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特許7709242立体網状構造体の製造装置および立体網状構造体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-08
(45)【発行日】2025-07-16
(54)【発明の名称】立体網状構造体の製造装置および立体網状構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/037 20120101AFI20250709BHJP
   A47C 27/12 20060101ALI20250709BHJP
   B29C 48/345 20190101ALI20250709BHJP
   B29C 48/88 20190101ALI20250709BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20250709BHJP
【FI】
D04H3/037
A47C27/12 F
B29C48/345
B29C48/88
D04H3/16
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024216560
(22)【出願日】2024-12-11
【審査請求日】2024-12-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】300054206
【氏名又は名称】株式会社シーエンジ
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】高岡 佳久
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特許第7562178(JP,B1)
【文献】特開2017-226230(JP,A)
【文献】特開平9-21054(JP,A)
【文献】特開昭58-109670(JP,A)
【文献】登録実用新案第3055735(JP,U)
【文献】特開2000-23799(JP,A)
【文献】登録実用新案第3055837(JP,U)
【文献】特開2000-25125(JP,A)
【文献】特開平11-350326(JP,A)
【文献】特開2000-248455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/00-27/22
B29C 48/00-48/96
D04H 1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の押出孔を有し、溶融状態の熱可塑性樹脂を複数の線条からなる線条集合体として下方に押し出して降下させるノズルと、
前記ノズルの下方に配置され、前記線条集合体を冷却する水槽と、
前記水槽において前記線条集合体を水中で搬送する一対の引取機と、
前記一対の引取機の少なくとも一方に取り付けられ、表面に三次元形状の成形部を有し、伸張性素材からなる、無端状の成形シートと、
を備える立体網状構造体の製造装置。
【請求項2】
複数の押出孔を有し、溶融状態の熱可塑性樹脂を複数の線条からなる線条集合体として下方に押し出して降下させるノズルと、
前記ノズルの下方に配置され、前記線条集合体を冷却する水槽と、
前記水槽において前記線条集合体を水中で搬送する一対の引取機と、
前記一対の引取機の少なくとも一方に取り付けられ、表面に三次元形状の成形部を有する成形シートと、を備え、
前記引取機は、横方向に長尺な複数の板材が縦方向に連結される無端部材を有し、
前記成形シートは、伸張性素材からなり、取付部材により前記板材に取り付けられる
体網状構造体の製造装置。
【請求項3】
複数の押出孔を有し、溶融状態の熱可塑性樹脂を複数の線条からなる線条集合体として下方に押し出して降下させるノズルと、
前記ノズルの下方に配置され、前記線条集合体を冷却する水槽と、
前記水槽において前記線条集合体を水中で搬送する一対の引取機と、
前記一対の引取機の少なくとも一方に取り付けられ、表面に三次元形状の成形部を有し、複数の通水孔が形成される、成形シートと、
を備える立体網状構造体の製造装置。
【請求項4】
前記成形シートは、
無端状のシート本体と、
前記成形シートの周方向において、前記シート本体から厚み方向に突出する凸部と、前記凸部の頂部よりも高さの低い底部を備える、
請求項1に記載の立体網状構造体の製造装置。
【請求項5】
前記成形部は、第1成形部と第2成形部を有し、
前記第1成形部は、前記線条集合体の押出方向と平行な第1側面を成形し、
前記第2成形部は、前記線条集合体の押出方向と平行で、かつ前記第1側面に直交する第2側面を成形する、
請求項1~3のいずれかに記載の立体網状構造体の製造装置。
【請求項6】
一対の引取機の少なくとも一方に、表面に三次元形状の成形部を有し、伸張性素材からなる、無端状の成形シートを取付ける取付工程と、
複数の押出孔を有するノズルから、加熱溶融した熱可塑性樹脂を複数の線条からなる線条集合体として押し出す押出工程と、
前記一対の引取機により、固化前の前記線条集合体を前記成形シートに接触させて成形しつつ前記線条集合体を水槽内で搬送して冷却固化させる成形工程と、
を備えた、立体網状構造体の製造方法。
【請求項7】
横方向に長尺な複数の板材が縦方向に連結される無端部材を有する一対の引取機の少なくとも一方に、表面に三次元形状の成形部を有し、伸張性素材からなる、成形シートを取付部材により取付ける取付工程と、
複数の押出孔を有するノズルから、加熱溶融した熱可塑性樹脂を複数の線条からなる線条集合体として押し出す押出工程と、
前記一対の引取機により、固化前の前記線条集合体を前記成形シートに接触させて成形しつつ前記線条集合体を水槽内で搬送して冷却固化させる成形工程と、
を備えた、立体網状構造体の製造方法。
【請求項8】
一対の引取機の少なくとも一方に、表面に三次元形状の成形部を有し、複数の通水孔が形成される、成形シートを取付ける取付工程と、
複数の押出孔を有するノズルから、加熱溶融した熱可塑性樹脂を複数の線条からなる線条集合体として押し出す押出工程と、
前記一対の引取機により、固化前の前記線条集合体を前記成形シートに接触させて成形しつつ前記線条集合体を水槽内で搬送して冷却固化させる成形工程と、
を備えた、立体網状構造体の製造方法。
【請求項9】
前記成形工程において、前記成形シートにより、前記線条集合体の表面に、厚み方向に突出する凸部と、前記凸部の頂部よりも高さの低い底部を形成する、
請求項6~8のいずれかに記載の立体網状構造体の製造方法。
【請求項10】
前記成形工程において、前記成形シートにより、前記線条集合体の肉厚部と肉薄部を形成する、
請求項6~8のいずれかに記載の立体網状構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッション体等に使用される立体網状構造体の製造装置および、立体網状構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立体網状構造体は、マットレス、フロアーマット、シートクッション等に用いられるクッション体として用いられている。近年、用途や求められる性能の多様化により、立体網状構造体は、様々な形状のものを製造する必要性が高まっている。
【0003】
特許文献1は、押出孔から溶融樹脂からなる線条集合体を押し出す口金と、口金の下方において、線条集合体に向かって下方に傾斜するシュートと、シュートの下方に配置される引取機を開示し、シュートの形状により、任意の断面形状を有する立体網状構造体が形成できることが開示されている。
【0004】
特許文献2は、溶融状態の樹脂を押し出す線状化部と、冷却槽と、ガイダー部と、樹脂が冷却されてなる構造体を冷却槽底面方向へ誘導する誘導部と、誘導部より上方でガイダー部より下方において冷却槽内に配置され、表面に凹凸を有して回転しながら構造体と接触することにより構造体に凹凸を形成する凹凸形成回転部を備える、網状構造体の製造装置を開示している。
【0005】
特許文献3は、表面に凹凸が形成された網状構造体が、熱板による後加工か、または引取装置に凹凸部品をつけることにより製造されることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5868964号公報
【文献】特開2023-126156号公報
【文献】特許第7562178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、押出方向と垂直な断面形状は任意の形状に成形できるが、押出方向には同じ形状しか形成できず、複雑な形状を成形することはできなかった。特許文献2や特許文献3は、製造装置の部品点数が多く、装置が複雑化し、また、凹凸の有無の変更にかかる作業が煩雑であるという問題があった。また、特許文献3において後加工により凹凸を形成するのであれば、工程が増えて作業が煩雑化してしまうという問題があった。
【0008】
上記従来の問題点に鑑み、本発明は、シンプルな構造で、複雑な形状の立体網状構造体でも効率的に製造できる、立体網状構造体の製造装置および製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数の押出孔を有し、溶融状態の熱可塑性樹脂を複数の線条からなる線条集合体として下方に押し出して降下させるノズルと、前記ノズルの下方に配置され、前記線条集合体を冷却する水槽と、前記水槽において前記線条集合体を水中で搬送する一対の引取機と、前記一対の引取機の少なくとも一方に取り付けられ、表面に三次元形状の成形部を有する成形シートとを備える立体網状構造体の製造装置である。
【0010】
前記成形シートは、無端状であることが好ましい。
【0011】
前記引取機は、横方向に長尺な複数の板材が縦方向に連結される無端部材を有し、前記成形シートは、取付部材により前記板材に取り付けられることが好ましい。
【0012】
前記成形シートは伸張性素材からなることが好ましい。
【0013】
前記成形シートは、無端状のシート本体と、前記成形シートの周方向において、前記シート本体から厚み方向に突出する凸部と、前記凸部の頂部よりも高さの低い底部を備えることが好ましい。
【0014】
前記成形シートには、複数の通水孔が形成されることが好ましい。
【0015】
前記成形部は、第1成形部と第2成形部を有し、前記第1成形部は、前記線条集合体の押出方向と平行な第1側面を成形し、前記第2成形部は、前記線条集合体の押出方向と平行で、かつ前記第1側面に直交する第2側面を成形することが好ましい。
【0016】
本発明は、一対の引取機の少なくとも一方に、表面に三次元形状の成形部を有する成形シートを取付ける取付工程と、複数の押出孔を有するノズルから、加熱溶融した熱可塑性樹脂を複数の線条からなる線条集合体として押し出す押出工程と、前記一対の引取機により、固化前の前記線条集合体を前記成形シートに接触させて成形しつつ前記線条集合体を水槽内で搬送して冷却固化させる成形工程と、を備えた、立体網状構造体の製造方法である。前記成形シートは、無端状で伸張性素材からなることが好ましい。また、前記引取機は横方向に長尺な複数の板材が縦方向に連結される無端部材を有し、前記成形シートは伸長性素材からなることが好ましい。また、前記成形シートには、複数の通水孔が形成されることが好ましい。
【0017】
前記成形工程において、前記成形シートにより、前記線条集合体の表面に、厚み方向に突出する凸部と、前記凸部の頂部よりも高さの低い底部を形成することが好ましい。
【0018】
前記成形工程において、前記成形シートにより、前記線条集合体の肉厚部と肉薄部を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、シンプルな構造で、複雑な形状でも効率的に製造できる。後加工を少なくでき、製造過程での原料ロスも少ない。また、既存の製造装置にも後付けで成形シートを取付けることも可能であり、成形シートを変更することにより、様々な形状に対応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態の立体網状構造体の製造装置の使用状態の側面を示す模式図である。
図2】同実施形態において、成形シートを取付けた引取機を説明する平面図である。
図3】同実施形態の、成形シートの一部の断面図である。
図4】同実施形態の製造装置で製造された立体網状構造体の例であり、(A)は使用状態、(B)は成形後の状態を示す図である。
図5】変形例における、成形シートを取付けた引取機の側面を示す模式図である。
図6図5におけるC-C´矢視図である。
図7】第2実施形態の立体網状構造体の製造装置の使用状態の側面を示す模式図である。
【0021】
図1~4を参照して、第1実施形態の立体網状構造体の製造装置1について説明する。なお、以下に示す各実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の各実施形態に限定するものではない。
【0022】
製造装置1は立体網状構造体2を製造するものであり、立体網状構造体2は、熱可塑性樹脂からなる線条の樹脂を曲がりくねらせてランダムループを形成し、ループが互いに溶融状態で接触することにより接合して形成されるものである。製造装置1は、溶融状態の熱可塑性樹脂を複数の線条41からなる線条集合体40として下方に押し出して降下させるノズル3と、ノズル3よりも下方に配置され、線条集合体40を冷却する水槽5と、水槽5において線条集合体40に接して水中で搬送する少なくとも一対の引取機6a、6bと、一対の引取機6a、6bに取り付けられる、表面に三次元形状の成形部81a、81bを有する成形シート8a、8bを備える。
【0023】
ノズル3は、複数の押出孔31を有し、溶融した熱可塑性樹脂に圧力を加えて一時的に貯留するダイス(図示略)の下部に一体的に設けられる。それぞれの押出孔31から溶融樹脂が線条41として吐出され、線条集合体40が降下する。押出孔31により押し出される線条41の径は、中実の場合は0.1~3mm、中空や異形の場合は0.2~5mmが例示される。
【0024】
原料となる熱可塑性樹脂は、例として、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロン66などのポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、上記樹脂をベースとし共重合したコポリマーやエラストマー、上記樹脂をブレンドしたもの等が挙げられる。原料の熱可塑性合成樹脂に抗菌剤や不燃材、難燃剤を混合したものや、生分解性プラスチックも採用できる。
【0025】
ノズル3の下に配置された水槽5は、ノズル3から押し出された線条集合体40を受け入れ可能に配置され、線条集合体40を冷却する水Wを有している。水槽5には、一部または全部が水没した引取機6a、6bが配置されている。ノズル3の押出孔31から押し出された線条の樹脂は、水槽5内の水面に着水して曲がりくねることによってランダムループを形成し、隣接するランダムループと互いに溶融状態で接触する。
【0026】
引取機6a、6bの間で線条集合体40が成形され、冷却固化され、搬送される。引取機6a、6bは、無端コンベアであり、それぞれ、無端部材61a、61bと、無端部材61a、61bを駆動するスプロケット62a、62b等の回転体を備える。無端部材61a、61bは、それぞれ、横方向に長尺な複数の板材68が所定の隙間Rをあけて複数(ここでは各2本)の無端チェーン(図示略)により縦方向に連結して周設されることより構成される。引取機6a、6bは、図1に示す通り、上部駆動シャフト64a、64bと下部駆動シャフト65a、65bとを備え、これらは図示しないフレーム間で回動自在に軸支される。上部駆動シャフト64a、64bおよび下部駆動シャフト65a、65bには、それぞれにおいて対応する間隔で上スプロケット62a、62bおよび下スプロケット63a、63bが設けられ、無端チェーンは、上スプロケット62a、62bおよび下スプロケット63a、63bに張力を掛けて周設される。
【0027】
引取機6a、6bは、さらに駆動モータ、駆動チェーン、各種ギヤ、変速機、制御装置、その他計器類等から構成される駆動制御装置(図示略)を備え、これによって上部駆動シャフト64a、64bには回転駆動力が付与される。この回転駆動力は同時に下部駆動シャフト65a、65bにも伝達されて、上部駆動シャフト64a、64bおよび下部駆動シャフト65a、65bは同期回転する。それに従い、スプロケット、無端チェーン、無端部材も一定の速度で回転する。
【0028】
引取機6a、6bの対向間隔は、押出された線条集合体の幅と同じか、線条集合体の幅よりも狭く設定されることが好ましい。引取機6a、6bの間に線条集合体を自然降下させ、該降下速度より前記線条を遅く引き込むことが好ましい。一対の無端部材61a、61bの対向間隔を調節可能とする間隔調節機構を設けてもよい。
【0029】
なお、無端部材61a、61bは、上記に限定されるものではなく、ゴムや樹脂製の平ベルトからなるコンベアや、金属製のワイヤーを連続的に編み込んだり織り込んだりしてメッシュ状にしたネットコンベアでも良い。
【0030】
成形シート8a、8bは、環状(無端形状)であり、引取機6a、6bのうち線条集合体と接する領域の全周を覆うものである。ただし、これに限定されず、引取機6a、6bの少なくとも一方の、少なくとも一部の領域に取り付けられるものであれば本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、引取機6aのみに成形シート8aが取付けられ、引取機6bには成形シート8bが取付けられない形態でもよい。また、線条集合体と接する領域のうち一部の領域のみに成形シート8a、8bが取付けられる形態でもよい。本実施形態においては、成形シート8a、8bは、引取機6a、6bに取り付けた際に引取機と反対側にある面、すなわち線条集合体40と接する面に、三次元形状の成形部81a、81bが形成されている。
【0031】
成形シート8a、8bは、図3に示される通り、無端状のシート本体83と、前記成形シートの外周面の周方向において、前記シート本体部から厚み方向に突出する凸部84と、凸部84の頂部よりも高さの低い底部85を備えることができる。凸部84はシート本体83と一体的に製造されていてもよいし、平面のシート本体83に凸部84を貼り付けてもよい。成形シート8a、8bの厚みは、5~500mmが例示される。
【0032】
成形部81a、81bは、線条集合体の押出方向と平行な、第1方向の側面(本実施形態においては長手側面)の形状を形成する第1成形部Xと、押出方向と平行で第1方向と直交する第2方向の側面(本実施形態においては短手側面)の形状を形成する第2成形部Yとを有する。成形シート8a、8bは第1成形部Xまたは第2成形部Yのどちらか一方だけを有していてもよい。第2方向の側面は、図2に示すように曲面状でもよいし、平面状でもよい。線条集合体が成形部81a、81bに、挟持されながら成形され、同時に水槽内で冷却され固化されることにより、成形部81a、81bに対応した形状の立体網状構造体を得ることができる。なお、引取機6aのみに成形シート8aが取付けられた場合は、例えば上面が凹凸形状を有し、下面が平面状の立体網状構造体を得ることができる。
【0033】
成形部81a、81bの形状は限定しないが、例えば、図1図3で示されるような千鳥状に配置された凹凸や、波形の凹凸が挙げられる。これにより、表面に凹凸のある立体網状構造体を形成することができる。また、成形部81a、81bにより、立体網状構造体2の肉厚部と肉薄部を形成し、例えば図4のようなリクライニングシートを一体成形で製造することもできる。図4のリクライニングシートは、押出方向に、肉厚部21、23、25、肉薄部27、曲げ部22、24、26を有し、これらを一体成形で製造することができる。曲げ部22、24、26は、肉厚を薄くすることにより曲げやすい構造とするものである。また、引取機6a、6bの回転速度やノズル3からの線条押出速度を調整することにより、嵩密度を調整し、部分的に硬いクッション材にしたり、柔らかいクッション材にすることができる。例えば、背中支持部となる肉厚部23を柔らかく、座面となる肉厚部25を硬く成形できる。
【0034】
第1成形部Xと第2成形部Yを組み合わせることにより、曲線を有する端部も成形が可能になる。このように、線条集合体の、押出方向と垂直な全周面を成形シート8a、8bと接触させることにより、長手側面、短手側面全てを成形でき、後加工が少なくできる。
【0035】
成形シート8a、8bは、ゴムやシリコンなどの伸張性素材から成ることが好ましい。これにより、成形シート8a、8bを引取機6a、6bに密着させることができ、製造過程でも成形シート8a、8bが撓むこと等なく、引取機6a、6bと追随するため、成形部81a、81bに対応した立体網状構造体2の形状を成形することができる。
【0036】
成形シート8a、8bには、複数の通水孔(図示略)を形成してもよい。通水孔の直径は、5~200mmが例示される。通水孔により、水槽5内での冷却効果を高めることができる。通水孔への水流を形成するために冷却水噴出装置を内部領域Iに設けてもよい。
【0037】
製造装置1は、従来技術のようなシュート(ノズルよりも下方で水槽よりも上方に配置され、線条と接触して冷却槽へ誘導する傾斜面を有する部材)を備えず、ノズル3から押し出された線条集合体40がそのまま水槽5内の引取機6a、6bに接触することが好ましい。線条集合体40が引取機6a、6bに接触する前にシュートに接触すると、シュート表面で表面部分が固化され、その後形成できる凹凸の高さが小さくなる。シュートを備えず、固化する前の線条集合体40がそのまま成形部81a、81bと接触して成形されることにより、高さのある凹凸であっても、成形しやすくなる。
【0038】
本実施形態によれば、幅方向、厚み方向だけでなく、押出方向にも自在に形状が変更できる。後加工を減らし、成形時の原料ロスも少なくできる。また、既存の引取機に後付けでシートを取付けるだけで、簡単に、色々な形状の立体網状構造体を形成することができる。
【0039】
図5図6は、成形シート8a、8bの変形例を説明するための図である。成形シート8aは、無端形状ではなく、複数(本実施形態では3つ)の成形シート8a1、8a2、8a3を備える。成形シート8bも同様に、3つの成形シート8b1、8b2、8b3を備える。それぞれの成形シートはその上端部および下端部を無端部材61a、61bの板材68の対応箇所に押え板91を介してネジ92等により取り付けられる。押え板91は横方向に長尺な形状であり、板材68と略平行に取り付けられる。それぞれの成形シート8a1、8a2、8a3、8b1、8b2、8b3は、同一形状であってもよいし、異なる形状であってもよく、目的とする立体網状構造体の形状に合わせて自由に設計できる。また、無端部材61a、61bの全周のうち、一部のみに成形シートをとりつけてもよい。
【0040】
以下、本実施形態における立体網状構造体の製造方法について説明する。公知の構成部分については、その詳細な説明は省略するので、日本国特許第4350286号、U.S.Patent No.7,625,629等を参照されたい。
【0041】
まず、一対の引取機6a、6bに、上記成形シート8a、8bを取付ける。この時、成形シート8a、8bは伸張性素材からできているので、成形シート8a、8bを伸ばしながら引取機6a、6bに嵌めて、引取機6a、6bに密着性よく取り付けることができる。
【0042】
次に、熱可塑性合成樹脂を主原料とした原料を溶融する。溶融された原料は、圧力を加えられて、ノズル3の押出孔31から下方へ押し出しされて線条41となる。ノズル3内部の温度範囲は100~400℃、押出量は20~200Kg/時間、等に設定可能である。ノズル3から吐出されたそれぞれの線条41は、押出孔31の複数個の配列により、複数本の線条41からなる線条集合体40となる。
【0043】
線条集合体40は水槽5内の水面に着水する。ここで、引取機6a、6bによる引取速度は線条集合体の落下速度よりも遅いため、着水した線条は撓み、水面付近でループ状に絡まり合うこととなる。同時に、線条集合体の外周側に位置する線条は、まだ固化されていない状態(高温で形状が変形可能な状態)であり、一対の引取機6a、6bに取り付けられた成形シート8a、8bと接触し、ループ状に絡まり合い、成形シート8a、8bの成形部81a、81bで成形されながら、引取機6a、6b間に挟持され、冷却固化され、搬送される。成形シート8a、8bの成形部の形状に応じて、線条集合体の表面に、厚み方向に突出する凸部と、凸部の頂部よりも高さの低い底部を形成することができる。
【0044】
上記操作を連続して行い、冷却固化された線条集合体40を水槽から引き出し、所望の長さに切断すれば立体網状構造体2を得ることができる。
【0045】
次に、図7を参照して、第2実施形態の製造装置101について説明する。この製造装置101は基本的には製造装置1と同様の構成を備えるので、共通する説明は第1実施形態の図示及び記載を援用するとともに、相違点を説明する。各要素に付す符号は第1実施形態の対応番号を100番台とする。
【0046】
第2実施形態においては、引取機として、所定間隔を置いて水平位置に設置された一対の第1ロール166a、166b、該一対の第1ロール166a、166bの下方にそれらに対して整列して配置され、所定間隔を置いて水平に配置された一対の第2ロール167a、167b、ロール166a、166b、167a、167bを駆動する駆動モータ、チェーン及び歯車から構成されロール166a、166b、167a、167bの回転速度を変速させる変速機、制御装置等を備える。ロール166a、166b、167a、167bは、断面形状は円形で、それぞれ駆動シャフト164a、164b、165a、165bを備えている。駆動シャフト164a、164b、165a、165bはそれぞれの軸受によって回転自在に支持され、変速機を介して駆動モータによって図5の矢印方向にそれぞれ駆動されるようになっている。
【0047】
第1ロール166aと第2ロール167aには、三次元形状の成形部181aが形成されたシート108aが架渡されている。シート108aは、第1ロール166a、第2ロール167aの回転が伝達されて、図7の矢印方向に回転する。シート108aは、第1実施形態のような伸長性部材の他、伸張性の無い部材から形成されていてもよい。シート108aのロール側の表面や、ロール表面には、形状や素材などにより滑り止め機能をもたせてもよい。もう一方の第1ロール166bと第2ロール167bにも、同様に、三次元形状の成形部181bが形成されたシート108bが架渡されている。
【0048】
シート108a、108bの内部領域Iには、シート108a、108bの撓みを規制するガイド110を備える。第2実施形態では、直線部中央でシートが凹みやすいが、ガイド110により、凹みを抑制し、挟持力を保つのに寄与する。ガイド110は、少なくとも内部領域Iのうち線条集合体140に接する側において、押出方向と平行な縦方向に延設されるものである。成形シート108a、108bは側面視において長尺の長円形に周設され二つの直線部を備えるが、その内部領域Iに、ガイド110が設けられる。なお、図7では、ガイド110は集合体140に接する側と、その反対側の両方に設けられているが、集合体140が通過する側の直線部のみにガイド110を設けることも可能である。ガイド110は、棒状やフラットバー形状等が例示される。なお、内部領域Iとは、成形シート108a、108bによって隔てられる内部の領域をいう。
【0049】
ガイド110は、図7に示す通り、内部領域Iにおいて横方向に延設される上フレーム111と下フレーム112に固設され、成形シート108に対して摺動するように設けられる。ガイド110は、ロール166a、166b、167a、167bの延設方向において、一つまたは複数設けられる。本実施形態においては、ガイド110の材質は硬質な樹脂製であるが、上記の製造における要素に応じて金属製、セラミックス製、炭素繊維製、あるいは、複合材料等を用いてもよい。
【0050】
本発明の製造装置または製造方法により製造された立体網状構造体は、リクライニングシート、椅子、座席シート、介護補助椅子、マットレス、敷き布団、ソファ等に用いられクッション材として使用できる。
【0051】
本発明は、上述の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、様々な改変、置換、欠失等を行うことが出来、改変、均等、置換、欠失等も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1、101 :立体網状構造体の製造装置
2 :立体網状構造体
3、103 :ノズル
31、131 :押出孔
5、105 :水槽
6a、6b、106a、106b :引取機
61a、61b :無端部材
62a、62b :上スプロケット
63a、63b :下スプロケット
64a、64b、164a、164b :上部駆動シャフト
65a、65b、165a、165b :下部駆動シャフト
68 :板材
8a、8b、108a、108b :成形シート
81a、81b、181a、181b :成形部
110 :ガイド
111 :上フレーム
112 :下フレーム
166a、166b :第1ロール
167a、167b :第2ロール
【要約】
【課題】シンプルな構造で、複雑な形状でも効率的に製造できる、立体網状構造体の製造装置および製造方法を提供する。
【解決手段】 複数の押出孔31を有し、溶融状態の熱可塑性樹脂を複数の線条41からなる線条集合体40として下方に押し出して降下させるノズル3と、ノズル3の下方に配置され、線条集合体40を冷却する水槽5と、水槽5において線条集合体40を水中で搬送する一対の引取機6a、6bと、一対の引取機6a、6bに取り付けられ、表面に三次元形状の成形部81a、81bを有する成形シート8a、8bと、を備える立体網状構造体の製造装置1である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7