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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】移動機構用停止装置およびロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20250708BHJP
【FI】
B25J19/00 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023568890
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2021047627
(87)【国際公開番号】W WO2023119501
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2024-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 元貴
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-068886(JP,A)
【文献】特開2013-031925(JP,A)
【文献】特開2020-179443(JP,A)
【文献】特開2020-192616(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0072918(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/10-19/04
F16H 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対移動する2つの部材のそれぞれに設けられたストッパを備え、該ストッパどうしの衝突によって前記部材の相対移動を制限する移動機構用停止装置であって、
2つの前記部材が、相対移動方向に直交する方向に離れて配置され、
少なくとも一方の前記ストッパが、一方の前記部材に着脱可能に固定されるベースと、該ベースに一体的に設けられ、衝突の衝撃によって塑性変形させられる変形部と、該変形部に対して前記相対移動方向に間隔をあけて前記ベースに固定され、塑性変形した前記変形部に接触して塑性変形を制限する変形制限部とを備え
前記ベースが、前記部材に着脱可能に固定される第1ベースと、該第1ベースに着脱可能に固定され前記変形部が一体的に設けられた第2ベースとを備える移動機構用停止装置。
【請求項2】
他方の前記ストッパが、他方の前記部材に一体的に設けられ衝突の衝撃によって塑性変形しない請求項1に記載の移動機構用停止装置。
【請求項3】
前記第1ベースと前記第2ベースとの間に、前記第1ベースに対する前記第2ベースの前記相対移動方向の移動を規制する規制手段が設けられている請求項に記載の移動機構用停止装置。
【請求項4】
前記変形制限部が、前記変形部よりも剛性の高い材質からなる請求項1から請求項のいずれかに記載の移動機構用停止装置。
【請求項5】
前記変形制限部が、前記ベースに形成されたネジ孔に締結された第1ボルトの頭部である請求項に記載の移動機構用停止装置。
【請求項6】
前記変形制限部が、前記第2ベースに形成されたネジ孔のみに締結された第1ボルトの頭部である請求項に記載の移動機構用停止装置。
【請求項7】
前記第1ベースを前記部材に着脱可能に固定する第2ボルトと、前記第2ベースを前記第1ベースまたは前記部材に着脱可能に固定する第3ボルトとを備え、
少なくとも1つの前記第2ボルトが、前記第1ボルトの軸方向の延長上に配置されている請求項に記載の移動機構用停止装置。
【請求項8】
前記変形部が、径方向に延びる平板状に形成され、前記第1ボルトが、前記変形部の板厚方向の両側に配置されている請求項に記載の移動機構用停止装置。
【請求項9】
前記第1ボルトが、他方の前記部材の外周面に径方向に最も近接する位置に配置されている請求項に記載の移動機構用停止装置。
【請求項10】
相対移動する2つの部材のそれぞれに設けられたストッパを備え、該ストッパどうしの衝突によって前記部材の相対移動を制限する移動機構用停止装置であって、
2つの前記部材が、相対移動方向に直交する方向に離れて配置され、
少なくとも一方の前記ストッパが、一方の前記部材に着脱可能に固定されるベースと、該ベースに一体的に設けられ、衝突の衝撃によって塑性変形させられる変形部と、該変形部に対して前記相対移動方向に間隔をあけて前記ベースに固定され、塑性変形した前記変形部に接触して塑性変形を制限する変形制限部とを備え、
2つの前記部材が、所定の軸線回りに相対回転可能に支持され、
前記ベースが、他方の前記部材の外周面よりも径方向外方に前記軸線に直交して延びる座面に固定され、
前記変形部が、前記外周面の径方向外方に配置され、前記ベースから前記軸線に平行に片持ち梁状に延びている移動機構用停止装置。
【請求項11】
複数の関節を備え、
少なくとも1つの前記関節を構成する2つの前記部材に請求項1から請求項1のいずれかに記載の移動機構用停止装置が設けられているロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動機構用停止装置およびロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の軸線回りに相対回転する2つの部材の内、一方の部材に設けられた第1ストッパと、他方の部材に設けられた第2ストッパとを備えるロボットが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
2つの部材が相対回転させられたときに、第1ストッパと第2ストッパとが突き当たることにより、2つの部材の相対的な移動範囲を制限している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-098463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
相対移動する2つの部材の移動範囲を規制するストッパは、2つの部材が移動方向に直交する方向に離れるほど、衝突によって各部材にかかる荷重が増大する。このため、発生した衝撃によっても塑性変形しないストッパを2つの部材にそれぞれ一体的に設ける場合には、強度確保のために機構が大型化する。一方、衝撃によって塑性変形するストッパは、塑性変形しないストッパよりも小型化することができるが、塑性変形が大き過ぎると、2つの要素の相対的な惰走が大きくなり移動範囲を十分に規制できない。
したがって、機構の大型化を防止しつつ、効果的に移動範囲を規制することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、相対移動する2つの部材のそれぞれに設けられたストッパを備え、該ストッパどうしの衝突によって前記部材の相対移動を制限する移動機構用停止装置であって、2つの前記部材が、相対移動方向に直交する方向に離れて配置され、少なくとも一方の前記ストッパが、一方の前記部材に着脱可能に固定されるベースと、該ベースに一体的に設けられ、衝突の衝撃によって塑性変形させられる変形部と、該変形部に対して前記相対移動方向に間隔をあけて前記ベースに固定され、塑性変形した前記変形部に接触して塑性変形を制限する変形制限部とを備える移動機構用停止装置である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の一実施形態に係るロボットを示す模式的な全体構成図である。
図2図1のロボットの第1アームと第2アームとの間の回転関節を示す正面図である。
図3】本開示の一実施形態に係る移動機構用停止装置の第1ストッパを示す斜視図である。
図4図3の移動機構用停止装置が装着された回転関節を第3軸線に沿う方向から見た模式図である。
図5図3の移動機構用停止装置の第1ストッパが、第2ストッパの衝突により塑性変形した状態を示す正面図である。
図6図3の第1ストッパの構成を説明する分解斜視図である。
図7図6の第1ストッパの第1ベースを座面に固定した状態を示す分解斜視図である。
図8図3の第1ストッパの図4におけるA-A縦断面である。
図9図5の第1ストッパの突起の塑性変形をより詳細に示す、第3軸線に沿う方向から見た図である。
図10図3の第1ストッパと、第1ストッパを取り付ける座面との関係を示す、第3軸線に沿う方向から見た図である。
図11図3の第1ストッパの変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の一実施形態に係る移動機構用停止装置1およびロボット100について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るロボット100は、図1に示す例では、6軸多関節型のロボットである。ロボット100は、床面に固定されるベース110と、鉛直な第1軸線J1回りにベース110に対して回転可能な旋回胴120とを備えている。また、ロボット100は、水平な第2軸線J2回りに旋回胴120に対して回転可能な第1アーム130と、第2軸線J2と平行な第3軸線J3回りに第1アーム130に対して回転可能な第2アーム140と、第2アーム140の先端に取り付けられた3軸の手首ユニット150とを備えている。
【0008】
本実施形態に係る移動機構用停止装置1は、ロボット100の6つの回転関節(関節)の内の1以上に備えられている。ここでは、例えば、第1アーム(他方の部材)130に対して第2アーム(一方の部材)140を第3軸線(軸線)J3回りに回転駆動する回転関節に設けられている場合を例示して説明する。
【0009】
移動機構用停止装置1は、図2に示されるように、第1ストッパ(一方のストッパ)2と第2ストッパ(他方のストッパ)3と、変形制限部材(変形制限部)4とを備えている。第1ストッパ2は、第2アーム140に着脱可能に取り付けられている。第2ストッパ3は、第1アーム130に設けられている。
【0010】
第1アーム130と第2アーム140との間には、図示しないモータのシャフトの回転を減速して、第1アーム130と第2アーム140とを相対回転させる減速機160が配置されている。減速機160の第3軸線J3に沿う方向の厚さによって、第1アーム130と第2アーム140とが、相対回転方向(相対移動方向)に直交する方向、すなわち、第3軸線J3に沿う方向に離れて配置されている。
【0011】
第1ストッパ2は、図2に示されるように、第2アーム140の減速機取付面141と面一に、または平行に形成された座面142に固定されるベース20と、ベース20に設けられた平板状の突起(変形部)21とを備えている。
ベース20は、図3に示されるように、座面142に着脱可能に固定される第1ベース22と、第1ベース22に着脱可能に固定される第2ベース23とを備えている。
【0012】
座面142は、図4に示されるように、第2アーム140を構成する鋳物の一部を第3軸線J3を中心とする径方向外方に突出させた部分に設けられている。第1ベース22は、図3に示されるように、細長い長方形の帯板状に形成され、長さ方向を第3軸線J3回りの周方向に一致させ、幅方向を径方向に一致させ、板厚方向を第3軸線J3方向に一致させて、座面142に固定される。第2ベース23は、第1ベース22と長さ方向および幅方向に同等の寸法を有し、第1ベース22と板厚方向に重ね合わせられた状態で第1ベース22に固定される。
【0013】
突起21および第2ベースは23、比較的延性の高い鋼材、例えば、一般構造用圧延鋼材を切削加工することにより、一体的に構成されている。突起21は、第2ベース23の長さ方向の中央から第2ベース23の板厚方向に片持ち梁状に突出している。
【0014】
第2アーム140の座面142に固定した第1ベース22に、第2ベース23を固定することにより、図2に示されるように、突起21が、第1ベース22および第2ベース23の板厚寸法を加算した寸法だけ、座面142から第3軸線J3に沿う方向に第1アーム130に近接した位置に配置される。座面142が第2アーム140の径方向外方に突出しているので、図4に示されるように、突起21も減速機160の側面から径方向外方に離れた位置に配置される。このとき、突起21は、第3軸線J3に沿う方向および第3軸線J3を中心とする径方向に延びて配置される。
【0015】
第2ストッパ3は、図2に示されるように、第1アーム130を構成する鋳物の一部を減速機160側の端面131よりも第3軸線J3に沿う方向に、第2アーム140側に突出させることにより構成されている。第2ストッパ3は、図4に示されるように、第1アーム130を構成する鋳物の一部を径方向外方にも突出させており、第3軸線J3を中心とする径方向に延びる2つの突き当て面31を形成している。図に示す例では、第2ストッパ3は、第3軸線J3回りの周方向に間隔をあけて2か所に設けられており、各第2ストッパ3に1つの突き当て面31が設けられている。
【0016】
各突き当て面31は、第2アーム140に固定された第1ストッパ2の突起21と重なる第3軸線J3を中心とした径方向位置および第3軸線J3方向位置に配置されている。これにより、第1アーム130と第2アーム140とが第3軸線J3回りに相対回転すると、第1アーム130に対する第2アーム140の相対的な動作範囲の両端を超えた位置において突起21と第2ストッパ3の突き当て面31とが衝突する。
【0017】
第2ストッパ3は、第1アーム130を構成する鋳物の一部により構成されているので、第1ストッパ2と衝突しても塑性変形しない十分な強度を備えている。
一方、第1ストッパ2は、第2ストッパ3の突き当て面31に衝突する突起21が、衝突によって、図5に示されるように、第3軸線J3回りの周方向の第2ストッパ3とは反対側に倒れるように塑性変形させられる。第2ベース23および突起21は、比較的延性の高い一般構造用圧延鋼材により構成されているので、突起21は、第2ベース23から破断することなく、根元から倒れる形態で塑性変形させられる。
【0018】
変形制限部材4は、図3に示されるように、突起21の板厚方向の両側に、突起21との間に隙間を空けて、第2ベース23のネジ孔23aに締結されたボルト(第1ボルト)41の頭部41aにより構成されている。第1ボルト41は、第2ベース23および突起21を構成している一般構造用圧延鋼材よりも剛性の高い材質、例えば、クロムモリブデン鋼鋼材により構成されている。
【0019】
本実施形態においては、変形制限部材4を構成する第1ボルト41の頭部41aは、突起21の第3軸線J3回りの周方向の両面に近接しかつ径方向内方、すなわち、第1アーム130の端面(外周面)131に径方向に最も近接する位置に配置されている。
【0020】
第1ストッパ2の第1ベース22は、図6および図7に示されるように、2本のボルト(第2ボルト)42を第2アーム140の座面142のネジ孔142aに締結することによって、座面142に固定される。第1ベース22には、2本の第2ボルト42の頭部42aをそれぞれ完全に収容可能な2つの座ぐり25が設けられている。
【0021】
第1ベース22を座面142に固定した後、ネジ孔23aに2本の第1ボルト41を締結した第2ベース23を、第1ベース22に板厚方向に重ね合わせ、第2ベース23の貫通孔23bを貫通させて第1ベース22のネジ孔22aに2本のボルト(第3ボルト)43を締結することによって、第1ベース22に第2ベース23を固定する。
【0022】
第2ボルト42は、図8に示されるように、第1ボルト41の軸方向の延長上に配置される。ここで、軸方向の延長上とは、第1ボルト41の軸線と第2ボルト42の軸線とが完全に一致している場合の他、若干オフセットしている場合も含む。
【0023】
第1ボルト41の第2ベース23への取り付けは、第2ベース23を第1ベース22に取り付ける前でも取り付けた後でもよい。すなわち、第1ボルト41は、第2ベース23の第1ベース22への取り付けには寄与していない。
【0024】
さらに、図8に示されるように、板厚方向に重ねられた第1ベース22および第2ベース23に設けられた貫通孔22b,23cを通して2本のボルト(第3ボルト)44を座面142のネジ孔142bに締結することにより、第1ベース22および第2ベース23を共締めにより座面142に固定する。これにより、第2アーム140の座面142への第1ストッパ2の取り付けが完了する。
【0025】
第1ベース22は、2本の第2ボルト42と2本の第3ボルト44の合計4本によって、第2アーム140の座面142に固定される。また、第2ベース23は、4本の第3ボルト43,44によって第1ベース22に固定される。したがって、第1ベース22と座面142との間および第1ベース22と第2ベース23との間を同等の面圧によって密着させ、衝突によっても大きくずれない程度の十分な摩擦力を発生させることができる。
【0026】
このように構成された本実施形態に係る移動機構用停止装置1およびロボット100の作用につていて、以下に説明する。
本実施形態に係る移動機構用停止装置1によれば、第1ストッパ2と第2ストッパ3とが衝突すると、衝突時に突起に発生する塑性変形によって衝突のエネルギが消費され、第1アーム130と第2アーム140との相対回転が停止させられる。
【0027】
すなわち、第1ストッパ2として、突起21を塑性変形させるものを採用したので、塑性変形させないものと比較すると、コンパクトに構成することができるという利点がある。また、衝突により突起21が塑性変形すると、突起21が、塑性変形方向、すなわち、第3軸線J3回りの周方向に間隔をあけて配置されている第1ボルト41の頭部41aに近接し、さらに変形すると間隔が消滅して突起21が第1ボルト41の頭部41aに接触する。
【0028】
これにより、第1ボルト41によって突起21のそれ以上の塑性変形を制限することができる。突起21の塑性変形を制限する第1ボルト41は、突起21の材質よりも剛性の高い材質から構成されているので、突起21の塑性変形を確実に受け止めて制限し、第1アーム130と第2アーム140との間の相対回転の惰走をより確実に停止させることができる。
【0029】
この場合において、衝突後に突起21が塑性変形を開始する初期には、第1ボルト41の頭部41aは、突起21の側面に対して第3軸線J3回りの周方向に間隔をあけて配置されているので、突起21の塑性変形が第1ボルト41の頭部41aによって阻害されない。したがって、突起21は、第2ベース23に接続する付け根の部分から湾曲するように塑性変形することができ、衝撃のエネルギを十分に消費することができる。
【0030】
突起21の付け根にはR面が設けられており、衝突時の過度の応力集中による破断を防止することができる。そして、突起21の塑性変形によって、衝突のエネルギが十分に消費された後に、突起21を剛性の高い第1ボルト41の頭部41aに押し当てることにより、それ以上の塑性変形を効果的に制限することができる。
【0031】
仮に、第1ボルト41の頭部41aを突起21の側面に最初から接触させていた場合、あるいは、第1ボルト41の頭部41aに代えて、突起21と一体的な段部を設けた場合には、突起21の変形の付け根が、第1ボルト41の頭部41aあるいは段部の端面となる。これらの場合には、突起21の変形の付け根が第3軸線J3に沿う方向に第2ストッパ3に近づき過ぎるのでせん断破断が発生する虞がある。これに対して、本実施形態のように、第1ボルト41の頭部41aと突起21の側面との間に隙間を設けておくことにより、突起21の変形の付け根を第2ベース23の表面まで離すことができ、突起21をせん断破断させずに塑性変形させることができる。
【0032】
また、本実施形態においては、塑性変形する第1ストッパ2を第2アーム140に着脱可能に取り付けたので、第2ストッパ3については、塑性変形しないものとすることができ、第1アーム130を構成する鋳物と一体的に構成することができる。すなわち、第2ストッパ3は、第1アーム130を構成する鋳物の一部を、第3軸線J3を中心とする径方向外方に突出させるだけの簡易な形状に構成することができる。
【0033】
また、第2ストッパ3を径方向外方に突出する構造としたので、第2ストッパ3が衝突した第1ストッパ2の突起21は、典型的には、図9に示されるように、第3軸線J3を中心とした径方向内側が径方向外側よりも大きく捩れるように塑性変形させられる。
これに対して、第1ボルト41の頭部41aを、第3軸線J3を中心とした径方向内側に配置しておくことにより、突起21の大きく塑性変形する部分に第1ボルト41の頭部41aを接触させて塑性変形を制限することができる。
【0034】
また、突起21が塑性変形した第1ストッパ2は、ベース20を第2アーム140から取り外して交換することができる。この場合に、塑性変形した突起21が接触している第1ボルト41は突起21によって取り外し困難である。しかし、第1ボルト41は第2ベース23の第1ベース22への取り付けに関与していないので、4本の第3ボルト43,44の取り外しにより、第2ベース23を第1ベース22から容易に取り外すことができる。
【0035】
また、第2ベース23を第1ベース22から取り外した後には、第2ボルト42を取り外して、第1ベース22を座面142から容易に取り外すことができる。第1ベース22は第2ベース23と比較して損傷が少ないと考えられ、再利用することができる。
【0036】
また、本実施形態においては、衝突により塑性変形するストッパを第1ストッパ2のみとした。これにより、衝突後には第1ストッパ2のみを交換すれば足り、第2ストッパ3は第1アーム130と一体的に構成された簡易な構成によって大型化およびコストを低減することができる。
【0037】
また、本実施形態においては、ベース20を第1ベース22と第2ベース23とに分離してボルト43,44により相互に締結した。これにより、衝突のエネルギが、突起21を塑性変形させることにより消費されるとともに、第1ベース22と第2ベース23との接触面間の摩擦によっても消費される。その結果、第1アーム130と第2アーム140との間の相対回転をより効果的に停止させることができる。
【0038】
また、第1ストッパ2を第2アーム140に着脱可能に固定する場合に、固定するためのボルトの本数には衝突の衝撃に耐え得る必要数があるが、固定に寄与しない第1ボルト41を配置すると、固定用のボルトの設置スペースが奪われる。本実施形態においては、ベース20を第1ベース22と第2ベース23とに分割し、第1ボルト41の軸方向の延長上に第1ベース22を座面142に固定する第2ボルト42を配置した。これにより、第1ストッパ2の大型化および座面142の大型化を防止しながら、第1ストッパ2を第2アーム140に着脱可能に固定するための必要数、例えば、2本の第2アームおよび2本の第3ボルト44の設置スペースを確保することができる。
【0039】
また、本実施形態においては、2本の第3ボルト43を第3軸線J3から径方向に最も離れた位置において第1ベース22のネジ孔22aに締結した。これにより、図10に示されるように、これらの第3ボルト43を締結するネジ孔22aを座面142に設ける必要がなく、その分、座面142の径方向の突出量を低減することができる。すなわち、第2アーム140を構成する鋳物の大型化を防止して、コストの削減を図ることができる。なお、座面142の径方向または周方向の拡大が許容される場合には、第3ボルト43を締結するネジ孔22aを座面142に設けて、第2ボルト42および2本の第3ボルト43,44によって第1ベース22および第2ベース23を共締めすることにしてもよい。
【0040】
また、本実施形態においては、突起21の板厚方向の両側において第1ボルト41を第2ベース23に固定した。これにより、片持ち梁状の突起21の板厚方向のいずれの面に第2ストッパ3が衝突しても突起21の塑性変形を第1ボルト41によって制限することができる。すなわち、第1ストッパ2を第1アーム130と第2アーム140との相対回転範囲の両端のストッパとして利用することができる。
【0041】
なお、本実施形態においては、第2アーム140に塑性変形する第1ストッパ2を設け、第1アーム130に塑性変形しない第2ストッパ3を設けたが、逆でもよい。また、第1ストッパ2および第2ストッパ3を両方とも塑性変形するものにしてもよい。
【0042】
また、本実施形態においては、第1ベース22と第2ベース23との接触面を平面により構成したが、相互に嵌合する凹凸あるいはキーとキー溝のように、第3軸線J3回りの相対移動、すなわち第1ベース22に対する第2ベース23の相対移動方向の移動を規制する規制手段(図示略)を設けてもよい。規制手段によって、第1ベース22と第2ベース23との接触面間の摩擦を増大させて、衝突のエネルギ消費を増大させるとともに、衝突時における第1ベース22と第2ベース23との間のずれを低減することができる。
【0043】
また、本実施形態においては、第1ストッパ2のベース20を第1ベース22と第2ベース23とに分割してボルト43,44により締結したが、これに代えて、図11に示されるように、ベース20および突起21を一体に構成してもよい。この場合には、必要数のボルト45,46を確保するために、ベース20および座面142を第3軸線J3を中心とした径方向または周方向に拡大する必要があるが、塑性変形する突起21を剛性の高いボルト45の頭部(変形制限部)45aによって制限する点で同様の効果を奏する。
【0044】
また、本実施形態においては、ロボット100の回転関節の停止装置を例示したが、これに代えて、直動機構のような移動機構において相対的に直線移動させられる2つの部材間の停止装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 移動機構用停止装置
2 第1ストッパ(一方のストッパ)
3 第2ストッパ(他方のストッパ)
4 変形制限部材(変形制限部)
20 ベース
21 突起(変形部)
22 第1ベース
23 第2ベース
23a ネジ孔
41 ボルト(第1ボルト)
41a 頭部(変形制限部)
42 ボルト(第2ボルト)
43,44 ボルト(第3ボルト)
45a 頭部(変形制限部)
100 ロボット
130 第1アーム(他方の部材)
131 端面(外周面)
140 第2アーム(一方の部材)
142 座面
J3 第3軸線(軸線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11