(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-08
(45)【発行日】2025-07-16
(54)【発明の名称】マイタケ加工品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 19/00 20160101AFI20250709BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20250709BHJP
【FI】
A23L19/00 101
A23L19/00 A
A23L19/00 C
A23L19/00 Z
A23L33/105
(21)【出願番号】P 2021099055
(22)【出願日】2021-06-14
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】595125878
【氏名又は名称】楢山 忠
(73)【特許権者】
【識別番号】309015019
【氏名又は名称】地方独立行政法人青森県産業技術センター
(74)【代理人】
【識別番号】100208100
【氏名又は名称】坪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】楢山 忠
(72)【発明者】
【氏名】能登谷 典之
(72)【発明者】
【氏名】山谷 祥史
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-017315(JP,A)
【文献】特開2018-057405(JP,A)
【文献】特開2018-019687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 19/00- 19/20
A23L 5/40- 5/49
A23L 31/00- 33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉可能な空間を有する処理室にマイタケとネギ属とを収容する工程と、
前記処理室に収容されたマイタケとネギ属とを、60~80℃で連続して加温する工程
とを含むことによって、マイタケのACE阻害活性及びα-グルコシダーゼ阻害活性を向上させることを特徴とするマイタケ加工品製造方法。
【請求項2】
前記加温する工程は、温度70℃で連続して10日~30日間加温する工程であることを特徴とする、請求項1に記載のマイタケ加工品製造方法。
【請求項3】
前記収容する工程は、マイタケから成る層と、ネギ属から成る層とを交互に積層させ、積層構造状に収容する工程であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のマイタケ加工品製造方法。
【請求項4】
前記ネギ属は、ラッキョウ、シマラッキョウ又はニンニクであることを特徴とする請求項1ないし3に記載のマイタケ加工品製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のマイタケ加工品製造方法により製造され、マイタケのACE阻害活性及びα-グルコシダーゼ阻害活性を向上させたことを特徴とする、マイタケ加工品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイタケ(食材)が持つ生体調節機能を向上させることができるマイタケ加工品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイタケ(舞茸)は、サルノコシカケ科に属する食用キノコである。マイタケは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性(血圧降下作用)、α-グルコシダーゼ阻害活性(血糖値上昇抑制効果)といった生体調節機能を有し、高血圧、動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞などの生活習慣病の予防に効果が期待できる健康食材として知られている。マイタケが持つ生体調節機能を向上させることができれば、さらなる生活習慣病予防や健康維持の効果が期待できる。
【0003】
マイタケを用いた高機能食品の製造方法として、例えば特許文献1のようなマイタケのエンドペプチダーゼ活性を有効利用し、タンパク質を含む食品に血圧上昇抑制効果を付与せしめるものが知られている。
しかし、特許文献1に記載の製造方法は、タンパク質を含む食品にマイタケを加え、このタンパク質をマイタケに含まれるエンドペプチダーゼにより分解するというものであって、マイタケそのものを高機能食品化するものではない。
【0004】
高機能食品の製造方法として広く知られているものとして、ニンニクを黒化すなわち黒ニンニクにする製造方法がある。黒ニンニクの製造方法は、例えば特許文献2の背景技術に記載されているように、生ニンニクを高温高湿度で発酵熟成させるというものである。
しかし、特許文献2に記載の背景技術と同様の方法をマイタケに転用しても黒化(いわゆる熟成)させることはできない。すなわち、生のマイタケを発酵室に入れて、温度60℃~80℃、湿度70%~80%で30日程度、加温しても、マイタケはある程度、茶色に変色はするものの黒ニンニクのようには黒化せず、マイタケの黒化をほとんど進行させることができない。
【0005】
さらに、食材を黒に着色させる製造方法として、特許文献3に記載されている茶色や黒色を呈する色付き食材、色付き食材の製造方法がある。
しかし、この製造方法では、キノコ類を含む食材を黒にんにくエキス液に浸漬したり、混ぜて調理することで色付けするものであって、マイタケを熟成させるものでなく、すなわち、マイタケが持つ生体調節機能を向上させるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-333732号公報
【文献】特開2015-104365号公報(段落番号0002)
【文献】特開2018-138000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術では、マイタケ自体を黒化させることは困難であり、健康食材として知られるマイタケの有する機能を十分に引き出していないという問題があった。
【0008】
本発明は、マイタケの生体調節機能を向上させるマイタケ加工品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段として、本願で特許請求される発明又は少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
(1) 密閉可能な空間を有する処理室にマイタケとネギ属とを収容する工程と、この処理室に収容されたマイタケとネギ属とを、60~80℃で連続して加温する工程とを含むことによって、マイタケのACE阻害活性及びα-グルコシダーゼ阻害活性を向上させることを特徴とする、マイタケ加工品製造方法。
(2) 好ましくは、前記加温する工程が、温度70℃で連続して10日~30日間加温する工程であることを特徴とする、(1)に記載のマイタケ加工品製造方法。
(3) 好ましくは、前記収容する工程が、マイタケから成る層と、ネギ属から成る層とを交互に積層させ、積層構造状に収容する工程であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載のマイタケ加工品製造方法。
(4) 好ましくは、前記ネギ属は、ラッキョウ、シマラッキョウ又はニンニクであることを特徴とする(1)ないし(3)に記載のマイタケ加工品製造方法。
(5) (1)ないし(4)のいずれかに記載のマイタケ加工品製造方法により製造され、マイタケのACE阻害活性及びα-グルコシダーゼ阻害活性を向上させたことを特徴とする、マイタケ加工品。
【発明の効果】
【0010】
本発明のマイタケ加工品製造方法によれば、マイタケの生体調節機能を向上させることができる。これにより、生活習慣病予防や健康維持の効果が期待できるマイタケ加工品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るマイタケ加工品製造方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、生活習慣病予防や健康維持の効果が期待できる食材の提供を実現するものである。
【実施例】
【0013】
本発明のマイタケ加工品製造方法は、密閉可能な空間を有する処理室にマイタケとネギ属とを収容する工程と、この処理室に収容されたマイタケとネギ属とを、60~80℃で連続して加温する工程とを含むことによって、マイタケの生体調節機能を向上させるようにしたものである。
本発明において、マイタケの生体調節機能とは、アンジオテンシン変換酵素阻害活性(ACE阻害活性)及びα-グルコシダーゼ阻害活性等の機能を指すものである。
【0014】
本発明において、ネギ属とはネギ亜科に分類される属である。ネギ属の野菜としては、ネギ、ニンニク、ギョウジャニンニク 、ラッキョウ、シマラッキョウ、アサツキ、タマネギ、ニラなどが知られている。
【0015】
本発明をフロー図によって説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るマイタケ加工品製造方法のフロー図である。本実施形態のマイタケ加工品製造方法は、マイタケ及びネギ属の非可食部を除去する工程(準備工程)S1と、密閉可能な空間を有する処理室に非可食部が除去されたマイタケ及びネギ属とを収容する工程(収容工程)S2と、処理室に混入されたマイタケとネギ属を加温する工程(加温工程)S3と、マイタケ及びネギ属の混合物からネギ属を分離する工程(分離工程)S4とからなるものである。
【0016】
準備工程S1では、原料となるマイタケとネギ属の下準備を行う。下準備とは、ネギ属の場合、土などの汚れを取り、非可食部分である皮や根を除去することであり、ニンニクの場合には、さらに小房ごとに分け、薄皮を剥ぎ取り、芯を取り除くことも含まれる。マイタケの下準備は、根元(石づき)を落とし、繊維に沿って手で割くようにして扱いやすい大きさの小片に分けることをいう。マイタケは、あまり小さく割いてしまうと食味が損なわれるため、一片の幅は5cm前後とすることが好ましい。
【0017】
次に、収容工程S2では、密閉可能な空間を有する処理室に下準備を終えたマイタケとネギ属とを収容する。収容する際は、マイタケから成る層と、ネギ属から成る層とを交互に積層させ、積層構造状にすることが好ましい。
【0018】
加温工程S3では、処理室に混入されたマイタケとネギ属を60~80℃の環境下において加温処理する。加温工程S3では、処理室を密閉状態におき乾燥しないようにする。
連続して加温する日数は10日以上であることが好ましく、20日~30日間の加温がさらに好ましい。
【0019】
分離工程S4では、加温工程後のマイタケ及びネギ属を常温環境におき、外気に晒し、粗熱をとりつつ自然乾燥させる。常温に戻った混合状態にあるマイタケとネギ属とを分離する。
【0020】
上述の収容工程S2、加温工程S3及び分離工程S4とからなる加工処理を施し、黒化したマイタケがマイタケ加工品であり、後述のとおり、マイタケのACE阻害活性及びα-グルコシダーゼ阻害活性といった生体調節機能が向上したものになる。
【0021】
マイタケ加工品の形態としては、黒化したマイタケを更に次のような加工工程S5においたものとすることもできる。
黒化したマイタケをすり潰し裏漉しを行ってペースト状にした加工品、黒化したマイタケを乾燥させた加工品、乾燥させたマイタケ加工品を粉末状にした加工品などであり、このように加工工程S5を経たマイタケ加工品はより付加価値の高いものとして広く利用が可能となる。
なお、加温工程S3後のマイタケ及びネギ属を分離せずに、混合状態のままで上述の加工工程S5に移行しても良い。このように分離工程S4をスキップした場合には、黒化マイタケと黒ニンニクないし黒ラッキョウの成分を含む加工品となる。
【0022】
本発明のマイタケ加工品製造方法を以下の実験例に基づいて更に説明する。ただし、これら実験例は説明のための例示にすぎない。
<実験例1:原料 マイタケ、ニンニク及びシマラッキョウ>
ニンニク及びシマラッキョウの非可食部である皮や根を除去し、ニンニクにおいては小房に分かれた一片ずつに分離した。これを水洗いして下準備とした(準備工程S1)。
次に、メッシュのステンレスカゴ(幅15cm×奥15cm×高さ15cm)に、原料となるニンニク、シマラッキョウ、マイタケを、以下の条件1~5のように、単品又は2種類の原料を組み合わせ収納した。2種類の組合せの場合、マイタケから成る層と、ネギ属から成る層とを交互に積層させ、積層構造状とした。例えば条件2の場合、いちばん下にマイタケ100g、その上にニンニク200g、さらにその上にマイタケ100g、さらにニンニク200gとマイタケ150gとを積み上げ、メッシュステンレスカゴに収納した。
条件1:マイタケ350g
条件2:マイタケ350g、ニンニク400g
条件3:ニンニク400g
条件4:マイタケ350g、シマラッキョウ400g
条件5:シマラッキョウ400g
単体又は2種類の原料を収納したメッシュステンレスカゴを、それぞれステンレス角容器(幅18cm×奥18cm×高さ18cm)の中に入れ、蓋をした。なお、ステンレスカゴをステンレス角容器に入れる際、角容器内部に直径8mmのセラミックボールを敷き詰め、このセラミックボールの上にステンレスカゴを置いた。これは、後述の加温工程(S3)中に、原料から出るドリップがステンレス角容器底に溜まり、原料と接触してしまうことを避けるためである。このようにして蓋をしたステンレス容器を恒温器(MOV-450S、アズワン)内部に設置した(収容工程S2)。
上述のように設置された条件1~5の原料を恒温器でいずれも70℃で連続して28日間加温した(加温工程S3)。
その後、恒温器から原料を取り出し、外気に晒し常温に戻った原料を種類ごとに分離した(分離工程S4)。
上述のとおりの各工程を経て、実験を終了した。
実験終了後の加工マイタケのうち、条件2及び条件4は、いずれもマイタケが黒化し、かつ、食材として使用できるものであった。
【0023】
<生体調節機能の測定>
黒化させたマイタケの生体調節機能として、ACE阻害活性及びα-グルコシダーゼ阻害活性の2種の活性を測定した。
【0024】
(ACE阻害活性の測定)
加温前の原料と加温工程の累積日数が28日の加工後のマイタケを用いてACE阻害活性を測定した。本測定はACE Kit-WST(株式会社同仁化学研究所製)を用いて行った。
測定対象の各原料をいずれもペーストにした。50mL容量のポリプロピレン製の容器にペースト5gを量り取り、これに約40mLの蒸留水を加えて封をした上で超音波洗浄機にセットし、30分間抽出操作をした。抽出操作後、50mLに定容後、ろ紙によりろ過して抽出液を得た(サンプル濃度0.1g/mL)。抽出液にサンプル濃度が1mg/mLとなるように蒸留水を加え、これを測定した。
マイタケに本発明の加工処理を施した場合のACE阻害活性の測定結果を表1に示す。
【0025】
【0026】
測定結果によると、条件1(マイタケ350g)の加温なし(0日)では9.0%であり(マイタケにつき以下同じ)、28日間の加温により32.1%までACE阻害率が上昇した。他方、ニンニクを加えた条件2(マイタケ350g、ニンニク400g)のマイタケでは、9.0%から28日間の加温によって47.8%まで上昇し、シマラッキョウを加えた条件4(マイタケ350g、シマラッキョウ400g)のマイタケでは、9.0%から28日間の加温で33.8%に上昇した。
このことから、本発明のマイタケ加工品製造方法により、ACE阻害活性(血圧降下作用)が向上したマイタケ加工品を得られることが確認できた。
【0027】
(α-グルコシダーゼ阻害活性の測定)
測定対象の各原料をペーストにし、0日(加温なし)と加温28日間のものを2mLのマイクロチューブに1g量り取り、これに同量の蒸留水1gを加えた。マイクロチューブごと超音波洗浄機にセットし、30分間抽出操作をした。抽出操作後、遠心分離して、上清を得た(サンプル濃度0.5g/mL)。この上清を試料液とし、α-グルコシダーゼ阻害活性を測定した。
ACE阻害活性の測定はラット小腸由来酵素を用いた以下の方法で行った。
まず、1.0gラット腸管アセトンパウダー(Sigma-Ardrich社製)を0.1Мリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)10mLに懸濁して超音波洗浄機にセットし、氷冷下で20分間抽出操作を行った。直ちに遠心分離し、上清をα-グルコシダーゼ粗酵素液とした。
次に、以下のA~Dの4種類の溶液を作製した。
A液(試料液):蒸留水240μLに、250mМマルトース水溶液200μLと試料液50μLを加え、混合した。
B液(試料ブランク):蒸留水240μLに、試料液50μLを加え、混合した。
C液(対象液):蒸留水290μLに、250mМマルトース水溶液200μLを加え、混合した。
D液(対象ブランク):Cと同じものを作製した。
A液~D液をそれぞれ37℃で5分間加温した。加温後、A液、B液、C液にα-グルコシダーゼ粗酵素液を10μL加え、混合した。液A~D液を37℃でさらに40分間加温し、酵素反応させた。反応後、A液~D液に0.2М炭酸ナトリウム水溶液500μLを加え、酵素反応を停止させた。酵素反応後、B液に250mМマルトース水溶液200μLを、D液にα-グルコシダーゼ粗酵素液を10μL加え、混合した。
反応後のA液~D液のグルコース濃度をグルコースCIIテストワコー(富士フイルム和光純薬株式会社製)で測定し、得られたグルコース濃度から次式によりα-グルコシダーゼ阻害活性を算出した。なお、次式の各項はa:反応後A液グルコース濃度、b:反応後B液グルコース濃度、c:反応後C液グルコース濃度、d:反応後D液グルコース濃度である。
α-グルコシダーゼ阻害活性(%)={(a-d)-(b-d)}/(c-d)×100
なお、α-グルコシダーゼ阻害活性(%)は、生成したグルコース量に比例するものであり、阻害活性値が低いものほどグルコース量の生成が少なく、血糖値上昇抑制を示唆するもので、優れた活性であることを示す。
マイタケに本発明の加工処理を施した場合のα-グルコシダーゼ阻害活性の測定結果を表2に示す。
【0028】
【0029】
測定結果によると、マイタケ単体である条件1(マイタケ350g)の加温なし(0日)で117.8%であった値(マイタケにつき以下同じ)が、28日間の加温により80.4%までα-グルコシダーゼ阻害活性が低下した。マイタケにニンニクを加えた条件2(マイタケ350g、ニンニク400g)のマイタケでは、117.8%から28日間の加温により24.2%に、シマラッキョウを加えた条件4(マイタケ350g、シマラッキョウ400g)のマイタケでは117.8%から28日間の加温で42.3%に減少した。
この測定結果から、本発明のマイタケ加工品製造方法によりマイタケのα-グルコシダーゼ阻害活性(血糖値上昇抑制効果)が向上していることが確認できた。
【0030】
<実験例2:原料 マイタケ及びラッキョウ>
上述の実験例1に用いたシマラッキョウに代えてラッキョウを使用した。下準備(準備工程S1)を終えたマイタケとラッキョウとを積層構造にして、ステンレスカゴやセラミックボールを使用せずに、直接、加温器に収容し(収容工程S2)、20日間加温した(加温工程S3)。その後、加温器から原料を取り出し、種類ごとに分離した(分離工程S4)。
上述のとおりの各工程を経て、実験を終了した。
実験終了後の加工マイタケは黒化し、かつ、食材として使用できるものであった。
なお、加温開始から10日経った時点で、原料であるマイタケとラッキョウを攪拌した。その時点で、原料は薄茶色に変色していた。
【0031】
<生体調節機能の測定>
黒化させたマイタケの生体調節機能として、前述と同様の方法で、ACE阻害活性を測定した。測定の結果は、20日間の加温により、マイタケで41.8%、黒ラッキョウで40.2%の値であった。前述のとおり、マイタケ単体での加温なしでは9.0%、28日間の加温により32.1%までACE阻害率が上昇したことからすると、収容する原料がラッキョウの場合にも、より短い加温日数で、本発明のマイタケ加工品製造方法により、ACE阻害活性が向上したマイタケ加工品を得られることが確認できた。
【0032】
<参考実験例:原料 ニンニク、マイタケ、エリンギ、ブナシメジ、シイタケ>
上述の実験例1に用いたマイタケに加えて、食用キノコであるエリンギ、ブナシメジ及びシイタケを使用した。
下準備(準備工程S1)を終えた4種類のキノコとニンニクとを積層構造状にして、ステンレスカゴやセラミックボールを使用せずに、直接、加温器に収容した(収容工程S2)。各層は、マイタケ(約500g)、ニンニク(約200g)、エリンギ(約200g)、ニンニク(約200g)、ブナシメジ(約200g)、ニンニク(約200g)、シイタケ(約300g)の順で下から上に積み重ねた。
次いで、20日間加温した(加温工程S3)。加温開始から10日経った時点で、加温器内の原料を攪拌した。この時、5種類の原料はすべて薄茶色に変色していた。開始後20日経過した後、加温器から原料を取り出した。
上述の3つの工程を経て、実験を終了した。
実験終了後、加工マイタケもその他の食用キノコも黒化し、かつ、食材として使用できるものであった。
この実験結果から、本発明のマイタケ加工品製造方法により、マイタケのみならず、少なくともエリンギ、ブナシメジ及びシイタケの食用キノコが黒化させられることが確認できた。
【0033】
以上、説明した本発明は、上記した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の本質を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
マイタケの生体調節機能を向上させることができ、生活習慣病予防や健康維持の効果が期待できるマイタケ加工品及びこれを含む加工食品に利用できる。