ピペリジン-1-イウムブロミド塩(0.70g)を灰白色固体として得た。質量(ESI): m/z 382.3 [M] +. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 7.57-7.51 (m, 5 H), 6.87 (d, 4 H), 4.61 (s, 2 H), 4.03 (t, 2 H), 3.89 (t, 2 H), 3.37-3.28 (m, 6 H), 2.28 (d, 2 H), 1.86 (d, 4 H), 1.68-1.64 (m, 3 H), 1.44-1.39 (m, 3 H), 0.92 (t, 3 H).
【0188】
実施例39~43は、適切に置換されたピペリジンまたはモルホリンおよびアルキル化剤であるベンジルブロミドまたはエチルヨーダイドを使用して、化合物35Aについて記載される手順に従って中間体1-ブトキシ-4-(3-クロロプロポキシ)ベンゼンから調製した。
【表9】
【0189】
1-(3-(4-ブトキシフェノキシ)プロピル)ピリジン-1-イウムブロミドの合成:
【化22】
アセトニトリル(3mL)中の1-ブトキシ-4-(3-クロロプロポキシ)ベンゼン(0.5g、2.1mmol)の撹拌した溶液に、ピリジン(0.325g、4.1mmol)を添加して、反応の進行をTLC(移動相:DCM中10%メタノール、視覚化:UV)でモニタリングしながら、得られた反応混合物を90℃で24h撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮して、粗製化合物を得て、これを酢酸エチル(15mL)で粉砕して、1-(3-(4-ブトキシフェノキシ)プロピル)ピリジン-1-イウムクロライド(0.145g)を得た。質量(ESI): m/z 286.2 [M] +. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 9.14 (d, 2 H), 8.63-8.59 (m, 1 H), 6.83-6.79 (m, 2 H), 6.71-6.69 (m, 2 H), 4.79 (t, 2 H), 4.00 (t, 2 H), 3.87 (t, 2 H), 2.43-2.36 (m, 2 H), 1.68-1.61 (m, 2 H), 1.45-1.38 (m, 2 H), 0.93 (t, 3 H).
【0190】
実施例45および46は、化合物41Aについて記載された手順に従って、中間体1-ブトキシ-4-(3-クロロプロポキシ)ベンゼンおよび適切に置換されたピリジンから調製した。
【表10】
【0191】
4-ベンジル-4-(3-(4-プロポキシフェノキシ)プロピル)モルホリン-4-イウムブロミドの合成の合成:
【化23】
・中間体4-(3-(4-プロポキシフェノキシ)プロピル)モルホリンの合成:
アセトニトリル(20mL)中の4-プロポキシフェノール(1g、6.6mmol)および炭酸カリウム(1.8g、13.1mmol)の撹拌した溶液に、4-(3-クロロプロピル)モルホリン(1.2g、7.2mmol)を添加して、反応の進行をTLC(移動相:petエーテル中50% EtOAc、視覚化:UV)でモニタリングしながら、得られた反応混合物を80℃で16時間加熱した。反応混合物を室温に冷却して、氷冷水(10mL)で希釈して、次いでEtOAc (40mL)で抽出した。有機抽出物を水(10mL)およびブライン溶液(10mL)で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗製生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(petエーテル中40%~50% EtOAcで溶出)により精製した。合わせた純粋な画分を減圧下で濃縮して、純粋な4-(3-(4-プロポキシフェノキシ)プロピル)モルホリン(1.2g)を得た。MS (ESI): m/z 280.25 [M+H] +. 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 6.82 (s, 4 H), 3.96 (t, 2 H), 3.86 (t, 2 H), 3.72 (t, 4 H), 2.53-2.45 (m, 6 H), 1.94 (t, 2 H), 1.80-1.75 (m, 2 H), 1.02 (t, 3 H).
【0192】
・4-ベンジル-4-(3-(4-プロポキシフェノキシ)プロピル)モルホリン-4-イウムブロミドの合成:
アセトニトリル(10mL)中の4-(3-(4-プロポキシフェノキシ)プロピル)モルホリン(0.4g、1.4mmol)の撹拌した溶液に、ベンジルブロミド(0.98g、5.73mmol)を添加して、反応の進行をTLC(移動相:DCM中10% メタノール、視覚化:UV)でモニタリングしながら、得られた反応混合物を、密封チューブ中80℃で16h加熱した。反応混合物を室温に冷却して減圧下で濃縮した。粗製生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(DCM中3%~5% MeOHで溶出)により精製した。合わせた純粋な画分を減圧下で濃縮して、4-ベンジル-4-(3-(4-プロポキシフェノキシ)プロピル)モルホリン-4-イウムブロミド(0.28g)を灰白色固体として得た。質量(ESI): m/z 370.2 [M] +. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 7.60-7.51 (m, 5 H), 6.86 (t, 4 H), 4.74 (s, 2 H), 4.05-3.99 (m, 6 H), 3.85 (t, 2 H), 3.53-3.40 (m, 6 H), 2.33-2.29 (m, 2 H), 0.96 (t, 3 H).
【0193】
実施例48~52は、化合物44Aについて記載された手順に従って、4-(3-クロロプロピル)モルホリン、適切に置換されたフェノールおよびベンジルブロミドから調製した。
【表11】
【0194】
4-ベンジル-4-(3-(4-ヒドロキシフェノキシ)プロピル)モルホリン-4-イウムブロミドの合成:
【化24】
DCM (3mL)中の4-ベンジル-4-(3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル)モルホリン-4-イウムブロミド(150mg)の冷却(-78℃)溶液に、DCM中のBBr3の1M溶液(1.065mL、滴下)を添加した。一旦添加が完了すると、進行をTLC(移動相:DCM中20% MeOH、ニンヒドリンによる視覚化)でモニタリングしながら、反応混合物を室温で1h撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮して、粗製化合物を得て、これをシリカゲルクロマトグラフィー(DCM中20% MeOHで溶出)により精製した。合わせた純粋な画分を減圧下で濃縮して、4-(3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル)モルホリン(30mg)を灰白色固体として得た。質量(ESI): m/z 328.2 [M] +. UPLC: 98.88%. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 8.97 (s, 1 H), 7.60-7.51 (m, 5 H), 6.78-6.75 (m, 2 H), 6.72-6.69 (m, 2 H), 4.74 (s, 2 H), 4.01-3.98 (m, 6 H), 3.53-3.47 (m, 4 H), 3.41 (d, 2 H), 2.32-3.20 (m, 2 H).
【0195】
4-(3-(4-ブトキシフェノキシ)プロピル)-4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)モルホリン-4-イウムブロミドの合成:
【化25】
・中間体4-(3-(4-ブトキシフェノキシ)プロピル)モルホリンの合成:
アセトニトリル(15mL)中の1-ブトキシ-4-(3-クロロプロポキシ)ベンゼン(0.5g、2.1mmol)およびK
2CO
3 (0.57g、4.2mmol)の撹拌した溶液に、モルホリン(0.215g、2.5mmol)を添加して、反応の進行をTLC(移動相 petエーテル中50% EtOAc、視覚化:UV)でモニタリングしながら、得られた反応混合物を80℃で16h加熱した。反応をDCM (80mL)で希釈して、水(2 x 25mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮して、粗製生物を得て、これをフラッシュクロマトグラフィー(Petエーテル中20%~30% EtOAcで溶出)により精製した。合わせた純粋な画分を減圧下で濃縮して、4-(3-(4-ブトキシフェノキシ)プロピル)モルホリン(560mg)を淡黄色油として得た。MS (ESI): m/z 294.18 [M + H] +.
【0196】
・4-(3-(4-ブトキシフェノキシ)プロピル)-4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)モルホリン-4-イウムブロミドの合成
ACN (10mL)中の4-(3-(4-ブトキシフェノキシ)プロピル)モルホリン(0.2g、0.68mmol)の撹拌した懸濁液に、2-ブロモ-N,N-ジメチルアセトアミド(0.452g、2.73mmol)を添加した。反応の進行をTLC(移動相:DCM中10% MeOH、視覚化:UV)でモニタリングしながら、得られた反応混合物を80℃まで16h加熱した。反応混合物を減圧下で濃縮して、粗製生物を得て、これを逆相prep HPLC (カラム:X selectフェニルヘキシルC18 (19*250) 5um、移動相A/B: 0.1% FA (aq)/ACN)により精製して、生成物4-(3-(4-ブトキシフェノキシ)プロピル)-4-(2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)モルホリン-4-イウムブロミド(160mg)を得た。MS (ESI): m/z 379.2 [M] +. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 6.87-6.82 (m, 4 H), 4.60 (s, 2 H), 3.99-3.90 (m, 8 H), 3.88-3.81 (m, 4 H), 3.69-3.64 (m, 2 H), 2.99 (s, 3 H), 2.86 (s, 3 H), 2.07-2.03 (m, 2 H), 1.67-1.63 (m, 2 H), 1.44-1.38 (m, 2 H), 0.92 (m, 3 H).
【0197】
実施例55および56は、化合物38の合成について記載された手順に従って、4-ブトキシフェノール、モルホリン、ベンジルブロミドおよび適切な、適切なジハロアルカンから調製した。
【表12】
【0198】
実施例2-Nav1.7電流の阻害
化合物を記載される方法に従って合成し、電圧型ナトリウムチャンネルを阻害する能力について試験した。
【0199】
細胞培養
NaV1.7は、テトラサイクリンを用いた誘導の際に発現された。細胞を、10%透析ウシ胎仔血清(VWR, Radnor, PA)、1% Glutamax (VWR, Radnor, PA)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(VWR, Radnor, PA)、100mg/Lハイグロマイシン(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MAおよび5mg/Lブラストサイジン(Alfa Aesar, Haverhill, MA)を含むDMEM中で培養した。細胞を増殖させ、空気中10% CO2を含む湿潤環境中37℃で維持した。細胞を、継代のために培養フラスコから剥離し、0.05%トリプシン-EDTA (Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)を使用して回収した。NaV1.7を誘導するために、細胞を、記録の前日にテトラサイクリン(0.1~1μg/mL、IBI Scientific, Peosta, IA)で誘導して、24ウェルプレート上で平板培養した。細胞を、DPBS (VWR, Radnor, PA)で洗浄し、トリプシン処理し、次いで10mLの増殖培地中で5回粉砕して、細胞凝集物をバラバラに破壊した。1つの24ウェルプレートについて、2mLの細胞懸濁物を23mLの新鮮な増殖培地と混合し、0.1~1μg/mLのテトラサイクリンを添加した。次いで細胞を有する1mlの混合培地を、ウェルの底に12mmのカバーガラスを既に配置した24ウェルプレートのそれぞれのウェルに添加した。次いで細胞を、37℃および10% CO2で一晩インキュベートした。
【0200】
パッチクランプ溶液および薬物
細胞内溶液は、以下(mMで)CsCl 135、NaCl 10、EGTA 10、HEPES 10、MgCl2 2を含み、CsOHでpH7.2に調整した。外部溶液は、(mMで)NaCl 155、HEPES 10、グルコース10、KCl 3.5、CaCl2 1.5、MgCl2 1を含み、NaOHでpH7.4に調整した標準リンガー溶液であった。CsClはAlfa Aesar, Haverhill, MAのものである。全ての他の化学物質は、Sigma-Aldrich, St. Louis, MOのものである。試験化合物による内部遮断の程度を試験するために、化合物を、示される試験濃度で内部溶液に溶解した。対照実験において、内部溶液は化合物を何ら含まなかった。試験化合物による外部遮断の程度を試験するために、化合物を、示される試験濃度で外部溶液に溶解した。
【0201】
細胞全体パッチクランププロトコル
細胞をテトラサイクリンで誘導した18~24時間後、カバーガラスを、標準リンガー溶液を充填したチャンバーに室温で配置し、チャンバーを顕微鏡上に置いた。P97引き抜き具(Sutter Instrument, Novato, CA)でピペットをホウケイ酸ガラスから引き抜き、室温でCsCl内部溶液を充填した場合に1.5~2.5MΩの抵抗を有するようにMF-830マイクロフォージ(Narishige International USA, Inc, Amityville, NY)で磨いた。健常な細胞(丸く、半透明できずが見えないもの)をシール(seal)形成のために選択した。ピペットと細胞の間でシールを形成し、吸引の短いパルスを使用して「押し込み」、細胞全体構成を確立した。電圧プロトコルを開始する前、膜電位は-100mVで保持した。1.5~5MΩの連続抵抗を有する細胞のみを分析のために保持した。電圧プロトコルは以下の通りであった:細胞を-100mVで12ms保持し、-105mVまで12ms間、過分極化工程を続け、漏れをモニタリングした。次いで細胞を40ms間、-100mVに段階的に戻した(step back)。次いで細胞を10ms間、-20mVまで脱分極し、次いで26の間、-100mVに戻した。
【0202】
試験化合物による内部遮断
一旦記録を開始させると、電圧プロトコルを、30秒間隔で5分間行い、安定なベースラインを得た。これに、1分の休息だけ離した同じ電圧プロトコルの30秒間の5Hz刺激を4回続け、次いで最後の手順後に0.33Hz刺激を続けた。Heka EPC10 (HEKA Electronics, Lambrecht, Germany)を有するPatchMasterソフトウェアを使用して電流を記録した。-20mVで400pA~4nAの間の内部への電流振幅を有する細胞のみを許容した。また、それらの電流振幅の10%より高い漏れ電流を有する細胞は廃棄した。
【0203】
データ分析:内部遮断
Patchmasterソフトウェア(HEKA Electronics, Lambrecht, Germany)を使用してデータをプロットして、-20mVまでの電圧ステップの間の最小電流(ピーク内方電流)を時間の関数としてプロットすることにより分析した。実験の経過にわたる減少の程度を決定するために、5Hz刺激の前に平均ピーク内方電流振幅(2~3点)をベースラインと指定した(Iヘ゛ースライン)。最後の5Hz手順の最後の2秒の間に平均ピーク内方電流を測定した(I試験)。残りの対照画分(fraction)電流は、I試験をIヘ゛ースラインで割って計算した。それぞれの記録日に、対照内部溶液を用いて3細胞を試験して、残りの電流の平均画分を計算した(Ctrl画分電流)。
【0204】
内部に適用された試験化合物により生じた%遮断を決定するために、以下のことを行った。5Hz刺激の前の平均ピーク内方電流振幅(2~3点)は0%遮断(I0%遮断)と指定した。対照条件下での電流変化を補正するために、I0%遮断に、残りの平均Ctrl画分電流をかけて、補正された0%遮断電流を得た。最後の5Hz手順の最後の2秒の間の平均ピーク内方電流は、非遮断電流と指定した(I非遮断)。%遮断は、以下の等式:(1-I非遮断/(I0%遮断*残りのCtrl画分電流)x100)を使用して計算した。
【0205】
NaV 1.7の細胞内阻害について、化合物1A'~6A'(実施例1)を試験した。活性範囲は%阻害である:「+++」 >70%、「++」 (70~30%)または「+」 (<30%)。結果を以下に示す。
【表13】
【0206】
試験化合物による外部遮断
一旦記録を開始すると、電圧プロトコルを30秒間隔で5分間行い、安定なベースラインを得た。これに、実験の終了まで、5Hz刺激の同じ電圧プロトコルランを続ける。5Hz刺激手順の間に試験化合物を添加して、化合物の添加前に細胞が安定な電流減少速度を示すまで、待機を確実にする。試験化合物は、標準リンガー溶液での洗浄の前に5分間添加する。Heka EPC10 (HEKA Electronics, Lambrecht, Germany)を有するPatchMasterソフトウェアを使用して電流を記録した。-20mVで400pA~4nAの間の内方電流振幅を有する細胞のみを許容した。また、それらの電流振幅の10%より大きい漏れ電流を有する細胞は廃棄した。
【0207】
データ分析:外部遮断
Patchmasterソフトウェア(HEKA Electronics, Lambrecht, Germany)を使用してデータをプロットして、-20mVへの電圧ステップの間の最小電流(ピーク内方電流)を時間の関数としてプロットして分析した。外部に適用された試験化合物により生じた%遮断を決定するために、以下のものを行った。5Hz刺激手順の間に安定電流減少速度が確立された後、速度減少は、ピーク電流振幅の変化を時間で割って計算した。化合物の添加前の平均ピーク内方電流振幅(2~3秒)を使用して、0%遮断(I0%遮断)を決定した。減少を補正するために、I0%遮断から(速度減少*5min)を引いて、補正された0%遮断電流を得る。洗浄前の5分の化合物適用時間の最後の2~3秒の間の平均ピーク内方電流は、非遮断電流(I非遮断)である。次いで、以下の等式:画分電流遮断=1-I非遮断/(I0%遮断-速度減少*5min)を使用して%遮断を計算した。
【0208】
NaV 1.7の細胞外阻害について、実施例1の代表的な化合物を試験した。活性範囲は%阻害である:「+++」 >70%、「++」 (70~40%)または「+」 (<40%)。結果を以下に示す。
【表14】
【0209】
実施例3-抗そう痒活性
本発明の代表的な化合物の抗そう痒活性は、同様の公開された手順(Ramachandran et al, JPET 2020)に従って、C57BL/6マウスで決定した。簡潔に、2.5%イソフルランを使用してマウスを麻酔し、試験化合物の溶液(10mg/mL、100μL)を、溶媒ピペットを使用して首筋の毛をそった領域に局所的に適用した(T=0)。完全な吸収が起こるまで、試験物は、皮膚にメッセージを送った(message)。かゆみを誘導するために、クロロキン(50μL 0.9%食塩水中100μg)を示される時間に皮内に注射した。赤外線カメラを使用して、40分にわたりひっかき行動をモニタリングした。
【0210】
実施例1の代表的な化合物は、局所投与後8時間まで、クロロキン誘導かゆみを有意に低減する。
図1A、1Bおよび1C参照。
【0211】
本明細書に参照される特許および科学文献は、当業者に利用可能な知識を確立する。本明細書で引用される全ての米国特許および公開または非公開米国特許出願は、参照により援用される。本明細書で引用される全ての公開外国特許および特許出願は、参照により本明細書に援用される。本明細書で引用される全ての他の公開された参考文献、文書、原稿および科学文献は、参照により本明細書に援用される。
【0212】
本発明は、その好ましい態様に関して特に示され、記載されているが、形態および詳細における種々の変化は、添付の特許請求の範囲に包含される発明の範囲を逸脱することなく、本発明においてなされ得ることが当業者に理解される。本明細書に記載される態様のいずれも相互に排他的ではなく、添付の特許請求の範囲に包含される発明の範囲を逸脱することなく、種々の方法で組み合され得ないことも理解される。
本発明の態様として以下のものが挙げられる。
項1
式(I):
【化A-1】
(式中、
Y
-
は薬学的に許容され得るアニオンであり;
R
A
、R
B
およびR
C
はそれぞれ独立して、H、D、ハロゲン、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、OR
I
、CN、CF
3
、NR
J
R
K
、NR
L
C(O)R
M
、S(O)R
N
、S(O)
2
R
N
、SO
2
R
O
R
P
、SO
2
NR
Q
R
R
、SO
3
R
S
、CO
2
R
T
;C(O)R
U
およびC(O)NR
V
R
W
から選択され;
R
I
、R
J
、R
K
、R
L
、R
M
、R
N
、R
O
、R
P
、R
Q
、R
R
、R
S
、R
T
、R
U
、R
V
およびR
W
のそれぞれは独立て、H、D、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキルから選択され;R
J
およびR
K
またはR
V
およびR
W
またはR
Q
およびR
R
はまた、それらが結合する窒素と一緒になって、置換または非置換の5、6、7または8員の環を形成し得るか;あるいは
R
A
、R
B
および/またはR
C
は、それらが結合するフェニル環と一緒になって、縮合二環式または三環式の環系、例えばナフチル、ジヒドロインデニル、テトラヒドロナフチル、キノリニル、インドリルを形成し得;
R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
およびR
6
は独立して、水素、C
1
-C
4
アルキル、シクロアルキル、C
1
-C
4
ヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリール、好ましくは水素、メチルまたはエチルから選択されるか;
あるいはR
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
および/またはR
6
は、それらが結合する炭素(1つまたは複数)と一緒になって、置換もしくは非置換シクロアルキル(例えばC
3
-C
6
シクロアルキル)または置換もしくは非置換複素環式(例えば3-~15-員の複素環式環)を形成し;
nは0、1、2、3、4および5であり;
R
F
およびR
G
は、N
+
と一緒になって、N
+
に加えて0、1またはそれ以上のヘテロ原子、好ましくは5、6、7、8または9個の環員を有する任意に置換される複素環式環を形成し;
R
H
は、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換アルキニル(例えば-CH
2
-シクロアルキル、-C
2
H
4
-シクロアルキル、置換もしくは非置換-CH
2
-C
5-
C
10
アリール、置換もしくは非置換-C
2
H
4
-C
5-
C
10
アリール、置換もしくは非置換-CH
2
-C
5-
C
10
ヘテロアリール、置換もしくは非置換-C
2
H
4
-C
5-
C
10
ヘテロアリール、-CH
2
OC(O)R
T
、-CH
2
CO
2
R
T
、-CH
2
C(O)NR
V
R
W
、-C
2
H
4
OCOR
T
、-C
2
H
4
OR
I
)から選択されるか、または
R
F
、R
G
およびR
H
は、N
+
と一緒になってヘテロアリール環または架橋複素環式環を形成する)
により表される化合物。
項2
R
A
が、H、メチル、ハロ(例えばF、ClまたはBr)、CF
3
、CN、CO
2
R
T
またはOR
I
、より好ましくはメチル、F、CF
3
またはCN、最も好ましくはメチルから選択される、項1記載の化合物。
項3
R
B
が、Hおよびメチル、好ましくはメチルから選択される、項1または2記載の化合物。
項4
R
C
が、H、メチル、ハロ(例えばF、ClまたはBr)、CF
3
、CN、CO
2
R
T
またはOR
I
、より好ましくはHまたはOR
I
、最も好ましくはHから選択される、前記項いずれか記載の化合物。
項5
各R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
および/またはR
6
が水素である、前記項いずれか記載の化合物。
項6
R
1
がメチルまたはエチルであり、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
およびR
6
が水素である、項1~4いずれか記載の化合物。
項7
R
3
がメチルまたはエチルであり、R
1
、R
2
、R
4
、R
5
およびR
6
が水素である、項1~4いずれか記載の化合物。
項8
nが0である、前記項いずれか記載の化合物。
項9
nが1である、前記項いずれか記載の化合物。
項10
nが3である、前記項いずれか記載の化合物。
項11
R
F
およびR
G
が、N
+
と一緒になって:
【化A-2】
および最も好ましくは
【化A-3】
(式中R
7
は水素または置換もしくは非置換アルキルである)
から選択される置換または非置換の環から選択される環を形成する、前記項いずれか記載の化合物。
項12
環が非置換である、項11記載の化合物。
項13
R
H
がベンジルまたは置換ベンジル、好ましくはベンジルである、前記項いずれか記載の化合物。
項14
R
F
、R
G
およびR
H
が、N
+
と一緒になって、ピリジニルまたは
【化A-4】
を形成する、項1~10いずれか記載の化合物。
項15
化合物が:
【化A-5】
ではないことを条件とする、前記項いずれか記載の化合物。
項16
式(I):
【化A-6】
(式中:
Y
-
は薬学的に許容され得るアニオンであり;
R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
およびR
6
は独立して、水素、C
1
-C
4
アルキル、C
1
-C
4
ヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリール、好ましくは水素、メチルまたはエチルから選択され;
nは0、1、2、3、4および5であり;
qは0、1、2、3、4または5である)
により表される化合物。
項17
qが3である、項16記載の化合物。
項18
R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
およびR
6
が水素である、項16または17記載の化合物。
項19
qが2である、項16記載の化合物。
項20
R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
およびR
6
が水素である、項19記載の化合物。
項21
qが1である、項16記載の化合物。
項22
R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
およびR
6
が水素である、項21記載の化合物。
項23
qが0である、項16記載の化合物。
項24
R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
およびR
6
が水素である、項23記載の化合物。
項25
R
1
がメチルであり、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
およびR
6
が水素である、項16記載の化合物。
項26
R
3
がメチルであり、R
1
、R
2
、R
4
、R
5
およびR
6
が水素である、項16記載の化合物。
項27
nが0である、項16~26いずれか記載の化合物。
項28
nが1である、項16~26いずれか記載の化合物。
項29
nが2である、項16~26いずれか記載の化合物。
項30
nが3である、項16~26いずれか記載の化合物。
項31
nが4である、項16~26いずれか記載の化合物。
項32
nが5である、項16~26いずれか記載の化合物。
項33
Y-が臭化物または塩化物である、前記項いずれか記載の化合物。
項34
前記項いずれか記載の化合物および薬学的に許容され得る賦形剤を含む医薬組成物。
項35
前記組成物が局所または皮膚投与のために製剤化される、項34記載の組成物。
項36
患者に、項1~33いずれか記載の化合物の有効量を投与する工程を含む、患者においてかゆみ、疼痛、咳または神経性炎症性障害を治療するための方法。
項37
前記かゆみが、そう痒、腕橈骨筋そう痒、慢性特発性そう痒、生殖器/肛門そう痒、背部感覚異常、頭皮そう痒、アレルギー性皮膚炎、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、手の湿疹、ツタウルシ、感染、寄生生物、昆虫の噛み傷、妊娠、代謝障害、肝臓または腎臓の不全、薬物反応、アレルギー反応、湿疹、生殖器および肛門のかゆみ、痔のかゆみおよび癌のためのかゆみからなる群より選択される、項36記載の方法。