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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-08
(45)【発行日】2025-07-16
(54)【発明の名称】容器詰め茶テイストアルコール飲料
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/04 20190101AFI20250709BHJP
   A23F 3/16 20060101ALN20250709BHJP
【FI】
C12G3/04
A23F3/16
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021077386
(22)【出願日】2021-04-30
(65)【公開番号】P2022171022
(43)【公開日】2022-11-11
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】森 暁平
【審査官】山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-165539(JP,A)
【文献】特開2017-216936(JP,A)
【文献】特開平08-116881(JP,A)
【文献】特開2007-244310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G
A23F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲み口の面積が500mm2以上である容器に封入された容器詰め茶テイストアルコール飲料であって、
茶葉抽出液と、
蒸留酒と、
平均粒子径が9.5μm以下の粉末茶と、
を含み、
前記粉末茶の原料が緑茶であり、
前記粉末茶の含有量が、0.01~0.1wt%であり、
エタノール濃度が、3~10vol%である、飲料。
【請求項2】
粉末茶の平均粒子径が5.0μm以上である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
前記容器がボトル缶である、請求項1又は2に記載の飲料。
【請求項4】
甘味度が3.0/100ml以下である、請求項1~3のいずれかに記載の飲料。
【請求項5】
糖類を含まない、請求項1~4のいずれかに記載の飲料。
【請求項6】
甘味料を含まない、請求項1~5のいずれかに記載の飲料。
【請求項7】
エタノール濃度が3~6volである、請求項1~のいずれかに記載の飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰め茶テイストアルコール飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
緑茶、ウーロン茶、及び紅茶等の茶葉の抽出液(すなわち、茶)を配合したアルコール飲料(以下、茶テイストアルコール飲料)は、フルーツテイストのアルコール飲料に比べ、甘くなくて食事に合う、カロリー・糖類が少なく健康的といった理由から、根強い人気がある。
このような茶テイストアルコール飲料には、茶の味わいを増強させるために、粉末茶を配合するものがある。例えば、特許文献1には、茶の持つ本来の茶風味及び色調を付与するために、茶の抽出液に、平均粒子径10~20μmの粉末茶を加えたアルコール飲料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-244310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アルコール飲料の容器が、飲用者の感じる風味に影響を与える場合がある。本発明者らは、ボトル缶に詰められたアルコール飲料について検討を行ったところ、アルコール飲料の容器としてよく用いられているステイオンタブ缶から飲用する場合に比べ、アルコールによる刺激を感じやすいことを見出した。
これは、ボトル缶の方がステイオンタブ缶に比べ、飲み口の面積が大きく、一口で飲む量や口内に流れ込む勢い(流速)が違うためであると考えられる。この傾向は、特に甘みの少ない茶テイストアルコール飲料で顕著であった。そして、茶テイストアルコール飲料を単に飲み口の面積が大きい容器に詰めた場合には、アルコールによる刺激が強すぎるものとなることが判った。
【0005】
そこで、本発明の課題は、飲み口の面積が大きい容器に詰められた茶テイストアルコール飲料において、アルコールによる刺激を低減することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、下記の手段により、上記課題が解決できることを見出した。
[1]飲み口の面積が500mm2以上である容器に封入された容器詰め茶テイストアルコール飲料であって、茶葉抽出液と、蒸留酒と、平均粒子径が10.0μm以下の粉末茶とを含む、飲料。
[2]粉末茶の平均粒子径が5.0μm以上である、[1]に記載の飲料。
[3]前記容器がボトル缶である、[1]又は[2]に記載の飲料。
[4]甘味度が3.0/100ml以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の飲料。
[5]糖類を含まない、[1]~[4]のいずれかに記載の飲料。
[6]甘味料を含まない、[1]~[5]のいずれかに記載の飲料。
[7]前記粉末茶の含有量が、0.01~0.1wt%である、[1]~[6]のいずれかに記載の飲料。
[8]エタノール濃度が3vol%以上である、[1]~[7]のいずれかに記載の飲料。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、飲み口の面積が大きい容器に詰められた茶テイストアルコール飲料において、アルコールによる刺激を低減することができる技術が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態に係る茶テイストアルコール飲料は、飲み口の面積が500mm2以上である容器に封入された容器詰め茶テイストアルコール飲料である。このアルコール飲料は、茶葉抽出液と、蒸留酒と、平均粒子径が10.0μm以下の粉末茶とを含む。このような構成を採用することにより、アルコール刺激感が適度に抑えられた茶テイストアルコール飲料が得られる。
【0009】
本実施形態において飲料が充填される容器は、飲み口の面積が500mm2以上であるものであればよく、特に限定されない。このような大きさの飲み口を有する容器は、アルコール飲料用の容器としてよく使用されるステイオンタブ缶等と比べて、大きな飲み口を有している。このような大きさの飲み口を有する容器は、一口で取り込まれる液量や流速が大きくなり、ステイオンタブ缶等とは異なる感覚が得られ、一定のニーズがある。一方で、既述のように、アルコールによる刺激感が強くなりやすい。従って、適度なアルコール刺激感を得るために、アルコール刺激感を抑えることが求められる。
飲み口の面積は、例えば600mm2以上、700mm2以上、又は750mm2以上であり、例えば1000mm2以下、900mm2以下、又は800mm2以下である。
好ましい一態様において、容器は、ボトル缶である。
【0010】
本明細書において、「茶葉抽出液」とは、茶葉の成分を水(湯)により抽出した液であり、いわゆる「茶」である。
茶葉抽出液としては、チャノキ(Camellia sinensis)を用いたものが好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。茶葉抽出液に使用される茶葉としては、処理方法(加熱処理の有無、発酵の有無等)に限らず、いずれのものも使用可能である。好ましい茶葉抽出液としては、緑茶(抹茶、煎茶、ほうじ茶等)、烏龍茶、及び紅茶等を挙げることができ、好ましくは緑茶である。
抽出時の水の温度は、特に限定されないが、例えば50~90℃、好ましくは50~80℃である。
抽出時に使用される茶葉の量は、水100mlに対して、例えば0.5~5g、好ましくは茶葉1.0~4.0gである。
茶テイストアルコール飲料中の茶葉抽出液の含有量は、例えば500ml/L以上、600ml/L以上、700ml/L以上、または750ml/L以上とすることができ、あるいは、950ml/L以下、930ml/L以下、910ml/L以下、又は900ml/L以下とすることができる。
また、茶テイストアルコール飲料中における茶葉抽出液由来のタンニン量は、例えば10mg/100ml以上、20mg/100ml以上、又は40mg/100ml以上であり、例えば100mg/100ml以下、90mg/100ml以下、又は80mg/100ml以下である。
【0011】
本実施形態に係る飲料は、アルコール(エタノール)を含有するアルコール飲料である。飲料のエタノール濃度は特に限定されないが、例えば3vol%以上、好ましくは3~10vol%、より好ましくは3~6vol%である。
【0012】
本実施形態に係る飲料に含まれる「蒸留酒」は、特に限定されるものではない。
好ましくは、蒸留酒は、連続式蒸留焼酎、スピリッツ及び原料用アルコールからなる群より選択される少なくとも一の酒類である。このような酒類は、風味が抑えられた酒類であると言え、茶葉抽出液の風味を損ないにくいことから、好ましい。尚、本明細書において、「連続式蒸留焼酎」、「スピリッツ」及び「原料用アルコール」の定義は、本件出願日において有効な日本国の酒税法及びこれに関連する法令の規定に従う。
【0013】
茶テイストアルコール飲料の全エタノール濃度(vol%)のうち、「蒸留酒」由来のエタノール濃度(vol%)が占める割合は、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上である。
【0014】
粉末茶は、お茶らしい味わいを増強するために用いられている。ここで、本実施形態では、粉末茶として、平均粒子径が10.0μm以下のものが使用される。このような平均粒子径を有する粉末茶を用いることにより、アルコール刺激感が適度に低減される。
なお、本明細書において、粉末茶の粒子径は、体積基準の算術平均径を意味し、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて求められる。
粉末茶の原料としては、茶葉抽出液に使用した茶葉と同様に、特に限定されない。例えば、緑茶(抹茶、煎茶、玉露、ほうじ茶等)、烏龍茶、及び紅茶等を挙げることができ、好ましくは緑茶である。
粉末茶の平均粒子径は、好ましくは9.5μm以下、より好ましくは9.0μm以下である。また、粉末茶の平均粒子径は、例えば5.0μm以上であり、好ましくは5.5μm以上、より好ましくは6.0μm以上、更に好ましくは7.0μm以上である。
【0015】
飲料中の粉末茶の含有量は、特に限定されるものではないが、お茶の味わいと適度な苦味が得られる観点から、例えば0.01~0.1wt%、好ましくは0.01~0.05wt%、より好ましくは0.02~0.05wt%である。粉末茶の含有量が多いと、お茶の味わいが増すと同時に、渋みや苦みも増す。容器の飲み口が500mm2以上である場合には、渋味が感じられやすくなる。上述の範囲であれば、適度なお茶の味わいと、適度な強さの渋味を得ることができる。
【0016】
本実施形態に係る茶テイストアルコール飲料には、上記の成分の他に、必要に応じて、他の成分が配合されていてもよい。例えば、他の成分として、香料、酸味料、甘味料、及び色素等が挙げられる。
但し、好ましくは、茶テイストアルコール飲料は、甘さが抑制された飲料であることが好ましい。甘さが抑えられた飲料であれば、お茶の風味が損なわれ難い。具体的には、甘味料が使用される場合であっても、甘味度が3.0/100ml以下であることが好ましい。甘味度は、より好ましくは1.0ml/100ml以下、更に好ましくは0.5/100ml以下、更に好ましくは0.1/100ml、最も好ましくはゼロ(甘味料不使用)である。
なお、茶テイストアルコール飲料の「甘味度」は、飲料中に含まれる「各甘味料の含有量(g/100ml)」に、「砂糖を1.00とした場合の各甘味料の甘味度」を乗じた値として求められる。「砂糖を1.00とした場合の各甘味料の甘味度」とは、砂糖の甘さを1.00とした場合の甘味料の甘味の強さを官能検査により評価したものである。甘味料の甘味度としては、精糖工業会発行「甘味料の総覧」(1990年5月発行)及び株式会社光琳発行「高甘味度甘味料スクラロースのすべて」(2003年5月発行)等に記載されている値を用いることができる。
【0017】
また、茶テイストアルコール飲料は、お茶の風味が損なわれないようにするため、糖類を含んでいないことが好ましい。
【0018】
茶テイストアルコール飲料は、炭酸飲料であってもよく、非炭酸飲料であってもよい。好ましくは、茶テイストアルコール飲料は、非炭酸飲料である。
【0019】
本実施形態に係る茶テイストアルコール飲料の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、上述した原料を混合し、容器に密封する。これにより、茶テイストアルコール飲料を製造することができる。
【実施例
【0020】
以下に、本発明をより具体的に説明するため、本発明者らによって行われた実施例について説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されて解釈されるべきものではない。
【0021】
下記の方法に従って、茶葉抽出液、連続式蒸留焼酎、及び粉末茶を準備した。
【0022】
(茶葉抽出液の調製)
市販の茶葉(煎茶)を、80℃のお湯で抽出(お湯100mlあたり茶葉2.5g)し、常温まで冷却したものを茶葉抽出液として調製した。
【0023】
(連続式蒸留焼酎の調製)
原料用アルコール(エタノール濃度:95%)を水で希釈して、エタノール濃度を35.0vol%に調製したものを連続式蒸留焼酎とした。
【0024】
(粉末茶)
平均粒子径が異なる複数の粉末茶を準備した。具体的には、煎茶の茶葉を粉砕処理することにより、粉末茶を得た。尚、粉砕処理の処理時間を変更することにより、平均粒子径が異なる粉末茶と用意した。
各粉末茶について、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-960(株式会社堀場製作所)を使用して、体積基準の算術平均径を測定し、測定結果を平均粒子径とした。
【0025】
(実験例1)
表1に示す組成に従って茶葉抽出液、連続式蒸留焼酎、及び粉末茶を混合し、例1~例5に係る茶テイストアルコール飲料を得た。尚、茶葉抽出液由来のタンニン量は、概ね60mg/100ml程度であった。得られた各飲料を、飲み口の面積が743mm2であるボトル缶に充填した。ボトル缶に充填後、5名のパネリストによる官能評価により、アルコール刺激及びお茶らしい風味を評価し、平均値を結果とした。評価基準については、例5を基準として、下記の通りとした。
(アルコール刺激)
5:非常に強く感じる(例5と同等)
4:強く感じる
3:感じる
2:弱く感じる
1:感じない
(お茶らしい風味)
5:非常に強く感じる(例5と同等)
4:強く感じる
3:感じる
2:弱く感じる
1:感じない
【0026】
結果を表1に示す。
【表1】
【0027】
表1に示されるように、例5に比べて、例1~例4の方がアルコール刺激感が少なかった。このことから、平均粒子径が10.0μm以下の粉末茶を使用することにより、アルコール刺激感が低減できることが判る。また、粉末茶の平均粒子径が小さくなると、お茶らしい風味が減少していく傾向にあった。粉末茶の平均粒子径が5.0μm以上である例2~例4の飲料においては、お茶らしい風味が十分維持されていた。
【0028】
(実験例2)
容器として、ボトル缶に代えて、SOT(ステイオンタブ)缶を使用した点を除き、実験例1と同様にして、例6~例10に係る飲料を得た。SOT缶としては、飲み口の面積が367mm2であるものを用いた。例6~例10に係る飲料の組成を表2に示す。例6~例10に係る飲料について、実験例1と同様に、官能評価により、アルコール刺激について評価した。
【0029】
結果を表2に示す。
【表2】
【0030】
表1と表2とを参照されたい。例5と例10とを比較すると、例5の方がアルコール刺激が強かった。従って、粉末茶の平均粒子径が10.0μmを超える場合には、SOT缶よりもボトル缶の方がアルコール刺激が感じられやすいことが判った。一方、例1~例4と例6~例9とを比較すると、アルコール刺激感に大きな差はないか、差があったとしてもわずかであった。すなわち、平均粒子径が10.0μm以下の粉末茶を使用することにより、ボトル缶においてもアルコール刺激が低減され、SOT缶とボトル缶とでの差が少なくなることが理解できる。
【0031】
(実験例3)
表3に示す組成に従って、粉末茶の量が異なる例11~例15に係る飲料を調製した。調製した例11~例15に係る飲料を、ボトル缶に充填した。
また、例16に係る飲料として表3に記載されるの組成の飲料をSOT缶に充填した飲料を調製した。
得られた例11~16に係る飲料について、パネリスト5名による官能評価により、渋みを評価した。評価基準については、例15を基準として、下記の通りとした。
(渋味)
5:非常に強く感じる(例15と同等)
4:強く感じる
3:感じる
2:弱く感じる
1:感じない
【0032】
結果を表3に示す。
【表3】
【0033】
例11~例15の結果より、粉末茶の量を増やすと、渋みが増すことが判った。ここで、例12と例16とを比較すると、例12の方が渋みが大きかった。従って、飲み口が広い容器の方が、渋みを感じやすいことが判った。例11~例15は、いずれも適度な渋味の範囲内であったが、粉末茶の量が0.02~0.05wt%の範囲内にある例11~例13では、例14及び15に比べて、より適度な渋みであった。