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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-08
(45)【発行日】2025-07-16
(54)【発明の名称】基板搭載構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/14 20060101AFI20250709BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20250709BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20250709BHJP
【FI】
H05K7/14 G
H05K7/20 B
H05K7/20 F
B62D5/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021143299
(22)【出願日】2021-09-02
(65)【公開番号】P2023036313
(43)【公開日】2023-03-14
【審査請求日】2024-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀彰
(72)【発明者】
【氏名】油井 広明
(72)【発明者】
【氏名】中野 巧
(72)【発明者】
【氏名】藤井 慎平
(72)【発明者】
【氏名】赤木 佑輔
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-206108(JP,A)
【文献】特開平08-124635(JP,A)
【文献】特開2002-329942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/14
B62D 5/04
H05K 3/36
H05K 3/40
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装された第1基板および第2基板と、前記第1基板および前記第2基板の間に設けられるスペーサ基板とを有し、
前記スペーサ基板が、前記スペーサ基板の平面方向に沿って作用する外力に基づいて相対距離が変化するよう仕切部を介して設けられた複数の領域を備えており、
前記複数の領域の夫々に、前記第1基板のはんだ付け部と前記第2基板のはんだ付け部とを電気的に接続する棒状の中継端子が貫通した状態で分散配置しており、
前記第1基板のうちハウジングに固定される第1固定部および前記第2基板のうち前記ハウジングに固定される第2固定部の少なくとも何れか一方に、前記第1基板あるいは前記第2基板に係る接地端子が設けられており、
前記第1基板および前記第2基板、前記スペーサ基板を予め一体に保持した状態で前記ハウジングに取り付けられるフレーム部材を備えており、
前記フレーム部材の一部に前記第1基板あるいは前記第2基板の一部を前記ハウジングの側に向けて押す押え部を備えると共に、
前記第1基板あるいは前記第2基板のうち前記押え部に対向する部位の前記押え部と反対面に放熱部が形成され、
前記ハウジングの側において、前記フレーム部材が取り付けられた状態で、前記放熱部に当接する放熱シートが配置されている基板搭載構造。
【請求項2】
電子部品が実装された第1基板および第2基板と、前記第1基板および前記第2基板の間に設けられるスペーサ基板とを有し、
前記スペーサ基板が、前記スペーサ基板の平面方向に沿って作用する外力に基づいて相対距離が変化するよう仕切部を介して設けられた複数の領域を備えており、
前記複数の領域の夫々に、前記第1基板のはんだ付け部と前記第2基板のはんだ付け部とを電気的に接続する棒状の中継端子が貫通した状態で分散配置しており、
前記第1基板のうちハウジングに固定される第1固定部および前記第2基板のうち前記ハウジングに固定される第2固定部の少なくとも何れか一方に、前記第1基板あるいは前記第2基板に係る接地端子が設けられており、
前記第1基板および前記第2基板、前記スペーサ基板を一体に取り付けるフレーム部材と、当該フレーム部材の一方面を覆うカバー部材とを備えており、前記フレーム部材および前記カバー部材を前記ハウジングに取り付ける際に、前記フレーム部材の前記一方面の周縁部と前記カバー部材の周縁部との間、および、前記フレーム部材の他方面の周縁部と前記ハウジングとの間に環状のシール部材を配置してある基板搭載構造。
【請求項3】
前記仕切部がスリットである請求項1または2に記載の基板搭載構造。
【請求項4】
前記スペーサ基板と前記第1基板とに亘り、互いの位置決めを行う第1嵌合部が設けられ、前記スペーサ基板と前記第2基板とに亘り、互いの位置決めを行う第2嵌合部が設けられている請求項1から3の何れか一項に記載の基板搭載構造。
【請求項5】
前記第1基板が制御基板であり、前記第2基板が電源系の基板であり、
前記放熱部が前記第2基板に設けられている請求項に記載の基板搭載構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が実装された第1基板および第2基板を複数の棒状の中継端子を用いて接続するものであって、これら複数の中継端子を備えたスペーサ基板を第1基板と第2基板との間に設置する基板搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような基板搭載構造としては例えば特許文献1に示すものがある(〔0010〕、〔0014〕、〔0022〕および図2図7参照)。
【0003】
この基板搭載構造では、例えば制御基板11とパワー基板12とを重ね配置する構造を備えており、これらの基板の間にコネクタケース13が介在される。コネクタケース13の周縁部には、インサートモールド成形された端子群131,132、133が実装されており、これら端子は、例えば、制御基板11の実装部品とパワー基板12の実装部品とを電気的に接続する。
【0004】
本構成であれば、端子群を介して、制御基板11の実装部品とパワー基板12の実装部品とを接続することができ、これ等を平面に配置していた場合に必要であった実装位置の制約から遠くに位置するコネクタへの配線の引き回しが解消された。よって、配線レイアウトが簡素化され、配線設計の自由度が増すとのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-103535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の基板搭載構造にあっては、端子群はコネクタケースの壁部にインサートモールドされており、インサートモールド部においては夫々の端子は相対変位することができない。よって、例えばパワー基板12が過熱し、パワー基板12におけるはんだ付け部どうしの相対位置が熱膨張などによって変化する場合でも、端子はインサートモールドによって位置が固定される。このためパワー基板12におけるはんだ付け部に損傷が生じる等の可能性が残る。
【0007】
また、この公知文献における端子は、コネクタケースの壁部の中ほどからコネクタケースの平面方向に沿って中央側に突出し、直近で折り曲げて他方の基板に向かう構造である。この構成であれば、端子の先端位置の変更が容易であり、仮に、対象基板上のはんだ付け位置が位置ずれしている場合でもはんだ付けが容易である。また、対象基板が熱膨張する場合には端子自身が変形することで、熱膨張の影響を吸収することも可能と推測される。
【0008】
ただし、本構成の端子群を構成するには、多数の端子について「くの字」状に折り曲げた部位を埋設すべく各端子を整列させた状態でインサート成形する必要があり、製造作業が極めて煩雑である。
【0009】
さらに、インサート成形が終了したのち、全ての端子を対象基板の側に折り曲げる工程が必要になる場合にはさらに手間の掛るものとなる。
【0010】
このように、従来の基板搭載構造では、種々の解決すべき課題を有しており、構造が簡単で耐熱性能に優れたな基板搭載構造の提供が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(特徴構成)
本発明に係る基板搭載構造の特徴構成は、
電子部品が実装された第1基板および第2基板と、前記第1基板および前記第2基板の間に設けられるスペーサ基板とを有し、
前記スペーサ基板が、前記スペーサ基板の平面方向に沿って作用する外力に基づいて相対距離が変化するよう仕切部を介して設けられた複数の領域を備えており、
前記複数の領域の夫々に、前記第1基板のはんだ付け部と前記第2基板のはんだ付け部とを電気的に接続する棒状の中継端子が貫通した状態で分散配置されており、
前記第1基板のうちハウジングに固定される第1固定部および前記第2基板のうち前記ハウジングに固定される第2固定部の少なくとも何れか一方に、前記第1基板あるいは前記第2基板に係る接地端子が設けられており、
前記第1基板および前記第2基板、前記スペーサ基板を予め一体に保持した状態で前記ハウジングに取り付けられるフレーム部材を備え、前記フレーム部材の一部に前記第1基板あるいは前記第2基板の一部を前記ハウジングの側に向けて押す押え部を備えると共に、前記第1基板あるいは前記第2基板のうち前記押え部に対向する部位の前記押え部と反対面に放熱部が形成され、前記ハウジングの側において、前記フレーム部材が取り付けられた状態で、前記放熱部に当接する放熱シートが配置された点にある。
【0012】
(効果)
本構成は、第1基板と第2基板とを二段に構成すると共に、両基板を、複数の棒状の中継端子を備えたスペーサ基板によって接続するものである。スペーサ基板には、仕切部を介して幾つかの領域が設定してあり、棒状の中継端子は、これら領域に分散配置してある。
【0013】
これら複数の領域どうしはスペーサ基板の平面方向に沿って作用する外力に基づいて相対距離が変化可能である。例えば、第1基板と第2基板とが昇温した場合に、第1基板におけるはんだ付け部と第2基板におけるはんだ付け部とが異なる昇温状態にあるとき、双方のはんだ付け部どうしが基板に垂直な方向視で相対変位する場合がある。このとき、スペーサ基板の各領域どうしが平面方向に沿って相対変位するから、中継端子どうしの相対変位が許容され、第1基板あるいは第2基板におけるはんだ付け部に生じる応力を低減することができる。
【0014】
これにより、はんだ付け部の破損や基板の損傷が防止されて耐熱性および耐久性が向上する。即ち、基板を複数段に構成することで、基板の設置に必要な面積を少なくすることができ、各種制御対象への搭載性が向上すると共に、耐熱性および耐久性に優れた基板搭載構造を得ることができる。
【0015】
さらに、本構成の中継端子は棒状であり、例えば直線状の中継端子をスペーサ基板に設ける際には、予めスペーサ基板に設けた孔部に差し込むだけでよく、スペーサ基板を極めて容易に作製することができる。
また、本構成の如く、第1基板あるいは第2基板に接地端子を設けることで、当該制御基板の周辺にある機器からのノイズの影響を低減することができる。本構成であれば、第1基板あるいは第2基板を各種機器に取り付ける際に、接地作業を同時に行うことができるから、取付作業性に優れ、信頼性の高い基板搭載構造を得ることができる。
上記効果に加えて、本構成であれば、第1基板などを予め保持したフレーム部材をハウジングに取り付けるだけで、基板に設けた放熱部がハウジング側の放熱シートに接触する。その際に、フレーム部材の押え部が基板に当接して反力を発生させ、基板の放熱部とハウジングの放熱シートとを確実に接触させることができる。また、本構成では、放熱部を放熱シートの側に押さえるだけで、基板の平面方向に沿った基板の熱膨張は許容できる構成にしてある。よって、基板に不測の応力が生じず、ハンダ付け部の破損などを有効に防止することができる。
【0016】
本発明に係る基板搭載構造にあっては、前記仕切部をスリットで構成することができる。
【0017】
(効果)
前記仕切部がスリットであれば、夫々の領域に亘る応力の伝達が略解消することができる。しかも、スペース基板は合成樹脂などで構成されることが多いが、スリットを設けることは複雑な加工を要しない。よって、各領域どうしの仕切部を極めて合理的に構成することができる。
【0018】
本発明に係る基板搭載構造にあっては、前記スペーサ基板と前記第1基板とに亘って互いの位置決めを行う第1嵌合部を設け、前記スペーサ基板と前記第2基板とに亘って互いの位置決めを行う第2嵌合部を設けておくことができる。
【0019】
(効果)
このような嵌合部を設けることで、第1基板あるいは第2基板に対する中継端子の接続作業が容易となり、複数段の基板の組み立て作業が効率化される。よって、低コストの基板搭載構造を得ることができる。
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
本発明に係る基板搭載構造にあっては、前記第1基板を制御基板とし、前記第2基板を電源系の基板として、前記放熱部を前記第2基板に設けておくことができる。
【0025】
(効果)
本構成のごとく、必要な基板を制御系の基板と電源系の基板とに区別し、放熱部を電源系の基板に設けることで発熱の除去を効果的に行うことができる。また、発熱の程度に応じて基板を分けることになるから、特に制御基板において発熱に起因したハンダ付け部の損傷などをより効果的に防止することができる。
【0026】
本発明に係る基板搭載構造にあっては、
電子部品が実装された第1基板および第2基板と、前記第1基板および前記第2基板の間に設けられるスペーサ基板とを有し、
前記スペーサ基板が、前記スペーサ基板の平面方向に沿って作用する外力に基づいて相対距離が変化するよう仕切部を介して設けられた複数の領域を備えており、
前記複数の領域の夫々に、前記第1基板のはんだ付け部と前記第2基板のはんだ付け部とを電気的に接続する棒状の中継端子が貫通した状態で分散配置しており、
前記第1基板のうちハウジングに固定される第1固定部および前記第2基板のうち前記ハウジングに固定される第2固定部の少なくとも何れか一方に、前記第1基板あるいは前記第2基板に係る接地端子が設けられており、
前記第1基板および前記第2基板、前記スペーサ基板を一体に取り付けるフレーム部材と、当該フレーム部材の一方面を覆うカバー部材とを備えており、前記フレーム部材および前記カバー部材を前記ハウジングに取り付ける際に、前記フレーム部材の前記一方面の周縁部と前記カバー部材の周縁部との間、および、前記フレーム部材の他方面の周縁部と前記ハウジングとの間に環状のシール部材を配置する構成とすることができる。
【0027】
(効果)
本構成であれば、ハウジングに対する第1基板および第2基板、スペーサ基板の取付作業が簡略される。また、フレーム部材の表裏面にはシール部材を配置するから防塵性・防水性に優れた基板搭載構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態に係る変位検知装置の使用例を示す説明図
図2】駆動部の構成を示す説明図
図3】駆動部の構成を示す分解斜視図
図4】変位検知装置の構成を示す側断面図
図5】変位検知装置の要部の構成を示す斜視図
図6】変位検知装置の要部の構成を示す縦断面図
図7】制御部の構成を示す斜視図
図8】スペーサ基板の構成を示す斜視図
図9】第1基板および第2基板の嵌合構造を示す斜視図
図10】制御部の接地構造を示す説明図
図11】制御部の放熱構造を示す説明図
図12】制御部のシール構造を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0029】
(概要)
本発明に係る変位検知装置Sは、例えば、車両の後輪操舵装置に設けられた直動機構に用いることができる。
直動機構は、例えば、駆動部Mである電動モータ1によって筒状のナット2が回転駆動され、ナット2に対して螺合挿入されたロッド3を往復移動させるものである。ロッド3の一部には、直動機構のハウジング4の内面と当接する摺動面が形成されており、ロッド3が回転しない状態で往復移動するように構成してある。
【0030】
図1及び図2に、本実施形態に係る直動機構の構成を示す。直動機構は、図1の左側に設けられた制御部Cと、右側に設けられた駆動部Mとを備えている。制御部Cでは、ロッド3の変位状態を測定する直動センサ25を有し、この直動センサ25からの信号等に基づいてロッド3の位置を演算する。その演算結果に基づき、制御部Cは、ロッド3を所期の位置に移動させるべく駆動部Mに駆動信号を供給する。
【0031】
(駆動部)
図2および図3に示すように、本実施形態の駆動部Mは、直動機構の移動方向に沿った軸心Xを有するステータ5と、その内部で回転する筒状のロータ6とを備えている。筒状のロータ6の内部にはロッド3が挿通してある。ロータ6は、ステータ5の対向位置を挟んで軸心Xに沿った両外側にロータベアリング7によりハウジング4に両持ち支持されている。
【0032】
(遊星歯車機構)
ロータ6の一方の端部には、遊星歯車機構Pが接続してある。具体的には、ロータ6の端部の外面にはサンギヤP1が形成してある。サンギヤP1には、三個のプラネタリギヤP2が歯合しており、さらにプラネタリギヤP2の外側にはハウジング4に固定されたリングギヤP3が歯合している。
【0033】
プラネタリギヤP2のキャリアKはロッド3と螺合するナット2の外周側に螺合固定される。キャリアKは、ナット2の外面に固定される第1キャリアK1と、第1キャリアK1の外側に当該第1キャリアK1と嵌合固定される第2キャリアK2とを有する。第2キャリアK2には、三つのプラネタリギヤP2を夫々支持する三本の軸部材8が固定されている。
【0034】
ナット2は筒状であり、内面に駆動部Mの出力ギヤ9としての雌型の台形ネジ9aが形成されている。一方のロッド3の外面にはネジ部10としての雄型の台形ネジ10aが形成してある。ナット2は、耐摩耗性を持たせるために真鍮製である。ロッド3は後述の摺接部材21をハウジング4の内面に当接させることで、ハウジング4に対して回転しない状態で往復移動する。ナット2の外面にはスラストベアリングを用いた軸受部11が外嵌しており、この軸受部11はハウジング4の内面に内嵌されている。
【0035】
ナット2の一端には第1キャリアK1が外挿した状態で固定ネジ部12を介して螺合固定される。ナット2の他方の端部には径方向に突出した膨出部2aが形成されており、当該膨出部2aと第1キャリアK1の端面とによって軸受部11の内側部材11aを軸心Xの方向に沿って挟持する。本構成であれば、ナット2に対する軸受部11の固定および第1キャリアK1の固定が簡単となり、これらの組付け作業を効率化することができる。
【0036】
第1キャリアK1のさらに外方には、プラネタリギヤP2を保持する第2キャリアK2が外嵌固定される。当該外嵌固定は、二種類の嵌合部を用いて行われる。一つは、第2キャリアK2の側からみたときに、軸心Xの方向に沿った嵌合方向の奥側に形成された円筒状の第1嵌合部Kaである。これは第1キャリアK1の外面に形成された円筒状の嵌合外面と、第2キャリアK2の内面に形成された円筒状の嵌合内面とで形成される。もう一つは、第2キャリアK2の側からみたときに嵌合方向の手前側に合って第1嵌合部Kaに隣接するスプライン状の第2嵌合部Kbである。
【0037】
第2嵌合部Kbとしては、例えば軸心Xに垂直な断面形状として星形状に構成しておく。これにより、第1キャリアK1と第2キャリアK2とが相対回転することがなく、耐久性のあるキャリアKを構成することができる。また、第1キャリアK1をナット2に螺入する際には、第2嵌合部Kbを締結工具の係合部とすることができる。尚、第1キャリアK1および第2キャリアK2は、従来の真鍮に代えて鋼材で形成してあり軽量化と低コスト化を図っている。
【0038】
本実施形態では、特にハウジング4が窄まった形状となっており、軸受部11をキャリアKの奥に配置する必要がある。そのため、取り付け順序としては、ナット2に軸受部11を取り付け、第1キャリアK1で軸受部11を挟持したのちこれらをハウジング4に固定することとなる。第2キャリアK2の第1キャリアK1への取り付けはその後となる。
【0039】
軸受部11の固定には、軸受部11の外側部材11bに当接する円環状のスペーサ13と、当該スペーサ13に当接して軸受部11およびスペーサ13の位置を保持する抜け止めリング14とを用いる。抜け止めリング14は、ハウジング4の内面に形成した溝部15に嵌め込む例えばC字状のスナップリングである。
【0040】
本構成であれば、第2キャリアK2の取り付け前にスペーサ13を取り付けることができ、スペーサ13の寸法が、比較的大径となりがちな第2キャリアK2の寸法に拘わらず設定できる。よって、軸受部11の取付部位の設計の自由度が高まるうえ、軸受部11の取付作業が効率化される。また、軸受部11の大きさと第2キャリアK2の大きさとが個別に設定できる結果、遊星歯車機構Pの部品設定に際しての自由度が高まる。
【0041】
尚、スペーサ13を用いることで、溝部15の形成位置に誤差があっても、適切な厚さのスペーサ13を用いることで、外側部材11bをガタツキなくハウジング4に固定することができる。また、スペーサ13を完全な円環状の部材とすることで、スペーサ13が外側部材11bの全周と当接し、外側部材11bの抜け止め効果が向上する。
【0042】
軸受部11の固定が終了した後、第2キャリアK2を第1キャリアK1に嵌合固定する。第2キャリアK2に対するプラネタリギヤP2の取り付け順序は、第1キャリアK1に対する第2キャリアK2の取り付けの前後何れであっても良い。尚、リングギヤP3は、図2に示すようにハウジング4の内面に嵌合してある。
【0043】
(ガイド部)
駆動部Mによりロッド3が往復移動する際には、ロッド3の回転がハウジング4によって阻止される。そのために、図4乃至図6に示すように、ロッド3におけるネジ部10とは反対側に、ロッド3とハウジング4とに亘るガイド部Gが形成してある。
【0044】
ガイド部Gは、ロッド3に設けられたスライダ20と、スライダ20に取り付けられた摺接部材21と、摺接部材21が所定の距離に亘って摺動するようハウジング4に設けられたガイド面22とで構成される。
【0045】
スライダ20は、図5(a)(b)に示すように軸心Xに垂直な断面形状がコの字形を有する部材である。スライダ20は、コの字を形成する底部20aに設けられた取付孔20bを介して締結部材23である取付ボルトによってロッド3に固定される。取付手順としては、ロッド3をハウジング4の内部に挿入し、ハウジング4の開口部に形成された互いに対向するガイド面22の位置にロッド3のスライダ取付位置を対応させる。この状態で予め摺接部材21を取り付けたスライダ20を位置決めし、締結部材23によって締結する。
【0046】
スライダ20に対する摺接部材21の取り付けは、スライダ20のうちコの字を形成する一対の突設部20cに、摺接部材21に形成した溝状の差込部21aを挿入して行う。摺接部材21のうち差込部21aを形成する内壁21bには係合部21cとして爪部が形成してあり、一対の突設部20cに被係合部20dとして設けられた孔部に爪部を係合させる。このように所謂スナップフィットによる係合を行うことで、スライダ20に対する摺接部材21の取付作業が簡略化され、作業コストを抑えることができる。
【0047】
また、夫々の突設部20cの先端縁部は、軸心Xの方向に沿って両端をカットした段部20eが形成してある。これにより、突設部20cに摺接部材21の差込部21aを差し込んだ際には、図5(a)に示すように、先端縁部のうち段部20eを除く部位が摺接部材21の上面に露出し、摺接部材21が突設部20cに対して軸心Xの方向に沿ってガタ付くのが阻止される。
【0048】
また、一対の摺接部材21の夫々において外に向く面が摺接面21dとなり、ハウジング4に設けられたガイド面22と摺接してロッド3の回転が阻止される。この回転阻止が確実に行われるよう、スライダ20の一対の突設部20cにおける外向きの面が平面状の受面20fとして形成してあり、摺接部材21の差込部21aの内側に形成された平面21eと面当接する。このような受面20fと平面21eを設けることで、ロッド3の回転規制機能が確実に発揮されることとなり、直動機構の高トルク化が可能となる。
【0049】
スライダ20は、鋼材あるいはステンレス鋼などの金属材料で形成してあり、ロッド3の往復移動に際してガイド面22からの反力として受けるロッド3の回り止めトルクを確実に受け止めることができる。一方、摺接部材21は、例えばフッ素樹脂などの低摩擦係数を有する材料で構成される。
【0050】
また、スライダ20と摺接部材21とを分けたことで、スライダ20をロッド3に取り付けた後に摺接部材21をスライダ20に取り付けることもできる。摺接部材21の取り付け前であれば、締結部材23を一対の突設部20cの間から固定することが容易となる。本構成であれば、スライダ20の組付けに際して、ロッド3を反転させるなど他の姿勢に変化させる必要がなく効率的な組付け作業が可能となる。
【0051】
(制御部)
ロッド3の位置は、制御部Cにより検知される。この検知は、一対の摺接部材21の間に設けられたマグネット24と、このマグネット24に近接対抗する状態に制御基板26に設けられた直動センサ25とにより行われる。
【0052】
マグネット24は図5に示すように長尺状のものを用いて樹脂材料によりインサート形成し、マグネットブロック24aとされる。このマグネットブロック24aはロッド3に固定されるが、ロッド3の回転を防止する外力が摺接部材21からマグネット24に入力されないように取り付けられる。
【0053】
具体的には、マグネットブロック24aは、図5(b)に示すように一対の摺接部材21の間に挿入され、マグネットブロック24aの裏面が、スライダ20の底部20aに形成した二箇所の第1受座20gに当接する状態に配置される。これにより、マグネット24の検知面がロッド3の表面に対する所定高さに設置される。
【0054】
また、マグネットブロック24aの両端部近傍には張出部24bが設けてあり、この張出部24bに形成された第2受座24cが、二つの摺接部材21の夫々を軸心Xに沿う方向に挟み込む。このとき、第2受座24cが摺接部材21に軽く当接するようにしておくと、ロッド3の往復移動に際してマグネットブロック24aがガタ付かず、ロッド3の位置測定精度がより向上する。
【0055】
さらに、マグネット24の幅方向、つまり、マグネット24の表面に直交する方向視において軸心Xに交差する方向の位置決めは、ハウジング4により行う。つまり、ハウジング4におけるガイド面22の近傍に当該ガイド面22と平行に設けた第2ガイド面27が張出部24bに摺接し、マグネット24の位置決めと移動案内とを行う。
【0056】
このように、ハウジング4に挿通したロッド3に対してスライダ20および摺接部材21を固定したのち、マグネットブロック24aを摺接部材21およびハウジング4に対して位置決め配置することで、マグネット24をロッド3に対して簡単に設置することができる。
【0057】
本構成であれば、ロッド3の往復移動に際してロッド3の回転を防止する力が摺接部材21からマグネット24に作用しない。よって、マグネット24が破損するおそれが解消され、耐久性を高めた合理的な構造の変位検知装置Sを得ることができる。
【0058】
図4及び図7には制御部Cの構成を示す。制御部Cを構成るマグネット24はロッド3の側に固定され、自身の検知面を上方に向けた状態で配置されている。このマグネットには直動センサ25が近接した状態で対向配置される。直動センサ25は、後述の第1基板26aに実装されており、ロッド3の位置情報を検知する。直動センサ25で得た信号に基づいて制御部Cは、ロッド3の位置を演算し、ロッド3を所期の位置に移動させる駆動信号を駆動部Mに送信する。
【0059】
制御部Cは、図7(a)(b)に示すように、制御基板26として例えば第1基板26aおよび第2基板26bを備えている。第1基板26aは、マグネット24に対向する側の基板であり、直動センサ25等が設けられた所謂制御系の基板である。第2基板26bは、電源回路などを備えた所謂電源系の基板である。
【0060】
本実施形態では、第1基板26aと第2基板26bとの間には、例えば全体形状が矩形状で環状のスペーサ基板26cが設けられ、第1基板26aと第2基板26bとを電気的に接続している。これら第1基板26aおよび第2基板26b、スペーサ基板26cの三つは、ハウジング4に固定される前に予めフレーム部材38に取り付けられる。尚、フレーム部材38は、第1基板26a等を車両のECUと接続するコネクタ38aを備えている。このように複数の基盤を重ね配置することで、制御部Cの全体の平面積を小さくすることができ、例えば直動機構等の対象機器への搭載性を高めることができる。
【0061】
図8に示すように、スペーサ基板26cには、第1基板26aのはんだ付け部と第2基板26bのはんだ付け部とを接続する複数の中継端子30が備えられている。ここでは中継端子30を直線状の棒状に構成してある。この中継端子30は、例えばCu合金系素材やFe合金系素材等の機械的強度や電気伝導度、熱伝導度、耐食性に優れた材料で構成される。
【0062】
夫々の中継端子30はスペーサ基板26cに対して貫通配置してある。例えば、スペーサ基板26cに予め複数の孔を形成しておき、中継端子30を嵌合挿入する。また、中継端子30を所定の位置に埋設した状態に、スペーサ基板26cをインサート成形することもできる。
【0063】
夫々の中継端子30に対して第1基板26aおよび第2基板26bを接続するには、全ての中継端子30に対して第1基板26aおよび第2基板26bを正確に位置決めする必要がある。そのために、図9に示すように、スペーサ基板26cと第1基板26aとの間には、互いの位置決めを行う第1位置決め部31が設けてある。
【0064】
これは、例えば、スペーサ基板26cに、第1基板26aに向けて突出する第1凸状部材31aを設けておき、第1基板26aに設けた第1嵌合孔31bに嵌合させるものとする。一方、スペーサ基板26cと第2基板26bについても、第2位置決め部32としてスペーサ基板26cに設けた第2凸状部材32aと、第2基板26bに設けた第2嵌合孔32bとを設けておくとよい。
【0065】
このような第1位置決め部31および第2位置決め部32を設けることで、第1基板26aおよび第2基板26bに対するスペーサ基板26cの接続作業が容易となり、複数段の基板の組み立て作業が効率化される。よって、低コストの基板搭載構造を得ることができる。
【0066】
(耐熱構造)
第1基板26aおよび第2基板26bには多数の電子部品が実装されており、通常の使用に際しては諸定量の発熱が生じる。この発熱により各基板の寸法が変化し、昇温したはんだ部の機械的特性が変化することがある。その結果、第1基板26aのはんだ付け部と第2基板26bのはんだ付け部との相対位置が基板の平面方向に沿って変位し、はんだ付け部が割れる等の不具合が生じる。
【0067】
そこで、本実施形態のスペーサ基板26cには、所定数の中継端子30が配置された領域Aどうしを分ける仕切部33としてスリット33aが設けてある。具体的には、図8に示すように、所定面積の領域Aごとに、スペーサ基板26cの周縁部に対して垂直方向に延出するスリット33aを複数形成する。そのためには、当該スリット33aの部位のみをスペーサ基板26cの中央側に突出させ、この突出部34の内部にスリット33aを形成する。これにより、スリット33aを挟んで両側にある領域Aどうしの接続剛性を確保している。
【0068】
本構成であれば、スペーサ基板26cの所定の領域Aどうしの相対変位が可能となり、第1基板26aや第2基板26bの昇温に伴って中継端子30の姿勢の変化を吸収することができる。よって、第1基板26aおよび第2基板26bのはんだ付け部に過大な曲げ力などが作用せず、はんだ付け部を有効に保護することができる。
【0069】
(接地構造)
本実施形態の基板搭載構造では、第1基板26aおよび第2基板26bについて、ノイズの発生を抑えるべく以下の接地構造を備えている。つまり、第1基板26aにおいてハウジング4への固定に用いられる第1固定部35a、および、第2基板26bにおいてハウジング4への固定に用いられる第2固定部35bの少なくとも一つに対して接地端子36を設けておく。
【0070】
この接地端子36は、第2基板26b等がフレーム部材38に取り付けられることで、第2基板26b等がフレーム部材38に接地される。さらに、フレーム部材38が、ネジ部材39等を用いてハウジング4に固定されることで、第2基板26b等がハウジング4に接地される。
【0071】
具体的には、図10(a)(b)に示すように、金属板を折り曲げ成形した接地端子36を、例えば第2基板26bをフレーム部材38に固定する固定ネジ37に取り付ける。この接地端子36は、第2基板26bの接地回路に接触している。また、接地端子36の一方には、固定ネジ37から遠去かる方に突出する弾性部36aを設けてある。この弾性部36aは、第2基板26bの外方に突出しており、第2基板26bを備えたフレーム部材38をハウジング4に取り付けるだけで、第2基板26bとハウジング4とが導通するように構成してある。
【0072】
本構成であれば、第1基板26aおよび第2基板26bが周辺にある機器から受けるノイズの影響を低減することができる。また、第1基板26aおよび第2基板26bを各種機器に取り付ける際に、接地作業を同時に行うことができるから、取付作業性に優れ、信頼性の高い基板搭載構造を得ることができる。
【0073】
(放熱構造)
本構成の第1基板26aおよび第2基板26bは使用に際して発熱する。特に電源系の基板である第2基板26bの発熱量は第1基板26aの発熱量に比べて多い。仮に、発熱量が過大になると第2基板26bの実装部品やはんだ付け部が損傷する可能性がある。そこで、本構成の基板搭載構造では、以下の放熱構造を備えている。
【0074】
図11に示すように、フレーム部材38の一部に、例えば、第2基板26bの一部をハウジング4の側に向けて押す押え部40を形成しておく。第2基板26bのうち押え部40に対向する部位の裏面には放熱部41が形成されており、第2基板26b等がハウジング4に取り付けられた状態で、この放熱部41が、ハウジング4に設けられた放熱シート42と当接する。つまり、この時、放熱部41が確実に放熱シート42と当接するように、押え部40が第2基板26bの裏面を押すよう構成してある。
【0075】
本構成であれば、第2基板26b等を予め保持したフレーム部材38をハウジング4に取り付けるだけで、第2基板26bに設けた放熱部41がハウジング4の放熱シート42に確実に押し付けられ、良好な放熱効果を得ることができる。
【0076】
本構成のごとく、必要な制御基板26を制御系の第1基板26aと電源系の第2基板26bとに区別し、放熱部41を第2基板26bに設けることで発熱の除去効果を高めることができる。また、発熱の程度に応じて制御基板26を分けることになるから、特に電源系の第2基板26bにおいて発熱に起因したはんだ付け部の損傷などをより効果的に防止することができる。
【0077】
さらに、本構成の押え部40は、放熱部41を放熱シート42に押し付けるだけであり、第2基板26b等が自身の平面方向に沿って熱膨張することを規制するものではない。よって、第2基板26bにおいて不測の応力は生じず、はんだ付け部の破損などを有効に防止することができる。
【0078】
(シール構造)
第1基板26aおよび第2基板26b、スペーサ基板26cは、フレーム部材38の一方面に取り付けられた状態でハウジング4に固定され、更に、フレーム部材38の反対面は、カバー部材43で覆われる。これらフレーム部材38とカバー部材43をハウジング4に取り付ける際には、フレーム部材38の一方面の周縁部とハウジング4との間、および、フレーム部材38の他方面の周縁部とカバー部材43の周縁部との間には環状のシール部材44が配置される。
【0079】
このシール部材44は、例えば、断面形状が円形の各種ゴム部材等で構成され、フレーム部材38の周部形状に応じた平面形状を有する。フレーム部材38あるいはカバー部材43、ハウジング4のうち、互いに対向配置される部材の少なくとも何れか一方にはシール部材44が嵌まり込む固定溝45が形成してある。
【0080】
これにより、フレーム部材38およびカバー部材43の取り付け時にシール部材44が位置ずれし難くなり、取付作業が容易となる。また、取り付け後のシール部材44の位置ずれが防止され、長期に亘って防塵性・防水性に優れた基板搭載構造を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の基板搭載構造は、電子部品が実装された第1基板および第2基板を複数の棒状の中継端子を用いて接続するものであって、これら複数の中継端子を備えたスペーサ基板を第1基板と第2基板との間に設置するものに広く用いることができる。
【符号の説明】
【0082】
26a 第1基板
26b 第2基板
26c スペーサ基板
30 中継端子
31 第1嵌合部
32 第2嵌合部
33 仕切部
33a スリット
35a 第1固定部
35b 第2固定部
36 接地端子
38 フレーム部材
40 押え部
41 放熱部
42 放熱シート
43 カバー部材
44 シール部材
A 領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12