(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用負極およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/133 20100101AFI20250708BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20250708BHJP
H01M 4/1393 20100101ALI20250708BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/587
H01M4/1393
(21)【出願番号】P 2024569396
(86)(22)【出願日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 KR2023021062
(87)【国際公開番号】W WO2024136432
(87)【国際公開日】2024-06-27
【審査請求日】2024-11-22
(31)【優先権主張番号】10-2022-0182981
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0017346
(32)【優先日】2023-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ス・ユン
(72)【発明者】
【氏名】テク・ス・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ホ・チョ
(72)【発明者】
【氏名】シン・ウク・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ゴン・キム
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-220173(JP,A)
【文献】特開2006-127823(JP,A)
【文献】特開2004-220926(JP,A)
【文献】特開2019-185943(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0122437(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 - 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも一面に設けられ、炭素系負極活物質を含有する負極活性層と、を含み、
前記負極活性層は、
前記負極活性層の幅方向に中心部を含む中心領域、前記負極活性層の縁に位置し、厚さ勾配を有するスライディング領域、および前記中心領域と前記スライディング領域との間に位置するエッジ領域に区分され、
前記中心領域は前記負極活性層の幅方向に全体長さの90%以上の割合を有し、前記スライディング領域は前記負極活性層の幅方向に全体長さの3%以下の割合を有し、前記エッジ領域は前記負極活性層の幅方向の全体長さのうち前記中心領域と前記スライディング領域の長さ割合を除外した残部割合を有し、
前記負極活性層に含有された前記炭素系負極活物質の単位面積当たりのローディング量は中心領域、エッジ領域およびスライディング領域の順で減少し、
前記中心領域は整列度(O.I
center
)が0.7~1.5であり、
下記式1および式2を満たす、リチウム二次電池用負極:
[式1]
1.6≦[O.I
edge]/[O.I
center]≦2.5
[式2]
2.6≦[O.I
sliding]/[O.I
center]≦3.5
式1および式2において、
O.I
edgeは、エッジ領域での整列度(O.I)を表し、
O.I
centerは、中心領域での整列度(O.I)を表し、
O.I
slidingは、スライディング領域での整列度(O.I)を表し、
前記整列度(O.I)は、前記負極活性層に対するXRD測定時の(0,0,4)結晶面を示すピークの面積(I
004)と(1,1,0)結晶面を示すピークの面積(I
110)の比率(I
004/I
110)を表す。
【請求項2】
前記負極活性層は、下記式3を満たす、請求項
1に記載のリチウム二次電池用負極:
[式3]
R
sliding<R
edge≦R
center
式3において、
R
slidingは、スライディング領域の平均厚さを表し、
R
edgeは、エッジ領域の平均厚さを表し、
R
centerは、中心領域の平均厚さを表す。
【請求項3】
前記負極活性層の前記中心領域は、平均厚さが100μm~300μmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項4】
前記炭素系負極活物質は、天然黒鉛および人造黒鉛のうち1種以上を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項5】
負極集電体上に炭素系負極活物質を含む負極スラリーを塗布するステップと、
塗布された負極スラリーに磁場を印加するステップと、
磁場が印加された負極スラリーを乾燥させて負極活性層を形成するステップと、を含み、
前記負極活性層は、前記負極活性層の幅方向に中心部を含む中心領域、前記負極活性層の縁に位置し、厚さ勾配を有するスライディング領域、および前記中心領域と前記スライディング領域との間に位置するエッジ領域に区分され、下記式1および式2を満たす、
請求項1に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法:
[式1]
1.6≦[O.I
edge]/[O.I
center]≦2.5
[式2]
2.6≦[O.I
sliding]/[O.I
center]≦3.5
式1および式2において、
O.I
edgeは、エッジ領域での整列度(O.I)を表し、
O.I
centerは、中心領域での整列度(O.I)を表し、
O.I
slidingは、スライディング領域での整列度(O.I)を表し、
前記整列度(O.I)は、前記負極活性層に対するXRD測定時の(0,0,4)結晶面を示すピークの面積(I
004)と(1,1,0)結晶面を示すピークの面積(I
110)の比率(I
004/I
110)を表す。
【請求項6】
前記磁場を印加するステップでは、2,000G~6,000Gの磁場が印加される、請求項
5に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項7】
前記磁場を印加するステップは、5秒~60秒間行われる、請求項
5に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項8】
前記磁場を印加するステップは、前記塗布された負極スラリーの上部および下部に導入された磁石部によって行われ、かつ、
前記磁石部は、前記負極スラリーの幅方向長さを基準として105%~200%の長さを有する、請求項
5に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項9】
前記負極活性層を形成するステップは、
負極スラリーを乾燥させるステップと、
乾燥させた負極スラリーを圧延するステップと、を含む、請求項
5に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項10】
前記負極活性層の前記エッジ領域は、圧延前の前記負極活性層の前記中心領域の平均厚さを基準として90%以上105%未満の厚さ割合を有する、請求項
9に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年12月23日付の韓国特許出願第10-2022-0182981号および2023年2月9日付の韓国特許出願第10-2023-0017346号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用負極およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
近年、携帯型電子機器などの小型装置のみならず、ハイブリッド自動車や電気自動車のバッテリーパックまたは電力貯蔵装置などの中大型装置にも二次電池が広く適用されている。
【0004】
このような二次電池は、正極/分離膜/負極の積層構造からなる充放電が可能な発電素子であって、一般的に正極はリチウム金属酸化物を正極活物質として含み、負極は黒鉛などの炭素系負極活物質を含み、充電時に正極から放出されたリチウムイオンが負極の炭素系負極活物質の内部に吸蔵され、放電時に炭素系負極活物質の内部に含有されたリチウムイオンが正極のリチウム金属酸化物に吸蔵されて充放電が繰り返される構成を有する。
【0005】
一方、負極に用いられる負極活物質としては、非晶質炭素または結晶質炭素が使用されており、その中でも結晶質炭素は容量が高く主に使用されている。このような結晶質炭素としては、天然黒鉛、人造黒鉛などがある。
【0006】
人造黒鉛は天然黒鉛より充電に比べて放電効率が高く、充放電時の膨張(swelling)が少なく寿命特性に優れる。しかしながら、天然黒鉛に比べて可逆容量が低く、粒子が硬くて電極製造時の圧延が難しく、形態変化が少なく配向が上手くなされないという問題がある。特に、3000℃の黒鉛化熱処理が必要であり、製造コストが高いという短所がある。
【0007】
一方、天然黒鉛の場合には、人造黒鉛に比べて低価格でありながらも可逆容量が高く、類似の電気化学的特性を示すので、負極活物質として多く使用されている。しかしながら、天然黒鉛は板状の形状を有するので表面積が大きく、角(edge)部分が露出しており、電解質の浸透や分解反応が起こり、角部分が剥離されるかまたは破壊されて非可逆反応が大きく起こり、膨張率が増加して長期寿命特性が低下することもある。
【0008】
このような炭素系負極材以外に負極活物質として検討されたリチウム金属はエネルギー密度が非常に高く、高容量を具現し得るが、繰り返し充放電時の樹枝状成長(dendrite)による安全性問題とサイクル寿命が短いという問題点がある。
【0009】
別の負極活物質として、シリコン(silicon)、スズ(tin)、またはそれらの合金がリチウムとの化合物形成反応を介して多量のリチウムを可逆的に吸着および放出し得ることが知られており、近年それに関する多くの研究が進んでいる。例えば、シリコンは、理論的最大容量が約4020mAh/g(9800mAh/cc、比重2.23)と黒鉛系物質に比べて非常に大きいので、高容量負極材料として有望である。しかしながら、上記負極活物質は、充放電時の体積変化が非常に大きく、高率放電特性が高くないという短所を有している。
【0010】
したがって、低い膨張率、所定の容量と高い出力特性および寿命特性を発揮するための負極活物質性能の向上が必要であるのが実情である。これに関して、まず、黒鉛などの結晶質炭素系化合物に非晶質炭素層を被覆した負極活物質を考慮し得る。しかしながら、この場合、エネルギー密度は向上するが、負極活物質中に含まれた非晶質炭素系化合物の割合が低く、高い出力特性を達成するには不足し、均一な被覆層が形成されない場合は電気伝導性が良くなく、所望のレベルの寿命特性を得ることができない。
【0011】
したがって、高率充放電特性および低膨張能力を向上させ、優れた寿命特性を有する負極活物質に対する多様な試みがなされている。このような問題点を根本的に解決しながら、負極活物質の高率充放電特性および高エネルギー密度を同時に具現し得る技術に対する必要性が高いのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、天然黒鉛などの炭素系負極活物質を含み、充放電時の体積変化が少なく、高率充放電および高エネルギー密度を示すリチウム二次電池用負極およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の問題を解決するために、
本発明は一実施形態において、
負極集電体と、上記負極集電体の少なくとも一面に設けられ、炭素系負極活物質を含有する負極活性層と、を含み、
上記負極活性層は、
負極活性層の幅方向に中心部を含む中心領域、負極活性層の縁に位置し、厚さ勾配を有するスライディング領域、および上記中心領域とスライディング領域との間に位置するエッジ領域に区分され、
下記式1および式2を満たすリチウム二次電池用負極を提供する:
【0014】
[式1]
1.6≦[O.Iedge]/[O.Icenter]≦2.5
【0015】
[式2]
2.6≦[O.Isliding]/[O.Icenter]≦3.5
【0016】
(式1および式2において、
O.Iedgeは、エッジ領域での整列度(O.I)を表し、
O.Icenterは、中心領域での整列度(O.I)を表し、
O.Islidingは、スライディング領域での整列度(O.I)を表し、
上記整列度(O.I)は、負極活性層に対するXRD測定時の(0,0,4)結晶面を示すピークの面積(I004)と(1,1,0)結晶面を示すピークの面積(I110)の比率(I004/I110)を表す)
【0017】
このとき、上記負極活性層の中心領域は、整列度(O.Icenter)が0.7~1.5であり得る。
【0018】
また、上記負極活性層の中心領域は、負極活性層の幅方向に全体長さの90%以上の割合を有し、負極活性層のスライディング領域は、負極活性層の幅方向に全体長さの3%以下の割合を有し得る。
【0019】
また、上記負極活性層は、下記式3を満たし得る:
【0020】
[式3]
Rsliding<Redge≦Rcenter
【0021】
(式3において、
Rslidingは、スライディング領域の平均厚さを表し、
Redgeは、エッジ領域の平均厚さを表し、
Rcenterは、中心領域の平均厚さを表す)
【0022】
また、上記負極活性層の中心領域は、平均厚さが100μm~300μmであり得、上記負極活性層のスライディング領域は、露出面が負極集電体に対して70°以上の傾斜角を有し得る。
【0023】
一方、上記炭素系負極活物質は、天然黒鉛および人造黒鉛のうち1種以上を含み得る。
【0024】
さらに、本発明は一実施形態において、
負極集電体上に炭素系負極活物質を含む負極スラリーを塗布するステップと、
塗布された負極スラリーに磁場を印加するステップと、
磁場が印加された負極スラリーを乾燥させて負極活性層を形成するステップと、を含み、
上記負極活性層は、負極活性層の幅方向に中心部を含む中心領域、負極活性層の縁に位置し、厚さ勾配を有するスライディング領域、および上記中心領域とスライディング領域との間に位置するエッジ領域に区分され、下記式1および式2を満たすリチウム二次電池用負極の製造方法を提供する:
【0025】
[式1]
1.6≦[O.Iedge]/[O.Icenter]≦2.5
【0026】
[式2]
2.6≦[O.Isliding]/[O.Icenter]≦3.5
【0027】
(式1および式2において、
O.Iedgeは、エッジ領域での整列度(O.I)を表し、
O.Icenterは、中心領域での整列度(O.I)を表し、
O.Islidingは、スライディング領域での整列度(O.I)を表し、
上記整列度(O.I)は、負極活性層に対するXRD測定時の(0,0,4)結晶面を示すピークの面積(I004)と(1,1,0)結晶面を示すピークの面積(I110)の比率(I004/I110)を表す)
【0028】
ここで、上記磁場を印加するステップは、2,000G~6,000Gの磁場が印加され得、印加される時間は5秒~60秒であり得る。
【0029】
また、上記磁場を印加するステップは、塗布された負極スラリーの上部および下部に導入された磁石部によって行われ、かつ、上記磁石部は、負極スラリーの幅方向長さを基準として105%~200%の長さを有し得る。
【0030】
また、上記負極活性層を形成するステップは、負極スラリーを乾燥させるステップと、乾燥させた負極スラリーを圧延するステップと、を含み得る。
【0031】
このとき、上記負極活性層のエッジ領域は、圧延前の負極活性層の中心領域の平均厚さを基準として90%以上105%未満の厚さ割合を有し得る。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係るリチウム二次電池用負極は、中心領域、エッジ領域およびスライディング領域に区分される負極活性層を負極集電体上に含み、かつ、上記中心領域、エッジ領域およびスライディング領域に含有された各炭素系負極活物質の整列度(O.I)が式1および式2を満たすことにより、充放電時の体積変化が少なく、高率充放電および高エネルギー密度を示すという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明に係る負極の断面構造を示すイメージ図である。
【
図2】本発明に係る負極の断面構造を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な実施形態を有し得るので、特定の実施形態を詳細な説明に詳細に説明する。
【0035】
しかしながら、これは本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むものとして理解され得る。
【0036】
本発明において、「含む」や「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものとして理解され得る。
【0037】
また、本発明において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あると記載された場合、これは他の部分の「真上に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。逆に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」あると記載された場合、それは他の部分の「真下に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。また、本出願において「上に」配置されるということは、上部のみならず下部に配置される場合も含むものであり得る。
【0038】
また、本明細書において、「主成分として含む」とは、全体重量(または全体体積)に対して定義された成分を50重量%以上(または50体積%以上)、60重量%以上(または60体積%以上)、70重量%以上(または70体積%以上)、80重量%以上(または80体積%以上)、90重量%以上(または90体積%以上)、または95重量%以上(または95体積%以上)含むことを意味し得る。例えば、「負極活物質として黒鉛を主成分として含む」とは、負極活物質全体の重量に対して黒鉛を50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、または95重量%以上含むことを意味し得、場合によっては、負極活物質全体が黒鉛からなり黒鉛が100重量%で含まれることも意味し得る。
【0039】
また、本明細書において、「炭素系負極活物質が配向される」または「炭素系負極活物質が整列される」とは、負極活物質粒子を構成する炭素系負極活物質の結晶面が負極集電体表面を基準として所定の方向性を有するように分布されることを意味するものであって、これは、炭素系負極活物質の粒子自体が負極活性層内部で特定の方向を有するように配列されるものとは異なり得る。
【0040】
また、「炭素系負極活物質の配向性が高い」とは、負極活性層に含有された炭素系負極活物質が負極集電体表面を基準として高い頻度で整列されたことを意味し得、場合によっては、負極活性層に含有された炭素系負極活物質が負極集電体表面を基準として高い角度で整列されたことを意味し得る。
【0041】
また、「炭素系負極活物質の整列度が高い」とは、本明細書で言及された「整列度(O.I)」が大きい値を有するものであり、負極活性層に含有された炭素系負極活物質が負極集電体表面を基準として低い角度で整列されたことを意味し得る。これとは逆に、「炭素系負極活物質の整列度が低い」とは、「整列度(O.I)」が小さい値を有するものであり、負極活性層に含有された炭素系負極活物質が負極集電体表面を基準として高い角度で整列されたことを意味し得る。
【0042】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0043】
<リチウム二次電池用負極>
【0044】
本発明は一実施形態において、
負極集電体と、上記負極集電体の少なくとも一面に設けられ、炭素系負極活物質を含有する負極活性層と、を含み、
上記負極活性層は、
負極活性層の幅方向に中心部を含む中心領域、負極活性層の縁に位置し、厚さ勾配を有するスライディング領域、および上記中心領域とスライディング領域との間に位置するエッジ領域に区分され、
下記式1および式2を満たすリチウム二次電池用負極を提供する:
【0045】
[式1]
1.6≦[O.Iedge]/[O.Icenter]≦2.5
【0046】
[式2]
2.6≦[O.Isliding]/[O.Icenter]≦3.5
【0047】
(式1および式2において、
O.Iedgeは、エッジ領域での整列度(O.I)を表し、
O.Icenterは、中心領域での整列度(O.I)を表し、
O.Islidingは、スライディング領域での整列度(O.I)を表し、
上記整列度(O.I)は、負極活性層に対するXRD測定時の(0,0,4)結晶面を示すピークの面積(I004)と(1,1,0)結晶面を示すピークの面積(I110)の比率(I004/I110)を表す)
【0048】
図1および
図2は、本発明により負極集電体の一面に負極活性層が設けられた負極100および200の構造を示す断面図である。
【0049】
本発明に係るリチウム二次電池用負極100および200は、負極集電体110および210の少なくとも一面に炭素系負極活物質を含む負極活性層120および220を含む。上記負極活性層120および220は、負極の電気的活性を具現する層であって、電池の充放電時に電気化学的酸化還元反応を具現する負極活物質を含む負極スラリーを負極集電体110および210の少なくとも一面に塗布した後に、それを乾燥および圧延することにより製造される。
【0050】
このとき、上記負極活性層120および220は、負極100および200の幅方向に中心領域、エッジ領域およびスライディング領域に区分される。具体的には、上記負極活性層120および220は、幅方向に中心部を含み、幅方向を基準として全体長さの90%以上の割合を有する中心領域121および221を含む。上記中心領域121および221は、負極活性層120および220の大部分を構成する領域であって、負極活性層120および220の幅方向に全体長さの93%以上、95%以上、97%以上、または96%~99%の割合を有し得る。ここで、「負極活性層120および220の幅方向」とは、負極製造時の負極集電体の走行される方向に対して垂直な方向を意味し得、場合によっては、製造された負極において負極タブが形成された一面からその反対面に進む方向と同じであり得る。本発明は、負極活性層120および220での中心領域121および221の長さ割合を上記範囲に調節することにより、負極のリチウム二次電池の出力とエネルギー密度をより増加させ得る。
【0051】
また、上記中心領域121および221の外側にはエッジ領域122および222が位置し、上記エッジ領域122および222の外側にはスライディング領域123および223が位置する。
【0052】
このとき、上記エッジ領域とスライディング領域は、
図1のように、中心領域121の両側に順次連続して配置され得、場合によっては、負極の製造過程で電極シートの打抜(またはノッチング)が行われ、
図2のように、中心領域221の一側にのみ順次連続して配置され得る。
【0053】
また、上記スライディング領域123および223は、負極活性層120および220の縁に位置し、厚さ勾配を有する領域であって、負極活性層120および220の幅方向に全体長さの3%以下の割合を有し得る。具体的には、上記スライディング領域123および223は、エッジ領域122および222に隣接する領域で外側に厚さが減少する形態を有し得、負極のエネルギー密度を考慮して、負極活性層120および220の幅方向に全体長さの2%以下、1%以下、0.5%以下、0.01%~1%、または0.01%~0.5%の割合を有し得る。このとき、上記長さ割合は、負極活性層120および220の幅方向を基準として設けられる全体長さの割合であって、
図1のように、中心領域121の両側にスライディング領域123および223が設けられる場合に、各スライディング領域の長さ割合が上記割合の1/2に半減し得る。
【0054】
また、上記スライディング領域123および223は、外側に進むにつれて厚さが薄くなる厚さ勾配を有することにより、露出面が負極集電体110および210に対して所定の傾斜角を有し得る。例えば、上記スライディング領域123および223は、露出面が負極集電体110および210に対して70°以上の傾斜角を有し得、具体的には75°以上、80°以上、85°以上、70°~85°、75°~80°、70°~75°の傾斜角を有し得る。本発明は、スライディング領域123および223の露出面が有する負極集電体110および210に対する傾斜角を上記範囲に調節することにより、正極と組み立てられた電極組立体の端部でN/P比(N/P ratio)が逆転することを防止し得、負極端部で分離膜との接着力をより向上させ得る。
【0055】
また、上記エッジ領域122および222は、中心領域121および221とスライディング領域123および223との間に位置するバッファー領域としての役割を果たし得、上述の中心領域121および221とスライディング領域123および223との長さ割合を除いた残部長さを占めることができる。例えば、上記エッジ領域122および222は、負極活性層120および220の幅方向に全体長さの7%未満、5%未満、4%未満、2.5%未満、0.09%~3%、または0.5~1%の割合を有し得る。上記エッジ領域122および222は、スライディング領域123および223と同様に、中心領域121の両側に設けられる場合に、各エッジ領域の長さ割合が上記長さ割合の1/2に半減し得る。
【0056】
上記エッジ領域122および222は、ローディング量および/または厚さが一定に高い中心領域121および221と、ローディング量および/または厚さが可変的に低いスライディング領域123および223との間に位置し、ローディング量および/または厚さが一定に高いかまたは低い構成を有し得る。
【0057】
一つの例として、上記負極活性層120および220は、下記式3を満たし得る:
【0058】
[式3]
Rsliding<Redge≦Rcenter
【0059】
(式3において、
Rslidingは、スライディング領域の平均厚さを表し、
Redgeは、エッジ領域の平均厚さを表し、
Rcenterは、中心領域の平均厚さを表す)
【0060】
上記式3は、各領域の平均厚さ間の相関関係を示したものであって、本発明に係る負極活性層120および220の各領域は、負極活性層120および220の中央から外側に位置が変化するにつれて平均厚さが減少する傾向を有することを意味する。ここで、「平均厚さ」とは、共焦点顕微鏡(confocal microscope)を用いて測定され得、測定方式は各領域別に異なり得る。具体的には、中心領域およびエッジ領域の場合、3地点以上の任意の地点に対する厚さを測定し、測定値から算出される平均値を意味し得る。スライディング領域の場合、負極活性層120および220の幅方向長さを基準としてスライディング領域の長さが1/2となる地点の厚さを測定したものであり得る。
【0061】
例えば、上記負極活性層120および220の中心領域121および221は平均厚さが140±3μmであり得、エッジ領域122および222は平均厚さが139±3μmであり得、スライディング領域123および223は平均厚さが75±3μmであり得る。
【0062】
他の一つの例として、上記負極活性層120および220は、各領域の単位面積当たりの平均ローディング量が負極活性層120および220の中央から外側に位置が変化するにつれて減少し得る。ここで、各領域の単位面積当たりの平均ローディング量は、同一面積での平均ローディング量であれば、その面積は制限されない。
【0063】
本発明の負極活性層120および220は、各領域の単位面積当たりの平均ローディング量および/または平均厚さが上述のような傾向を有するようにすることにより、それを含む電池の高率充放電特性とエネルギー密度をより改善し得る。
【0064】
具体的には、上記負極活性層120および220に含有された炭素系負極活物質C-Aは、負極集電体110および210の表面に対して所定の角度を有するように結晶面が配向され得るが、負極活物質の配向度合いおよび/または配向方向によって電子やリチウムイオンの移動が変化し得、体積膨張や収縮などの炭素系負極活物質の物理・化学的動きも変化し得る。このとき、上記炭素系負極活物質の結晶面配向は、負極製造時に炭素系負極活物質が含有された負極スラリーに磁場を印加することにより具現され得、配向度合いおよび/または配向方向は、負極活性層120および220を形成する負極スラリーの状態や条件に依存し得る。そこで、本発明は、負極活性層120および220のローディング量および/または厚さが減少すると、負極活性層に含有された炭素系負極活物質の結晶面が有する角度が低くなるように、負極活性層120および220を構成する各領域の炭素系負極活物質の配向性を制御することを特徴とし得る。
【0065】
例えば、本発明に係る負極活性層120および220は、単位面積当たりの平均ローディング量および/または平均厚さが中心領域、エッジ領域およびスライディング領域順に減少するようにすることにより、負極活性層120および220に含有された炭素系負極活物質が負極集電体110および210の表面に対して有する結晶面角度が低くなるように配向させ得る。このとき、上記炭素系負極活物質(例えば、黒鉛)の配向は、負極活性層に含有された炭素系負極活物質C-Aに対する結晶面分析によって判断され得る。
【0066】
一つの例として、上記負極活性層120および220は、下記式1および式2を満たし得る:
【0067】
[式1]
1.6≦[O.Iedge]/[O.Icenter]≦2.5
【0068】
[式2]
2.6≦[O.Isliding]/[O.Icenter]≦3.5
【0069】
(式1および式2において、
O.Iedgeは、エッジ領域での整列度(O.I)を表し、
O.Icenterは、中心領域での整列度(O.I)を表し、
O.Islidingは、スライディング領域での整列度(O.I)を表し、
上記整列度(O.I)は、負極活性層に対するXRD測定時の(0,0,4)結晶面を示すピークの面積(I004)と(1,1,0)結晶面を示すピークの面積(I110)の比率(I004/I110)を表す)
【0070】
上記炭素系負極活物質C-Aの整列度(O.I)は、X線回折(XRD)測定時の球形の炭素系負極活物質が有する結晶構造が一定の方向、具体的には、負極集電体表面に対して配向された程度を示す指標となり得る。より具体的には、負極活性層は、X線回折測定時の炭素系負極活物質である黒鉛に対するピークである2θ=26.5±0.2°、42.4±0.2°、43.4±0.2°、44.6±0.2°、54.7±0.2°および77.5±0.2°を示し、これは(0,0,2)面、(1,0,0)面、(1,0,1)R面、(1,0,1)H面、(0,0,4)面、(1,1,0)面を示すものである。また、2θ=43.4±0.2°で現れるピークは、炭素系負極活物質C-Aの(1,0,1)R面と集電体、例えば、銅(Cu)の(1,1,1)面に該当するピークが重複(overlap)して現れたとも考えられる。
【0071】
このうち、(0,0,4)面を示す2θ=54.7±0.2°でのピークと(1,1,0)面を示す2θ=77.5±0.2°でのピークの面積割合、具体的には、上記ピークの強度を積分して得られる面積の割合により炭素系負極活物質C-Aの整列度(O.I)を測定し得る。ここで、2θ=54.7±0.2°でのピークは、黒鉛の結晶面のうち負極集電体との傾きを有する(0,0,4)面を示すピークであるので、上記整列度(O.I)は、その値が0に近いほど負極集電体の表面に対する傾きが90°に近く、その値が大きくなるほど負極集電体の表面に対する傾きが0°または180°に近いことを意味し得る。すなわち、本発明に係る負極活性層は、炭素系負極活物質C-Aが負極集電体に対して高い角度、例えば、負極集電体に対して60°以上、70°以上、70°~90°、80°~90°、65°~85°、または70°~85°の角度を有するように整列されるので、炭素系負極活物質C-Aが低い角度で整列された場合と比較して炭素系負極活物質C-Aの整列度(O.I)が低いことがあり得る。
【0072】
これを考慮したときに、式1は、中心領域に含有された炭素系負極活物質の整列度(O.Icenter)がエッジ領域に含有された炭素系負極活物質の整列度(O.Iedge)より小さい値を有することを示し、これは、中心領域の炭素系負極活物質がエッジ領域の炭素系負極活物質より負極集電体表面に対して高い角度で整列されていることを意味する。本発明の負極活性層120および220は、中心領域の炭素系負極活物質がエッジ領域の炭素系負極活物質より負極集電体表面に対して高い角度で整列され、上記式1を1.6~2.5(すなわち、1.6≦[O.Iedge]/[O.Icenter]≦2.5)で満たし得、具体的には1.7~2.0(すなわち、1.7≦[O.Iedge]/[O.Icenter]≦2.0)、1.8~2.2(すなわち、1.8≦[O.Iedge]/[O.Icenter]≦2.2)、2.1~2.4(すなわち、2.1≦[O.Iedge]/[O.Icenter]≦2.4、または1.7~2.3(すなわち、1.7≦[O.Iedge]/[O.Icenter]≦2.3)で満たし得る。
【0073】
また、式2は、中心領域に含有された炭素系負極活物質の整列度(O.Icenter)がスライディング領域に含有された炭素系負極活物質の整列度(O.Isliding)より小さい値を有することを示し、これは、中心領域の炭素系負極活物質がスライディング領域の炭素系負極活物質より負極集電体表面に対して高い角度で整列されていることを意味する。本発明の負極活性層120および220は、中心領域の炭素系負極活物質がスライディング領域の炭素系負極活物質より負極集電体表面に対して高い角度で整列され、上記式2を2.6~3.5(2.6≦[O.Isliding]/[O.Icenter]≦3.5)で満たし得、具体的には2.6~2.9(2.6≦[O.Isliding]/[O.Icenter]≦2.9)、3.0~3.5(3.0≦[O.Isliding]/[O.Icenter]≦3.5)、2.8~3.3(2.8≦[O.Isliding]/[O.Icenter]≦3.3)、3.1~3.3(3.1≦[O.Isliding]/[O.Icenter]≦3.3)、または2.6~2.8(2.6≦[O.Isliding]/[O.Icenter]≦2.8)で満たし得る。
【0074】
上記負極活性層120および220の各領域は、上記式1および式2の条件を満たすように炭素系負極活物質C-Aの整列度(O.I)が所定の範囲を満たし得、これにより、負極活性層120および220全体に含有された炭素系負極活物質C-Aの平均整列度を低く維持し得る。
【0075】
具体的には、上記負極活性層120および220のうち、中心領域121および221は、この領域に含有された炭素系負極活物質C-Aの整列度(O.Icenter)が0.7~1.5であり得、より具体的には0.7~1.3、0.7~1.0、0.9~1.2、または0.8~1.1であり得る。このとき、上記中心領域121および221の整列度(O.Icenter)は、負極活性層120および220の平均整列度と5%以下の偏差を有し得る。
【0076】
本発明は、負極活性層120および220の中心領域121および221、エッジ領域122および222、およびスライディング領域123および223にそれぞれ含有された炭素系負極活物質C-Aの整列度(O.I)を上述のように調節することにより、負極集電体上に充放電時の負極活性層120および220の体積変化が少なく、負極活性層120および220の内部への電子および/またはリチウムイオンの移動が容易であり、これにより電極抵抗が低いので、電池の高率充放電特性を向上させ得るという利点がある。
【0077】
一方、上記負極活性層120および220の平均厚さは100μm~300μmであり得、具体的には100μm~250μm、100μm~250μm、または130μm~190μmであり得、上記平均厚さは、中心領域121および221の平均厚さと同じであり得る。本発明は、負極活性層120および220の平均厚さを上記範囲に調節することにより、各領域に含有された炭素系負極活物質C-Aの配向傾向を厚さ変化傾向に応じて容易に制御し得、これにより、負極100および200を含む電池の高率充放電特性およびエネルギー密度を向上させ得る。
【0078】
また、上記負極活性層120および220は、本発明の負極が適用される電池モデルや製品の用途に応じて2つの個別の層が積層された構造を有し得るが、これに制限されるものではない。この場合、本発明に係る負極は、負極集電体110および210上に第1負極活性層(図示せず)が設けられ、上記第1負極活性層上に第2負極活性層(図示せず)が設けられた構造を有し得る。このとき、上記第1負極活性層および第2負極活性層は炭素系負極活物質C-Aを含有し、かつ、各層に含有された炭素系負極活物質C-Aは同じであるかまたは異なり得る。
【0079】
また、上記負極活性層120および220は、電池の充放電時に可逆的酸化還元反応により電気的活性を具現するために負極活物質として炭素系負極活物質C-Aを含む。
【0080】
上記炭素系負極活物質C-Aは、炭素原子を主成分とする素材を意味し、このような炭素系負極活物質C-Aとしては黒鉛を含み得る。上記黒鉛は、天然黒鉛、人造黒鉛のうちいずれか1つ以上を含み得るが、好ましくは、天然黒鉛を含むか、または天然黒鉛と人造黒鉛の混合物を含み得る。
【0081】
上記炭素系負極活物質C-Aは、複数の鱗片状の黒鉛が集合して形成された球形の黒鉛造粒物であることが好ましい。鱗片状黒鉛としては天然黒鉛、人造黒鉛以外にも、タール・ピッチを原料としたメソフェーズ焼成炭素(バルクメソフェーズ)、コークス類(生コークス、グリーンコークス、ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークスなど)などを黒鉛化したものなどが挙げられる。特に、結晶性が高い天然黒鉛を複数用いて組み立てられたものが好ましい。また、1つの黒鉛造粒物は、鱗片状の黒鉛が2~100個、好ましくは3~20個集合して形成され得る。
【0082】
また、上記炭素系負極活物質C-Aは、0.5μm~20μmの平均粒径(D50)を示すことができ、具体的には0.5μm~15μm、0.5μm~10μm、5μm~20μm、10μm~20μm、12μm~18μm、2μm~7μm、0.5μm~5μm、または1μm~3μmの平均粒径(D50)を示すことができる。
【0083】
天然黒鉛の平均粒径は、リチウムイオンの充電による粒子の膨張を防ぎ得るように、粒子のそれぞれに対する膨張方向の無秩序度を最大化するために粒径を小さくするほど有利であり得る。しかしながら、天然黒鉛の粒径が0.5μm未満である場合に、単位体積当たりの粒子数の増加により、大量のバインダーが必要となり得る。一方、最大粒径が20μmを超えると膨張が激しくなって、充放電が繰り返されることにより粒子間結着性と粒子と集電体との結着性が低下することになり、サイクル特性が大幅に減少し得る。
【0084】
また、本発明に係る負極活性層は、主成分である炭素系負極活物質C-Aと共に、必要に応じて導電材、バインダー、その他の添加剤などを選択的にさらに含み得る。
【0085】
上記導電材は、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維などを1種以上含み得るが、これに限定されるものではない。
【0086】
一つの例として、上記負極活性層は、導電材としてカーボンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維などを単独で含有するかまたは併用し得る。
【0087】
このとき、上記導電材の含有量は、負極活性層全体100重量部に対して0.1重量部~10重量部であり得、具体的には0.1重量部~8重量部、0.1重量部~5重量部、0.1重量部~3重量部、2重量部~6重量部、または0.5重量部~2重量部であり得る。本発明は、導電材の含有量を上記のような範囲に制御することにより、低い含有量の導電材により負極の抵抗が増加して充電容量が低下することを防止し得、過量の導電材により負極活物質の含有量が低下して充電容量が低下するか、または負極活性層のローディング量の増加により急速充電特性が低下するという問題を予防し得る。
【0088】
また、上記バインダーは、負極活物質と導電材などの結合と集電体に対する結合を助ける成分であって、電極の電気的物性を低下させない範囲で好適に適用され得るが、具体的には、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride、PVDF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スルホン化されたエチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびフッ素ゴムからなる群から選択されるいずれか1つ以上を含み得る。
【0089】
上記バインダーの含有量は、負極活性層全体100重量部に対して0.1重量部~10重量部であり得、具体的には0.1重量部~8重量部、0.1重量部~5重量部、0.1重量部~3重量部、または2重量部~6重量部であり得る。本発明は、負極活性層に含有されたバインダーの含有量を上記範囲に制御することにより、低い含有量のバインダーにより活性層の接着力が低下するか、または過量のバインダーにより電極の電気的物性が低下することを防止し得る。
【0090】
また、上記負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、ニッケル、チタン、焼成炭素などを使用し得、銅やステンレススチールの場合、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものを使用することもできる。また、上記負極集電体の平均厚さは、製造される負極の導電性と総厚さを考慮して1μm~500μmで好適に適用され得る。
【0091】
<リチウム二次電池>
【0092】
また、本発明は一実施形態において、
正極と、上述された本発明の負極と、上記正極と負極との間に配置された分離膜とを含む電極組立体を含むリチウム二次電池を提供する。
【0093】
本発明に係るリチウム二次電池は、それぞれ、複数の正極、分離膜および負極が順次的に配置された電極組立体と、リチウム塩および電解質添加剤が非水系有機溶媒に溶解された形態を有する電解質組成物とを含む。このとき、上記リチウム二次電池は、負極集電体上に負極活性層が積層された構造を有し、上記負極活性層は、中心領域、エッジ領域およびスライディング領域に区分され、かつ、上記中心領域、エッジ領域およびスライディング領域に含有された各炭素系負極活物質の整列度(O.I)が式1および式2を満たす負極を含む。これにより、上記リチウム二次電池は、充放電時の負極の体積変化が少ないので、電池寿命に優れ、高率充放電特性および高エネルギー密度を示すという利点がある。
【0094】
このとき、上記負極は上述の構成と同じ構成を有するので、具体的な説明は省略する。
【0095】
また、上記正極は、正極集電体上に正極活物質を含むスラリーを塗布、乾燥およびプレッシングして製造される正極活性層を備え、必要に応じて導電材、バインダー、その他の添加剤などを選択的にさらに含み得る。
【0096】
上記正極活物質は、正極集電体上で電気化学的に反応を起こし得る物質であって、可逆的にリチウムイオンのインターカレーションとデインターカレーションが可能な下記化学式1および化学式2で表されるリチウム金属酸化物のうち1種以上を含み得る:
【0097】
[化学式1]
Lix[NiyCozMnwM1
v]O2
【0098】
[化学式2]
LiM2
pMnqPrO4
【0099】
上記化学式1および化学式2において、
M1は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選択される1種以上の元素であり、
x、y、z、w、およびvは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0.5≦y<1、0<z≦0.3、0<w≦0.3、0≦v≦0.1であり、かつ、y+z+w+v=1であり、
M2は、Ni、CoまたはFeであり、
pは、0.05≦p≦1.0であり、
qは、1-pまたは2-pであり、
rは、0または1である。
【0100】
上記化学式1および化学式2で表されるリチウム金属酸化物は、それぞれニッケル(Ni)とマンガン(Mn)を高含有量で含有する物質であって、正極活物質として使用する場合に、従来通常的に使用されるリン酸鉄酸化物(LiFeO4)などの正極活物質と比較して高容量および/または高電圧の電気を安定的に供給し得るという利点がある。
【0101】
このとき、上記化学式1で表されるリチウム金属酸化物としては、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.9Co0.05Mn0.05O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.1Al0.1O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.15Al0.05O2、LiNi0.7Co0.1Mn0.1Al0.1O2などを含み得、上記化学式2で表されるリチウム金属酸化物は、LiNi0.7Mn1.3O4、LiNi0.5Mn1.5O4、LiNi0.3Mn1.7O4、LiFePO4、LiFeqMn1-qPO4などを含み得、これらを単独で使用するかまたは併用して使用し得る。
【0102】
また、上記正極活物質は、正極活性層の重量を基準として85重量部以上含まれ得、具体的には90重量部以上、93重量部以上、または95重量部以上含まれ得る。
【0103】
また、上記正極活性層は、正極活物質と共に導電材、バインダー、その他の添加剤などをさらに含み得る。
【0104】
このとき、上記導電材は、正極の電気的性能を向上させるために使用されるものであって、当業界で通常的に使用されるものを適用し得るが、具体的には天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、ケッチェンブラック、スーパーP、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラック、グラフェン、およびカーボンナノチューブからなる群から選択される1種以上を含み得る。
【0105】
また、上記導電材は、各正極活性層の重量を基準として0.1重量部~5重量部で含み得、具体的には0.重量部1~4重量部、2重量部~4重量部、1.5重量部~5重量部、1重量部~3重量部、0.1重量部~2重量部、または0.1重量部~1重量部で含み得る。
【0106】
また、上記バインダーは、正極活物質、正極添加剤および導電材が互いに結着するようにする役割を果たし、このような機能を有するものであれば、特に制限されずに使用され得る。具体的には、上記バインダーとしては、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride、PVDF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)およびこれらの共重合体からなる群から選択される1種以上の樹脂を含み得る。一つの例として、上記バインダーは、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride)を含み得る。
【0107】
また、上記バインダーは、各正極活性層の重量を基準として1重量部~10重量部で含み得、具体的には2重量部~8重量部、または1重量部~5重量部で含み得る。
【0108】
上記正極活性層の総厚さは特に制限されるものではないが、具体的には50μm~300μmであり得、より具体的には100μm~200μm、80μm~150μm、120μm~170μm、150μm~300μm、200μm~300μm、または150μm~190μmであり得る。
【0109】
また、上記正極は、正極集電体として当該電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものを使用し得る。例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素などを使用し得、アルミニウムやステンレススチールの場合、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものを使用することもできる。また、上記集電体の平均厚さは、製造される正極の導電性と総厚さを考慮して3μm~500μmで好適に適用され得る。
【0110】
一方、各単位セルの正極と負極との間に介在される分離膜は、高いイオン透過度と機械的強度を有する絶縁性薄膜であって、当業界で通常使用されるものであれば特に制限されないが、具体的には、耐薬品性および疎水性のポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレン-プロピレン共重合体のうち1種以上の重合体を含むものを使用し得る。上記分離膜は、上述された重合体を含むシートや不織布などの多孔性高分子基材形態を有し得、場合によっては、上記多孔性高分子基材上に有機物または無機物粒子が有機バインダーによりコーティングされた複合分離膜の形態を有してもよい。また、上記分離膜は、気孔の平均直径が0.01μm~10μmであり得、平均厚さは5μm~300μmであり得る。
【0111】
一方、本発明に係るリチウム二次電池は特に制限されるものではないが、スタック型、ジグザグ型、またはジグザグ-スタック型電極組立体を含み得る形態の二次電池であり得る。一つの例として、本発明に係るリチウム二次電池は、パウチ型二次電池または角型二次電池であり得る。
【0112】
<負極の製造方法>
【0113】
また、本発明は一実施形態において、
負極集電体上に炭素系負極活物質を含む負極スラリーを塗布するステップと、
塗布された負極スラリーに磁場を印加するステップと、
磁場が印加された負極スラリーを乾燥させて負極活性層を形成するステップと、を含み、
上記負極活性層は、負極活性層の幅方向に中心部を含む中心領域、負極活性層の縁に位置し、厚さ勾配を有するスライディング領域、および上記中心領域とスライディング領域との間に位置するエッジ領域に区分され、下記式1および式2を満たすリチウム二次電池用負極の製造方法を提供する:
【0114】
[式1]
1.6≦[O.Iedge]/[O.Icenter]≦2.5
【0115】
[式2]
2.6≦[O.Isliding]/[O.Icenter]≦3.5
【0116】
(式1および式2において、
O.Iedgeは、エッジ領域での整列度(O.I)を表し、
O.Icenterは、中心領域での整列度(O.I)を表し、
O.Islidingは、スライディング領域での整列度(O.I)を表し、
上記整列度(O.I)は、負極活性層に対するXRD測定時の(0,0,4)結晶面を示すピークの面積(I004)と(1,1,0)結晶面を示すピークの面積(I110)の比率(I004/I110)を表す)
【0117】
本発明に係る負極の製造方法は、負極集電体上に炭素系負極活物質を含む負極スラリーを塗布し、塗布された負極スラリーの表面に磁場を印加することにより、負極スラリー内の炭素系負極活物質を負極集電体表面に対して所定の角度を有するように整列させ得る。その後、連続的に炭素系負極活物質の整列度が低くなった負極スラリーを乾燥させて負極活性層を形成することにより負極を製造し得る。
【0118】
ここで、上記負極スラリーを塗布するステップは、移動中の負極集電体表面に炭素系負極活物質を含有する負極スラリーを吐出してコーティングするステップであって、当業界で通常的に適用される方式であれば特に制限されずに適用され得るが、好ましくはダイコーティング法を用いることができる。上記ダイコーティング法は、負極スラリーの吐出条件を制御するためのシム(shim)を備えるスロットダイを介して行われ得る。この場合、上記シム(shim)の形状などを制御することにより、負極集電体上に塗布される負極スラリーのローディング量、塗布厚さなどを容易に制御し得る。
【0119】
また、上記負極スラリーに磁場を印加するステップは、負極スラリーに含有された炭素系負極活物質の結晶面が負極集電体に対して所定の角度を有するように配向させるステップであり得る。このために、上記磁場を印加するステップは、表面に負極スラリーが塗布されて移動される負極集電体の上部および下部に配置された磁石部によって磁場が印加され得る。
【0120】
このとき、負極スラリーに含有された炭素系負極活物質の整列度(O.I)は、印加される磁場の強度や磁場にさらされる時間などによって調節され得、これにより、上記磁場を印加するステップは、所定の磁場強度および時間条件下で行われ得る。
【0121】
具体的には、上記磁場を印加するステップは、2,000G(ガウス、Gauss)~6,000G(ガウス、Gauss)の磁場が印加され得、具体的には2,500G~5,500G、3,000G~5,500G、3,500G~5,500G、4,000G~5,500G、3,500G~4,500G、または4,500G~5,000Gの強度で磁場が印加され得る。
【0122】
また、上記磁場を印加するステップは5秒~60秒間行われ得、具体的には10秒~60秒、10秒~30秒、30秒~60秒、40秒~50秒、15秒~35秒、または10秒~50秒間行われ得る。
【0123】
一つの例として、上記磁場を印加するステップでは、負極スラリーに4,700±100Gの磁場が12秒~33秒間印加され得る。
【0124】
さらに、上記磁場を印加するステップは、上述のように、塗布された負極スラリーの上部および下部に導入された磁石部により行われ、かつ、負極スラリーに印加される磁場が負極スラリー表面全体に均一に印加され得るように、磁石部の大きさが負極スラリーの大きさより大きく調節され得る。例えば、上記磁石部は、負極スラリーの幅方向長さを基準として105%~200%の長さ割合を有し得、具体的には、負極スラリーの幅方向長さを基準として110%~180%、110%~160%、110%~140%、110%~130%、130%~150%、または105%~120%の長さ割合を有し得る。
【0125】
本発明は、磁場を印加するステップで上述のように磁場の強度、印加時間および/または磁石部の大きさを制御することにより、負極スラリーに含有された炭素系負極活物質の領域別配向が式1および式2を満たすように制御し得る。
【0126】
また、上記負極活性層を形成するステップは、負極スラリーを乾燥させるステップと、乾燥させた負極スラリーを圧延するステップとを含み得る。
【0127】
このとき、上記負極スラリーを乾燥させるステップは、負極活性層内に含有された炭素系負極活物質の配向を維持し得る方式であれば、特に制限されずに適用され得る。
【0128】
例えば、上記乾燥させるステップは、熱風乾燥機、真空オーブン機などを用いて負極スラリーに熱エネルギーを加えることによって負極スラリーを乾燥させ得る。
【0129】
また、乾燥させた負極スラリーを圧延するステップは、ロールプレスなどを用いて乾燥させた負極スラリーに圧力を加えることにより負極活性層の密度を増加させるステップである。このとき、上記圧延は常温より高い温度条件で行われ得る。
【0130】
具体的には、上記圧延は50℃~100℃の温度、より具体的には60℃~100℃、75℃~100℃、85℃~100℃、50℃~90℃、60℃~80℃、または65℃~90℃の温度で行われ得る。具体的には、上記圧延は2m/s~7m/sの圧延速度で行われ得、より具体的には2m/s~6.5m/s、2m/s~6m/s、2m/s~5.5m/s、2m/s~5m/s、2m/s~4.5m/s、2m/s~4m/s、2.5m/s~4m/s、2.5m/s~3.5m/s、3.5m/s~5m/s、5m/s~7m/s、5.5m/s~6.5m/s、または6m/s~7m/sの圧延速度で行われ得る。また、上記圧延は50MPa~200MPaの圧力条件下で行われ得、具体的には50MPa~150MPa、50MPa~100MPa、100MPa~200MPa、150MPa~200MPa、または80MPa~140MPaの圧力条件下で行われ得る。
【0131】
本発明は、乾燥させた負極スラリーの圧延を上記温度、速度および/または圧力条件下で行うことにより形成される負極活性層に含有された炭素系負極活物質の整列度変化を最小化しながら負極のエネルギー密度を高めることができる。
【0132】
また、上記エッジ領域の平均厚さは、圧延前の中心領域の平均厚さを基準として同等であるかまたは薄くなり得、これにより、エッジ領域の負極スラリーローディング量は、中心領域の負極スラリーローディング量と比較して同等であるかまたは少なくなり得る。具体的には、上記負極活性層のエッジ領域は、圧延前の負極活性層の中心領域の平均厚さを基準として90%以上105%未満の厚さ割合を有し得る。より具体的には、上記エッジ領域は、圧延前の中心領域の平均厚さを基準として95%~100%、98%~102%、または97%~100%であり得る。
【0133】
以下、本発明を実施例および実験例によってより詳細に説明する。
【0134】
ただし、下記実施例および実験例は本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記実施例および実験例に限定されるものではない。
【0135】
<実施例1~実施例3および比較例1~比較例3.リチウム二次電池用負極の製造>
【0136】
下記表1に示した条件を反映してリチウム二次電池用負極を製造した。
【0137】
まず、炭素系負極活物質として天然黒鉛(平均粒径:10±1μm)および人造黒鉛(平均粒径:8±1μm)をそれぞれ準備し、準備された炭素系負極活物質を用いて負極スラリーを製造した。
【0138】
具体的には、天然黒鉛および人造黒鉛を1~3:7~9の重量割合で混合した混合黒鉛を負極活物質として準備し、導電材としてカーボンブラックと、バインダーとしてカルボキシメチルセルロース(CMC)とスチレンブタジエンゴム(SBR)を準備した。その後、混合黒鉛95重量部、カーボンブラック1重量部、カルボキシメチルセルロース(CMC)1.5重量部、およびスチレンブタジエンゴム(SBR)2.5重量部を固形分50%となるように水と混合して負極スラリーを製造した。
【0139】
負極スラリーが準備されたら、ロールツーロール移送(移送速度:5m/min)されている銅薄板(厚さ:10μm)上にダイコーターを用いて負極スラリーをキャスティングした。このとき、銅薄板の移送方向に沿って平均厚さが190μmとなるように負極スラリーをキャスティングし、ダイコーターに備えられたシム(shim)の形態を変えて、圧延後の負極活性層の各領域の平均厚さが表1のように調節されるようにした。
【0140】
その後、塗布された負極スラリーの上部と負極集電体の下部に負極スラリーの幅方向長さを基準として110%~120%の長さ割合を有する永久磁石を配置し、4,700±100Gの磁場を15秒間印加した後に、磁場が印加された負極スラリーを熱風乾燥して負極活性層を形成した。形成された負極活性層を50±1℃で100MPa~150MPaの圧力および3m/sの移送速度で圧延し、
図1のような断面構造を有するリチウム二次電池用負極を製造した。
【0141】
製造された各負極の負極活性層を対象に、中央に負極活性層の幅方向長さを基準として98.5%の長さ割合を有する領域を中心領域に設定し、上記中心領域の両側に合計1.0%の長さ割合で配置された領域(各0.5%の長さ割合)をエッジ領域に設定した。その後、上記エッジ領域の外側に0.5%の長さ割合で配置された領域(各0.25%の長さ割合)をスライディング領域に設定した。
【0142】
その後、設定された各領域の平均厚さを測定し、その結果を下記表1に示した。このとき、負極活性層の中心領域およびエッジ領域は、各領域に対する共焦点厚さを3回ずつ測定し、その平均値を算出することにより平均厚さを得、負極活性層のスライディング領域は、負極活性層の幅方向長さを基準としてスライディング領域の長さが1/2となる地点の厚さを平均厚さと定義した。
【0143】
また、負極活性層の各領域に対するX線回折分光(XRD)を行ってスペクトルを測定した。このとき、X線回折(XRD)の測定条件は次の通りである:
【0144】
- ターゲット:Cu(Kα線)黒鉛単色化装置
- スリット(slit):発散スリット=1度、受信スリット=0.1mm、散乱スリット=1度
- 測定区域:(1,1,0)面:76.5度<2θ<78.5度/(0,0,4)面:53.5度<2θ<56.0度
【0145】
上記条件で測定されたスペクトルから(0,0,4)結晶面を示すピークと(1,1,0)結晶面を示すピークの各面積を求め、これらの面積の比率(I004/I110)を計算して、領域別混合黒鉛の整列度(O.I)を算出した。算出された値を下記表1に示した。
【0146】
【0147】
<比較例4および比較例5.リチウム二次電池用負極の製造>
【0148】
負極スラリーのキャスティング後に磁場を印加しないか、または負極スラリーの幅方向長さを基準として95%~100%の長さ割合を有する永久磁石を用いて磁場を印加することを除いて、実施例2と同じ方法で製造してリチウム二次電池用負極を製造した。
【0149】
製造された負極は、負極活性層の各領域別に平均厚さと炭素系負極活物質の整列度(O.I)が実施例2と同じ方法で測定され、測定された結果は下記表2に示した通りであった。
【0150】
【0151】
<実施例4~実施例6および比較例6~比較例10.リチウム二次電池の製造>
【0152】
正極活物質として粒子サイズ5μmのLiNi0.7Co0.1Mn0.1Al0.1O2を準備し、カーボン系導電材およびバインダーとしてポリビニリデンフルオライドと94:3:3の重量割合でN-メチルピロリドン(NMP)に混合してスラリーを形成し、アルミニウム薄板上にキャスティングし、120℃の真空オーブンで乾燥させた後に圧延して正極を製造した。
【0153】
上記得られた正極と実施例1~実施例3および比較例1~比較例5でそれぞれ製造された負極との間に18μmのポリプロピレンからなる分離膜を介在させてケースに挿入した後に、電解質組成物を注入してリチウム二次電池を組み立てた。
【0154】
このとき、各リチウム二次電池に適用された負極の種類を下記表3に示した。
【0155】
【0156】
<実験例>
【0157】
本発明に係る負極の性能を評価するために、下記の実験を行った。
【0158】
イ)負極の厚さ膨張特性の評価
【0159】
実施例4~実施例6および比較例6~比較例10で製造されたリチウム二次電池を対象に0.5Cレート(C-rate)で充放電を30回行った後に、再充電して満充電(SOC100%)となった状態の電池を分解した。分解された電池から負極を回収した後に、それをDEC(ジエチルカーボネート(diethyl carbonate))で洗浄した後、乾燥して負極の充放電後の厚さ膨張率を分析した。その結果を表4に示した。
【0160】
ロ)高率充電性能の評価
【0161】
実施例4~実施例6および比較例6~比較例10で製造されたリチウム二次電池を対象に3.0Cレート(C-rate)の電流を印加してSOC80%の地点まで充電しながらSOCに応じた電圧変化およびdV/dQを測定した。測定された電圧変化において電圧平坦面(voltage plateau)が存在するか、またはdV/dQを示すグラフの様相が二峰性(bimodal)である場合に、負極表面からリチウムが析出したと判定した。また、リチウムが析出したと判定された当該SOC値を二次電池の急速充電が可能なSOC最大値と定義し、それを測定した。その結果を下記表4に示した。
【0162】
ハ)高率放電性能の評価
【0163】
実施例4~実施例6および比較例6~比較例10で製造されたリチウム二次電池を対象に0.5Cレート(C-rate)で満充電(SOC100%)し、満充電されたリチウム二次電池を0.1Cレート(C-rate)で1.5Vまで放電させたときの容量を測定した。その後、各リチウム二次電池を再び0.5Cレート(C-rate)で満充電(SOC100%)し、2.0Cレート(C-rate)で1.5Vまで放電させる充放電過程を100回繰り返し行った後に、0.1Cレート(C-rate)で放電時の容量を基準として2.0Cレート(C-rate)、100回放電後の容量維持率を計算し、その結果を下記表4に示した。このとき、計算された初期充電容量に対する割合が85%以上である場合は「〇」、初期充電容量に対する割合が80%以下である場合は「×」、初期充電容量に対する割合が80%超85%未満である場合には「△」で表示した。
【0164】
【0165】
上記表4に示したように、本発明に係るリチウム二次電池用負極は、充放電時の負極の厚さ膨張が少なく、出力性能に優れることが分かる。
【0166】
具体的には、実施例で製造されたリチウム二次電池は、負極の充放電後の厚さ膨張率が25%以下と低く、3.0Cレート(C-rate)の高率充電時の比較例で製造された二次電池よりリチウムプレーティングが遅く発生し、リチウムが析出するSOCが40%以上の高い値を有することが確認された。また、上記リチウム二次電池は、2.0Cレート(C-rate)の高率で100回放電時の容量維持率が85%以上であることが示された。
【0167】
これは、実施例の負極が、負極活性層の中心領域、エッジ領域およびスライディング領域に含有された各炭素系負極活物質の整列度(O.I)が式1および式2を満たす構成を有することにより、二次電池の充放電時の負極の体積変化をより減少させ得、負極活性層内のリチウムイオンの接近性がより向上し、高率特性が向上することを意味するものである。
【0168】
これらの結果から、本発明に係るリチウム二次電池用負極は、充放電時の体積変化が少なく、高率充放電性能に優れ、高エネルギー密度を示すことが分かる。
【0169】
以上では、本発明の好ましい実施形態を参照して説明したが、当該技術分野の熟練した当業者または当該技術分野に通常の知識を有する者であれば、後述される特許請求の範囲に記載された本発明の思想および技術領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正および変更させ得ることを理解し得る。
【0170】
したがって、本発明の技術的範囲は、明細書の発明の概要に記載された内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定められる。
【符号の説明】
【0171】
100および200:本発明に係るリチウム二次電池用負極
110および210:負極集電体
120および220:負極活性層
121および221:負極活性層の中心領域
122および222:負極活性層のエッジ領域
123および223:負極活性層のスライディング領域
C-A:炭素系負極活物質
↑:炭素系負極活物質の結晶面整列方向