IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジテレビジョンの特許一覧

<>
  • 特許-測定装置、測定方法、およびプログラム 図1
  • 特許-測定装置、測定方法、およびプログラム 図2
  • 特許-測定装置、測定方法、およびプログラム 図3
  • 特許-測定装置、測定方法、およびプログラム 図4
  • 特許-測定装置、測定方法、およびプログラム 図5
  • 特許-測定装置、測定方法、およびプログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】測定装置、測定方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 7/00 20060101AFI20250708BHJP
   H04N 21/242 20110101ALI20250708BHJP
   H04N 21/233 20110101ALI20250708BHJP
【FI】
H04L7/00 700
H04N21/242
H04N21/233
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024030229
(22)【出願日】2024-02-29
【審査請求日】2024-02-29
(73)【特許権者】
【識別番号】508330685
【氏名又は名称】株式会社フジテレビジョン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】島川 徹平
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-093615(JP,A)
【文献】特開2012-205075(JP,A)
【文献】特開2005-217660(JP,A)
【文献】特開2017-073587(JP,A)
【文献】特開2005-136803(JP,A)
【文献】特開平08-186575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 7/00-7/10
H04N 21/242
H04N 21/233
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1伝送経路を介して伝送されるコンテンツの第1音声データと、第2伝送経路を介して伝送される前記コンテンツの第2音声データとを入力する入力部と、
前記第1音声データの所定のタイミングから一定時間に入力された所定区間において最大音声レベルを検出するとともに、前記第2音声データの前記所定のタイミングから一定時間に入力された所定区間において最大音声レベルを検出する検出部と、
前記第1音声データの前記最大音声レベルと、前記第2音声データの前記最大音声レベルとの差が所定の範囲内であって、前記第1音声データの前記最大音声レベルの第1時点の前の時点の音声レベルと、前記第2音声データの前記最大音声レベルの第2時点の前の時点の音声レベルとの差が前記所定の範囲内であって、前記第1時点の後の時点の音声レベルと、前記第2時点の後の時点の音声レベルとの差が前記所定の範囲内の場合、前記第1時点と前記第2時点との時間差を、前記第1伝送経路および前記第2伝送経路における前記コンテンツの伝送遅延差として測定する測定部とを備え
前記第1時点とその前の時点との時間差と、前記第2時点とその前の時点との時間差とが同じであり、前記第1時点とその後の時点との時間差と、前記第2時点とその後の時点との時間差とが同じである
測定装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記第1音声データの複数のタイミングから一定時間に入力された複数の所定区間において、所定区間毎に最大音声レベルを検出するとともに、前記第2音声データの前記複数のタイミングから一定時間に入力された複数の所定区間において、所定区間毎に最大音声レベルを検出し、
前記測定部は、複数の所定区間において測定した各伝送遅延差が、所定の回数連続して同じ場合、前記伝送遅延差を出力する
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記測定部は、
前記第1音声データの前記最大音声レベルと、前記第2音声データの前記最大音声レベルとの差が所定の範囲内であって、前記第1音声データの前記最大音声レベルの前記第1時点の前の時点の音声レベルと、前記第2音声データの前記最大音声レベルの前記第2時点の前の時点の音声レベルとの差が前記所定の範囲内であって、前記第1時点の後の時点の音声レベルと、前記第2時点の後の時点の音声レベルとの差が前記所定の範囲内の場合であって、さらに、
前記第1音声データの前記第1時点の前記最大音声レベルと、前記第1時点の前後の時点の各音声レベルとの差が閾値を超える場合であって、前記第2音声データの前記第2時点の前記最大音声レベルと、前記第2時点の前後の時点の各音声レベルとの差が閾値を超える場合、
前記第1時点と前記第2時点との時間差を、前記伝送遅延差として測定する
請求項1に記載の測定装置。
【請求項4】
測定装置が行う測定方法であって、
第1伝送経路を介して伝送されるコンテンツの第1音声データと、第2伝送経路を介して伝送される前記コンテンツの第2音声データとを入力し、
前記第1音声データの所定のタイミングから一定時間に入力された所定区間において最大音声レベルを検出するとともに、前記第2音声データの前記所定のタイミングから一定時間に入力された所定区間において最大音声レベルを検出し、
前記第1音声データの前記最大音声レベルと、前記第2音声データの前記最大音声レベルとの差が所定の範囲内であって、前記第1音声データの前記最大音声レベルの第1時点の前の時点の音声レベルと、前記第2音声データの前記最大音声レベルの第2時点の前の時点の音声レベルとの差が前記所定の範囲内であって、前記第1時点の後の時点の音声レベルと、前記第2時点の後の時点の音声レベルとの差が前記所定の範囲内の場合、前記第1時点と前記第2時点との時間差を、前記第1伝送経路および前記第2伝送経路における前記コンテンツの伝送遅延差として測定し、
前記第1時点とその前の時点との時間差と、前記第2時点とその前の時点との時間差とが同じであり、前記第1時点とその後の時点との時間差と、前記第2時点とその後の時点との時間差とが同じである
測定方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の測定装置として、コンピュータを機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定装置、測定方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツ番組などの中継では、障害に備え、殆どの場合に予備回線を構築する。その際、本線と予備の2つの回線を通るコンテンツは、伝送経路の違いにより時間的にずれて伝送先に届くことになる。このずれを解消するため、事前に中継先の現場カメラの前で人が手を叩くなどチェック用の動作を行い、伝送先の受け側で2つのコンテンツのずれを目で見ながら、ディレイ値(遅延差)を調整するなどの作業を行なっている。
【0003】
なお、特許文献1には、映像と音声とを分離して処理した場合に発生する映像と音声の遅延差を解消するための同期システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特願2023-139681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本回線と予備回線の2回線のずれを、現場で人が手を叩き、伝送先で手を叩いた動作のずれを人が視認する方法の場合、人の感覚でずれを測定することになる。この場合、現用回線と予備回線のずれを、厳密に測定することは難しく、また、人の感覚によるばらつきが発生してしまう。
【0006】
また、測定を行うには、現場で人が手を叩くという作業および機材の導入が必要となるとともに、現場での手を叩くという作業を契機とするため、現場の都合に合わせて受け側では測定を実施することになる。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本開示の目的は、異なる2つの回線で伝送されるコンテンツの伝送遅延差を、高い精度で測定するとともに、任意のタイミングで測定可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の一態様は、測定装置であって、第1伝送経路を介して伝送されるコンテンツの第1音声データと、第2伝送経路を介して伝送される前記コンテンツの第2音声データとを入力する入力部と、前記第1音声データの所定のタイミングから一定時間に入力された所定区間において最大音声レベルを検出するとともに、前記第2音声データの前記所定のタイミングから所定時間に入力された所定区間において最大音声レベルを検出する検出部と、前記第1音声データの前記最大音声レベルと、前記第2音声データの前記最大音声レベルとの差が所定の範囲内であって、前記第1音声データの前記最大音声レベルの第1時点の前の時点の音声レベルと、前記第2音声データの前記最大音声レベルの第2時点の前の時点の音声レベルとの差が前記所定の範囲内であって、前記第1時点の後の時点の音声レベルと、前記第2時点の後の時点の音声レベルとの差が前記所定の範囲内の場合、前記第1時点と前記第2時点との時間差を、前記第1伝送経路および前記第2伝送経路における前記コンテンツの伝送遅延差として測定する測定部とを備える。
【0009】
本開示の一態様は、測定装置が行う測定方法であって、第1伝送経路を介して伝送されるコンテンツの第1音声データと、第2伝送経路を介して伝送される前記コンテンツの第2音声データとを入力し、前記第1音声データの所定のタイミングから一定時間に入力された所定区間において最大音声レベルを検出するとともに、前記第2音声データの前記所定のタイミングから一定時間に入力された所定区間において最大音声レベルを検出し、前記第1音声データの前記最大音声レベルと、前記第2音声データの前記最大音声レベルとの差が所定の範囲内であって、前記第1音声データの前記最大音声レベルの第1時点の前の時点の音声レベルと、前記第2音声データの前記最大音声レベルの第2時点の前の時点の音声レベルとの差が前記所定の範囲内であって、前記第1時点の後の時点の音声レベルと、前記第2時点の後の時点の音声レベルとの差が前記所定の範囲内の場合、前記第1時点と前記第2時点との時間差を、前記第1伝送経路および前記第2伝送経路における前記コンテンツの伝送遅延差として測定する。
【0010】
本開示の一態様は、上記測定装置として、コンピュータを機能させるプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、異なる2つの回線で伝送されるコンテンツの伝送遅延差を、高い精度で測定するとともに、任意のタイミングで測定可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態の測定システムの全体構成図である。
図2図2は、本実施形態の測定装置の構成例を示すブロック図である。
図3図3は、本実施形態の測定装置の処理を示すフローチャートである。
図4図4は、第1音声データの音声波形と、第2音声データの音声波形との一例を示す図である。
図5図5は、測定装置が出力するメッセージの一例を示す図である。
図6図6は、ハードウェア構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付の図面を参照して、本開示の実施形態を説明する。なお、本明細書及び図面において、同一符号は同一または相当部分を示す。
【0014】
図1は、本実施形態の測定システムの全体構成図である。本実施形態では、中継先等の現場で撮影されたコンテンツ(動画)を、2つの伝送経路(本線、予備回線)を介して伝送先(例えば放送局)に伝送する。
【0015】
図示する測定システムは、現場に配置されるカメラ2と、マイク3と、2つの多重・符号化装置4A、4Bとを備える。また、測定システムは、伝送先に配置される2つの分離・復号化装置6A、6Bと、音声インタフェース7と、測定装置8とを備える。
【0016】
現場において、カメラ2は、例えばスタジアム1などで開催されるスポーツの試合、コンサート等のイベントを撮影し、撮影した映像を多重・符号化装置4Aおよび多重・符号化装置4Bに出力する。マイク3は、周囲の音声を電気信号に変換し、変換した音声の電気信号を多重・符号化装置4Aおよび多重・符号化装置4Bに出力する。
【0017】
多重・符号化装置4Aはメインの装置であって、多重・符号化装置4Bは予備用のサブの装置である。多重・符号化装置4Aは、カメラ2およびマイク3から入力される映像及び音声を多重化および符号化してコンテンツ(伝送データ)を生成し、伝送経路5Aを介して分離・復号化装置6Aに送信する。多重・符号化装置4Bも同様に、カメラ2およびマイク3から入力される映像及び音声を多重化および符号化してコンテンツを生成し、伝送経路5Bを介して分離・復号化装置6Bに送信する。
【0018】
伝送経路5A(第1伝送経路)は、メインの本回線であり、伝送経路5B(第2伝送経路)はサブの予備回線である。伝送経路5Aと伝送経路5Bは、異なる伝送経路である。例えば、伝送経路5Aは、光ファイバーを用いた伝送経路で、伝送経路5Bは衛星を経由した伝送経路であってもよい。また、伝送経路5Aと伝送経路5Bは、同じ種類の伝送路で、異なるルートであってもよい。
【0019】
分離・復号化装置6Aはメインの装置であって、分離・復号化装置6Bは予備用のサブの装置である。分離・復号化装置6Aは、伝送経路5Aを介して伝送されたコンテンツを復号化し、映像と音声に分離し、分離した第1音声データを音声インタフェース7に出力する。同様に、分離・復号化装置6Bは、伝送経路5Bを介して伝送されたコンテンツを復号化し、映像と音声とに分離し、分離した第2音声データを音声インタフェース7に出力する。
【0020】
音声インタフェース7は、分離・復号化装置6Aから出力された第1音声データと、分離・復号化装置6Bから出力された第2音声データとを、USB(Universal Serial Bus)を介して測定装置8に入力する。音声インタフェース7は、音声データを測定装置8に入力するための外付けの汎用機器である。音声インタフェース7には、例えばRCA端子(RCAケーブル)などを用いることができる。
【0021】
測定装置8は、異なる2つの伝送経路5A、5Bを介して伝送された音声の伝送遅延差(ディレイ値)を測定し、出力する。測定装置8が出力する伝送遅延差は、2つの伝送経路5A、5Bを介して伝送されるコンテンツの伝送遅延差を調整する調整装置(不図示)に入力される。測定装置8には、PCなどの汎用的なコンピュータを用いることができる。
【0022】
図2は、本実施形態の測定装置8の構成例を示すブロック図である。図示する測定装置8は、入力部81と、検出部82と、測定部83と、記憶部84とを備える。
【0023】
入力部81は、伝送経路5Aを介して伝送されるコンテンツの第1音声データと、伝送経路5Bを介して伝送される前記コンテンツの第2音声データとを入力し、記憶部84に記憶する。
【0024】
入力部81には、音声インタフェース7を介して、分離・復号化装置6Aから出力される第1音声データと、分離・復号化装置6Bから出力される第2音声データとが、そのまま入力される。
【0025】
検出部82は、第1音声データの所定のタイミングから一定時間に入力された所定区間において最大音声レベルを検出するとともに、第2音声データの前記所定のタイミングから一定時間に入力された所定区間において最大音声レベルを検出する。
【0026】
検出部82は、第1音声データの複数のタイミングから一定時間に入力された複数の所定区間において、所定区間毎に最大音声レベルを検出するとともに、第2音声データの前記複数のタイミングから一定時間に入力された複数の所定区間において、所定区間毎に最大音声レベルを検出してもよい。
【0027】
測定部83は、第1音声データの最大音声レベルと、第2音声データの最大音声レベルとの差が所定の範囲内であって、第1音声データの最大音声レベルの第1時点の前の時点の音声レベルと、第2音声データの最大音声レベルの第2時点の前の時点の音声レベルとの差が前記所定の範囲内であって、前記第1時点の後の時点の音声レベルと、前記第2時点の後の時点の音声レベルとの差が前記所定の範囲内の場合、第1時点と第2時点との時間差を、伝送経路5Aおよび伝送経路5Bにおけるコンテンツの伝送遅延差として測定する。
【0028】
測定部83は、複数の所定区間において測定した各伝送遅延差が、所定の回数連続して同じ場合、前記伝送遅延差を出力してもよい。
【0029】
測定部83は、第1音声データの最大音声レベルと、前記最大音声レベルの第1時点の前後の時点の各音声レベルとの差が閾値を超える場合であって、第2音声データの最大音声レベルと、前記最大音声レベルの第2時点の前後の時点の各音声レベルとの差が閾値を超える場合、第1時点と第2時点との時間差を、伝送遅延差として測定してもよい。
【0030】
記憶部84には、第1音声データと第2音声データとが記憶される。
【0031】
次に、本実施形態の測定装置8の測定処理を、図3から図5を用いて説明する。
【0032】
図3は、本実施形態の測定装置8の測定処理の一例を示すフローチャートである。図示する測定処理は、放送または配信すべきコンテンツの伝送の開始前の準備作業として行われる。例えば、2つの伝送経路5A、5Bの回線が繋がった後の任意のタイミングで行うことができる。
【0033】
測定装置8は、音声インタフェース7を介して、分離・復号化装置6A、6Bからそれぞれ出力される第1音声データおよび第2音声データを入力する(S11)。第1音声データは、伝送経路5Aを介して伝送されたコンテンツの音声データであり、第2音声データは、伝送経路5Bを介して伝送された前記コンテンツの音声データである。
【0034】
測定装置8は、入力される第1音声データおよび第2音声データを用いて、コンテンツの伝送遅延差を測定する。例えば、ユーザが測定装置8に測定開始指示を入力することで、測定装置8は、S12以降の処理を開始してもよい。
【0035】
まず、測定装置8は、第1音声データの所定のタイミングから一定時間に入力された所定区間において最大音声レベルを検出するとともに、第2音声データの前記所定のタイミングから一定時間に入力された所定区間において最大音声レベルを検出する(S12)。具体的には、測定装置8は、第1音声データの中から、任意の時間(所定の時刻から一定の時間幅)に分離・復号化装置6Aに到達し、測定装置8に入力された所定区間の区間データを抽出し、当該区間データの最大の音声レベルを検出する。同様に、測定装置8は、第2音声データの中から、前記任意の時間に分離・復号化装置6Bに到達し、測定装置8に入力された所定区間の区間データを抽出し、当該区間データの最大の音声レベルを検出する。
【0036】
例えば、測定装置8は、測定開始指示が入力されてから、所定の時間が経過したタイミングから一定時間に入力された第1音声データの所定区間および第2音声データの所定区間を、それぞれ抽出してもよい。
【0037】
そして、測定装置8は、第1音声データの最大音声レベルの第1時点の前後の時点の各音声レベルと、第2音声データの前記最大音声レベルの第2時点の前後の時点の各音声レベルとを検出する(S13)。
【0038】
図4に、第1音声データの所定区間の音声波形41と、第2音声データの所定区間の音声波形42とを例示する。図示するグラフの縦軸は正規化した音声レベルを示し、横軸は時間を示す。図示する横軸は、所定区間の時間(例えば2秒)を、88200ポイントの分解能で示している。
【0039】
測定装置8は、第1音声データの音声波形41における最大音声レベルm1と、第2音声データの音声波形42における最大音声レベルm2とを検出する。測定装置8は、第1音声データの最大音声レベルm1の第1時点の前後の時点の各音声レベルa1、b1と、第2音声データの最大音声レベルm2の第2時点の前後の時点の各音声レベルa2、b2と、を検出する。
【0040】
前後の音声レベルは、第1時点または第2時点より所定の時間、前方向および後方向に離れた時点の音声レベルである。ここでは、第1時点または第2時点より1000ポイント遡った時点と、1000ポイント後ろの時点とするが、これに限定されない。ここでは、前後の時点を、第1時点または第2時点を中心として、同じだけ離れた時点としているが、異なっていてもよい。
【0041】
そして、測定装置8は、第1音声データの最大音声レベルと、その前後の時点の音声レベルと、第2音声データの最大音声レベルと、その前後の時点の音声レベルとをそれぞれ比較し、全ての時点における音声レベルの差が所定の範囲内か否かを判定する(S14)。
【0042】
図4に示す例では、測定装置8は、第1音声データの最大音声レベルm1と、その前後の各音声レベルa1、b1と、第2音声データの最大音声レベルm2と、その前後の各音声レベルa2、b2とを、それぞれ比較する。
【0043】
具体的には、測定装置8は、最大音声レベル同士(m1,m2)を比較し、その差が所定の範囲内であるか否かを判定する。すなわち、同じような最大音声レベルが存在するか否かを判定する。さらに、測定装置8は、最大音声レベルの前後の時点の音声レベル同士(a1、a2)、(b1、b2)を比較し、その差が所定の範囲内であるか否かを判定する。
【0044】
少なくとも1つの時点の音声レベルの差が所定の範囲を超える場合(S14:NO)、測定装置8は、S12に戻り以降の処理を繰り返し行う。この場合、測定装置8は、第1音声データの前回とは異なるタイミングから一定時間に入力された他の所定区間において最大音声レベルを検出するとともに、第2音声データの前記異なるタイミングから一定時間に入力された他の所定区間において最大音声レベルを検出する(S12)。
【0045】
全ての時点における音声レベルの差が所定の範囲内の場合(S14:YES)、測定装置8は、第1音声データの最大音声レベルと、最大音声レベルの第1時点の前後の時点の各音声レベルとの差が閾値を超えるか否かを判定するともに、第2音声データの最大音声レベルと、前記最大音声レベルの第2時点の前後の時点の各音声レベルとの差が閾値を超えるか否かを判定してもよい(S15)。
【0046】
図4に示す例では、測定装置8は、第1音声データの最大音声レベルm1と音声レベルa1との差分と、最大音声レベルm1と音声レベルb1との差分と、第2音声データの最大音声レベルm2と音声レベルa2との差分と、最大音声レベルm2と音声レベルb2との差分とをそれぞれ算出し、全ての差分が所定の閾値を超えるか否かを判定する。
【0047】
これは、音声データに1kHz基準信号など最大音声レベルが持続するデータが含まれる場合に、誤った測定をしてしまうことを回避するための仕組みである。
【0048】
全ての差分が閾値を超える場合(S16:YES)、測定装置8は、第1音声データの第1時点と、第2音声データの第2時点との時間差を、伝送経路5Aおよび伝送経路5Bにおけるコンテンツの伝送遅延差として測定する(S17)。一方、少なくとも1つの差分が閾値以下の場合(S16:NO)、測定装置8は、S12に戻り以降の処理を繰り返し行う。
【0049】
そして、測定装置8は、S17で測定した伝送遅延差が、連続して所定の回数、同じ値となった場合(S18:YES)、S17で測定した伝送遅延差を出力(表示)してもよい(S19)。本実施形態では、所定の回数(例えば3回)、連続して同じ値の伝送遅延差を測定するまで繰り返し行うことで、より高精度な伝送遅延差を測定することができる。なお、S17で測定した伝送遅延差が、連続して所定の回数、同じ値とならない場合(S18:NO)、測定装置8は、S12に戻り以降の処理を繰り返し行う。測定装置8は、例えば、S12に戻ったタイミングで第1音声データおよび第2音声データの次の所定区間を抽出してもよいし、また、前回の所定区間を抽出してから所定の時間が経過したタイミングで、第1音声データおよび第2音声データの次の所定区間を抽出してもよい。
【0050】
なお、同じ値には、所定の誤差を含んでいてもよい。例えば、伝送遅延差を、フレーム単位で表現した場合、小数点第一位まで同じ場合、同じ値としてもよい。この場合のフレームは、1秒間に30回切り替わる映像フレームを指し、1枚のフレームの持続時間は、1秒/30回=33msである。小数点第一位までとした場合、33msの1/10となるので、測定装置8は、3.3msより小さい誤差の場合は同じ値と判定し、3.3ms以上の時間的なずれがある場合は同じ値に該当しないと判定してもよい。
【0051】
図5は、測定装置8が出力する伝送遅延差のメッセージの一例を示す。ここでは、伝送遅延差を、フレーム単位と時間(ms)単位で表現している。図示する例では、第1音声データ(ch1)が、第2音声データ(ch2)より、27.0フレーム(891.0ms)早いことを示している。測定装置8は、測定した伝送遅延差の時間(ms)を33msで割ることでフレーム数を算出する。なお、測定装置8は、図5に示すメッセージとともに、図4に示す音声波形のグラフを出力またはディスプレイに表示してもよい。
【0052】
以上説明した本実施形態の測定装置8は、第1伝送経路を介して伝送されるコンテンツの第1音声データと、第2伝送経路を介して伝送される前記コンテンツの第2音声データとを入力する入力部81と、前記第1音声データの所定のタイミングから一定時間に入力された所定区間において最大音声レベルを検出するとともに、前記第2音声データの前記所定のタイミングから一定時間に入力された所定区間において最大音声レベルを検出する検出部82と、前記第1音声データの前記最大音声レベルと、前記第2音声データの前記最大音声レベルとの差が所定の範囲内であって、前記第1音声データの前記最大音声レベルの第1時点の前の時点の音声レベルと、前記第2音声データの前記最大音声レベルの第2時点の前の時点の音声レベルとの差が前記所定の範囲内であって、前記第1時点の後の時点の音声レベルと、前記第2時点の後の時点の音声レベルとの差が前記所定の範囲内の場合、前記第1時点と前記第2時点との時間差を、前記第1伝送経路および前記第2伝送経路における前記コンテンツの伝送遅延差として測定する測定部83と、を備える。
【0053】
本実施形態では、異なる2つの回線で伝送されるコンテンツの伝送遅延差を、高い精度で測定するとともに、任意のタイミングで測定可能な技術を提供することができる。
【0054】
具体的には、コンテンツの音声データを用いて伝送遅延差を測定することで、映像フレーム単位より細かい、ミリ秒(ms)単位の精度でコンテンツの伝送遅延差を測定することができる。
【0055】
また、本実施形態では、現場で人が手を叩くなどの動作を行うことなく、現場から異なる2つの回線で伝送されるコンテンツの各音声データを測定装置8に入力するだけで、伝送遅延差を測定することができる。これにより、本実施形態では、伝送先の受け側では、現場と連携して伝送遅延差を測定する必要がなく、任意のタイミングで伝送遅延差を測定することができる。
【0056】
また、本実施形態では、汎用的なコンピュータを用いた測定装置8と、音声入力インタフェース7とを用意するだけで、異なる2つの回線で伝送されるコンテンツの伝送遅延差を測定することができる。すなわち、汎用的なコンピュータに上述の測定機能を有するアプリケーションプログラムを実装することで、本実施形態の測定装置8を実現することができる。したがって、本実施形態では、低コストでコンテンツの伝送遅延差を測定することができる。
【0057】
上記説明した本実施形態の測定装置8は、例えば、図6に示すような汎用的なコンピュータシステムを用いることができる。図示するコンピュータシステムは、CPU(Central Processing Unit、プロセッサ)901と、メモリ902と、ストレージ903(HDD:Hard Disk Drive、SSD:Solid State Drive)と、通信装置904と、入力装置905と、出力装置906とを備える。メモリ902およびストレージ903は、記憶装置である。このコンピュータシステムにおいて、CPU901がメモリ902上にロードされた所定のプログラム(アプリケーションプログラム)を実行することにより、測定装置8の各機能が実現される。プログラムは、Pythonなどの汎用プログラム言語で構築されていてもよい。
【0058】
また、測定装置8は、1つのコンピュータで実装されてもよく、あるいは複数のコンピュータで実装されても良い。また、測定装置8は、コンピュータに実装される仮想マシンであっても良い。測定装置8のプログラムは、HDD、SSD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD (Compact Disc)、DVD (Digital Versatile Disc)などのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶することも、ネットワークを介して配信することもできる。コンピュータ読取り可能な記録媒体は、例えば非一時的な(non-transitory)記録媒体である。
【0059】
なお、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0060】
2 :カメラ
3 :マイク
4A、4B:多重・符号化装置
5A、5B:伝送経路
6A、6B:分離・復号化装置
7:音声インタフェース
8 :測定装置
81:入力部
82:検出部
83:測定部
84:記憶部
【要約】      (修正有)
【課題】異なる2つの回線で伝送されるコンテンツの伝送遅延差を、高い精度かつ任意のタイミングで測定する測定装置、方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】測定システムにおいて、測定装置8は、第1伝送経路5Aを介して伝送される第1音声データと、第2伝送経路5Bを介して伝送される第2音声データとを入力する入力部、第1音声データの所定区間において最大音声レベルを検出するとともに、第2音声データの所定区間において最大音声レベルを検出する検出部及び第1音声データと第2音声データの前記最大音声レベルとの差が所定の範囲内であって、第1音声データと第2音声データの最大音声レベルの前の時点の音声レベルとの差が所定の範囲内であって、第1時点と第2時点の後の時点の音声レベルとの差が前記所定の範囲内の場合、第1時点と第2時点との時間差を、第1伝送経路および第2伝送経路における伝送遅延差として測定する測定部を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6